民 事 訴 訟 に お け る 専 門 家 の 関 わ り
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(2) 早法七二巻四号︵一九九七︶. 四〇八. と時間がかかると批判されてきた民事訴訟実務に大きな影響を与えるものと思われる︒主要な改正点は︑①争点整. 理手続の整備︑②証拠収集手続の拡充︑③少額事件訴訟の創設︑④最高裁判所に対する上訴制度の整備であるが︑ ︵1︶. 法改正みみでは民事裁判の改革が成功しないことは︑過去の民事訴訟法の改正の経緯に照らし明らかなことだとい. えよう︒私達実務家は︑民事訴訟法の改正を契機に︑民事訴訟実務の大幅な改革を図り︑利用者のための民事裁判 を実現しなければならない︒. ところで︑民事訴訟は︑原告の提示した訴訟物に関する双方の主張を整理して得られた争点について︑証拠調べ. を実施し︑その間適宜和解を試みることに尽きる︒大別すれば︑民事訴訟は︑争点整理︑証拠調べ及び和解から構. 成されていることになる︒適正かつ迅速な裁判が民事訴訟法の目標であるとすると︑この目標を実現するために. は︑争点整理︑証拠調べ及び和解を適正かつ円滑に行うことが重要になってくる︒その方策として︑昭和六〇年代 ︵2︶. から︑裁判所や弁護士会によっていろいろな方策案が発表され︑各地でそれらの方策案が実施されて大きな成果を. 上げてきた︒しかし︑それらの方策案は︑第一回期日前の事前調査と弁論兼和解の活用による争点整理が中心であ. り︑証拠調べと和解に関する改革については︑最近︑ようやく︑意欲的な一部の裁判官によって︑集中証拠調べが ︵3︶ 試みられるようになり︑対席和解が提唱されるようになったにすぎない︒. 新民事訴訟法も︑これらの実務の成果を取り入れ︑準備的口頭弁論︑弁論準備手続及び書面による準備手続とい. う争点整理メニュ!を用意したほか︑現行民事訴訟法下においては︑民事訴訟規則二七条に規定されているにすぎ. なかった集中証拠調べ︵継続審理︶を法律事項︵新法一八二条︶に格上げして︑集中証拠調べを原則的な証拠調方法 とする姿勢を示している︒.
(3) 私達実務家は︑利用しやすい民事裁判を目指すという新民事訴訟法の精神を実現するために︑争点整理手続を改. 革して集中証拠調べを実現するとともに︑これまで裁判改革運動の対象とされることが少なかった証拠調べと和解. の改革に積極的に取り組む必要があろう︒本稿は︑そのような民事訴訟実務の改革の一つの方策として︑これまで ︵4︶. ほとんど関心を持たれてこなかった民事訴訟における専門家の役割について︑私の経験等に基づいて簡単なスケッ チを試みるものである︒. 新民事訴訟法﹄三頁以下をそれぞれ参照されたい︒また︑明治一三年の民事訴訟法の制定から戦後の民事訴訟規. 民事訴訟法の改正経緯については︑柳田幸三ほか﹁新民事訴訟法の概要ω﹂NBL六〇〇号四六頁以下︑法務省民事局参事官. 室編﹃一問一答. ︵1︶. 下︑小山稔﹁民事訴訟制度改革の軌跡﹂自正四〇巻八号三二頁以下︑中野貞一郎﹁司法改革の軌跡﹂三ケ月章先生古稀祝賀・民事. 則の制定等に至る民事訴訟制度改革の歴史については︑小山稔﹁わが国における民事訴訟促進方策の歩み﹂判タ六〇一号一九頁以. 日本の民事訴訟制度の改革は︑争点整理の充実と集中証拠調べの実施という二本の.軸を中心になされてきたが︑いずれの改革. 手続法学の革新︵上︶一頁以下をそれぞれ参照されたい︒. も︑所期の目的を達成することはできなかった︒争点整理メニューの充実と集中証拠調べの実現を目指す今回の民事訴訟法の改正. も︑基本的には従来の改革と軌を一にしている︒この点をとらえて民事訴訟法の改正の成果に疑問を呈する論者もいるようである. いて︑ともすれば裁判所と弁護士会とが対立し︑民事訴訟の現場の声が法改正作業に届きにくかった従来の法改正とは異なってお. が︑私は︑︑今回の改正は︑裁判官と弁護士が協同して民事訴訟実務の改革に取り組んだ成果を取り入れたものであるという点にお. 裁判所の方策案については︑福田剛久﹁東京地裁の審理充実方策案﹂ジュリ九一四号五入頁以下︑佐々木茂美﹁大阪地裁の審. り︑ドイツ法の物真似から脱却した日本固有の民事手続を創造することのできる大きな手掛かりを与えるものだと考えている︒. 理の充実方策案﹂ジュリ九一四号六四頁以下︑岩佐善己ほか﹃民事訴訟のプラタティスに関する研究﹄︵司法研究報告書四〇輯一. ︵2︶. 号︶︑八木一洋﹁福岡地方裁判所における民事訴訟の審理の充実・促進方策の実施状況について﹂判タ八一六号六頁以下︑西口元. 四〇九. ョンV争点整理及び集中証拠調べをめぐる諸問題﹂判タ八四八号四頁以下︑大藤敏﹁審理充実方策の実践﹂自正四六巻八号五頁以. ﹁争点整理及び人証調べの充実策﹂佐々木宏教授古稀祝賀・早法六九巻四号三二五頁以下︑井垣敏生ほか﹁︿パネル・ディスカッシ. 民事訴訟における専門家の関わり.
