健常者における異なる筋収縮強度での
随意運動時の F 波
—F 波波形の種類での検討—
小松 菜生子
1)武 凪沙
1)高森 絵斗
1)大沼 俊博
1, 2)渡邊 裕文
1)鈴木 俊明
2)F-waves of healthy subjects elicited by voluntary movements of different muscle
contraction strengths: consideration of the type of F-wave waveforms
Naoko KOMATSU, RPT
1), Nagisa TAKE, RPT
1), Kaito TAKAMORI, RPT
1),
Toshihiro OHNUMA, RPT
1, 2), Hirofumi WATANABE, RPT
1), Toshiaki SUZUKI, RPT, DMSc
2)Abstract
The F-wave is characterized by different waveforms after each stimulation. We observed that the numbers and types of F-wave waveform during resting by healthy subjects were the same in number. From this result, we presumed that various F-wave waveforms indicate therapeutic effects in the progress of physical therapy. In addition, we considered that analysis of the type of F-wave waveform would provide an index for assessing the improvement of neurological function. In this study, we analyzed the type of F-wave waveforms elicited in healthy subjects by isometric contraction of pinch movements of the thumb and index finger. F-wave waveforms of the subjects were recorded during rest, pinching of a pressure sensor by the thumb and index finger, and pinching at 25% and 50% maximum voluntary contraction. In addition, we recorded the F-wave occurrence and calculated the F/M amplitude ratios of the recorded F-wave waveforms, and carried out F-wave waveform analysis. The F-wave occurrence and the F/M amplitude ratio increased with the isometric contraction intensity in comparison with the rest phase. Further, the F-wave waveforms were different in each trial. Consequently, this result suggests the excitability of the spinal motor neurons and the type of F-wave waveform generated by the anterior horn cell increase in tandem with the isometric contraction intensity.
Key words: F-wave, waveform analysis, isometric contraction
J. Kansai Phys. Ther. 16: 69–77, 2016
1) 六地蔵総合病院 リハビリテーション科 2) 関西医療大学大学院 保健医療学研究科
受付日 平成28 年 9 月 1 日 受理日 平成 28 年 10 月 9 日
Department of Rehabilitation, Rokujizo General Hospital
Graduate School of Health Sciences, Graduate School of Kansai University of Health Sciences
関西理学療法学会 平成 28 年度研究助成論文
