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平成26年度事例問題案(GⅠ)IJ-1

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Academic year: 2021

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[Ⅳ]「事例」試験問題解答のポイント

事例の試験では、繊維製品の品質・性能に関する消費者苦情の発生を未然に防止するための 応用能力の有無を問われている。4つの設問からなり、苦情を解決するための道筋をヒントも 交えて問う構成としているが、設問の問いかけに合わないような解答や、解答内容に具体性の ないものはその設問に答えたことにはならない。また、設問には番号が記入されているが、そ の番号通りに書いていない解答や記述式にもかかわらず単語の羅列で文章になっていない場合 も減点の対象となる。もちろん、誤字、脱字、専門用語の間違いなども同様であり、濃い鉛筆 ではっきりとした字を書くことや、他人がみても読みやすいように書くことも求められている。 問1 【解答のポイントと配点】 コール天などのパイル生地は、シャリングしたパイルが密集しているため、一見すると 厚さもあり生地が強く見られるが、織物設計や加工条件によって地組織の基布の引裂強さ など弱いものがある。パンツ素材としてはシャツなどより、生地の強さが大きいことが要 求される。スリムなパンツなので着用時に、ポケットに無理に財布や携帯電話を出し入れ すると縫目に強い力が掛かり、損傷を起こすことが考えられる。消費者がどのような着用 をしたか状況を知ることが原因究明に重要である。 また、破れの原因として生地の強さの低下が考えられる。綿繊維は、酸性状態の環境で 長時間保管されると脆化を起こし、生地の強さ低下につながることがあり、硫化染料を用 いた場合は、そのような現象になりやすい。 次に、コール天は毛羽に方向性があり、手で撫でると毛羽が倒れる方向と逆立つ方向で、 光沢差(色差)が起こる。有毛素材によく見られる特徴で、その現象が認識できているか がポイントである。 これらの事故は綿パイル品によく見られるもので、それぞれの具体的な原因並びに改善 を問うている。 なお、この解答のポイントは代表例であり、これ以外でも的確な内容もあり得る。 設問1.(24点) (1)苦情品について観察すべき事項(解答2つ) ①素材や縫製に問題があったのか、消費者の取扱いに問題があったのかを確認するために、 苦情現象はポケット縫い付け部以外にないか、他の部分で生地が薄くなっている部位や縫 い糸が切れているところはないかを観察する。 ②素材が弱くて破れたのか、消費者の取扱いに問題があったのかを確認するために、損傷は たて糸だけが切断しているか、よこ糸には損傷はないのか、損傷の状態は引きちぎられた ような状態か、鋭利なもので切られた状態かを観察する。 ③なぜポケットが白っぽく見えたのかを確認するために、苦情が発生している部位の生地と 発生していない部位の生地の織組織、厚さ、風合いや毛並みの方向性、色合いに違いがな

