香 川 大 学 経 済 論 叢 第69巻 第l号 1996年 6月 113-147
外資系企業の経営職能と管理会計職能の
ローカル化に関する一考察*
一一日系企業との比較において一一
井 上 信
は じ め に わが国企業の国際化は,1
9
7
0
年代から1
9
8
0
年代にかけて急速に展開され,そ のプレゼンスはますます増大してきている。そのような中で海外進出した日本 企業における経営活動及び管理会計・原価管理活動の実態と課題に関する調査 研究は,日本企業のグローパル展開とともに,アメリカ,アジアそしてヨーロツ パを始め世界的に非常に重要になってきている。そこで,筆者はこれまでにも それら地域に進出した日系企業の会計管理上の諸問題,とりわけ管理会計・原 価管理の問題に焦点をあてた一連の考察を行い,その特徴と課題をある程度明 らかにしてきている1)。 このような研究をつうじて,日本企業の海外進出とグローパル展開の実態と その課題を管理会計・原価管理の面より考察してきた。しかし,日本企業の海 外進出にともなって生じている経営管理及び会計管理のローカル化の特徴を明 らかにするためには,同時に逆の立場から,すなわち日本に進出してきている 外資系企業の経営管理及び会計的管理の諸問題を比較考察することも,非常に 興味ある試みと思われる。*
本稿は,平成 6年度財団法人南海育英会の研究助成金による研究成果の一部である。1) たとえば, Bromwich & Inoue (1994), Inoue (1993-a),井上信一(1993-b),同(1994-a), 同(1994-b),同 (1995)などがある。
-114ー 香川大学経済論叢 114 そこで本稿では,日本に進出した外資系企業の経営職能と管理会計職能の実 態とその特徴を,同時期に調査を行ったアジアに進出している日系企業の場合 と比較考察することにより,外資系企業の経営職能と管理会計職能の特徴を明 らかにすることを意図している九 具体的には,まず第2節で調査方法及び回答企業の概要を,第 3節では海外 進出企業の経営活動の特徴を,第
4
節では海外進出企業の管理会計の特徴の検 討を行う。以上の考察をつうじて,外資系企業の経営活動及び管理会計活動の 特徴を明らかにすると同時に,日系企業の経営職能及び管理会計職能の普遍性 と個別性についても,その一端を明らかにしたい。 II 調査方法及び回答企業の概要 ここでは,調査方法,調査対象及び回答率など調査概要と,回答のあった企 業の経営規模などの特徴を明らかにする。2
-
1
調査方法 本稿の基礎になっている郵送調査の方法,調査対象企業及び回答率は,つぎ のとおりである。まず今回の調査対象である日本に進出してきている外資系企 業は,東洋経済新報社編『外資系企業総覧 ('91 年版)~に掲載されている外資 系企業のうち,つぎの3つの条件に該当する企業を郵送調査の対象としてリス トアップした。1)製造企業であること(食料品製造業からその他の製造業ま で)02
)
外資比率(外国企業の出資比率)が50%
以上であること。3
)
従業員数 が1
0
0
人以上であること。 上記の3つの条件を満たす企業を外資系企業としてリストアップすると,郵 送調査対象企業は2
3
0
社になった。 上記2
3
0
社の企業に,1
9
9
1
年の8
月に最初の調査票(英文と邦文)を発送し, 2 ) なお本稿と同じ調査をベースにした井上信一 (1996) は,日本に進出した外資系企業の 原価管理の函を中心に考察したものである。115 外資系企業の経営職能と管理会計職能のローカJレ化に関する一考察 -115ー その後2度の督促を行い, 1992年の3月末で回答を締め切った。回答の内訳は, 調査票に回答のあった企業は
5
4
社,回答辞退7
社,住所不明2
社,該当せず5
社であった3)。従って,回答率は24,,2%である。 なお比較対象になっている日系企業とは,今回の外資系企業の調査と同時期 に調査を行った,アジア諸国(NIES+
ASEAN)に進出している日系製造企業 である。日系企業の回答率は23,1%であり, NIESから 100社, ASEANから 81社の合計181社から回答が寄せられた。ここでは,それらの日系企業が,日 本に進出した外資系企業との比較対象になる九 2-2 回答企業の概要 ここでは,回答者の国籍,回答者の職位,操業開始年,海外進出の目的,業 種分類,生産方式,従業員数,海外進出のタイプ,製品ポートフォーリオにつ いて,その概要を考察する。 1) 回答者の国籍 郵送調査の調査票への回答者(回答責任者)の国籍は,表2- 1に示すとお りである。そこにみられる特徴的な点は,外資系企業及び日系企業のいずれの 場合も,日本人からの回答が大部分を占めていることである。すなわち外資系 表2-1 回答者の国籍 国籍 外資系企業 日系企業 日本人 53( 98 2%) 153( 85,5%) 親企業の国籍の人 O(o
)
25 ( 14,,0 ) その他 l( 1.8 ) l( 0,5 ) N 54(100 0 179(1000 3 ) 回答のあった外資系企業 54社の親会社の国籍の内訳は,米国が 34社 (630%),スイス 6社 (111%), ドイツ 5社 (9“3%),英国 2社 (3,,7%),フランス 2社 (37%),スウェー デン2社 (37%),オランダ 2社 (37%),フィンランド 1社 (1,9%)である。米国系の 企業が34社と 6割以上を占めており,そのほかではスイスやドイツからの回答企業数が 多くなっている。 4 ) 回答のあった日系企業の進出先国の国籍は, NIES(シンガポール 34社,韓国 26社,台 湾34社,香港 6社)と ASEAN(タイ 43社,マレーシア 38社)の合計 181社である。な お国籍以外の回答企業の概要などの詳細は,井上信一 (1995-a),同 (1995-b)を参照のこ と。-116- 香川大学経済論叢 116 企業では,日本人からの調査票への回答比率が
9
8
,,2%(
1
社を除いてすべて日 本人から)であり,日系企業でも 85,,5%は日本人からの回答である。なお日系 企業の場合には, 14,,0%はローカノレの人から回答が寄せられている。 2) 回答者の職位 つぎに調査票に回答のあった人の職位は,表2-2
のとおりである。外資系 企業の場合には,最も多いのは経理部長からの回答であり,5
4
,,2%
と過半数を 占めている。あとは,恥締役以上の経営者及び経営企画部長からの回答がそれ ぞれ 14,,6%と,第 2位を占めている。日系企業における回答者の職位は,社長 から34,,7%,経理部長から 30,,6%,そして取締役以上の職位の経営者からのも のは 24,,9%となっている。以上のように,社長,取締役以上及び経理部長の 3 つの職位からの回答が大部分を占めている。 表2-2 回答者の職位 職{立 外資系企業 日系企業 社 長 O( 0%) 60( 347%) 取締役以上 7( 14 6 ) 43 ( 24,,9 ) 経理部長 26( 54 2 ) 53( 30,6 ) 経営企画部長 7( 14,,6 ) 5( 2,,9 ) 管理部長 4( 8,,3 ) 2( 1 2 ) 工場長 O(o
)
3( L7 ) その他 4 ( 8 3 ) 7( 4,0 ) N 48(1000 173(1000 *) n =48 (外資系企業), n =173 (日系企業)。 3) 操業開始年 回答企業の操業開始年は,表2-3
I
乙示すとおりである。回答結果から理解 できる特徴は,外資系企業の場合,日本への進出年が日系企業の海外進出に比 べて比較的早いことである。これはアメリカ企業のグローパJレ展開は,第2
次 大戦後のかなり早い時期に開始されており,その一環として日本にも進出を 行った外資系企業も多かったためと思われる。すなわち回答のあった外資系(こ こでは主として米国系)企業は,日本への進出年が比較的古く,1
9
6
9
