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訪日観光人材育成論 : 地方インバウンド中核人材の役割と育成論

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訪日観光人材育成論

Inbound Tourism and Human Resources Education Theory

地方インバウンド中核人材の役割と育成論

Reginal inbound tourism and education theory for the role of core human resources

Masayuki KONDO

近 藤 政 幸

1.はじめに、地域振興とインバウンド

 北陸地方4県の人口減少が二大都市圏の2倍速度で進行していること、一方で訪日外国人旅行者 (以下、訪日外客)の60%が地方に向かっていること、しかもその旅行者数は毎年拡大し続けている。 地方経済の発展のために訪日外客市場を積極的に対応する中核的な観光人材が必要とされている。 1-1.地方の人口減少の速度は大都市の2倍、交流人口で補強が必至  2008年以降、日本の人口が減少時代に入り、地域は努力しなければ衰退する時代に入った。 人口ビジョンによれば、北陸4県の2045年までの人口減少の速度が大都市圏のそれよりも約2倍の 速度で進行している。少子高齢化の現代、訪日外客など観光交流人口の拡大が急がれるのは、大都 市圏よりも地方である。地方インバウンドを推進する中核的観光人材の育成が強く望まれる。  表1は、二大都市圏及び北陸4県の人口ビジョンより抜粋、要約したものである。 1-2.地方の訪日外国人旅行市場の動向  2015年の地方創生政策の中心に、主に訪日外客の拡大を地域振興に戦略的に活用しこれを推進す る事業組織、DMOが各地に誕生している。DMOは観光・宿泊・飲食産業だけでなく地場産業、文化、 単位:万人、% 都市圏 2015年 2045年 減少人口 減少率 東京都 1,352 1,312 40 3.0% 神奈川県 910 834 76 8.4% 埼玉県 725 610 115 15.9% 千葉県 620 514 106 17.1% 首都圏 3,607 3,270 337 9.3% 大阪府 881 750 131 14.9% 京都府 255 220 35 13.7% 兵庫県 553 460 93 16.8% 関西圏 1,689 1,430 259 15.3% 首都+関西計 5,296 4,700 596 11.3% 新潟県 230 170 60 26.1% 富山県 106 80 26 24.5% 石川県 115 95 20 17.4% 長野県 215 160 55 25.6% 北陸4県計 666 505 161 24.2% 出所:各都府県人口ビジョン(2017年) 2000 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 453 383 950 1020 1319 1800 単位:万人 2012年 2015年 2018年 出所:観光庁(2018年)「訪日外国人消費動向調査」 三大都市圏のみ 地方部訪問 表1.都市と北陸4県の人口減少率の速度比較 表2.訪日外国人旅行者の訪問先(都市・地方)推移表

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芸術等の地域資源を活用し、多様な主体をまとめ、地域の稼ぐ力を引き上げる着地型プラットフォー ムとされている。地方でも観光資源と観光地マーケティング(注1)を駆使する中核人材の育成が求め られている。  観光庁「2018年訪日外国人消費動向調査」によれば2018年の訪日外客3,119万人の内、約1,800万人 が三大都市圏以外の地方の日本を目的地としている。  2010年代、地方にも徐々に訪日外客が増えている。北陸4県でいえば、2018年には2011年比で6 倍強の321万人の訪日外客が訪れている。特に地方に向かう訪日外客ほど既に三大都市ルートを経験 しているだけに2回目以降の訪日目的は体験型観光など先鋭化しFIT(個人客)化している傾向にある。 山田(2018)によれば、「地方は、地域の資源性を活かして観光地マーケティングにもとづく文化的 価値の高いところには、地球の裏側からでも目的と期待をもって来ている」と述べている。地方に 向かう訪日外客は、かって日本人海外旅行者がパリ・ロンドンコースからプロバンスやスコットラ ンドに向かったように、ホンモノの日本人の生活文化に憧れて急速に地方に向かっている。地方に 特別な目的をもつ訪日リピーターにはあらかじめ地域資源の再発見と資源磨き、参加対象者に適す る観光資源の整理と環境整備がもとめられている。課題となるのは、交流と体験を通じて訪日外客 が日本的習慣や文化を共有できる地域人材が少ないことにある。 1-3.地方インバウンド市場の中核的人材の役割(研究目的)  訪日外客リピーターはホンモノの日本人生活文化を地方に探し、体験と交流を通じて高い学びと 満足を得ようとしている。しかし地方のインバウンド観光現場を牽引する中核的人材は、地域社会 でどんな役割、指導をすべきか未だ不明確な状態である。この研究では地方を訪れる訪日外客に対 して日本滞在中にその大半を接遇する小売業、宿泊業、飲食業などの現業部門や観光サービスの現 場にて日本の生活文化、習慣の翻訳をし、地域社会との関係の中で情報発信ができる人材育成に果 たす中核的人材の役割をあきらかにすることにある。  地方での訪日外客の受入能力を高めるための背景として次の3点の理由がある。  1点目は大都市から地方を巡る訪日外客が過去6年で4倍に拡大し、より専門的な体験と交流型 観光を目指していること、2点目は訪日外客のほとんどを接遇している宿泊・飲食・小売り各業界 の従事者の大半が非正規労働者であること、3番目に地方に訪日旅客市場の誘致から受入、運営に いたる接遇スタッフを育成する中核的人材の必要性があることが挙げられる。

