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保育者・教員としての資質能力・ コンピタンスイメージの変遷について(1) ―保育・教員養成課程への入学志望動機及び取得予定免許資格の観点から―

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保育者・教員としての資質能力・

コンピタンスイメージの変遷について

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― 保育・教員養成課程への入学志望動機及び取得予定免許資格の観点から ―

門田理世・諫山裕美子

・寺地亜衣子

・沖本悠生

Illustrating Trends and Images of Competencies as Preschool

and Elementary School Teachers

― Examining Freshman’s Perspectives for Admission and

Certificates/License at the Four−Year Teacher Education Program ―

Riyo Kadota, Yumiko Isayama, Aiko Terachi, and Yui Okimoto

1.はじめに

VUCA world(OECD、2016)の到来が叫ばれる昨今、保育者・教員に求め られる資質能力・コンピタンスは、専門家としての経験や認知・スキルだけで はなく、VUCA world で子ども達と一緒に生き抜くためのキーコンピタンスが 求められている(OECD、2016)。わが国においては、文部科学省が昭和62年 12月18日付けの本審議会答申「教員の資質能力の向上方策等について」にお いて、教員の資質能力を「専門的職業である『教職』に対する愛着、誇り、一 体感に支えられた知識、技能等の総体」と定義づけし、普遍的な資質能力と社 会の要請に応じて可変する資質能力とに分別している(http : //www.mext.go. jp/b_menu/shingi/old_chukyo/old_shokuin_index/toushin/1315369.htm)。具 体的には、「教育者としての使命感、人間の成長・発達についての深い理解、幼 児・児童・生徒に対する教育的愛情、教科等に関する専門的知識、広く豊かな 1西南学院大学大学院生

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教養、そしてこれらを基盤とした実践的指導力が必要である。」(p.2)とされ ている。この答申において、果たして、ここで指し示す資質能力・コンピタンス は、保育者や教員を目指す学生にはどのように意識付けされているのであろう。 研究領域においても、資質能力・コンピタンスの内容として位置付けられる 実践知(Elbas,1992)、子どもの発達理解、保育理念の形成などは、保育の質 及び子どもの育ちに直接の影響を与えるとされるが、こうした実践知、発達観、 保育観の素地は、保育者として働き始める以前に既に確立されているとの知見 がある(Pajares, 1992; Kowalski, Pretti−Frontczak, & Johnson, 2001)。このこ とは、明確な目的意識と高い動機づけをもって養成課程へと進んだ人々の既知 を、養成課程での学修と経験を通していかに伸ばしていくかという責任だけで なく、いかに新たな意識や感覚を形成させられるかといった重要な役割を養成 機関が担っていることを自覚させる(Pajares, 1992; Lortie, 1975; Kennedy, 1997; Zeichner & Tabachnick, 1981)。実際、子どもにかかわるという営みは、

非常に複雑で、基礎的な知識だけではなく専門的な知識を要するため、適切な 養成機関における専門的な学修が必要とされる(Bowman, Donovan & Burns,

2001)。養成課程入学段階における学生達は、専門的職業に対してどのような イメージと認識を持って保育者・教員養成で学修しようとしているか。そし て、それは普遍的で変わらないものであるのか。筆頭研究者は、この研究命題 を探求するために2006年より毎年、四年制保育者・教員養成課程に入学した 1年生を対象にアンケート調査を行ってきた。本研究では、昨年度までの13 年間の学生達の意識の流れを分析することで、保育・教育における学生達がイ メージする普遍的コンピタンスと可変的コンピタンスについて考察を試みる が、本報告ではその中の入学志望動機及び取得予定免許資格の観点から検討を 行い、保育者、教員養成課程である学科の傾向、特色を明らかにしていく。

2.先行研究

(1)大学志望動機、教師・教職志望動機、保育者志望動機について 大学生の進学志望動機について、古市(1993)は「無目的・同調」「享楽志 向」「勉学志向」「資格・就職志向」の4つの因子を見出し、その動機の学系差