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いかを観察する。 (2)消費者に聞き取るべき事項(解答2つ) ①1回目の着用までに問題はなかったかを確認するために、購入時、全体をよく見て買った か、試着をしたか、サイズは合っていたかを聞き取る。 ②着用時にどのようにして破れたか、毛乱れが起こる状況があったかを確認するために、ス ポーツなど激しい運動をしなかったか、強く擦れたり縫目に負荷が掛かるような動きはな かったか、ポケット部が水や汗で濡れることがなかったかを聞き取る。 ③着用時、ポケット口に強い力が掛かることがなかったかを確認するために、ポケットに財 布や携帯電話などを出し入れしていたかを聞き取る。また、無理な出し入れはなかったか、 財布の大きさや携帯電話の形状を聞き取る。 ④破れの原因が経時劣化による生地強さの低下であるかを確認するために、購入してからど のように保管していたかを聞き取る。とくに、保管場所の温湿度の環境や置き方を聞く。 (3)アパレルメーカーに調査すべき事項(解答2つ) ①パンツに向いている生地設計であったかを確認するために、生地の規格(組織、厚さ、目 付など)や、生地強さデータ(引張強さ、引裂強さ)を調査する。 ②染料や染色加工条件の影響で生地の強さが低下していないかを確認するために、染色条件 (染料の種類、染色方法、仕上げ加工)を調査する。 ③縫製加工面で損傷を起こすようなことがなかったかを確認するために、製品規格(仕上が り寸法、縫製仕様)を調査する。 ④ポケットが白く見えた原因を確認するために、縫製時に生地(反物)をどのように管理し て用いたかを調査する。また、生地方向性のマーキングをしたか、一着の縫製パーツは一 反取りしたか、染色ロットの管理はどのようにしていたか、調査する。 設問2.(36点) (1)破れが発生した原因における生産工程の要因(解答2つ) ①織密度が粗い、糸の撚りが甘い、繊維長の短い綿花の使用などの要因で、パンツとしての 生地の強さ(引張、引裂)が不足していた。 ②過度なシルケット加工やバイオ加工などで生地の強さが低下し、パンツとしての生地の強 さ(引張、引裂)が不足していた。 ③硫化染料を用いた染色でソーピング不足により、残留していた硫化ナトリウムが時間の経 過で硫酸イオンから硫酸となり、綿繊維の劣化を招いた。 (2)破れが発生した原因における消費者の取扱いの要因(解答2つ) ①ポケットに大きな財布などを無理に出し入れしたため、縫目の端に強い力が掛かり破れに 至った。 ②着用時に誤ってポケット口を何かに引っ掛けたため、縫目に強い力が掛かり地糸が切れて 破れた。 ③サイズが小さいためポケット口にゆとりがなく、物の出し入れでポケット口の縫目に大き

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な負荷が掛かったため、タテ糸が切れて破れた。細身のシルエットなので、ポケットへの 出し入れで縫目に負荷が掛かりやすかった。 ④パンツを高温高湿なクローゼットの中に1年間保管したために、染料の種類や染色加工条 件によってパンツが酸性状態の環境になり、綿糸の脆化が促進され破れやすくなった。 (3)白っぽく見えた原因における生産工程の要因(解答1つ) ①パイル生地の方向がポケット部と本体部で上下反対であったため光沢(色差)に違いが起 こり、白っぽく見えた。(ポケットは順目、身頃は逆目) ②本体とポケットの生地の染色ロット差により黒色の濃淡色差があり、ポケットが白っぽく 見えた。 ③染色加工時に中希やエンディングなどで色ムラが発生し、白っぽく見える部分をポケット に縫い付けた。反物検査が十分でなかったため、色ブレに気付かないまま製品化した。 (4)白っぽく見えた原因における消費者の要因(解答1つ) ①着用時、ポケット部に摩擦や圧着を受けたことで生地表面の毛羽(パイル)の方向性に乱 れが生じて白っぽく見えた。 ②ポケット部に雨や水滴が付着して毛羽(パイル)が吸水し、綿繊維が膨潤して毛羽の方向 性に乱れが生じて白っぽく見えた。 設問3.(12点) (1)破れた現象を確認するための試験方法(解答1つ) ①苦情品と新品共に、生地の引張強さ、引裂強さを JIS L 1096「織物及び編物の生地試験方 法」に基づき測定し、比較する。 苦情品は、損傷部位と未損傷部位の強さも試験し、比較も行う。 ②ルーペや拡大鏡を使用し、破損した部位の糸の状態や織構造の変化を観察する。 ③苦情品の pH を測定し、酸性、アルカリ性を調査する。酸性であれば、綿繊維の脆化の可能 性が高い。 (2)白っぽく見えた現象を確認するための試験方法(解答1つ) ①生地2枚を、たてよこ並びに上下それぞれ方向を変えて縫い合わせ、室内、屋外で色差や 光沢差を観察し、事故品の現象と比較する。 ②本体やポケット部分の毛並みの方向性を手で撫でて検査し、方向性に違いがあるか、違い があれば色差や光沢差がどうであるかを新品、事故品で観察する。 ③生地表面に水を滴下し、濡れた部分が乾燥後に白く変色して見えるか JIS L 0853「水滴下 に対する染色堅ろう度試験方法」を準用して試験する。 ④生地表面を摩擦することで毛羽の方向性が乱れ白く変色して見えるか、JIS L 1096「織物 及び編物の生地試験方法」摩耗強さ及び摩擦変色性 E 法(マーチンデール法)を準用し、 摩擦回数による変色の度合いを目視により判定する。 設問4.(28点) (1)テキスタイルメーカー(生地・染色加工)での対策(解答2つ)

