株式会社野村総合研究所 コンサルティング事業本部 ICT・メディア産業コンサルティング部 〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-6-5 丸の内北口ビル
インターネット消費者取引連絡会
ケータイビジネスの現状と課題
2014年06月19日 北 俊一 (Shun’ichi Kita)Copyright(C) 2014 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
現在、総務省において、通信市場における競争ルール及び
消費者保護ルールについて議論されている
2020-ICT基盤政策特別部会 基本政策委員会
【いわゆる包括的検証】
2020年代に向けた情報通信の在り方
電気通信事業の在り方
→
固定通信市場、移動通信市場における競争ルール
の在り方
ICT利活用の在り方
ICTサービス安心・安全研究会 消費者保護ルールの見直し・充実に関するWG
消費者保護ルールの見直し・充実
▪
説明義務
等の在り方(適合性原則、広告表示等の在り方に関する規律)
▪
クーリングオフ
の在り方(対象とする役務・販売方法、費用負担の在り方)
▪
販売勧誘活動
の在り方(禁止行為(再勧誘、不実告知等)、代理店監督体制強化)
▪ 苦情処理・相談体制の在り方
通信サービスの料金その他の提供条件の在り方等
→
アドホック会合
にて議論
▪
販売奨励金
等の在り方
▪
SIMロック
の在り方
▪ 利用者のニーズを踏まえた
料金体系
の実現
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ケータイ市場が成熟化しても尚、キャリアのKPIが変わらないこと
により、不健全、不誠実な販売が横行
不健全、不誠実な販売→苦情・相談件数の増加
広告偽装表示: 「一番広い」 「一番つながる」 「一番速い」「最大150Mbps」 スマホアプリの「レ点販売」 →半強制的にインストールされる、解約し忘れ(30日間無料お試し) 抱き合わせ販売 タブレット、フォトフレーム、見守りケータイ、体重計など 高額キャッシュバック 新規ユーザーばかり優遇、既存ユーザー(長期利用者)を冷遇 ▪ “MNP乞食”、反社会的勢力が悪用 高齢者、学生(小学生)の獲得合戦
このような販売がなされる背景にあるもの:
市場の成熟 すでに持つべき人は持った、持つべきでない人にまで売りつける 代理店を使った手数料ビジネスの行き詰まり、低出力代理店の淘汰、一握りのブラック代理店の存在 大手3キャリアの同質化、土管化、“協調的寡占”状態 KPIが未だに月次純増数、MNP純増数※光ファイバー販売においても、ほぼ同じ状況(むしろ、現時点ではこちらの方が酷い)
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キャッシュバック等販売奨励金の在り方について
キャッシュバックに対する何らかの規制が必要
MNPキャッシュバックの横行は、キャリア間の
差異化要素が希薄化したこと
が最大の要因
スマホの普及、特に全キャリアからのiPhone5s/5c販売を機に、キャリアの均質化が進行 各キャリアが、自主的にキャッシュバックの原資となるMNPインセの縮減・廃止に動き出したようだが、 キャリアが差異化要素を作り込まない限り、キャッシュバックは復活する また、キャリアが月次純増数やMNP純増数をKPIに掲げ、それがキャリアのモメンタムを表す指標とし て使われる限り、復活する → より詳細な純増の中身(稼働数等)を公表するか、公表を取りやめるか
MNPキャッシュバックの功罪
功:
-最新・高機能スマホを「実質負担金ゼロ」+高額キャッシュバックで買い換えられる (2年縛り契約の中途解約に係る違約金や、割賦残債を支払っても余りある金額) -“MNP弾“を作りこみ、戦略的にMNPを繰り返すことで多額の現金が手に入る(”MNP乞食”)
罪:
-同じキャリアを長く使っているユーザーが、(頻繁に)MNPでキャリアと端末を乗り換えるユーザーへの 販売奨励金等を負担する構造(ユーザー間の不公平性の拡大) -体力のある3キャリアが札束でユーザーを取り合ってる市場に、体力のないMVNOが自ら端末を担い で参入しても勝ち目がない(MVNOの新規参入・成長を阻害) -ショップスタッフの精神的な苦痛・ストレスの増加→離職率上昇3
消費者保護ルールの見直し・充実に関するWG第2回会合 (2014/03/20)北プレゼン資料を修正・加筆参考
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キャッシュバック等販売奨励金の在り方について
激増するMNP利用件数
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約274万件 約 199 万件 約 252 万件 約 275 万件 約 328 万件 約 480 万件 約 587 万件 0 100 200 300 400 500 600 700 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 MNP総利用件数の推移 (年度) (万件) 出所)総務省へのヒアリングによりNRI作成 ※2014年3月のデータは、仮に2013年3月のデータ(約73万件)を利用MNP件数の増大は、OTTプレイヤーのアプリ(Line, Facebook, Twitter, Gmailなど)普及によるキャリアス
