(1)IFRS-収益に関する考察
2013/7/1
Crossfields IFRS研究会
す
2013/7/1
Crossfields IFRS研究会
(2)Index
1. はじめに
2. 収益の全体像
2-1. 基準の体系
2-2. 認識のポイント
3. 物品販売
3-1. 収益の認識単位 ~なにを~
3-2. 収益の認識時点 ~いつ~
3-3. 収益の認識金額 ~いくらで~
4. 役務提供
4-1. 定義
4-2. 収益の認識時点 ~いつ~
4-3. 収益の認識金額 ~いくらで~
5. 工事契約
5-1. 定義
5-2. 収益の認識/認識時点 ~いつ、いくらで~
6. カスタマー・ロイヤルティ・プログラム
6-1. 定義
6-2. 収益の認識単位 ~なにを~
6-3. 収益の認識時点 ~いつ~
6-4. 収益の認識金額 ~いくらで~
7. 受取利息
7-1. 前提
7-2. そもそも金融資産とは
7-3. IFRSにおける考え方
7-4. 『条件』について
7-5. 償却原価法と実効金利法についての説明
7-6. 具体的な検討(一般事業会社の観点から)
(3)1. はじめに
本資料ではIFRSの「収益」に関して記載しております。
<おことわり>
一部、当方の解釈が入っている部分があるため、今後のIFRSの論議の結果、異なる解釈結果となる
部分も発生する可能性がありますので、ご了承ください。
本資料の内容の複製・転載、および転送を禁じます。
著作権は㈱ クロスフィールドに帰属します。
(4)2-1. 収益の全体像 ~基準の体系~
収益認識に関わるIFRSの基準は取引内容に応じて、下記のように構成されている。
本資料では「物品販売」、「役務提供」、「利息」、「カスタマー・ロイヤルティ・プログラム」 、「工事契
約」について詳述する。
収益
IAS18: 収益
物品販売、役務提供、利息、
カスタマー・ロイヤルティ・プログラム、など
IAS11: 工事契約 IAS20: 政府補助金
IFRS4: 保険契約 IAS17: リース IAS28: 持分法
IFRS9: 金融商品 IAS41: 農業、など
※言葉の説明
IAS: International Accounting Standards
(5)2-2. 収益の全体像 ~収益認識のポイント~
収益を考える上では、発生した取引について、
「なにを」
、
「いつ」
、
「いくらで」
収益認識するか、と
いうポイントを押さえる必要がある。
取引
なにを
(収益の認識単位)
いつ
(収益の認識時点)
いくらで
(収益の認識金額)
認識要素
①
認識要素
②
認識要素
③
取引成立
時点
取引の進行に
応じて
取引成立
時点
公正価値で 見積り金額で
実際に受け取った
金額で
(6)3-1.物品販売:収益の認識単位 ~なにを~ 1/2
IFRS
認識要素ごとに
個別の取引として収益を認識
日本基準
規定はないので、
個々の企業の判断に依る
● 一つの取引が複数の認識要素を含んでいる例
取引例 認識要素① 認識要素②
家電量販店の延長保証 家電商品の販売 保証サービス
機械設備の販売と保守契約 機械設備の販売 保守契約
割賦販売 販売した物品の対価 割賦利息
マイレージプログラム対象の
飛行機の搭乗
(カスタマー・ロイヤルティ・プログラム)
旅客運輸サービスの対価 マイル分(特典)の付与
取引の実態によっては、一つの取引が、複数の認識要素を含む場合がある。
(7)3-1.物品販売:収益の認識単位 ~なにを~ 2/2
逆に、複数の取引が一連の取引とみなされ、一つの認識要素として扱われる場合もある。
IFRS
1つの取引とみなして
収益を認識
日本基準
規定はないので、
個々の企業の判断に依る
・買戻し条件付きの販売契約
→具体的には製造業における材料の「有償支給」が該当する。
→契約上は、「販売契約」と「買戻し契約」という二つに分かれる。
◆別々の取引と見ると、当該「販売契約」は、一般的な売上と同じように処理される。
◆一連の取引と見ると、「買戻し条件付きの販売契約」は、
収益認識が認められない可能性がある。
例えば・・・
