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年間の建物火災件間の焼損床面積(千m2)年間の建物火災件間の焼損床面積(千m2)火災件数で年間約 1.4% 焼損床面積で.8% の減少傾向で推移してきた それらが 最近の 1 年では グラフ2に建物火災件数と焼損床面積の推移を示すように減少率が増大している 1 年間の数値の近似線から読み取った減少率

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シェア "年間の建物火災件間の焼損床面積(千m2)年間の建物火災件間の焼損床面積(千m2)火災件数で年間約 1.4% 焼損床面積で.8% の減少傾向で推移してきた それらが 最近の 1 年では グラフ2に建物火災件数と焼損床面積の推移を示すように減少率が増大している 1 年間の数値の近似線から読み取った減少率"

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1 /15 最近、火災の様相が急激に変化しており、それに対応して消火活動も変化している。 これらを”統計的な面から”捉え、今後の消防活動について考えてみる。

「最近の火災の傾向と消防活動」

2016.11/18 北村 芳嗣 はじめに 火災の原因を見ると「マッチ」を発火源とする火災が激減し、その減少傾向に合わせて、 国内のマッチ製造業者の多くも転業している。「火災」が時代を反映する鏡のように、投影さ れる実像となって表れている。「火災」は身近にありながら、日常的にはさほど意識すること なく見過ごされることが多く、それ故に、火災を扱う消防機関も火災の変化にあまり注意を 払うことなく済ましていることが多い。それは、火災が時代を反映し、時代の推移により火 災の持つ態様が変化し、その変化に適応して消防活動の仕組みも柔軟に変化させてきたこと から、あまり意識することなく易々と受け入れられている所以と思われる。 消防活動の変化は、火災に対応して変化し、その対応に応じて、職員の活動能力・ポンプ 車等の仕様・資機材等を変容させている。従来の放水活動が主体の作業環境から、人命救助、 トータル損害の軽減など多様性を包含した指揮統制された組織活動へと変質してきた。しか し、近年、火災件数等の急激な変化にあって、その特徴を捉え検討する必要に迫られている ように感じる。 ここで、最近の「火災の変化」を統計から取り上げ、都市構造の高層化・深層化などの影 響を顕在化させ、その上で消防活動がどのように変化しているか、さらに、実際の火災現場 を踏まえた事象についてもあわせて検討して見た。なお、統計は、消防白書や火災年報とあ わせて、東京消防庁の統計を利用して最近の消防活動を捉えることとした。 東京消防庁の管轄地域(以下は「東京」と言う)は、丸の内消防署のように居住者人口がほ とんどいない“ほぼビル街”だけの管内から、奥多摩消防署のような“ほぼ山林”だけの管 内もあり、23 区山手線内部に代表される駅ターミナル周辺地域の都市的な部分と多摩地域の ベッドタウンや田園地域もあり、地域全体としては、ビル街の都心部から山間部、港湾部ま で広がる普遍的な地域性を持った管轄区域で、「人口の大きさ」を別にすると、全国の縮図の ような地域性があることを認識していただき、読み取って見てほしい。つまり、東京の火災 統計は地域性の偏ったものではなく、人口を分散化させると、その変化の傾向は日本全体へ と広がっていくものとなる。 1. 火災の推移 1)全国の火災の変化 全国の昭和 30 年(1955 年)から平成 27 年(2015 年)までの 60 年間の「建物火災と焼損床 面積」の年度推移をグラフ1に示す。このグラフでは、昭和 45 年(1970 年)頃の数値を基準 として、グラフの近似線から減少率を求めると、昭和 45 年以降の 40 年間の減少率は、建物 § 火災件数はどのように減少しているか