2.地方における訪日外客市場の動向と課題設定

 地方に向かう訪日外客の拡大により、国内旅行市場におけるパラダイムシフト前兆とみなされる 事象が発生している。それは世界の旅行者人口の予期しない拡大、多言語などの観光インフラ、宿泊、 飲食、体験交流プログラムとこれに伴う訪日ビジネス市場の拡大と異文化対応人材の不足といえる。 2-1.訪日外客の目的地、都市と地方が逆転  観光白書(2019)によれば2012年から2018年にかけて訪日外客は人数で3.7倍となり、2018年は3,191

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万人、訪日外客の旅行消費総額では4.2倍の同年4.5兆円となった。なかでも21世紀の地方創生の重要 戦略が、インバウンドの需要を地方経済振興に充てることに焦点をあててみると2012年段階の訪日 外客のゴールデンルートとそれ以外の地方への旅客人数の割合が逆転している。2012年では三大都 市訪問客と地方訪問客の割合が54.2%対45.8%であった。それが2018年の割合では42.3%対57.7%と 逆転している。観光白書(2019)によれば、特に地方部における訪日外客消費額でみると2015年段 階での地方部の消費金額6,561億円が2018年には10,362億円と1.6倍と拡大している。地方を訪問する 訪日外客の人数も2012年は383万人が1,800万人と約4倍に拡大した。 2-2.新潟県への訪日外客リピーターの動向  日本政策都市銀行新潟支店(2019)の調査レポートによれば2018年に新潟県の訪日外客は、その 72%がリピーターであり、訪日3回目以上の旅客も拡大している。このことは訪日外客初心者と異なり、 訪日目的が明確であり専門的な体験や交流をめざす傾向にある。これによって受入側担い手として の知識、技能は見学客とは異なり、コト体験と交流型メニューの文化的価値の翻訳、解説技能が求 められてくる。  同支店によれば2018年の新潟県へ訪日外客の内訳は次の通りである。  国別内訳は、台湾(28%)、中国(22%)、香港(11%)、韓国(7%)、豪(5%)、その他(27%) である。  アジア人には新潟県は認知度が高く、希望する体験群は桜、雪景色、日本料理などとなっている。 2-3.地方ルートと大都市圏ゴールデンルート、3つのちがい 2-3-1.訪日外客旅行のゴールデンルートと地方行きルートとの大きな違いは3点認められる。1点目は、 ルートの違い、2点目は、消費金額の違い、3点目は、受入体制の違いとなる。1点目のゴールデンルー トは訪日客が初めて訪れる、東京・富士山・京都・大阪という訪日初心者向き周遊型である、これ に対して地方行きルートは3大都市圏以外その地方ならではの体験と交流型観光のルートといえる。 リピーターにとり過去の訪日旅行で経験したことや見たことのない日本人の生活文化に関心が高まっ ている。 2-3-2.地方行き訪日客のコト消費とゴールデンルートの消費効果の違い  ちがいの2点目は、地方外客は体験と交流型をめざし、様々なコト消費を運営する地元の支援を 得てゴールデンルートより高い旅行消費を起こしていることにある。  訪日外客の主要なゴールデンルートは国際ハブ空港に近い3大都市圏が主流となる。また非英語 圏の多い東アジアの国々では、パッケージ旅行か団体旅行に参加客の割合が約30%ある。例として 成田や羽田国際空港から入国後、日光、箱根に続き東京、京都、大阪のゴールデンルートを大型ホ テル、大型飲食店を効率よく移動し、見学、飲食、宿泊を正確に時間配分された日程を消化している。  一方、地方に向かう訪日外客の傾向値として、主要な「コト消費」が実現できる地方を中心に「コ ト消費」体験と交流プログラム実現に旅程の大半を費やす形態をとる。『観光白書令和元年版』によ

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れば「コト消費」という目的型訪日旅行に参加する割合が多いのは欧米豪の外客である。同白書で は、地方における「コト消費」を目的とする地方訪問に関係する興味深いデータがある。それはスキー スノボ、温泉入浴、自然体験、四季の体験(花見・紅葉など)など地方型コト消費をする訪日外客 の割合は2014年、28.2%から2018年、34.8%と7%上昇している。  表3は、「コト消費」体験者と非体験者の旅行消費金額の違いを表す。  さらに同白書では「コト消費」のプログラム毎にその参加旅客の旅行消費金額と不参加客の消費 金額の差異を示しており「コト消費客」は不参加客より約5万円多く滞在費を消費していることが わかる。スキースノボの参加者は全体で22万5,056円に対して不参加者は15万1,699円で7万3,356高く、 同じく農漁山村体験では、消費単価は20万2,789円と、不参加外客の消費金額15万0397円より5万2,392 円高かった。「四季の体感(花見・紅葉・雪等)」体験では消費単価は20万4,021円と、不参加客の消 費金額14万7,122円より5万6,899円高い。 2-3-3.訪日外客の受入体制、地方「コト」オペレーションのちがい 表3.主な「コト消費」の体験有無別1人当たり旅行支出 22.5 15.2 17.7 17.8 15.4 20.4 14.7 14.7 14.2 14.2 16.4 13.4 13.4 0 5 10 15 20 25 18.5 14.2 14.2 20.3 15 スキー・スノボ 温泉入浴 自然体験ツアー(農山漁村) その他(ゴルフ・マリンスポーツ) 四季の体験(花見・紅葉・雪等) 旅館に宿泊 自然・景勝地観光 コ ト 消費別項目 単位:万円/人 単位:万円/人 出所:国土交通省(2019)「観光白書令和元年版」 1人当たり旅行支出(体験有) 1人当たり旅行支出(体験無し) 表4.「コト消費体験」として受入れ観光資源と観光アトラクション、担い手組織 コト消費体験のテーマ 観光資源 観光アトラクション 担い手組織 1 エコツーリズム(環境) 良好な生態系、自然景観、伝統的生活文化、住民 環境教育プログラム、動植物生態観察、伝統文化体験 エ コ ガ イ ド、 専 門 家、DMC、宿泊施設 2 ヘリテージ・ツーリズム(文化遺産・産業遺産) 文化財、歴史的建造物、町並み景観、産業遺産、街道 文化遺産教育、歴史教育、町並み、ウオーク、再現体験 歴史ガイド、ウオークガイド、DMC、宿泊施設 3 フードツーリズム(和食・食文化・美味体験)郷土料理、美食、特産物、料理人、生産者の知恵 和食レストラン、料亭、郷土料理店、ご当地グルメ、 直売所、和食調理体験 DMC、ランドオペレーター 4 コンテンツツーリズム(アニメ、映画、ドラマ) 映画ロケ地、アニメ聖地、小説の舞台、ドラマの舞台 アニメ、映画、ドラマ、小説の作品を旅する DMO、ランドオペレーター、ガイド協会 5 伝統文化、伝統工芸 きもの、漆器、陶芸、庭園、古民家、伝統家具、生活文化 きものウオーク、工芸体験、書道、古民家宿泊体験 DMO、ランドオペレーター、ガイド協会 6 グリーン・ブルーツーリズム(農山漁村滞在) 農村漁村、田園景観、良好な田圃、里山、住民 農家滞在、農村景観、農漁業体験、伝統的生活体験 農漁村体験協議会、DMC、DMO 尾家建生(2016)「ニューツーリズムと地域の観光産業」を基本に近藤、加筆、修正