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を見て、さらに多重比較をしている。文学部、教育学部の女子は無目的に進学 してきた者が多いが、男子は何らかの目的をもって進学してきた者が多い点、 法経系や理工農系の男子は無目的に進学してきた者が多いが、女子は自分の意 志で進学してきた者が多い点を述べている。宮本(1991)は女子大学生の調査 から、「学業志向型」「享楽・追随型」「積極的なモラトリアム志向型」「家族尊 重型」「消極型」の5つの因子を見出した。高地(2009)は大学1年生に調査 を行い、教育学部入学者の特徴として、受験条件よりも学びたい分野やその学 部学科等の存在について重要視し、大学の教育システムや卒業後の進路にも関 心をもって大学選択をしていることに注目できると述べている。 教師、教職志望動機について、春原(2010)は教育学部1年生の調査で、「親 が教員」の場合「目的無自覚・同調」に正の関連があることを明らかにしてい る。大石(2013)は教育心理学を履修している大学3年生に調査し、教職志望 動機は尊敬できる恩師に出会ったという経験や、教師に対する安心感をもつこ とにより醸成され、教師への不信感は、自分のつらかった経験を活かしたいと いう経験活用志向を強める効果を持っていたと述べている。また、小学校の教 員を志望している学生に関して大石(2014)は、教授志向、恩師志向を強く持 ち、過去の教師との関わりで受容経験、親密経験が高く、傷つき経験が低いこ とを明らかにしている。 保育職への志望動機について長谷部(2008)は2年制短期大学と2年制保育 専門学校の女子を対象に進学志望動機を検討し、「肩書・経済価値」「教養」「無 目的・享楽」「資質能力伸長」という4つの因子を見出した。保育専攻学生は 積極的動機が強く進学目的が明確であり、専門的知識や技術について学び資格 を取得することへの積極的志向が強いため、専門的勉学に対する目的意識の明 確さが顕著であると述べている。また、保育専攻群と他専攻群を比較した際に、 「得意分野への志向の強さ、教養志向や肩書や地位・収入への志向や無目的に 学生生活をエンジョイしたいといった志向は他専攻群より低いことが示された (P.146)と述べている。大村(2011)は、短期大学保育系学生の調査から、大 学進学志望動機については「興味・専門性追求因子」「就職・経済価値追及因 子」を、保育者志望動機については「子どもとのかかわり因子」「保育者への

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憧れ因子」を見出している。また、長谷部(2004、2006)は、保育者を目指し た学生の半数は小学生までには保育者を目指し始めていたことを明らかにして いる。 これまでの調査では、渕上(1984)の進学志望動機に関する質問項目(45 項目)や教師志望動機尺度(春原、2010)を採用、または援用して行われてお り、特定の学部・学科への進学志望動機についての質問紙は作成されていない。 また、大学進学志望動機は社会的な流れにも大きく左右され、年代によって異 なる因子が抽出されることも考えられるが、先行研究における調査期間は単年 度、もしくは2年程度と短く、長期間にわたるものは見当たらない。大学進学 志望動機は単年度調査によって明らかになってきているが、特定の学部・学科 への志望動機については、時代背景に左右されない動機が抽出されることも考 えられ、長期間調査することで学部・学科の特徴を示すものを見つけることが できる。 (2)大学生の卒業後の進路について 学科種別による比較研究では、廣瀬、高良、金城(2004)は大学新入生を対 象とし、大学進学における学部・学科選択と就業意識に関して、「単一型」と 「多様型」という学部・学科種別による比較検討を行う研究を行っている。廣 瀬ら(2004)は、教員免許など特定の目的をもち、それに向けてカリキュラム が組まれている学部・学科に所属する学生を「単一型」、特にそのような特定 の目標はもたない学部・学科に所属する学生を「多様型」と定義した。廣瀬ら (2004)によると、入学時において、「単一型」の学生の方が、「多様型」の学 生に比べて、専門志向が高く、モラトリアム思考が低いこと、教師や親の勧め によって進学を決定している傾向が低いことを述べており、「単一型」の学生 が受験の段階で卒業後の将来も考え、具体的な目的や専門志向を持って入学し ていることを示唆している。さらに、現在の専攻・専門と将来の就職の関連に ついても、「単一型」の方が、現在の専攻・専門と関連のある仕事につきたい という明確な意志をもち、就職する際により多くの基準について重視すると考 えており、職業レディネスや進路選択に対する自己効力感が高いことを述べて

