東北地方太平洋沖地震による仙台平野・石巻平野の
津波被災度と地形・土地利用との関連
小 荒 井 衛
*+中 埜 貴 元
*岡 谷 隆 基
*++Relationship between Tsunami Hazard Related to the 2011 off the Pacific Coast of Tohoku Earthquake and Geographical Condition such as Topography
and Land Use on the Sendai Plain and Ishinomaki Plain
Mamoru KOARAI*+, Takayuki NAKANO* and Takaki OKATANI*++ [Received 4 August, 2014; Accepted 5 November, 2014]
Abstract
The Geospatial Information Authority of Japan (GSI) supports victims and regions affected by the 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake, by promptly surveying and providing geospatial information such as maps and aerial photos. In particular, the “Tsunami Flood Area Overview Map” is useful for various geographical analyses of tsunami damage. This paper sum-marizes the results of analyses of the relationships between tsunami damage interpreted by aerial photos and geographic conditions such as land condition, elevation and land use. Based on our GIS-based overlay analyses of relationships between tsunami damage levels and other geographic data such as inundation depth, landform classification, elevation and land use, the following are clarified: 1) damage levels are closely related to inundation depths; 2) completely destroyed areas are located within 1 km from the coastline; 3) differences in landform and land use of coastal areas influence the damage level of the hinterland area.
Key words: tsunami damage, tsunami inundation depth, elevation, landform classification, land use キーワード:津波被害,津波浸水深,標高,地形分類,土地利用 I.は じ め に 平成 23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震 (M9.0)では,東日本太平洋沿岸の広い範囲で津 波による被害が発生した。津波被害の程度は,津 波浸水域の地形や土地利用などの地理的特質が大 きく影響していることが考えられ,地域ごとの災 害状況の違いを明確にすることが重要である。こ のような情報は,被災地の今後の災害復興計画や 地域計画を考える上での参考資料になると同時 に,今後の津波被害が想定される地域にも役立つ 情報である。
地学雑誌 Journal of Geography(Chigaku Zasshi) 124(2)211⊖226 2015 doi:10.5026/jgeography.124.211
*国土地理院
+ 現所属:茨城大学理学部 ++ 現所属:文部科学省
* Geospatial Information Authority of Japan, Tsukuba, 305-0811, Japan + Present address: Faculty of Science, Ibaraki University, Mito, 310-8512, Japan
筆者らは上記の観点から,東北地方太平洋沖地 震の津波浸水域について,空中写真判読に基づく 津波被害度分類,津波の浸水深の点データ,土 地利用情報,地形分類情報,航空レーザ測量に よる詳細地形データ(数値標高モデル;Digital Elevation Model; DEM)を地理情報システム (Geographic Information System; GIS)上で重 ね合わせ解析し,津波被害の状況と地形や土地 利用との関連性を分析した。これらの結果のう ち,仙台平野については速報的に,小荒井ほか (2011)として報告している。 一方,三陸沿岸については,岩手県久慈市から 宮城県南三陸町までの地域について,空中写真判 読に基づく津波被害度分類と津波の浸水深の点 データを重ね合わせ,主要な地域(浦)ごとに 被害と浸水深との関係や,大まかな地形との関係 を整理している(小荒井ほか, 2012; 岡谷ほか, 2013)。