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 ちがいの3点目は、着地側の受入体制である。ゴールデンルートの受入は団体の施設見学に対し、 地方ルートは個人旅行の「コト体験」消費である。2回目以降の訪日外客が日本で経験したいこと は日本人の家屋宿泊、和食づくり、文化遺産、着物や書道体験、農村漁村の体験などホンモノの生 活文化、アニメ聖地訪問、真正性(オーセンティシティ)ある疑似体験を希望して地方をめざして いる。  表4に「コト消費」体験ごとの事例として観光資源、観光アトラクション、担い手オペレーター の一覧表に示した。表の通り、体験ごとに資源種類も多く、さらに楽しみ方によって発注する担い 手も多岐にわたる。「コト体験」消費は、施設見学とことなり訪日外客の理解度と受入の種類、内容、 担い手の受入分野との合致性(マッチング)も必要になる。希望する体験結果と齟齬を防止するた め、一定以上の満足を得るために事前説明書や人材が必要と考えられる。これが「コト」と「モノ」 のちがいである。  国籍、文化、価値観が異なる訪日外客には日本人市場の既成概念は通用しない。「コト消費」に比 重を置く地方ルートは、異文化の価値観、知識と文化を翻訳できる専門人材の育成の必要性がわかる。 「コト体験」を運営するインストラクターを養成する中核的人材がさまざまな分野で重要になってくる。  「コト体験」消費の金額設定についても、施設見学中心のゴールデンルートと異なり、様々な費用 が発生する。「コト体験」の品質管理のできるインストラクター、通訳、運営施設、材料費、手配料、 第一にこれらを指導管理する中核的人材と観光インフラのための費用がかかる。訪日リピーターが 地方の「コト消費」体験をする1人当たり滞在消費、5万円の価値は、その経済的価値の大きさを 再認識できる。この5万円には2通りの意味がある。この5万円は人的資源も含めてほぼ100%地元 調達にもとづくため地域内に循環する効果がある。あと一つは、国が2020年に目標とするする1人 当たりの訪日外客の平均消費金額、20万円を上回る可能性がある。2018年の1人当たり消費金額は は15万6千円であり、5万円不足している。地方行き訪日外客を拡大することは、それだけ外客消 費の目標に近づくことになる。 2-3-4.地方へ向かう訪日外客リピーターのロイヤルティ―を高める  リピーター訪日外客の地方への期待感、愛着心を裏切らないために先の観光資源管理と体験内容 および受入側人材のホスピタリテイも考えなくてならない。  外山昌樹(2016)によれば、地方間の競争激化が想定されるなか訪日外客にリピーターになって もらい、国内各観光地では地域ロイヤルティを高めるには、観光資源評価、経験価値評価、受入側 の人的関係評価が求められてくると述べている。それはスキーファンにおける雪質と情報ストレス なくゲレンデに送り出す宿泊施設と村人の対応であり、和食ファンには酒蔵めぐりと食材収穫体験 の多言語解説者、漁港での魚見学と交流が見たことのないニッポンの経験価値として期待を裏切ら ないと考えられる。経験価値が経済価値に変換する瞬間である。  引き続き地方に訪日旅行をしてもらうために外客自身の当該地へのロイヤルティを高め、他国へ の乗り換えをする危険負担と時間を考えるとき、経験価値としての「コト消費」体験の物語性、学び、

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非日常性が問われてくる。地方での「コト消費」体験の希望が高まるにつれて受け入れ人材の育成 が問われる。なぜなら経験価値としての歴史的文化的な物語、学び、非日常を構成する観光資源、 人材は地域調達であり、そのことは地域ブランドに直結するからである。  リピーター訪日外客はゴールデンルートの観光から、地方の真正性(オーセンティシティ)を学び、 体験することに感動を覚え訪日目的がさらに先鋭化することが予見される。リピーター訪日外客が 次に何を求め何を体験しその程度の差異を理解し、接遇現場に運営指導できる中核人材の必要性が 見えてくる。  新潟県の訪日外客は主にリピーター客のため、観光インフラ、旅客囲い込み体制を敷きながら紹 介客を誘発する地元ネットワークとこれを指導できる中核的な観光人材の存在がもとめられる。