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①糸の打ち込み本数や目付を増やし、パンツとして十分な強さのある生地を用いる。 ②地組織に化学繊維(ポリエステルなど)を混入して、生地の強さを上げる。 ③シルケット加工やバイオ加工を行う場合、加工前と加工後の生地の強さを比較し、パンツ として十分な強さが確保された生地を用いる。 ④綿繊維の脆化が起こりやすい硫化染料の使用を避け、脆化が起こりにくい反応染料や直接 染料で染色する。 (2)アパレルメーカーでの対策(解答2つ) ①ポケット縫い付け部を補強する。 強い力が掛かっても破れないように、力布やテープを当てる。 ②ポケット口の寸法を広くし、財布などの出し入れがしやすくする。 製品全体に寸法ゆとりを持たせたデザインにしたり、ポリウレタン弾性糸などを用いた伸 縮性のある素材を選定し、着用で掛かる負荷を軽減する。 ③コール天などのデリケートな製品は激しい運動や無理な着用を避けていただき、毛羽の乱 れが起こらないよう取扱いでの注意を情報提供する。 ④パイル生地の毛並み方向性を一方向に合わせて縫製する。 一般には逆目に生地取りし、白っぽく見えるのを防ぐ。最終検品で、方向性の一致を確認 する。 ⑤縫製時には染色同一ロットから裁断した生地を用いる。 最終検品で、パーツ別に色差がないかを確認して出荷する。 問2 【解答のポイントと配点】 この問題は、最近非常に多くの消費者(男女とも)が着用しているダウン入りコートに生 じた課題の再発防止を図ることを目的とした出題である。消費者の衣服に対する使い方、ク リーニングに出す前の確認、クリーニング業者の受け入れ時、および最終工程での検品など、 それぞれ各工程でなすべき事項を解答者に理解させることを目的としている。問題中にヒン トとなる状況を入れることにより、解答者が答えやすくし、苦情の原因から再発防止に至る までの解答内容を求めている。 なお、解答のポイントは代表的な例であり、これ以外でも的確な内容もありうる。 設問1、(24点) (1)苦情品について観察すべき事項(解答2つ) ①着用中にどの部位に発生したかを確認するために、尻、背中、袖の各部分以外にも同じよ うな現象がみられるかどうか観察する。 ②白い繊維状のものが何であるかを明らかにするために顕微鏡観察を行う。 ③白い繊維状のものがどの段階で出現したのかを確認するために、表地のどの箇所から出現 しているか(縫い合せ部分の縫い目付近か、キルティング部分か、表地の隙間からか)を

