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土地条件調査解説書
「大分地区」
平成 22 年 11 月
国土地理院
土地条件調査解説書「大分地区」
目 次
地域概要図 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 1
地形地域区分図 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 2
地形の概要 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 3
山地・丘陵
佐賀関山地 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 4
霊山山地 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 4
高崎山火山地 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 4
速見火山地 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 5
谷火山地 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 5
大分川周辺丘陵地 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 6
高崎山周辺丘陵地 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 6
台地・段丘
丹生台地 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 7
鶴崎台地 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 7
大分川流域の台地・段丘 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 8
別府扇状地の段丘 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 8
低地
大分川・大野川下流三角州・海岸平野 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 9
大野川沿いの低地 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 10
大分川沿いの低地 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 10
祓川谷底平野 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 10
別府扇状地・低地 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 11
亀川低地 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 11
参考資料 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 12
用語について ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 12
巻末資料
ボーリング柱状図位置図 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 13
ボーリング柱状図 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 15
地形地域区分は大分県(1972)及び大分県(1978)に基づく
地形の概要
調査地域は別府湾の南岸~西岸にかけての地域で、海岸部は大分市の大野川河口から別 府市亀川にかけての地域、内陸側は大野川沿いの船本付近、大分川沿いの東長宝付近まで の地域です(地域概要図)。 大野川河口付近から大分川河口付近にかけて海岸平野がみられ、その海側には大規模な 埋立地が広がっています。大野川、大分川沿いには内陸まで谷底平野が広がっており、谷 底平野の周辺には何段もの段丘や丘陵が分布しています。大分市街地と別府市街地の間は 高崎山(標高 628.4m)などの山地や丘陵が海岸に迫っていて海岸付近に広い低地はみられま せん。別府市街地は火山性の急傾斜した扇状地に位置しており、広い海岸平野はみられま せん(地形地域区分図の地形地域区分は大分県(1972)及び 大分県(1978) による)。 地質的には、古い地層は地域の南東端の大野川右岸に三波川変成岩類(砂質片岩や泥質片 岩)がみられ、南部の一部に白亜紀の礫岩が分布しています。その他の地域は比較的新しい 地層が分布していて、新第三紀末から現在にかけての堆積物や火山岩類などが広く分布し ています。 写真-1 調査地域の別府湾沿岸地域(別府市大平山山麓から撮影)山地・丘陵
調査地域の山地は古い地質からなる南東端の佐賀関山地、南端の霊山山地、火山岩類な どからなる西部の高崎山火山地、速見火山地、谷火山地に分けられます(大分県,1972;大分 県,1978)。これらの山地の東や南に接して大分川周辺や高崎山周辺に丘陵が分布していま す。 佐賀関山地 佐賀関山地は九六位く ろ く い山(標高 451.7m:調査地域外)等を含む三波川変成岩からなる山地で、 調査地域の南東端に山地の一部が位置します。山地は全体的には開析が進み、壮年期の山 地地形を呈しています。 霊 山 りょうぜん 山地 霊山山地は地域の南端、霊山(標高 596.0m:調査地域外)を中心とした付近の白亜紀の堆積 岩からなる山地です。山地は全体的には開析が進み、壮年期の山地地形を呈しています。 周辺の丘陵の稜線高度が 100~200m であるのに対して、霊山山地では稜線の高度が 400~ 600m ほどであり、明瞭な高度差があります。 高崎山火山地 高崎山火山地は高崎山(標高 628.4m) 単体の山地で、別府湾に隣接して位置しています。 周辺の丘陵などの稜線高度が 200~300m であるのに対して、稜線高度が 400~600m で著し く突出していて、溶岩円頂丘(トロイデ)の特徴を示しています(大分市史編さん委員会 編,1987)。高崎山は別府西方の鶴見岳(標高 1,374.5m:調査地域外)や由布岳(標高 1,583.3m: 調査地域外)より古く、中期更新世※1 の火山活動で形成された火山とされます(吉岡ほ か,1997)。 写真-2 高崎山と周辺の丘陵(由布市挾間町来鉢)速見火山地 速見火山地は小鹿山(標高 727.6m)などを含む、別府扇状地周辺から由布川中流域、大分 川中流左岸にかけての山地とされ(大分県,1972)、中期更新世から後期更新世にかけての火 山岩類や火山砕屑物からなる山地です。別府扇状地周辺や由布川・大分川沿いでは急峻な 斜面からなりますが、山頂や尾根部分は比較的緩やかな地形となっています。 別府扇状地北側の周囲より一段低い山地は、高平山火山東側の崩壊地から供給された、鉄かん 輪 なわ 岩屑なだれ※2の堆積物からなる山地で、鉄輪岩屑なだれ堆積物の表面には、流れ山と凹 地がみられます(別府市編,2003)。 写真-3 別府扇状地南側の速見火山地(別府市南立石) 写真-4 大分川左岸側の速見火山地(由布市挾間町小野) 谷火山地 谷火山地は大分川中流右岸の山地であり(大分県 1972)、稜線高度が 300~400m の周囲の 丘陵からから突出した山地となっています。地質的には前期更新世から中期更新世にかけ ての凝灰岩や火砕流堆積物が分布しています(吉岡ほか,1997)。
大分川周辺丘陵地 大分川周辺丘陵地は大分川中下流域には、前期更新世から中期更新世にかけての堆積物 からなる丘陵として広く分布しています。 大分川下流右岸側には鶴崎台地から霊山山地の間に稜線高度 100m 前後の丘陵が広がって おり、造成工事により改変され、住宅地等に整備されています。丘陵の一部に阿蘇4火砕 流堆積物がみられます(吉岡ほか,1997)。 大分川中流右岸側には霊山山地と谷火山地の間に稜線高度 100~200m の丘陵がみられ、 大分市街地に近い地域は造成工事により改変され、住宅地やゴルフ場に整備されています。 写真-5 大分川周辺丘陵と背後の霊山山地(大分市国分) 高崎山周辺丘陵地 高崎山周辺丘陵地は高崎山周辺には稜線高度が 200~300m の丘陵が広がっており、南東 方向に高度を減じて、大分市南側の台地・段丘に連続しています。地質的には中期更新世 の堆積物が広く分布し、その上に高崎山起源の火砕流堆積物が堆積しています(吉岡ほ か,1997)。