しかし,三陸沿岸では土地条件図が整理 されていないため,大まかな地形との関係でしか 整理しておらず,仙台平野における小荒井ほか (2011)のような,微地形・詳細標高や土地利用 との関係までは考察していない。また,被害の状 況も各浦の立地条件(湾の向き,湾の奥行,湾の 幅,遮蔽地形の存在,河川の位置など)によって さまざまに変化しており,一般化するのは難しい 状況であった(小荒井ほか, 2012)。 そこで,研究対象を地形と被害状況との関係が 比較的明瞭であると予想され,浦々ごとに個別に 検討する必要のない砂浜海岸に絞り,面的に激甚 な津波被害が発生し,土地条件図が整備されてい て,震災後の詳細地形データが取得されている仙 台平野と石巻平野に限定して,両者の津波被害の 状況を地形条件や土地利用と浸水深や海岸からの 距離との関連で比較することにした。 本稿では,小荒井ほか(2011)の続報として, 石巻平野における地理空間情報の重ね合わせ解析 の結果を加えることで,仙台平野における小荒井 ほか(2011)の予察的検討結果を検証すると同 時に,仙台平野と石巻平野における津波被害度 と津波浸水深のより定量的な解析の結果を加える ことで新知見を見いだすことができたので,その 結果を紹介する。 II.仙台平野と石巻平野の概要 宮城県の沿岸域は大きく 2 つのエリアに区分 される。気仙沼市から女川町にかけての宮城県北 部の沿岸域はおもにリアス式海岸からなり,石巻 市以南の宮城県南部の沿岸域はおもに砂浜海岸か らなる。南部の砂浜海岸のエリアは,その中間部 にリアス式海岸と島しょ部からなる松島海岸があ り,松島海岸よりも北東側の砂浜海岸のエリアが 石巻平野沿岸,南側の砂浜海岸のエリアが仙台平 野沿岸である(図 1)。この 2 つの平野の範囲が 本研究の対象範囲である。以下に両地域の概要を 記述するが,地形と土地利用の詳細は IV 章で図 2~図 7 を用いながら記述するので,ここでも図 2~図 7 を参照されたい。 仙台平野は南北方向に延びる砂浜海岸の平野で ある。具体的な範囲は,北は仙台港から南は磯浜 漁港付近までである。対象となる行政範囲は,北 から南へ仙台市宮城野区,同若林区,名取市,岩 沼市,亘理町,山元町となる。海岸線付近に海岸 線と平行な南北方向に砂州・砂堆が発達し,標高 2~ 3 m 程度の微高地となっている。砂州・砂堆 の間や背後は標高 0 ~ 1 m 程度の海岸平野・三 角州,もしくは後背低地となっている。仙台平野 では西から東に大きな河川が流入しているが,北 から七北田川,名取川,阿武隈川がある。これら の河川沿いには,自然堤防,谷底平野・氾濫平 野,旧河道が発達している。砂州・砂堆,自然堤 防などの微高地の土地利用は,森林,畑,住宅地 となっているものが多いのに対し,海岸平野・三 角州,後背低地の土地利用は,水田となっている 箇所が多い。 石巻平野は東西方向に延びる砂浜海岸の平野 である。具体的な範囲は,東は万石浦から西は 野蒜海岸までである。対象となる行政範囲は東 から西へ石巻市,東松島市,松島町である。海岸 線付近に海岸線と平行な東西方向に砂州・砂堆が 発達し,標高 2 ~ 3 m 程度の微高地となってい る。砂州・砂堆の間や背後は標高 0 ~ 1 m 程度 の海岸平野・三角州,もしくは後背低地となって
いる。石巻平野の東側では北から旧北上川が流入 しているが,この河川沿いには自然堤防,谷底平 野・氾濫平野,旧河道が発達している。海岸沿い の砂州・砂堆の土地利用はおもに,東側は工場地 帯や住宅地になっており,西側は森林になってい る。海岸平野・三角州,後背低地の土地利用は, 水田となっている箇所が多い。 III.研究方法と使用データ 研究方法と使用データについて以下に記述す る。使用データの範囲が仙台平野だけでなく,石 巻平野まで広がっている点が違っているが,ほか は小荒井ほか(2011)と同様であるので,詳細 は小荒井ほか(2011)を参照されたい。本稿で は必要最低限の記述のみ行う。なお石巻平野に ついても仙台平野と同じく,海岸線から内陸へ 7 kmまでの範囲(島しょ部を除く)を対象にし た。重ね合わせ解析に使用したデータは,以下 の通りである。 1)地形分類ポリゴンデータ 今回の解析に使用した土地条件図は,「石巻」 「松島」「仙台」「岩沼」の 4 図葉である。1971 ~ 72年度に国土地理院により作成された。現在図 面は GIS 向けにベクトルデータ化されており, 地形分類のポリゴンデータそのものを使用した。 土地条件図がない亘理町から山元町にかけては, 1961年撮影の縮尺 1/10,000 の空中写真を判読し て地形分類を行った。その範囲は,土地分類基本 調査の地形分類図「角田」(宮城県, 1986)の範 囲に該当するため,同地形分類図を参考にした (小荒井ほか, 2011)。 本研究における地形分類は,土地条件図の中分 類に従い,斜面,台地・段丘,山麓堆積地形,低 地の微高地,凹地・浅い谷,低地の一般面,頻水 地形,水部,人工地形の 9 区分としたが,低地 の微地形がどれだけ影響しているのかを検討した いため,低地の微高地,低地の一般面の 2 つの 中分類項目については小分類項目まで区分し,そ の他の地形は中分類のまま集約した。すなわち, 低地の微高地は扇状地と自然堤防・砂州・砂堆の 2つに,低地の一般面は谷底平野・氾濫平野,海 岸平野・三角州,後背低地,旧河道の 4 つに細 分した(小荒井ほか, 2011)。ただし小荒井ほか (2011)では変形地を含めていたが,本研究では 図 1 調 査 位 置 図. Fig. 1 Index map of study area.