IFRSの見解はこちら
理由はP7にて
(8)3-2.物品販売:収益の認識時点 ~いつ~
物品販売においては、以下の要件をすべて満たした時点に収益を認識する。
(a)物品の所有に伴う重要なリスク及び経済価値を企業が買手に移転したこと
(b)販売された物品に対して、所有と通常結び付けられる程度の継続的な管理上の関与も有
効な支配も企業が保持していないこと
(c) 収益の額を、信頼性をもって測定できること
(d)その取引に関連する経済的便益が企業に流入する可能性が高いこと
(e)その取引に関連して発生した又は発生する原価を、信頼性をもって測定できること
・試用販売(一定期間に返品権を認めている場合)
→返品期限が過ぎるまではリスクが移転しない
・据付を要する物品の販売
→据付行為が契約上重要な場合、据付完了までは経済価値が移転しない。
・買戻し条件付きの販売契約
→リスクと経済価値が買い手に移転しない
特に重要なのは・・・
重要なリスクと経済価値が、売り手から買い手に移転
するタイミング
他には・・・
(→収益の認識時点が出荷日ベースから検収日ベースへの変更の動き)
(9)3-3.物品販売:収益の認識金額 ~いくらで~
1) 認識金額
・ 取引価格
(割賦販売の場合は、利息相当額を除いた金額)
2) 収益の純額表示
・ 取引の主体者ではなく、当該主体者の
代理人として取引を行う場合
、
収益を
純額で計上
することが求められる
IFRS
代理人として行う取引は、
収益を純額計上する
日本基準
特に規定はなく、
通常は総額で計上している
● 代理人として行う取引の例
取引例 総額計上の場合 純額計上の場合
商社(口銭取引) 取引総額 手数料部分のみ(=粗利益相当)
百貨店(消化仕入) 取引総額 手数料部分のみ(=粗利益相当)
たばこ、酒、ガソリンの販売 たばこ、酒、ガソリンの売上 各種税金を控除した後の金額
消費税の税込経理 税込処理 税抜処理(IFRSでは税込経理は認め
られない)
(10)参考: 収益の純額表示
「
たばこ税及びその他当社グループが代理人として関与した取引における取扱高については、収益より控除
し
ており、これらを除いた経済的便益の流入額を売上収益として連結損益計算書に表示しております」
Before
H23.3
(総額表示)
日本たばこ産業株式会社 有価証券報告書(2010年度、2011年度)より
日本たばこ産業は、H24年3月期よりIFRSの任意適用を開始し、売上収益の表示を純額(=たばこ税等を控除
した額)とした。
After
H24.3
(純額表示)
(11)● コラム 検収基準への対応
日本企業は出荷基準を採用しているケースが多い。IFRSは検収基準を原則としている。
IFRS適用時の準備の一環として、大規模なシステム改修が必要と議論されてきたが、
本当だろうか。
①: 本当に大規模なシステム改修が必要か。
→ 事業内容によっては、検収基準を適用するにしても、検収予定日を予測して、
ズレるであろう取引を
期末に調整すれば足りる場合
もあるのではないか?
(簡便的なやり方でも、収益が正しく計上できることを証明できれば、よいのではないか。)
②: 取引の契約を見直すことで検収時より前に収益が計上できるのではないか。
→
「重要なリスク」と「経済価値」が移転する時点を変更
できないか。
→ 輸出取引において、「到達基準」や「検収基準」で締結している契約を
「発送基準」や「船積基準」に変更できないか。
(12)4-1. 役務提供:定義
1) 「役務提供」とは?
契約上合意されたサービスを、合意された期間を通じて企業が履行することを指す。
2) 具体例
•コンサルティングサービス
•英会話教室
•不動産賃貸
IFRS
IAS18「収益」に定義されている
日本基準
具体的な規定は存在しない
(13)4-2. 役務提供:収益の認識時点 ~いつ~
役務提供による収益は、
取引の成果を信頼性をもって見積ることができるかどうか
によって、
収益認識時点が変わる。
進行基準
毎期、進捗に応じて
収益を認識
取引の成果を信頼性をもって見積ることができる?