台地・段丘
台地・段丘は調査地域には、大野川、大分川などの河川にそって多くの段丘が発達して います。 丹生台地 丹生台地は調査地域の東端、大野川の右岸側に位置する台地で、中期更新世から後期更 新世にかけての海成段丘や河成段丘が分布しています(千田,1974; 小池・町田編,2001)。 西上原や種具から金谷にかけて開析が進んでいるものの連続して段丘が分布しており、最 も高い段丘は標高 70~80m で、この段丘は中期更新世の段丘とされています( 小池・町田 編,2001)。 鶴崎台地 鶴崎台地は大野川と大分川に挟まれた地域に位置しており、中期更新世から後期更新世 にかけて形成された河成段丘が分布しています(千田,1974;小池・町田編,2001)。明野の西 側の段丘が最も高く、標高 90m 前後、明野の東側の段丘は標高 70~80m で、これらの2面 は中期更新世の段丘面とされます。これらの段丘の東方には、開析があまり進んでいない 広い段丘面がみられ、猪野付近では標高 40~50m です。この広い段丘面は中期更新世末か ら後期更新世にかけて形成された段丘とされます(千田,1974;小池・町田編,2001)。猪野の 段丘面の東側には台地を縁取るようにやや低い段丘が分布しており、浪上付近では標高 30 ~40m で、後期更新世の前半に形成された段丘面とされます(小池・町田編,2001)。松岡付 近では谷底平野との比高が小さな段丘が分布しており、下流側ほど比高が小さくなり、下 松丘付近で谷底平野との比高がなくなり、沖積面下に没しています。この段丘は氷期のた め河川の水量が少なく、土砂の運搬力が小さかった時期に形成された現在より傾斜の大き な河成の地形面と考えられています(千田,1974;小池・町田編,2001)。 写真-6 鶴崎台地の段丘面(大分市真萱付近から南東方向を撮影)大分川流域の台地・段丘 大分川の流域には多くの台地・段丘が分布し、大分市街地の南側の上野丘から大分イン ターチェンジ付近、大分大学西方の旦だん野原の は る付近、大分医科大学付近、狭間付近、由布川沿 いなどに分布しています。特に大分医科大学付近から狭間にかけては台地上の高位の段丘 から、大分川沿いの低位の段丘まで多くの段丘面が確認できます。大分医科大学が位置す る高位の段丘は後期更新世の前半に形成された段丘とされ(吉岡ほか,1997;小池ほか 編;2001)、標高は大分医科大学付近で、100~110m で、現在の谷底平野との比高は 70~80m になります。低位の段丘は挾間周辺に顕著に発達していて、段丘崖によって数段分けるこ とができます。段丘面の標高は 40~70m で、谷底平野からの比高は5~30m です。これらの 低位の段丘の一部は下流側に連続して確認できますが、国分付近で谷底平野との比高がな くなり、沖積面下に没しているようにみえます。低位の段丘は後期更新世後半の比較的寒 冷な時期や氷期に形成された段丘とされます(吉岡ほか,1997;小池ほか編;2001)。 別府扇状地の段丘 別府扇状地の南側には比高 30~40m の扇状地性の段丘があり、比高が大きいことから、 以前は古い段丘と考えられましたが、段丘の構成層中に鬼界アカホヤテフラ(K-Ah,約 7,300 年前に噴出)が見出され、かなり新しい地形面が、段丘の北側をとおる堀田-朝見川断層群 の活動によって相対的に隆起させられた段丘とされます(千田,1995)。 写真-7 挾間付近の低位の段丘面(由布市挾間町下市) 段丘崖 段丘崖
低地
低地は調査地域の大分市では別府湾岸に海岸平野が連続して拡がり、大野川、大分川沿 いの河口付近には三角州が発達しています。また、大野川、大分川の中~下流には谷底平 野が発達しています。別府市では急勾配の扇状地が発達していて、低平な海岸平野は一部 に限られます。 大分川・大野川下流三角州・海岸平野 大分川・大野川下流三角州・海岸平野は大分市の別府湾岸には海岸平野が発達しており、 背後の海食崖と旧海岸線までの幅は約 1.5km で、旧海岸線と平行する方向に延びる砂州(浜 堤)が複数みられます。砂州(浜堤)が明瞭に発達している大分市日岡付近では、4列の砂州 (浜堤)がみられ、比高は最大で約2m です。地質的には軟弱な細粒堆積物が堆積しており、 深さ 25~30m でN値が 50 以上の礫層が出現するまで、N値 30 未満の砂やシルトなどが厚 く堆積しています。