該当箇所がないため含めなかった。 2)国土数値情報の土地利用細分メッシュデータ このデータは国土交通省国土計画局により 2006年度に作成された GIS データである。土地 利用種別は,田,その他の農用地,森林,荒地, 建物用地,幹線交通用地,その他の用地,河川地 および湖沼,海浜,海水域,ゴルフ場の 11 区分 である(小荒井ほか, 2011)。このうち,水部に あたる河川地および湖沼と海水域を 1 つにまと めて 10 区分としている。 3)LiDAR DEM データ 航空レーザ測量により計測された詳細標高デー タは,震災前のデータもあるが,地震時の地殻変 動が生じた後に津波が到達しているので,震災 後に計測された LiDAR の DEM を使用すること にした。2011 年 3 月 19 日~ 4 月 6 日に宮城県 が航空レーザ測量で計測した DEM データと, 2011年 5 月~ 6 月に国土地理院が航空レーザ測 量により計測した DEM データとを統合して使用 した(小荒井ほか, 2011)。2 時期の DEM には, 本研究の議論に影響を及ぼすような系統的なズレ はなかった。 4)津波被害状況別ポリゴンデータ 国土地理院が災害後に撮影した空中写真(オ ルソ画像)を判読して,津波の被害を 3 段階に 区分して GIS ポリゴンデータを作成した。判読 に用いた空中写真は,2011 年 3 月 12 日から 4 月 5 日にかけて撮影され,国土地理院のホーム ページで電子国土 Web システムを利用して公開 されている表示縮尺 1/2,500 のオルソ画像であ る。被害の大きい方から Rank 1 ~ 3 に区分して いる。空中写真判読に際しては,同じく空中写 真判読により被害状況を区分した日本地理学会 災害対応本部津波被災マップ作成チーム(2011) (以降,日本地理学会(2011)と略す)や国土交 通省都市・地域整備局(2011)を参考にしたが, 基本的には独自に判読基準を決めて判読した。 日本地理学会(2011)と国土交通省都市・地域 整備局(2011)は,建物のある地域のみを区分 しており,農地や森林等を区分していないが, 筆者らは建物のある地域以外も含めて全域を被 害状況に応じて 3 段階に区分した(小荒井ほか, 2011)。 Rank 1 は建物の大半が流出するなど壊滅的な 被害を受けた箇所である。建物のある地域の判読 は容易であり,災害前の空中写真と比較しなが ら,おおむね 7 割程度以上の建物が流出した場 合と概略的に定義した。森林部や農地は,もとも との土地利用が回復しがたいほどの被害を受けて いる地域と定義した(小荒井ほか, 2011)。本論 文では,Rank 1 の領域を「流出域」と呼ぶ。 Rank 2 は建物の流出は少ないものの破損が酷 く,周囲にがれきが堆積しているような範囲で ある。建物のある地域では,流出が 7 割以下の 地域から,建物は流出していないががれき等に覆 われて破損しているような地域までが含まれる。 がれきの堆積状況等から農地も含めて区分した (小荒井ほか, 2011)。本論文では,Rank 2 の領 域を「破壊域」と呼ぶ。 Rank 3 は上記以外の津波浸水範囲である。基 本的には浸水のみの被害で,建物の破壊等の被 害はなかった地域である。空中写真判読では, 浸水しているものの,がれき等の堆積は認めら れなかった範囲である。Rank 3 の最も内陸側は, 国土地理院が公表した浸水範囲(国土地理院, 2011)を原則的に採用している(小荒井ほか, 2011)。本論文では,Rank 3 の領域を「浸水域」 と呼ぶ。 5)MMS と現地調査で求めた津波浸水深 国土地理院では詳細な被災現況を記録すること を 目 的 に,車載型画像計測システム(Mobile Mapping System; MMS)による画像計測を行っ た(小荒井ほか, 2011)。仙台平野に関しては, 名取市閖上地区周辺と岩沼市仙台空港周辺で計測 を行っている(小荒井ほか, 2011)。石巻平野に ついては,野蒜海岸周辺,自衛隊松島基地周辺, 旧北上川左岸等で計測を行っている。このほか に,現地調査で建物の壁面に浸水痕が確認された 際に,測量用ポールやコンベックス等で浸水深の 計測を行っている。
IV.浸水域の地理的条件と被害状況との 重ね合わせの結果 1)仙台平野における地形分類・標高と被害状 況の重ね合わせ 仙台平野について,地形分類の結果を津波被害 状況の 3 分類,海岸線から 1 km 刻みのバッファ と重ね合わせて表示したものを図 2 に,航空レー ザによる標高データを津波被害状況の 3 分類,海 岸線から 1 km 刻みのバッファと重ね合わせて表 示したものを図 3 に示す。いずれも小荒井ほか (2011)に掲載の図を一部改変したものである。 仙台平野の地形的特徴は小荒井ほか(2011)を 参照されたい。 Rank 1 は海岸線から約 1 km の範囲に該当す る。地形は砂州・砂堆に該当し標高は高いが,壊 滅的な被害を受けており,海岸線から 1 km は標 高が高くても壊滅的な被害を受けている。例外も あるが,その 1 つは阿武隈川河口部で,Rank 1 は海岸線から 0.5 km の範囲となっている。また, 山元町は海岸線から 2 km の範囲が Rank 1 と なっている。 Rank 2 は海岸線から 2 ~ 3 km の範囲が該当 する。破壊域の範囲の海岸線からの微妙な凹凸は 標高に依存しており,おおむね標高 1 m 以下に 該当する。Rank 3 は海岸線から 4 ~ 5 km の範 囲が該当しており,標高は 2 m 以下に該当する。 このように津波被害程度は,標高との対応がよい。 地形分類でみると,谷底平野・氾濫平野では浸 水域は海岸線から約 4 km まで達しているのに対 し,海岸平野・三角州では浸水域は海岸線から約 5 kmまで達している。これは,谷底平野・氾濫 平野の方が海岸平野・三角州よりも標高が高いか らで,基本的には標高が効いているものと考えら れる。例えば同じ地形分類(海岸平野・三角州) でも,標高の差で浸水域と非浸水域に分かれる (図 2,図 3 の X 地点と Y 地点)。 2)仙台平野における土地利用と被害状況の重 ね合わせ 仙台平野の土地利用について,津波被害状況の 3分類,海岸線から 1 km 刻みのバッファと重ね合 わせて表示したものを図 4 に示す。小荒井ほか (2011)に掲載の図を一部改変したものである。 仙台平野の土地利用的特徴は小荒井ほか(2011) を参照されたい。 Rank 1 は海岸線から約 1 km の範囲が該当す るが,この場所の土地利用は森林,建物用地,そ の他の農用地が主である。