電磁波(電磁界)の健康影響に関する最新情報
電磁界情報センター 大久保千代次 2009年11月12日電磁波の周波数とその用途
中間周波数帯: >300Hz to 10MHz 1020Hz・ ガンマ線 → がん治療 1017Hz・ エックス線 → 健康診断 1016Hz・ 光(紫外線) → 殺菌灯 1014Hz・ 光(可視光線) 1013Hz・ 光(赤外線) → 暖房・加温 1012Hz・ 電波(サブミリ波) → 通信 1010Hz・ 電波(マイクロ波) → 携帯電話・電子レンジ 107Hz・ 電波(短波) → テレビ・FMラジオ 106Hz・ 電波(中長波) → AMラジオ 101Hz・ 超低周波 (商用周波) → 電力 0 Hz ・ 静磁界(地磁気) 電離放射線は、体に有害。 厳しく管理。電磁界問題の経緯
疫学研究が示す健康影響(がん、記憶喪失...) マスメディアによる不正確な情報氾濫↓
不安感と事業体、行政への不信 先進諸国では同じ問題が発生↓
欧州ではCOST 計画(1992よりCOST244, 244bis, 281)
米国ではRAPIDプログラム(1992-1998) WHOが国際電磁界プロジェクト(1996-継続中) わが国でも関連省庁、研究機関、学会等で検討中 4
リスク認知
同一のリスクであっても受け取る立場で変わる。 自発的 -vs- 不本意 制御可能 -vs- 制御不可能 なじみあり -vs- なじみなし 恐怖感なし -vs- 恐怖感あり 次世代影響なし -vs- あり 公平 -vs- 不公平リスク認知に影響を及ぼす要因
環境リスクの認知に影響を及ぼす要因 個人的因子 年齢・性別 教育レベル 社会的立場 文化的立場 外的因子 メディア 規制プロセス 世論の動向 政治的、経済的状況 得られる科学的情報 リスク因子 技術に対するなじみ 状況の制御可能性 ばく露の自発性 疾病に対する恐怖 直接的利益・公平性 出所)「電磁界のリスクに関する対話の確立」、WHO 5リスク認知に影響を及ぼす要因
マスメディアの問題点
出所)「アルツハイマー病の誤解」、小島正美 67 ①健康影響に対する国際的対応 ②研究評価および研究状況の把握 ③健康リスク評価のために必要な研究の把握 ④知見の空白を埋めるための研究奨励 ⑤環境保健クライテリア(EHC)作成と健康リスク評価 ⑥国際的な統一基準の奨励 ⑦各国への電磁界防護プログラム管理情報提供 ⑧各国への助言
WHO国際電磁界プロジェクト
8①電磁波で健康が害されるのかどうか?
②もし害されるのであれば、どんな病気になるの?
③その病気になる可能性はどの位なの?
④対策が必要なの?
⑤どの様な対策が考えられるの?
①②:
傷害性の同定
③:
ばく露評価、量・反応関係
①~③で、総合的に
リスク評価
④⑤
リスク管理
健康リスク評価と管理
どのような病気になるの?
疫学研究 総合評価 細胞実験 動物実験 1 .0 < 0.10 .1- < 0.20.2- < 0.40 .4≦ 2 .0 3 .0 4 .0 0.9 μ T 相 対 危 険 度 ( 95% 信 頼 区 間 ) 0.5 9.0 ■ 電磁波の人体への影響を検証するための研究 疫学研究、生物学研究(動物実験・細胞実験)の両 方を総合的に評価し、因果関係の有無を検証する必 要がある 10居住環境中の磁界と小児白血病発症の関係
■ プール分析と我が国の疫学研究 0.1μT = 1mG 1 .0 < 0.1 0 .1 - < 0 .2 0 .2 - < 0 .4 0 .4 ≦ 2 .0 3 .0 4 .0 0 .9 μ T 相 対 危 険 度 ( 9 5 % 信 頼 区 間 ) 0 .5 9 .0 プール分析 Ahlbom他, 2000 我が国の疫学研究 兜他, 2006どのような病気になるの?
磁界と小児白血病?