3.訪日外客が接遇する主要産業の人材構造

 訪日外客の接遇を最前線で担っているのは宿泊業、飲食業、小売業であり、その大半が非正規社 員であり、離入職率が最も高い社員であること、その受け入れ体制に脆弱性を覚える。 3-1.「インバウンド観光業界人材」小売り業、宿泊業、飲食業(人件費と待遇の低さ)  観光庁「2018年訪日外国人消費動向調査」によれば2018年の訪日外客の国内消費金額合計が4.5 兆円となり、自動車、化学につぐ第3位の輸出産業となる。その消費金額の構成比率は買い物費用 37%、宿泊費28%、飲食費21%、国内交通費の11%、ツアー3%である。訪日外客に接遇するインバ ウンド業界人材の担当範囲として1位、小売・商業施設37%、2位、宿泊産業28%、3位、飲食業 21%、4位、交通機関11%、5位、旅行業等3%となる。  総務省の「産業別労働力調査年報」(2017)によれば、宿泊・飲食業の入職率33.5%、離職率 30.0%と全産業平均の入職率16.0%、離職率14.9%に比較して2倍のワースト1を記録している。ま た同業種の非正規労働者比率は72.9%と全産業平均の37.2%に対して2倍強の非正規率を示している。 また小売・商業機関も、入職率、離職率は全産業平均ながら、非正規率は33.4%と平均より10ポイ ント高い機関にあたる。問題は人材流動も激しいため、インバウンド業界人材としての知識と技能 を学習、蓄積、共有化することも困難な状態にあることである。  小槻文洋(2016)によれば、訪日外客の接遇に際して、宿泊業、飲食業、小売り業の非正規率が高く、 離職率、入職率も他産業よりも不安定な人材に準拠しているとある。  同業界の流動的雇用構造にある従事者に対してリピーターとしての訪日外客のやや専門的な需要 を満足させるにはその翻訳と技能的支援が宿泊業・小売業・飲食業に必要になってくる。これを支 えるのがインバウンド中核人材としての技能ではないだろうか。インバウンド拡大は、我が国の地 方創生の重要な未来戦略であるはずだ。しかし実態は出入りの激しい人材で賄われているというこ とがわかる。

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 出所:国土交通省(2019)『観光白書令和元年版』  課題は我が国の重要成長戦略市場の地方の訪日外客の消費を地方経済振興に活かす接遇をするに は、一定の訪日受入知識と技能を持つ中核人材の指揮のもとで行うことが要請される。2次交通も 旅行情報量も多言語サービスも少ない地方にて、訪日外客リピーターを満足させるには、接遇だけ でなく、コト消費のプログラム開発や運営などの人材教育が必要となってくる。 3-2.飲食業、旅館・ホテル業に人手が集まらない理由  観光文化230号(2016)の中で日本旅館協会会長の針谷了氏によれば人手が集まらない理由として、 給料の安さにあると結論付けている。その背景としては5点挙げている。①接遇を含めて熟達する のに短時間でできる、②旅館が給与水準の低い地方に多い、③副収入(チップ)が入る、④寮や食 事の賄いが付くことが多く生活費が安くつく、⑤旅館・ホテル業界の労働生産性が低い。労働者1 人当たり付加価値額(労働生産性)が飲食業と共に産業界で最低の付加価値額にあることだと、発 言されている。さらに宿泊・飲食産業に就職後キャリアアップや長時間労働への懸念をもっている。 表5.費目別にみる訪日外国人旅行消費額 表6.宿泊業、飲食サービス分野における現況(2017年) 2012年 単位:億円、% 買物代 3,406 31% 宿泊費 3,713 34% 飲食費 2,229 21% 交通費 1,179 11% 娯楽サービス費 293 3% 買物代 15,763 35% 宿泊費 13,212 29% 飲食費 9,783 22% 交通費 4,674 10% 娯楽サービス費 1,738 4% 2018年 単位:億円、% 宿泊業・飲食業 産業全体 離職率 30.0% 14.9% 入職率 33.5% 16.0% 賃金 26万5千円 33万4千円 非正規雇用者数の割合 72.9% 37.2% 55歳以上の割合 28.6% 29.7% 月当たりの総労働時間 187時間 178時間 年休100日以上の企業割合 57.9% 79.2% 人手不足の原因① 休暇が取得しづらい 人手不足の原因② 賃金が低い  出所:厚生労働省職業安定局及び政策統括官付参事官雇用・賃金福祉統計室

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今後の課題として、製造業に学ぶ生産性向上のスキルを身につけることが肝要と述べている。マル チタスク(注2)の製造業手法をサービス業でも取り入れたいと述べている。  厚生労働省調べで、宿泊業の賃金は、年間で296万4千円(2012年)が2018年には355万9千円ま で上昇しているが、全産業平均の497万2千円には依然として大きく下回っている。

