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水田裏作の経営経済的研究(第1報)--水田裏作における「水」の制約作用について---香川大学学術情報リポジトリ

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第5巻第3号(1954)

水田裏作の経営経済的研究(第1報)

一水田裏作における「水」の制約作用について−−

247

森 和 男

Economitalstudies on the double−CrOpping−paddyl.(PartI)

On the restr・ictive effect of“waterr”on the double−CrIOppingin the paddダ・field

by Kazuo MoRI

(Received NovemberI30,1953)

次 第1項 裳作物の収益性に及ぼす水の影響につい て(以上太箸) 第2項 表作物と 関係に及蝕す水の影響について 第5節 結 論 日 第1節 課 題 第2節 ∴水田裏作を制約する諸要因 一特殊制約要因の抽出− 第3節 経営的にみたる裏作十殴の制約機構につい て −・考察方法の検討一 第4節 水田裂作の相対的有利性に及ぼす「水」の 影響について 第一節 課 琴 戟彼我国の農業経営ほ.,農家戸数及び幾象一・戸当り家族員の増力胴こよつで−・層零細化するに奉った ●● が,このことほ我国の農業経営をしてより一層の集約化を要請せしむるであらう.かかる場合,同・一 耕地に対する作付回数増加に・よる土.地の利用の高度化は,いわば軍営桝埋蔵横の実質的拡大という意 味で経営の合理的集約イヒに対して重要な意敦を窮するものである. 字 家数及び作付延面領又ほ栽培≡現在面積全国綜匡衷」(農林絆計月報第105号昭和22年10月)から金国 平均排地利用率を算出すると如曲全体では127.′3兄であるが,これを田畑別にみるキ田125小6免職129一5 %であり,畑の方が梢高い程度であるが,永年作物と.しで一・般的にはその利細率100鬼と考えられる 県樹,桑,茶を除いた場合には,仙利用率は134兄となって水田のそれに比して約10先程度高くなるで あらう. 次に本論で直接問題とする冬季期間(これを通俗吊語に従って寡作期間と云おう)における土地利 用率を同じく田畑別,地域別に比較表示すると第1表の如くである.、(誌1) 本表により先づ全国平均について田畑別にみると,仝冬季延面積に.よる利用率(田畑別の秋から早 春にかけての作物栽培延面積を軋畑の面積でそれぞれ割り,その商に」00を掛けて算出したもの) でほ.水田の51%に対して畑は95%,2月1日現在立毛面積による利用率では,水田の41先に対し畑 は67%で,いづれも水田は畑に比較してかなり利用率が低くなっている..さらにこれを蔑区別に.みる と,概して東北,北陸などの所謂積雪寒冷地背ほど田と畑の利用率の善が大きく,四国,九州などの西

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香川県立兵科大学学術報台

248

南暖地ほど雨着の 利用率の善が′卜さ くなっていること が知られる なお「’畑地の年 2回以上の利用率 は,がいして水田 めそれに勝ってい る.2見1日の利 用率と冬季金紋の 利用率の開きは, 水田ては最高の借 を示す地方でも22 %であって.平均 10.%に過ぎない が,畑では最高3≦) %, し∴−畑地の方がほ るか近大きい羞を 示しているn」而

第1表 嘩区別水田翠び畑地におけ季冬季利用察:19碍、.′ _ ′_一 ト〉L

1)「農簡統計月報」77琴に・よる. 2)普通水田,普通畑というのほ,桑,果樹等の樹木を除いたもの 3)全冬季は2月1日当日作付されている前に夏作後植えつけられ牧麓されたもの(例,大 板)及び2月用後真作まで倣痙する目的で植える予定の作物(例,馬鈴薯)を含む 4)中部は,東海東山のうちから≡畳県を除き,近裁にほ三畳県を含む.九州ほ鹿児島 を;、∴を嫉く・ 5.)薙射貫紺野富雄「水田翼作の論理」(農菜際会研究,第哨集2弓華刷)1ユ6貫から 転載したものである.

して「このことは水田裏作における作物選状が,冬期半年を対照にした顆作やそれについてみて′も,

●● 畑作よりもより限られているということを示すものであるい.」(註2)

以上我国における(但し北海道鹿児島を除く)排地の利用率を田。畑別に比較せる結果によれば,と

も角も水田は畑に比して排地利同率において劣っており.特に金冬季における利用率,所謂寡作率に

おいて著しく低いことが知られるのであるいしかもこの田・畑蘭の利用率の相異は,東北区とか北陸区

などの所謂積雪寒冷地城において大きく,西南境地に・おいて著しく′トさいと云うように,農区によわて

かなりの相異があることに気付くのである.

そこで次の若干の問題が生ずる.即ち,(1)何故に水剛こおける裏作はこのように制約されているの

であらうか..掛こ寡作乃室二毛作として多くの共通性を有する筈の畑における寡作に比較し′て相対繭

により硬く制約されているのであらうか.水田寡作には畑における轟作に対哀して,如何なる特殊的 要因が介在し,それが如何なる作用を通して水田寡作を相対的により強く制約しているのであらうれ

(勿何故に周・相聞の秋冬期耕地利用率の開きにおいて農区間に著しい差異があり,概して東北とか

北陸などの寒冷地方におけるほどその開きが大きく畑における寡作に比較して水田に・おける贋作が相

対的により強ぐ制約されていることを示すのに対して,四国とか九州地区の如き西南畷地において

はその開きが′トさく,ところにより畑のそれに比して水防の芳が高くさえなっているのであらうか,

という商港である

かくて本稿はこの問題について経営技術的観点から若干の考察を試みんとするものである.若し水

田裏作における特殊制約要因及びその制約機構の経営後術的解明こそ水田寡作における問題の所在と

その克服えの道を明らかにする第一・歩であると信ずるからにほかならない.