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観察する。 (2)消費者から聞きとるべき事項(解答2つ) ①購入した時点において縫い糸、表地が損傷していたかどうかを明らかにするために、はじ めて着用する前に縫い糸、表地が損傷していたかどうかを聴取する。 ②苦情現象が着用した際の状態と関連し発生したのかを確認するために、消費者の体格を教 えてもらい、衣服のサイズと適合しているかを聴取する。 ③通勤途上ではコートはいろいろな履歴を受ける。たとえば、シートに座る、立つことによ るコートの厚みの変化により、あるいは他のお客との衣服とのすれあるいは摩擦などによ り、中わたが移動する、あるいはいろいろなものに引っかかったり、接触して縫い目が切 断し、その針跡から中わたが出現することがあるために、電車内での混み具合など通勤時 の着用環境を詳しく聴取する。 ④通勤途中で付着したよごれ、損傷などの有無と程度あるいは白い繊維状物質の出現がクリ ーニングにより生じたそれらと区別するためにクリーニングに出す前、およびクリーニン グ完了し、受領した時点で確認したかを聴取する。 (3)クリーニング業者に対して調査すべき事項(解答2つ) ①クリーニング前および完了後にそれぞれ、同様の現象(白い繊維状の出現)の有無を確認 するために状況を聴取する。 ②表地のキルティング部分の縫い糸の損傷を避けるためにネットなどを使用し、他の衣服と 直接、接しないように配慮して洗濯したか聴取する。 ③クリーニング条件が表地の布面に損傷を与え、白い繊維状の吹き出しに影響を与えたかど うかを確認するために、使用溶剤、助剤、薬品等および洗濯条件(温度、時間など)等を 聴取する。 ④タンブラーの使用条件により、中わたが吹き出すことがあるために、タンブラー乾燥を行 ったか、その場合の条件(形態:裏返してか、ネットに入れてか、回数:複数回タンブラ ー乾燥か、単独の乾燥か、他の衣類と混載の乾燥か)などについて聴取する。 設問2.(32点) (1)発生している現象(解答1つ) 満員電車の通勤で衣服に物理的な力が作用して、ダウンが移動するとともに、縫合部の 縫い目部分が開くか、 縫合部・キルティング部分の針穴が拡大したか、縫い糸が切れ、針 穴が露出したか、または 表地の通気性が元々大きいか 表地に摩耗で隙間が出来たかのい ずれかの現象の上に、クリーニングでの機械的作用により、それらが拡大し、「中わたが吹 き出した」という現象が起きている。 (2)原因 (1)消費者の着用・取扱い段階における原因(解答1つ) ①サイズと消費者の体格がマッチしていなかったにもかかわらず、無理に着用したために表 地の動きが大きくなり、中わたが激しく移動し、表地の動きに誘発されて出現した。

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②通勤途中でコートが不用意に何かに引っかかったり、接触したために縫い目が切断し、そ の針跡から中わたが出現した。 ③通勤途上ではシートに座ったり立つことによるコートの厚みの変化により、あるいは他の お客との衣服とのすれ、あるいは摩擦などのために中わたが移動して表地を通過して出現 した。 (2)商業クリーニング段階における原因(解答1つ) ①他の物といっしょに洗いを行ったため、繰り返し接触により 当該衣服の縫い糸を切断させ、 その針跡(針穴)から中わたが出現してきた。 ②乾燥工程でタンブラー乾燥をしたため、他の洗濯衣料と接触して縫い目の滑脱や針穴の拡 大が起こり、中わたが出現した。 ③乾燥工程でタンブラー乾燥をしたため、衣服が乾燥ドラムと繰り返し衝突した衝撃で、フ ェザーが表地を突き破り、或は縫い目部分等を貫通し、飛び出した。 (3) アパレルの企画・生産段階における原因(解答1つ) ①縫製時の上糸および下糸の張力の設定が不十分で、表地にシームパッカリングが発生し、 ミシン針が通過する針穴が大きくなり、その穴から中わたが出現してきた。 ②キルティングあるいは縫製時に用いられた針が太く、(わずかに)針穴が開いていた。 ③羽毛(特にダウン)のサイズに対応した表地の織密度でなかった(通気性が大きかった)た めに 表地のすき間から 羽毛が吹き出した。 設問3.(12点) 各段階で述べた原因を確認するための試験方法(解答2つ) ①実際のダウン入りコートの中わたの出現程度を把握するために、「JIS L 1076 織物及び編 物のピリング試験方法・・A法」により、表地・裏地を組み合わせて袋を作り、その中へ 中わたを入れた試料を作成し、ICI 形試験機の回転箱に入れ、回転させた後に中わたの出現 (吹き出し)状況を観察し、その結果を評価する。 ②中わたが通過しやすい生地かどうかを把握するために「JIS L 1096 織物及び編物の生地 試験方法 8.26 通気性A法(フラジール形法)」で試験を行い、その結果を評価する。 ③同一ロットの新品をタンブラー乾燥機(40℃、回転 50rpm、運転時間 1 時間)で処理し、羽 毛の吹き出しの有無(程度)を確認する。【注】乾燥条件は日本羽毛製品協同組合法による。 ④表地の縫い目部分の滑脱抵抗力試験を行ない、どの程度の荷重で滑脱が起こるか確認する (JIS L 1096 縫目滑脱 B 法の適用)。 ⑤同一ロットの新品を使い、キルティング部分、及び縫い合わせ部分の縫い糸を張力がかか らないように細心の注意を払いながら、数ヶ所切断し、針穴のサイズを測定する。 また、別の部分を生地ごと切断し、中に用いられている羽毛(ダウン、フェザー)を取り 出し、それらのサイズを測定する。針穴のサイズと羽毛のサイズの比較により、羽毛の吹 き出しの可能性を確認する。 設問4.(32点)

