個人投資家向け会社説明会 ミーティングメモ
住友林業株式会社(1911)
開催日:2018 年 12 月 1 日 場 所:大阪新阪急ホテル 2 階 『紫の間』(大阪府大阪市) 説明者:取締役常務執行役員 川田 辰己 氏 1.会社概要 当社の創業は 1691(元禄 4)年、徳川綱吉が将軍の時代です。創業から 300 年以上の 時を経ています。 従業員数は海外を含めたグループ全体で 1 万 8,860 名です。関係会社は、国内・海外合 わせて 259 社(2018 年 9 月末時点)、連結売上高は 1 兆 2,220 億円です(2018 年 3 月期 実績)。日本のみならずアメリカ、オーストラリア、東南アジア、欧州に拠点をもち事 業を展開しています。 1691 年に住友家が愛媛県の別子銅山を開坑したことが住友林業グループのルーツです。 銅の精錬には燃料用の薪や炭が必要です。坑道や作業員の家を作る際にも木を使いま す。別子の山の周りの木を切って調達したことから、住友林業の林業事業が始まりま した。 別子銅山は世界的に見ても大規模な銅山で、その後順調に銅を生産していきました。 周辺の木を切りながら事業を進めていくため、木も減っていきます。銅の精錬による 排ガスの影響で木も枯れ、別子は明治期には荒廃してしまいました。 1894 年に、別子銅山の総支配人であった伊庭貞剛(いば・ていごう)に山林課長が植 林を具申したことから、大造林計画が始まりました。伊庭貞剛は、「国土の恵みを得て 事業を続けていながら、その国土を荒廃するに任せておくことは天地の大道に背く。 別子全山を青々とした姿に返さねばならない」と訴え、国土報恩の精神で大造林計画 を立案しました。 大造林計画では、多いときには年間 200 万本を超える植林を行いました。その結果、 現在、別子の山は回復し木々が生い茂っています。これが住友林業のルーツになり、 DNA として受け継がれています。持続可能な事業を行うことは、もともと住友林業の 中に根付いています。 当社は、「企業の社会的責任」という言葉がない時代からサステナビリティ(持続可能 性)を強く意識した企業運営を続けています。「公正、信用を重視し社会を利するとい う『住友の事業精神』に基づき、人と地球環境にやさしい『木』を活かし、人々の生 活に関するあらゆるサービスを通じて、持続可能で豊かな社会の実現に貢献します。」 という経営理念のもと、地球環境への配慮や、社会的に意義のある事業を実践してい ます。2.事業概要 当社グループは、木材建材事業、住宅・建築事業、海外住宅・不動産事業、その他事 業の 4 つの事業セグメントで構成しています。 また、当社はバイオマス発電事業も行っています。家屋で使われる建築木材は、家を 建て替える時には廃材となります。その廃材を発電に使用しています。 その他事業の中には山林・植林等の事業が含まれています。木を切り出し植林すると いう山林事業は当社の原点で、事業の根幹です。木材建材事業では、切り出したもの を建材や合板にし、それを製造して木質の建材・木材にして流通に乗せています。そ して、それら木材で住宅を建てているのが住宅・建築事業です。 ここ数年、当社は海外の住宅関連事業に注力しています。セグメント別に見ると、2019 年 3 月期の売上高予想では海外住宅・不動産事業全体の約 27%弱ですが、経常利益予 想で約 40%を占めています。セグメント別の業績推移でも、海外住宅・不動産事業が この数年、売上高・経常利益ともに伸びています。その他事業では、バイオマス発電 事業が伸張し業績貢献しています。 住宅・建築事業は、戸建て注文住宅の「住友林業の家」をはじめとし、賃貸住宅、リ フォーム事業、造園、オフィスビルの緑化事業を手がけています。主力の注文住宅事 業では、1 年間に約 8,000 棟を受注しています。そのうちの約 8 割は当社がオリジナル に開発したビッグフレーム(BF)構法で作っています。一般的な柱の約 5 倍に相当す る幅 560 ミリのビッグコラムを使って家を建てます。この構法では柱と柱の間隔を長 くすることができ柱の数を減らせるため、設計の自由度が増します。残りの 2 割はい わゆる昔からある在来工法をベースにしたマルチバランス構法で受注をしています。 注文住宅の魅力はお客様の要望を聞いて設計することです。住宅の営業マン、設計士、 工事担当がお客様とタッグを組んで一軒の家を作りあげるところが、当社の最大の魅 力です。