〔話1.〕木節及び次節で引用した諸調査は掛時及び戦後の混舌と期において行われたもので,耕地面積や耕地利開 率が著しく小さくなっているように・統計そのものとしての信願性は低いと見ねばならないが,然し表にお ける絶対数よりもむしろそれ等数字の比率の大小を・問題とする水稲においては,水田放び畑に∴ついての農家

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第5巻第3号(1954) 249 の申告態度が山応ひとしいとする限り,他に拠るべき適当な全国的資料がない現状にぉいてほ制覇に耐える \ を思われ私 】 〔註2〕紺野重雄;水田罪作の論理,一Pl王6・んユ17−(季刊「襲業絵合研究」察6巻第2専政刷)

第、ニ節 減由裏件を制約する諸要因

さて,それでは†体水田裏作を畑裏作に対して相対的により強く制約する原因にほ,如何なるもの が挙げられるか. 第二衷 秋冬作を行ほざる主要原因 (A表) 全 国 調 査 鹿づこれを知る 手懸りとして,農 林省が昭和20年2 月1日現在で全国 頓誘わた調李結 果、「秋冬作ヲ行ハ 腐′レ主要原因」を 若手整理し,畑の 場合と対応させて 表泉するキ舞3表 ?如く・至ある. こ と,寡作を制約す る原因にほ,田に も和正.も共通する と考えられるもの が〔註2〕殆どで あって,たた水田 寡作の場合にふ、 ては,「排水不良」 とか「水利関係」 と云うやうな「氷」 と関連サる原因が 田 畑 【】

訂「㌃T訂1表

原 因 名」両 税 町 ,810.C 横 曹 長 ∴期

町 69,629.∈ 3,630一.:

日 蔭 地 寒 冷 地 土地顛良工着施行 災害復旧被蜜常習他 工場などの敷地予定

積 雪 ■長 期l439

山 蔭′地\寒冷地 j 12,293ハE

土地嶺良÷土事施行145,549”:

災昏復旧被落常習地 2,フ52一ノ4 排 水 不1魚 水利関顔(用水不足)

∵ 628,386..4 4,225.2

−一 _

旦⊥十

劇ー

忘 早 如 挿 苗J

− 、 撃埜攣塑讐型⊥ −▼血_

簡 床 予 定⊆ 259..〔

計 ‡ユ95、,2ユ4りf 1,3フ9,与26…卓 〔’表諒〕(1)享蓼原因を摘録したるものなるを以て麻衣の合計両横は秋冬作を行はぎる 普通田或ほ普通畑の絵画穏を表示するものに非ず. (2)牒表は 醸和20年2月1日農林省調査「秋冬作綜合作付契態調査結果声.」 (藤林統計月報7フ琴)による 特殊な制約要因として存在していることが知られる 而てこのととほ水田寡作が耕地の冬期間利用という意味で.畑寡作と共通した多くの点をもつ七ほ いるが,ただ水田寡作の場今にをま,本来水稲を湛水排作すべく用者された水田を排水することによつ セ乾土状態とし,これに畑作物を栽培するという謂はゞ湛水耕作と乾土排作が交替する形で成立して おサ,一周して乾土所作に鱒始する畑寡作と.,耕作扱術上の相異を有することからうまれる当然の帰 結キ云える、であらう 廃って水田裏作の制約機構の究明は、特殊制約要素と.しての「水」の介入が,右の排作扱術上の相異 を通して,寡作一一・蝦iこ共通する制約を水田寡作の場合において,畑寡作の瘍合に比し如何ように強化 するか,ということの解明によって有力な・−一山つの辛がかりを争えられるノと患われる. そこで次に寡作・−1股の制約機構について,簡単に触れておかなければならない. 〔詳二〕第二2表の原表は煉る郷顔としており,その分猥も暖味であつで十分な資料とは云えないが,全国的調査と しては殆ど唯一のものと考えられるので採り上げた而して,太東め作成に当り,水田における「休閑」及 び「早期挿苫.」と,畑におけるJ ̄地力維持」放び「春夏作予衰」は,何れもその内容が明確でないがト・「休

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香川県立蔑科大学学術報告 閑」主云ふ′ものあミニ蓮期間の土地利用を療塵と\するこ主に.よづて土地利用手段の節軋別して労働の分 配をよくし,併せて地力の回復,維持を目的とする限り,それは労力事情と地力保持の関係に分解し得ると 見倣亘るであろうし,また「早期挿餅」か繭ゐ田植を普通戴堵め場合よりも阜ぐするるて■とによつで;▲二山間 地や寒冷地における水稲冷害の危険を廻避し或ほ稽の生育期間を延長して,牧盈の増加を計ると共に,労力 の季節的分配を良くする事を目的として行われる三ものギ見ら煎る鱒ウノ、、早期坪秩を理由とする勢摩の排除 ほ,その労力的関係と相ま・?て,畑における「琴革作予定」に対応する制約原因に分解し得るであろう・ なお個別戯家の立場からする時,「肥料不足」別して「唯厩肥不足」などが水田襲作の制約罪因として挙 げられる場合が少くないが,このことほ畑裏作の場合にもみられることであり,また水田襲作における「水 の支配の不完全」とも関連するから,ここ・さは特別にとりあげない. 250 第三節 経営ヨ引こみたる裏作一版の制約機構について 本邦庭おける秋冬作を溜り約する原因は,前述したやうに頗る多いけれ′ども,それ等が具体自庇果す 制約作用と云うものほ.これを個別経営の側面から見る限り,朗与の圃場を−1竜作として利用す芦瘍合 と寡作を導入しで二毛作として利用する場合と,何れが鼻糞感営乃至農家経済全体からみて相対的に ●● より有利であるか,と云う評価乃至横沢に対して,二毛作化を相対的に不利なものと.するように作用 することに.ほかならないと.いい得るであらう. ところで寡作とほ,−・般に冬期間遊休状態にある土地を利用して冬作物(或ほ脊椎軌秋作物等あ 主作物薮外の作物)を作付け.主作物(主に真作物)と結び合わすことに依って縫直新地の姉纏高 めるとともに,主として経営に沈下固定されている家族労働力や役畜などの資本財隼軍備を与え,そ