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いる。 また、上田(1997)は、学部・専攻分野の特徴や教育内容が職業選択と直接 には結びつかない人間科学部と外国語学部、教員養成課程とゼロ免課程が併設 されている教育学部の学生(2・3年生)を対象に質問紙調査を行い、進路意 識の観点から大学教育を考える研究を行っている。上田(1997)は、教員養成 という特徴が明確な課程と、学部や専攻分野の特徴が職業と直接結びつきにく い学部とでは、後者の方が卒業後の進路希望に「わからない」「迷っている」と 回答している学生が多く、卒業後の進路希望の明確さに違いがあると述べて いる。 以上より、特定のカリキュラムが決まっている学科とそうでない学科では、 進路希望やその意識に違いがあることが分かる。しかし、特定のカリキュラム が決まっている学科の中でも、進路希望やその意識は様々あることが考えられ、 進路希望に違いがあるのか検討する必要がある。また、田爪(2012)は、「従 来は主に短期大学においてなされてきた幼稚園教諭、保育士の養成が、近年4 年制大学においても増加する傾向にあり、そこにおいては同様の養成を行って いる短期大学に比べ、学生の将来の志望進路が必ずしも保育者ではなく幾分多 岐に渡っている」(p.46)ことを指摘している。入学時の学生がどのような進 路を希望しているか傾向を知ることで、学科の特性をより知ることにつながる ことが期待される。 (3)保育者・教員養成校における教員免許状及び保育士資格について 文科省は2000年に、「幼児教育振興プログラム」の策定の提言を受け、教員 が小学校と幼稚園の免許状を併せ持つことを促進するため、免許制度を弾力化 することを求めた。さらに、中央教育審議会「教職生活の全体を通じた教員の 資質能力の総合的な向上方策について(答申)」(2012)において、「国公立私 立大学の学部おける教員養成の充実」として①教員養成カリキュラムの改善、 ②組織体制、③教職課程の質の保証の3点を挙げている。今後教員養成校の学 部においては、複数の学校種を取得できる状況を維持しつつ、教員を志望する 学生に、より多様で質の高い教職課程の内容が求められているといえる。

