研究報告
社会復帰過程における慢性疾患をもつ子どもと
家族の抱える問題と専門職種の支援
─ 保護者のインタビューを中心として ─
大 西 文 子*1,神 道 那 実*1,増 尾 美 帆*2The Problems of Families Supporting Children with Chronic Disease and the Support of Special
Employment During Return to Society
-
Intervention Study Using Interview to the Families-
Fumiko Onishi
*1, Nami Jindo
*1, Miho Masuo
*2*1 Japanese Red Cross Toyota College of Nursing *2 Kansai University of Social Welfare
Abstract
The purpose of this study was to (clearly) identify the problems faced by families supporting children with chronic diseases and problems associated with the support of special employment during their return to society. To do this, the study used interviews with 11 families of children with chronic diseases. It also considered the provision of situation-specific support duties for each situation.The results showed that the families experienced the following problems: Anxiety about the affect the advancement of the disease will have on study and/or work; the hindrance to school life caused by the disease and hospitalization; the difficulties faced in life after school, and; the anxiety of making friends. In regards to specific, disease-related support duties, the following were found: Assistance for anxiety associated with future school or work; assistance for the smooth return to school; assistance for the management and treatment of the disease; assistance in making school life easier. Although, from the families point of view, there was demand for a place and resources (human and material) for consultation about the difficulties of daily life, the physical environment of the family / children, and care of the children after leaving hospital. Future research is needed in the areas of patient education, the provision of life-long support after hospitalization, and cooperation between the families and medical professionals and institutions for support following discharge.