年以前に117 外資系企業の経営職能と管理会計職能のローカル化に関する一考察 117ー 表2-3操業開始年 操業開始年 外資系企業 日系企業 1969年以前 25( 472%) 28( 156%) 1970-1979年 17 ( 32.1 ) 78( 43 3 ) 1980-1985年 7( 13 2 ) 18 ( 10 0 ) 1986年以降 4( 7..6 ) 56( 311 ) N 53(1000 ) 180(100 0 *)表中の数字は会社数,括弧の中は構成比を示す。 47“2%がすでに日本へ進出してきており,また1970年代にも 32“1%が日本へ 進出してきている。問時期を合わせると 79..3%(42社)と 8割近くの企業が 1970年代までにすでに日本に進出してきていることになる。 それに対して,日系企業のアジア諸国への進出は, 1960年代以前にも一部 (15.6%)みられるが,大部分は1970年代と 1986年以降の2つの時期にピー クがみられる。これは別稿でもすでに触れたように, 1970年代には韓国,台湾, シンガポーノレ,香港など,いわゆる
NIES
諸国へ多くの日本企業が進出した時 期であり,海外進出の一つのピークを形成している。また1980年代後半は,1985 年のプラザ、合意により,円高が急速に進展し,日本の製造企業の海外進出が再 び加速された時期である。とりわけタイ,マレーシア,インドネシアなど,い わゆるASEAN
諸国への進出が加速された時期でもある。このこつの時期を合 わせると,日系製造企業のアジアへの進出は74%を占め,いわゆる集中豪雨的 にアジア諸国へ進出していったことが理解できる。4
)
海外進出の目的 それでは,外資系企業が日本へ進出する,あるいは日系企業がアジアに進出 する理由としては,どのようなことが考えられるのであろうか。その結果を, 表2-4により検討してみる。外資系企業の日本への進出は,非常に明白であ り,その大部分は販売市場の確保を目的にしたものである。すなわち販売市場 の確保を目的にした日本への進出は,外資系企業では第1
位で,そのスコアは 2..88点となっている。その数字の大きさから判断すると,ほとんどの外資系企-118 香川大学経済論叢 118 表2-4海外進出の目的 進出の目的 外費系企業 日系企業 1) 市場の確保 288 (1) L46(1) 2) 人材(労働力)の確保 57(2) 136(2) 3) 産業基盤の整備 39(3) 65(4) 4) 研究開発拠点 39(3) “03(9) 5) 政治的な安定 35(5) 64(5) 6) 原材料の調達 24(7) 40(7) 7) 政府・地元のサポート 08(8) 70(3) 8) 貿易摩擦の解消 0(9) 12(8) 9) その他 30(6) 46(6) *)n =49 (外資系企業), n =177 (日系企業)。得点は, 1位→3点 2位→2点, 3位→1点として,問答企業の 合計点を出し,回答企業数で割つ‘て社あたりの平均点 を出した。 業は販売市場の確保を,日本進出の最も重要な目的に挙げている。外資系企業 の日本進出の目的の第2位は人材(労働力)の確保であるが,そのスコアは0..
5
7
点に過ぎない。 それに対して,日系企業の場合払販売市場の確保がアジア進出の目的とし て第l
位を占めていることは外資系企業と同様である。しかしその得点は1
.
.
4
6
点と,外資系企業と比べると,そのスコアは約半分である。その代わりに第3
国への輸出あるいは日本への逆輸出を目的にした製造基地としての海外進出も 多くみられ,製造目的ともいえる人材(労働力)の確保(2位 :1.36点)の得 点が高くなっている。上述の二つが,日系企業のアジア進出の主な理由である。 製造目的(人材の確保)に関連して,進出先国の政府のサポート(第3位 :0..7
0
点),産業基盤の整備(第4
位 :0
“6
5
点),政治的な安定(第5
位 :0
.
.
6
4
点) も,日系企業のアジア諸国への進出の際の重要な考膚要因になっている。 ただ,グローパノレ経営の観点、からその重要性が指摘されている研究開発を目 的にした海外進出は,現時点では外資系企業と日系企業の何れでも,重要な海 外進出目的にはなっていない。調査結果によると,外資系企業では研究開発の 基地を目的にした進出は0..39点(第3位)と,そのスコアは低くなっている。119 外資系企業の経営職能と管理会計職能のローカ/レ化に関する一考察 -119 日系企業のアジア諸国への進出の場合には,そのスコアは0..03点(第9位)と, その重要性はさらに低く,研究開発基地を作る目的でアジア地域に進出する日 系企業はほとんどみられないのが現状である。 5) 生産方式 生産方式別の業種構成により,回答企業を分類すると表
2-5
のとおりであ る。外資系企業は,化学的進行生産が56“6%と過半数を占めており,組立生産 は30.2%に過ぎない。逆に日系企業の場合は,組立生産が65..6%と大部分を占 め,あとは化学的進行生産が13..3%,機械的進行生産が1L7%,その他の生産 方式が9..4%という構成になっている九 生産方式 組立生産 機械的進行生産 化学的進行生産 その他 N 表2-5 生産方式 外資系企業 16( 30川2%) O( 0 ) 30( 56.6 ) 7( 13..2 ) 53(100.0 ) 日系企業 118( 65.6%) 21(11.7 ) 24( 133 ) 17( 9.4 ) 180(100 0 ) 本)表中の数字は会社数,括弧の中は構成比を示す。6
)
従業員数 外資系企業と日系企業の従業員数は,表2-6
に示すとおりである。外資系 企業の従業員数は1社平均763人(標準偏差は1477)であり,日系企業の場合 5 ) なお回答のあった外資系企業及び日系企業の詳細な業種構成は,つぎのとおりである。 外資系企業の産業構成の特徴は,まず薬品などを含む化学工業が圧倒的に多く,回答企業 の半数近く (453%)を占めていることである。そのほかに多い業種は,一般機械器具製 造が7社 (132%),食料品製造4社 (76%),電気機械器具製造が4社 (76%)を占め ており,以上の業種で73.7%と,全体の3/4近くを占めている。 それに対して,アジアに進出した日系企業の多い業種は,欧米地域へ進出している日系 企業の場合も同様であるが,まずCTV,VTR,電子オーブンを始めとする電気機械器具 製造が76社(422%)を占め,非常に多くなっていることである。次に多いのは,自動車 及び岡部品製造を中心にした輸送用機械器具製造であり, 22社(122%)を占めている。 それ以外には,精密機械器具 (11社 :61%),化学工業 (10社 :57%),繊維・衣服及び 非鉄金属(それぞれ9社 :50%)などを数える。このように,日系企業の業種構成の特徴 は 6割以上が組立生産関連の企業である。-120- 香川大学経済論叢 120 表2-6 従業員数 従業員数 外資系企業 日系企業 100人未満 O( 。%) 6( 33%) 100人以上 300人未満 25 ( 47 2 ) 61 ( 33 7 ) 300人以上 500人未満 11 ( 20..8 ) 34( 18..8 ) 500人以上-1,000人未満 8( 15 1 ) 38( 2LO ) 1,000人以上 9(17..0 ) 42( 23..2 ) N 53(1000 181(100 0 *)表中の数字は企業数,括弧の中は構成比を示す。 は平均789人(標準偏差は973)と,日系企業の1社平均の従業員数が若干多く なっている。しかし外資系企業の従業員数規模の標準偏差は,日系企業の場合 が幾分大きくなっている。 それを階層別にみてみると,外資系企業では,100人以上300人未満の企業が 最も多く, 47..2%を占めている。それに次いでト多いのは, 300人以上500人未満 業種分類 化学工業 一般機械器具 食料品・飲料 電気機械器具 石油・石炭製造 ゴム製品製造 輸送用機械器具 精密機械器具 パルプ・紙 プラスチック製造 金属製品 繊維・衣服 木材・木製品 窯業・土石 鉄鋼業 非鉄金属 そのf也 N 業 一 % 一 ) と 一 ヴ t A
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2
0
,,8%
を占めている。5
0
0
人以上1
,0
0
0
人未満は1
5
.