阿武隈川より南側(山 元町)は,砂州・砂堆の土地利用は森林よりも畑 が広い。このような場所では,津波被害が内陸部 まで高い。 Rank 2 は海岸線から 2 ~ 3 km の範囲までが 該当するが,その場所の土地利用は田,その他の 用地(空港)である。空港では内陸まで被害の高 いエリアが張り出している。 Rank 3 は海岸線から 4 ~ 5 km の範囲が該当 するが,田は浸水しているのに対し,建物用地は 非浸水の場所が多い。例外の箇所を図 4 の X 地 点で示すが,これは標高の違いによるものであ る。 3)石巻平野における地形分類・標高と被害状 況の重ね合わせ 石巻平野について,地形分類の結果と津波被害 状況の 3 分類,海岸線から 1 km 刻みのバッファ を重ね合わせて表示したものを図 5 に,航空レー ザによる標高データを津波被害状況の 3 分類,海 岸線から 1 km 刻みのバッファと重ね合わせて表 示したものを図 6 に示す。図から読みとれる地 形的特徴は以下の通りである。 海岸線から 1 km の範囲では,砂州・砂堆が発 達している。石巻平野東部の万石浦から旧北上川 河口部にかけてと,石巻平野西部の野蒜海岸周辺 では,比較的海岸線に近いところ(海岸線から 1~ 2 km の範囲)まで山地が迫っており,石巻 平野の中央部は内陸まで(海岸線より 7 km 以上) 低地が広がっている。海岸線に平行に何本もの砂 州・砂堆が発達して微高地を形成するとともに, その間は後背低地となっている。石巻平野の中央 部では,海岸線より 5 km 程度の距離まで砂州・ 砂堆が発達しており,それより内陸側では谷底平 野・氾濫平野,自然堤防,旧河道等が発達する。 Rank 1 は海岸線から 0.5 ~ 1 km の範囲に該
図 2 仙 台 平 野 に お け る 津 波 被 害 状 況 と 地 形 分 類 と の 重 ね 合 わ せ(小 荒 井 ほ か, 2011 を 改 変). Fig. 2 Overlay of tsunami damage and landform
classi-fication on the Sendai Plain (modified Koarai et al., 2011).
図 3 仙 台 平 野 に お け る 津 波 被 害 状 況 と 航 空 レー ザ 計測による標高データとの重ね合わせ(小荒井 ほ か, 2011 を 改 変).
Fig. 3 Overlay of tsunami damage and detailed DEM by airborne LiDAR on the Sendai Plain (modified Koarai et al., 2011).
当している。ただし,石巻平野の東半分は海岸線 沿いが工場地帯となっており,家屋の流出等はあ まり見られず Rank 2 となっている。住宅地が 直接海岸に面している旧北上川河口周辺では, Rank 1となっている。工場地帯の背後の住宅地 では,所々パッチ状に Rank 1 のエリアが現れて いる。そのような場所は,石巻港が内陸側まで 掘られ,海岸線からの距離が短い場所が多い。 Rank 2と Rank 3 の境界は,海岸線から約 2 km 程度の距離となっているが,内陸側が少し標高が 高くなっている砂州・砂堆の縁や,水路(北上運 河)等が該当している。微高地の縁は標高 1 m 程度を示している。Rank 3 の範囲は,山地が海 岸線に近い東部と西部では山地の縁が該当して いるが,石巻平野の中央部では海岸線から 3 ~ 5 km程度の距離となっている。内陸側が少し標 高が高くなっている砂州・砂堆の縁が該当してお り,標高 1 m 程度である。旧北上川に沿った範 囲では海岸線から 7 km 以上奥まった後背低地 (標高 0 m 以下)まで浸水している。 4)石巻平野における土地利用と被害状況の重 ね合わせ 石巻平野の土地利用について,津波被害状況の 3分類,海岸線から 1 km 刻みのバッファと重ね 合わせて表示したものを図 7 に示す。図からわ かる土地利用的特徴を記述する。 石巻平野は東半分の海岸線付近の土地利用は, 建物用地かその他の用地(工業地帯や港湾施設) となっている。海岸線付近であってもその他の 用地は,Rank 2 のところが多く,建物用地のう ち海岸線に近い箇所が Rank 1 となっている。 Rank 2と Rank 3 との境界は,大きく土地利用 が変化している箇所は少ない。 石巻平野は西半分の海岸線付近の土地利用は森 林となっており,その背後はその他の用地(自衛 隊関連施設)か田となっている。その背後は砂 州・砂堆が何列か続いて微高地を形成している が,微高地には建物用地が,低地には田が卓越し て存在する。海岸線から 0.5 km くらいの位置ま で Rank 1 が存在するが,森林を越えたところで Rank 1から Rank 2 に下がっている。Rank 2 と
図 4 仙 台 平 野 に お け る 津 波 被 害 状 況 と 土 地 利 用 と の 重 ね 合 わ せ(小 荒 井 ほ か, 2011 を 改 変). Fig. 4 Overlay of tsunami damage and land use on the
図 5 (Fig. 5)
Rank 3の境界は,田と建物用地の境界に該当す る場合が多いが,これは低地から砂州・砂堆に 地形が変化して,標高が高くなっている箇所で もある。また,土地利用が田のままで Rank 2 か ら Rank 3 に変化している箇所もあるが,ここは ちょうど道路が走っている箇所であり,道路の盛 土による標高の高まりが被害を軽減させている。 5)津波の浸水深と津波被害との重ね合わせ結果 MMS による津波浸水深計測の精度について は,岡谷・小荒井(2011),岡谷ほか(2013)で 詳しく触れているので,本論文では紹介するにと どめる。筆者らの現地調査による津波浸水深の計 測結果との比較では,同じ浸水痕を計測している のであれば,10 cm 程度の誤差であった。津波の 浸水高については,東北地方太平洋沖地震合同調 査グループ(2011)が現地調査により計測した 結果(以下,合同調査グループの浸水高データと 略す)を Web 等で公開している。筆者らの MMS による津波浸水深の計測結果と現地調査における 津波浸水深の現地計測結果を航空レーザによる DEMを加算することで浸水高に置き換えて,合 同調査グループの浸水高データと 1 m 単位で比 図 5 石 巻 平 野 に お け る 津 波 被 害 状 況 と 地 形 分 類 と の 重 ね 合 わ せ.
