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配下に収め 事実上の自治地域を拡大させてきた しかしこれは トルコ政府にとっては テ ロリストが領土を拡大させていることを意味するため クルド武装組織の勢力拡大は国家安 全保障上の脅威だ として 米国に抗議を続けてきた それでも米国は YPG/SDF への支援をやめないため トルコは 2016 年以

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http://i-sugawara.jp/ 米国とトルコの外交関係がこじれ、NATO(北大西洋条約機構)同盟国同士が制裁をかけあう 異常事態に発展している。両国の外交当局はさらなる関係悪化を防ぐべく対話を続けている ものの、対立の原因が取り除かれるような方向には進んでおらず関係修復の目処は立って いない。 シリア内戦が終結に向けて動き出し、中東における勢力バランスが大きく変わろうとしている 重要な時期に、同盟国との関係を悪化させる米国は、中東における影響力をますます低下さ せ、代わりにロシアや中国に影響力を拡大させる機会を与えることになりそうだ。 これまで当レポートで継続的にお伝えしてきた通り、米国とトルコの関係は、少なくとも過去 2 年以上にわたり、主に 2 つの理由から悪化していた。 一つは、米国がシリアにおいて過激派イスラム国(IS)と戦うために地上のパートナーを必要と し、そのパートナーとしてクルド人勢力と組んできたことである。米国はイラク戦争の泥沼を経 験したことで、中東の内戦に米軍の地上軍を派遣することに懲りてしまっている。 そのため、オバマ前米政権は、シリアではクルド人の民兵組織「クルド人民防衛隊(YPG)」を 支援して IS 掃討作戦に当たらせた。 米軍を中心とする有志連合軍は、空軍力とインテリジェ ンスで YPG を支援し、また少数の特殊部隊を現地に軍事顧問として派遣して YPG を訓練する などしてサポートしてきた。 しかし、ここで問題だったのは、このクルド人組織 YPG が、トルコでテロを行う「クルド労働者 党(PKK)」の姉妹組織だったことである。当然トルコ政府は、「IS というテロ組織を倒すために PKK という別のテロリストを支援するのは解決策にならない」として米政府に抗議。 PKK はト ルコ国内におけるテロ活動も活発化させ、トルコは国内での対テロ作戦を強化したこともあり、 トルコ国内の治安は悪化し、トルコ政府の対米不信も強まった。 米国は、「クルド人だけを支援しているわけではない」という言い訳をするため、YPG の他にア ラブ系の民兵も集めて「シリア民主軍(SDF)」をつくらせて、「米国は PKK を支援しているので はなく SDF を支援しているのだ」と主張してきた。 YPG/SDF は、過去 2 年以上に及ぶシリアでの対 IS 作戦を通じて、シリアで広大な地域を支

2018 年 8 月 13 日号

米・トルコ関係悪化で「被害者国同盟」の結束は強まるか?

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http://i-sugawara.jp/ 配下に収め、事実上の自治地域を拡大させてきた。しかしこれは、トルコ政府にとっては、テ ロリストが領土を拡大させていることを意味するため、「クルド武装組織の勢力拡大は国家安 全保障上の脅威だ」として、米国に抗議を続けてきた。 それでも米国は、YPG/SDF への支援をやめないため、トルコは 2016 年以来、断続的にシリ ア北部への軍事作戦を実施し、YPG/SDF の進路を阻んだり、彼らが支配する重要な拠点を 奪還したりしてきた。 今年の 5 月には、YPG/SDF が支配し、しかも米軍も駐留しているマンビジュというシリア北部 の町をめぐって、米国とトルコが軍事的に衝突する一歩手前まで行き、ぎりぎりのところで両 国が妥協する一幕もあった。 しかしマンビジュで両国は局地的に妥協したものの、根本的な対立の種は残ったままであっ た。 クー デ ター 未 遂 の 首 謀 者 を 匿 い 続 け る 米 国 もう一つの問題は、2016 年 7 月にトルコで発生したクーデター未遂事件である。トルコ国内で は、このクーデターを米国が裏で支援した、との根強い不信感がある。このクーデターを起こ したトルコ軍の一部部隊は、米軍が駐留するトルコ南部の基地をベースにしており、常日頃 米軍と共に活動している部隊だった。 このクーデター未遂事件後、事件に関与したトルコ軍の将校たちが数多く逮捕されたが、現 地の米軍司令官は、「自分たちのカウンターパートが皆粛正されてしまった」と述べたことに 象徴されるように、クーデターを起こしたグループはトルコ軍の中でも親米派の将校たちばか りだったのである。 エルドアン政権は、この事件の首謀者はギュレンという宗教指導者だとして指名手配にしてい るが、ギュレン師は現在も、米国のペンシルベニアで「亡命生活」を続けている。トルコ政府は 米政府に対しギュレン師の引き渡しを要求しているが、米政府は「証拠不十分」として要求に は応じていない。 ブランソン師 の 釈 放 問 題 で 悪 化 す る米 ・ト ル コ関 係 こうした両国関係の文脈の中で、トルコ在住の米国人牧師アンドリュー・ブランソン師の問題