.
1
%
,1
,0
0
0
人以上 は1
7
.
.
0
%
となっている。 日系企業の場合も,従業員数の最も多い階層は,外資系企業と同様に,1
0
0
人 以上3
0
0
人未満で3
3
.
.
7
%
,次いで1
,0
0
0
人以上の場合が2
3
.
.
2
%
,5
0
0
人以上1
,0
0
0
人未満は2
1
.
.
0
%
という比率になっている。7
)
海外進出企業のタイプ 外資系企業と日系企業のそれぞれの場合に,海外進出企業のタイプに相違が あるかどうか,表2- 7によりみてみる。 表2-7 海外進出企業のタイプ 会社のタイプ 外資系企業 日系企業 製造・販売会社 43( 81 1%) 68.9% 製造会社(別に販売会社) 7( 13..2 ) 19..4 製造会社(販売は代理屈) 。(o
)
3..9 そのf也 3( 5..7 ) 7..8 N 53(100 0 ) 100.0 *)n=53 (外資系企業), n =180 (日系企業)。 外資系企業の場合,製造・販売会社として海外進出しているケースが,日本 へ進出している大部分の企業の場合にみられる形態であり,8
1..1%
を占めてい る。それに対して,アジアに進出した日系企業の場合も,6
8
.
9
%
は製造・販売 会社として海外進出しているが,印刷4%
は生産のみを行う製造企業として進出 しており,販売会社は別組織になっているケースが2
割近くある。これは,外 資系企業の1
3
.
2
%
と比べると多くなっており,日本企業の海外進出の一つのパ ターンであることが窺える。 8) 製品ポートフォーリオ ボストン・コンサノレティング・グループ(
B
C
G
)
の製品ポートフォーリオによ り,外資系企業と日系企業のそれぞれが製造・販売している製品構成は,どの ようになっているのかを検討した。その結果は,表2-8
のとおりである。 それによると,日系企業では売上高のうち6
3
.
.
2
%
を花形製品(STAR)
が占め122- 香川大学経済論叢 122 表2-8 製品ポートフオーリオ マトリックス 外資系企業 日系企業 花形製品 313% 63.2% 問題児製品 1L3 9..0 金の成る木 37 3 14 4 負け犬 20.0 13..4 *) n =42 (外資系企業), n =119 (日系企業)。 ており,金の成る木(MILKINGCOW)は14..4%を占め,日系企業にとっては たいへん優れた製品マトリックス構成になっている。それに対して,外資系企 業では,花形製品は
3L3%
,金の成る木も3
7
.
.
3
%
と,優れた製品構成ではある が,金の成る木の比率が非常に高く,製品の成熟化が日系企業より一層進んで い る こ と が 窺 え る 。 ま た 同 時 に , 問 題 児(QUESTION)も1L3%
,負け犬 (WILD DOG)も20.0%を占めており,日系企業の場合よりも問題の多い製品 構成になっている。 III 経営職能のローカル化 ここでは,海外子会社の経営職能のローカル化を,経営人事のローカル化及 び製造職能のローカル化の検討をつうじて,その一端を明らかにする。3
-
1
経営人事のローカノレ化 経営人事のローカル化は,別稿でもすでに指摘したように,人事部長のケー スが最も進んでおり,次いで経理部長そして社長の人事は最も遅れているとい うのが,欧米諸国における日系企業の特徴であった九ここでは,日本に進出し た外資系企業とアジアに進出した日系企業における経営人事のローカル化の特 徴を,表3-1
により検討する。 外資系企業の場合には,経理部長と人事部長のポストはほぼローカルの人に 6 ) 例えば,井上信一 (1994-c) 53ページから54ページを参照のこと。123 外資系企業の経営職能と管理会計職能のローカル化に関する一考察 -123 表3-1 経営者の国籍 国籍 外 資 系 企 業 日 系 企 業 日本 本国 その他 日本 当 該 国 そ の 他 社長 37(685%) 12(222%) 5( 93%) 818% 17 1% 11% 経理部長 52 (96 3 ) 2( 3.7 ) O(
o
)
52 8 45 5 L7 人事部長 52 (96 3 ) 1(1.9) 1(1 9 ) 17 9 78..0 4 1 *)n =54 (外資系企業), n =181 (日系企業)。 任されており,社長の場合でも,ほぽ70%近くは日本人に任されている。この ように,外資系企業の経営人事のローカル化のレベルは,日系企業の場合に比 べて,非常に進んでいることがよく理解できる。それは,社長,経理部長,そ して人事部長の何れの職位についてもいえることであるが,経理部長及び社長 の人事の場合に際だ、った差異がみられる。このような経営人事のローカル化の 傾向は,取締役に占める本国より派遣された経営者の構成比や,従業員総数に 占める本国籍経営者の割合などの指標をとっても,同様に明らかなことである。 アジアに進出した日系企業の場合は,最初にも指摘した欧米諸国に進出した 日系企業のケースと同様の傾向にあり,人事部長のケースが最もローカノレ化が 進んでおり,ローカルの人の占める比率は80%近くになっている。しかし,経 理部長のケースになると 45“5%と5割を切っている。また社長ポストの場合に なるとその比率は更に低く,ローカルの人がそのポストを占めているのは17..1%
にすぎない。 外資系企業と日系企業の経営人事のローカノレ化の相違は,基本的には外国企 業と日本企業の経営ポリシーが大きく影響しているのでないかと思われる。ま た同時に日本的な経営スタイノレのローカノレ化の難しさは,経営風土などの要因 の検討の必要性を示唆しているようでもある。 3-2 製造職能のローカノレ化 製造職能及びその指標からみたローカル化のレベルも,海外進出企業の現地 化を測る重要な経営指標である。ここでは,生産システムの国際移転,製品の ライフサイクノレ,棚卸資産の在高,工程管理の特性,生産管理の方式,製品の-124ー 香川大学経済論叢 124 市場的特性の面より,製造職能のローカル化を検討する。 1) 生産システムの国際移転 海外子会社が,自社で使用する設備,機械などの生産システムをどのように 調達しているかを検討することは,海外子会社がどの程度ローカルに本国の親 会社から独立して生産することが可能であるかを示すーっの重要な指標であ る。勿論業種により,必要な装置,機械などが異なるため簡単にはいえない面 もあるが,その結果は表 3- 2に示すとおりである。 表3-2 生産システムの国際移転 調達先 外資系企業 日系企業 1) 本国本社より 7(137%) 71(403%) 2) 本国他社より 11 (21 6 ) 107(608 ) 3) 現地自社で 19(373 ) 34(193 ) 4) 現地他社より 37(72 6 ) 66(375 ) 5) そのイ也 3( 5 9 ) 14( 8..0 ) *) n =51 (外資系企業), n =176 (日系企業)。複数悶 答可。 まず外資系企業の場合には,現地他社より生産システムを調達している割合, すなわち日本企業より生産システムを調達している割合が72.
.