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(1)企画・縫製・表示面からの対策(解答2つ) ①過度の針跡が残らないために縫製時のミシン針の選定において、針番手を下げる(細い針 を選択する)、先端がボールポイント、もしくは細身のミシン針を選択するよう、指示する。 ②縫製時の上糸、下糸の張力が過度に強いとミシン針が通過した(貫入した)部分の跡が大 きくなるので、適切な張力を設定する。 ③取扱い注意事項として「体格に適合したサイズの衣服を選択する」「いろいろなものに触れ る、引っかかると縫い糸が切断する恐れがあります。」「羽毛が飛び出す恐れがあるので、 過度のタンブラー乾燥はお避け下さい」など消費者へアドバイスを行うために付記事項と してタグに記載する。 ④中わたのみを別の袋に収納する(ダウンパック)、或いは表地・裏地と中わたの間に不織布 を配置するなど、羽毛が吹き出さない企画に変更する。 (2)素材・加工面からの対策(解答2つ) ①表地から中わたが出現しないよう、カレンダー加工(シレ―加工)、コーティングあるいは ラミネート等を行ない、通気性を小さくする。 ②縫い目から出現しやすいネックフェザー、未熟フェザーなどが含まれないように、中わた の品質を検討・選択する。 ③ファイバーの混入量が多いと表地に突き刺さりやすくなり、表地あるいは針穴から出現し やすくなるのでファイバーの混入量について検討する。 ④ダウンを不織布などの袋に包み(ダウンパック)、ダウンと表地の間にもう1枚布を加えて、 ダウンの抜けを防ぐ。 問3 【解答のポイントと配点】 この問題は、紺色のブルゾンを購入した消費者が家庭洗濯を数回行った後、金属製のスライド ファスナーと生地が接触している部分がピンクがかった色に変色したこと、さらに変色部分を シミだと思い酸素系漂白剤に長時間浸け置きしたら、変色部分が脆化し破れを生じたと言う、 変色と脆化の2つの現象の原因と対策を問うものである。 ピンクがかった色に変色したのは、物理的な汚染ではなく、金属と反応染料の化学変化によ り変色したのであり、破れについては、綿素材に付着した金属が酸素系漂白剤により酸化が活 性化され脆化した、という内容を要望している。 なお、解答のポイントは代表例であり、これ以外でも的確な内容もありうる。 設問1.(24点) (1)苦情品について観察すべき事項(解答2つ) ①ピンクがかった色に変わったのは金属製のスライドファスナーの影響なのかを確認するた めに、ファスナーに接触した部分だけが変色しているのか、他に変色している部分はない かを観察する。