(4) 早法七二巻四号︵一九九七︶. 四一〇. また︑弁護士会の方策案については︑第一東京弁護士会民事訴訟促進等研究委員会﹁新民事訴訟手続試案︵迅速訴訟手続要領︶﹂. 下をそれぞれ参照されたい︒. マニュアル試案を基にー︵上︶︵下︶﹂判時一三三八号三頁以下︑一三三九号三頁以下︑大阪弁護士会﹁民事裁判改善シンポジウ. ジュリ九一四号四〇頁以下︑第二東京弁護士会民事訴訟改善研究委員会﹁民事訴訟充実促進シンポジウムー民事訴訟充実促進実践 ム﹂判タ七五八 号 八 頁 以 下 を そ れ ぞ れ 参 照 さ れ た い ︒. 一三八四号一三頁以下︑井垣敏生﹁民事集中審理についてー体験的レポートー﹂判タ七九八号六頁以下︑小林茂雄ほか﹁︿座談会﹀. ︵3︶ 集中証拠調べについては︑田村洋三﹁民事集中審理についてーその実務的経験からー︵上︶︵下︶﹂判時二二八三号三頁以下︑. 民事集中審理について﹂判タ八二八号六頁以下︑一二宅弘人﹁集中証拠調べの準備と配慮﹂木川統一郎博士古稀祝賀・民事裁判の充. 実と促進︵中︶七三頁以下︑菅野博之﹁弁論兼和解と集中的証拠調べ1札幌地方裁判所における実情と私見ー﹂判時一五一三号二. 判所における民事集中証拠調べの試み︵1︶︵2完︶﹂判時一五五六号七頁以下︑一五五七号一〇頁以下︑伊藤眞ほか﹁︿座談会v. 六頁以下︑楠井敏郎﹁高知における集中証拠調べのささやかな試み﹂判タ八七五号四頁以下︑水戸地裁集中証拠調研究会﹁中小裁. また︑対質尋問等の証拠調べの改革や対席和解等については︑西口元ほか﹁チームワ;タによる汎用的訴訟運営を目指してω. 民事集中審理の実際ー東京地裁・大阪地裁における試みー﹂判タ八八六号四頁以下をそれぞれ参照されたい︒. 〜㈲1事前準備︑争点整理及び集中証拠調べの一つのモデルー﹂判タ八四六号七頁以下︑八四七号一一頁以下︑八四九号一四頁以. 下︑八五一号一八頁以下︑八五八号五一頁以下︑西口元﹁民事訴訟の汎用的審理モデルを目指して1事前準備︑争点整理及び集中. 証拠調べの一つのモデルー﹂民訴四一号一二九頁以下︑伊藤眞ほか﹁︿座談会﹀民事集中審理の実際−東京地裁・大阪地裁におけ. る試みー﹂判タ八八六号四頁以下︑西口元ほか﹁集中審理をめぐって1二一世紀の民事裁判の方向ー﹂山形大学法政論叢五号七七. 頁以下︑西口元﹁対質尋問の実証的研究﹂中村英郎教授古稀祝賀・民事訴訟法学の新たな展開二六五頁以下︑西口元﹁争点整理の. 頁以下︑西口元ほか﹁﹃対話型審理﹄における裁判官と書記官の対話ー対話︑対席︑対質ー﹂井上正三ほか編・対話型審理二四六. 和解については︑当事者が最終的には納得したのであるから︑その成立に至る過程を問題にする必要はないというのが実務家の. 原点に立ち返って﹂判タ九一五号五九頁以下をそれぞれ参照されたい︒. これまでの一般的な考え方であったと思われる︒換言すれば︑これまでの和解に関する議論は︑﹁和解善玉論﹂に立っていたよう. に思われる︒しかし︑当事者が本当に納得したかどうかは︑実態調査がされていない以上︑確証がないというべきである︒和解に.
(5) 弁論︵弁論兼和解︶を中心にー﹂ジュリ一〇〇七号三二頁以下は︑当事者の実態調査をしたところ︑判決よりも和解に対する不. ついては︑実証的な調査成果に基づいた科学的な研究が期待されるところである︒なお︑太田勝造﹁日本における民事裁判−和解. 民事訴訟における専門的知識の必要性. 民事訴訟長期化の原因. 1. 民事訴訟に お け る 専 門 家 の 関 わ り. 四一一. ついては︑一年半程度ではないかと思われる︒統計上の平均審理期間が一般的な事件の平均審理期間よりも長くな. ︵5︶. 渡請求事件等の一般的事件の平均審理期間は︑それよりも短く︑私の経験からすると︑人証調べを実施した事件に. 人証調べを実施した地裁第一審通常訴訟事件の平均審理期間は︑統計上︑約二年であるが︑地裁における建物明. 二. 指してー大阪地裁における審理充実の試みー﹂井上正三ほか編﹃対話型審理﹄九五頁以下を参照されたい︒. する方策を模索するものである︒なお︑民事訴訟の素人性と専門性の交錯については︑西口元﹁民事訴訟の汎用的審理モデルを目. 打破するために︑専門家の説明会等の工夫をすることによって専門家の協力を得ることにした︒本稿は︑民事訴訟の素人性を打破. 門性を改善して︑当事者本人も気軽に民事訴訟に参加できるようにするため︑当事者参加型の訴訟運営を実施し︑他方︑素人性を. 慮した無理のない自然な訴訟運営を試みた私達の審理モデルは︑一般に﹁Nコート﹂といわれる︒︶は︑民事訴訟のギルド的な専. 事訴訟の持つ﹁専門性と素人性の一一重人格﹂を打破しなければならない︒そこで︑Nコート︵ナチュラル・コ;ト︒手続保障に配. 度の専門性が利用者に対して民事訴訟の敷居を高くし︑その素人性が民事裁判に対する利用者の信頼を損ねているのであれば︑民. ついては︑医者等の専門家の協力を得ることが少ないという点で極めて強い﹁素人性﹂を有している︒この意味での民事訴訟の過. ︵4︶ 現状の民事訴訟実務は︑法曹を中心に運営しているという意味で極めて強い﹁専門性﹂を有する反面︑法律以外の専門分野に. 満の方が多かったと報告している︒. 兼.