6
%
と,外資系企 業の3/4近くは生産システムを日本国内の日本企業から調達している。同時に 現地自社,すなわち日本にある海外子会社で独自に製作している比率も 37,.3% を占めている。このように日本に進出した外資系企業は,生産システムを大部 分日本国内で調達している。逆に,本国で生産システムを調達している割合は, 本国本社+本国他社を合わせても 35,.3%にすぎない。このことは,生産システ ムの調達という面でも,外資系企業はすでにかなりのレベルまでローカノレ化を 進めているといえる。 それに対して,日系企業の機械,設備などの生産システムの調達は,本国(日 本)の他企業から調達している比率が60,.
8
%
を占め,第l位である。次いで本 国(日本)親会社から調達している比率は40,3%となっている。これは日系企125 外資系企業の経営職能と管理会計職能のローカル化に関する一考察 125-業の場合,原則的には,基軸になる生産システムは日本国内の日本企業から調 達しており,ハード的には日本の親企業で使っている日本的な生産システムを 海外の日系企業へ国際移転し,同様のシステムを海外子会社の生産にも適用し ていることを窺わせる。現地での生産システムの調達は,現地他社からが37 5%を占めており,現地自社の場合は19..3%と,両者を合わせると56..8%になっ ており,基本的な生産システムに付随するシステムを中心にローカJレに調達し ていることが窺える。 この差異の主な理由は,外資系企業と日系企業の業種の相違とともに,両者 のもの作りや海外進出に対する理念とその具体的なやり方の相違をも示唆して いるように思われる。 2) 製品のライフサイクノレ 海外子会社で生産している製品のライフサイクルは,外資系企業と日系企業 のいずれにおいても,徐々に短くなってきていることは,表
3-3
から窺える。 表3-3製品のライフサイクル ライフサイクノレ 外資系企業 日系企業 1985 1990 1985 1990 3年未満 20 2% 235% 36 0% 41 9% 3年以上6年未満 20 1 20..4 22 9 22 4 6年以上 59 7 56.1 41 3 35 0 *)外資系企業: n =40 (1985), n =44 (1990),日系企業: n =117 (1985), n =75 (1990)。
それと同時に,日系企業の製品ライフサイクルは,外資系企業の製品に比べ て,本来的にライフサイクルのより短い製品が多く,またそれがますます増加 する傾向にある。これは,両者が扱っている製品種類の相違が大きく影響して いるように思われる。すなわち日系企業の場合, CTV, VTR,自動車及び阿部 品という製品ライフサイクルの相対的に短い製品を扱う比率が高い。それに対 して,外資系企業は,電気製品や自動車などのように,相対的にライフサイク ルの短い製品を扱うことが少なく,薬品などの化学的進行生産の比率が高い。-126- 香川大学経済論叢 126 このことが,両者の製品ライフサイクノレの長短の相違の大きな要因になってい ると思われる。また同時に,日本企業は相対的に製品ライフサイクノレを短縮化 することを武器に製品戦略を立てる傾向にあるのに対して,外資系企業は製品 ライフサイクルの長さを特徴としてきたという面もあり,それぞれの構造的な 特質も製品のライフサイクノレに大きな影響を与えていると思われる。 3) 棚卸資産の在高 製造企業における在庫は,棚卸資産として表現される。棚卸資産は,原材料 在庫,仕掛品在庫及び製品在庫より構成されている。外資系企業及び日系企業 における棚卸資産の実態は,表
3-4
に示すとおりである。 表3-4 棚卸資産の在高 棚卸資産 外資系企業 日系企業 1985 1990 1985 1990 原材料在庫 8.27% 6 85% 16 0% 15.2% 仕掛品在庫 5.21 4 19 7.3 8..5 製品在庫 12.65 11 77 9 5 7..5 合計 26.13 22 81 32.8 31..2 *)外資系企業:n=
41 (1985), n=
48 (1990),日系企業: n = 144 (1985), n = 166 (1990)。なお表中の数字は,年間売 上高に対する棚卸資産それぞれの構成比を示す。 まず企業全体の在庫は,外資系企業では2
6
.
.
1
3
%(
1
9
8
5
年)から2
2
.
.
8
1
%
(19
9
0
年)へと,この5
年間に3
.
.
3
2
%
減少している。それに対して,日系企業では3
2
.
.
8%
(19
8
5
年)から3
1
.
.
2
%
(19
9
0
年)へと,ここでもL6%
減少している。ま た外資系企業と日系企業を比べてみると,棚卸資産の在高は,1
9
9
0
年時点で8
39%
も,日系企業の棚卸資産が外資系企業の場合よれ多くなっている。 次にその詳細を,個々に検討してみる。原材料在庫は,外資系企業と日系企 業の何れにおいても減少傾向にあるが,減少幅は外資系企業の場合が大きし また在庫比率も日系企業の約半分以下(
1
9
9
0
年時点では)になっている。それ だけ,外資系企業の場合がローカル(日本)で調達する割合が高く,日系企業127 外資系企業の経営職能と管理会計職能のローカル化に関する一考察 -127-に比べて,原材料・部品を現地(日本)でより多く調達していることが大きな 要因であろう。逆に日系企業は,日本の親会社からの部品・原材料調達の比率 が高く(日系企業は 33.6%,外資系企業は 253%) となっていることが大きく 影響していると思われる九 仕掛品在庫の場合には,外資系企業の仕掛品在庫は 5..21%(1985年)から 4 19% (1990年)へと,この 5年間に L1%減少している。それに対して,日系 企業の場合には, 7..3% (1985年)から 8“5% (1990年)へと,逆に L2%増 加 している。これは,外資系企業の場合は,装置型企業が産業構成の中心である ため,中間在庫である仕掛品在庫はもともと少なしそれに加えて一層の合理 化努力により,仕掛品在庫が減少傾向にあることが窺える。それに対して,日 系企業では,海外工場での生産及び生産管理の合理化は当然行われているが, 海外子会社への生産のローカノレ化の一層の進展に伴い,現地で製造している生 産ラインも現時点ではより長くなる傾向にある。その結果,それだけ長い生産 ラインに滞留する仕掛品在庫も多くなってきていることも大きな要因であると 思われる。 最後に,製品在庫については,外資系企業及び日系企業のいずれにおいても, 製品在庫は減少傾向にあるが,日系企業の場合は外資系企業に比べて,その絶 対額もまたその減少幅ともに高くなっている。その理由は,日系企業の場合に は注文生産の比率が高いこと,また両国の景気動向等が影響していることも一 因であるヘ 7) なおその詳細は,井上信一 (1996) の86ページから 88ページを参照のこと。 8 ) なお親会社が海外子会社へ原材料や製品を販売した際,輸送中の在庫をどちらの在庫と して扱うかによっても,海外進出した企業の棚卸資産の在高(直接材料費や製品在庫)の 計算に影響を与える。外資系企業及び日系企業において,輸送中の在庫に対して,それぞ れ CIF基準及び FOB基準のいずれの基準を利用しているかを調査した結果は,次のとお りである。 輸送中の在庫 外資系企業 日 系 企 業 CIF基準 9( 231%) 33( 252%) FOB基準 23( 59.0 ) 66( 504 ) その{也 7( 18.0 ) 32( 24.4 ) 合計 39(1000 ) 131(100 0 )
