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定量的標的プロテオミクスによる血中タンパク質の病態変動 解析に基づく膵臓癌早期診断法の開発 ( 要約 ) 東北大学大学院薬学研究科 生命薬科学専攻 米山敏広

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Academic year: 2021

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定量的標的プロテオミクスによる血中タンパク質の

病態変動解析に基づく膵臓癌早期診断法の開発

著者

米山 敏広

学位授与機関

Tohoku University

学位授与番号

11301甲第16953号

URL

http://hdl.handle.net/10097/00120615

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定量的標的プロテオミクスによる血中タンパク質の病態変動

解析に基づく膵臓癌早期診断法の開発

(要約)

東北大学大学院薬学研究科

生命薬科学専攻

米山 敏広

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1. 目的

膵臓癌は 5 年生存率が 6%と癌全体の 5 年生存率 68%に比べて極めて予後が悪 い癌である(Siegel et al., 2014)。この原因は、膵臓癌は初期症状に乏しいことに加え、 既存の膵臓癌マーカーである carbohydrate antigen 19-9 (CA19-9)は膵臓癌を早期診 断できないためである (Ballehaninna and Chamberlain, 2011)。よって、膵臓癌の予後 を改善するためには、i)新規の早期膵臓癌マーカー同定および ii)膵管内乳頭粘液性 腫瘍 (intraductal papippary mucinous neoplasm , IPMN)や慢性膵炎などの膵臓癌を発 症する前のリスク疾患に対するリスクマーカー同定は最重要課題である(Chang et al., 2014)。 近年、国立がん研究センターの山田博士らによって、24 種の血中タンパク質が 早期膵臓癌マーカー候補として同定された。これらの候補タンパク質は病態への変 化に伴い量的変化だけではなく、修飾、断片化、複合体形成など質的変化を起こす 可能性があり、量的・質的観点からマーカーとしての有用性評価を評価することが 重要である。サンドイッチ ELISA 法によるマーカー評価が最も一般的であるが、 タンパク質に対する特異的モノクローナル抗体 (特に質的変化を認識する抗体)の 作成の成功確立は低く、定量法開発に比較的時間がかかることがボトルネックであ った。本研究室で開発した liquid chromatography-tandem mass spectrometry (LC-MS/MS)を用いた定量的標的プロテオミクスは、タンパク質の質的変化を含めた定 量法を短期間で確立可能であるため、上記課題を明らかとするためには有用である。 その一方で、サンプルの前処理や LC での分離に時間がかかるため throughput 性が 低いことが臨床応用に向けての課題であった。そこで本研究では、定量的標的プロ テオミクスに基づく high-throughput 定量法を開発し、量的・質的観点から早期膵臓 癌で陽性を示すマーカーを明らかにすることを目的とした。

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2. 方法

自動前処理ロボットを用いて血漿をトリプシン消化し、タンパク質定量は LC-MS/MS もしくは MALDI-LC-MS/MS を用いた。サンプル濃縮には、特異抗体を用いた 免疫沈降を用いた。MALDI-MS/MS 測定時には、α-cyano-4-hydroxycinnamic acid (CHCA)をマトリックスとして解析を行った。本研究の臨床検体を用いた実験は、 東北大学薬学研究科および国立がん研究センターの双方の倫理委員会の承認を受 けて行った。

3. 結果・考察

水酸化修飾α-fibrinogen の膵臓癌マーカーとしての評価

2-Dimensional Image Converted Analysis of LCMS を用いて同定された膵臓癌マー カー候補である水酸化修飾α-fibrinogen (Ono et al., 2009)について、非修飾ペプチド および水酸化修飾ペプチドを用いて検量線を作成した結果、50-5000 fmol の範囲で 検量線に直線性 (r2>0.99)が得られた。サンプル前処理を自動化するため、自動前処 理ロボットを用いて 1 日に 192 サンプルの血漿前処理を行う手法を構築した。同一 血 漿 を 前 処 理 し 、α-fibrinogen の 定 量 を 行 っ た 結 果 、 ば ら つ き と し て 8.4% (%coefficient of variation (CV), n=40)の高精度な定量技術を実現した。水酸化修飾 α-fibrinogen の膵臓癌マーカーとしての評価を行うため、膵臓癌患者 70 例および健常 者 27 例の血漿について定量解析を行った。その結果、水酸化修飾 α-fibrinogen は Stage I/II の早期膵臓癌患者において有意に上昇していることが明らかとなった。 Receiver operating characteristic (ROC)解析の結果から診断の基準値を算出し、主要 な膵臓癌マーカーとの比較を行った。CA19-9 に陰性な Stage I/II の早期患者 8 例に