4.地方インバウンド推進の中核人材の役割事例

 地方を旅する訪日外客の抱える課題をアンケートで抽出しながら、一方で課題を解決するために 現場人材がどこまで対応できるのか新入社員時点のリテラシー測定とコンピテンシー測定からみて みたい。 4-1.地方ルートの熊野地方にて訪日外客が「不安に思っている事項」  筆者は、2016年9月より2か月間、地方ルート、和歌山県熊野古道の中山間地の4軒の民宿旅館 にて訪日外客に地方ならではの困った事項、不安に思う事項のアンケート調査(複数回答)を行った。 配布は210部に対して有効回答165部を受領した。第1位が民宿旅館施設とのコミュニケーション、 第2位が風呂の入り方、第3位が交通アクセス、第4位が畳部屋での睡眠、第5位が和食のスタイル、 以下日本家屋の生活、食事の相性、WiFi環境、公共交通機関の頻度と利便性と続く。60日間で165 組の訪日外客(90%が欧米豪)が多くの不安をもって地方旅館に宿泊している。コミュニケーション、 風呂の入り方、畳部屋で暮らす日本生活、和食や2次交通と多くの課題を抱え、地方旅を続けている。  地方民宿旅館はこのように多くの課題を抱える訪日旅客の不安に向きあっている。情報収集と重 点課題を絞込み地域DMOと指差し多言語表示や洗面、トイレのポスター表示などの対策をうっている。  次は、こうした現場でおこる課題に対して新卒で宿泊・飲食サービス業に就職をしたばかりの学 表7.従業員1人当たり付加価値額(労働生産性) 従業員1人当売上高×付加価値率 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 2.77 2.77 6.71 6.71 4.5 4.5 6.07 6.07 9.09 9.09 4.79 4.79 7.47 7.47 3.44 3.44 6.7 6.7 7.067.06 7.86 7.86 2.56 2.56 1.65 1.65 2.44 2.44 4.6 4.6 3.99 3.99 4.82 4.82 2.88 2.88 4.83 4.83 3.18 3.18 農林漁業砂利採取業 建設業 製造業情報通信業 運輸業郵便業 卸売業 小売業 不動産業物品賃貸業 学術研究専門者 宿泊業 飲食業 生活関連サービス業 娯楽業 教育学習支援業医療保険衛生社会福祉介護複合サービス 労働生産性 他のサービス業 (単位:百万円) 出所:総務省統計トピックス 経済センサスと経営指標を用いた産業間比較 - 活動調査(確報)結果 注:付加価値額とは、企業の生産活動によって生み出された価値であり、 「付加価値額-売上高-費用総額+給与総額+租税公課」の算式にて計算されたものとされる。

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生の問題解決力の程度を他の16業種との比較の中でみてみたい。宿泊・飲食サービス業に就職した 学生は近い将来、中核リーダーとしての現場での問題解決力が問われてくる。  表8は、紀伊半島の中山間地にある世界文化遺産、熊野古道沿線にある民宿旅館に宿泊する主に 欧米豪の訪日旅客を対象に行ったアンケート調査(複数回答)の回答一覧である。 出所:近藤政幸(2017)『和食ガストロノミーによるインバウンド地方誘致の視点』第32回日本観光研究学会全国大会論文集 4-2.PROG分析にみる「宿泊業・飲食サービス業」リテラシーとコンピテンシー特性  『PROG白書2018企業が採用した学生の基礎力とPROG研究論文集』によれば、2017年企業が採用 した19大学学生の在学中に実施した「リテラシー」測定と「コンピテンシー」測定では、16業種中、 宿泊業・飲食サービス業に就職した学生の「問題解決力」にて下位級であることが示されている。 2017年卒業の19大学の学生が就職前に受験したジェネリックスキル(社会人基礎力/汎用的能力)の 観点からPROG白書プロジェクトが行ったPROG測定である。同白書によれば、リテラシーとは「知 識を活用して問題解決する力」のことを意味し、PROG測定では「情報収集力」「情報分析力」「課 題発見力」「構想力」の4つの能力を測定対象として各々5段階評価としている。そしてコンピテン シーの定義は「経験を積むことで身についた行動特性」とある。なおコンピテンシーは3つの大分類、 「対人基礎力」「対自己基礎力」「対課題基礎力」から構成されている。測定結果の「問題解決する力」、 リテラシーは大分類についてのみ言及すれば、宿泊・飲食サービス業に就職した大学生は16業種中16位、 「行動特性」、コンピテンシーは16業種中10位であった。特にリテラシーでは、情報収集力、情報分析力、 課題発見力が最下位に位置し、生活関連サービス業、娯楽業でもリテラシー総合11位と下位級である。 0 10 20 30 40 50 60 70 80 表8.地方民宿旅館に対する訪日外客の不安事項・アンケート結果(複数回答) インターネット環境 観光情報と町の連携システム 民宿からの公共交通機関と利便性 民宿から参加できるツアー ステイ先のアクセス、行き方 ステイ先とのコミュニケーション 日本家屋の生活スタイル タタミ部屋で睡眠をとること 風呂の入り方 和食のスタイル、習慣、マナー 食事の相性(食材の味わい、味覚)