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2 /15 火災件数で年間約 1.4%、焼損床面積で 0.8%の減少傾向で推移してきた。 それらが、最近の 10 年では、グラフ2に建物火災件数と焼損床面積の推移を示すように 減少率が増大している。10 年間の数値の近似線から読み取った減少率の変化は、建物火災件 数も焼損床面積も年約 2.5%の減少率となっており、それ以前の倍の減少傾向となっている。 建物火災件数では、全国で、10 年間に1/3近く減少しており、政令都市部ではさらに大き な減少率となって表れ、同時に、焼損床面積ではさらに急激な減少傾向となっている。 この火災件数の減少傾向は、後述する住警器の設置影響など、安全安心を希求する立場か らは「今までの火災予防活動の成果」と言えなくもないが、火災の減少傾向だけでなく、刑 法犯罪認知件数の統計(警視庁の場合)も最近の 10 年間では年約 4%の大きい減少となってお り、放火、火遊び、タバコ火災など“人の直接的な行為による”火災の減少とリンクし、社 会全体が「生活面での安定した老熟期となってきた姿」が、火災の推移として表出している 面もある。その社会面の逆影響が「救急要請件数の増加」となっていると言える。 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 45,000 建物火災件数 焼損面積(千㎡ 年間の 建物火災件数 年間の 焼損床面積( 千㎡) グラフ1 全国、建物火災件数と焼損床面積の60年間の推移 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600 1,800 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 建物火災件数 焼損面積(千㎡ 年間の 建物火災件数 年間の 焼損床面積( 千㎡) グラフ2 全国、最近の建物火災件数と焼損床面積の年別推移

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3 /15 2)東京の変化 東京は、昭和 37 年(1962 年)当時、建物火災件数が 5,397 件、焼損床面積が 160,538 ㎡で あったが、約半世紀を経た今日、平成 27 年(2015 年)は、建物火災が半減に近い 2,922 件、 焼損床面積では実に1/8の 20,750 ㎡へと減少している。 しかし、この 53 年間の中には、昭和 55 年(1980 年)から平成 17 年(2005 年)までの「25 年間」は、建物の建築増加や人口増加等があったにも関わらず、年間の建物火災件数は平均 して「3,930 件±4%」とほぼ直線的に推移していた時期もある。その直線的に推移していた 建物火災件数が、大きく減少傾向に変化したのは平成 12 年(2000 年)頃からで、顕著な減少 傾向となり、グラフ3に示すように平成 17 年から近年の 10 年間では、建物火災件数は年平 均 2.4%、焼損床面積で 5.0%の減少率となった。建物火災件数は 10 年間で 3/4 となり、焼 損床面積では 1/2 となっている。建物火災件数は全国とほぼ同じ程度の傾向であるが、焼損 床面積では2倍近い減少率となっている。 2.高層階からの火災(東京) 1) 6階以上の階から出火している火災 消防用語の中で「高層化」が言われて久しいが、火災統計でこれを見てみる。 平成 26 年における東京の6階以上の建築物数は 74,544 棟、11 階以上が 12,519 棟、30 階 以上の建築物が 308 棟ある。確かに棟数として 11 階以上の通称「高層建築物」だけでも約 1 万 2500 棟近い数値は、ボリュウムとしての大きさを実感する。 この中で、以下の統計分析では、6階と 11 階を区切りとした。これは5階までの建物が公 団住宅等に多くあることや最近までエレベータもなく、消火活動が共同住宅特例による開放 階段から住戸扉を進入口として活動していたことから、通常の住宅火災の延長として扱い、 6階以上を「中高層建物」の範囲に入れ、11 階以上を「高層建物」として集計した。 § 火災件数の減少は、どのような実態をともなっているか? 0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000 40000 45000 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500 建物火災件数 焼損面積(㎡) 東京、 建物火災件数 東京、 焼損床面積 (㎡) グラフ3 東京、最近の火災件数と焼損床面積の年別推移