若い世代はライフスタイルや好みも変化していますので、そうした方々にも 十分対応できる体制をとっている点も特徴のひとつです。 「邸宅設計プロジェクト」は、比較的こだわりのあるお客様に対して、専門の設計士・ 工事担当をつけて高い要求に応えています。「DUE CLASSO」は若い共働きの夫婦向け、 小さなお子様がいる家族向きの家をコンセプトにしています。効率的に家事ができる ように動線を配慮した設計になっています。「GRAND LIFE(グランドライフ)」は、平 屋建ての家で棟数が最近増えています。 リフォーム事業は、グループ会社の住友林業ホームテック株式会社が展開をしていま す。1981 年に建築基準法が大改正されました。1981 年以降の建物に比べて、それ以前 の建物は新しい耐震基準に満たないため、政府は建て替えや耐震強化を促しています。 1981 年以前の住宅は、多くが木造住宅です。当社は木造住宅を手がけているため、耐 震ニーズにも十分応えることができます。 当社のリフォーム事業は、「住友林業の家」のオーナー様だけではなく、それ以外の家
のお客様にも十分対応でき、それだけの技術等を持っています。また、旧家リフォー ムも実績を残しています。築 100 年を超えるような古民家を、太い梁等を残しながら 耐震性を確保しつつリフォームを行っています。 木化(もっか)事業も展開しています。木化という言葉には、建物そのものを木造化 する、もしくは建物は鉄筋コンクリート製でも内装に木を使って木質化する、そして 木の文化の伝承をしていくという意味を込めています。木材自体も技術革新で強度や 耐火性能が上がり、住宅に関しては鉄骨や鉄筋コンクリートとほぼ変わらない状態で す。国も公共建築物等木材利用促進法を 2010 年に制定し、さまざまなところに木を使 っていくことが全国的に行われています。 住宅以外も木造化・木質化の実績があります。宮城県東松島市の公立小学校や、東京 のオフィスビルを木化で請け負いし建築しました。木化事業で建てたタリーズコーヒ ー伊丹店も雰囲気の良いお店です。非住宅部分にも木を使っていくことは、木の循環 という意味では重要なことですので、今後も力を入れていきたいと思っています。 海外住宅事業は、グループ内で一番収益が伸びている分野です。海外において木造住 宅で大きなマーケットがあるのは、アメリカとオーストラリアです。当社も同地で戸 建ての住宅事業を展開しています。住宅事業は基本的には地場密着の産業です。各エ リアで気候も文化も違い、その土地で好まれている住宅があるため、「住友林業の家」 を現地にそのまま持っていくことはしていません。各地の現地企業と協力しながら事 業展開をしています。 アメリカでは、東海岸や南部のテキサス州、西海岸のシアトル等のエリアで事業展開 をしています。オーストラリアでも 4 つの州で事業展開をしています。2019 年 3 月期 は、両国で合計 9,850 戸の住宅を販売する予定です。現在、既に国内よりも多い数にな っている状況です。 各エリアで特徴のある家を建てています。ダラス(テキサス州)は夏が暑く冬は寒い ため、住宅の屋根の形状も特徴的で、熱を逃がしやすい形になっています。また、ベ ッドルームを 1 階にするなど、土地ごとに特徴のある家を建てて展開しています。 海外不動産事業では、2018 年 7 月にアメリカのクレセント社を買収しました。この会 社は賃貸住宅、商業施設を開発しています。今までは戸建て住宅分野で海外展開をし てきましたが、収益源を拡げる意味で不動産事業、賃貸住宅にも進出をしています。 成長が見込まれる東南アジアでも、現在、現地のパートナーと組んでコンドミニアム を中心にプロジェクトを進めています。タイ、インドネシア、香港、ベトナムで事業 展開しており、今後も快適な住宅を提供していきたいと考えています。 木材建材事業は、木材を建材等に加工製造して、それを流通させる事業です。当社は 取扱高では国内ナンバーワンの木材・建材商社です。戦後、海外に事務所を設置しま した。世界中から木材を調達して国内のみならず海外にも販路を広げています。 当社のルーツである国内山林や、海外植林の事業も行っています。国内については国
