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Academic year: 2021

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(1)

助成番号 1030

小腸

Na

+

代謝と栄養素吸収におけるタイト結合部の役割

鈴木 裕一1,月田 早智子,田村 淳2 1静岡県立大学食品栄養科学部生理学研究室,大阪大学大学院生命機能研究科 概 要 【背景・目的】 Claudin-15 は腸管上皮タイト結合部で発現しており、その一価陽イオン透過性通路となっている と考えられている。Claudin-15 欠損マウスでは、(1)小腸の著しい肥大が起こること、(2)小腸内の Na イオン濃度が著しく 低下すること、(3)炭水化物の吸収が低下しているらしいこと、が知られている。今回 Claudin-15 欠損マウスにおける炭水 化物の消化吸収および消化管水電解質代謝の障害を詳細に検討した。 【方法】 野生型マウス4 匹と Claudin-15 欠損マウス 3 匹を用いた。それぞれ炭水化物として 60%のstarch を含む餌を投 与した。餌には非吸収性マーカーとしてPEG4000 を 1.6%加えた。3 時間後に消化管を取り出した。小腸部位の内容物を 解析した。 【結果】 小腸各部位ごとに小腸の長さ当たりの水分量は、野生型群に比べ Claudin-15 欠損群で水分量が多かった。Na イオン濃度は、野生型群では小腸全体にわたって60 mM 前後であるのに対し、Claudin-15 欠損群では 20 mM 以下にま で低下した。Total glucose(starch+中間の分解物+遊離 glucose)濃度は、野生型群では小腸近位側 2/3 部位まで中程度 の濃度が維持されより遠位部ではやや低下した。Claudin-15 欠損群では小腸に沿って高濃度から低濃度まで徐々に低 下していった。また、腸管から吸収された炭水化物の摂取量に対する割合は、個体全体としてみた場合両群で差がなく、 Claudin-15 欠損群でも糖質の(消化)吸収率の低下は起こっていないことが示唆された。小腸各部位の H2O/PEG 比は、 野生型群では 2/3 以下の部位で著明に低下し小腸近位部で水分の吸収が起こっていることを示唆したのに対し、 Claudin-15 欠損群では小腸全体にわたって大きな変化がなく、小腸での水吸収は少ないことが示唆された。Na/PEG 比は、 野生型群では 2/3 以下の部位で著明に低下し小腸近位部で高い Na の吸収が起こっていることを示唆したのに対し、 Claudin-15 欠損群では小腸に沿って徐々に低下し、小腸全体で比較的弱い Na 吸収が起こっていることが示唆された。さ らに、Total glucose/PEG 比を比較したところ、野生型群では 2/3 以下の部位で著明に低下し小腸近位部で炭水化物の (消化)吸収が起こっていることを示唆したのに対し、Claudin-15 欠損群では比較的弱い炭水化物の(消化)吸収が小腸 全体で起こっていることを示唆した。 【まとめ】 以上の結果より、炭水化物の(消化)吸収は、野生型マウスでは大部分が小腸近位部でおこっているのに対し、 Claudin-15 欠損群では、(消化)吸収の速度は低いものの、小腸全体にわたっておこっていることが示唆された。そのため、 個体全体として炭水化物の(消化)吸収障害はきたしていないと考えられる。Claudin-15 欠損群での炭水化物の(消化)吸 収速度の低下は管腔内Na 濃度の低下によると考えらえる。また、Claudin-15 欠損群で見られた水分吸収の低下も管腔内 Na 濃度の低下による可能性が考えられる。 1.背景と目的 Claudin family のメンバーは4回膜貫通型のタンパクで、 タイト結合部に存在し、傍細胞経路の透過性に大きく関与 している。メンバーの一員であるClaudin-15 は発現系での 研究から Na イオン選択性のポアを形成することが知られ ている。また Claudin-15 は腸管上皮で発現している。 Claudin-15 欠損マウスでは、(1)小腸の著しい肥大が起こ ること、(2)小腸内の Na イオン濃度が著しく低下すること、

(2)