Fig. 5 Overlay of tsunami damage and landform classification on the Ishinomaki Plain.
図 6 石 巻 平 野 に お け る 津 波 被 害 状 況 と 航 空 レー ザ 計 測 に よ る 標 高 デー タ と の 重 ね 合 わ せ. Fig. 6 Overlay of tsunami damage and detailed DEM by airborne LiDAR on the Ishinomaki Plain. 図 7 石 巻 平 野 に お け る 津 波 被 害 状 況 と 土 地 利 用 と の 重 ね 合 わ せ. Fig. 7 Overlay of tsunami damage and land use on the Ishinomaki Plain.
較したところ,MMS の計測結果も合同調査グ ループによる計測結果とおおむね一致していた (小荒井ほか, 2011)。 小荒井ほか(2011)は,岩沼市の仙台空港周 辺について,MMS で求めた浸水深と津波被害度 と重ね合わせ,おおむね浸水深が 4 m を越える と Rank 1 に,おおむね浸水深が 1.5 m を越える と Rank 2 になっていると報告している。 仙台平野および石巻平野全域において,MMS と現地計測で求めた浸水深について,津波被害度 Rank別に 0.5 m 単位で集計した計測点数の結果 を図 8 に示す。Rank 2 と Rank 3 の境界につい ては,浸水深 1 ~ 2 m の範囲で遷移的に変化して おり,浸水深 1.5 m を境に大きく変化している。 これは小荒井ほか(2011)とも一致している。 一方,Rank 1 と Rank 2 の境界については,浸水 深 3 ~ 4 m の範囲で遷移的に変化しており,浸水 深 3.5 m で大きく変化している。これは,小荒井 ほか(2011)が示した Rank 1 と Rank 2 の境界 浸水深約 4.0 m よりも,小さな値となっている。 6)具体的な断面における標高と浸水高と津波 被害 津波の被害状況と浸水深・地形との関連性をみ るために,仙台平野において代表的な 6 か所(断 面 A ~ F)で標高と浸水高の断面図を作成した。 断面の位置は図 2 ~図 4 に示す。MMS による浸 水深の計測と現地調査による浸水深の計測を行っ た閖上地区(断面 A),仙台空港周辺(断面 B) の断面図を図 9,図 10 に示す。MMS による浸 水深の計測は行っていないが,筆者らが現地調査 で浸水深の計測を行った箇所をとりあげて,阿武 隈川河口部(断面 C),山元町 JR 山下駅周辺(断 面 D),山元町高瀬地区周辺(断面 E),山元町 JR坂元駅周辺(断面 F)の断面図を図 11,図 12,図 13,図 14 に示す。なお,図 9 ~図 12 は 小荒井ほか(2011)からの再掲である。 標高データは航空レーザ測量の DEM による。 浸水高のデータは基本的に筆者らが計測した MMSのデータか現地調査の結果を使用している が,大半の建物が流出した Rank 1 のエリアでは 筆者らの計測したデータが少ないため,合同調査 グループの浸水高データも使用して断面図を作成 した(小荒井ほか, 2011)。 石巻平野についても,仙台平野と同様の方法で 検討した。断面を 10 か所で作成したが,代表的 なものとして,MMS による浸水深の計測と現地 調査による浸水深の計測の両方を行っている地域 として,石巻市西部の断面 5 を図 15 に,東松島 市東部の断面 6 を図 16 に示す。 V.考 察 津波被害程度と地形分類・標高・土地利用との 関連性を,津波被害のランクが変化する地点に着 目して考察する。 1)標高・土地利用と浸水深および津波被害と の関係(被害度 Rank 1 と Rank 2 の境界 に着目して) 図 9 ~図 12 から読みとれる内容は,小荒井ほ 図 8 津波被害度別の 浸水深頻度.(a)仙台平野,(b) 石 巻 平 野.
Fig. 8 Frequency of inundation depth at each tsunami damage rank. (a) Sendai Plain, (b) Ishinomaki Plain.