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上記は、PROG白書プロジェクトが宿泊業・飲食業の就職直前の大学4年生を含めて行った測定結 果である。 表9.リテラシー:平均値の順位の中央値およびレンジ 表10.コンピテンシ平均値:中分類平均値の順位と順位の中央値およびレンジ リテラシー 総   合 問題解決力 言 処 理 力 非 言 語 処 理 力 中 央 値 レ ン ジ 情 報 収 集 力 情 報 分 析 力 課 題 発 見 力   構 想 力   情報通信業(n=1436) 1 5 1 4 1 2 2 2.0 4.0 公務(他に分類されるものを除く)(n=468) 3 4 3 3 5 1 3 3.0 4.0 製造業(n=1216) 4 9 2 7 6 3 1 4.5 8.0 電気・ガス・熱供給・水道業(n=38) 2 2 6 1 16 15 4 5.0 15.0 運輸業、保険業(n=343) 5 7 8 5 4 9 6 6.5 5.0 金融業、保険業(n=689) 6 6 10 8 2 4 7 6.5 8.0 学術研究、専門・技術サービス業(n=399) 9 10 4 11 7 5 8 7.5 7.0 教育、学習支援業(n=314) 10 8 7 6 11 7 9 7.5 5.0 医療、福祉(n=407) 7 3 9 9 3 6 13 7.5 10.0 建設業(n=626) 8 12 5 10 8 8 5 8.0 7.0 生活関連サービス業・娯楽業(n=308) 11 15 13 14 9 12 10 12.5 6.0 農業、林業、漁業(n=16) 14 1 16 2 10 16 16 13.0 15.0 卸小売業、小売業(n=1497) 15 11 15 15 13 13 12 13.0 4.0 不動産業、物品賃貸業(n=467) 13 14 12 16 12 14 11 13.0 5.0 複合サービス事業、その他のサービス業(n=437) 12 13 11 13 15 10 15 13.0 5.0 宿泊業、飲食サービス業(n=219) 16 16 14 12 14 11 14 14.0 5.0 出所:PROG白書プロジェクト(2018)「PROG白書2018 企業が採用した学生の基礎力とPROG研究論文集」 ※注:中央値とレンジは、総合を除く6項目について求めたもの 平均値を求めるにあたり、各業種のケース数nは、リテラシー総合評価が1~7の値をとるものの数を用いた。 コンピテンシー 大分類 中分類 中   央   値 レ   ン   ジ 総   合 対 人 基 礎 力 対 自 己 基 礎 力 対 課 題 基 礎 力 対人基礎力 対自己基礎力 対課題基礎力   親 和 力     協 働 力     統 率 力   感 情 制 御 力 自 信 創 出 力 行 動 持 続 力 課 題 発 見 力 計 画 立 案 力   実 践 力   教育、学習支援業(n=346) 1 2 1 3 2 1 2 2 2 1 6 3 3 2 5 不動産業、物品賃貸業(n=492) 2 1 4 12 1 2 3 3 4 4 8 12 12 4 11 学術研究、専門・技術サービス業(n=409) 3 4 7 4 5 4 1 6 9 3 2 5 5 5 8 生活関連サービス業・娯楽業(n=334) 4 3 3 16 4 3 6 5 3 2 15 16 16 5 14 建設業(n=629) 6 7 5 10 9 9 4 4 5 6 9 7 7 7 5 運輸業、郵便業(n=356) 8 6 9 8 7 7 7 12 7 7 10 6 6 7 6 宿泊業、飲食サービス業(n=236) 10 9 6 13 8 6 13 8 8 5 14 11 11 8 9 金融業、保険業(n=717) 5 5 8 7 3 5 9 7 10 9 7 9 9 9 7 情報通信業(n=1542) 11 10 11 6 15 14 5 9 11 15 3 8 8 9 12 公務(他に分類されるものを除く)(n=495) 9 11 10 1 10 12 12 10 6 11 1 2 2 10 11 卸小売業、小売業(n=1655) 13 8 13 11 6 8 11 13 13 10 11 10 10 10 7 電気・ガス・熱供給・水道業(n=38) 7 14 2 9 16 11 10 1 1 12 5 14 14 11 15 製造業(n=1245) 12 12 12 5 13 13 8 11 12 13 4 4 4 11 9 農業、林業、漁業(n=15) 15 16 16 2 11 15 15 16 15 8 12 1 1 12 15 複合サービス事業、その他のサービス業(n=532) 14 13 14 14 12 10 14 14 14 14 13 13 13 13 4 医療、福祉(n=497) 16 15 15 15 14 16 16 15 16 16 16 15 15 16 2 出所:PROG白書プロジェクト(2018)「PROG白書2018 企業が採用した学生の基礎力とPROG研究論文集」 ※注:中央値とレンジは、中分類9項目について求めたもの 平均値を求めるにあたっては、各業種のケース数nは、コンピテンシー総合評価が1~7の値をとるものの数を用いた。

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4-3.正規の役割としての中核人財  続いてコンピテンシーにおいても「対人基礎力」「対自己基礎力」は16業種中、各々9位、6位と 中位であるものの、「対課題基礎力」にて14位と低位にある。特に課題発見力、課題対応の計画立案力、 課題への実践力が下位にある。これからインバウンド現場にて起こる諸問題に対して情報収集力、情 報分析力、課題発見力、構想力を磨き、多くの事例対応からインバウンド・リテラシーを高めること が求められる。そこでインバウンド・リテラシーを学習して一定の課題解決能力を養うとインバウンド・ コンピテンシーにて実践的環境交渉力を学ぶことになる。訪日外客の価値観は日本人一般とは必ずし も一致しない国々だけに課題として受け止め、その対応と接客人材を指導する中核人材の存在が問わ れてくる。中核人材は、主要な訪日国の歴史、生活文化、習慣、価値観情報を身につける必要がある。 小売業、宿泊業、飲食業の日々各現場で起こる事象に対し、対人基礎力、対自己基礎力の前に問題 解決力を培うための文化翻訳者としての中核人材、技能と知識の蓄積が求められてくる。  前項での地方旅館での訪日外客のもつ課題に対して、入社1~2年目社員にとり課題意識と解決 方法を意識するには厳しいものがある。そうであるがために地方旅館での中核人材による新入社員 に対する早い段階の気づきと解決案提案と解決に向かう指導が1年目社員にとってインバウンド・ リテラシーを高めることにつながるため、人材育成上、重要なことと考えられる。 4-4.中核人材の経営する「宿泊・飲食サービス業」の優位性  観光庁(2019)「訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関するアンケート2018」におい ても「訪日外客が旅行中困ったこと」の最上位に「施設等のスタッフとのコミュニケーションがと れない」ことが挙げられている。施設の中には、旅館・ホテル、簡易宿所、飲食店、小売店が含ま れる。訪日外客が訪日前に期待していたことの70.3%が日本食を食べること、温泉入浴、日本酒を 飲むこと、日本の伝統文化体験と続く。これらのことを一括して提供できる人材の中核にいるのが 旅館女将である。  前項との関連で中核リーダーとしての旅館のベテラン女将の役割とその業務分散率をみて課題解決 を含めて訪日対応人材の育成にあたりどこの業務、役割に大きく力点を置いているのかをみてみたい。  中核リーダーとしての女将の一番の役割は、仲居を含めて人を育てスキルを磨くことにある。  姜 聖淑(2013)の調査によれば、旅館女将の中核リーダーとしての役割を本人申告の役割、次 に女将として大きく関与する役割、相談相手を交えてまで対処する役割の役割分散率としてみた比 率表がある。1番目の指導的役割は顧客の対応、顧客ニーズ把握・課題解決と従業員への連絡、管 理など旅館運営の責任者としての役割配分が最大であり、2番目に備品、施設の設備、食材仕入れ 管理、調理など環境管理者としての役割、3番目にサービス・リーダーとしての顧客と従業員(仲居、 調理人)との関係づくり、固定客づくりに注力しているのがわかる。  人材育成面では女将の中核人材としての従業員の顧客接遇、従業員との会議、意思疎通、調理部 門社員管理、食事メニューと温泉などの施設管理、旅館空間で和の文化の継承活動など戦略的に行 動をしていることが読み取れる。