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鈴木ら(2013)は、ある学校種の教員採用試験において、他の学校種の教員 免許を持つことを受験資格としたり、そのことが採用試験で有利に働いたりす る自治体が、2010年度に35県市存在し増加傾向にあることを述べている。上 記の答申を合わせて考えても、教員養成課程の学生にとって、複数免許を取得 することが採用の可能性を高めるという鈴木らの考えは一考に値する。鈴木ら (2013)の調査によると、学生が取得する予定の教員免許の校種数は、「性別」 「教職志望度合い」「親の職業」との関連を持ち、両親のいずれかが教員の場 合 に 多 く の 校 種 の 教 員 免 許 を 取 得 す る 傾 向 が 示 さ れ て い る。一 方 で 中 村 (2013)は、「教員養成課程・学部では、複数免許取得のために修得単位数が課 題になる」(P.44)ことを挙げ、複数免許取得を単純に進めていくのではなく、 CAP 制度(履修登録単位数の上限を定め学生の学修時間を保証する制度)や GPA 制度(良い評価を得た学生にメリットを与え、学習意欲を喚起する制度) を採用することで、その免許取得の課程において質の保障を高めていくことの 重要性を述べている。 また、幼稚園教員免許・保育士資格の2つに目を向けると、内閣府は2012 年8月、幼保連携型認定こども園に配置される職員として「幼稚園教諭免許状」 と「保育士資格」を併せ持つ「保育教諭」を位置付けた。幼と保どちらか一方 しか免許・資格を持っていない場合も、改正認定後5年間にもう一方を取得す る必要性を掲げ、特例措置も設けている。保育現場においてはよりいっそう幼 稚園教諭免許状と保育士資格を両方取得していることが重要になると考えられ る。厚生労働省(2014)によると、幼稚園教諭免許課程を有している施設は、 2012年現在で464か所(入学定員47,490人)存在し、2010年度に指定保育士 養成施設を卒業し保育士資格を取得した者のうち87% が、幼稚園教諭免許状 を併せて取得していると報告している。 以上のことから免許・資格の取得に関しては、小・幼でも幼・保でも複数の 取得をする方がいいという傾向にある一方で、その取得課程の質を保障してい くことや専門性を高めていく必要があることが分かった。しかし、2種の免許・ 資格についての取得傾向が教員養成学部、一般学部の教職課程において調査さ れていた研究はあったものの、小学校教諭・幼稚園教諭・保育士資格の三種に

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ついて、4年制大学ではどのような取得傾向があるかという研究や、継続調査 などは行われていない。本研究ではこの三種が取得できる学科として学生の傾 向や意識調査を行うことで、複数免許取得について考察することが可能となる。

3.方法

(1)調査対象者、調査実施期間 九州地方の私立文系4年制大学で小学校教諭・幼稚園教諭・保育士資格を取 得できる学科に通う大学1年生を調査対象者とした。2004年から2016年まで 13年間継続して調査を行った(2008、2009年を除く)。 4月に入学して、1年生全員が受講する「保育原理」(卒業必修科目)の講義 の1コマ目の一部を使用して質問紙調査を実施した。調査数については表1に 示す。 表1.アンケート調査数 実施年 2004 2005 2006 2007 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 計 調査人数(人) 123 116 97 126 113 122 103 115 117 115 98 1245 有効データ数(人) 123 118 99 128 113 125 109 122 122 120 105 1284 有効回答率(%)100.0 98.3 98.0 98.4 100.0 97.6 94.5 94.3 95.9 95.8 93.3 97.0 (2)調査内容の概要 質問紙の内容は以下である。 選択肢回答 1)児童教育学科を受験した理由 2)これからの時代に求められる資格・免許(自由記述)とその理由 (自由記述) 3)保、幼、小の免許に関して、これからの時代に一番活かされると思 う資格・免許とその理由(自由記述) 4)卒業後の進路 5)現在取得しようと思っている資格・免許

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自由記述回答 1)普段生活の中で大切にしていること 2)理想の先生・保育者とその理由 3)これまで生きてきた中で一番楽しかったこと 4)乳幼児に最も大切だと思うものとその理由 5)保育者にとって一番大切だと思うこととその理由 (3)倫理的配慮 調査対象の学生に、研究の目的を伝え、質問紙調査を研究に使うことの承諾 を得た。研究の実施に当たっては、個人情報の保護に配慮した。 (4)分析方法 本報告では、質問紙、選択肢回答 1)、3)、4)、5)の4つの設問から、 理由を除いた選択肢回答のみを分析の対象とした。なお、学科の大まかな特性 を把握するため、2)の設問と理由の記述については分析の対象から除く。 13年間のデータを従属変数として、4つの設問においてクロス集計と HAD (清水・村山・大坊,2006)を用いて x2検定を行った。

4.結果と考察

(1)学科への志望動機、及び受験した理由について 学科への志望動機、及び受験した理由を複数回答で尋ねた結果、有意差は見 られなかった(図1)。13年間を通して「教師・保育士になりたかったから」 という理由が最も多く、この結果から、ほとんどの学生が、卒業後の進路を明 確に描いた上で学科を選択していることがわかる。次いで2番目に多い理由は、 「(免許・資格が)三種類とれるから」である(2012年を除く)。