●○ のより有効なる利用を実甥して経営純放届を高めること,換言すれば個別経営に於いて行われ卑農業

●● 生産におけるオp′ヾ・−ヘッドコスト(OVerheadcost)をより良く節約することによって濃紫準単 純収益乃至螢業所得を増大することを主なる削勺と・して行わ考tるものであ芦と−一俄には寒率すること が出来ると考えるい この窓掛こ於いてほ水田裏作物もまた農薬生産に於ける生産要凛利用の季節性を羊 対応する鹿皆の多角イヒ乃賓集約化の一山一方向であり,その義則性は,表作と結びつけられる裳作物自体の 放最或ほ粗放是の大いさに依存することほ勿論であるが,その寡作物の収益性たるや上述した裏作の 性格から多分にその生産に要する生産要素の利用を通じて,経営蓼索に対する他部門との問の利用共 同関係に影感されるもの主いわなくてはならない 他方盛簸経営に対して多面化を強制サる農業生産の季節性は,我国の冬作物として最も普遍的に広 く栽培されている麦その他の食模作物を中心として考える限り,気象条件との関連においてその程度 に差異があるとは云え∴若干の人々によっても既に雅粍されているやうに(註1)・一般に冬作物と夏 作物との間には季節的な接触或は妥合がみられる場合が多くr,寡作物を導入しで二毛作化すること は,表作物の収量とかその安定性に影響(多くはマイナス的影啓)を及ぼすばかりでなく,作季や土 馴犬態えの影響その他を通して施肥盈とか,或は作物交替に伴う労働の集積によって所謂農繁期労働 のピークを激化するなど,土地利用手段の投入利用面にも亦影静を及ぼすことが認められる..(註2) 樅つで二毛作の−・毛作に対する相対的萄利性ほ,単に導入される寡作物自体の収益性に左右される ばかりでなく,寡作物の表作物への影響が当然考慮されなくてはならないい即もこの関酪を公式化す るならば次の如く示されるであらう Ma・Pa−Cl≧Ma(1−m)Pa+Mb・Pb−C2(謎3) ● 但し上式に.おいて Ma=a一作物(表作物)ヲ・−・毛作トスル場合ノ収穫安定度ヲ考慮ニ入レク収量 Pa=a作物ノ Cl=a作物ヲー・毛作トスル場合二必要トスル経営費額

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第5巻笥3骨(1954) 251 m=a作物がb作物(裏作物)トニ毛作サレルコトニヨツテ生ズルa作物ノ平均的ナ減収率 Mb==b作物(寡作物)ノ収穫安定度ヲ考慮セル散見 Pb= C2=a力作物ヲニ毛作・セル場合ニ要スル経営費額(証4) 斯くしi1.二毛作化の相対的有利性ほ,(1)Mb・Pbの大いさ,(2)mの大いさ,@)Clに対す・るC2の大い さ,㈲Ma・PaとMb・Pbとの相対的な大いさ,如何にかかるものと.考え.得るでぁらう小 而てこの瘍合,経営として考える限り,当該圃場の二毛作が許容せられるのほ,二毛作化す為場合に 挙げ得る経営金体としての収益が,表作物を一・毛作せる場合に挙げ得る経営全体とt/:ての緬収益より も多いか,少なくとも等しい場合である.従って経営金体と・の関連において各項を考えるな Mb・Pbはb作物の収量(Mb)と価格(Pb:)の相乗積にほか寧らず,しかもb作物の庭億価格乃事価値 (この場合所謂副産物のそれも含めて)ほ,橋場に対する交通地位と共に・経営内諾部門,或は家計部

門との補完関係(complementary relation)乃寄生産物利用共同関係(Verwer・tungSgemei−

nsehaft)にも亦依存することが大きく,また血の大いさほ表作物(a作物)と農作物(b作物)との 土地に対する空間的。季節的利用関係貞慶びに地力利用の諸関係に左右される意味において,土地利用 共同(Bodennutzungsgemeinschaft)の関係につらなり,更に.C2の大いさは,経営における生産手 段利用における経営内他部門との神合成ほ競合関係(supplementar・yOr・COmpetitive r・elation)

乃壷土地利阻手段共同関係(Bodermutzungsmittelgemeinschaft)によって強く影響されると

云わなければならない..この意味においてほ,二毛作化乃至寡作−・股の相対自勺有利性は,経営内緒部門 乃至兼副菜部門,さらに進んで家計部門などとの共同関係を通して強く左右されると云ひうるであら う.(鼓5) ●● 従って我々のこゝでの課題,即ち何故に水田に・おける基作が畑におけろ寡作に対して相対的により 強く制約されるか,と云う問題は.水田寡作がもつ特殊制約琴因たる「水」やミ,如何に上記の鱒殊にお ける経営費素の利用共同関係を喝して,水田寡作の相対的葡利性を規定する上において,換言すれば上 記開陳式の諸項の大いさをどのやうな方向に/動かすこと.に・よつて,水田における寡作を畑における其 ●● 作に・比して相対個勺に・より強く制約するか,ということの究明に移行させることが払来ると.考えられる たゞこの場合,考察を容易且つ明確に・する薦には,次の如き仮定を■前提として出発し∴若干の理論 的尭察を行い.しかる後途次現実への接近を試みることが心要であらう. 前提,(1)考察の便宜上,考察地点を水田寡作限界地城とするとともに,水田及び畑における寡作物 (b作物)をいづれも麦類と.する“なお水田の表作が水屑であることはこゝでの「水田裏作」の定義 上云うまでもない (勿排地利用方式は,同一・経営内においても,田畑のおかれた位置(住宅よりの距離など)や地勢. 土壌条件などの諸条件とか,経営要凄の量的・質的な在り方,経営者の能力或は経営者の選好などの 経営内部条件等に・よって影響されるが,当面の考察においてほこれ等の条件を一切捨象し,これ等の 条件をほゞ同列において水田寡作における「水.」の影響について考察することとする 〔竃1:〕例えば,岩片磯堆:食糧生産の経済的研究,184真似下「麦作と夏作の結合生産性」,大川一旬;食糧経済の 理論と計測・16頂,米倉茂俊;輪作伝おける裏作と稽作の費用並びに収監比較(盛業及園芸第13巻6号)などu 〔註2一〕この具体的な事例については,森和男・菊地泰次‥広島県山間部における水田裏作の研究(京都大学戯林経 済教室刊農村経済調査彙報窮15号)フ3貢以下,拙稿「個別腰衣の分析を通して−みたる水田裏作」を参照されたい. 〔註3・〕この関係式に示される諸項の具体的な大さ乃至構跡よ,考察の側面(phase)を異にするに凝って変って くることに注意されたい.即ち表作物を塵作した場合と袈作を入れこ竜作とした場合とに挙げられる収益 を比較する場合,それ等を他より全く独立して営まれるものとみて計算する場合には,それ蔓り他へ仕向けら れたもの一切が,それぞれの粗収益を構成し,飽から仕受けたもの一切がそれぞれの経営費となるのに対し て,これを嘩に農業所得の軌嗣こ参加する所得狸得の一手段乃至部門とみる時には,窺営内部で行われた取