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対しては carcinoembryonic antigen (CEA)が 1 例のみで陽性となり、Duke pancreatic monoclonal antibody type-2 (DUPAN-2)は全ての検体で陰性であった。一方で、水酸 化修飾α-fibrinogen は 6 例で陽性を示した。よって、水酸化修飾 α-fibrinogen は CA19-9 に陰性な早期膵臓癌診断に有用なマーカーであることが示唆された。

23 種の膵臓癌マーカー候補分子のマーカーとしての評価

逆相タンパク質アレイを用いて同定された膵臓癌マーカー候補 23 分子(Honda, Kazufumi, personal communication)および膵臓癌リスク関連 6 分子の内、非濃縮血漿 で検出可能なAdiponectin, Complement C2a (C2a), C2b, C-reactive protein (CRP), insulin-like growth factor-binding protein (IGFBP)2, IGFBP3について micro LC-MS/MS を用いた

high-throughput 定量法 (10 min/run)を確立した。これら 6 分子について、Stage I/II 早期 膵臓癌患者 38 例および健常者 65 例の定量解析を行った。その結果、IGFBP2 およ び IGFBP3 が健常者に比べ早期膵臓癌患者において有意に変動していた。これらの マーカーの膵臓癌患者に対する陽性率は CA19-9 に比べても高く、有力な早期膵臓 癌マーカーとして絞り込んだ。また、IGFBP2 は従来の膵臓癌マーカーでは診断で きない IPMN や慢性膵炎などの膵臓癌発症リスクが極めて高い疾患においても健 常者に比べて有意に上昇していた。さらに、IGFBP2 は胃癌、胆道癌、肝細胞癌、 大腸癌、十二指腸癌においても上昇しており、これらの癌に対する診断への有効性 も示唆された。IGFBP2, 3 と CA19-9 の組み合わせによる膵臓癌診断の有効性を検 証するため、多変量ロジスティック回帰に基づく診断式を構築し、ROC 解析を行 った。その結果、診断式による AUC は有意に CA19-9 の Area Under the Curve (AUC) を押し上げた。式の作成に関与しない健常者 38 例および膵臓癌患者 101 例の定量 解析結果を用いて診断式の評価を行っても同様に有意に CA19-9 の AUC を押し上

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げた。よって、IGFBP2 および IGFBP3 を CA19-9 と組み合わせることで、リスク疾 患を含めた早期膵臓癌患者の包括的診断が可能になると示唆された。IGFBP2 およ び IGFBP3 の発症前検体の診断に対する有効性を検証するため、多目的コホート研 究の約 20 年間の追跡調査期間中に膵臓癌を発症した患者 170 例および対照 340 例 の膵臓癌発症前検体の定量解析を行った。その結果、採血から膵臓癌の診断までの 期間が短期間 (7 年以内)の患者群は、対照群に比べて IGFBP2 および IGFBP3 がそ れぞれ高値、低値を示した。よって IGFBP2 および IGFBP3 は、発症前の検体に対 する診断にも有効である可能性が示された。 IGFBP2, 3 の膵臓癌への病態変化に伴う質的変化の解析 量的な観点から有力な膵臓癌マーカーとして同定した IGFBP2 および IGFBP3 に ついて、IGFBP2 および IGFBP3 の安定同位元素標識タンパク質を合成し、IGFBP2 および IGFBP3 の N 末から C 末の定量が可能なトリプシン消化ペプチドについて 定量を行うことで修飾や断片化を含めた質的変化のマーカーとしての有用性を検 討した。IGFBP3 に関しては血中で他のタンパク質と複合体を形成すると報告され ているため、膵臓癌への病態変化に伴う IGFBP3 の複合体形成効果も解析した。健 常者 38 例および早期膵臓癌患者 23 例について定量を行った結果、IGFBP2 は定量 した全ての配列において ROC 解析の AUC は同等であったことから、マーカーと しての有用性に部位差は存在しないことが示唆された。一方で IGFBP3 は、複合体 量を分別定量することが早期膵臓癌の診断に有効である可能性が示された。 MALDI-MS/MS を用いたタンパク質の high-throughput 定量法の開発 質量分析によるバイオマーカーの臨床診断を実現する上では、多検体定量に適応