抄 録 慢性疾患をもつ子どもの社会復帰を支える保護者11組を対象に、子どもと家族が抱える問題と専門職者の 支援の現状を明らかにし、具体的支援方法を検討することを目的に質的記述的研究を行った。結果、子ども と保護者は医療者から【保護者をサポートするための支援】を受けながらも、保護者は【病気の先行きに関連 した進学や就職への不安】【病気・入院による学校生活への支障】【学校生活を送るうえでの心配・困難】【副作 用による友人との関係性の困難・気がかり】を体験していた。専門職者の支援として、【進学や就職の将来へ の不安に対する支援】【病気・治療の管理を目的とした支援】【学校生活を送りやすくするための支援】【スムー ズな復学のための支援】があった。しかし、保護者からは【日常生活上の困難を解決するための相談する場・ 人材・資料の要望】【入院中から、復学のための情報提供や相談等の支援の要望】【学校生活を送れるための物 理的環境や人的環境の整備の要望】【子どものことを知っている医療者による退院後の支援の希求】があった。 今後は、入院中から個々の退院後の生活に即した具体的な患者指導、養護教諭と子どもの通院する医療機関 の医師・看護師との連携を可能とするシステム等の検討が必要である。 キーワード:社会復帰過程、慢性疾患、子どもと家族、専門職者
Key Words:during return to society,chronic disease,families and children,special employment
*1 日本赤十字豊田看護大学、*2 関西福祉大学 受理:2014年4月16日
成長発達していくなかで、社会に帰属していくた めの保育・教育の機会は必須である。慢性疾患を もつ子どもの教育機関への社会復帰は、特別支援 学校より普通学級への復学がほとんどである。特 に、小児慢性特定疾患の学童期にある多くの子ど もは、小・中学校の普通学級に在籍していること から、教育・医療との連携が重要である(文部科 学省初等中等教育局特別支援教育課、2002)。一 方、特別支援学校に通う医療的ケアが必要な児童 生徒の支援に関する多職種間の役割・連携におけ る現状と課題については報告されているが(丸山、 村田、2006)、普通学級に通う慢性疾患をもつ子 どもにおける医療・教育・福祉の連携に関する報 告は少なく、社会復帰する際の連携や子どもと保 護者が抱える問題や専門職者の支援等も明らかに されていない。 慢性疾患をもつ子どもと保護者を中心とした専 門職者の連携に関して、養護教諭はコーディネー ションの役割を担うが、養護教諭のマンパワー不 足と子どもの健康問題の複雑化等により対応が困 難な現状がある(大西、2010)。その為、子ども の病名や症状および自己管理方法等に関する情報 伝達の役割を担う保護者の負担は多く(堂前、中 村、2004)、子ども・保護者・学校が連携の必要 性を認識するとともに具体的な連携方法をシス テム化する必要性がある(鈴木、横山、及川他、 2005)。そこで、社会復帰過程における慢性疾患 をもつ子どもと保護者が抱える問題や関係専門職 者の支援等の現状を明らかにし、具体的支援方法 を検討することは意義深いと考える。 Ⅱ.研究目的 慢性疾患をもつ子どもと保護者が社会復帰過程 において、どのような問題を抱えており、どのよ うな専門職者からどのような支援を受けているの か、またどのような支援を求めているのかを明ら かにすることで、現状に対応する具体的支援方法 を検討する。 慢性疾患:慢性疾患とは、厚生労働省が子どもの 必要とする医療費を公的に補助する制度に含まれ る小児慢性特定疾患をさす。 社会復帰過程:退院を経て、家庭における療養生 活をしながら保育所・幼稚園・学校で生活を送る ことができるようになる過程をいう。 2.研究デザイン 質的記述的研究 3.研究協力者 研究協力者は、入院中の保育所・幼稚園・学校 に通う小児慢性特定疾患患者で、退院が決定もし くは間近な子どもをもつ保護者とそれに関わる専 門職者である。 4.