-128- 香川大学経済論議. 128 4) 工程管理上の特性 生産方式は,工程管理の特性(一つの工場の生産ラインにおいて 1回の生 産で同種の製品をどれくらい生産するか)を基準に分類すると,個別生産,小 ロット生産,中ロット生産,大ロット生産,単種大量生産にわけることが出来 る。調査結果は,表
3-5
のとおりである。 工程管理 個別生産 小ロット生産 中ロット生産 大ロット生産 単種大量生産 その他 N 表3-5 工程管理上の特性 外資系企業 11( 22 0%) 23 (46..0 ) 15 ( 30 0 ) 3( 6..0 ) 4( 8 0 ) 2( 4..0 ) 50(100 0 日系企業 18( 102%) 45 ( 25.6 ) 76 ( 43 2 ) 21 ( 11 9 ) 33( 18..8 ) 11 ( 6 2 ) 176(1000 まず外資系企業においては,小ロット生産が最も多く 460%を占めており, 次いで中ロット生産が30.,0%を占め,個別生産も 22ぃ0%になっている。外資系 企業においては,以上3つの生産方式が主要なものである。 他方日系企業においては,中ロット生産が訪れ2%
を占め,つぎに小ロット生 産が25,,6%,単種大量生産も 18.,8%となっている。以上3つが日系企業におけ る主要な生産方式であるといえる9)。 9 ) 外資系企業と日系企業の生産方式を比較すると,外資系企業は化学的進行生産が中心で あり,日系企業は組J1生産を志向している。従って,外資系企業はロットサイズの大きい 生産を志向し,日系企業はロットサイズの小さい生産を志向していると単純に予想された が,結果は逆になっている。これは日本国内では,日本企業は消費者ニーズの多様性(多 品種少量・中量生産=流通)に対応して,比較的小さいロットサイズで生産するのが通例 であり,外資系企業もその影響を受け,日本市場の特性に対応している結果かも知れない。 逆に日系企業の場合は,それとは反対の影響が出ているのかもしれない。すなわち,日 系企業の場合もある程度のロットサイズにならないとラインの切替などで生産管理が非 常に煩雑であり,またコストが掛かることもあり,海外進出した日系企業は出来るだけ ロットサイズを大きくしようと工夫していることは,欧州の日系企業の面接調査の際に工 場見学を案内してくれた担当者からよく聞いたことである。ただ,本稿の基礎になってい129 外資系企業の経営職能と管理会計職能のローカル化に関する一考察 129-以上のことは,外資系企業の場合が日系企業の場合よりも,より小さいロッ トサイズで生産している企業の割合が多いことを窺わせる。 5) 生産管理の方式 生産方式のうちでも,生産管理の方式を基準に分類すると,製番方式,かん ばん方式及び
MRP
方式に分類される。その結果は,表3-6
のとおりである。 表3-6 生産管理の方式 生産管理 外資系企業 日系企業 製番方式 26( 56.5%) 93( 538%) かんばん方式 2( 4 4 ) 17( 9.8 ) M R R方式 17 ( 37.0 ) 58 ( 33..5 ) その他 3( 6..5 ) 13( 7 5 ) N 46(1000 ) 173(100 0 外資系企業におい、て,最も多い生産管理の方式は製番方式であり,5
6
,5%
を 占めている。次に,MRP
方式は370%
を占めている。日本の自動車製造企業な どで広く利用されているかんばん方式は44%
と,外資系企業ではあまり用い られていない。これは,外資系企業の中心的な業種は化学工業であることが大 きな要因であると思われるが,同時に日本国内でのかんばん方式の実態を熟知 している外資系企業においても,その利用が少ないことは留意しておく必要が ある。 次に日系企業の場合はどうであろうか。日系企業の場合も,製番方式は5
3
8%
を占め,最も広く利用されている生産管理の方式であり,次いでトMRP
方式 も335%
の企業で利用されている。日本の自動車企業を中心に利用されている かんばん方式は9
“8%
と,アジア諸国ではある程度利用可能なことが窺える。こ れはアジアに進出した日系企業のうちでも,自動車及び同部品製造企業などで 広く利用されているのでないかと推測されるが,詳細はフォローアップ調査を 待つ必要がある。 る調査票の質問方法が定性的な質問になっており,より定量的な質問にする必要性と共 に,今後のフォローアyプ調査により詳細な検討を待ちたい。130- 香川大学経済論叢 130 6) 製品の市場的特性 生産方式を,製品市場での販売形態を基準に分類すると,注文生産と市場見 込生産に分けられる。その結果は,表3一7のとおりである。 市場的特性 表3-7 製品の市場的特性(生産方式) 外資系企業 1) 親会社,同系列の販売 会社よりの注文生産 2) 1)以外の注文生産 3) 市場見込生産 4) その他 8(160%) 18 (36..0 28 (56..0 O( 0 日系企業 106(60 9%) 58(33 3 21(12 1 2( L2 *) n =50 (外資系企業), n=174 (日系企業)。なお,複数の生 産方式で製造を行っている企業があるので,回答企業の合計は100 %を超えている。 外資系企業の場合には,市場見込生産が若干多く,その比率は
5
6
.
.
0
%
を占め ており,注文生産の比率は5
2
叶0%
と幾分小さくなっている。注文生産の内訳は, 一般的な意味で独立した資本関係のない別企業よりの注文による生産が3
6.
.
0%
を占め,いわゆる日本的な販売形態(メーカーと販売会社が独立しであり, 同系列の販売会社からの注文に基づく生産)に基づく i親会社,同資本系列の 販売会社よりの注文生産」は1
6
.
.
0
%
に過ぎない。それは,販売会社が独立して 存在する比率が,外資系企業では少なかったことからも理解できる。 逆に日系企業の海外進出は,まず最初製品の販売だけを目的にして販売会社 (サービス機能も含めて)が進出し,その後現地生産を行うため製造会社が進 出する日本企業が多くみられる。したがって多くの日系企業の場合には,販売 会社と製造会社は独立の法人になっている10)。日系企業の場合は,注文生産の比 10) 日系企業の場合,形式的には製造・販売会社(同一法人)であっても,販売機能(部門) は非常に小さく,大部分を別法人の販売会社に任せている場合も多くみられる。それが表 2 -7の日系企業の製造・販売会社が向一法人としてあるという回答が多いことと,ここ での「親会社,同資本系列の販売会社よりの注文生産」が多いことの相矛盾している回答 を説明する大きな理由になる。なおその詳細については,フォローアップ調査をする必要 がある。131 外資系企業の経営職能と管理会計職能のローカル化に関する一考察 -131ー 率が94.2%を占め,市場見込生産は12.1%を占めているに過ぎない。したがっ て日系企業では注文生産が大部分を占めており,しかもその内訳は「親会社, 同資本系列の販売会社よりの注文生産」が60..9%であり,一般的な注文生産は 33..3%と,日本的な生産・販売システムが主流になっていることがわかる。
I
V
