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Academic year: 2021

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様式1

研 究 結 果 報 告 書

平成 24年 1月 13日

財団法人 長野県学校科学教育奨励基金

理事長 田 幸 淳 男 様

学校名 長野県 田川 高等学校

学校長名 澤井 淳 印

1 研究テーマ

ムササビの繁殖行動の解明とその調査方法の開発

2 研究グループ名

ムササビ愛好会

3 指導者

赤羽根 弦

4 研究の動機及び目標

ムササビは年に 1 回または半年ごとに 2 回繁殖期があることが知られている。 2011 年 1 月にメスのムササビを中心とした繁殖行動が起き、その個体の交尾を観察した。その後、その個 体の観察を続けていたところ、5 月に再び繁殖行動が見られ交尾を観察した。しかし、 ・今まで調査地では 1 月にしか繁殖行動は観察されていない。 ・年に2回繁殖期のある場所では、6ヶ月毎に繁殖期が訪れるが、4ヶ月しかたっていない。 ・巣穴をのぞいても子供が見えない。 などの理由から、「何らかの理由でこの個体に子供が出来なかった」または「生まれた後に死んでしま った」ために繁殖行動が起きたと仮説を立て、この個体の子供の有無を確認するなどの観察を始めてい る。また、今までムササビの巣内の様子を詳しく観察したことが無いため、巣内の観察を行うことで、 調査・観察方法の開発を行いたい。

5 研究内容の概要

はじめに

ムササビは年に 1 回または半年ごとに 2 回繁殖期があることが知られている。 2011 年 1 月に、♀のムササビを中心とした繁殖行動が起き、その個体の交尾を観察した。その後、その 個体の観察を続けていたところ、5 月に再び繁殖行動が見られ、交尾を観察した。しかし、 ・今まで調査地では 1 月にしか繁殖行動は観察されていない。 ・年に2回繁殖期のある場所では、6ヶ月毎に繁殖期が訪れるが、4ヶ月しかたっていない。 ・巣穴をのぞいても子供が見えない(5 月時点)。 などの理由から、「何らかの理由でこの個体に子供が出来なかった」ため、または「生まれた後に死んでし まった」ため新しく子供を作るために繁殖行動が起きたのではないかと考え、この個体の子供の有無の確 認と、5 月の繁殖行動後の観察を行った。また、今まで繁殖中のムササビの巣内の様子を詳しく観察した ことが無いため、巣内の観察を試みた。 調査地は塩尻市高ボッチ西側山麓に位置する長野県林業総合センター敷地内の林である。 林内はスギ・サワラ・アカマツ・カラマツなどの針葉樹にコナラ・ミズキ・サクラなどの広葉樹が混じっ た針広混交林で、傾斜地にはスギ・サワラが多く、平坦な場所にはアカマツ・カラマツが多い。

(2)

調査方法

観察方法> 前記のメス個体を14回発見し観察した。観察は巣穴から約 15m離れた所で、倍率 12 倍の双眼鏡(Nikon Action EX 12×50 5.5°)で観察し、巣穴から出た個体を追跡した。この時、巣穴にいたメス個体は子供 がいる可能性があった。そこで警戒させないため、またストレスを与えないために懐中電灯の光をなるべ く当てないようにした。個体は尾の形と体色で識別した。 <撮影方法>

観察中にはフィルム一眼レフカメラ(Canon new EOS kiss)に望遠レンズ・ストロボ(OLYMPUS EL-36) を装着して写真撮影を行った。フィルムは FUJICHROME PROVIA 400X と 記録用フィルム ISO-400 を用いた。 今まで望遠レンズは SIGMA100-300mm を使用していたが、F 値が高いためファインダーが暗く、ピントが 合わせづらいという欠点があった。そこで奨励金を用いて F 値の低い CanonEF-50mm F2.5 を入手し、使用 した。F 値とは、低いほどレンズに光を取り込みやすく、明るくなり、ピントが合わせやすくなる指標で ある。 <巣穴の観察> 巣内の観察は、特に繁殖中の巣内の様子を観察することを目的とし、昨年までの観察よりムササビが巣 穴を利用しない時期に実験を行う予定であったが、巣穴を、妊娠中と思われるムササビが使用を続けたた め、その個体に配慮し実験を行わなかった。