→以下の4要件が判断のポイントになる
①収益の額を信頼性をもって測定できる
②経済的便益が企業に流入する可能性が高い
③取引の進捗度を期末日において信頼性をもって測定できる
④発生原価を信頼性をもって測定できる
原価回収基準
毎期、発生した原価分だけ
収益を認識
完成基準
役務提供が完了した時点で
はじめて収益認識
要件を全ては満たさないが、
発生した原価分は回収できそう
要件を全て満たす 要件を満たさず、
発生原価回収の可能性も低い
IFRS
取引の成果の信頼性の有無により
認識基準が規定されている
日本基準
役務提供取引について
認識基準を明確に定める規定は無い
(14)4-3. 役務提供:収益の認識金額 ~いくらで~
2013年度 2014年度 2015年度
▲ プロジェクト開始 ▲ プロジェクト完了
2013年度 2014年度 2015年度
進行基準 売上 400(※1)
売上原価 200
※1:2,000×進捗率20%(※2)
※2:進捗率 200/1,000=20%
売上 1,000(※1)
売上原価 500
※1:2,000×進捗率70%(※2)-400(既計上額)
※2:進捗率 (200+500)/1,000=70%
売上 600(※1)
売上原価 300
※1:2,000-(400+1,000)(既計上額)
原価回収基準 売上 200
売上原価 200
売上 500
売上原価 500
売上 1,300(※1)
売上原価 300
※1:2,000-(200+500)(既計上額)
完成基準 売上 なし
売上原価 なし
売上 なし
売上原価 なし
売上 2,000
売上原価 1,000
実際発生原価 200 実際発生原価 500 実際発生原価 300
(例) 2013年度期首に、クライアントのプロジェクト開始に伴い、当社はコンサルティングサービスを提供開始した。
当該プロジェクトは、2015年度末に完了する予定である。
2013年度、2014年度、2015年度の実際発生原価が以下の通りだった場合、それぞれの年度における収
益計上額はいくらになるか(進行基準、原価回収基準、完成基準それぞれのケースを検討)。
当初見積り
収益総額 2,000
原価総額 1,000
実際に対価として
2,000を受領
⇒当初見積り額と、進
捗率に応じて計上
⇒発生した原価の範
囲で計上
⇒実際に受領した対
価に応じて計上
(解答)
(15)5-1. 工事契約:定義
役務提供
(IAS18)
Z
工事契約
(IAS11)
工事契約も広義では「役務提供」に含まれると思われるが、IFRSでは別途IAS11号にて処理が
定められている。
IAS11号「工事契約」にて別途規定あり。
工事契約の定義は、以下の通り。
「単一の資産(建物、道路、船舶など)または相互に密接に関
連/依存しあう複数の資産(複合施設、プラントなど)の建設
のために個別に取り決められる契約」
⇒端的に言うと、「資産を作り上げるための契約」と思われる。
役務提供については、IAS18号
「収益」にて規定あり。
(16)5-2. 工事契約:収益の認識時点/認識金額 ~いつ、いくらで~
「工事契約」はIAS11で規定されている。
なお、収益の認識時点と認識金額は、IAS18で規定されている「役務提供」とほとんど同じである。
IFRS
「工事契約」はIAS11で規定されている。
なお、IAS18の「役務提供」とほぼ内容は同じ。
日本基準
IFRSとほぼ同様の規定あり。
ただし、「原価回収基準」は認められておらず、
「完成基準」か「進行基準」が認められている。
(17)6-1.カスタマー・ロイヤルティ・プログラム:定義
1) 「カスタマー・ロイヤルティ・プログラム」とは?