管理会計職能のローカル化 ここでは,外資系企業と日系企業において現在最も重要な管理会計上の課題 である,原材料,部品及び製品の国際振替価格,ビジネスプランの作成に始ま る予算編成,統制及び評価,海外子会社の業績評価,設備投資の経済性計算, 資金調達の方法,会計情報システムの整備とその国際移転について,その実態 と課題を考察したい。 4-1 国際振替価格の方法 ここでは,本国の親会社と海外子会社の聞で原材料,部品あるいは製品の企 業内国際振替をする場合の国際振替価格の方法について,1) 本国の親会社か ら海外子会社へ原材料,部品の販売(振替)をする場合と,2
)
海外製造子会 社から親会社あるいは同グループの販売会社へ製品の販売(振替)をする場合 に分けて,その特徴を検討する。 1) 親会社iから海外子会社へ原材料,部品の振替をする場合 国際振替価格には,市場価格で振替(販売)をする市価基準と,原価でもっ て振替をする原価基準,そして原価基準の一種であるが,原価にある一定割合 表4-1 国際振替価格の方法(1) 振替価格(親会社→子会社) 外資系企業 日系企業 市価基準 19(442%) 40(2410%) 原価基準 3( 7 0 ) 41(24 70 ) 原価+利益基準 19(44 2 ) 84(5060 ) その{也 2 (4..7 ) 3( 181 ) N 43 166132ー 香川大学経済論叢
1
3
2
の利益を上乗せして振替価格とする原価+利益基準が考えられる。外資系企業 と日系企業における国際振替価格の方法についての結果は,表4-1
のとおり である。 外資系企業においては,市価基準と原価+利益基準が,それぞれ1
9
社(
4
4
2%)
を占めており,原価基準は4
担(
7
,0%)
に過ぎない。このことは,日本 に進出している外資系企業では,大部分は市価基準か原価+利益基準のいずれ かの基準により,親会社より海外子会社へ原材料,部品の国際振替(販売)を おこなっていることを示している。 日系企業においては,原価+利益基準が8
4
社(
5
0
,,6
0
%
)
と最も多く,過半 数を占めている。それに対して,市価基準と原価基準は各々4
0
社(
2
4
叶1
0
%
)
,4
1
社(
2
47
0
%
)
と,それぞれ1
/
4
近くを占める構成になっている。日系企業で は,比較的柔軟性の高い原価+利益基準による国際振替価格が振替価格の中心 として用いられていることがわかる。 このように,外資系企業と日系企業を比較してみると,原価+利益基準はい ずれの場合にも多く用いられているが,外資系企業は日系企業に比べて市価基 準による国際振替の方法を多く用いており,それだけ親企業よりの独立性が高 くなっていることを示している。それに対して日系企業の場合は,原価+利益 基準の採用が多くなっており,また原価基準もある程度用いられていることは, それだけ日本の親会社への依存度が高くなっているように見受けられる。 2) 海外製造子会社から親会社/販売会社へ製品の振替をする場合 ここでは,外資系製造企業及び日系製造企業から同系列の販売会社あるいは 親企業に製品を販売する場合,どのような国際振替価格の基準を用いているか を検討する。 まず最初に,進出先国に製造会社とは独立に,同グループの販売会社がある かどうかを調べた。その結果,外資系企業では,販売会社があるのは3
8
,,0%
(19
社)であり,日系企業の場合には4
0
ゎ12% (
6
9
社)を占めている。日系企業の 場合が,販売会社を独立して持っている比率が若干高くなっている。 そのような海外進出の製造・販売会社の特徴を踏まえて,海外製造子会社か133 外資系企業の経営職能と管理会計職能のローカノレ化に関する一考察 133-表ト2 国際振替価格の方法(2) 振替価格(海外→販社) 外資系企業 日系企業 市価基準 4(222%) 32(31 4%) 市価マイナス経費基準 3(16 7 ) 22(216 ) 原価基準 l(5..6 ) 6( 5 8 ) 原価プラス利益基準 8(44 4 ) 40 (39 2 ) その他 2(111 ) 6( 5..8 ) N 18 102 *)日系企業の場合,複数回答の場合があるため,合計が100 %を超えている。 ら販売会社への国際振替価格の基準の実態を調べてみると,表
4- 2
のとおり である。外資系企業では,原価+利益基準が44叶4% (8社)と最も多く,市価 基準が22..2% (4社),そして市価基準の変種である市価マイナス経費基準が 16,7% (3杜)となっている。市価基準と市価マイナス経費基準を合わせた広 義の意味での「市価基準」は38れ9%になっている。そして原価基準は, 5,,6%(1 社)にすぎない。 日系企業の場合も,原価+利益基準が39,2%(40社)と最も多く,次いで市 価基準が3L4%(32社),市価マイナス経費基準は2L6%(22社)という順位 になっている。市価基準と市価マイナス経費基準を合わせた広義の意味での「市 価基準」は52“9%に達する。それに対して,原価基準は5,.9% (6社)にすぎ ない。 このように,利用されている国際振替価格の基準は,外資系企業の場合も日 系企業の場合も共に,最も多く用いられているのは原価+利益基準であり,次 に市価基準,第3
位が市価マイナス経費基準,そして原価基準はごく限られた ケースしか用いられていないことである。目立つた特徴は,日系企業において 市価基準及びその変種である市価マイナス経費基準を合わせた「市価基準」が, 過半数の企業で利用されていることである。-134 香川大学経済論議 134 4-2 予算編成,統制及び評価 まず最初に,調査票の質問事項を再記しておくと次のとおりである。調査票 では,-貴社の予算編成,統制及び評価は,本国の親会社と貴社(海外子会社) との間で,どのように役割分担されていますか。該当するものに
O
をして下さ しりとし,以下の4つのレベルを記載した。まずここでいう第3レベルとは, 「予算管理の権限は,現地に大部分委譲されており,ほとんど現地子会社が単 独で編成,実施,評価する体制である」とした。次に,第2レベルとは,-予算 管理の基本方針は,本国の親会社が決定し,その枠内で現地子会社が編成し, 親会社が承認・評価する体制である」とした。第1
レベルとは,-予算管理は, 本国の親会在が中心に決定しており,基本方針,具体的な予算編成ともに本国 の親会社が作成し,それに基づいて現地子会社は予算執行だけを行い,それを 親会社が評価する体制である」とした。以上 3つのレベル以外の方法を「その 他」とした。以上のような調査に対する回答結果は,表4- 3である。 表4-3 予算編成,統告JI及び評価 権限委譲のレベル 外資系企業 日系企業 1) 第3レベル 37(698%) 120 (68.97%) 2) 第2レベル 14(264 ) 46 (26 44 ) 3) 第lレベル 。(o
)
4( 2..30 ) 4) その{也 2( 3..8 ) 4( 2.30 ) N 53 174 *)なお第lレベル,第2レベノレ,第3レベノレの説明は,本文 中の説明を参照のこと。 表から得られる興味深い事実は,外資系企業も日系企業もほぼよく似た傾向 になっているということである。すなわち,第3レベノレを示す「予算管理の権 限は,現地に大部分委譲されており,ほとんど現地子会社が単独で編成,実施, 評価する体制」にある企業の割合が,外資系企業では6
9
.
.