土の約 800 分の 1、4 万 7,977 ヘクタールの社有林を保有しています。日本の民間企業 では保有面積で第 3 位です。それから海外でも約 23 万ヘクタールのエリアを管理・保 有等をしています。環境保全をしながらも事業活動を行う 2 面性をもった事業です。 今後も新興国を中心に木材需要は増えていくと思います。環境問題等で植林木は需要 が高まっているので、しっかり管理しサステナブルに植林をして需要に応えていきた いと考えています。 インドネシアで約 16 万ヘクタールの山林を管理・保有しています。ボルネオ島の西カ リマンタン州で大規模に植林事業を行っています。インドネシアは焼畑等で森林が荒 廃している状況です。植林事業は、現地の雇用を生み収入にもなるため、インドネシ ア政府から許可も受けています。こうした事例を、当社は国際会議等の場で発表もし ています。環境面と経済面を両立させて持続可能な森林経営をしていきます。 バイオマス発電事業も手がけています。現在、稼動を開始している発電所は 4 つです。 2021 年 6 月には福岡県苅田町のバイオマス発電所が稼動予定です。神奈川県川崎市で は住宅を取り壊す際に出る廃材を利用したバイオマス発電を行っています。北海道の 紋別市や苫小牧市、青森県八戸市では林地未利用木材を活用しながら発電をしていま す。山林で木を伐採する際、林地未利用材が発生します。切り落とし、枝打ちしたも のがすべて捨てられている状態で、それらを原材料にして発電をしています。これは 山の所有者の収入にもつながっています。バイオマス発電は木材のさまざまな利用を 広めていくための重要な事業であり、今後もさらに展開をしていきたいと思っていま す。 介護事業も行っています。住友林業の介護としてスミリンフィルケア株式会社、スミ リンケアライフ株式会社の 2 社で展開しています。首都圏や神戸市を中心にデイサー ビスセンターも含めて約 30 の拠点があります。建物自体を木造で建て、木質感を出し ています。木を見て木質の中で生活することは、良い効果があるという研究もありま す。木をふんだんに使った施設を作って介護事業に取り組んでいきます。 3.2019 年 3 月期業績予想および財務状況 2011 年 3 月期から 2018 年 3 月期まで 8 期連続の増収増益を達成しています(数理差異 を除くベース)。今期、2019 年 3 月期も増収増益を予想しています。 経常利益は、数理差異を除いたもので見ています。退職給付債務や年金資産運用は金 利や株価等で大きく変動するもので、企業ではコントロールできません。数理差異を 除く企業事業の利益で見た場合、8 期連続の増収増益となっています。特にこの 9 年間 は業績が大きく伸びている状況です。 今期は 3 年間の中期経営計画の最終年度にあたります。当社はこの間、2019 年 3 月期 上期までの累計で約 2,130 億円の投資を行っています。ニュージーランドの山林購入、 アメリカのクレセント社の連結子会社化、株式会社熊谷組との業務資本提携等の投資
を行っています。 ROE は 10%以上を目標としています。2018 年 3 月期の ROE は 10.3%でした。自己資 本比率は大体 35%程度を維持しています。 4.株主還元策 当社は安定配当を基本方針としています。2019 年 3 月期の年間配当額は 1 株あたり 40 円を予想しています。 この数年、利益の向上に伴い配当額を上げています。業績の波があっても基本的には 下げない方針で配当を考え決めています。継続的かつ安定的な配当を実施します。 5.住友林業のサステナビリティ 国連でも SDGs という持続可能な 17 項目の開発目標を掲げています。ESG(環境・社 会・企業統治)という言葉が世間で定着する中、当社は従来からサステナビリティ経 営を行っています。多くの評価機関等からも評価をいただき、色々な指標で当社は選 定されています。 社会貢献活動の一つとして「まなびの森」の森林再生を 20 年間行っています。これは 100 年計画の森林再生であり、ようやく 5 分の 1 が過ぎた段階です。1996 年の台風で 大きな被害を受けた富士山麓の国有林を回復させるための植林活動をしています。ボ ランティアの方にも来ていただき、現在植林はほぼ終えて、これから育林活動に入っ ていく状況です。富士山麓はブナやケヤキ、ミズナラ等が生えています。これらの種 子を採取し、植えています。今後 80 年継続していこうと進めています。 6.トピックス 2018 年 2 月に W350 計画を発表しました。