(a)
か(2011)に記述されている内容になるが,後 の議論で必要なため再掲する。図 9,図 10 を見 ると,閖上地区や仙台空港周辺での津波被害度 Rank 1の範囲は海岸線から約 1 km の範囲に該 当している。同範囲は砂州・砂堆等の低地の微高 地となっており,断面図で浸水深を見ると 4 m 以上の深さになっている箇所が多い。津波が標高 1~ 3 m 程度ある砂州・砂堆の微高地を通過した 後,Rank 2 に相当する標高 0 m 程度の低地の一 般面に該当する箇所になると,浸水深が急激に 減少して 2 m 程度に変化している(小荒井ほか, 2011)。 図 11 の阿武隈川河口部周辺は Rank 1 の被害 の範囲が狭く,海岸線から 0.5 km 程度しか離れ ていない集落でも建物は流出されずに残されてお り,被害度 Rank 2 となっている。そのような箇 所の浸水深は 2.5 m 程度であり,明らかに Rank 1のエリアの浸水深より浅くなっている。図 9, 図 10 を見ると標高が低くなる海岸線から 1 km くらいの位置で,図 11,図 12 を見ると標高が低 くなる海岸線から 0.5 km くらいの位置で浸水深 が下がっている。津波が砂州・砂堆等の微高地を 通過する際に,エネルギーを失って急激に浸水深 が低下している可能性が考えられる(小荒井ほか, 2011)。 阿武隈川河口左岸(図 11 に相当)で津波被害 が相対的に低かった理由に,阿武隈川自体の河口 の形状が影響していた可能性がある。阿武隈川は 河口部で大きく蛇行し,海岸線と平行に流れてい る箇所がある。図 2 を見ると,海岸線と平行な 方向に延びる自然堤防上の集落が,海岸線から 2 kmしかない場所に位置していても浸水しな かった。これらのことから,海岸線と平行方向に 延びる阿武隈川やその堤防が影響して津波の勢い を軽減させた可能性は高いと考えられる(小荒井 ほか, 2011)。 図 12 の JR 山下駅周辺では,標高自体は海岸 線から 500 m の位置で低くなっていてその地点 で浸水高も下がっているが,Rank 1 の範囲は海 岸線から 900 m の位置まできている。このこと に関しては,阿武隈川河口の北と南で地形や土地 利用の状況が違うことが,影響している可能性が ある。図 2,図 4 を見ると北側の砂州・砂堆は幅 が広く,沿岸林も幅が広い。一方南側では,幅の 狭い砂州・砂堆が数本存在し,砂州の土地利用も 森林が狭く畑地が広いという状況である。森林と 農地とでは,津波の抵抗となる粗度が明らかに違 うので,山元町で内陸まで被害が大きくなったこ との説明が可能である(小荒井ほか, 2011)。 図 13,図 14 を見ると,山元町南部は砂州・砂 堆があまり発達しておらず標高が低いため,海岸 線から 2 km まで浸水高は低下せず,ほとんど変 わらない。合同調査グループの計測結果も浸水高 が高くなっている。そのため,海岸線から 1.5 km 程度離れていても Rank 1 の被害があった。ま た,砂州・砂堆の土地利用が森林ではなく畑地が 発達しており,津波に対する地表面の粗度が大き くないことも影響している可能性がある。 石巻平野についても,同様の方法で検討してみ た。図 15 では,海岸線から 500 m 付近で地形が 砂州・砂堆から後背低地に変わり,浸水深も 3 ~ 4 m程度から 2 ~ 3 m 程度に低下し,津波被害 度も Rank 1 から 2 に下がる。標高には大きな差 は認められない。海岸線から 0.2 km の地点で標 高に大きな差が認められるが,これは盛土による 人工地形の影響である。図 16 では,海岸線から 900 m付近で地形が砂州・砂堆から海岸平野・三 角州に変わり,津波被害度も Rank 1 から 2 に下 がる。標高は内陸側が 1 m ほど低くなっている。 浸水深については不明である。このように,海岸 線沿いの微高地を津波が通過する過程で浸水高が 下がり,併せて津波被害度が低下することなど, 仙台平野で確認されたことと同じ現象が認められ る。 2)津波被害と標高および人工構造物との関係
(Rank 2 と Rank 3 の境界および Rank 3 の外縁部に着目して) がれき前線の範囲でもある Rank 2 の範囲は, 仙台平野,石巻平野ともに,海岸線から約 2 ~ 3 kmまでの範囲に該当しているところが多い。 Rank 2と 3 の境界線は標高 1 m 未満と 1 m 以上 の境界あたりに該当する。以上の結果は,小荒井
図 9 (Fig. 9) 図 13 (Fig. 13)
図 10 (Fig. 10) 図 14 (Fig. 14)
図 11 (Fig. 11) 図 15 (Fig. 15)
ほか(2011)の予察的な検討結果とほぼ同様で ある。また,図 4 を見ると仙台空港では Rank 2 と 3 の境界線が内陸に張り出しているが,これ は空港の滑走路という粗度の低い土地被覆である ことが影響した結果と考えられる(小荒井ほか, 2011)。Rank 2 の範囲の標高は人工構造物による 起伏はあるもののおおむね平らであり,標高 0 ~ 1 mの範囲に収まっているものが多い(小荒井ほ か, 2011)。浸水深を見ると 2 ~ 3 m 程度の深さ になっている箇所が多い(小荒井ほか, 2011)。 図 9 の閖上地区の断面図を見ると,Rank 2 と 3 の境界部で大きな起伏が認められるが,これは仙 台東部道路である。このような人工的な大起伏 が,津波被害の程度を大きく変える境界部となっ ている(小荒井ほか, 2011)。 仙台平野において津波遡上の末端である Rank 3の外縁部を調べると,若林区の内陸部では津波 の浸水方向に直交する深さ 2 m 以上の水路で津 波の浸水が止まっていた(小荒井ほか, 2011)。 また,岩沼市の内陸部では田と建物用地の境界 にあたる盛土の擁壁部で津波が止まっていた (小荒井ほか, 2011)。このように,津波の遡上末 図 9 断 面 A(名 取 市 閖 上 地 区)の 標 高 と 津 波 浸 水 高 の 東 西 断 面 図(小 荒 井 ほ か, 2011).