らの変化をより詳細に明らかにするため、非吸収性マーカ ー(PEG4000)を含む餌を 3 時間摂取させ、その後小腸を いくつかの部位に分けてその内容物を回収し、解析した。 2.方 法 野生型マウス4 匹と Claudin-15 欠損マウス 3 匹を用い た。それぞれ炭水化物として60%のstarch を含む餌を投 与し、3 時間後に解剖して消化管を取り出した。餌には非 吸収性マーカーとしてPEG4000 を 1.6%加えた。取り出し た消化管を、胃、小腸、大腸に分けた。さらに小腸につい ては、野生型マウスでは 3 等分割(近位部からそれぞれ 1/3、2/3、3/3)し、Claudin-15 欠損マウスでは 4 等分割(近 位部からそれぞれ1/4、2/4、3/4、4/4)し、さらに 1/4 部位は 1/4-1 と 1/4-2 に分け、それぞれの部位の内容物を取り出し 各種測定を行い解析した。 3.結 果 3.1 内容物の濃度 小腸各部位ごとに小腸の長さ当たりの水分量を比較し たところ、野生型群に比べClaudin-15 欠損群で水分量が 多かった。ただし、遠位部では低下しその差がほとんどな くなった(図1)。 小腸各部位ごとの Na イオン濃度を比較すると、野生型 mM 以下にまで低下した(図 2)。 また、小腸各部位ごとのK イオン濃度を比較すると、Na イオン濃度分布の場合と逆に、野生型群では20~30 mM と低く、Claudin-15 欠損群で 50~80 mM と高い値を示した (図3)。 次に、炭水化物の消化と吸収を比較検討した。Total glucose(starch+中間の分解物+遊離 glucose)濃度は、野 生型群では小腸1/3 から 2/3 部位で中程度の濃度が維持 され、3/3 部位ではやや低下した。Claudin-15 欠損群では 小腸に沿って高濃度から低濃度まで徐々に低下していっ た(図 4)。遊離のグルコース濃度は、近位部小腸におい て野生型群が Claudin-15 欠損群より低いことが示唆され た。また、胃から小腸に流入した炭水化物量(摂取量-胃 内量)の10%以下しか小腸以下の消化管から回収されな かったことや、それが野生型群と Claudin-15 欠損群で差 がなかったこと(データ非掲示)から、個体全体としてみた 場合、Claudin-15 欠損群でも糖質の(消化)吸収の低下は 起こっていないことが示唆された。 さらに、小腸各部位ごとの PEG 濃度を比較したところ、 近位部では両群に差がなかったが、野生型群で中位部 以下では著明に増加したのに対し、Claudin-15 欠損群で は 4/4 部位でわずかな上昇がみられるのみであった(図 5)。 1. 小腸内各部位の水分量。小腸長軸方向の長さ(cm)あたりに換算した。 0 5 10 15 20 25

A.

Wild mg/cm 0 5 10 15 20 25

B.

KO

(3)

2. 小腸内各部位の Na 濃度

3. 小腸内各部位の K 濃度

4. 小腸内各部位の炭水化物濃度。Total glucose=(starch+中間の分解物+遊離 glucose)及び遊離 glucose 濃度。

0 20 40 60 80 100 120

A.

Wild mM Na 0 20 40 60 80 100 120

B.

KO 0 20 40 60 80 100 120 140 160

A.

Wild mM K 0 20 40 60 80 100 120 140 160

B.

KO 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5

Total and free glucose (mg/cm)

A.

Wild 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5

B.

KO Total glucose freel glucose

(4)

5. 小腸内各部位の PEG 濃度 3.2 PEG 比 PEG は腸管で吸収されないと考えられるので、吸収さ れる物質はPEG との相対的な濃度(PEG 比)が低下すると 予想される。したがってPEG 比の腸管軸に沿っての推移 より吸収を見積もることができる。 小腸各部位のH2O/PEG 比は、野生型群では 2/3 以下 の部位で著明に低下し小腸近位部で水分の吸収が起こ っていることを示唆したのに対し、Claudin-15 欠損群では 小腸全体にわたって大きな変化がなく、小腸での水吸収 は少ないことが示唆された(図6)。 小腸各部位ごとのNa/PEG 比を比較したところ、野生型 群では2/3 以下の部位で著明に低下し小腸近位部で高い Na の 吸収が起こ っ て いるこ と を 示唆したの に 対し 、 Claudin-15 欠損群では小腸に沿って徐々に低下していた。 図から小腸全体で多かれ少なかれ Na 吸収が起こってい るが、特に前半部でのNa 吸収活性が野生型群に比べ弱 いことが示唆された(図7)。 また、小腸各部位ごとのK/PEG 比を比較したところ、野 生型群では 2/3 以下の部位で著明に低下し小腸近位部 で K の吸収が起こっていることを示唆したのに対し、 Claudin-15 欠損群では小腸近位部から中位部では変化 がなく、遠位部でわずかに低下しており、遠位部にK 吸収 活性があることが示唆された(図8)。 さらに、小腸各部位ごとのTotal glucose/PEG 比を比較 したところ、野生型群では2/3 以下の部位で著明に低下し 小腸近位部で炭水化物の(消化)吸収が起こっていること を示唆したのに対し、Claudin-15 欠損群では小腸に沿っ て徐々に低下し、比較的弱い炭水化物の(消化)吸収が 小腸全体で起こっていることを示唆した(図9)。 3.3 流 速 小腸内への PEG 流入速度{(食事量-胃内量)PEG mg/180 min}を小腸長さあたりの PEG 量(mg/cm)で割るこ とにより、内容物の流速(cm/min)を求めることができる。 流 速 を 比 較 し た と こ ろ 、 小 腸 近 位 部 で は 野 生 型 群 と Claudin-15 欠損群で大きな差がなかった。しかし、野生型 群では中位結腸と遠位結腸で流速は著明に低下したの に対して、Claudin-15 欠損群では小腸全体にわたりほとん ど一定であった(図10)。 0 10 20 30 0 2 4 6 8 10 12 14