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4 /15 最近の階層別の火災件数を「耐火建物火災における出火階別の火災件数」から平成 14 年 (2002 年)から平成 27 年までの数値を「1 階から 5 階まで」と「6階以上」の階からの火災件 数をグラフ4として示す。 「6階以上の階から出火した耐火建物火災件数」の推移は、約20 年近く一貫して増加し ており、増加率は年約5%、10 年間で 5 割近い火災件数の増加となっている。建物火災件数 が全体として減少傾向の中で「増加する火災」は、実際の現場感覚では「かなり多くなって いる」ように感じるものがある。 反面、下層階の「1階から5階で出火した耐火建物火災件数」は、平成 18 年頃から減少 し始め、平成 20 年からは大きく減少しており、グラフ2「全国の建物火災」の推移傾向と一 致している。耐火建物の中で、5階以下の階からの建物火災の減少傾向は、平成 18 年頃から 見られ、これは、「住警器」設置の法令改正(平成 16 年 12 月施行)により、台所等も含めた 住警器の設置が、耐火建物のアパート等に広く普及したことにより、その効果として火災の 早期発見につながり、出火の未然防止に寄与したものと推定される。 さらに、「6階から 10 階まで」と「11 階以上」の出火階の建物火災件数の年別推移をグラ フ5に見る。 このグラフ5から、「6階から 10 階まで」の火災件数が最近の 10 年近くは横ばい状態であ ることが分かる。これによりグラフ4に示す「6階以上」の建物火災の増加は、実は「11 階 以上」の増加が反映しており、11 階以上から出火している火災が 10 年で約 2 倍に増加し、「6 階以上」の火災件数に影響している。 これは、「1階から5階まで」の火災件数の減少と同じで、「6階から 10 階まで」の階か らの火災が増加傾向にあるとしても、住警器の設置による減少傾向が「かぶさって横ばい」 となっているものと思われる。10 階以下は、自火報が共住特例により免除されていた共同住 宅の建物があり、これらの建物(特に、公営・公団等)に対して住警器の設置が進み、火災 件数の増加を押しとどめたものである。しかし、11 階以上はもともと共住自火報が設置され ていたため「住警器設置の低減効果がない」ことから、「増加の傾向」だけが現れたものとな ったとみられる。しかし、たぶんこの「6階から 10 階までの出火」の火災件数の横ばい傾向 0 100 200 300 400 500 0 400 800 1200 1600 2000 1F~5F 6F以上 グラフ4 東京、耐火建物火災の出火階別火災件数の年度推移 1 F ~5 F で 出火し た 火災件数 6 F 以上の 階で 出火し た 火災件 数

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5 /15 も住警器効果がひと段落すると将来的には、徐々に増加するものと思われる。 なお、「焼損床面積別」に平成 14 年からの減少率を見ると、「50 ㎡未満の建物火災」「100 ㎡未満の建物火災」「500 ㎡未満の建物火災」では、50 ㎡未満の建物火災件数は 10 年で約 36% 減少、100 ㎡未満では 45%の減少、500 ㎡未満では 53%の減少となっている。つまり、焼損 床面積の大きい火災ほど火災件数の減少率は大きくなっている。これは、住警器の設置促進 により早期の発見通報、指令システム上の早期の部隊運用、消防職員と各種資機材を含めた 活動能力の向上、交通道路網の整備、ポンプ車等消防車の性能向上などか、規模の大きい延 焼拡大火災を低減化させたものと思う。 2) 11 階以上の階からの火災件数 さらに、高層階からの火災件数として、グラフ6に「11 階から 29 階まで」と、「30 階以 上」の火災件数の推移を示す。 建築物数の比率では、11F~29F までは 12,211 棟、30F 以上が 308 棟あり、30F 以上は 11F 以上の建物の 1/40 程度であるが、出火階別の火災件数では 30 階以上からの火災が 1/7 程度 の高い出火頻度を示している。もちろん建物の規模の大きさによるものもあるが、「30 階以 上の階からの火災」は年間 10 件を数えるほどになっており、珍しい火災とは言えなくなって いる。 傾向として、11 階以上の高層建物火災からの増加率は 10 年で約2倍に増加している。 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 0 20 40 60 80 100 11F~29F 30F~ グラフ6「11F~29F」と「30F以上」の出火階別火災件数の年別推移 11F ~ 29F の 階か らの 火災件数 30F 以上の 階か らの 火災件数 0 50 100 150 200 250 6F~10F 11F~ 出火階別の 火災件数 グラフ5「6F~10F」と「11F以上」の出火階別の火災件数の推移