Fig. 9 Cross-section along EW direction of ground surface and tsunami flood height at profile A (Yuriage district, Natori City) (Koarai et al., 2011).
図 10 断 面 B(岩 沼 市 仙 台 空 港 周 辺)の 標 高 と 津 波 浸 水 高 の 東 西 断 面 図(小 荒 井 ほ か, 2011).
Fig. 10 Cross-section along EW direction of ground surface and tsunami flood height at profile B (around Sendai Airport, Iwanuma City). (Koarai et al., 2011).
図 11 断 面 C(岩沼 市・亘 理 町 の 阿 武 隈 川 河 口 部 周 辺)の 標 高 と 津 波 浸 水 高 の 東 西 断 面 図(小 荒 井 ほ か, 2011). Fig. 11 Cross-section along EW direction of ground surface and tsunami flood height at profile C (around the mouth of
Abukuma River, Iwanuma City and Watari Town) (Koarai et al., 2011).
図 12 断 面 D(山 元 町 の JR 山 下 駅 周 辺)の 標 高 と 津 波 浸 水 高 の 東 西 断 面 図(小 荒 井 ほ か, 2011).
Fig. 12 Cross-section along EW direction of ground surface and tsunami flood depth at profile D (around JR Yamashita Station, Yamamoto Town) (Koarai et al., 2011).
図 13 断 面 E(山 元 町 高 瀬 地 区)の 標 高 と 津 波 浸 水 高 の 東 西 断 面 図.
Fig. 13 Cross-section along EW direction of ground surface and tsunami flood depth at profile E (Takase district, Yamamoto Town).
図 14 断 面 F(山 元 町 の JR 坂 元 駅 周 辺)の 標 高 と 津 波 浸 水 高 の 東 西 断 面 図.
Fig. 14 Cross-section along EW direction of ground surface and tsunami flood depth at profile F (around JR Sakamoto Station, Yamamoto Town).
図 15 断 面 5(石 巻 市 西 部 石 巻 港 周 辺)の 標 高 と 津 波 浸 水 高 の 南 北 断 面 図.
Fig. 15 Cross-section along NS direction of ground surface and tsunami flood depth at profile 5 (around Ishinomaki Port, Ishinomaki City).
図 16 断 面 6(東 松 島 市 東 部)の 標 高 と 津 波 浸 水 高 の 南 北 断 面 図.
Fig. 16 Cross-section along NS direction of ground surface and tsunami flood depth at profile 6 (east side of Higashi-Matsushima City).
端部の浸水・非浸水を決める最終的な決定要因 は,このような人工構造物が影響しているものと 考えられる(小荒井ほか, 2011)。 石巻平野についても,同様の方法で検討してみ た。図 15 では,海岸線から 1200 m 付近に北上 運河があり,そこで標高に大きな変化がある。こ れを越えると浸水深が下がっており,被害度が Rank 2から 3 に下がる。図 16 では,海岸線か ら 2200 m 付近で地形が海岸平野・三角州から砂 州・砂堆に変わり,標高に 1 m 程度の大きな変 化があるが,そこで浸水深が下がっており,被害 度が Rank 2 から 3 に下がる。このように,内陸 側の微高地の手前や人工改変地により標高が急激 に変化するところで被害が軽減するなど,仙台平 野で確認されたことと同じ現象が認められる。 石巻平野において,津波遡上の末端である Rank 3の外縁部がどうなっていたかを調べた。 場所によって違いがあるが,海岸線から 3 ~ 5 km程度の距離のところが外縁部になっている。 標高 1 m 前後の地点が境界にはなっているが, 海岸線から 3 km 以内であれば標高 1 m を越えて いても浸水している場所が多く,海岸線から 3.5 km以上離れていれば標高 1 m を越えている と浸水していない場所が多い。浸水域の外縁部は 標高差が 1 m 程度ある微高地の縁にあたってい る場合が多い。 3)津波による建物流出と浸水深との関係 建物の流出が激しい Rank 1 の流出域の範囲で は,浸水深がおおむね 3 ~ 4 m を越えていると いう結果であったが,その理由について考察して みる。建物の流失には建物の単位断面積にかかる 津波の力が効いてくるので,津波の物理量として は浸水深と流速の 2 つが関連すると考えられる。 今回の解析については流速は不明のため,浸水深 のみで検討する。今回の現地調査では Rank 1 の 範囲にも数軒の建物は流出されずに残っていた が,これらの建物はいずれも大きな建物か,建物 は大きくなくても基礎がやや高い位置にある建物 で,津波の痕跡はいずれも 1 階部分に残されて いた。ちょうど 3 ~ 4 m という浸水深は通常の 建物だと 1 階の天井まで没水する深さであり,1 階の天井まで没水すると木造の建物の場合には浮 力が働いて流されやすくなるものと推定される。 したがって,Rank 1 の範囲では建物の大きさや 立地の土台高の関係で天井まで浸水しなかった建 物の一部が流出しなかったことで,Rank 1 の範 囲の 3 ~ 4 m という浸水高のボーダーラインが 説明可能と考えられる。 