(6) 早法七二巻四号︵一九九七︶. 四二一. ︵6︶ っている原因は︑医療過誤事件や建築毅疵事件等の専門的知識の必要な事件の平均審理期間が長いことにある︒利. 用者から金と時間がかかるとして批判を受けるのも︑このような事件なのである︒新民事訴訟法が理想とする利用. 争点整理段階における専門的知識の必要性. しやすい民事裁判を実現するためには︑これらの専門的知識が必要な事件を円滑に処理することが必要である︒. 2. 医療過誤事件等の専門的知識が必要な事件においては︑当事者から︑医学知識等の専門的知識を駆使した準備書. 面や専門書等の書証が提出される︒そのような当事者の主張や書証を理解するためには︑医学用語等の基礎知識が. 必要であるのみならず︑術式や薬の投与方法等の専門的知識も大切となってくる︒ましてや︑事件となるのは︑専. 門分野でも見解が分かれ︑定説が確立されていないようなケースなのである︒このような事件において︑準備書面. や書証を踏まえながら争点整理を行って真の争点を発見するためには︑裁判官が相当な専門的知識を有することが. 必要となる︒ところが︑一般的には︑裁判官がそのような専門的知識を有することはまれである︒そこで︑現在の. 実務では︑証拠調べ段階においてではあるが︑そのような専門的知識を補充するために︑鑑定等を利用するわけで ある︒. しかし︑争点整理段階では︑これらの専門家の協力を得ることは少ない︒多くの場合︑裁判官は︑事件で問題と. なっているような専門的知識を有していないのであるから︑乏しい知識で争点整理をすることになり︑争点整理に. 時間もかかり︑場合によっては︑争点を十分把握しないまま︑鑑定を実施することにもなりかねない︒その結果︑. 鑑定事項が多岐にわたり︑鑑定結果が出るまで長期間を要することになるし︑鑑定結果が出ても︑それを理解する.
(7) だけの基礎知識がないことも手伝って︑鑑定結果を理解するためにさらに専門家証人の尋問等が必要となって︑訴. 訟が泥沼化することにもなる︒確かに︑訴訟関係を明瞭にするために︑裁判所の釈明処分として︑鑑定を命ずるこ. ともできるし︑必要な調査を嘱託することもできることになってはいるが︵現行法二二一条︑新法一五一条︶︑実務 ︵7︶ においては︑これらの釈明処分がされることはまれである︒その原因は定かでないが︑証拠調べとしての鑑定と同. じように︑費用等が障害となって適当な鑑定人を選任できない点と︑裁判所の釈明処分としての鑑定は︑弁論の準. 備又は補充にすぎないので︑事実認定の資料にするためには︑さらに証拠調べとしての鑑定が必要になるという意 ︵8︶ 味で二重の負担を負うという点が︑釈明処分としての鑑定が利用されない理由ではないかと思われる︒仮に︑争点. 整理のために釈明処分としての鑑定等を利用することが困難であるというのであるならば︑他の手段を検討しなけ ればならない︒. 証拠調段階における専門的知識の必要性. 民事訴訟にお け る 専 門 家 の 関 わ り. 四二二. て︑素人の裁判官が判断することは困難である︒そのような場合には︑その道の専門家である医者等の協力が不可 ︵9︶ 欠である︒そこで︑現行法も新法も︑専門家の協力を得る手段として︑鑑定という証拠調べを規定している︒. 争点とされたとしても︑当時の患者の状態等に照らして︑その薬を投与するするのが相当であったかどうかについ. 家の協力が不可欠である︒例えば︑争点整理の結果︑薬の副作用が患者の死亡の原因であって︑薬の投与の是非が. 確になっても︑医療過誤事件等の専門分野の行為の適否が問題となる事件においては︑その判断のためには︑専門. 争点整理が行われて真の争点が明確になった後は︑その争点について証拠調べを実施することになる︒争点が明. 3.
(8) 早法七二巻四号︵﹁九九七︶. 和解段階における専門的知識の必要性. 四一四. ︵5︶ 平成六年度の司法統計によると︑地方裁判所民事第一審通常訴訟事件のうち人証の取調べを実施し︑かつ対席判決で終局した. 格が変化しているともいえよう︒. ︵10︶. としての専門家﹂は︑当事者のために専門的知識を補充するという意味で︑﹁当事者のための専門家﹂へとその性. とされていなかった仕入材料の単価等が問題となってくる︒このように和解の場面においては︑﹁裁判官の補助者. 建築請負業者は︑仕入材料の原価や人夫賃等から割り出した原価を割ることは困難なので︑それまでは審理の対象. で︑仕入材料等の原価は審理の対象となっていないことが多いが︑和解に応ずるかどうか判断する際には︑被告の. 等の専門的知識が必要になる事件においても︑争点整理や証拠調べにおいては︑工事の毅疵が争点となっているの. で︑和解に応ずるか否かの判断をする上で税理士等の専門家の協力が必要になることもある︒また︑建築理疵事件. しかし︑和解協議の席では︑和解条項の規定の仕方によって︑譲渡所得税等の税額が変わることもあり得るの. に和解において専門家の協力を得る必要性が乏しかったのではなかろうか︒. 行われることが多い和解においては︑既に証拠調べ等において裁判官の専門的知識を補充していることから︑新た. 専門的知識を補充するための補助者という日本の鑑定人の性格からすると︑争点整理や証拠調べが終了した段階で. なかった︒その原因としては︑専門家の協力を得ることが費用等の面で困難であるということのほかに︑裁判官の. 門家の協力はほとんどなかったし︑ましてや和解において専門家の協力を得るということは話題にのぼることすら. 今までは︑専門的知識の補充としては︑証拠調べとしての鑑定が実施される程度であって︑争点整理段階での専. 4.