顧客の物品やサービスの販売のためのインセンティブとして特典を用いる場合の「特典」を指す。
※商品やサービスの販売と関係なく街頭で配られる割引クーポンなどは販売取引の一部を構成しないため、該当しない。
2) 具体例
• 航空会社のマイレージ
• 家電量販店のポイント
• 携帯電話会社が利用料金に応じて顧客に付与するポイント
⇒ 顧客囲い込み、販売促進戦略と一環として実施。
⇒ サービスの内容は多岐に及んでいる。
自社の商品・サービスの提供
他社と共同でポイント制度を運営して商品・サービスの提供を行う
他社ポイント・電子マネーとの交換ができる
(18)参考: 各社の会計処理と開示
業態 企業名 科目名称 金額
(単位:億円) 会計方針 P/L上の取扱
航空
日本航空 記載なし
全日本空輸 記載なし
家電
小売
ヤマダ電気 ポイント
引当金
215
(2012年3月期)
※売上:18,355
当社及び当社と同様の事業を営む連結子会社は、将
来の「ヤマダポイントカード」の使用による費用発生に
備えるため、使用実績率に基づき翌連結会計年度以
降に利用されると見込まれるポイントに対し見積額を
計上しております。
ポイント
販促費
ビックカメラ ポイント
引当金
134
(2012年8月期)
※売上:5,181
将来のポイント(株主優待券を含む)使用による費用発
生に備えるため、当連結会計年度末未使用ポイント残
高に過去の使用実績割合等を乗じた金額を計上して
おります。
ポイント
販促費
その
他 楽天
ポイント
引当金
259
(2012年12月期)
※売上:4,435
ポイントの使用による費用発生に備えるため当連結会
計年度において将来使用されると見込まれる額を計上
しております。
ポイント費用
有価証券報告書より各社のカスタマー・ロイヤルティ・プログラムの状況を一覧とすると下記の通り。
※ Tポイントを運営している「カルチュア・コンビニエンス・クラブ」は、2011年7月を以って上場廃止。
(19)6-2.カスタマー・ロイヤルティ・プログラム:収益の認識単位 ~なにを~
IFRSではIFRIC13に規定されている一方、日本基準では具体的な規定は存在しない。
IFRSでは特典の付与を「複数要素から構成される取引」の一つとして会計処理を行う。
具体的には下記を区分して
別々に会計処理
を行う。
・物品/サービスの販売
・特典の付与
日本では特典の付与を収益として認識せず、
費用の引当
として取り扱うのが一般的である。
IFRS
IFRIC13に規定されている
「物品/サービスの販売」と
「特典の付与」を別々に区分して会計
処理を実施
日本基準
具体的な規定は存在しない
「特典の付与」について
収益として認識せず、
費用の引当として取り扱う一般的
※言葉の説明
(20)6-3.カスタマー・ロイヤルティ・プログラム:収益の認識時点 ~いつ~
IFRSでは顧客に特典を提供するという
義務を履行した時に収益認識
を実施する。
▲ 物品/サービスの販売提供
=特典の獲得
▲ 特典を利用
販売時に特典部分については
将来の収益:「繰延収益」として
負債に計上
特典利用時に
「繰延収益」から
収益に振り替える
(21)6-4.カスタマー・ロイヤルティ・プログラム:収益の認識金額 ~いくらで~
IFRSでは公正価値により、特典と他の販売の構成要素と配分を行う。
端的に言うと
売価ベース
ということ
公正価値
測定日における市場参加者間の秩序ある取引において、
資産の売却によって受け取るであろう価格または
負債の移転のために支払うであろう価格
<IFRS上の特典の公正価値について>
特典が独立して売却されたとした場合の金額
または
(公正価値を直接観測できない場合)
引き換えられる商品の公正価値を参考に見積もる。(ただし、予想交換率を考慮すること)
(22)参考: IFRSにおける論点
IFRSにおいても、カスタマー・ロイヤルティー・プログラムについて、2つの考え方の検討がなされた。
検討の結果、「収益の繰延」として認識することになった。
収益の繰延
販売時に得られた対価を
特典に配分し、
配分された収益を繰り延べる
⇒売価ベースの考え
将来発生する費用の引当
収益の計上額は変更せず、
代わりに商品の提供に
必要と見込まれる費用を計上する
⇒原価ベースの考え。日本では一般的。
採用の理由は下記の通り。
販売取引の結果として顧客に付与された特典は、取引そのものの要素である。