8
% (
3
7
社)を占め, また日系企業でも印刷97%
(12
0
社)と,何れの場合もほぼ7
割近くの企業は, 予算管理の権限の大部分を現地子会社に委譲している。少なくとも郵送調査の135 外資系企業の経営職能と管理会計職能のローカJレ化に関する一考察 -135 結果にみる限り,外資系企業,日系企業のいずれの場合も,大部分の意思決定 を現地の海外子会社で行っている状況にあるといえる。 次に多いのは第
2
レベル,すなわち「予算管理の基本方針は,本園の親会社 が決定し,その枠内で現地子会社が編成し,親会社が承認・評価すmる体制」に ある企業で,外資系企業で26引4%(14社),日系企業で26..44% (46社)と, この場合も外資系企業と日系企業の聞でほぼ同じ割合になっている。 このように,外資系企業及び日系企業ともに,郵送調査による限り,意思決 定権限が大幅に現地子会社に委譲されているようである。しかし詳細は,今後 親会社と海外子会社との聞の権限の委譲関係を含めて海外子会社における予算 管理(編成,実施,評価)の、プロセスを実証的に検討することにより,ローカ /レ化の特徴を具体的に明らかにする必要がある。 4-3 海外子会社の業績評価 この項では,海外子会社の業績評価が本国の親会社によりどのように行われ ているか,海外子会社そのものと子会社の経営者の場合にわけで考察する。 1) 海外子会社の業績評価の有無 ここでは,本国の親会社による海外子会社の業績評価について,表4-4に より,海外子会社そのものと海外子会社の経営者の場合にわけでみていく。 最初に海外子会社そのものの業績評価については,外資系企業では「業績評 価がある」という企業は72..6%を占め,日系企業ではそれが81 25%になって おり,意外にも日系企業のケースが業績評価を行っている企業の割合が高く 表4-4海外子会社の業績評価 業績評価 外資系企業 日系企業 子会社 経営者 子会社 経営者 有り 37(72 6%) 32 (62 8%) 143 (8L 3%) 120 (68 5%) 無し 6(11 8 ) 6(118 ) 18( 5 7 ) 18(103 ) 知らない 8(15 7 ) 13 (25 5 ) 23(13 1 ) 37(2L2 ) *)外資系企業: n =51(子会社), n =51(経営者),日系企業: n =175(子 会社), n =175 (経営者)-136 香川大学経済論叢 136 なっている。また業績評価を行っているかどうか知らされていない企業も,外 資系企業では15.7%を占め,日系企業の13..07%よりも若干多くなっており, 通常考えられている結果とは,数字が逆転している。このことについては,面 接調査などで,外資系企業における業績評価に関する実態を詳細にフォロー アップする必要がある。 次に,海外子会社の経営者の業績評価の場合をみてみる。外資系企業の場合 は r業績評価がある」企業の比率は62..8%を占め,日系企業では68..5%と, 日系企業の場合には,経営者の業績評価を行っている企業の比率が,ここでも 約6 %高くなっている。また「経営者の業績評価の有無を知らされていない」 企業の比率は,外資系企業では25..5%を占めているが,日系企業では2L1%と なっている。ここでも r業績評価の有i無」を知らされていない外資系企業の比 率が高くなっている。この事実も,海外子会社そのものの業績評価について指 摘したことと同様に,筆者にとっては意外な結果であり,その詳細はフォロー アップ調査に待ちたい。 2) 海外子会妊の業績評価指標 それでは,本国の親会社が海外子会社の業績評価を行っている場合,海外子 会社そのものの業績評価の基準としてどのような指標が用いられているのか, 表 4- 5により検討してみる。 まず外資系企業では,利益額(予算・実績比較),投資利益率(ROI),年度の 利益額の3つが,海外子会社そのものの業績評価の中心的な指標である。それ に続いて重要な業績評価の指標は,売上高(予算・実績比較),市場占有率及び ROI (予算・実績比較)などの指標である。 それに対して,日系企業の場合も,利益額(予算・実績比較)や年度の利益 額が重要な海外子会社の業績評価の指標であることは,外資系企業の場合と同 様の傾向にある。ただ日系企業では,外資系企業の投資利益率(ROI)の代わり に売上高(予算・実績比較)が重要な業績評価の指標になっていることは大き な相違である。これら3つの指標に続いて日系企業において重視されている指 標は,投資利益率,製品品質,市場占有率や生産性(予算・実績比較)などの
137 外資系企業の経営職能と管理会計職能のローカル化に関する一考察 137-表4-5 海外子会社の業績評価指標 業績評価指標 外資系企業 日系企業 利益額(予算・実績比較) 18(529%) 79(5852%) 投資利益率(ROI) 15(44 1 ) 28(20 74 ) 利益額 14(41 2 ) 55(4074 ) 売上高(予算・実績比較) l3(38 2 ) 46(34 07 ) 市場占有率 11 (32 4 ) 24(17 78 ) ROI (予算・実綴比較) 7(206 ) 13( 9..63 ) 生産性(予算・実績比較) 3( 8 8 ) 21(1556 ) 製品品質 2( 5.9 ) 34 (25..19 ) 従業員の定着率 O(
o
)
5( 3.70 ) 地域社会への貢献 O(o
)
11 (8..15 ) その他 l(2.9 ) 9( 6.67 ) *) n =34 (外資系企業), n =135 (日系企業)。海外子会社の業 綴評価の指標として,重要な3つの項目を選択してもらった。 指標である。 以上のように,外資系企業において重視されている業績評価の指標は,利益 額(予算・実績比較), ROI (絶対額,予算・実績評価の両方とも)であり,ま た売上高(予算・実績比較)と市場占有率も比較的重要な指標になっている。 それに対して,日系企業の場合には,利益額(絶対額,予算・実績比較の両方 とも)が絶対的に重要であり,また売上高(予算・実績比較),製品品質や生産 性の指標も業績評価の指標としてある程度重要視されている。しかしROIは, 絶対額,予算・実績比較共に,重要視されているレベルが外資系企業の場合と 比べると低くなっている。これまでにもよく指摘されてきていることであるが, 以上の点に外資系企業と日系企業の聞の業績評価基準についての基本的な相違 がみられる。 3) 海外子会社の経営者の業績評価指標 海外子会社の経営者の業績評価の指標は,表4-6
に示したとおりである。 経営者の場合も,外資系企業及び日系企業の何れの場合ともに,業績評価指標 の重要性はほぼ同じ傾向にある。すなわち外資系企業では,利益額(予算・実-138- 香川大学経済論叢 表4-6海外子会社の経営者の業績評価指標 業績評価指標 利益額(予算・実績比較) 売上高(予算・実績比較) 利益額 投資利益率(ROI) 市場占有率 ROI (予算・実績比較) 生産性(予算・実績比較) 製品品質 従業員の定着率 地域社会への貢献 その他 外資系企業 18(62 1%) 1l(379 ) 10(34 5 ) 8(276 ) 8(27 6 ) 5(17 2 ) 4(138 ) 2( 6..9 ) O( 0 ) O( 0 ) 4(138 ) 日系企業 59(5514%) 40(3738 ) 41(3832 ) 17(15 89 ) 11(1028 ) 7 ( 6..54 ) 22 (20..56 ) 26(24引30 ) 6( 5..61 ) 8( 7..48 ) 14(13 08 ) *)n =29 (外資系企業), n =107 (日系企業)。経営者の業績評 価の指標として重要な3つの項目を選択してもらった。 l38 績比較)が圧倒的に重要であり,売上高(予算・実績比較)及び年度の利益額 がそれに続き,そのほかでは投資利益率(ROI),市場占有率, ROI (予算・実績 比較)などが重要視されている指標である。 それに対して,日系企業の経営者の業績評価の指標は,利益額(予算・実績 比較)が外資系企業の場合と同様に非常に重視されていると共に,年度の利益 額,売上高(予算・実績比較)も重要な経営者の業績評価の指標である。また 同時に日系企業では,経営者の業績評価の基準として,製品品質や生産性が重 視されていることが特徴である。逆にROIは,絶対額と比率のいずれも,日系 企業では外資系企業の場合のように重要な指標にはなっていない。 4-4 設備投資の経済性計算 海外進出した企業における設備投資の経済性計算も,カントリー・リスクな どを考慮にいれると,圏内以上に重要になってくる。ここでは,外資系企業と 日系企業における,設備投資の経済性計算のあり方を検討してみる。 1) 経済性計算の有無 外資系企業及び日系企業において,設備投資の経済'性計算を行っているかど