データ収集方法 A県の小児科診療を有する医療機関2施設と小 児専門病院1施設の院長および看護部長へ研究協 力を依頼し、小児病棟の看護師長に研究協力者の 紹介の依頼をした。2012年4月から2013年1月 に、退院前の心配事と相談相手、退院前に受けた 支援、退院後に困ったことと相談相手、退院後に 支援を受けている職種および支援内容、退院前に 受けたかった支援等に関する半構造化面接用紙を 用いて、退院後初めての外来日とその後の外来受 診日に合わせて、円滑な学校生活が送れるまでの 期間で1~3回のインタビューを行った。 5.データ分析方法 録音した面接内容から逐語録を作成した。その 後、事例ごとに保護者の心配事と心配事に対する 専門職者の支援状況に関連した文脈を抽出し、意 味内容を損なわないように整理・要約した。要約 したものをコードとし、コードを類似性にそって サブカテゴリー化した後、さらに抽象度を高め、 カテゴリー化した。挙げられたカテゴリーについ て、慢性疾患をもつ子どもと保護者が社会復帰過 程において、どのような問題を抱えており、どの ような専門職者からどのような支援を受けている のか、またどのような支援を求めているのかを中 心に分析した。今回は、保護者のインタビューを 中心にして報告する。
日本小児看護学会誌 第23巻第3号(2014) 6.倫理的配慮 本研究は、研究者の所属機関の倫理審査委員会 で承認を得た(承認番号:2313)後、入院・通院 する施設の倫理審査委員会あるいは病院長の承認 を得て実施した。研究協力者が研究者への紹介に 同意した場合、研究者が対面し、研究の目的・方 法・研究への協力は自由意思であり、拒否するこ とによる不利益がないこと、途中の同意の撤回の 保証、本研究で得た情報は連結匿名化により管理 し、分析上個人が特定されることはないこと、調 査結果は学会等で公表する予定であることについ て書面を用いて口頭で説明し、同意を得た。 Ⅳ.結 果 1.患者背景および研究協力者 研究協力者は、保護者11組(保護者10名、両 親1組)で、年齢は30歳~50歳(平均40.7歳)で あった。子どもは、2~15歳(平均9.4歳)であ り、就学前3名、小学生4名、中学生4名であっ た。子どもの診断名は、クローン病、ネフロー ゼ症候群、Ⅰ型糖尿病、骨髄異形成症候群、副 腎白質ジストロフィー、ANCA関連腎炎、急性 リンパ性白血病、若年性突発性関節炎、慢性間 質性腎炎、巣状糸球体硬化症であった。今回の 入院は初回入院および症状の増悪によるもので あり、治療は主に薬物療法であった。保護者へ の平均面接回数は2.1回、平均面接時間は1回目 36分、2回目以降が20分であった。 なお、コードは88、サブカテゴリーは41、カ テゴリーは13抽出された。以下、カテゴリーを 【 】、サブカテゴリーを≪ ≫、コードを〈 〉、 研究協力者の具体的な語りを「 」で示す。 2.社会復帰過程における子ども・保護者が抱え る問題および関わる専門職者の支援 1)子どもと保護者が抱える問題(表 1 参照) (1)【病気の先行きに関連した進学や就職への不 安】 保護者は、〈他者の言動によって、本人が病気 の先行きを不安に感じた〉や〈進学や就職が困難 な状況にあり、落ちこんでいる〉子どもの様子か ら、子どもの病気の経過や予後に関連して進学や 就職への不安をもっていた。 (2)【病気・入院による学校生活への支障】 保護者は、子どもが「入院中の筋力低下で体育 に参加できない」ことや「体育後の症状悪化」など の≪学校生活や体育への支障≫、「子どもは勉強 が不安で長期的に学校に行けない時期があり」《学 習の遅れ》の気がかりや、「症状のコントロール 困難のため塾に行けない」ことによる≪学習への 不安≫を感じていた。 表 1 子どもと保護者が抱える問題 カテゴリー サブカテゴリー 病気の先行きに関連した進学や就職への不安 病気の先行きへの不安 進学や就職への不安 病気・入院による学校生活への支障 病気で入院していたことによる学校生活や体育への支障 学習の遅れ 学校生活を送るうえでの心配・困難 体調や勉強の遅れへの気がかりによる長期的な学校欠席 学習への不安 頑張りたいという思いに生活がついていかない現状 副作用により、今までできていたことができないというストレス 病気のことを知らない非常勤講師の発言に対する本人・家族のショック 副作用による友人との関係性の困難・気がかり 子どもが副作用による外見の変化を気にしていることへの気がかり 友達との喧嘩の増加 体調は落ち着く半面、イライラしている クラスメイトの視線への気がかり 他の生徒や園児によるからかい・いじめに対する心配