当社は 2041 年に創業 350 年を迎えます。そ の時に地上 70 階建て、高さ 350 メートルの高層ビルを木造で建てられるような技術を 開発することを目標にしています。大部分に木材を使い、一部は鉄骨も入る「木・鋼 ハイブリッド構造」です。株式会社熊谷組と提携し技術開発、構法開発を開始してい ます。 当社の筑波研究所では部材開発や構法開発を進めています。筑波研究所はバイオテク ノロジーの部署もあり、さまざまなバイオを使ってクローン技術等の研究開発も行っ ています。 2017 年 11 月に株式会社熊谷組と業務資本提携を結びました。熊谷組はビルや大型施設 の他にダムやトンネルの建築を行うゼネコンです。海外にも展開し、台湾にグループ 会社・子会社があります。台湾で一番高い高層ビル「台北 101」を建てたのも熊谷組で す。当社が持つ木造の技術と、熊谷組の大型ビルを建てる技術をあわせて、木化事業 や W350 計画を一緒に進めていこうと考えています。
リフォーム事業等では、熊谷組との協業も始まっています。中長期的なシナジー効果 として売上高 1,500 億円、営業利益 100 億円を目標としています。 7.質疑応答 Q1.海外戦略を進めるにあたり、今後どのような会社と協力をしていくのかを教えてほし い。 A1.海外の住宅に関してはこの数年間、力を入れてきました。当社が一番大切にしている とは、経営理念を共有できるかどうかです。この数年 M&A により、海外の住宅会社を 5~6 社買収していますが、1 社ごとに長い時間をかけて検討し話し合いを行っていま す。それは、経営理念を共有できるかどうかを見極める点が最大のポイントになって いるからです。今後も海外の企業と協力する時には、経営理念にポイントを置いてい くことになると思います。 Q2.戸建て住宅事業の受注が好調ですが、どのような対策を取られたのでしょうか。 A2.戸建ての注文住宅は苦戦をしていましたが、ようやく 2018 年の初め頃から受注が回復 してきました。最近、土地を持っていないお客様が増えています。その対策が若干後 手に回っていました。土地をきちんと当社で準備できる体制、不動産業者との提携等 を強化しました。土地情報を当社で取り揃えて、展示場に来たお客様にすぐに提案で きる体制にしています。また、土地から準備する場合は、建物にあまりお金を割くこ とができません。当社ではフォレスト・セレクションというプランを作り、営業をか けています。過去に当社が手がけたプランを基礎に、1,000 プランから選べる商品で、 少しでも価格を抑えた形で提案しています。これらの取り組みが功を奏して受注が回 復してきたと思っています。 Q3.消費税増税に対してどのような対策を取られていますか。また、買い時はいつでしょ うか。 A3.これは皆様が買いたい時が、買い時であろう思います。消費税は駆け込みと反動減が 出てきますので、本音では当社も税率を上げて欲しくはありません。しかし、消費税 を 10%に上げることは、ほぼ確実に実行されるだろうと思います。政府は、住宅もエ コポイントや減税を 15 年に伸ばす等の案を出しています。まだ決まっていない段階な ので、当社としては「消費税上がるので、いまが買い時です」という営業は一切して いません。お客様の状況によっては、政府の施策により、もしかしたら消費税増税後 のほうが、メリットがある場合もあります。消費税に向けて対策をしているかという ことであれば、当社は今のところ特に何もしていません。ただお客様は、かなり消費 税を意識されて動いている方が増えていると思います。政府の施策等も見ながら、皆 様もご検討されたら良いのではないかと思います。
Q4.バイオマス発電所は順調に稼動しているようですが、目標とされる発電規模はどの程 度なのでしょうか。また、目標とする発電規模にむけて発電所の稼動スケジュールは、 どのようになっているのでしょうか。 A4.中期経営計画(2017 年 3 月期~2019 年 3 月期)では、200 メガワットの発電規模を目 指すことを発表しています。現在、福岡県苅田町のプロジェクトがスタートしていま す。発電規模はおよそ 180 メガワットまでになっている状況です。現在も検討してい る案件は多くありますので、200 メガワットの発電もほぼ見えてきています。国内の山 林事業にも貢献をしますので、今後も引き続き木質バイオマス発電は増やしていきた いと考えています。