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http://i-sugawara.jp/ が急浮上した。 トルコ政府は、2016 年 7 月のクーデター未遂事件後の 10 月に、ブランソン師をテロ及びスパ イ容疑で逮捕した。トランプ政権高官の発言や米メディアの報道からは、このブランソン師の 逮捕はあたかも根拠のないエルドアン政権による「反対派粛清」のように伝えられている。 ちなみにこのクーデターと関係して他にも米国大使館の職員やジャーナリスト等多数の米国 民がトルコで逮捕・起訴されているが、米メディアや保守系シンクタンクは、これらは全てトル コ政府による陰謀であり、エルドアン政権はけしからんというキャンペーンに繋がっている。 しかし、このブランソン師について、少なくともトルコ政府は、逮捕した理由として、クーデター の首謀者と百回以上も電話でやり取りをしていることや、知人の米軍将校に対して、クーデタ ーを事前に知っていたことを示唆するような内容のメールを送っていたことなどを公表してお り、テロ及びスパイ罪で裁くことの正当性を訴えている。 このタイミングでブランソン師の問題が急浮上してきたのは、明らかにトランプ政権の国内事 情によるものである。ブランソン師は、トランプ大統領を支持する国内保守派の一角を占める キリスト教福音主義派の牧師であり、トランプ氏としては、中間選挙前にブランソン師の釈放 を勝ち取り、大事な支援団体である福音主義派を満足させる必要がある。 トランプ大統領の顧問弁護士の 1 人であるジェイ・セクロー氏が、福音主義派の代表として「ブ ランソン師の釈放」に向けて陣頭指揮をとっており、保守派の圧倒的な支持を集めるペンス副 大統領も同師の釈放に向けて精力的に声を上げている。 同牧師をめぐる両国間の対立がエスカレートしたのは、7 月 26 日にペンス副大統領が、ワシ ントンで講演した際に「牧師を解放しない限り、トルコに制裁を発動する」と気勢を上げ、同日 トランプ大統領もツイッターで同牧師の即時解放を求めた上で、トルコ政府が要求に応じない 場合、「強力な制裁を発動する」と述べて、エルドアン政権に警告を発したことがきっかけとな った。 エルドアン政権がこの要求を退けると、米政府は 8 月 1 日、同牧師の不当な拘束などの人権 侵害に関して、トルコのギュル法相とソイル内相を制裁対象に指定することを発表し、両閣僚 の米国内の資産凍結等の措置を発表した。 これを受けて 8 月 4 日にはトルコ政府も、米国の法相と内相のトルコ国内の資産凍結で報復