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香川県立農科大学学術報告 252 り引額は,粗収益に.も,経営費の′申に.も・一切加算されないと竜うが如ぐであるら なお承叉において述べた如く,表作を一再作とした場合と,裏作を入れてこ宅作にす早場合の相対的有利 性を規契に.おいて庭番的に決定するものは,いづれの場合が,経営全体としての経常純収益或は盛家折得を大 ならしめるか,と云う点にあるのであるから,JlD・B】ack等に従って,’てbud?et?nalyses”のカ準を琴って綜

●● 合的にみることやミより霊夢であろう・・然し上描関係式の如きものに立脚して,ニ葦作化の相対的有利性を考

えることは〝budget analyses〝 の為の重要な前提であるばかりでなく′,この関係式を用い,考察側面の 必要に応じ各毯の経常概念を虚礼計算してみることは,たとえ作付男式相互の相対的有利嘩比較の鱒療と して企業利潤や,部門経営紙倣益或は家族労働報酬額乃至1日当り家族労働報酬額などの算申が,余りヤ羊・も 推定評価の占める割合が多く,煩雑かうかえって適正でもなく,孝た必塵セもない,と云う琴昧の批判(.T・ D/Black)を受けるとしても,現象理解の手段として,なお捨つべきものではないと思われる..なお上述匿

つい七ほ,J∴D.Black and others:封arm managem占nt‖(194フ)p≦28以下の“D6termining the mostprofitablecropcom扇nation”を参照,普た「神奈川県農業の奨態」第4輯「水田裏作に関する醜 査」L(神奈川県輿林部,昭和盛年3月)は裏作物と水稽との感係を湾察して,凍文関係式と二極めて類似Lた a(1一血)p・十bq≧1pを示している。未来ほ別個の考察であるが,著〒の示度も受け,特に凍構公表の勇気を 劣者に与えられた点において負うとちろが多い。 【ト話4〕特に.C2について 二毛作の場合に凋,・一腰笹表作物と袋作物との季節的接触蚕合があり,双方の播囁期或ほ刈取期に彪督が車 られるものとすれば,そのことは必然自勺に嘉増力法に対トても少からぬ変化を与えるものと考えられそれ はまた肥料とか労働などの所要盈の変化を通して,三毛作の場合の経営費(C2)の大さに影響することキな るであろう。例えば麦作に於いて,夏作(表作)キの関係より,播穣期が適期より遮れるとすれは?キあ土 とに腐る放牧を少くする為に播穐最を多くし∴悍播するとか,或ほ木整地播を稽の立宅の中に行ウて廟横道 延を廻適する≒かの乃漠が行はれることにな 前者の場合には種■蔚費が後者の場合には麦作期間或ほ表作との交替期に濃ける種々の必要作潔の内容とその 所要労働を変化させ,従って経営塾(C2)の内容と犬いさを変える、七あろう.倍ほ斯る関係は肥料に敵いセ は特に.端自勺に見られる処であり,変作などの栄作に施せる肥料の幾分かは夏作(表作物■)によっても吸収 されることが見込まれており,謂ほゞ麦作に対する施肥は,桁作に対する準備行程と見られることも少くない 如きである(岩片磯雄;前掲雷69貫 米倉茂俊;前掲論文或は宿岡痕農業会刊「輪作経営の研究」など参照) 従って斯かる場合には,表作成は裏作自体の費用を個々別々に算出することは不可能に近く,従ってこ宅 作経営費(C2)の内容も,この二つの作物を・…・宅作として嘩独に鼠増する頃合に要するそれぞれの琴営費の 攣なる合討とは異るものであると云はねばならない.ここに・Ma・Pa−Ca≦〔Ma(1−ml)・Pa−Ca:〕+(Mb・P b−Cb)とせず,水文関係式を採用した所以がある。ただ以下の考察においては,鹿茸上,上武のCa,Cbを, ニ宅作化に・よる相互の影響を考慮笹入れたCa†,CbJにおきかえた診で,上武の考え力をとる場合がある羊 とを,お断りしておく. 〔竃5.〕なお,我国の裏作一般が,多分に・経営における内給経営要素用役の利用増進に・よる純収益の増大を目的 として成立しているという事実を考慮する場合,本文に述べた.かかる関係を説明する原理と.してオポチ・ユ∴ニ チイコスト(opportunitycSt)の概念も亦有用性をもつであろう 例えば,労働の如き最も流動的なものであり,且つ各種の作目乃至経営部門に於て共通的な必須要素たる ものにあってほ,理論上その使用配分は,各作目或は部門間における限界生産性の均等を目指して行はれると 見られる。従ってとの憩醜からすれば,鶉働の使用揆下は,それ等の限界鮭接性の高いものから順次に行わ れ,当該労働嘩位当り価格とその限界生産額が一・致する点に放で止むということができる−而てこの場合, 我国農業経営における鎮座労働のように,−一腰粧その泉源体を家族労働力として保看し,最も憲穿な経 営要素として,純収益の主要源泉として,それから不閻に流出する用役の完全なる利用燃焼が希求せられる 場合にほ,農閑期の如く,経営要素の週休状態 ̄ドでほ,主観的な見積り勇賃が切り下げられ低報酬に対して も能く就男する一席をもつと同時に,農繁期こおけるように,各作目或は経営部門における男働需要が競合