て自分の思い通りに体育や活動ができない」こと から≪副作用により、今までできていたことがで きないというストレス≫≪頑張りたいという思い に生活がついていかない現状≫などの困難を語っ ていた。また、「病気のことを知らない非常勤講 師の発言に本人・家族はショックを受けた」と語 り、子どもが学校生活を送ることに関して心配を していた。 (4)【副作用による友人との関係性の困難・気が かり】 保護者は、子どもは〈副作用による体重増加や ニキビおよび多毛を気にしている〉と語り、≪子 どもが副作用による外見の変化を気にしているこ とへの気がかり≫をもっていた。 また、〈子どもは低血糖症状が出てもクラスメ イトの目を気にして我慢している〉と語り、≪ク ラスメイトの視線への気がかり≫があった。さら に、子どもが〈肥満等の身体変化について笑われ ている〉ことや〈いじめがあり、学校へ行きたく ないとこぼしている〉ことから、≪他の生徒や園 児によるからかい・いじめに対する心配≫があっ 状況に加えて、〈心の葛藤が原因で喧嘩すること が増えた〉〈学校での喧嘩が多い〉と語り、≪友達 との喧嘩の増加≫から友人との関係性の困難が気 がかりとなっていた。 2)子どもと保護者に対する専門職者の支援(表 2 参照) (1)【進学や就職の将来への不安に対する支援】 保護者は、復学後、担任教諭が子どもの〈低下 した学力に見合った進路を提案してくれる〉と 語っていた。 (2)【病気・治療の管理を目的とした支援】 保護者は、退院後、子どもの園・学校生活上で 必要な自己管理に対して〈学級担任による注意事 項への見守り〉や〈養護教諭による注射の見守り と声掛け〉があり、〈子どもの情緒不安定に学校 側はよく対応してくれる〉〈幼稚園では薬を飲ま せてくれる〉と語っていた。また、学校生活上留 意しなければならない〈感染症に配慮した対応が ある〉と語っていた。さらに病気・治療の管理に 必要な情報について、「担任・養護教諭は親が学 校に行った際や電話で情報交換をして、情報共有 表 2 子どもと保護者に対する専門職者の支援 カテゴリー サブカテゴリー 進学や就職の将来への不安に対する支援 担任教諭からの子どもの学力に応じた進路指導 病気・治療の管理を目的とした支援 学校生活上必要な自己管理に対する、担任・養護教諭による見守りや内服の 援助 学校生活上留意しなければならないことに対する、担任・養護教諭の配慮 担任・養護教諭と家族による情報共有 医師・看護師から子どもに対する自己管理の重要性と説明 保護者をサポートするための支援 看護師による子どもの情緒不安定等の副作用への対処方法に関する助言 病棟による体調不良時の対処方法に関する電話を介した助言 患者会の臨床心理士から子どもへの病気に関する説明方法の助言 学校生活を送りやすくするための支援 学校での担任継続や友人関係への配慮 学校からの全面的な協力体制 他の生徒からの学校生活への理解と協力 スムーズな復学のための支援 復学時母親から担任教諭への病名や注意事項等の説明 復学時母親から養護教諭への子どもの病名や支援等に関する依頼 担任教諭から学校内教職員に対する病気の周知 担任教諭から他の園児・生徒に対する病気の説明 院内学級教諭による原籍校への復学調整
日本小児看護学会誌 第23巻第3号(2014) をしている」と語っていた。なお、退院前、医師 から〈子どもに対して、病気の説明や副作用の注 意事項および前向きになることの必要性の説明が あった〉ことや、看護師から〈子どもへ直接自己 管理の重要性について説明があった〉ことが語ら れた。 (3)【保護者をサポートするための支援】 保護者は、退院後、看護師から〈子どもの情緒 不安定に対し(対応方法などの)助言をもらった〉 こと、〈胃腸風邪のとき入院していた病棟へ電話 したら様子を見てよいと言ってくれた〉などと 語っていた。