(9) 事件の平均審理期間は︑二二・七月であり︑平成四年度の二四・一月と比べると約一か月短くなっている︒これは︑この間の民事. 井上治典ほか﹁︿座談会V民事訴訟法改正への視点1いま︑なぜ︑改正なのかー﹂法時六六巻一号三四頁︹吉村発言︺によれ. 訴訟実務の改革運動の成果であると思われる︒. ︵6︶. ば︑長期化した事件のうち︑最も多かった事件は︑税金︑建築︑土木︑医学等の専門家の協力を要する事件であり︑二番目は︑鑑. 菊井H村松﹃全訂民事訴訟法1﹄︿追補版﹀七四一頁︒専門家の活用に関する文献をみても︑証拠調べとしての鑑定の結果の. 定や検証に時間を要した事件であったとのことである︒. 採否等に関する論文が中心であり︑争点整理における専門家の活用を論じたものは極めて少ない︒. ︵7︶. 藤田耕三﹁民事事件における鑑定の諸問題ー土木建築工事等に関する鑑定1﹂自正二九巻七号六七頁においては︑学者等が鑑. 定人になるのを好まない原因として︑労多くして功少なしという点と︑日頃はあまり縁のない裁判所に呼び出されて厳しい尋問に. ︵8︶. 鑑定に関する最近の主な文献としては︑教科書及び注釈書等を除くと︑内田恒久﹁民事事件における鑑定の諸問題−不動産鑑. さらされる点が挙げられている︒. ︵9︶. 定の諸問題ー﹂自正二九巻七号五七頁以下︑藤田耕三﹁民事事件における鑑定の諸問題−土木建築工事等に関する鑑定ー﹂自正二. 達雄﹁医療事故訴訟と鑑定﹂判タ四一三号一〇頁以下︑野田宏﹁鑑定をめぐる諸問題﹂新・実務民事訴訟講座2一五三頁以下︑栂. 九巻七号六五頁以下︑山口繁﹁民事事件における鑑定の諸問題−医療過誤訴訟における鑑定1﹂自正二九巻七号七〇頁以下︑畔柳. の問題﹂判時一二六一号三頁以下︑小林秀之﹁現代型訴訟と鑑定﹂民事訴訟法の争点︿新版﹀二六八頁以下︑鳴原文雄﹁民事交通. 善夫﹁科学裁判と鑑定﹂講座民事訴訟5二四七頁以下︑中野貞一郎編﹃科学裁判と鑑定﹄︑加藤新太郎﹁民事鑑定をめぐる二︑三. 事件における鑑定の実務的諸間題﹂自正四四巻六号二一頁以下︑木川統一郎目生田美弥子﹁民事鑑定の欠陥の原因﹂判タ八四四号. 民事訴訟における専門家のタイプとしては︑裁判官の補助者としての性格を有するドイツ型の鑑定人︵留9語お莚&蒔包︑. 二一頁以下がある︒. 鑑定人が裁判官のような立場にたって審理を進めるという点で独立性の強いフランス型の鑑定人及び党派性の強いアメリカ型の専. 0︶. ︵1. 門家証人︵両巻Φ昌≦一90GDω︶の三つのタイプがある︒ドイツ型の鑑定人の役割については︑司法研修所編﹃ドイツにおける簡素. 営﹄一二二頁以下︑木川統一郎. 四一五. 生田美弥子﹁ドイツ・フランスの民事鑑定から学ぶ﹂判タ八四一号九頁以下を︑アメリカ型の専. 化法施行後の民事訴訟の運営﹄一二頁以下を︑フランス型の鑑定人については︑司法研修所編﹃フランスにおける民事訴訟の運. 民事訴訟における専門家の関わり.
(10) 早法七二巻四号︵一九九七︶. 専門家の協力の現状. 門家証人の役割については︑モリソン・フォースタi法律事務所﹃アメリカの民事訴訟﹄. 三. 争点整理段階. 四一六. ︸七九頁以下をそれぞれ参照されたい︒. としての鑑定を実施することになる︒しかし︑争点整理が不十分なまま鑑定を実施したのであるから︑鑑定事項が. 所もしびれを切らして︑争点整理が不十分なまま取り敢えず專門家の意見を聞こうということになって︑証拠調べ. 期間を必要とすることになる︒結局のところ︑争点整理に長期間を要することになるので︑当事者のみならず裁判. 整理をすべき裁判官も︑専門的知識を有していないことが多いので︑主張を理解するだけでもかなり長期間の審理. るし︑双方の準備書面が提出されたとしても︑双方の主張がなかなか噛み合わず︑その上に釈明権を行使して争点. 受けながら︑準備書面等を作成しているのが現状である︒その結果︑準備書面等の作成にかなりの期聞が必要とな. 多くの場合︑当事者は︑いろいろなコネを頼りに建築士等の専門家に依頼して︑それらの専門家のアドバイスを. の専門家の協力を求めることはほとんどなかった︒. らして主張を整理する程度であって︑医療過誤事件等の専門的知識が必要な事件において︑争点整理段階で医者等. 争点整理が行われることは少ない上に︑弁論兼和解等を利用して争点整理が行われる場合においても︑書証等に照. 五月雨式審理が︸般的であったこれまでの実務においては︑準備書面の交換による争点整理が中心で︑意識的に. 1.