また、顧客が非明示的に支払を行う、顧客に与えられた権利を表している。
特典は売上取引の一環として顧客に付与されるため、マーケティング費用とは区別できる。
マーケティング費用は、販売を獲得するための費用で、販売取引とは独立している。
特典と引き換えられる賞品は、販売取引における物品やサービスと同時に提供されるわけではない。
取引の実態を反映させるために、販売取引における他の構成要素と別々に認識する必要がある。
(23)● コラム 楽天の会計方針変更について
2012年12月期に楽天がポイント引当金の認識時点の変更を行った。
楽天は2013年12月期よりIFRSを適用することをプレスリリースしている。
取引発生時点にポイント付与を認識する方法はIFRS適用を見越したもののように思えてならない。
(24)7-1.受取利息 ~前提~
IFRSにおいて、受取利息の計上方法は、受取利息の発生元となる金融資産の測定をどのようにするかによっ
て異なってくる。
金融資産
受取利息
受取利息には発生元となる金融資産が存在する。
金融資産の測定方法を確認する必要がある。
(25)7-2.受取利息 ~そもそも金融資産とは~
金融資産は次のようなものである。
・現金預金
・受取手形
・売掛金及び貸付金
・株式
・有価証券
・先物取引、など
IFRS、日本基準で金融資産の定義に大きな差異は無い。
IFRS*1
現金預金、受取手形
売掛金及び貸付金
株式、有価証券
先物取引
スワップ取引
自社の株式を発行して
決済する契約
など
日本基準*2
現金預金、受取手形
売掛金及び貸付金
株式、有価証券
先物取引
スワップ取引
など
≒
金融資産
とは
*1
IAS32号に定義 *2
<金融商品会計基準4項>
現金預金、受取手形、売掛金及び貸付金等の金銭債権、株式その他の出資証
券及び公社債等の有価証券並びに先物取引、先渡取引、オプション取引、スワッ
プ取引及びこれらに類似する取引(以下「デリバティブ取引」という。)により生じる
正味の債権等
<金融商品会計に関する実務指針4項>
現金、他の企業から現金若しくはその他の金融資産を受け取る契約上の権利、
潜在的に有利な条件で他の企業とこれらの金融資産若しくは金融負債を交換す
る契約上の権利、又は他の企業の株式その他の出資証券
(26)7-3.受取利息 ~IFRSにおける考え方~
IFRS上、受取利息の測定は金融資産のパターン毎に異なる。
金融資産の測定方法
償却原価法*2
公正価値法
利息相当額を
受取利息として認識
実効金利法*2
を適用
①企業のビジネスモデルが契約上の
キャッシュ・フローを回収するために
資産を保有することを目的としてい
ること。
※ビジネスモデルの単位は企業単位
が原則だが、金融商品レベルでも
良い
②契約によって、ある特定日に、元本
及び元本残高に対する利息の支払
のみからなるキャッシュ・フローが生
じること
『条件』*1
に合致
金融資産
はい
いいえ
受取利息の認識
受取利息の測定
*1
『条件』
⇒解釈例をP26に記載
条件に当てはまらなければすべて公正価値法
IFRSでは公正価値を
「取引の知識がある自発的な当事者の間で、独立第
三者間取引条件により、資産が交換される価額」と
定義IAS第39号)
※活発な取引の市場がない場合には、割引キャッ
シュフローなどを使って価値を算出
⇒公正価値法で測定される資産でも受取利息は測定される
*2
「償却原価法」と「実行金利法」の説明はP27, 28に記載
(27)7-4.受取利息 ~『条件』について~
①企業のビジネスモデルが契約上のキャッシュ・フローを回収するために資産を保有することを目的として
いること。※ビジネスモデルの単位は企業単位が原則だが、金融商品レベルでも良い
②契約によって、ある特定日に、元本及び元本残高に対する利息の支払のみからなるキャッシュ・フローが
生じること
公正価値変動による損益を獲得する
ことを目的としているのであれば、公
正価値評価となる。これは従来の日
本の会計基準と同じだが、価値変動
による利益獲得目的でなくても、上記
条件に合致しないものはすべて公正
価値で評価するという点が日本基準
とは異なる。
償却原価法が適用される金融資産は下記の条件を満たすものである。
端的に言うと、
予め契約で取り決
められた元本と利
息を回収することを
本来の目的として
保有する金融資産
それ以外
(価値変動に基づく
売却益獲得を目的と