また、退院後、患者会の臨床心理士 から子どもの薬や病気の説明について支援を受け たことについて語られた。 (4)【学校生活を送りやすくするための支援】 保護者は、退院後、学校は、〈病気のため担任 を3年間連続引き受けくれた〉ことや〈クラス替 えのときに仲の良い友達と一緒になれるように配 慮してくれた〉および〈全面協力的な学校の対応〉 〈学校がいろいろと配慮してくれる〉と語ってい た。友達が〈本人の気持ちを理解してかかわって くれる」ことや〈荷物を持ってくれたり、欠席時 の連絡を届けてくれる〉など学校生活への理解と 協力に対する感謝が語られた。 (5)【スムーズな復学のための支援】 保護者は、復学時、担任教諭や養護教諭へ病 名や注意事項、体調不良時の連絡依頼について、 〈学級担任と復学時に話す機会を設けた〉と語っ ていた。また、復学時、養護教諭には、「子ども が体調不良を言いやすいように声掛けをお願いし たところ、了承してくれた」と語られた。さらに、 復学時、「担任教諭から学校・園内教職員や他の 園児・生徒に対して、子どもの病気の説明があっ た」こと、退院前、院内学級教諭から〈子どもが 学校へ復帰できるように働きかけてくれた〉と語 られた。 3)子どもと保護者の望む支援(表 3 参照) (1)【日常生活上の困難を解決するための相談す る場・人材・資料の要望】 保護者から、〈困った時にすぐに相談できる医 療関係者の要望〉など≪日常生活に即した相談の 場の要望≫があった。また、子どもの情緒不安定 等に対する〈心の面の相談ができる場がほしい〉 や〈子どもの病気への意識向上のための病気の現 状が目で見てわかる物がほしい〉および〈食生活 や治療後のコントロールをしている子どもの話が 聞きたい〉〈同じ病気をもつお母さんと知り合え ると励みになる〉〈同じ病気をもつ同年代の子ど もと自然に交流したい〉という希望があった。 (2)【入院中から、復学のための情報提供や相談 等の支援の要望】 保護者からは、入院中からいろいろ相談するた めに、「学校での支援体制」などの〈学校で必要な 情報を提供してほしかった〉、「子どもの病気から 表 3 子どもと保護者の望む支援 カテゴリー サブカテゴリー 日常生活上の困難を解決するための相談する 場・人材・資料の要望 日常生活に即した相談の場の要望 心理的な相談の場の要望 子どもの病気への意識向上のための視覚的資料の要望 同じ病気をもつ保護者同士の相談や励まし合える場の要望 同じ病気をもつ同年代の子どもと自然に交流できる場の要望 入院中から、復学のための情報提供や相談等 の支援の要望 医療者による退院後の生活支援の要望 復学に関する情報提供の要望 入院中から、学校復帰の支援の相談をできる人材の要望 学校生活を送れるための物理的環境や人的環 境の整備の要望 学校での物理的環境の整備の要望 学校で子どもを気にかけてくれる人的環境の整備の要望 子どもの友人関係の支援の要望 子どものことを知っている医療者による退院 後の支援の希求 緊急時、子どものことを知っている看護師による対応の要望
生じる学校生活上配慮を要する情報」などの〈学 校復帰に対する障がいに合わせた情報がほしかっ た〉、「受け持ち看護師に学校に復帰することを相 談できるようにしてほしい」という〈入院中から 学校復帰の支援の相談をできる人がほしかった〉 などの要望があった。 (3)【学校生活を送れるための物理的環境や人的 環境の整備の要望】 保護者から、学校生活を安心して送れるための 〈胃腸風邪等の感染予防のためにトイレの専用使 用〉や「学校の中で何があるかわからないし、結 構無理するタイプだから」〈学校で子どものこと を気にかけてくれる人〉の要望があった。 (4)【子どものことを知っている医療者による退 院後の支援の希求】 保護者は、〈今は緊急時に子どものことを知っ ている看護師が対応してくれているが、今後どう なっていくのか心配がある〉ため、退院後も子ど ものことを知っている看護師の対応を希望してい た。 Ⅴ.考 察 1.子どもと家族が抱える問題に対する専門職者 の支援の現状の全容 抽出された13のカテゴリーの関係性を検討し、 構図を作成した(図1参照)。 