イッチの障壁が下がったことも大きな要因であるが、高額MNPキャッシュバックも少なからず影響を与えて いると推察する
消費者保護ルールの見直し・充実に関するWG第2回会合 (2014/03/20)北プレゼン資料を修正・加筆
658万件
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キャッシュバック等販売奨励金の在り方について
高額MNPキャッシュバックのからくり
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MNP キャッシュバック 6~7万円+α 例)iPhone5s 16GB(非学生家族・3台以上同時購入) 代理店 代理店粗利 月月割 7万円 (端末卸売価格 相当) MNP キャッシュバック 6~7万円 MNP インセンティブ (複数台増額込み) 5万円 キャリア お客様還元 相殺 基本NW奨励金 (1万円程度) 店頭還元 各種インセンティブ (セット販売等) 割賦販売実質負担額0円+高額キャッシュバックのパターン のりかえサポート 2.1万円 (月月割に加算) 代理店 キャリア お客様還元 端末代金 0円販売 (店頭一括代金) 代理店粗利 MNP キャッシュバック 1~2万円 MNP インセンティブ (複数台増額込み) 5万円 基本NW奨励金 (1万円程度) 店頭還元 各種インセンティブ (セット販売等) のりかえサポート 2.1万円 (月月割に加算) 月月割 7万円 (端末卸売価格 相当) MNP キャッシュバック 1~2万円+α 例)iPhone5s 16GB(非学生家族・3台以上同時購入) 店頭一括0円+一定額キャッシュバックのパターン 充 当 月月割 7万円 (端末卸売価格 相当) 端末割賦 販売 7万円 月月割 7万円 (端末卸売価格 相当) のりかえサポート 2.1万円 (一括販売割引) 出所)NRI推定 下図は、ソフトバンクの3月16日までのキャッシュバック 構造をNRIが推定したもの(他社もほぼ同様の構造) さらに、端末下取りやご紹介キャッシュバック などが加わる 消費者保護ルールの見直し・充実に関するWG第2回会合 (2014/03/20)北プレゼン資料を修正・加筆参考
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競争ルール、消費者保護ルールの見直しによって、
市場は果たして活性化・健全化するだろうか?
電気通信サービスの契約上のトラブルから消費者を保護するため、店頭販売を含めたあらゆる
販売チャネルへの「クーリングオフ」導入が検討されている
“マルチステークホルダー”環境への転換と、MVNOの参入による、新たな消費者トラブルへの
対応が求められる (ex. フィルタリング)
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3キャリアの“協調的 寡占”状態の打破 クーリングオフの導入 (店頭販売含む) 苦情・相談件数の増加 (主に契約に関する事) SIMフリー端末の販売 (端末と回線の分離) キャッシュバック等 販売奨励金の縮減 MVNO市場の活性化 SIMロック端末は、 回線と一体と見なされる 過度な奨励金は 回収不能となる 端末に値段がつく 多様なMVNOが 多数出現 マルチステーク ホルダー環境?
?
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今後のさらなる市場環境激変への対応が求められる
多様なデバイスの登場:ウェアラブル、M2M、IoT(Internet of Things)
より“センシティヴ”な情報の取得・流通、SNSでのシェア “Google Glass“等による映像・音声の取得・流通、 SNSでのシェア
バンドル販売の進展:“世帯丸ごとロックイン”による流動性の低下
ケータイと固定ブロードバンドのセット販売の常態化 通信サービス、放送サービス(多チャンネル放送、VOD)、電力サービス等のバンドル販売
非通信事業者の“
VNO”としての参入
国内外の他産業のプレイヤーが、通信サービスを“手段”として活用し、本業を強化
携帯電話回線(SIM)のオンライン販売の増加
携帯電話販売チャネルの“筋肉質化”の一環 「携帯電話不正利用防止法」では、音声端末(含むSIM)の新規販売時に本人確認を義務化 今後、データ回線での通話が当たり前になる(Skype, LINE電話、VoLTE)ため、MVNOを含め、デー タ専用端末(回線)でも、本人確認強化が必要となるのではないか。7
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移動と固定の垣根の消滅。トリプル/クワドロプルプレイによる
世帯丸ごと囲い込みが進展。これは世界的な趨勢。
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MVNO参考
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NTTは、光アクセスの「サービス卸」による“光コラボレーション
モデル”を発表
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出所)NTT IR資料参考
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