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0% 20% 40% 60% 80% 100% ᢎᏧ࡮଻⢒჻ߦߥࠅߚ߆ߞߚ ⷫߩ൘߼ߢ ዞ⡯ߦ᦭೑ ⷏ධߛߞߚࠄߤߎߢ߽ࠃ߆ߞߚ ᧄᒰߪઁߩቇㇱ࡮ቇ⑼ ᧄᒰߪઁߩᄢቇ 㝯ജߩ޽ࠆᢎຬ ቇᩞផ⮈ ਃ⒳㘃ߣࠇࠆ߆ࠄ ߥࠎߣߥߊ ߘߩઁ 図1.受験理由(13年間の平均) 小学校教諭免許・幼稚園教諭免許・保育士資格の三種類を選択して取得でき る学科であることが調査対象である大学の特色の1つであり、そのことが志望 動機、受験理由につながっていることがうかがえる。また、毎年1割強の学生 が、「当時の成績(本当は他の大学に行きたかった)」と調査対象である大学を 第一志望としていないことが分かる。 また、「(調査対象である)大学ならどこでもよい」、「本当は他の学部・学科 がよかった」「なんとなく」の3つの回答が3.3% 以下であることから、調査 対象である大学の中での学科選択には、強い志望動機が明示された。 (2)活用される免許・資格の捉え方 これからの時代に1番活かされると思う免許・資格について尋ねた結果、 5% 水準で有意であった(図2)。 13年間を通して、「三種類とも全て」が1番多く50%∼63% であった。ど の年代においても、半数以上の学生が小学校教諭免許・幼稚園教諭免許・保育 士資格の三種類の免許・資格が卒業後に活かされると回答している。 「これらの免許・資格はあまり重要でなくなる」と答えた学生も毎年1∼4 名いるが、その理由は「資格や学歴を重視することよりも、人間力が求められ る」や、「免許・資格はあくまで型だけのものでしかないから」など、免許・ 資格を形式的なものだと捉え、それよりも学び方や自分の人間性などが大切な のではないかという意見であった。

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0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 2016 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2007 2006 2005 2004 ଻⢒჻ ᐜ⒩࿦ᢎ⻀ ዊቇᩞᢎ⻀ ৻⥸ડᬺ߳ዞ⡯ ᄢቇ㒮ㅴቇ ⾗ᩰขᓧߩീᒝ ߹ߛㅅߞߡ޿ࠆ ߘߩઁ 㧺㧭 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 2016 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2007 2006 2005 2004 ዊߩߺ ᐜߩߺ ଻ߩߺ ዊߣᐜ ዊߣ଻ ᐜߣ଻ ਃ⒳㘃ߣ߽ోߡ ޽߹ࠅ㊀ⷐߢߥߊߥࠆ NA ̪NA㧩ή࿁╵ ̪୯0 ߇޽ࠆޟᐜߩߺޠޔޟNAޠࠍ㒰޿ߚ 7 㗄⋡ߢ x²ᬌቯ Cramer’s V=.113 5㧑᳓Ḱߢ᦭ᗧ p=.03 図2.活かされる免許 また、「幼稚園教諭のみ」の回答はほぼ0% であるが、「三種類全て」や「小 と幼」「幼と保」を合わせた回答数が多かったことから、ほとんどの学生が、幼 稚園教諭免許は活用されると考えていることが明示された。 (3)入学時の進路選択 卒業後の進路について尋ねた結果、有意差は見られなかった(図3)。 この設問は、単数回答を求めているため2つ以上選んでいる回答については 全て「NA」とした。13年間を通して、「小学校教諭」が1番多く、2016年に ついてのみ小学校教諭が有意に多く、保育士が有意に少ないという傾向が見ら れた。 図3.卒業後の進路