ムササビが現在利用していない巣穴にファイバースコープ(SUNPLUS TECHNNOLOGY SPCA536)を使用し、 巣内の観察および撮影を行った。

結果

<繁殖期と考えられる時期の観察> 2011年1月 2011年1月8日に繁殖行動を観察し、9日に交尾を観察した。交尾したメスは体毛が他の個体よりも白い という特徴があったため、交尾をした場所から約50mの場所にあるカラマツの樹洞を塒(ねぐら)として 使用している個体と考えられた。これが前述の交尾行動である。今までは年1回の交尾行動しか見られて いなかったが、いずれも冬季の繁殖行動である。 2011年5月 2011年5月8日に繁殖行動を観察し、9日に交尾を観察した。交尾したメスは体毛の特徴から1月に交尾 した個体と確認した。5月に繁殖行動を観察したのは、2007年からの観察で初めてであった。 <子供と子育て> 1月の繁殖期での子供 1月に交尾した時の子供は12月まで観察されていないため、子供が出来なかった、または生まれなかっ たと考えられた。 子供が出来なかったため、新しく子供を作るため5月に繁殖行動が起きたという仮説については、 今後、5月前後の観察や、多くの例を見つける必要がある。

(3)

5月の繁殖期での子供 9月16日に母親の後に巣穴から出てくる子供を1頭観察した。子供は樹上での動きがぎこちなく、巣穴 から出て間もないと考えられた。 ムササビは妊娠期間が74日で、子供は約2ヶ月巣の中で過ごしてから外に出てくる(川道1992)ため、 観察できた固体は5月の繁殖期での子供と考えられる。 <子供の成長> 特徴 巣穴から出たばかりの子供は成獣に比べて小さく、特に尾は細く短かった。これらの特徴は子供が成 長すると見られなくなった 巣外での行動 巣から出たばかりの頃は、巣から出ても1分ほどで巣穴へ戻り、巣穴から身を乗り出して外の様子を窺 っていた。初めて子供を確認した9月16日にストロボを発光させて写真撮影を行ったため、観察者を警戒 していた可能性がある。9月26日には巣穴のある樹と接している別の樹へ飛び移るのを観察した。 10月2日まで母親は子供と行動せず、巣から出ると子供を置いて飛び去っていた。 10月3日に初めて子供の滑空を観察した。子供は、先に滑空した母親の後を追って滑空したが、母親が 着木(滑空して樹幹に飛びつくこと)した樹の手前の樹枝上に着木した。12月5日には50m以上の滑空を 観察した。 10月17日に母親と思われる個体がナナカマドの葉を食べているのを観察したが、子供は観察できなか った。この時母親と思われる個体と約30m離れた場所にもう1頭別の個体がいて、母親と思われる個体と 鳴き合っていたが、子供なのかは不明であった。 <巣内の様子> スギ(樹高 27m・胸高直径 51 ㎝、2009 年測定)の樹洞を調べた。巣内にはスギまたはサワラの樹皮と ムササビの物とみられる毛が見られた(写真)。ファイバースコープでの撮影である。

(4)

<観察に利用した機材> 今までの望遠レンズはSIGMA100-300mmを使用していたが、F値が高いためファインダーが暗く、ピント が合わせづらいという欠点があった(写真A)。そこで奨励金を用いてF値の低いCanonEF-50mm F2.5を 入手し、撮影を行った(写真B)。暗い場所で、今までよりも撮影しやすくなったことから、今後の撮影 方法や新たな発見も期待できる。

写真A

写真B

アングルが同一でないため比較できないが、写真Bの方が明るい写真が撮れる。

写真Aはムササビが樹にいるところで、写真Bは、ムササビが滑空しているところである。

6 研究のまとめと今後の問題

2011 年に長野県林業総合センターで繁殖したムササビの観察から、以下のことが明らかになった。 (1)2011 年 1 月と 5 月に白い体毛の個体(メス)が中心になって繁殖行動が行われた。5 月の繁殖行動は、 調査地では初めて観察された。 (2)1 月の繁殖行動での子供は誕生しなかった。5 月の繁殖行動では子供が誕生した。 1 月の繁殖行動で子供が出来なかったので、新しく子供を作るために 5 月に繁殖行動が起きたという仮 説については今のところ例が尐ないため、調査を続ける必要がある。 (3)巣穴から出たばかりの子供は体が小さく、尾が細く短いという特徴があるが、成長すると見られなく なる。 (4)子供の移動能力が低いときは、親は単独で行動する。

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7 その他

参考文献

参照

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