砂やシルトの地層には貝殻や有機質が混じることが多く、層厚2~7m ほどの厚い火山灰層も挟んでいます(柱状図 №16~18)。 大分川・大野川の最下流には三角州(デルタ)が発達し、旧海岸線は周囲の海岸平野に比 べて突出しています。三角州には各河川の本流から分岐した旧河道がみられ、やや不明瞭 ですが自然堤防の微高地がみられます。地質的には砂を主体とする細粒堆積物が厚く堆積 しています(柱状図 №1~3,14,15,19~26)。 写真-8 砂州(浜堤)の高まり(大分市松原町)大野川沿いの低地 大野川沿いの低地は大野川の中~下流部に幅 1.5~2.0km の谷底平野が発達しており、谷 底平野の中には旧河道や自然堤防の微高地が分布しています。旧河道は大分市下徳丸や中 島付近に明瞭なものがみられ、周囲の地盤より2m 前後低くなっています。自然堤防は現在 の河道や旧河道沿いにみられ、周囲の地盤より1~3m 高くなっていて、古くからの集落が 立地しています。地質的には部分的に礫質な層を挟むものの、砂やシルトを主体とする軟 弱な地層が厚く堆積しており、以前、海が湾入していた時代に堆積したと考えられる貝殻 混じりの砂層が、河口から約7km 遡った下徳丸付近でも確認されます(柱状図 №4~11)。 大分川沿いの低地 大分川沿いの低地は大分川中~下流やその支川の七瀬川、賀来川沿いに谷底平野が発達 し、大分川下流(大分市豊饒ぶにょう付近)では幅 2.5km、中流(大分市国分付近)では幅 750m で、七 瀬川の大分市玉沢から市付近では幅1km 前後、賀来川の最下流部では幅 500~700m です。 大分川沿いの沖積低地を千田(1987)は上位面と下位面に分けており、土地条件データでは 上位面のうち、現在の谷底面と比較的明瞭な崖や斜面で区分できる部分を完新世段丘とし て作成しています。地質的に大分川下流の明 磧あけがわら付近までは大野川と同様に礫質な層を挟む 砂やシルトを主体とする軟弱な地層が厚く堆積しており、貝殻混じりの砂層が河口から約 8km 遡った下宗方付近まで確認できます(柱状図 №27~36)。また、大分川中流や七瀬川、 賀来川では礫質な堆積物の割合が大きくなり、堆積物の厚さは薄くなり、基盤岩が 10m 以 浅で出現する地点もみられます(柱状図 №37~50)。 祓川谷底平野 祓はらい川谷底平野は大分市街地の西側にあり、高崎山周辺丘陵地から別府湾に直接流下する 祓川沿いに幅 200m 前後の谷底平野が発達し、最下流部で大分川河口に連続する砂州によっ て閉塞されています。 写真-9 旧河道(大分市下徳丸) 旧河道 自然堤防
別府扇状地・低地 別府扇状地は別府湾奥の速見火山地に囲まれた扇状地で、北縁の鉄輪断層と南縁の堀田 -朝見川断層の活動により低下した所に、背後の伽藍岳や鶴見岳などから流下した土砂が 堆積した扇状地とされます(別府市編,2003)。扇状地面の傾斜は北側では約 57‰(約 3.3°)、 南側では約 67‰(約 3.8°)とかなり急な傾斜となっています。扇状地を形成した河川は北 側の春木川と南側の境川が主体で、境川の扇頂付近には春木川方向に延びる凹地があり、 以前は春木川方向に流下した時期があったとされます(別府市編,2003)。扇状地には周辺の 地盤や現在の河床より高くなっている部分があり、別府公園付近は境川付近の扇状地面と 比べて1~3m 高くなっており、別府市馬場や新別府付近では春木川の河床は周囲の扇状地 面との比高が5~10m あり、これらの地域は土地条件データでは完新世段丘として作成して います。 別府扇状地の海岸部の大半は扇状地が直接別府湾と接していますが、別府駅の東南には 低平な海岸平野がみられ、別府市松原町付近には周辺より1~2m 高い砂州が海岸線と平行 に発達しています。 地質的には扇状地の大半に礫質な堆積物が厚く堆積していますが(柱状図 №52~61,64 ~66)、別府駅の東~南東の地域では表層の礫質な堆積物の下に、砂を主体とした堆積物が 厚く堆積しています(柱状図 №52~55)。 亀川低地 別府扇状地の北側には鉄輪岩屑なだれ堆積物の山地があり、その北側には別府扇状地の 堆積作用の影響をあまり受けずに、比較的細粒な堆積物が堆積して形成された亀川低地が あります(柱状図 №62,63)。亀川低地は低平な海岸平野や緩傾斜の扇状地で、海岸側には 標高4~5m の砂州が発達しています。 写真-10 扇状地上の微高地(別府市上野口町) 境川沿いの低い扇状地面 扇状地上の微高地