(11) 多岐にわたり︑鑑定結果が出るまでに長期間を要し︑鑑定結果が出ても︑新たな争点が登場することにもなって︑. 再度︑争点整理を含めて訴訟の進行を考えざるを得なくなるという事態に陥ることにもなりかねない︒. このように争点整理において専門家の協力を求めることが少ない原因としては︑いろいろな点を挙げることがで. きるが︑最も大きな原因としては︑多大な費用がかかることなどから専門家の協力を得ることが困難であるので︑. 専門家の協力を得る以上は︑事実認定と直接結びつく証拠調べとしての鑑定を実施したいという実務家の意向が挙. 証拠調段階. げられるであろう︒私達は︑専門家の協力の下に適正な判断をするためには︑専門家が負担を感ずることなく気軽 ︵11︶ に訴訟に関与できるような手続を模索しなければならない︒. 2. 訴訟に専門家が関与するのは︑一般的には︑証拠調べとしての鑑定の場合である︒鑑定は︑実務においては︑一 般的には次のように実施される︒. まず︑当事者から鑑定の申出があり︑裁判所は︑鑑定の必要があると判断する場合には︑鑑定を採用した後︑過. 去の鑑定事例等を参考にしながら︑中立性等を考慮の上︑適当な鑑定人候補者を見つけて︑その候補者に連絡して. 承諾をとる︒しかし︑候補者は︑鑑定に応ずる余裕がないなどの理由で鑑定依頼を拒否することが多く︑裁判所 は︑鑑定人を発見するのにかなり苦労している︒. 次に︑鑑定人に裁判所に出頭してもらい︑鑑定人尋問を行って鑑定書の提出期限を決める︒場合によっては︑鑑. 四一七. 定人を交えて鑑定事項を調整することもある︒そして︑裁判所は︑鑑定書を口頭弁論に顕出するために︑鑑定書の 民事訴訟における専門家の関わり.
(12) 早法七二巻四号︵一九九七︶. 提出期限の後に弁論 期 日 を 入 れ る ︒. 四一八. その後︑口頭弁論において︑鑑定書の顕出を行うが︑多くの場合︑不利な鑑定結果が出た当事者から︑鑑定結果. を検討する時間が欲しいとの申出があり︑次回弁論期日を指定することになる︒そして︑次回弁論期日には︑その. 当事者から︑鑑定書に対する批判を記載した準備書面が提出され︑同時に鑑定人の証人尋問が申出がされる︒裁判. 所も︑鑑定書の内容を理解することが困難であったり︑鑑定の結論に疑問を抱いている場合などには︑多くの場. 合︑鑑定人の証人尋問が採用されて︑次回期日に鑑定人の証人尋問が実施されることになる︒. 鑑定人の証人尋問は︑通常の証人尋問と同じく︑交互尋問方式によって行われる︒その結果︑素人の代理人が尋. 問することとなって︑的を射ない質問も多く︑また︑鑑定人としても︑専門的知識を説明するために必要なスライ. ド等もないので︑的確な説明をすることが困難である︒そのため︑多くの場合︑当事者としては︑鑑定書の内容を. 理解することができないし︑ましてや反対尋問の成功は覚束ない︒そこで︑当事者は︑やむを得ず別の専門家の証. 人尋問を申請するか︑再鑑定を申請せざるを得ない︒他方︑裁判官としても︑鑑定結果の採否については︑裁判官. の自由心証に委ねられているというものの︑鑑定書を理解するために必要な基礎的な知識を持っていないことも多. 和解段階. いので︑鑑定結果の採否に迷うことになる︒. 3. 前述のとおり︑和解協議の場においても︑税金等の専門的知識が必要になることが多いが︑現在の和解の実務に. おいては︑専門家の協力を得ることはほとんどない︒そのため︑和解協議において税金等が問題になった場合に.
(13) は︑双方当事者は︑その場で判断することができず︑次回期日までに結論を出したいということで︑和解を続行す. ることにして︑次回期日までの間に︑相談料等を支払って税理士等の専門家に相談せざるを得ないこととなる︒他. 方︑裁判官も︑資料室等で難解な税法の解説書を紐解いて悪戦苦闘することになる︒その結果︑和解協議に半年以 上もかかることになり︑訴訟が長期化する危険性が生ずる︒. 山口繁・前掲論文七二頁以下は︑鑑定に協力してもらうために︑鑑定事項をできる限り箇条的に詳細︑具体的に示すなどの工. 四 Nコートの改革モデル. 鑑定に対する協力を得る工夫として︑口頭鑑定の一般化と鑑定人に対する質問の合理化を挙げておられる︒. 夫をする必要性を力説される︒また︑戸田弘﹁鑑定のプラクティスについて﹂判タニ一八号一頁は︑鑑定書作成の負担を軽減し. ︵11︶. ・フ︒. 輔佐人の選任. 争点整理段階における専門家の協力. 1. 民事訴訟における専門家の関わり. 四一九. 実践も︑Nコートの大きな特徴である︒以下においては︑Nコートの専門家巻き込みの実践例を紹介したいと思. 種々の試みを実施してきた︒Nコートは︑多くの問題点を指摘してきたが︑専門家を巻き込んだ民事訴訟モデルの. 私は︑自然な無理のない訴訟運営を目指して︑﹁Nコートモデル﹂を作って︑書記官や弁護士等の協力の下︑. て、. (1).
(14) 早法七二巻四号︵一九九七︶. 四二〇. 建築毅疵事件等の専門的知識が必要となる事件においては︑建築工法等の専門的知識が必要になることが多い. が︑当事者のみならず裁判官も︑そのような専門的知識を有していないことが多いので︑書証として提出された論. 文等を理解することが困難である︒その結果︑裁判官としては︑取り敢えず専門的知識を分かりやすく説明した準. 備書面を提出してもらって︑それを理解するために︑建築辞典等を片手にして専門書を前に悪戦苦闘せざるを得な くなり︑期日の間隔が長くなって︑争点整理に長期間を要することになる︒. そこで︑私は︑民事訴訟法の条文を隈なく検討したところ︑輔佐人︵現行法八八条︒なお︑新法六〇条は︑﹁補佐 ︵12︶ 人﹂としている︒︶の規定があることを発見し︑この規定を活用することにした︒現に建築毅疵事件等においては︑. 一級建築士等の専門家が当事者の訴訟活動を支援していることが多いので︑それらの専門家の協力を得ることはか. なり容易である︒そこで︑Nコートでは︑これらの専門家を輔佐人に選任して︑争点整理期日に出席してもらうこ とにした︒. これらの事件においては︑主張を分かりやすく説明するために図面や写真等を使用することが多いので︑なるべ. くオーバーヘッドプロジェクター等のOA機器が設置されているラウンド・テーブル法廷を使用し︑審理時間とし. ても三〇分ないし一時間程度の時間をとることとした︒そして︑争点整理期日においては︑輔佐人に︑OA機器を. 利用しながら双方の主張を分かりやすく説明してもらった︒また︑輔佐人等の説明が專門的であって即座に理解す. ることが困難である場合には︑裁判官が期日後に輔佐人の説明内容を再検討できるようにするための一種の手控え として︑輔佐人等の説明状況をビデオに録画することにした︒. 以上のように当事者に専門家の支援者がいる場合には︑輔佐人を選任することは容易であるが︑医療過誤事件等.