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 同じように稼働率を上げている京都のF簡易宿所(ゲストハウス)では、中核人材自らが通算3 年余の海外バックパッカーとして海外ゲストハウス滞在経験のある経験を活かして欧米志向の簡易 宿所を運営している。中核人材自身が海外のゲストハウスで受けた「思い出深い体験と交流」と「清 潔な施設」、「海外の仲間」に対して同じ感動と交流サービスを京都の下町ぐるみで提供をしている。 ゲストハウス客対象の和食教室とタコヤキパーテイ、近隣コミュニテイから書道、邦楽、日本舞踊 の師範を招き体験交流会を開催している。食事と風呂を省略するゲストハウスとして下町コミュニ テイの食堂喫茶、商店街、銭湯と役割分担をしている。訪日外客は必然的に商店街店主から接待の 経験を受け、地域のおもてなしと友人扱いの手厚い囲い込みされる。下町の日本人生活文化として の生きている観光資源、続いて通常の日本人商店主から受ける日本文化の学び、美しさ、エンタテ イメント、非日常の経験価値、そこに仲間として加えてくれた人的関係の3評価が重なって宿泊産 業の世界的なクチコミサイトで地域1位の評価を獲得している。 表 11. 女将の役割 0 20 40 60 80 100 120 お客様対応 備品・消耗品管理 接客担当社員管理 事務担当社員管理 食事のメニュー 販売促進活動 経営数値チェック 管理職管理 調理部門社員管理 店内売店仕入管理 食材関係の仕入 営業計画策定 経営計画 経理業務 設備・PC 対応 あなたが決める 大きく関与 相談相手 殆ど関与せず N/A 出所:姜 聖淑(2013)『実践から学ぶ女将のおもてなし経営』中央経済社 27.1 21.1 21.9 15.7 13.9 14.1 8.6 25.7 11.3 2.8 25.4 12.3 1.4 26 11.4 8.6 24.3 13.9 11.1 26.4 26.8 8.5 23.9 8.5 8.6 9.9 14.3 11.1 7 7 5.7 4.2 31 5.6 23.9 28.6 7.1 25.7 15.5 19.7 26.8 15.7 24.3 25.7 16.7 23.6 26.4 28.2 16.9 25.4 39.4 9.9 25.4 30 18.6 25.7 22.5 26.8 38.6 39.4 38.4 40 34.7 26.8 31 30 28.2 20 22.2 22.5 18.3 20 14.1 顧客 ホスピタリテイ 従業員 まち全体共有 顧客ロイヤルティ コンピテンシー対人関係能力 中核人材 リテラシー 代表 顧客満足 従業員満足 概念化能力 出所:森山正(2016)「サービストライアングル」 を元に近藤、加筆作成 図1.観光人材構造と中核人材の役割 中核人材の役割案 (課題解決・専門能力) 観光地マーケティング、 リ ス ク マ ネ ジ メ ン ト、 CRM、コンプライアンス、 人材育成マネジメント コミュニケーション