する場合には,酎位男働当り限界生椛性のより高いものから順次充当され,一部ほ犠牲とせられる場合もあ

ろう。

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253 第5巻第3号(1954) 即ちこわことを兢雫する・山部門の立場から見るならば自部門に所要労働を吸引する為にほ,敢零する他部 門であげる限界生産力に等しいものだけを少くと.も挙げなけれならないというエと,或はA部門からB部門 に労働が転用される場合には,少くともそれに・よって失われ草A部門における純収益分を,軍部門の純収益の 増加分が補い得なければならないというこ′とである.蓋し,黙らざれば,全体としての経営紙収益が,むし ろ減少することに.なるからである∴従って単位当り労働に対しで一部門が,観念的にもせよ,見積り,負担 しなけれを吏ならない労働費用は,畢閑期においては低く,労働の雫夢が季節的に激しく弼合し・而も喉益性 ¢碑い痢門が共産する紫箕郷こ早手,極めで高くなるという関卵滞するのである∴従って■この意味で,離 1日や労働も,それ等め就労の機知羊かかわる時琴とか;経営組織その他?経常内部事情の如何によって額田 としてめ評価を異にるす羊とになるであらう・オ・ポチ・去・ニチイコストの概念導入の意義が見出される 倍お空港物価値についても,個別経満として−の喪家経済的観点よりすれば,轡純に市場価格が与えられる べきさほなく,この場面こほ経歯内生産物問にお てこの観点は,毒産物と.ともに1結合生産物としてゐ所謂副産物の緬値朋蛭についても翼蓼せあること・れ 等について珪論的畏開を他日に期したい.

第函鮨、水田裏作の碑対的有利性に及ぼす「水」の影響について

爵一項 寡作物の収益性に及ぼす水の影執こついて

二毛作の−・毛脚こ濁する相対的有利性は,■表作に組み合わされる寡作物の収益性に・よって,特に大

き、、く影響されること.は云う翠でもない.

而て,仮定に蘭い寡作物を総べて畑作物と.する限り(現実においても蘭を除く殆ど総べてほ畑作物

である)ノそれは本来乾土緋作々物であノり,準水状態匿おいてはいうまでもなく∴過濾の土壌に・おいて

ほ生育し得ないか,或は極度に生育を阻喪され収監・品質を著しく低下するのが−傲である.この意 味で土壌の含有水分の適当・不適当は1土壌のもつ他の豊沃性条件と牒座して賽作物の品質十放恩

(Mb)に直感影響し,その収益性を左右するであらう.畑地においてすら「排水不良」が挙げられ,

また「排水不良」が全国的に水田寡作の剃 第一周 新潟県に於ける根雪期間と冬作物収監関係 (昭和2∼12) 約原因として最も多く意識きれている所以 である. しかも,この土地の排水状態は,田・畑 を合せた場合,最も大きな制約原因となつ ている「硬質長期」などの気象的制約の発 現程度に.対してもまた.次のやうな関係を 過して影響する点において一層重要であ る. 気象的条件の制約のうち,積雪の多少,

特に根雪期間の長さが∴寡作物の収魔

(Mb)やその安定性に対して極めて大き な影静を与え積雪の多い地ちの寡作の発展 をはばんでいることほ明らかであらう.例 収 えば,武田総七郎氏によれば,麦の生理生 堂 態的条件としての低温の影響は,本邦内地 に関する限り絶対的な制約質素ではなくむ しろ降雪量の多少にあるり(註1)とされ コヽ● 串∧ △・⊂ ●●巳 止 口 ● × ロ ● 航 空 期 間 音︶ 几 例 ●大 友 △′ト 袋 口菜 種 ×紫雲英 削 湖 90 80 70 餅l × C□ ●● ● △ □× × ×△ X ● ● △ ロロ × △ ロ ● 十50 −ナ ■40