(15) の場合には︑原告は︑医者等の専門家を協力を得ることが難しいので︑輔佐人をつけることは困難となる︒このよ. うな場合には︑医者である被告に対し︑当該事件に関与していない医者を争点整理期日に同行してもらうようにお. 願いし︑必要があれば︑その医者を被告の輔佐人に選任して︑カルテの説明や薬の効能等の基礎的な事項について. 説明してもらうことにしていた︒最初のうちは︑原告は︑被告側の医者が原告に不利な説明をするのではないかと. の疑念を抱いていた︒しかし︑中心的な争点となる可能性の高い点については︑説明を求めることはせずに︑事案. の概要を理解する上で必要となる薬の一般的な効能等の基礎的な事項に限って説明してもらうこととし︑仮に︑説. 明がその限界を越えた場合には︑異議を述べてくれるように原告に要望した上で︑輔佐人に説明してもらった︒こ. のような配慮をしたところ︑原告の疑問も解消し︑原告の方から︑被告の輔佐人に対し︑積極的に自分の疑問点を 質問するのみならず︑参考文献等を教えてもらうようなこともあった︒. 後日︑原告の代理人に専門家の説明会についての感想を聞いたところ︑医療過誤事件においては︑医者等の専門. 付調停の活用. 家の協力を得ることが極めて困難であり︑カルテを理解することのみならず参考文献の収集等においても苦労して ︵13V いたので︑説明会においていろいろな基礎的情報を得ることができて︑本当に助かったとのことであった︒. の. 裁判所まで行って説明する暇がないなどの理由から専門家の協力を得ることができず︑輔佐人を選任することが. できない場合もある︒そのような場合には︑当事者の了解をとって︑事件を調停に付することにし︑調停部に対. し︑建築士等の専門家を調停委員にしてほしい旨を伝えるともに︑当事者に対しても︑調停手続に並行して︑互い. 四二一. に準備書面等を交換して争点整理をするように要望することにした︒その結果︑かなりの割合で調停が成立する 民事訴訟における専門家の関わり.
(16) 早法七二巻四号︵一九九七︶. ︵14︶. 四二二. し︑調停不調となって本案裁判所に事件が返されてくるときにも︑争点整理がされて真の争点が浮き彫りにされて 調査官の活用. いることが多い︒. ⑥. 裁判所法五七条によって︑各裁判所には︑工業所有権や租税等に関する事件の審理及び裁判についての調査を担. 当する調査官が置かれている︒調査官は︑期日外において︑裁判官の依頼を受けて︑必要な調査をするのが一般的. であろうが︑裁判官の専門的知識を補充するという調査官の役割に照らすと︑争点整理期日に立ち会って︑その際. に問題となった専門的な事項について説明することによって︑裁判官の理解を助けることも許されてよいのではな. かろうか︒Nコートでは︑このような観点から︑当事者の了解を得て︑調査官に争点整理に参加してもらい︑専門. 的立場からアドバイスをしてもらうことにした︒そのアドバイスは︑裁判官の専門的知識を補充するだけでなく︑ ︵15V 当事者にとっても︑事案の理解が容易になり︑大きな争点整理効果を上げた︒. 2 証拠調段階 ω 鑑定人との打合会. 鑑定事項が単純であって︑鑑定の前提事実についても争いがない場合には︑裁判所が鑑定事項を一方的に決め. て︑鑑定人に鑑定を命ずるだけでも十分である︒しかし︑鑑定の前提事実について争いがある場合などには︑鑑定. 人の資料収集方法等についても当事者間で争いが生ずることが多く︑これらの点について関係者間のコミュニケー. シ.ンを十分に図っていないと︑結論としては適正な鑑定結果が出されても︑当事者は︑その鑑定結果に納得でき.
(17) ないことが多い︒. そこで︑Nコートでは︑適正賃料の鑑定等の単純な鑑定を除いて全ての鑑定事例において︑法廷における鑑定人. 尋問に引き続いて︑準備室等に鑑定人を含めて関係者全員が集まり︑鑑定事項や鑑定に必要な資料の収集方法等に. ついて協議することにしていた︒その結果︑当事者は︑事案解明に必要な主張や書証等の不足に気づいて︑主張等. 鑑定人の説明会. の補充をすることができるし︑裁判所も︑適正な事実認定をする上で必要かつ十分な鑑定事項を決めることができ ︵16︶ た︒他方︑鑑定人としても︑鑑定に必要な資料の収集等において︑関係者の協力を得ることが容易になった︒ ω. 現在の鑑定実務は︑一般的には︑前述のとおり︑鑑定人が鑑定書を裁判所に提出するだけで終了する︒これで. は︑素人の裁判官や代理人は︑鑑定書を理解することも困難である︒そこで︑Nコートは︑鑑定人の口頭陳述︵現. 行法三〇八条︑新法二一五条︶の制度を活用して︑鑑定人から鑑定書が提出された後︑鑑定書の内容が複雑で理解す ロロ ることが困難な場合には︑鑑定人に裁判所に出頭して鑑定書の説明をしてもらうことにした︒その期日は︑鑑定人. 尋問期日とし︑ラウンド・テーブル法廷等において︑オーバーヘッドプロジェクターやスライド等を活用して︑鑑. 定人に鑑定書の内容を分かりやすく説明してもらった︒そして︑当事者に対しても︑可能な限り専門家を同行して. くるように依頼し︑鑑定人尋問期日においては︑適宜︑当事者が同行した専門家にも鑑定人に対して質問してもら. うようにした︒その記録としては︑立ち会った書記官が鑑定人の説明の骨子を記載した鑑定人尋問調書を作成する ︵18︶. とともに︑スライド等を利用した鑑定人の説明については︑鑑定人尋問調書ではその状況を忠実に再現することが. 民事訴訟における専門家の関わり. 四二三. 困難であるので︑その状況をビデオに録画した︒その上で︑当事者から要望があれば︑鑑定人に対し︑説明会にお.