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0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 2016 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2007 2006 2005 2004 ଻㧗ᐜ㧗ዊ ߘߩઁ5㗄⋡ 表2は、進路選択を保育職(幼稚園教諭、保育士)・小学校教諭とそれ以外 の職で比較したグラフであり、そのデータをグラフで表したのが図4である。 まず、保育士と幼稚園教諭を合わせた数と小学校教諭のみの数に着目すると、 2005年は同数、2006年のみ小学校が0.9% 少なく、残りの9年は全て小学校 教諭の方が多いことがわかる。つまり、2007年以降の進路の希望傾向は1番 目に小学校教諭、2番目が保育職であった。 図4では、「保・幼・小のいずれかの職を就こうと思っている」については、 61%∼79% であり、調査対象である学科に入学した学生の6割以上は入学時 に卒業後の進路をはっきりと持っていることが明らかとなった。それは、教員 免許という特定の目的を持ちカリキュラムが組まれている「単一型群の学生が 受験の段階ですでに卒業後の将来も考えており、入学時においてより具体的な 目的を持ち、専門志向をもっている」(P.249)という廣瀬ら(2004)の見解 と同じである。 一方で「迷っている」と「NA」を足した2∼3割の学生は、入学当初にはま 表2.教職・保育職とそれ以外の比較(%) 2016 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2007 2006 2005 2004 保+幼 17.1 26.7 25.8 26.6 23.9 23 29.1 29.6 40.2 34.8 35.7 小 52.8 38.8 39.2 41.4 43.4 37.7 39.8 37.4 39.3 34.8 41.8 保+幼+小 69.9 65.5 64.9 68 67.3 60.7 68.9 67 79.5 69.6 77.6 その他5項目合計 30.1 35.3 35.1 32 33.6 39.3 31.1 33 20.5 29.6 22.4 図4.小学校教諭・保育職とそれ以外の比較

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だ進路を迷っていることがわかった。 (4)取得しようと思っている資格・免許 取得しようと思っている資格・免許について尋ねた結果、1% 水準で有意 差が見られた(図5)。 13年間を通して「小と幼」が1番多く、次いで「幼と保」が多い。「小と保」 は少ない。2つ以上を選択している学生が多い中、2016年は「小のみ」が約 30% と有意に多く、2004年は約7% と有意に少なく、年代毎の違いが見られ た。受験理由や活かされる免許で三種類と言及しているものの、「三種とも全 て」は0∼8% であり、実際に取得しようとする学生は少ないことが明らかで ある。免許・資格別の比較では(図6)、「小のみ」が有意に多かったが、2016 年以外は、幼稚園免許の取得予定が78%∼88% と多い一方で、保育士資格は 27%∼47% と半数に満たなかった。また、小学校免許取得者は57%∼75% で、 毎年半数以上の学生が小学校免許取得を予定している。図7では取得する免 許・資格の数を比較した。一種類と二種類で x2検定すると1% 水準で有意と なった。単独で免許・資格を取る学生は少なく、二種類以上の免許を取得する 傾向が強いことが明示された。 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 2016 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2007 2006 2005 2004 ዊߩߺ ᐜߩߺ ଻ߩߺ ዊߣᐜ ዊߣ଻ ᐜߣ଻ ਃ⒳㘃ߣ߽ోߡ ขᓧߔࠆߟ߽ࠅߪߥ߆ߞߚ ̪୯0 ߇޽ࠆ 5 㗄⋡ࠍ㒰޿ߚ 3 㗄⋡ߢ x²ᬌቯ Cramer’s V=.149 1㧑᳓Ḱߢ᦭ᗧ p=.000 図5.取得しようと思っている資格・免許