大小沓p皆50607080“9101」11‥21314

先細 0 紫雲其

4オ言 05 06 ()7 08 09

100/‘ 20U 300 4UU 500 〔図註1本図は松尾孝観「冬作物の雪害に【矧する、研究」 (産業気象の研究第二輯)Pllより転写せるものである

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香川県立農科大学学術報告 254 て∴おり,また根雪期間と冬作物収量と/の関係ほ第1図の如く相当高いのであって,収量決定要素とし で積雪が如何に重大な制約作用を及ぼすものであるかを示している.而して雪番線とされる根雪100 日以上を示す地域は,常北・北陸。山陰地方にかなり広く分布しており(詫2)「積雪長潮」が前掲 調査において最大の制約原因となっていた疲由がうなずかれる ところで,ここで特に往昔しなければならないことほ,積雪による作物の生育乃至収量べの影響 Ⅰ享、.土壌の水塊過剰と作物に対する機卿勺障賓及び雪腐れ病との関連に・おいて,その具体的な発甥を みると・いうことLである・・即ち「冬作物雪賓の原因としては積雪の物鹿的性質梢杷光線?不運性に濃く 炭水化物の消耗に・よる作物の生理的衰弱と,之に続く可溶性窒素化合物の遊離並に㌧雪腐れ病菌の浸薯 なる≡段階の存在が考えられる」(証3)から,雪害の程度は品種の耐雪性,土壌の排水の良否,植 物体?積雪前の栄養状態,病菌の存否等に密接な関係を有することになる..従って,積雪下に.おける 寡作′物の放免の多少は,耐雪性品種の選虜、や施肥の関係,薬剤撤鱒などの管理の如何によって勿論影 響されるが(註4)土壌の排水状態とか適期播倭の如何などに.よつでも亦極めて重大な影響を受けるこ とになり,「簡雪長期」による制約は,多分に土地の排水事情や爽項に述べる表作と寡作と.の在国期間 の季節的接触軍令の関係や,左の事情と関連す拳労力配分関係などからする適期播種の難易筆の経営 上の制約と連繋し 与え,寡作物の収益性,進みてほ二毛作の相対的有利性に対して,具体的な作用を願甥するものと.云 いうるであらう かくして畑作物たる寡作物に適当な水分状態その他の生育条件を与える\土と’1(・一・股的には土壌わ排 水を計り気水の流通を可艮に・すること.)が雪審問題との関連においてもまた寡作物め牧品性東大の薦 の基本的な条件となるのである. 従って水田寡作に・おける如く表作の水稲が湛水耕作々\物、であり,水に対する要求において組み合わ ■●●● される畑作物と著しい相異を示す場合にあってほ,将に水の支離を完全をとして「寡作物の要求に適合し た土地条件を急速に準備し得ること.が,二毛作を可能とし,或ほそ・の収益性を高める馬の必要壌件と なるわけである. ●●●● ところが現実にほ水田に.おける水の支配を完全に・することほ次に述べるように.極めて困難であり, 従って水田寡作物の収益性は前述の仮定に・立つ限り畑作物のそれに劣る傾向をもち.進みては水田の

●● ニ毛作化は畑の場合よりも,相対朋により強く制約される結果となるのである。

次にこの事情について若干の分析的考察を加えよう. さて,水を支配するにほ二つの方法.即ち「永続的な支配方法」と ト山時的な支配方漁」とを区別 することができるであらう. 免づ水を永続的に.支配する方法とほ,云うまでもなく完全な排水設備と.用水施設の拡充増強に外な らない“と.ころでかかる施設をするということは,当然に多額の固定資本を必要と.し,兜だつ資金の 問題とか水利慣行などの障寄は招くとしても.少くとも投下資本に対する利子と.か,多くの場合笹ほ その施設に対する減価償却費′(永久的改良雄琴にほ必要でない)などが経営費中に加えられるこ′とに なるサ従ってたとえ水田の排水を良好にする羊とによって椙作自体の増収上の効果があり,それに㌧皐 って上記負担のかなりの部分が相殺されるとは云え,少くとも寡作物敢廟こ伴う費用ほ,然らざる場 合に此して相如勺に増大して水田裏作物の収益性を減ずることは叩かであらう. しかもこの場合,水田裏作の焉の排水にほ特に・注著しなければならない事情がある..即ち粗地に於 ては寡作物の為にするこ排水施設はそのまま表作物の生育条件の改善に役立つことが普通であるが,水 ●●●●● 田裏作の場合に・は表作に・水稲が予定される限り,それの用水確保の問題を離れてひたすらに寡作物に 対する排水を計り得ないことである.苦し水稲ほ,たとえ近時の研究によって栂自体の生理的要求に 関する限り湛水状態を必ずしも必要としない(註5)とは云へ.田植その他の作業を容易にし(註6・)栢

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第5巻第3号(1954) 255 に肥料分を補給する意味に・おいでも,また雑草防圧(経7)と云う側面からも豊富な水の存在を有利とす るから∴若し一度完全な排水を行って畑状態としても,稲作期間特に田植期において用水の不安があ り,その結果田植遅延とか田植不能の恐れが生じ,或ほ巻い水の不足などがあるとすれば,排水工事 そのものも曙躇されるという事情があるから・であるい換言すれば,かかる排水魔設龍よって裏作物の 増収(Mbの増大)と.労費(CbP)の節約が計り得られ寡作物の収益性が高まったとしても,主体作物 たる稲作が,水不足その他に・よ一り減収(減収率mの増大)とか労費(Ca′)の増大を産む結果常なる と.すれば,当該施設匿伴う投下資本利子及び償却費魚世の増大二と相ま、つて,綜合された二毛作の収 益性がかえって減じ二毛作化がかえ.って不利となる場合が少なくないからである.(経8) 従って表作に水稲を前提と.する限り,農作物の収益性増大条件としての水田の乾田化は.「・必ず用水 給漁の状態を−卜分考慮して行はなければならないから,排水工事の施行は同時併行的に魔漑嘩設の改 善増強を必要とするのである.、かくして実際問題として農家が排水を計り嚢作を可能とし,寡作物の 収益性の向上と∴安定を計らおう、としても,用水関係の束縛は容易に個人的な改善を許さないのであゃ て.その実執£集団的協同事業忙より広範囲に,且つ多額の資本投下を∴待たねばならないのやある ここに永続的な水の支配ほ,水団の場合において極めて困難であり.排水不良水田は容易に.排水せら れず寡作の導入を阻止する大きな原因となっているのである. ●■●●●●● そこで水の一・時的支配の方法が問題となる∴ところでこの方放としては排水状態の不完金な水田に おける高塾栽培などが挙げられよう 然しこの方法は, ならないから,水 田の排水状腰の不 良程度が大きけれ ば大きいほど,必 然的に健立てを高 くしなければなら ない. 而て畦立てが高 くなるはど第3表 に示すように.、,溝 のしめる面積が大 きくなり.当然播 種利用面横を減少 させ,他方でほ「積 上げる段数H」ノシ杢 「港掘り段数.」の 増加に.伴なって所 要労働を増加させ さらに商略にとも なう土壌的不良条 件(土塊を観いま 水田に高塁を作ることに・よって・一・時的.部分的に乾土状態を潜らすもりにはか 第3表 畦立て形式のいろ いろ