はじめに 運動神経に最大上の電気刺激を与えるとすべての運動 神経が発火し、そのインパルスは順行性伝導と同時に逆 行性にも軸索を伝導する。そして通常不応期であるにも 関わらず一部の脊髄前角細胞では、この逆行性インパル スに対し軸索小丘で再発火することで順行性活動電位を 生じ、筋まで伝導することで筋活動電位として記録され る。これをF波という。F波の波形は、刺激ごとに異なる ことが特徴である1)。しかし、脳血管障害片麻痺患者の麻痺側母指球上の筋から導出したF 波には H 波が混在し ておらず、全波形がF 波であると判定された症例の F 波 波形であってもH波のように同一波形を認めることがあ る。そこで、鈴木ら2, 3)は脳血管障害片麻痺患者一症例の 運動療法経過において麻痺側母指の運動機能の改善に伴 う麻痺側母指球上の筋から導出した正中神経刺激による F波波形の変化について検討している。まず罹病期間9カ 月では、脳血管障害片麻痺患者一症例におけるF 波波形 は同一波形を頻回に認めていた。運動療法を実施したこ とで、罹病期間70カ月では振幅F/M比は罹病期間9カ月、 52カ月と比較して低下し、またF波波形の種類は増え多 様化した。それに伴い罹病期間9 カ月では麻痺側母指球 筋の筋緊張は高度亢進し、母指の随意運動を認めない状 態であったが、70カ月では母指球筋の筋緊張は軽度亢進 に改善し、母指の伸展運動が充分に可能となったと報告 している。 以上の鈴木らの先行研究より、運動療法経過におい て運動機能の改善とともにF 波波形の種類は多様化して いくと確認できたことから、随意運動が可能である健常 者の安静時F 波を構成する波形は、さまざまな種類の波 形で構成されることが予測された。健常者の安静時F 波 を構成する波形の種類が多様であることが確認できれ ば、運動療法の経過により母指の随意運動や手指の巧緻 動作が可能になるといった運動機能に変化を認めた際に、 同時にF 波波形が多様化することが、脊髄神経機能の改 善を知るうえでの指標となると考えた。そこで著者らは、 まず健常者における安静時F 波を構成する波形の種類の 多様性を明確にすることを目的に、健常者の非利き手側 母指球上の筋から導出した安静時F 波の波形を分析した。 その結果、健常者における安静時F 波を構成する波形の 種類は出現頻度に関係なく多様であり、記録できたF 波 波形の数とほぼ同数であった。健常者における安静時F 波を構成する波形の種類が多様であった要因としては、 第一にF 波導出の電気刺激により再発火する脊髄前角細 胞の種類が多様であることを考えた。そして第二にすべ ての脊髄前角細胞が電気刺激により一度に反応するので はなく、刺激に応じてさまざまな脊髄前角細胞が興奮す ることを考えた。鈴木ら2, 3)の先行研究および著者らの先 行研究では運動療法の経過において運動機能の改善とと もにF 波波形が健常者に近づき多様化していくことを確 認することは、治療効果の指標となることが示唆された。 また、母指の随意収縮時のF波波形は安静時と比較し て出現頻度および振幅F/M 比も増大するといわれてい る4)。さらに鈴木ら5)は、母指対立筋の等尺性収縮度を変 化させた場合の脊髄運動ニューロン機能の変化を、F 波 出現頻度、振幅F/M比および位相数の各項目につき安静 時と比較して検討している。結果として、母指対立筋の 等尺性収縮度を変化させた場合は、位相数では変化がな いものの、F 波出現頻度および振幅 F/M 比では収縮度が 増加するにつれて増大を認めたと報告している。F 波出 現頻度はF 波波形に参加する神経筋単位数に影響し、振 幅F/M比は各神経筋単位の興奮性の増加を意味するとい われている4, 6, 8)。これより、鈴木ら5)は等尺性収縮度の増 加は脊髄前角細胞での閾値の低下と発火頻度の上昇が得 られ、その結果として振幅比および出現頻度の上昇を認 めたと推察している。また、著者らは先行研究の結果を 踏まえ、母指対立筋の等尺性収縮度の増加により振幅比 が増大する要因としては、刺激に対してさまざまな脊髄 前角細胞が同時に興奮することで生じると考えた。した がって、等尺性収縮度の増加によりさまざまな脊髄前角 細胞が同時に興奮していくことが予測され、母指と示指 の対立運動による等尺性収縮時に記録されるF 波波形の 種類は、等尺性収縮度の増大とともにさまざまな脊髄前 角細胞が同時に発火することで同一波形を多く認めるよ うになるのではないかと考えた。また、反対に運動療法 により母指と示指の対立運動が可能となり巧緻動作を獲 得するためには、収縮強度を調整する必要があることを 踏まえると、すべての脊髄前角細胞が一度に興奮するの ではなく、さまざまな脊髄前角細胞が興奮できることが 必要であると考える。そして、この脊髄神経機能の興奮 性の改善を評価するうえで随意収縮時のF 波波形の種類 を検討することが指標となると考えた。そこで今回、健 常者における随意収縮時のF 波波形の種類にどのような 傾向があるのかを明確にすることを目的とし、母指と示 指の対立運動による等尺性収縮時のF 波波形の種類につ いて検討した。 対象と方法 1.対象 対象は、整形外科学的、神経学的に問題のない健常成 人20名(男性12名、女性8名)、平均年齢は25.4 ± 3.7歳 とした。いずれの被験者も利き手側は右側であった。ま た、本実験ではヘルシンキ宣言の助言 ・ 基本原則および 追加原則を鑑み、予め説明した本実験の概要と侵襲、公 表の有無と形式、個人情報の取り扱いについて同意を得 た被験者を対象に実施した。 2.方法 まずシールドルームのベッド上にて被験者を開眼状 態で安静背臥位とし、非利き手側正中神経刺激によるF 波を非利き手側母指球上の筋から導出し、脊髄神経機能 の興奮性の指標とした。つぎに、ピンチメーターDigital Indikator TA-802(SOHGOHKEISO社製)の圧力センサー を非利き手側の母指と示指の対立運動により把持したと き(以下、センサー把持時)のF波波形を記録した。そし