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0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 2016 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2007 2006 2005 2004 ዊ% ᐜ% ଻% (5)学科13年間の傾向・特色 設問(1)∼(4)の結果から、本学科の学生は、「保育者・教師になりたい という強い教職志望をもち本学科を選択しており、入学時にすでに卒業後の進 路も見据えている。また、取得する免許・資格を2つと考えている学生が多く、 三種類全てを取得しようとする学生は少ない。そのうち、幼稚園教諭免許はほ とんどの学生が取得しようと考えている」という結果が得られた。 どの設問においても、若干の差が見られる部分もあるが、総じて大きく変化 している部分はなく、この13年の間で学生の志望動機や進路選択は似通った ものであり、時代背景による変化は感じられない。ただし、2016年だけ、進 路選択に「小学校教諭」と回答した学生が多く、免許取得も「小のみ」が多 かった。何故、特定の資格・免許を取得しようとしているのかとの関係性は選 択肢回答を分析した今回の研究からは明らかにできないがこの傾向が、次年度 以降も続く場合には、何らかの要因を探る必要があるため、アンケート項目の 精査も考慮に入れた、継続調査が必要である。また、教員採用試験の動向や保 育士の労働に関する理解のされ方など、社会動向との分析が必要であることも 示唆された。 また、受験理由として「三種類全てとれるから」という回答が多く、活かさ れる免許・資格でも「三種類全て」が多く選択されているが、実際には三種類 全ての免許・資格を取得しようと考える学生は少ない。このことは、取得すべ き単位数の増加や時間割の余裕の無さ、日々の大学生活でのバランス等、学生 達の現実感覚を浮き彫りにしている。 図6.免許・資格別の比較

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今回、縦断的に保育者・教員養成課程に入学したばかりの学生にアンケート をとり、分析を行った結果、13年間の中で大きな変化は見られなかった。こ のことは、保育者・教員になることを主眼に置いた学科の特性を裏付けている。 調査を実施した2004年から2016年までの間に、小学校学習指導要領・幼稚園 教育要領や保育所保育指針の改訂、子ども・子育て支援新制度の導入、様々な 教育問題の散見など社会的変化が見られたものの、研究対象である学科に入学 してくる学生は同じような傾向を持っており、つまり、研究対象である学科は 時代背景にかかわらず教員免許・保育士資格の三種類を選択でき、また、同時 取得できることに意義があると言える。しかし、今後は少子化問題から学生数 が減ってくることを鑑み、答申(2012)でも述べられているように大学のカリ キュラムや特色づくりへの工夫も求められてくることは必至である。 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0 2016 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2007 2006 2005 2004 1⒳㘃ขᓧ 2⒳㘃ขᓧ ̪1 ⒳㘃ߣ 2 ⒳㘃ߢᬌቯޔCramer’s V=.152ޔ1㧑᳓Ḱߢ᦭ᗧ p=.006 図7.取得免許数

5.今後の課題

今回は、13年間の学生達の入学志望動機や免許資格取得傾向についての検 証を行い、保育者・教員を志望する学生達の入学理由や免許取得傾向が変わら ないという入学時の将来への方向性を示した。次項ではどういったコンピタン スイメージをもって入学してきているのかを質問紙の自由記述と選択項目の関 連から検討していくことを目的とする。また、そのコンピタンスイメージは社 会的動向との関連があるかについて考察することも必要だと考える。 また、免許取得の傾向として2種類を選択している学生が多く見られたが、

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その2種類にした理由は本研究からは見えてこない。質問紙を改訂し、選択し た理由も尋ねていきたい。他にも、進路選択で「迷っている」学生が、どのよ うな点で迷っているのかなど、質問紙修正の必要性が示唆された。 本調査では卒業時に同様のアンケート調査を行っていることから、入学時と 卒業時の意識の変容も検証することが可能である。これまでの13年間のデー タに加えて、更なる調査を重ねていくことで、学生が抱く保育者・教員に求め られる資質能力やコンピタンスイメージを明らかにしていきたい。

謝辞

本研究を進めるにあたり、データ分析に際してご指導を頂きました西南学院 大学人間科学部心理学科田原直美先生に心よりお礼申し上げます。記してここ に感謝いたします。 <引用・参考文献>

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参照

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