(5)

6. 小腸内各部位の H2O/PEG 比 図7. 小腸内各部位の Na/PEG 比 8. 小腸内各部位の K/PEG 比 0 200 400 600 mg/mg

A.

Wild 0 200 400 600 800 1000

B.

KO 0 5 10 15 20 25 30 35 40 (μmol/mg)

A.

Wild 0 5 10 15 20 25 30 35 40

B.

KO 0 10 20 30 40 50 60 (μmol/mg)

A.

Wild 0 10 20 30 40 50 60

B.

KO

(6)

9. 小腸内各部位の Total glucose/PEG 比 10. 小腸内各部位での流速 4.まとめと考察 炭水化物の(消化)吸収は、野生型マウスでは大部分 が小腸近位部でおこっているのに対し、Claudin-15 欠損 群では、(消化)吸収の速度は低いものの、小腸全体にわ たっておこっていることが示唆された。そのため、個体全 体として炭水化物の(消化)吸収障害はきたしていないと 考えられる。Claudin-15 欠損群での炭水化物の(消化)吸 収速度の低下は管腔内 Na 濃度の低下によると考えられ る。また、Claudin-15 欠損群での水分吸収の低下も管腔 内Na 濃度の低下による可能性が考えられる。これらの説 明は今後より直接的に証明する必要があると思われる。 参考文献

1. Atushi Tamura, Yuki Kitano, Masaki Hata, Tatsuya Katsuno, Kazumasa Moriwaki, Hiroyuki Sasaki, Hisayoshi Hayashi, Yuichi Suzuki, Tetsuo Noda, Mikio Furuse, Shoichiro Tsukita, and Sachiko Tsukita: Megaintestine in Claudin-15-Deficient Mice, Gastroenterology , 134, 523-34 (2008)

2. Tamura A, Hayashi H, Imasato M, Yamazaki Y, Hagiwara A, Wada M, Noda T, Watanabe M, Suzuki Y, Tsukita S. Loss of claudin-15, but not claudin-2, causes Na+ deficiency and glucose malabsorption in mouse small intestine. Gastroenterology, 140(3):913-23 (2011)

0 20 40 60 80 0 20 40 60 80 0 1 2 3 4 5 6 cm/min

A.

Wild 0 1 2 3 4 5 6

B.

KO

(7)

No. 1030

Role of Tight Junction in Intestinal Na Homeostasis and Nutrient Absorption

Yuichi Suzuki 1, Sachiko Tsukita 2 and Atsushi Tamura 2

1 Laboratory of Physiology, School of Food and Nutritional Sciences, University of Shizuoka, Shizuoka 2

Laboratory of Biological Science, Graduate School of Frontier Biosciences and Graduate School of Medicine, Osaka University, Yamadaoka, Suita, Osaka

Summary

Paracellular pathway in the intestinal epithelia is permeable to Na+ and K+, and claudin-15, a protein present at tight junction, is probably mainly responsible for this property. This study investigated a physiological role of the paracellular cation-permeability in intestinal carbohydrate assimilation, by using claudin-15 deficient (KO) mice. It is known that KO mice exhibit phenotypic megaintestine. The wild-type (W) and KO mice were fed with the food containing 60% starch as a carbohydrate and 1.6% polyethylene-glycol 4000 (PEG) as a nonabsorbable marker. After 3 h of feeding, intestinal content was collected and analysed. Carbohydrate assimilation as a whole is not reduced in the KO mice. However, while carbohydrate assimilation was mostly completed in the proximal part of small intestine in the W mice, it occurred along the entire small intestine in the KO mice. In addition, when the rate of assimilation of starch in the proximal small intestine was estimated from the decrease of luminal starch/PEG ratio, it was lower in the KO mice than in the wild-type mice. The sodium concentration in the lumen of the small intestine was ~60 mM in the W mice, while it was reduced to less than 20 mM in the KO mice. In conclusion, while the efficiency of carbohydrate assimilation per intestinal area was reduced in the KO mice probably due to decreased luminal Na concentration, carbohydrate assimilation as a whole is maintained probably as a result of using distal small intestine as well as of increased intestinal size.

図 3.  小腸内各部位の K 濃度

参照

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