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6 /15 0 10 20 30 40 50 建物火災件数 グラフ8 東京、地階2階以下の階からの火災件数の推移 3) 高層階からの火災発生の増加 次に「6 階以上の階からの火災が建物火災に占める比率の推移」をグラフ7に示す。平均 して年 7.3%を占めている。 ここで、建物火災を「出火階の高層化」の側面からまとめると次のようになる。 ① 近年の建物火災は、「6階以上」の階からの火災が増加しており、建物火災全体に占め る割合が東京では 1 割を超えるようになり、火災件数自体も増加傾向にある。建物火災 時には、その現場の 1 割が「6階より上の階からの火災となっていること」を念頭にし てポンプ隊等の出場態勢を整えることが求められている。この傾向は、発生率の違いは あるが全国的な傾向となる。 ② 6階以上の階からの火災としては、高層階の「11 階以上からの火災」が、10 年間で2 倍に増加し、年間では東京で 100 件を超える件数となっており、今後も増加する傾向に ある。「30 階以上の階からの火災」も建築物数に比較して火災件数が多い面がある。 3. 地階からの火災(東京) 「地下階から出火する火災」は、消火活動の難しさと合わせて避難者の対応も難しいもの がある。東京の地下1階からの火災件数は、年による変動に、ばらつきがあり、平均して年 間 115±12(件)発生している。「地下2階以下の階からの火災件数」を平成 17 年からの推移 をグラフ8に示す。ほぼ直線的な増加傾向で「地下2階以下の階からの火災」は、最近では 30 件を超えており、「地下 3 階以下の階」は、平均 7 件/年、「地下 4 階以下」では平均 2.4 件/年の火災件数となっている。 0.0% 2.0% 4.0% 6.0% 8.0% 10.0% 12.0% 6F以上の階の占める割合 グラフ7 東京「6階以上の階からの火災」が、建物火災全体に占める割合の推移

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7 /15 0.0% 0.5% 1.0% 1.5% 2.0% 2.5% 3.0% 3.5% 4.0% 避難比率 4. 高層階火災の増加による消防活動の影響(東京) 1) 避難の実態 建物火災における「10 人以上避難者の発生した火災」の建物火災全体に占める割合の年別 推移をグラフ9に示す。火災全体の傾向は「10 人以上の避難者」を伴う火災の発生率が増加 している。 グラフ 9「10 人以上避難の発生した火災」の建物火災全体に占める比率の年別推移 2)多数避難者の火災 次に、高層建物火災における「避難」の実態について着目する。 火災発生時に「50 人以上の多数の避難者が発生した火災」を調べると年別・階別の推移と して「6階以上の階からの火災により多数者が避難したケース」は、平成 14 年から平成 27 年までの間、平均 15.3(件/年)発生しており、件数は年別の発生差異が大きく、増加の傾向 は見られない。しかし、「50 人以上の多数避難者のあった火災」の中に占める「6階建て以 上の階からの火災」の割合の変化をグラフ 10 に示す。年推移として、徐々に増加している。 「多数避難者の火災」は、劇場火災や大規模店舗の火災などで発生する「不特定多数の者 が在館する用途の施設火災」が従来の対象物の姿とされていたが、最近は、「建物の高層化に よる火災」が7割近くを占めている。 § “高層階からの火災”に対して消防活動にどのような影響が出ているか? 0% 20% 40% 60% 80% 100% グラフ10 「多数避難者火災」の中の「6階以上の階から火災」の占める割合