疫学研究 総合評価 細胞実験 動物実験 1 .0 < 0.10 .1-< 0.20.2- < 0.40 .4≦ 2 .0 3 .0 4 .0 0.9 μ T 相 対 危 険 度 ( 95% 信 頼 区 間 ) 0.5 9.0 12 ✓関連性の強さ(何倍くらい病気になりやすいの?) 小児白血病 が2倍程度 ✓関連性の一貫性(同じ結果が出ているの?) 有り(プール分 析) ✓量-反応関係(電磁波が強いとより病気になるの?) 不明 ✓実験的証拠(動物でも裏付けがあるの?) 見つからない ✓信頼できる生物学的メカニズム(なぜ病気になるの?) 見つか らない商用周波磁界のリスク評価結果は?
リスク管理
リスク評価
有害性評価
量・反応評価
ばく露量評価
環境保健クライテリア(EHC)の内容
1 要約と更なる研究に対する推奨 2 発生源、計測、ばく露 3 体内ドシメトリー 4 生物物理学メカニズム 5 神経行動反応 6 神経内分泌系 7 神経変性障害 8 心臓血管疾患 9 免疫、血液系 10 生殖と発達 11 がん 12 健康リスク評価 13 防護措置 http://www.env.go.jp/chemi/electric/material/ehc238_j/index.html(日本語版) 13 超低周波電磁界の健康影響ファクトシートNo. 322
超低周波の電界及び
磁界へのばく露
2007年6月18日
超低周波=商用周波が中心 14ファクトシート322 (2007年6月)
商用周波磁界の健康影響
全体として、小児白血病に関連する証拠は因果関係 と見なせるほど強いものではない。 その他の健康への悪影響(白血病以外の小児がん、 成人のがん、うつ病、自殺、心臓血管系疾患、生殖 機能障害、発育異常、免疫学的変異、神経行動への 影響、神経変性疾患)と、商用周波磁界ばく露との関 連性を支持する科学的証拠は、小児白血病につい ての証拠よりも更に弱い。 15ファクトシート322 (2007年6月)
短期的影響
高レベルの電磁界への短期的ばく露については、健 康への悪影響が科学的に確立されている(ICNIRP、 2003)。政策決定者は、労働者及び一般人をこれらの影 響から防護するために規定された国際的なばく露ガイド ラインを採用すべきである。 16超低周波電磁界の健康影響
ファクトシート322 (2007年6月)
長期的影響 商用周波磁界と小児白血病との関連性の証拠が弱いことか ら、磁界ばく露低減によって小児白血病発生が少なくなるかど うか不明である。 1. 健康影響の科学的根拠のため研究プログラムを推進すべき である。 2. 全ての利害関係者とのコミュニケーションが奨励される。 3. 新たな設備や装置を設計する際には、ばく露低減のための低 費用の方法を探索しても良いでしょう。但し、恣意的に低いば く露限度の採用に基づく政策は是認されない。 http://www.who.int/peh-emf/publications/facts/fs322_ELF_fields_jp_final.pdf (※日本語版も掲載) 17 18 ①電磁波で健康が害されるのかどうか? ②もし害されるのであれば、どんな病気になるの? ③その病気になる可能性はどの位なの? ④対策が必要なの? ⑤どの様な対策が考えられるの?健康リスク評価と管理
①②:傷害性の同定・・・・・・・・・・・磁界:小児白血病 ③:ばく露評価、量・反応関係・・・1%の住民が2倍 ①~③で、総合的にリスク評価・・・・小児白血病に関連する 証拠は因果関係と見なせるほど強いものではない。 ④⑤ リスク管理・・・・国際的ガイドラインを導入。小児白血病 発症原因の究明、コミュニケーション、低費用の磁界低減策リスクの比較
飲料水中のベンゼン 水道水質基準値 10μg/L (過剰生涯リスクが10-5) 「この水を一生飲み続けた場合、水道水中のベンゼンだけによる、生涯での発がんリスクの 増加が10-5を超えない」 10-5=10万人に一人 過剰生涯の発がんリスクが10-5: 日本の人口 約1億2千800万人とすると 1280人。 80歳まで生きるとすると1280/80=16名/年 小児白血病(15歳未満) 2002年では、450名発症。 