子どもの社会復帰過程において、子どもと保 護者は、医療者から必要時【保護者をサポートす るための支援】を受けながらも、保護者は【病気 の先行きに関連した進学や就職への不安】【病気・ 入院による学校生活への支障】【学校生活を送る うえでの心配・困難】【副作用による友人との関 係性の困難・気がかり】を体験していた。子ども が病気をもちながら学校生活を送ることができる 状況には、保護者の積極的な働きかけを中心とし て、学校からの【進学や就職の将来への不安に対 する支援】や【スムーズな復学のための支援】、学 級担任や養護教諭からの【病気・治療の管理を目 的とした支援】、学級担任や他の生徒からの【学 校生活を送りやすくするための支援】があった。 しかし、子どもの社会復帰過程を振り返り、保護 図 1 子どもと保護者が抱える問題に対する専門職者の支援の全容 進学や就職の将来への 不安に対する支援 スムーズな復学のため の支援 病気・治療の管理を目 的とした支援 学校生活を送りやすく するための支援 日常生活上の困難を解 決するための相談する 場・人材・資料の要望 子どもと保護者の望む支援 カテゴリー 実在する関連性を示す 求められる関連性を示す 病気の先行きに関連し た進学や就職への不安 病気・入院による学校 生活への支障 学校生活を送るうえで の心配・困難 副作用による友人との 関係性の困難・気がかり 保 護 者 を サ ポ ー ト す る た め の 支 援 学校生活を送れるため の物理的環境や人的環 境の整備の要望 子どものことを知って いる医療者による退院 後の支援の希求 入院中から、復学のた めの情報提供や相談等 の支援の要望
日本小児看護学会誌 第23巻第3号(2014) 者からは必要な支援として、【日常生活上の困難 を解決するための相談する場・人材・資料の要 望】【学校生活を送れるための物理的環境や人的 環境の整備の要望】【入院中から、復学のための 情報提供や相談等の支援の要望】や子どもの将来 と病気を見据えた【子どものことを知っている医 療者による退院後の支援の希求】があった。 2.退院後、子どもの社会復帰過程を支援する保 護者の心配・困難への支援 1)子どもの社会復帰過程を支援する保護者の心 配・困難 本調査では、子どもの社会復帰過程において 園・学校生活を送る上での支障に関連した保護者 の心配・困難が特徴的であった。特に保護者は、 病気・入院によって運動や学習面での支障がみら れたり、体調コントロールをするための制限があ るため、他の子どもたちと同じ生活が送りたいと いう思いの狭間で悩んでいる子どもの状況を心配 していた。今回、11例中8事例は学童後期から思 春期であり、ステロイド剤によるムーンフェイス や体重増加などの外見の変化について、気がかり をもっていた。長期入院後の復学に伴う病児の ストレス・対処行動とその影響に関する研究(阪 本、砂川、2003)では、退院後の病児のストレス 認知として、「ボディイメージの障害」「活動の制 限とそれに伴う仲間との一体感の阻害・喪失」「自 己コントロールの維持を脅かされること」「入院 による学校の欠席・病気からくる将来への不安」 が挙げられており、本調査の結果からも、友人と の関係や集団生活の中で勤勉性や自我同一性を確 立していく学童後期・思春期の子どもたちにとっ て、仲間と同じ生活が送れないことが現在や将来 の生活において不安となっていた。また、保護者 は、医師や看護師から子どもの自己管理の重要性 と副作用の説明を受けていたが、症状や治療の副 作用などへの不安を常に抱えながら、子どもの療 養生活と社会生活を支えていた。例えば、〈薬の 副作用や食生活に即した具体的マニュアルがほし い〉など得た知識を個々の生活で活用しきれてい ない現状があり、退院後の保護者は、より日常的 かつ具体的な情報と退院後にそれらを相談できる 場・人材・資料を求めていた。 2)子どもと保護者に必要な専門職者の支援 入院中の支援の中心は医療者であったが、退院 後は生活の場が学校など地域へ移行することによ り支援の中心は担任教諭と養護教諭であった。 養護教諭が行う慢性疾患をもつ児童生徒への支 援に関する研究では、慢性疾患の児童生徒に対す る養護教諭の支援内容として、体調管理に関する ものが最も多く、次いで生活・学習面に関する支 援、保護者の支援、心理面への支援であった(田 村、伊豆、金泉、2009)。