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ゲストハウスの中核人材も同時にサービス・マーケテイングにいう4Pに加えて3P(People、 Process,Physical)をつないで観光人材構造と中核人材の役割(図1)を構築している。ゲストハウスオー ナー・中核人材を中心に従業員満足、顧客満足、地域住民満足を垂直統合することでサービス向上 と地域の売り上げ拡大につなげている。ゲストハウス中核人材を中心円として、従業員人材と商店 街おもてなし人材を育成し、訪日外客の囲い込み(CRM)活動をおこない、地域へのロイヤルティ を高める好循環が拡大している。ICTの先端技術と真反対のアナログ併用の囲い込みが、あらたな 訪日外客リピーターを生み、訪日対応人材を拡大し続ける循環型経済と中核人材がみえてくる。 4-5.地方の訪日外客の対応人材を育成する中核リーダーの役割(観光産業振興、地域づくり)  地方におけるインバウンド観光の中核人材は、主に2種類の観光組織に役割を得ている。第一種 は、産業振興としての小売り、宿泊、飲食、着地型旅行、運輸などの観光産業組織、そして第二種は、 地域づくり、地域振興としての観光地経営組織、DMOなどといえる。  もともと第一種の観光産業組織では、企業組織としての中核人材、管理職の存在はあるものの、 従来は日本人旅客に対する価値観にもとづく対応が基礎としてある。しかし訪日旅客からの課題提 示に対しての課題解決リテラシーとコンピテンシー専門能力、役割が問われている。具体的には、 訪日外客の国別・地域別の価値観と訪日に際しての日本への知識と期待とその落差に応じて文化的 差異の翻訳をしながら受入対応を従業員へ説明をする。中核人材として従業員には歴史的文化的違 いこそが訪日外客にとって観光資源であり、アトラクションの可能性、その観光資源を組立て、観 光体験を担う市民とともに対人関係能力が発揮できるよう指導、運営する役割がある。第一種の産 業振興としての観光産業の中核人材は、文化の翻訳者、地域の観光資源にもとづく観光地マーケティ ング、事前説明としてのリスクマネジメント、従業員教育としての人材育成マネジメント、具体的 な対応としてのホスピタリティマーケティングと固定客化マネジメント(CRM)など重要な役割を もっていることがわかる。  続いて、第2種は地域づくり、地域振興としての観光地経営組織、DMO、広域観光推進組織は、 代表の発する理念にもとづき、訪日外客、日本人双方の交流人口拡大を通じて地域の経済的文化的 振興を図ることにある。観光地経営組織は、地域の主要な産業体の複合組織であるだけに、交流人 口の拡大によって1次産業から3次産業までの観光地マーケティングを行いながら新たな数値目標 を設定して地域の稼ぐ力を後押しすることを事業とする組織である。観光資源の収集、分析から商 品開発、観光地マーケティング、産業ごとの受入上のリスクマネジメント、コンプライアンス、人 材育成マネジメントを中核人材が担うことになる。  訪日外客は、直接的に担う小売り、宿泊、飲食、交通だけでなく間接的に関係する1次、2次産 業が深く広範囲に関わっている。旅館ホテル組合、観光協会、商工会議所、JA、漁協のみならず、 主要産業、主要文化団体のまきこみ力が中核人材に問われている。  観光地経営の中核人材として訪日外客の旅行消費が着地型観光経済効果として地域産業、地域社 会に循環していることを組織の内外の従業員や業界別団体に定期的に説明をする任務もある。

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国土交通省『観光白書令和元年版』によれば訪日外客がわざわざ地方に来訪する目的は、地域のコ ト体験価値が地域産業、地域社会、地域環境にねざしたものであり、“忘れられない思い出深い体験 と交流”と真正性求めているからである。その体験するコト消費の経験価値(学び・審美性・ホン モノ感)をささえるのは地域社会の人々と生活文化によっている。このことを説明しながら、人材 育成マネジメントやコンプライアンス、マーケティングマネジメント、リスクマネジメントを推進 していくのが中核人材の役割であることがみえてきた。  地域のコト体験を構成する観光資源、アトラクション、人材、仕組みを中核人材がまとめ上げる ことは地域の内発的なサービス・商品開発とそこに住み続ける自信と誇りを取り戻すことにつながる。 訪日外客が地域で過ごす、テーマのある時間と空間は新たな“時間ブランド”の創発といえる。 そのとき地方インバウンドの中核人材はツーリズムプロデユーサ―としての重要な役割を負う。 参考文献 山田雄一(2018)『観光研究Vol.30.No.1』「“インバウンド”は観光研究とどう向き合うか」日本観光研究学会 姜 聖淑(2013)『実践から学ぶ女将のおもてなし』中央経済社、pp38-52 公益財団法人日本交通公社(2016)『観光文化230号』pp7-38 近藤政幸(2018)『着地型観光の経営的条件』大阪公立大学共同出版会 近藤政幸・尾家建生・金井萬蔵他(2008)『これでわかる着地型観光』学芸出版社 小槻文洋(2016)『基礎からのインバウンド』一般社団法人日本インバウンド教育協会pp16-17 敷田麻美他(2018)『観光地域人材育成プログラムの検討と課題』第33回日本観光研究学会全国大会論文集pp273-276 国土交通省(2019)『観光白書令和元年版』 早稲田インバウンド・ビジネス戦略研究会(2019)『インバウンド・ビジネス戦略』日本経済新聞社 十代田朗(2011)『観光地マーケティング』学芸出版社 沢登次彦(2019)『とーりまかし別冊 研究年間2019』じゃらんリサーチセンター 日本観光研究学会関西支部(2016)『地域創造のための観光マネジメント講座』学芸出版社pp72-111 外山昌樹(2019)『観光研究Vol.30.No.2』「ロイヤルティとスイッチングコスト」日本観光研究学会 清水哲夫(2017)『観光とまちづくり2017年10月号』公益社団法人日本観光協会 公益財団法人日本交通公社(2019)『観光地経営の視点と実践』丸善出版 PROG白書プロジェクト(2018)『PROG白書2018-企業が採用した学生の基礎力とPROG研究論文集』学事出版 日本政策投資銀行新潟支店(2019)『DBJ新潟支店調査レポート』(アクセス日:HP、2019年10月5日) https://www.dbj.jp/topics/dbj_news/2019/files/ce60ba6631161374f512e78695e956f7.pdf 総務省統計データ(2014)従業者1人当たり付加価値額(労働生産性) https://www.stat.go.jp/data/e-census/topics/topi73/pdf/topics73.pdf(アクセス日:2019年10月4日) ⑴観光まちづくりにおける必要とされるマーケティングのことをいう。地域の観光地特性データを抽出、分析することで、 地域への来訪者ターゲットや地域側の適切な対応を明確にすることに活用する。 ⑵複数の業務を時間的空間的また対応する関係先に応じて限定された要員で消化する状況をいう。

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