する金融資産含む)
金融資産
『条件』を
満たす資産
(28)7-5.受取利息 償却原価法と実効金利法についての説明 1/2
100万
110万
5年後に利息10万と
ともに回収
貸付時に長期貸付金
100万を計上
5年後に110万になるように長期貸付金を、5年に亘り、
少しずつ増やしていく
100万円を長期貸付し、5年後に利息10万円と合わせて、110万円回収する契約の場合(イメージ)
1年後
2年後
3年後
4年後
5年後
貸付時
償却原価法とは、将来時のキャッシュフロー回収額と同額になるように
金融資産の残高を徐々
に増やしていく
方法である。そして、その増やす金額を
受取利息として認識
していく方法である。
(29)7-5.受取利息 償却原価法と実効金利法についての説明 2/2
100万
110万
1年目に発生した利息を元本に組み入れ、その元本に対して2年目の利息が発生し、
さらにそれ元本に組み入れ、その元本に対して3年目の利息が発生し・・・・、と考える。
当然、毎年の利息の発生額は徐々に大きくなる。具体的な数値についてはP30に記載。
1年後
2年後
3年後
4年後
5年後
貸付時
実効金利法とは、償却原価法を適用する際の
利息計算方法(残高の増やし方)の一つ
である。
複利の考え方を適用するのが実効金利法
であり、それに対し、単純に期間按分する方法は定
額法などと呼ばれている。
実効金利法
定額法
5年間で利息が10万円なので、毎年2万円ずつ受取利息を計上する。
ここの計算方法
(30)7-6.受取利息 ~具体的な検討(一般事業会社の観点から)~ 1/5
長期貸付金
一般事業会社でも、グループ会社等に長期で資金を融通する場合がある。
この場合、長期貸付金で発生する受取利息の計上方法はどのようになるか?
まずは前述の条件に合致するか否かを考える、、、、
①通常、
貸付期間と元本利息の回収額は契約上で取り決め
されている。
※仮に資金不足に陥ったグループ会社への財政支援やグループ内余剰資金の圧縮等などを目的に貸付を行う事があるが、
その場合も少なくとも価値変動損益目的でないことは明らかである。
②通常、契約によって、ある特定日に、
元本及び元本残高に対する利息の支払のみからなるキャッシュ・フ
ローが生じる
以上から、当該長期貸付金は
償却原価法で認識する金融資産
となると考えられる。
※なお、短期貸付金の場合も同じであると思われる。
IFRS
実効金利法によって算出される
受取利息を計上
日本基準
契約上の受取利息金額を
貸付期間に対応させて計上
≠
日本基準の補足:
厳密には現行の日本基準においても、債権≒取得価額の場合には、IFRSと同じように実効金利法によって受取利息を計上しなければならない。
貸付金を債権額と異なる金額で買い取った場合などはこれに該当する。(金融商品会計基準Ⅳ-1)
(31)7-6.受取利息 ~具体的な検討(一般事業会社の観点から)~ 2/5
長期貸付金
具体例
契約条件
・貸付金額 100万円
・貸付期間 5年
・利率 年利2%
・元利一括返済
元本利息金額等
・5年間の受取利息 100万円*2%*5年=10万円
・満期時の返済額 元本100万円+利息10万円=110万円
・実行金利の決定: 110万円= 100万円×(100%+1.924%)5
IFRS 日本基準
受取利息
1年目 19,245
2年目 19,615
3年目 19,993
4年目 20,377
5年目 20,770
受取利息
1年目 20,000
2年目 20,000
3年目 20,000
4年目 20,000
5年目 20,000
実効金利 1.924%
複利計算
約定金利 2.000%
単利計算
約定金利 実効金利
0.02 0.01924
CF PV 元本 利息
0 1,000,000 1,000,000 0
1 1,019,245 19,245
2 1,038,860 19,615
3 1,058,853 19,993
4 1,079,230 20,377
5 1,100,000 1,000,000 1,100,000 20,770
100,000
≠
IFRSと日本基準で受取利息の認識額が異なる。
(32)7-6.受取利息 ~具体的な検討(一般事業会社の観点から)~ 3/5
定期預金
一般事業会社でも、一時の余剰資金の運用先として定期預金を利用するのは一般的である。
この場合、定期預金で発生する受取利息の計上方法はどのようになるか?