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できるスループット性が必要である。Matrix-assisted laser desorption ionization-mass spectrometry (MALDI-MS/MS)は LC を介さないため非常にスループット性が高い一 方、定量性の低さが課題であった。この課題を解決するため、標的ペプチドの配列 を入れ替えたペプチド(Scrambled IS ペプチド)を内標準とする独自の Scramble IS 法を考案した。MALDI-MS/MS を用いて同一量のモデルペプチドを 10 回測定した 結果、intensity のばらつき(%CV)は 55.1%であったが、Scrambled IS ペプチドで補 正することで 16.2%へ劇的に改善した。そこで Scrambled IS 法を用いて検量線を作 成した結果、5-1000 fmol/μL において良好な直線性(r2=0.99 以上)を示した。Scrambled IS ペプチドのイオン抑制効果に対する補正効果を検証するため、同一量 の 15 モ デルペプチドに対して 5 濃度の血清消化物 (0-0.5 μg/μL)を添加して MALDI-MS/MS 測定を行った。その結果、intensity のばらつき(%CV)はいずれのペプチドにおいて も 50%以上であったが、Scrambled IS ペプチドで補正することによって、平均 intensity が 300 cps 以上である 11 ペプチド中、10 ペプチドでばらつき(%CV)は 20% 以内となった。ペプチドのアミノ酸組成が定量感度に及ぼす影響を解析した結果、 芳香族アミノ酸を置換したペプチドが劇的に感度低下した。このことから芳香族ア ミノ酸を含むことが高感度化に重要であることが明らかとなった。市販血漿をトリ プシン消化し、LC-MS/MS および MALDI-MS/MS を用いて fibrinogen を定量した結 果、0.1-5 μL plasma の範囲で 2 つの手法の定量値の差が 20%以内となった。 以上 から Scrambled IS 法を用いることで MALDI-MS/MS による再現性の高いバイオマ ーカータンパク質の定量が実現することが明らかとなった。 【結論】 本研究では、タンパク質の量的・質的変化に着目し、水酸化修飾 α-fibrinogen、

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IGFBP2、IGFBP3 を早期膵臓癌マーカー、IGFBP2 を膵臓癌リスク疾患に反応する リスクマーカーとして同定した。これらのマーカーと、自動前処理装置 (192 samples / day)、micro LC-MS/MS (10 min/run)、MALDI-MS/MS (1 min/run)を用いた high-throughput 定量法を組み合わせることで、早期膵臓癌診断が実現すると考えら れる。

4. 参考論文

Ballehaninna UK and Chamberlain RS (2011) Serum CA 19-9 as a Biomarker for Pancreatic Cancer-A Comprehensive Review. Indian J Surg Oncol 2:88-100.

Chang MC, Wong JM and Chang YT (2014) Screening and early detection of pancreatic cancer in high risk population. World J Gastroenterol 20:2358-2364.

Ono M, Matsubara J, Honda K, Sakuma T, Hashiguchi T, Nose H, Nakamori S, Okusaka T, Kosuge T, Sata N, Nagai H, Ioka T, Tanaka S, Tsuchida A, Aoki T, Shimahara M, Yasunami Y, Itoi T, Moriyasu F, Negishi A, Kuwabara H, Shoji A, Hirohashi S and Yamada T (2009) Prolyl 4-hydroxylation of alpha-fibrinogen: a novel protein modification revealed by plasma proteomics. J Biol Chem 284:29041-29049. Siegel R, Ma J, Zou Z and Jemal A (2014) Cancer statistics, 2014. CA Cancer J Clin

64:9-29.

5. 発表論文

本学位論文の一部は、以下の原著論文を基に作成されたものである。

Yoneyama T, Ohtsuki S, Ono M, Ohmine K, Uchida Y, Yamada T, Tachikawa M and Terasaki T (2013) Quantitative targeted absolute proteomics-based large-scale

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quantification of proline-hydroxylated alpha-fibrinogen in plasma for pancreatic cancer diagnosis. J Proteome Res 12:753-762.

参照

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