(18) 早法七二巻四号︵一九九七︶. いて当事者から出された疑問を踏まえて鑑定補充書を作成するように依頼することにした︒. 四二四. その結果︑素人の裁判官や代理人も︑鑑定書を理解することが容易になる上に︑当事者が同行した専門家による. 鑑定人に対する質問を通じて︑専門家問の議論が自然に行われるようになって︑無理のない形で真の争点が浮かび. 上がることになった︒そして︑鑑定人も含めて出席した専門家の間では︑争点は︑専門家の間でも見解の分かれる. 点であるから︑和解するしかないとの結論に達することが多い︒そのような専門家の意見を踏まえて和解協議をし. たところ︑当事者も裁判官のアドバイスに素直に耳を傾け︑Nコートにおいては︑このような説明会を実施した事. 輔佐人による尋問. 件は︑全て和解で終了した︒. ㈹. 現在の実務においては︑専門家証人に対する尋問は︑素人の代理人が尋問するわけであるから︑的を射ない質問. 等が多く︑反対尋問が成功することは少ない︒そこで︑Nコートでは︑争点整理段階で効果を発揮した輔佐人の専. 門的知識を証拠調べ段階でも活用して︑専門家証人に対する反対尋問が成功するような配慮をすることとした︒す. なわち︑輔佐人に証拠調べにも出頭してもらって︑尋問の際に必要となる当事者の専門的知識を補充してもらうこ. とを通じて︑証拠調べを充実することにしたわけである︒そして︑Nコートでは︑当事者から要望があれば︑輔佐. 人が証人尋問等を行うことを認めたところ︑専門家証人が︑通常であれば︑専門的知識を駆使して反対尋問をする ︵19︶. 代理人を煙に巻くことのできた場合でも︑輔佐人は︑専門家証人に対して的確な反対尋問を行い︑事案解明に大き. く貢献したように思われる︒専門家による尋問の必要性は︑鑑定人においても同様である︒鑑定においては︑争い. のない事実や裁判所が一般経験則を適用して認定した事実に︑鑑定人が専門的知識を用いてのみ発見できる事実を.
(19) 加えた上で︑これらを前提事実にして專門的知識を適用して結論を出さなければならない場合もある︒専門的知識. を用いてのみ発見できる事実を見つけるためには︑鑑定人が︑人証調べに立ち会い︑必要な場合には︑裁判長に証. 人等に対する尋問を求め︑又はこれらの者に対し直接に問いを発することが必要となる︒新民事訴訟規則一三三条. ︵鑑定人の発問等︶は︑このような趣旨から設けられたものと思われる︒また︑鑑定を実施する上で必要な当事者の. 主張が十分にされていない場合には︑鑑定に必要な資料の収集に制限はないのであるから︵最判昭三一.一二.二八. 民集一〇・一二⊥六一二九︶︑鑑定人が裁判所に対して必要な釈明をするよう申し入れることも許されてよいであろう. 和解段階. ︵木川統一郎闘生田美弥子﹁民事鑑定の欠陥の原因﹂判タ八四四号二七頁参照︶︒. 3. Nコートにおいては︑和解条項の規定の仕方によって譲渡所得税等が変化する可能性のある不動産事件のような. 事件の和解協議において︑当事者の了解を得て︑裁判所に置かれている調査官︵租税︶に和解協議に立ち会っても. らい︑裁判官の専門的知識を補充してもらうために︑適宜︑課税される税額等についてアドバイスを受けるように. した︒その結果︑和解内容の面において︑当事者が安心できる和解になるし︑和解手続の面においても︑裁判官が 専門家の協力を得ながら和解協議をリードしたということから︑当事者も納得しやすい︒. また︑建築澱疵事件等の専門知識が必要となる事件においては︑Nコートは︑前述のとおり︑専門家の説明会を. 実施していたが︑その際︑和解の話が出ることもある︒そのときには︑その場に居合わせた鑑定人等の専門家か. 四二五. ら︑適宜︑専門家の立場からのアドバイスを受けることもあった︒その結果︑当事者も︑素人の裁判官の意見のみ 民事訴訟における専門家の関わり.