4)防災の視点から考える沿岸の土地利用のあ り方 Rank 1 の被害状況と分布を考えると,海岸線 からの距離が近ければ,その場所が砂州・砂堆等 の微高地で標高がある程度高くても家屋の流出等 の壊滅的な被害を受けていた。ただし,砂州・砂 堆等の微高地が後背地の浸水高の低下をもたらす ため,標高や幅の大きな砂州・砂堆の背後の低地 や森林が卓越する砂州・砂堆の背後の低地は,そ うでない地域の背後と比べて津波被害の程度がや や小さかった。以上のような結果を踏まえて,防 災の視点から沿岸の砂州・砂堆の土地利用をどう するかを考えてみる。東日本大震災と同様の津波 が来た場合の想定で,住宅地を Rank 1 のような 海岸線から 1 km 以内の範囲から離すことで壊滅 的被害は減らすことが可能である。加えて砂州・ 砂堆をより高く盛土して,その場所を森林等の津 波に対して抵抗力の高い土地利用にすることで, 内陸部の被害軽減をさらに図ることが可能であ る。その際には,水路や宅地盛土等の内陸の微小 な高低差を活用することで,水田と比べて建物用 地の被害をより軽減させることも視野に入れるべ きである。 VI.ま と め 仙台平野と石巻平野において,2011 年東北地 方太平洋沖地震による津波被害の状況を写真判読 した結果と MMS により計測した津波浸水深につ いて,既存の地形分類情報や土地利用情報等と GISを用いてのお互いの関連性の解析を行った。 その結果,小荒井ほか(2011)による予察的成 果も含めて整理すると,建物がほぼ流出するよう な壊滅的な被害域(流出域)については,浸水深 がおおよそ 3 ~ 4 m 以上と浸水深が大きく影響
しており,ほぼ海岸線から約 1 ~ 1.5 km までの 範囲に限定され,標高よりは海岸線からの距離と の関連性が高いと予想される結果であった。一 方,がれきで覆われるような建物等の破壊が認め られる地域(破壊域)は,海岸線から 2 ~ 3 km の範囲で標高 1 m 以下,浸水深は 1.5 m 以上で あった。浸水が認められる地域(浸水域)は,海 岸線から 3 ~ 5 km の範囲で標高 2 m 以下,また は標高差が 1 m 程度ある地点という結果で,お おむね標高で決まる結果であった。ただし,その 標高は地形種によって決まっており,標高の差が 大きくなる地形種の境界が重要である。また,浸 水域と非浸水域の境界部は,小荒井ほか(2011) が予察的に指摘しているように,海岸線と平行方 向に延びる水路の存在や,田と住宅地の境界にあ たる盛土の擁壁部など,人工構造物が影響してい るという結果であった。以上のように,小荒井ほ か(2011)の予察的検討結果を踏まえた,仙台 平野に関する追加の検討,および石巻平野も含め たあらたな検討によって,津波被害度の理解に資 する成果を得ることができた。 海岸線からの距離が近ければ,標高がある程度 高くても家屋の流出等の壊滅的な被害を受けてい るが,砂州・砂堆等の微高地が後背地の浸水高の 低下をもたらすため,標高の高い砂州・砂堆の背 後の低地や森林が卓越する砂州・砂堆の背後の低 地は,津波被害の程度がやや小さかった。砂州・ 砂堆の標高や土地利用が内陸の被害の程度に影響 しているので,地形や土地利用から津波に対して より危険な場所をあらかじめ知ることができると 考えられる。津波被害域の地理的特徴を知るに は,詳細標高データ,地形分類,土地利用などの 地理空間情報が有用である。 謝 辞 本研究の実施にあたっては,科学研究費補助金(課 題番号:24240114;研究代表者:鈴木康弘名古屋大学 教授)の予算を使用している。また,石巻平野の解析 の一部は,京都大学防災研究所の中居楓子さんに手 伝っていただいた。ここに記して感謝申し上げます。 文 献 小荒井 衛・岡谷隆基・中埜貴元・神谷 泉(2011): 東日本大震災における津波浸水域の地理的特徴.国 土地理院時報,122,97-111.[Koarai, M., Okatani, T., Nakano, T. and Kamiya, I. (2011): Geographic characteristics of tsunami flooded area by the Great East Japan Earthquake. Journal of the Geo-spatial Information Authority of Japan, 122, 97-111. (in Japanese)]
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岡谷隆基・小荒井 衛(2011): Mobile Mapping Sys-tem による平成 23 年東北地方太平洋沖地震に伴う津 波浸水高の計測.日本写真測量学会平成 23 年度秋季 学術講演会発表論文集,1-2.[Okatani, T. and Ko-arai, M. (2011): Measurement of tsunami flood height by the 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake using Mobile Mapping System.
Pro-ceedings of the 2011 Autumn Conference of the Jap-anese Association of Photogrammetry and Remote Sensing, 1-2. (in Japanese)*]
岡谷隆基・小荒井 衛・中埜貴元(2013): 津波被害を 車で把握—360度撮影.画像ラボ,24(11),33-38. [Okatani, T., Koarai, M. and Nakano, T. (2013):
Grasp of the tsunami damage using 360-degree photography of a vehicle loading camera. Image Laboratory, 24(11), 33-38. (in Japanese)*]
東北地方太平洋沖地震津波合同調査グループ(2011): 東北地方太平洋沖地震津波情報.[The 2011 Tohoku Earthquake Tsunami Joint Survey (TTJS) Group (2011): The 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake Ysunami Information. (in Japanese with English abstract)]
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