まずは前述の条件に合致するか否かを考えると、、、、
①定期預金は通常、
期間と利率が定められており、契約上のキャッシュ・フローを回収するために資産を保
有
することを目的としている、と考えられる。
②また、契約上、
元本の回収日と利息の受け取り日が定められており
、特定の日に元本及び元本残高に
対する利息の支払のみからなるキャッシュ・フローが生じること、という条件にも合致する。
従って、
定期預金は償却原価法
によって資産を測定し、そこで計算される利息を受取利息として計上する
ことになる。
IFRS
実効金利法によって算出される
受取利息を計上
日本基準
契約上の受取利息金額を
貸付期間に対応させて計上
前述の長期貸付と実質的に同じイメージである。
また、変動金利の場合には金利の見直し時に併せて残余期間は新金利で実効金利を算定し直す必要がある。
≠
(33)7-6.受取利息 ~具体的な検討(一般事業会社の観点から)~ 4/5
定期預金と同様に、一般事業会社でも、余資の長期運用先として比較的リスクの低い債券を購入し、満期
まで保有する事も日常的に行われている。
この場合、これらの債券で発生する受取利息の計上方法はどのようになるか?
代表的な債券として、利付債券、割引債券がある。
利付債券は預金と同じように利息が付く債券であり、イメージ的には
定期預金と同じ
ような金融商品である。
割引債券は表面的には利息が付かないが、債券購入時に利息相当分だけ安く購入でき、償還時には元本
全額が回収できるという商品であるため、
実質的には利付債券と同じ
である。
いずれにしても、条件に合致するため、
債券は償却原価法によって測定
し、そこで計算される利息を受取利
息として計上することになる。
IFRS
実効金利法によって算出される
受取利息を計上
日本基準
利息収入額を計上
利付債
割引債
原則:実効金利法
簡便法:単純期間按分
実効金利法によって算出される
受取利息を計上
≠
=
≠
日本基準の補足:
債券の計上額と償還時の債権額と異なる金額で計上する場合にはその差額を償却原価法で処理せよ、となっている。
従って利付債であっても発行時の取得でない限りは差額が出るため、償却原価法が適用されることになる。
債券(有価証券)
(34)7-6.受取利息 ~具体的な検討(一般事業会社の観点から)~ 5/5
普通預金
一般事業会社でも普通預金口座は決済口座として日常的に利用されている。
この場合、普通預金で発生する受取利息の計上方法はどのようになるか?
まずは前述の条件に合致するか否かを考えると、、、、
少なくとも予め
契約で回収額が決められているようなものではない。
必要な時に引き出しが可能であり、
実態もそのような運用をするのが通常であるため、条件には合致しないと考えられる。
従って、普通預金は公正価値で評価することになる。
これは、当座預金も同じであり、基本的に決済用に使っている預金であれば、すべて公正価値評価という
ことになると思われる。
普通預金の公正価値とは?
通常、預金についての取引市場は存在しないため、取引価格というものがないが、必要な時に預け
入れ金額と同額を引き出すことが可能であることから、その価値は預金額と同額と考えられる。
従って利息についても日本の従来の会計処理と同じく、
実際の受取利息収入を計上すれば良い
と
思われる。
IFRS
実際の受取利息収入を計上
日本基準
実際の受取利息収入を計上
結果的に
=
(35)参考: 新しい収益認識基準
Step1
契約の識別
Step2
別個の履行義務の識別
Step3
取引価格の算定
Step4
取引価格の履行義務への配分
Step5
履行義務の充足によるにおける収益の認識
履行義務アプローチ
=企業が顧客に対して製品やサービス等の提供といった義務を果たした時点をもって売上を計上する、という考え方
【「履行義務アプローチ」における収益認識のステップ】
契約の中に含まれている、企業が果たさなければならない義務は何か?
収益認識の対象となる契約はどれか?
顧客から受け取る対価はいくらか?
Step3のうち、履行義務ごとの価格はそれぞれいくらか?
様々な種類の業態や取引に対し、共通して適用可能な収益認識基準として、「履行義務アプローチ」という
考え方がIFRS公開草案にて提示されている。