(20) 早法七二巻四号︵一九九七︶. 四二六. ではなく︑専門家の意見も反映した和解案であるとして︑納得しやすく︑和解の成立が容易になった︒フランスの. 新民事訴訟法では︑鑑定遅延を防ぐために︑鑑定人に当事者を和解させる任務を付与することを禁じているが︵二. 四〇条︶︑現実には︑鑑定人による和解勧試はかなり盛んなようである︵司法研修所編﹃フランスにおける民事訴訟の 運営﹄二二五頁︶︒. 性質及び権限等については︑斎藤秀夫ほか編著﹃注解民事訴訟法㈲﹄︹第二版︺四三二頁以下を参照されたい︒. ︵12︶ 輔佐人は︑当事者又は訴訟代理人が専門的・技術的知識を有しない場合に︑これを補うために選任される者である︒輔佐人の. Nコートの争点整理の工夫については︑西口元ほか・前掲﹁チームワータによる汎用的訴訟運営を目指して⑧﹂二六頁以下を. 参照されたい︒. ︵13︶. 付調停制度の活用については︑最山ロ同裁判所事務総局﹃民事訴訟の審理を充実させるための付調停制度の活用方策案﹄︑岩佐善. 調査官の性格や権限等については︑最高裁判所事務総局総務局﹃裁判所法逐条解説︵中ζ二四五頁以下を参照されたい︒. 己ほか﹃前掲民事訴訟のプラクティスに関する研究﹄一九五頁以下をそれぞれ参照されたい︒. ︵14︶. ︵15︶. い︒ところで︑同論文二八頁は︑鑑定の前提事実については︑証拠調べを終わらせた上で暫定的に心証を開示し︑一義的な前提事. ︵16︶ 鑑定人との打合せの必要性については︑木川統一郎H生田美弥子﹁民事鑑定の欠陥の原因﹂判タ八四四号二七頁を参照された. 実を鑑定人に与えるべきである巳亭王張される︒しかし︑暫定的心証であるといっても︑それを前提に鑑定が実施される以上︑不利. な心証を開示された当事者としては︑それを覆すために︑さらなる証拠調べを要求するのが通常であるから︑その要求を拒否して. のない状態にすることが必要ではあるが︑当事者の協力を得て円滑に訴訟を進行させるためには︑複数の前提事実の下で鑑定を実. 強引に鑑定を実施すると︑その当事者は︑裁判所に対し︑不信感を抱くことも考えられる︒前提事実については︑できるだけ争い. 現行民事訴訟法一三〇条二項は︑鑑定の嘱託によって提出された鑑定書についての説明を規定している︒鑑定人による鑑定書. 施することもやむ を 得 な い と い え よ う ︒. ︵17︶. の説明については︑明文の規定はないが︑現行民事訴訟法三〇八条︵新法二一五条︶によって︑鑑定陳述の方式として︑口頭陳述. が認められている以上︑鑑定人による鑑定書の説明は︑鑑定人の口頭陳述として当然許されるものと解される︵斎藤秀夫ほか編著.
(21) ﹃注解民事訴訟法㈹﹄︹第二版︺六九頁︹斎藤秀夫・松山恒昭・西村宏こ参照︶︒また︑旧民事訴訟法三三〇条とは異なって︑改. 正案二六三条︵現行法三〇八条︶に鑑定書の説明に関する規定を置かなかった理由について︑民事訴訟法改正調査委員会の松岡義. 正委員は︑鑑定を説明させることは鑑定の続行として裁判所が職権でできる旨説明している︵松本博之ほか編著﹃日本立法資料全. ドイツ民事訴訟法四一一条三項は︑書面による鑑定の解説のために︑鑑定人の出頭を命ずることができると規定している︒そし. 集12﹄三二一頁以下︶︒. いる︵司法研修所編﹃ドイツにおける簡素化法施行後の民事訴訟の運営﹄二一頁以下︑↓ぎヨ霧︑℃旨Nρ 曽琶嘆890こ壼轟. て︑判例・通説は︑当事者から申立てがあったときは︑裁判所は必要的に説明のための出頭を命じなければならないものと解して. ︒博>鼠H久お3γ貿匡じこ鋤奉旨茜N三ぢ8器脅9算℃N卜>慧一スお旨γψ8ε︒しかし︑フランスでは︑鑑定人は︑原則として︑. 一c. である︵司法研修所編﹃フランスにおける民事訴訟の運営﹄一三五頁︶︒木川統一郎h生田美弥子﹁民事鑑定書の構造﹂判タ八四. 書面による報告義務があるとされ︑弁論期日に口頭により意見を述べることもできるが︑そのような扱いは例外的であるとのこと. 九号一〇頁は︑鑑定書の内容に不透明又は不完全なところがある場合には︑鑑定人尋問を行い︑鑑定人の説明と鑑定書とを一括し. てその証拠価値を決定するのが正しい取扱いであるとされる︒なお︑鑑定人の資料収集に関するドイツ法とフランス法との比較に. Nコ:トでは︑審理の経過を忠実に再現するためには︑ビデオが最も適しているとの観点から︑当事者の了解を得ながら︑訴. ついては︑木川統一郎口生田美弥子﹁ドイツ・フランスの民事鑑定から学ぶ﹂判タ八四一号六頁以下を参照されたい︒ ︵18︶. いる︒. 訟のいろいろな場面でビデオを活用してきた︒ビデオの利用については︑ビデオテープの取扱い等について多くの問題が残されて. 四二七. 輔佐人による尋問については︑輔佐人が交互尋問に慣れていないので︑法廷が混乱するのではないかとの一抹の不安があった. が︑実施してみると︑弁護士以上に的確な尋問をし︑極めて充実した証拠調べを実現することができた︒. ︵19︶. 民事訴訟における専門家の関わり.
(22) 残された課題. 早法七二巻四号︵一九九七︶. 五 新民事訴訟法における専門家の協力. な民事訴訟実務を作り上げなければならない︒. 四二八. 実務家は︑新民事訴訟法の制定を契機にして︑さらに積極的に民事訴訟実務の改革に取り組み︑世界に誇れるよう. かっている︒本稿は︑鑑定を中心に︑専門家の協力を得るための一つの実践例を紹介にしたものにすぎない︒私達. 緒についたばかりである︒対質や在廷尋問等の証拠調べの改革と和解手続の合理化は︑今後の実務改革の努力にか. しかし︑学界をリードしてきた日本の民事訴訟実務の改革運動も︑ようやく集中証拠調べ等の証拠調べの改革の. 集中証拠調べ等の新設規定となって実を結んでいる︒. のである︒弁論兼和解による争点整理や集中証拠調べ等の実務の工夫は︑新民事訴訟法において︑弁論準備手続や. 新民事訴訟法は︑これまでの民事裁判改革運動の成果を取り入れて︑日本独自の民事訴訟法の制定を目指したも. 残された課題. すい環境づくりを目指したもので︑積極的に評価できるものである︒. 等に対して直接発間することを認める規定︵一三三条︶を置いた︒これらは︑ 専門家が民事訴訟の審理に協力しや. 新民事訴訟規則は︑宣誓書の提出による宣誓方式の簡略化︵一三一条二項︶ や︑鑑定人が審理に立ち会って証人. 1 2.
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