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http://i-sugawara.jp/ することを発表、制裁の報復合戦に発展した。 さらに 8 月 10 日にトランプ大統領は、トルコから輸入される鉄鋼への追加関税を倍増し、50% に引き上げる措置を発表。これを受けてトルコの通貨リラが急落し、世界経済への波及が懸 念されている。この追加関税で、トルコの鉄鋼は事実上米国市場から締め出されることになる。 通貨の下落と共にトルコ経済は非常に苦しい状況に追い込まれており、エルドアン大統領の 対応に世界の注目が集まっている。 「新 た な 同 盟 」締 結 を 示 唆 す る エル ドア ン 大 統 領 しかし、これまでのところ、エルドアン大統領は、こうした大国の脅しには断じて屈しない姿勢 を示し、トランプ政権への反発を強めている。 8 月 10 日、エルドアン大統領は米有力紙『ニューヨーク・タイムズ紙』に寄稿し、過去 60 年間 戦略的な同盟を組んできた同盟国に対する仕打ちに対する怒りをぶちまけている。朝鮮戦争 から始まり、911 テロ後のアフガンでの対テロ戦争にもトルコは軍を派遣して米国に協力して きたにもかかわらず、「米国はトルコ人の懸念を理解したり尊重することに、繰り返し一貫して 失敗してきた」と同大統領は書いている。 そして 2016 年のクーデターという危機に際して、同盟国である米国は支援の手を差し伸べて くれるどころか、首謀者であるギュレンの引き渡し要求にも応じず、テロリストである YPG を支 援し続けた、と同大統領は米国の裏切り行為に対する不満を改めて表明。そして、今回のブ ランソン師の釈放についても、一方的に制裁をかける米国のやり方は、「決して受け入れるこ とが出来ず、非合理的であり、最終的には我々の長期的な友好関係に有害だ」と述べた。 そして、米国がトルコへの一方的かつ無礼な行動を改めないのであれば、「トルコは新たな仲 間や同盟国を探し始めなければなくなる」と警告し、米国との同盟解消と新たな同盟者との連 携の可能性を示唆したのである。 この日、エルドアン大統領はロシアのプーチン大統領と電話で話し、経済情勢や市場の混乱 について協議した、とロイター通信が報じている。またその前日にはイランのロウハニ大統領 の特使がアンカラを訪問し、チャブシオール外相と会談し、「地域の共通する問題について」 話し合ったことがトルコのメディアで報じられている。 トルコにとっての「新たな仲間や同盟国」が、ロシアやイランや中国といった、現在米国と対立

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http://i-sugawara.jp/ し、同様の問題を抱えている国々を指していることは想像に難くない。もちろん、現状では、 「我々にもオルターナティブがあるのだぞ」という米国に対する脅しの意味合いが強いと考え られるが、今後も状況が変わらなければ、エルドアン大統領がそうした決断を下す可能性も 排除することは出来ない。 そもそも冷戦時代の反ソ・反共産主義という米・トルコ共通の脅威はもはや存在しない。現在 の米国とトルコの脅威認識は大きく異なっており、同盟関係を維持する戦略的な合理性がそ れほどあるとは思われない。共通の脅威がない以上、軍事同盟を結ぶ国々の経済市場へア クセスできるというメリットが無くなるのであれば、同盟を結んでいる意味はなくなる。 もちろん、トランプ大統領はそこまで考えている訳ではなく、自身の支持者たちの要求にこた えるためにトルコに圧力をかけてブランソン師を釈放させようとしているだけだ。 同盟国との長期的な関係をマネージすることの重要性やトルコの戦略的な重要性などに対す る考慮なしに、圧力をかけて脅せば要求を飲むだろう程度にトランプ氏は思っているようだが、 歴史があり誇り高い国々を舐めてはいけない。 ロシアにしてもイランにしても同じだが、トルコだって圧力にすぐに屈するような国ではない。も ちろん、可能な限り米国とも決裂しないように対話を続けるはずだが、圧力には屈しない。 そしてその間にも米国とのカウンターバランスとしてロシアとの関係を強化し、イランとの協力 関係も維持するだろう。トランプ政権の一方的な政策を受けて、「同盟国」トルコと、敵対国ロ シアやイランが、米国からの「被害者国同盟」として協力関係を強める力学が生まれている。 誇り高き国々を相手に脅しと圧力だけでなんとか出来ると思ったら大間違いである。米国内 の支持勢力に対する得点稼ぎのパフォーマンスのために圧力をかけられるのではたまったも のではない、とこうした国々は思っているはずである。 トランプ政権の戦略なき制裁圧力外交は、トルコをロシアやイランにますます接近させ、自ら の戦略的なオプションを狭め、その影響力をさらに低下させることに繋がるであろう。今後、 米・トルコ関係がさらに悪化すれば、シリア和平をめぐって協力している「アスタナ合意」の三 カ国であるロシア・イラン・トルコが、米国牽制という戦略的な文脈で強力関係をさらに強める 可能性がある。 中間選挙を意識したトランプ大統領の「支持者第一主義」政策は、伝統的な同盟関係を傷つ

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け、国際秩序の再編を益々推し進めることになりそうである。

編集・発行人 菅原 出 発行日:2018 年 8 月 13 日(月)

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