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②生地が裂けているのは変色部分と酸素系漂白剤に関係があるのか確認するために、変色し ていない部分で裂けているところはないか観察する。 ③ピンクがかった色にかわったのは汚れが付着しているのか、化学的に変色したのかを確認 するために、生地の表側だけか裏まで変色しているかを観察する。 (2)消費者から聞き取るべき事項(解答2つ) ①洗濯時にどのようにして変色したのかを確認するために、洗濯後濡れた状態でファスナー と生地が接触したまま、長時間放置されていなかったかを聞き取る。 ②金属製のスライドファスナーが汗によってイオン化され反応染料が変色したかを確認する ために、着用時、多量の汗をかかなかったか、また、汗をかいた部分と金属ファスナーが 接触していなかったか聞き取る。 ③金属製スライドファスナー付近の変色部分が酸素系漂白剤の影響で脆化したかを確認する ために、酸素系漂白剤の漬け置き条件の濃度、時間、温度を聞き取る。 (3)アパレルメーカーに調査すべき事項(解答2つ) ①変色や破れの原因が金属製スライドファスナーの影響なのかを確認するために、金属製の スライドファスナーの材質を調査する。 ②使用されている反応染料が金属イオンに対して変色し易いのかどうかを確認するために、 染料の種属、染料名、化学構造等を調査する。 ③消費者の取り扱いミスでこのような苦情が発生したのか製品自体の欠陥なのかを確認する ために、この苦情品以外に同様の苦情は発生しているのかどうかを調査する。 設問2.(32点) (1)-1 金属製スライドファスナーと生地との接触部分がピンクがかった色に変わった現象に 対する原因(解答1つ) ①汗の中のヒスチジンが金属製スライドファスナーをイオン化し、反応染料と錯結合してピ ンクがかった色に変色した。 ②雨に濡れた(酸性雨)まま長時間放置、または洗濯後湿潤状態で放置している間に金属製 スライドファスナーをイオン化し、反応染料と錯結合してピンクがかった色に変色した。 (1)-2 漂白剤に漬け置きしたところピンクがかった部分が破れを生じた現象に対する原因 (解答1つ) ①酸素系漂白剤に一昼夜、漬け置きした為に、変色部分の金属イオンと酸素系漂白剤が反応 し、漂白剤の酸化作用を増進させ、綿繊維が脆化して破れた。 ②酸素系漂白剤を多量に使用し過ぎた。または高温処理した為、反応が活性化され綿繊維が 脆化して破れた。 (2)消費者がどのような取り扱いをして苦情現象が発生したかに対する原因(解答2つ) ①着用中、汗を多量にかいたが、すぐに洗濯をせずブルゾンを丸めたまま放置したために汗 により金属がイオン化し、反応染料と錯結合して変色した。 ②家庭洗濯して脱水後、干すまでに長時間放置していたため、金属イオンが反応染料と錯結

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合して変色した。 ③変色部分は金属が残留していたため、酸素系漂白剤に長時間浸け置きし、酸化力が活性化 したことが破れの原因となった。 ④変色部分をシミと勘違いして、酸素系漂白剤に一昼夜漬け置きしたため、破れが生じた。 設問3.(12点) (1)金属製スライドファスナーと生地との接触部分がピンクがかった色に変わった現象に対 する試験方法(解答1つ) ①金属製スライドファスナーの材質を確認(蛍光X線分析)し、銅成分が確認されればイオ ン化が早く変色し易い。 ②変色していない生地に金属製スライドファスナー及び 10 円硬貨を挟み、人口汗液を垂らし 1日放置し、変色の有無を目視で確認する。 (2)ピンクがかった色に変色した部分が破れた現象に対する試験方法(解答1つ) ①酸素系漂白剤との反応で破れたのかを確認するため、変色部分を蛍光X線分析で金属が検 出されるかどうか試験する。 ②新品のブルゾンの生地に 10 円硬貨を挟み汗液に濡らし1日放置し、変色部分を酸素系漂白 剤に漬け置きした場合と合成洗剤に漬け置きした場合の比較試験を行い、乾燥後どちらが 脆化しているか手で揉んでみる。 設問4.(32点) (1)金属製スライドファスナーと生地(反応染め)との接触部分の変色を防止するための対 策(解答2つ) ①金属製ファスナーをプラスチック製に変更する。 ②金属製ファスナーの表面に樹脂コーティングをする。 ③金属イオンに耐える反応染料を選択する。 ④分散染料等で染色するポリエステル素材に変更する。 (2)変色した部分の生地の破れを防止するための対策(解答2つ) ①金属製の付属、装飾品を使用の際は酸素系漂白剤を使用禁止のタグを付ける。 ②金属製の付属、装飾品を使用の際は、化学作用を受けにくい合成繊維を使用する。 ③色の変わった部分はシミなのか、変色なのか確認し、変色なら漂白剤は使わない。 ④反応染料使用の際、金属イオン封鎖剤を入れる。

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