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8 /15 ここで、平成 27 年だけの建物火災から「多数避難者火災」の具体例を拾って見ると 1 月「48 階建ての建物の 16 階から出火し 517 名が避難」 3 月「25 階建ての建物の 20 階から出火し 230 名が避難」 5 月「29 階建ての建物の 19 階から出火し 225 名が避難」 7 月「27 階建ての建物の 25 階から出火し 600 名が避難」 9 月「32 階建ての建物の 18 階から出火し 350 名が避難」など、 高層建物の高層階からの火災により 100 人以上が避難する多数避難が発生する火災が、今や 日常的な火災のレベルとなっている。従来は、「まれな火災」として、その場限りで考えら れていた事象が、建物火災の高層階からの出火の中では、普通に見られる事象となっている。 このように、超高層建物火災は、消火活動自体の困難性とあわせて、「多数の避難者」を 抱かえこんだ消防活動を余儀なくされ、「平面的な建物火災」とまったく異なる「戦術面の困 難さ」を生んでいる。 5. 消防活動からの分析(東京) 1) 出場(出動)隊数の推移 消防活動では、火災に際し、どれだけのポンプ隊等が投入され、その中で「従事した隊・ 放水した隊・放水口数など」の数値が活動の実態の指標としてあらわされる。そこで、ここ では、これらのデータからの“変化”を、前記の「高層建物火災の増加」の視点を踏まえて 検討する。 昭和 47 年(1972 年)から平成 23 年(2011 年)までの約 40 年間の「建物火災件数と火災出 場隊数」の年別推移をグラフ 11 に示す(東京は「出場」の用語を用いており、一般的に使用 される「出動」でなく、本文では「出場」の用語を用いる。旧海軍用語が消防用語の根幹と なっているためです。) 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 建物火災の出場隊数 建物火災の件数 消防車両の 出場台数 建物火災件数 クラフ 11 東京,建物火災件数と消防車両出場隊数の年別推移 § 最近の消防活動の変化はどのよう面に表れているか?

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9 /15 東京の出場体制は、建物火災に際し、概ね 12 隊程度が指令運用されており、建物火災件 数の約 10 倍の隊数が連動して推移している。つまり、消防活動としては、車両火災、その他 の火災、林野火災や大規模特異火災などが発生していたとしても長期的な視点で出場隊数を 見ると単に建物火災件数に拘束される変化となって現わされる。 東京の建物火災件数の年別変化は、既に 1,2)で示したように昭和 55 年から平成 17 年の 25 年間は 4,000 件前後で推移しており、グラフ 11 からもその傾向が読み取れるが、40 年間 を通じてみると、「出場隊数の変化」が-32%、「建物火災件数の変化」が-38%となり、ほ ぼ相似した減少率で示される。 この場合に「出場隊数」と「焼損床面積」の関係も調べてみたが、「焼損床面積の変化」 は 40 年間で-79%も減少しており、減少率は「出場隊数の変化」に比べて倍近い開きがあ り、出場隊数と焼損床面積は相関性がない。 これによると、消防活動の主たる要因は「建物火災件数」に集約されていると言える。 2) 火災現場活動における特徴 建物火災に際し出場隊の中で「放水した隊数」の比率と「火災に従事した隊数」の比率を グラフ 12 に示す。昭和 40 年代には、建物火災の発生時にはほとんどの隊が「放水隊」とし て活動していたが、今は、建物火災とは言え「ボヤ」など消防隊到着時に既に鎮火し放水す る必要のなかった火災や先着した隊のみが放水して鎮火させ、後着する複数の隊は放水しな いケースなどか増加しており、建物火災で「放水している隊数」を建物火災全体で扱うと、 「放水隊数の比率」はかなり低い数値となる。 また、出場隊には、指揮隊、はしご隊、救急隊などの「放水装置を持たない」隊もあるこ とから「放水隊数」は数値だけから見ると昭和 50 年代(1975 年)は、建物火災 1 件に対し て 10%程度であったが、平成 20 年代(2008 年)では6%へと減少している。建物火災に出 場した 100 隊の中で6隊だけが「放水作業」をしていることとなる。この数値は、建物火災 のボヤ火災や事後聞知火災が増え、かつ、1 件あたりの焼損床面積が減少していることから も「放水隊数」の数値が減少するのは当然と言える。 しかし、「放水隊」も含めた「当該火災に従事している隊」の比率は、昭和 50 年代(1975 年)では 30%程度であったが、平成 20 年代(2008 年)では 50%近い比率となって増加して おり、反比例の関係となっている。 焼損床面積が減少し、放水隊数の比率も減少している、にもかかわらず「火災現場に活動 している従事隊数の比率」が増加傾向にある。 このことは、「避難誘導」の活動や火災時に建物全体の「安全確保を確認する」活動など の「単純に火を消す」活動とは全く異質な活動が求められ、それらに従事している部隊が多 数必要となっていることが「増加している」ものと推測される。近年の建物火災は「燃えて いる⇒放水し消火する」と言う単純な消防活動の図式から離れて居住者や在館者の“安全” を優先する「様々な活動」が、現実的な現場対応として増加していることにある。