本調査では、養護教諭 の支援内容は体調管理に関するものがほとんどで あり、生活・学習面への支援や心理面への支援は 主に担任教諭によって行われていた。園・学校生 活では、子どもの最も身近にいるのは担任教諭で あり、担任教諭の理解と支援は欠かせないが、医 療の専門職ではない担任教諭が子どもの病気を理 解し支援していくには様々な困難や不安があると 考える。今回、復学時、保護者から〈担任教諭や 養護教諭へ病名や注意事項等の説明〉の積極的な 働きかけを中心として、専門職者の支援が行われ ていたことは、子どもの病名や症状および自己管 理方法等に関する情報伝達の役割は主に保護者が 担っている(吉川、1999)という研究結果と同様 であった。また、保護者が〈困った時にすぐに相 談できる医療関係者がほしい〉など医療者の支援 を求めていることや養護教諭のマンパワー不足の ため医療機関から情報を得ることが難しい現状 (山田、武智、小田、2007)から考えると、子ど もの通院する医療機関の主治医・看護師と養護教 諭の両者が連携を可能とするシステム、例えば、 子どもと保護者の外来受診時に主治医・看護師か ら養護教諭へITを活用した情報提供ができる仕 組みづくりなどの検討が必要であると考える。 Ⅵ.今後の課題 今回は、研究協力者の保護者を中心とした退院 後の保護者の心配・困難と専門職者から受けた支 援についての実態を個々に整理し、統合分析し た。今後は、保護者が支援を得たと認識している 専門職者のインタビュー内容を加えて、専門職者 が行った支援や個々の事例における多職種連携の 実態、などについて分析し報告する。
て、子どもを支援する保護者が抱えている問題と 専門職者の支援の全容が明らかとなった。子ども と保護者は、医療者や学級担任および養護教諭か ら必要時支援を受けながらも、保護者は進学や就 職への不安、学校生活への支障、学校生活上の心 配・困難があり、保護者の積極的な働きかけに よって、学校からの学校生活や病気・治療の支援 を受けていたが、保護者からは日常生活上の困難 を解決するための具体的な支援や入院中からの復 学のための情報提供や相談等の支援および医療者 による退院後の支援の要望があった。入院中から 個々の退院後の生活に即した具体的な患者指導、 養護教諭と子どもの通院する医療機関の医師・看 護師との連携を可能とするシステム等の検討が必 要である。 本研究は、平成24年度テルモ科学技術振興会 助成金にて助成された研究の一部であり、第23 回日本小児看護学会学術集会(2013年)において 発表した。 引用・参考文献 堂前有香,中村伸枝(2004).小学校、中学校にお ける慢性疾患患児の健康管理の現状と課題-養 護教諭を対象とした質問紙調査から-.小児保 健研究,63(6),692-700. 大西文子(2010).小児保健の立場からみた養護 教諭養成と専門性-保健師との連携,医療的ケ アの学際的コラボ-,学校保健研究,51(6), 376-381. 役割と協働-看護師・養護教諭・一般教職員に 関する現実認知と理想認知―.小児保健研究, 65(2),255-264. 文 部 科 学 省 初 等 中 等 教 育 局 特 別 支 援 教 育 課 (2002).就学指導要領.100-123. 阪本真由美,砂川知美(2003).長期入院後の復 学に伴う病児のストレス・対処行動とその影響 -5事例の病児・親・担任・養護教諭との面接 をもとに-.小児看護,26(8),1006-1013. 鈴木千衣,横山由美,及川郁子他(2005).慢性・ 長期的健康問題をもつ子どもと保護者の日常生 活と社会資源の活用、福島県立医科大学看護学 部紀要,7,13-24. 田村恭子、伊豆麻子、金泉志保美他(2009).養 護教諭が行う慢性疾患をもつ児童生徒への支援 と連携に関する現状と課題~B市における養護 教諭対象の調査から~.小児保健研究,68(6), 708-716. 山田紀子,武智麻里,小田慈(2007).慢性疾患 を持つ児童・生徒の学校生活における医療と教 育の連携,小児保健研究,66(4),537-544. 吉川一枝(1999).慢性疾患患児の支援をめぐる 養護教諭の対応と連携の現状,日本小児看護学 会誌,8(2),87-92.