仮に因果関係があった場合の磁界の寄与リスクは1%なので、 4.5人/年 19 20 電磁波に対する規制 (国際レベル) ■ 国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP:1998年) ➢ ガイドライン(指針) 電界:5.0 kV/m (50Hz), 4.2 kV/m (60Hz) 磁界:100 μT (1,000mG:50Hz), 83μT (830mG:60Hz) ➢ 健康影響から防護するために電磁波によって引き起こされる神経や 組織への刺激を根拠に安全係数をとって設定 ➢ 発がん等を含む長期的な影響は、生物学的な裏づけがないため指 針値には反映されていない ➢ WHO環境保健クライテリアに対応して再検討中 大 小 しきい値 安全係数 10倍・50倍 指針値21 電磁界(超低周波)に対する規制・ガイドライン ガイドライン 100 ガイドライン 5 2004年 規制 100 ※ 規制 5 イタリア* 規制 100 規制 5 2001年 フランス 規制 100 ※ 規制 5 2000年 スイス* 規制 100 規制 5 1997年 ドイツ ガイドライン 100 ガイドライン 5 1994年 オーストリア - - - - 米国 検討中 - 規制 3 1976年 日本 [国レベル] 〃 83 (60Hz) 〃 4.2 (60Hz) 〃 ガイドライン 100 (50Hz) ガイドライン 5.0 (50Hz) 1998年 ICNIRP [国際レベル] 区 分 [μT] 区 分 [kV/m] 磁界 電界 制定年 スウェーデン 2002年 5 勧告 100 勧告 1μT=10mG 2003年 英国 スイス、イタリアではICNIRPガイドラインに基づくばく露制限値に加え、住宅、病院、学校等の特に防護が 必要な場所において、プレコーションの原則に基づいた磁界の放出制限値を設定 22
身の回りの電磁界の大きさ
■家電製品や送電線等のまわりに電磁界は発生 ■ICNIRPガイドラインの値に比べて十分低い 1μT = 10mG中間周波数帯の電磁波発生源
中間周波数帯 → 300 Hz~10 MHz
VDT
15~25 kHz 電磁誘導加熱装置(IH)
20~90 kHz (50 Hz~2 MHz) 電子タグ(RFID)
(135 kHz 以下) 電子商品監視機器(EAS)
(8.2 MHz 前後) 非接触ICカード Suica, Icoca,Edy
(13.56 MHz) 放送・通信機器など
IH調理器からは商用周波数電磁界も発生している 23中間周波磁界(IH調理器)の健康影響
発端;公衆の不安(?)ー科学的な根拠はない 女性(妊婦)のばく露 → 胎児への影響 がん等(他の周波数との混同?) 対象周波数;20kHzおよび60kHz付近 対象磁束密度;6.25μT (ICNIRP参考レベル)を目安 今までのところ影響があるとの結論はない。しかし、研究数が少ない。 今後も、研究を継続すること。 商用周波と異なる点。 影響があるか? 影響がないか? いずれの科学的証拠(研究成果)もない。 24電波の健康リスク評価
26WHOの健康リスク評価のスケジュール
送電線、変電所、家電製品などから出ている電磁波
への評価は、すでに終了。
携帯電話、基地局、放送塔などから出ている電波へ
の評価は、これから。多分4年後。
27
携帯電話の疫学研究
●インターフォン・スタディ WHO国際電磁界プロジェクトの一貫として携帯電話と頭部・頚部 の腫瘍発生との関連性を調査する 携帯電話と脳腫瘍発生との関連性がある事を報告した研究は殆 どない。国際がん研究機関(IARC)が中心となって現在13ヶ国 で疫学調査をとりまとめ中(英、仏、独、伊、ノルウェー、フィンラン ド、スウェーデン、デンマーク、豪、ニュージーランド、加、イスラエ ル、日本)。結果は2004-8年に各国の研究結果を報告。2010年 に全体発表。 2011年にこれに基づき高周波電磁界の発がん性を評価 28 インターフォン研究の症例数 国 名 神経膠腫 髄膜腫 聴神経腫 耳下腺癌 Australia 183 184 93 10 Canada 170 94 83 50 Denmark 177 122 73 15 Finland 178 231 76 France 94 145 111 Germany 256 250 67 Israel 179 354 75 200 Italy 118 110 30 11 Japan 60 82 69 NZ 68 51 19 Norway 180 148 38 11 Sweden 222 179 102 117 UK-North 431 180 43 UK-South 297 213 36 全 体 2613 2343 1089 41429
生物学研究
生物学研究 ➢ ラット等の動物実験(マウス・ラット等への電波の長期ばく 露等)と細胞を用いた細胞実験(細胞増殖、染色体異常、 突然変異等の影響を検証)など。関連性のメカニズムを 解明 ➢ 1回の実験結果のみで判断できない - 精度の向上 (繰り返し同様の結果を示す) - 再現性 (他の研究者が同様の結果を示す) 研究結果 現時点では携帯電話の使用や基地局からの電波が人 の健康に悪い影響を及ぼす可能性を示唆する再現性の ある結果は得られていない。どのような病気になるの?