∴ ̄、− −て∴…−∴..−

睦心の状態 (1)「心立て」とほ瞳心に・なる土壌を大きな土塊のまま掛起して立てるものを京す (2)滞掘りの段数ほ一段掘り,及び二段掘りを意味する 〔表諒〕(1)本表は池田利良‥嵩哩嚢作について(戯業毎日第5巻9・弓,昭和26年9月)による (2)但しや「作…果方旗」は蛋者が−・部を附託した ま積み上げるために土壌が固結しており畦の中心部が乾燥し難く還元状態に長くあるため∴特忙大変 などの植物棍の発育を阻害し,また睨窒甥象を生ぜしめやすい等)その後の土入れその他の地培管理 の困難,或は各種作業の富力化の困難などと相まって,ニ次的にも水田における袋作物の収量(Mb)

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夏56 香川県立産科大学学術報告 を低下せしめ,また同時た・所要労働などの増加を伴い,かくしで水馴こおける裏作物め収益性を相対 的に低めることに.なるのである..(註9) かぐで以上のやうに水田袈作に際して,水の支配を完全にすること.は・一1殴に.困難な事情にあり,こ のことが水田に.おける袈作物の収益性を低下せしめて,水田における裳作画横を畑のそれに比して相 対的に小さくしている有力な条件と考えられる. なお上述の水の支離の困難性は∴所謂水利関係を通しでも亦かなり強められているように.考えられ る. 而て,この場合の水利関係による水の支配の困難性は二、つの側面を過して現われるであらう∴−一丁つ はー ̄水利慣行」を通してであり,他ほ「用水不足」に・よるものである.即ち,前者は水利慣行によつ て用水潅漑の時期及び方法が規制されるた捌こ,裏作物の倣麓期とか水稲の田植期が限定される療 巣,屡々点超する収穫期のおそい裏作田に周囲の水田から水が蓼透して,裳作物に韻寄を惹起させ収 監・品質を低下させてその粗収益を減ずるばかりでなく,間接的には導入し得る裏作物の桂顆や晶橡或 は在席期間を制限し,作物交替期間をより山層東灘するなど,、後述する(第2項)表作物と裏作物と の土地利用共同関係或は土地利用手段共同関係を恵化せしめることに・よって,水田裏作を制約する側 面である,後者ほ,前者と同様に・水田自体は乾燥し裏作が可能であるに・も拘わらず,ただ用水不足, 特に田植水の不足というために周年湛水状態を飴儀なくされ,袈作が不可能とされるやうな場合であ って∴要ほ用水の不足により裏作導入によって田植水の確保が不安定となり由植不能とか田相遅延に ょる稲作の減収戎ほ労働・費用の増加を恐れる結果二毛作化が相対的に.不利と判断され,従って制約さ れるということに.外ならない. 従って上記の制約の発現も亦,畑状態から湛水状態への転換を必要どする水田裏作の耕作技術士の 特殊性把胚胎するものであり,普た強力たる水利慣行の発生・存続が,多分に過去或は甥在たおける 甲頻不早の懸念乃至用水確保の欲求に基くノ点を考慮すれば,所謂「用水不足」の要因とともに・J,∵結局 は前述した如き水田に・おける水の支配の不完金と我国盛巣に・おけ芦稲作の極めて大きな有利性乃重輪 作偏重に.よる結痕の表現(この点についてほ第2項参照)とも認あられよう.従って「水利慣行。用 水不足」による制約もまた水の支配の困難性と関連して,水田における袈作物の収益性を,畑の、それ に比tて相対的に低下せしめる若干の間接的作用をもつと云い得るであらう.(証10)

● さらにまた,水の受取の困難性と関重して,水田裏作における水の介在が,水田土壌に若干の影響

をもち,また耕地の細分化を促進する傾向をも持つこと.によって水田における裏作物の収益性を低 め,従って水田における袈作の相対個勺有利性を畑のそれに比して相対的に低めるという事情も亦考慮 されなければならない. 即ち,水田にLおいては,土壌の保水力を高め,挿映その他の作業を容易にする為に・,代癒その他の 水中桝転を頻繁に行い,時には柑土を補給するなどによって,その土壌を単粒組織の索密な土壌にする 傾向をもつ.而て,かかる土壌ほ水分の飽和状態に達することも早く,またひと慶び乾燥すると亀裂 を生ずるなど生理的。機械的に作物根に・障督を与えると同時に,その耕転や砕土を困難とし,労働そ の他の費用を増加させる傾向をもつと考えられ,水田土壌は裏作物に・とって,相対的に不利な条件を 作り易いと云えるであらう.(註11) また水捌こおいては,必要な水星を確保し水深を出来る限り均等に保って締の成育を順調にする必 賓があると云う点から、甥実の葵はとも角(話12)、考察の前提に従って同」条件の土地に水田と畑 を設定する場合を仮定するならば水田は傾斜畑として存在が許される咄よりも,理論的に考えて区測

●● 或は圃場1枚当り面積がより細分化されざるを得ないと思われる二而て耕地区測の狭′トなほど.表作

の場合にしろ表作の場合にしろ.作柴能率を低下さす傾向をもつことほ明かで,耕地区剥が小さけれ ば′トさいはど,また斯る作柴を必葵とする作物ほど,そしてそれ等の作付回数が増すほど栽培費用を

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第5巻第3骨(1954)

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■● キク多く増加臆しめるであらうから,他の轟情を画一・として理論的に考える限り.水の由係から耕地

区劃の狭小化傾向をもつ水師こ・おける裏作物の鱒益性は,畑のそれよりも相対一郎勺㌢声小となゥり,ニ毛

●● 作化がより制約されるであらうと.考えられる.