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10 /15 「放水隊数の従事率」は、焼損床面積の減少とも相まって当然に減少するが、グラフ3で 最近の東京の焼損床面積の推移では平成 17 年頃からの減少を示していたが、グラフ 12 を見 ると平成 8 年頃から「放水隊数の従事率」が減少しており、既にこの頃から焼損床面積に係 る減少傾向が顕著となっていたことがわかる。 グラフ 12 から、最近の消防活動の傾向を見ると、平成2年(2014 年)が“起点”となって いるように思える。平成2年からは、放水隊数の減少が明瞭となり、平成 17 年からは大きく 減少しており、この傾向はグラフ3で、平成 17 年からの焼損床面積の急激な減少とリンクし ている。また、この頃から、建物火災の消防隊の従事率が 40%を超えるようになっている。 これは、東京の「建物火災の構造別推移」で調べると、平成2年頃から「木造系(木造、 防火造、その他構造)と耐火系(耐火造、準耐火造)の比率が逆転し、耐火系の建物火災が多く なった時期である。そして、現在は、耐火系建物の火災件数の割合が 7 割を超えている。 3) 建物火災に見る類焼火災の特徴 「焼損床面積が計上された建物火災(東京では「延焼火災」、関西では「炎上火災」と呼称 されることがある)」に着目し、「延焼火災件数」と「類焼棟数(比率)」の年別推移をグラ フ 13 に示す。 耐火系建物火災は、住戸を超えて上階に延焼拡大することはあるが、他の棟に類焼する火 災はほとんどなく、このため焼損棟数はほぼ 1 棟である。耐火系建物火災の増加は、焼損床 面積を減少させ、当然のこと「1 件あたりの建物延焼火災に対する類焼火災(焼損棟数)は、 減少する」はずであるが、グラフ 13 の類焼比率からは、逆に増加傾向が顕著に示される。こ の「焼損棟数の比率が増加している」ことが、何となく不思議な感じがする。 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 0.12 0.14 0.16 0.00 0.10 0.20 0.30 0.40 0.50 出場隊数に占める従事隊数率(従事隊/出場隊) 出場隊数に占める放水隊数率(放水隊/出場隊) 出場隊数に 占め る放水隊数の 比率 出場隊数に 占め る従事隊数の 比率 グラフ12 東京, 建物火災1あたりの「放水隊数」と「活動従事隊数」の比率の推移

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11 /15 10 年間で、「延焼火災の焼損棟数の比率」は5棟/件前後から7棟/件へと 40%も増加して いる。 このように「延焼火災 1 件あたりの類焼火災棟数が増加している」ことは、「最近の火災」 の一面を表しているように思える。なお、隊員の火災経験が少ないことなどが類焼棟数を増 加させていることは決してない。模擬火災等訓練の練度が相対的に高くなっており、優秀な 隊員が増加して、消火、救助、救急と多面的な対応に対処しえるようになっている。つまり、 隊員や消防制度等の個別要因でない事象の出現であると思われる。 このように、建物火災の推移は、火災件数、焼損棟数、焼損床面積、放水隊数、1 件あた りの放水隊数の比率において、いずれも減少傾向が明瞭であるにもかからず、反面、「建物火 災時に消防活動に従事する隊数が増加」「延焼火災時の類焼の棟数が増加」していることが統 計として表れている。従来の「建物火災件数」「焼損床面積」の大きな指標からは読み取れな い、統計の中で現われる増加因子を拾い出し、近年の火災態様の変化を検討する時代となっ ている。 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 5.50 6.00 6.50 7.00 300 400 500 600 700 800 900 1,000 平成11年 平成14年 平成17年 平成20年 平成23年 延焼(炎上)火災件数 延焼火災あたりの類焼棟数 延焼火災の 件数 延焼火災あた り 類焼棟数 グラフ13 「延焼火災件数」の推移と「延焼火災1件あたりの類焼