139 外資系企業の経営職能と管理会計職能のローカノレ化に関する一考察 -139ー うかを調査した結果は,表4- 7のとおりである。 外資系企業では, 98..0%の企業が設備投資の経済性計算を行っており,行っ ていないのは1社のみである。他方日系企業では, 75“15%とほぼ 3/4の企業は 経済性計算を行っているが,同時に行っていない企業も約1/4存在する。それ だけ外資系企業の場合,経済性計算の重要性を理解している企業が多いことを 示している。 表4-7 設備投資の経済性計算 経済性計算 している していない N 外資系企業 49(980%) 1( 2 0 ) 50 日系企業 127 (7515%) 42(2485 ) 169
2
)
経済性計算の方法 設備投資の経済性計算の方法には,資本回収期間法,原価比較法,単純投資 利益率法,現在価値法,内部利益率法など,単純なものから非常に洗練された 方法まで多様である。ここでは,外資系企業及び日系企業において,どのよう な経済性計算の方法が利用されているか,表4-8
により検討する。 まず外資系企業で最も多く利用されている経済性計算の方法は,資本回収期 間法であり, 55.1%の企業が利用している。次に多いのは資本コストを考慮に 表4-8経済性計算の方法 経済性計算の方法 外資系企業 日系企業 資本回収期間法 27(551%) 85(6746%) 原価比較法 5(102 ) 24(1905 ) 単純投資利益率法 11 (22 5 ) 13(1032 ) 現在価値法 16(32 7 ) 8( 635 ) 内部利益率法 6(122 ) 13(1032 ) その他 4( 8.2 ) 5( 3..97 ) N 49 126-140- 香川大学経済論叢 140 いれた現在価値法であり, 32ゅ7%の企業で利用されている。そのほかには,単 純投資利益率法が22..5%を占めている。以上資本回収期間法を中心に,現在価 値法及び単純投資利益率法の
3
つが,外資系企業で相対的に多く利用されてい る経済性計算の方法である。 それに対して,日系企業では,資本回収期間法は67“46%もの企業で利用され ており,7
割近くの企業は回収期間法を経済性計算の方法とじて利用しており, 設備投資資金が何年程度で回収可能かを計算することが,経済性計算の最も基 本的なことと考えられているようである。それ以外には,利用が簡単な原価比 較法も 1905%を占めており,第2位である。逆に資本コストを考慮にいれた理 論的に優れた現在価値法は6..35%と,日系企業では余り用いられていない。 以上のことから,外資系企業と日系企業の場合を比較すると,欧米企業では 最も理論的に洗練された方法として,広く用いられている現在価値法は,外資 系企業でも多く用いられている。逆に日系企業では,経済性計算の方法として, 日本の親企業の場合と同様に,出来るだけ簡単な方法を採用する傾向にあり, 資本回収期間法や原価比較法が多用されている11)。 11) なお,設備投資の経済性計算に資本回収期間法と単純投資利益率法を用いている場合, 回収期間の平均年数と投資利益率のパーセントは,つぎのとおりである。 資本回収期間は,外資系企業で平均4..44年であるのに対して,日系企業では4..23年と, 何れの場合も 4年から 4年半の間で投下資金を回収しようとしている。ただその年数は, 日系企業の場合が若干 (021年)短くなっている。 次に,単純投資利益率のパーセントであるが,外資系企業では平均1943%であるのに対 して,日系企業では1625%と, 15%と20%の間にある。ただその利益率は,日系企業の 場合が318%低くなっている。 以上のことより,日系企業の場合が外資系企業よりも資本回収期間法の回収期間は幾分 短く,また単純投資利益率法の利益率はやや低くなっている。 資本回収期間と単純投資利益率 外資系企業 日系企業 平 均 値 標 準 偏 差 平 均 値 標 準 備 差 資本回収期間(年 4..44 2.08 4..23 1 97 単純投資利益率(%) 19川43 8 20 16..25 6..94 *)資本回収期間:n=21 (外資系企業), n=77 (日系企業), 単純投資利益率:n=7 (外資系企業), n=8 (日系企業)。141 外資系企業の経営職能と管理会計職能のローカル化に関する一考察 -141ー
4
-
5
投資資金の調達先 企業のグローパル化にともなって海外子会社で製造・販売活動を行う場合, そのための設備投資資金及び運転資金が必要なことは自明のことである。その 場合に,海外子会社はそれをどこから調達してくるかも経営活動のローカJレ化 という面から重要な検討課題である。それを外資系企業と日系企業の場合につ いて調べた結果は,表4-9のとおりである。 表4-9資金の調達先 資金調達方法 外資系企業 設備投資 運転資金 日系企業 設備投資 運転資金 1) 本閣の親会社 9(173%) 5( 98%) 43(2785%) 11( 636%) 2) 本国の銀行 3( 5.8 ) 3( 5..9 ) 9( 5..08 ) 5( 2..89 ) 3) 現地の銀行 37(71 2 ) 43(843 ) 83(46 89 ) 101(5838 ) 4) 本国系の銀行 5( 9.6 ) 2( 3.9 ) 65(3672 ) 76(4393 ) 5) その他 5( 9..6 ) 38( 5 9 ) 28(1582 ) 21 (12 14 ) キ)外資系企業:n =52 (設備投資), n =51 (運転資金),日系企業:n =173 (設備 投資), n =173 (運転資金)。複数回答可。 まず設備投資資金の場合については,外資系企業では現地(ここでは日本) の銀行からというケースは71..2%を占め,最も多くなっている。それ以外で, 目立つのは本国の親会社からという企業が17.3%
を占めていることである。 それに対して,日系企業の場合も,現地の銀行からというケースは4
6
.
.
8
9
%
と 半数近いケースを占めているが,同時にそれ以外の方法も多くなっている。例 えば,日本の銀行の現地支庖からは3
6
.
.
7
2
%
,日本の親会社からというケースも2
7
,85%
と,設備投資資金の調達に関する限り,かなりの海外子会社が日本的な 関係(日系の銀行と日本の親会社から)の中で設備投資のための資金調達をし ていることが窺える。 次に日常的な経営活動に必要な資金調達を意味する運転資金の調達は,どの ようになっているのであろうか。まず外資系企業の場合,設備投資資金の調達 は,まだ親会社からの資金調達も幾分あったが,運転資金の場合になると,85%
近くを日本(現地)の銀行から調達しており,ほぽローカJレに現地の銀行から-142- 香川大学経済論叢 142 運転資金の調達を、行っているといえる。 それに対して,日系企業の場合も,最も多い運転資金の調達先は,現地(進 出先国)の銀行であり,
5
8
.
.
3
8
%
を占めている。同時に,日本の銀行の現地支庖 から調達している比率も4
3
.
.
9
3
%
を占めており,現地の銀行と日系の銀行が運 転資金の主要な調達先であることがわかる。 以上のことからわかることは,外資系企業の資金調達のローカル化(現地銀 行より調達する比率)は日系企業の場合よりも遥かに進展しており,一部の設 備投資資金調達の場合を除いて,ほぽローカノレに行われているといえる。その 理由は,外資系企業の場合,進出年が早いためそれだけローカノレ化が進んでい ると共に,外資系企業は本国の親企業よりの独立性が,日系企業の場合と比べ てより高いためと思われる。4
-
6
意志決定の役割分担 ローカノレで販売する新製品の価格決定,新しい設備投資の意思決定,予算編 成と統制の意思決定は,外資系企業及び日系企業それぞれの場合,親企業と海 外子会社の間でどのように意思決定及び具体的な活動を役割分担しているので あろうか,表4-10
により検討してみたい。 現地で販売する新製品の価格決定の場合,外資系企業では,そのスコアは4
71点となっており,ほぼすべて海外子会社が単独で決めているといえる。それ 表4-10 意志決定の役割分担 項目 新製品の価格決定 新しい設備投資 予算編成と統制 外資系企業 471 3.50 4.28 日系企業 3.64 3..43 4..40 *) n=54 (外資系企業), n =175 (日系企業)。な お,表中の数字は,主に親会社が決定→1点"'''''', 主に現地子会社が決定→5点とし,総得点を合計し, それを回答企業数で割って1社平均の得点を算出し た。143 外資系企業の経営職能と管理会計職能のローカJレ化に関する一考察 -143 に対して,日系企業の場合には, 3,,64点となっており,その意思決定は幾分現 地子会社主導であり,日本の親会社と協議(交渉)しながら決めているケース が多いといえる。 次に新しい設備投資の意思決定の場合には,外資系企業では