疫学研究 総合評価 細胞実験 動物実験 1 .0 < 0.10 .1- < 0.20.2- < 0.40 .4≦ 2 .0 3 .0 4 .0 0.9 μ T 相 対 危 険 度 ( 95% 信 頼 区 間 ) 0.5 9.0 ■ 電磁波の人体への影響を検証するための研究 疫学研究、生物学研究(動物実験・細胞実験)の両 方を総合的に評価し、因果関係の有無を検証する必 要がある31
ファクトシート No.304
2006年5月「基地局及び無線技術 」
これまでに蓄積された全ての証拠からは、基地局からの RF電磁界によって短期的または長期的な健康への悪影 響が生じるということは何ら示されていない。一般的に、 無線ネットワークからのRF電磁界は基地局よりも低いの で、それへのばく露によって何らかの健康への悪影響が 生じるとは考えられない。 ( http://www.who.int/peh-emf/publications/facts/bs_fs_304_japanese.pdf)より。
32WHO International EMF Project
●健康リスクアセスメントのスケジュール 2001 IARC直流・低周波電磁界の発がん性評価(実施済み) IARC(WHOの機関で国際がん研究機関) 2003-6 WHO 直流電磁界の健康リスク評価 (実施済み) 2003-7 WHO 低周波電磁界の健康リスク評価 (実施済み) 2011 IARC 電波の発がん性評価 2012? WHO 電波の健康リスク評価
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WHOのファクトシート
ファクトシート181: 国際電磁界プロジェクト (1998/5) ファクトシート182: 物理的特性と生態系への影響 (1998/5) ファクトシート183: 無線周波電磁界の健康影響 (1998/5) ファクトシート184: 電磁界リスクの一般市民の認知 (1998/5) ファクトシート193: 携帯電話とその無線基地 (2000/6) ファクトシート201: ビデオディスプレーユニット (1998/7) ファクトシート205: 超低周波 (1998/11) ファクトシート226: レーダー (1999/6) ファクトシート263: 超低周波電磁界とがん (2001/10) ファクトシート296:電磁過敏症 (2005/12) ファクトシート299:静電界及び磁界 (2006/3) ファクトシート304:基地局及び無線技術 (2006/5) ファクトシート322:超低周波電磁界の電界及び磁界へのばく露 (2007/6) 背景説明資料: 用心政策 (2000/3) (http://www.who.int/docstore/peh-emf/publications/facts_press/fact_japanese.htm) 日本語訳 34ファクトシート No.296
2005年12月「電磁過敏症 」
EHS は、さまざま非特異的な自己申告疾患が特徴である。 • EHS には、はっきりとした診断基準はなく、医学的診断を 適用してはならない。 • EHS の症状と電磁界ばく露との関連性を証明する科学的 根拠はない。 • EHS の原因は他の生活環境因子や職場環境因子に起因 しているかもしれないので、これを調査すべきである。 • 個々のEHS 症状は実在し、適切な専門家に委ねる必要 がある医療問題である。 ( http://www.who.int/peh-emf/publications/facts/bs_fs_304_japanese.pdf)より。35