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12 /15 6. 地域性のある広域的火災 ここで、上記の「類焼率の増加」を考えた際に実際に発生した火災の中に「類焼件数が極 端に多い建物火災」の存在に気付く。延焼火災件数が減少している中で、極端に多数の類焼 数の大きい火災が出現すると平均的な「比率」の数値が大きくなる。このアンバランスな、 平均値から大きく離れた火災があるとその年の「類焼率」が大きくなり、グラフ 12 が表出さ れることが考えられる。そこで、このような「火災」を拾ってみた。 事例-1 ①開発に取り残されたターミナル駅周辺火災 都心部のターミナル駅周辺には「飲んべい 横丁」「思い出横丁」「提灯横丁」などの木造 の密集の飲み屋等が寄せ集まっており、この 地域で建物火災が発生すると「極端に多数の 類焼棟の火災」が発生する。 地域性が建物火災の性状に影響している。 事例-2-1 ②ビル街の耐火・木造混雑地域の広域火災 ビル街に取り残された木造建物や防火造建 物は、火災に対してきわめて脆弱である。 さらに、木造建物の火炎により耐火建物の 上階(2階、3階、4階等)へ類焼していく ことから、消火中に「類焼が認識しずらい」 ことによる後手に回る消火活動となり、消防 活動面はきわめて困難な活動となる。 これらも“地域性の広域火災”である。 事例 2-2 耐火建物は、外壁の開口部を特定防火設備 (旧、乙種防火戸)としているが、近接する 木造系建物の火炎により突破されて耐火建物 内部に延焼する。耐火建物が事務所ビルの場 合は、内部に入った火炎が発見できにくく、 部隊配置を含めて後手に回ってしまう。

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13 /15 事例 2-1 と同じ現場 ビル街の中のモザイク状 の木造建物の火災は、消火 活動そのものも放水が困難 である。さらに、ビルの谷 間に沿って火炎が伸び、付 近の耐火建物の開口部から 内部へと類焼する。 上記のような広域火災は、次の条件で発生している。 ① ターミナル駅周辺、旧繁華街周辺に存在する密集木造系建物群の地域 ② 耐火建物に囲まれて取り残されている木造系建物がモザイク的に存在する地域 これらの「地域性のある広域火災」が発生すると「類焼棟数が飛躍的に増大する」要因と なっている。 平成 28 年で、これらの火災に該当するものを調べると次のような火災が報道されている。 4 月 12 日、東京、新宿ゴールデン街の火災 7 月 5 日、 京都市、先斗町の火災 7 月 12 日、北九州市、八幡祇園町銀天街の火災 9. まとめ 1)課題 このように全体として、「建物火災件数」と「焼損床面積」が、毎年減少傾向にあり、特に、 住警器の設置促進以後は急激な変化が見られ、全国的な傾向とこれを上回る勢いで減少を示 す政令都市の火災の様相がある。 「火災件数と焼損床面積」の年別傾向を踏まえ、統計的な分析を進めてきたがこれをまと めると次のようなこととなる。 ① 6 階以上の中高層階からの火災件数が増加し、特に 11 階以上の増加が著しい。 「高層、深層化」を示す火災が、建物火災の1割近くを占めるようになっている。 ② 避難者が多い火災が増加し、特に多数の避難者を伴う火災が高層建物火災などで頻繁 に発生している。 ③ 建物火災現場で放水隊数は減少しているが、活動に従事している隊が約4割近くあり 増加傾向にある。 § 近年の火災の特徴をとらえた対応策を考察してみる!