奴上,水田袈作における特殊制約要因としての水ほ∴表作虹水魔せ前掟とするととによって著しく 亡●●●●●●■ 増大する水の軍配の困難性を中軸として,上述せる各種側面から裏作物の収益性?上む羊マイナス印影 恕を及樗し中予ぐて牒¢極備にして向一こなろことを前提す争限り,水面こ料、てほ触手永ける場合七 り で 出 も裏作物の放鱒性力潤対的に低下 . る 得 し と思われる小 なおこの場合水の即次的作用として裏作物の準奉性隼畢圭,畢ほ鹿作をも含めたニ毛作に頻レ,プ ラスの影響をもっていることも,甥実としては無視し得ないであらうこ.ィ例えば水によろ裏作物の忌地 域象やその他の病虫害軋よる被膏の緩和と.か、水による養分天然供給数の増大∴或は水による畑雑草 の清掃化作用など,水稲に対する乾土効果と併せて考えられるところである‖し然し裏作物・と.して麦を 中心とし,田畑とも水の問題を・除く諸条件に.おいて等しいと.いう仮定に立つ本項の考察に.おいては, この間題をしばらく措き.甥笑えの接近に際して取り上げることとする. 〔註1〕武田稔七郎;実験麦作新設い344賞参照 〔註2.〕松尾孝嶺;冬作物の雪害に関する研究(大後美保編「産業気象に関する研究」第2輯) 〔註3】松尾孝嶺;上損害,73貢 〔註4〕堀正太郎;病害防除に.よる顔産物生産費低下の著例(日永袋学会刊「技術上よりみたる袋産物生産費低 下力藻」所載)13貢 〔註5.〕竜岡金市民は「水稲の湛漑期に関する研究」の結果として,八月上旬まで土壌水分をフ0%とし,その後 湛水状態にしたものが牧盈最も多く,従って水稲の生育初期より湛水の必要なしと云われる.同氏著「水朽 の直播栽培に関する研究」15へノ20貫参照 〔註6二〕大沼率之助;典業労働に及ぼせる濯慨水の影響(’宇都宮高等袋林学校,農政経濱研究室資料第28琴) 〔忍フ〕寺沢保房;水田除草に・関する試験蜘こ考察(第1報),農業及園芸18の1参照 〔註8.】京都府乙訓那向日町字上樋野においては,昭和18年用水絶滅の不十分なままに一部水田に暗渠排水を行 った結果,劉召和19年の早魅に際し,激甚な水稲の早害をこうむり,著しい損失をまねいた.(輩者の「早 草地実態調査」(未発表)による) 〔註9二〕「裏作を行うに当って,排水良好な場所でほ∵・面に桝起し,これに平哩を作れば良いが,少くとも排水 に差しつかえる場折では,これに数条の排水滞を設け,さらに滞の数が増加すれば中高櫛と.なり,極端な低 湿地では遂に高傑となすの余購なきに至る.地積利用の上からみればよ平畦が最も有利であり高騰になるほ ど不利益である.濃尾平野の一部における高陳ほ,およそ六尺(稲株6列)に.一唯の割合であるから,平畔 のこ尺畦に比較して,3分の1の地構利用率にしか当らないり然も彼の嵩蘭を人力で積み上げる労働は多大 なものがある‖」(岩槻信治;柘作改良持説59∼60貢) 即ち,高聯として最も典型的な変知県西部平担地力に於て一腰笹行われる「くね田」の如藍は,極めて多 くの労力と技巧を要するもので,土切鎌及び備「!]鍬を傾用する功樺は,男1人1日3畝歩にしか達しないので ある(′J\池基之:日永選業と水田,85貢) なお麦作増収の要諦は,肥料を・多用し,一・土人れその他の管理を伴ふ広幅薄播にあるから,畦立法による土 地利用率の淑少は当然その収監に影響するい特に湿潤な水E引こ於ては,[ll耕土入などが極めて困難で,若し やるとすれは浪士堆肥や唐土などによるほかないことが多い。極めて労力を要サるものと云はぎるを得ない 然し−L九 高櫛が折謂冬期の安土動果を目的として,作柄の向上手段として行われ来ったことは愛知県 や滋賀県などに於て,時に裏作物での損得を超越して慣行附こ行われている場合もあり,さらに袈作の有無 によらず,冬期高価を・作る場合さえあり,斯る哩立てが安土効果をねらい乍ら,しかも成る程度の保水と春

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香川県立農料大学学術報告 258 季繁忙期㌢こおける桝起整地作業の労力節約という労力配分上の目的をも持って行われている点は注目に値

いする.然しこの場合,乾土効果は重粘土壌ほど・−肢に効果が大きいとされているが,一・方春季の桝毒整地

に.際しよ壌が乾燥固結状態粧あるとすれば,かえって桝森砕土が困難となり労費を多く要する場合もあぁと

云はれることにも若干の注意をを要する.(奈良県添上郡平和村下三橋に・て聴瀬)

〔:註皿〕斯る具体的な事例に.ついて−鱒,岩片磯雄:水利問題と水田裏作物(靖国換会報第30巻10号)の「水利並

び貯水利慣行と裏作」の項を見られたい.

一課11..〕「宿その他の水田作物は酸性に強い.畑作物は中性文.は倣アルカリ性を一腰に好み酸性に易凱、上隼,湛

水状態下では土壌が還元状態となり酸の化合物がこ価のイオソとなって,反応卑アルカリ性の方珂桓変化せ

しゃるに対して,畑状態でほ鉄は三価のイオソとなって反応を酸性に僻むかせる事情がある」(松木五楼:今

後の畑作,農政評論第2巻〕号2フ貰)のであって,我国に多い酸性土壌は,水田として水朽を作る時には相

当の生産力を示すが,乾田状態として裏作を・行う場合には,然らざるものが多いようである・・なお岩片教授

は「水を癒すならば著しく硬化するが如き土性の場合に於セほ,その為に冬期の湛水が必要である」と述べ

ちれ・そいる.(岩片磯雄‥水利問題と水田裳作軌帝国県会報第30巻∽号113巽)

〔証12,)現実としては,一腰降水田ほ沖積士族がF坦地帯に・,畑はむしろ丘陵傾斜地背などに畏関するものが多

く,その籍契際の耕地区渕の大さでは,水田の方が畑よ一りも大きい場合が少なくない

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