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14 /15 ④ 耐火建物火災が7割を占めているが、建物火災あたりの「類焼棟数」が増加しており、 その要因として「地域性のある広域火災」が極端な類焼棟数を計上しているようにみら れる。 これらの傾向そのものが「近年の火災の特徴」となっている。 従来、消防は「焼損床面積と水利」を指標してきた感があり、それは「焼損床面積」に対 して必要とされるポンプ車隊数の増加と明瞭な相関があり、「焼損床面積が増加しそうだ」と 思える時は、できる限りのポンプ隊を活動現場に投入する“部隊運用”が最も得策となって いる。そのことは統計的にも「焼損床面積」と「ポンプ車隊数」は正比例の関係があり、現 在においても正しい判断であり、部隊を火災規模に応じて増強することが効果的でる。 つまり、第 1 出場では〇〇隊、第2では(〇〇+□□)隊と言った、火災規模を「焼損床 面積」により便宜的に具象化させて「部隊数」を決定する方法である。 しかし、この考え方は、上記の統計等から見てきた「近年の火災の特徴」対して「正解」 とはならないと言える。近年の火災時の要因は「高層・深層火災の普遍化」であり、「放水活 動でない多数避難者にも対応した効率的多面的活動体制の確保」であり、「地域性のある広域 火災に対応する方策」であると思う。 東京で言えば、今まで「出場体制」の第1で、ポンプ 8 隊、第2で+4 隊、第 3 で+4 隊 のような「焼損床面積」基準のポンプ隊の増強だけではなく、ハイパーや航空消防隊も含め た「2020 年後の建物火災の態様を踏まえた火災出場体制の整備」が必要となっている。 2)具現化への道 近年の火災の特徴とされる課題の要因を「耐火系建物火災の増加による高層化・深層化 の流れ」と「開発に取り残された木造系建物が、周囲がビル化した木造混在地域の火災」と して考え、その特徴の2項目を再度説明し検討材料を追記する。 ① 高層化・深層化における耐火系建物火災では、放水隊でない避難誘導など多様な部隊 を運用する火災が増え、様々な任務を遂行し、それを指揮統制する必要のある「多機能 的な戦術が要求される火災」である。 火災の「焼損床面積」で見えてこない活動部隊の増強方策の鮮明化が必要とされる。 従来の応援隊が潜在的に担っている「放水体制」を前提とし「水利部署」しがちな隊活 動があるが、新たな消防活動態勢では焼損床面積と関係のない部隊の増強により、支援 部隊の「任務」を放水ではなく「高層化、深層化」への対応とするものである。 ・建築排煙設備、非常用ELV等の活用、消防排煙の活動拠点の活用に関わるマ ニュアルの整備と訓練指導。 ・ハイパー隊員などを迅速に集結させ「有能な複数の放水隊でない活動隊」の増 強方策。 ・現場での広報活動の能力の向上方策。 ・呼吸器具の長時間使用を可能とするような、[通常時は外気取り入れ、煙等雰囲 気時のボンベ空気の切替えができる装置]の開発。

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15 /15 ② 都市のビル建設で、取り残された老朽化した木造建物などが混在化した地域で、類焼 棟数が多数発生している。このような“地域性”をあらかじめ予測し、消防隊の現場到 着の端緒から地域の特性に着目し「地域性のある広域火災」を念頭に、部隊を逐次投入 せずに、一気に増強する指揮方針の確立への対応である。 従来の「部隊運用(出場計画)」では、火災現場に居る現場指揮者の感覚的なものと 「増強される部隊(その火災現場が持つ特徴が理解されずに出場する部隊)」との意思(思 惑)が一致せず、後手に回った消防活動へとなってしまう危惧が内在していた。 ・「地域性のある広域火災」対策につながるような「地域消防活動計画」の策定 が望まれる。このような地域性のある範囲は、いきなり広域火災となることか ら、逐次増強の出場計画では後手となるおそれがあることを踏まえたものとす る。 ・「地域性のある広域火災」時の建物密集地とビル街との混在に対処する、ドロ ーンのような条項からの視覚的情景を地上部隊に指揮支援として活用できる利 用方法を開発する。 最近の火災の特徴を踏まえ、その特徴を把握したうえで対処策を進めることが「部隊の効 率的活用と隊員の安全管理」に結びつくものと考える。「建物火災件数と焼損床面積の減少傾 向が顕著となっている」この時期だからこそ、その特徴と内在化している危険性を捉えて次 の時代の消防戦術へと進める必要があると思われる。 参照文献 1) 東京消防庁統計書 2) 火災の実態. 東京消防庁監修 3) 東京消防庁;高層住宅団地の火災概要, Vol.42, No.1, (196), 92’02 4) 東京消防庁;エレベータシャフトが煙伝搬となった火災, Vol.44, No.5,(212), 94’10 注) この原稿は、平成 26 年 10 月 31 日、大阪市での火災学会「火災科学セミナー」で行った講 演を基に加筆、修正したものです。

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