て圧力センサーを母指と示指の対立運動によって10 秒 間持続して把持できる最大のピンチ力を測定し、その対 立運動の最大随意収縮の25%強度による等尺性収縮時 (以下、25%収縮時)、50%強度による等尺性収縮時(以下、 50%収縮時)におけるF波波形を記録した(図1)。 健常者における母指と示指の対立運動による等尺性収 縮時のF 波は筋電計ニューロパック(日本光電社製)を 用いて計測した。計測方法は、非利き手側正中神経刺激 によるF 波を非利き手側母指球上の筋より導出した。F 波刺激条件として、刺激強度は最大上刺激(M 波最大振 幅を得る120%強度)、刺激頻度は0.5 Hz、刺激持続時間 は0.2 ms、刺激回数は30回とした。F波記録条件は、探 査電極を非利き手側母指球上の筋に、基準電極を非利き 手側第1指基節骨上に貼付した。また、接地電極は、非利 き手側前腕掌側中央部に配置した。そしてそれぞれの施 行により得られた波形から、F 波出現頻度および振幅 F/ M 比、F 波を構成する波形の種類を求めた。この F 波を 構成する波形の種類の算出方法としては、鈴木ら3)の先 行研究に基づき、まずMicrosoft Excelを用いてF波導出 の電気刺激30回のうち記録できたF波に移動平均をかけ た。その後Microsoft ExcelのCORREL関数を用いて記録 できたF 波波形の組み合わせの相関係数を算出した。そ して極めて強い相関があるとされる相関係数0.995 以上 の組み合わせとなった波形を同一波形としてF 波を構成 する波形の種類を計算した。この相関係数の表(図2)の 見方を以下に記す。まず、縦と横にそれぞれ並ぶ項目は 30個あり、これが記録された30波形を示す。そしてそれ ぞれ相関係数0.995 以上の組み合わせと判定されると塗 りつぶしにて示されるようになっており、これらが同一 波形であるとみなされる。図2では15番目の波形と19番 図 1 健常者における各施行で得られたF波波形の一例 上から安静時、センサー把持時、25%収縮時、50%収縮時を示す。 等尺性収縮強度の増加に伴いF波振幅の増大を認め、F波波形の 形は安静時と比較して類似してくることが目視にて確認できる。 図 2 健常成人1例における安静時F波の相関係数 Microsoft ExcelのCORREL関数を用いて記録できたF波波形の組み合わせの相関係数を算出した表である。この相関係数の表の見 方としては、縦と横にそれぞれ並ぶ項目は30個あり、これが記録された30波形を示す。そしてそれぞれ相関係数0.995以上の組み 合わせと判定されると塗りつぶしにて示されるようになっており、同一波形であるとみなされる。この場合、縦列の15番目の波形 と横列の19番目の波形の相関係数が1.00となっており、塗りつぶし部分として示されているため、同一波形であると判定される。
目の波形の相関係数が1.00となっており、塗りつぶし部 分として示されており、同一波形であると判定されてい る。この表をもとに波形の種類の分析は、得られたF 波 波形と算出した相関係数を照らし合わせ、目視にて同一 波形を確認しながら実施した。 F波出現頻度および振幅F/M比に対する統計学的検討 は、安静時、センサー把持時、25%収縮時、50%収縮時 の4施行間でおこなった。検討は以下の手順で実施した。 まず測定値の正規性を検討するために正規性の検定をお こなった。その結果、正規性が棄却されたため、本研究 ではノンパラメトリック検定を用いることとし、Steel-Dwass 法にて多重比較検定をおこなった。統計処理ソフ トはStatcel 3を用い、いずれも有意水準は5%とした。 結 果 F波出現頻度(図3)は、安静時が35.1 ± 19.7%、センサー 把持時が77.9 ± 17.2%、25%収縮時が95.7 ± 5.6%、50% 収縮時が94.8 ± 6.3%であった。また安静時と比較して センサー把持時、25%収縮時、50%収縮時において、F 波出現頻度は有意な増加を認めた(p<0.05)。さらにセン サー把持時と比較して25%収縮時、50%収縮時において も、F波出現頻度は有意な増加を認めた(p<0.05)。 振幅F/M比(図4)は、安静時が2.03 ± 0.96%、センサー 把持時が5.39 ± 3.51%、25%収縮時が13.38 ± 15.54%、 50%収縮時が17.12 ± 16.99%であった。また安静時と比 較してセンサー把持時、25%収縮時、50%収縮時におい て、振幅F/M比は有意な増加を認めた(p<0.05)。さらに センサー把持時と比較して50%収縮時においても、振幅 F/M比は有意な増加を認めた(p<0.05)。 F 波を構成する波形の種類については、安静時、セン サー把持時、25%収縮時、50%収縮時の 4 施行において、 F 波波形の形は安静時と比較して収縮強度が増大するに つれて類似してくることが目視にて確認できたが、いず れもすべて異なる種類であった。健常成人1 例における 安静時(図5)、センサー把持時(図6)、25%収縮時(図7)、 50%収縮時(図 8)の 4 施行における F 波波形と相関係数 を代表例として示すと、いずれも F 波を構成する波形の 種類はすべて異なっていることがわかる。 考 察 健常者における母指と示指の対立運動による等尺性 収縮時のF 波は、安静時と比較して出現頻度および振幅 F/M 比は増大した。F 波出現頻度は F 波波形に参加する 神経筋単位数に影響し、振幅F/M比は各神経筋単位の興 奮性の増加を意味するといわれている4, 6, 8)。このことを 踏まえ、鈴木ら5)は、等尺性収縮度の増加は脊髄前角細 胞での閾値の低下と発火頻度の上昇が得られ、その結果 としてF 波振幅比の上昇および出現頻度の上昇を認め 図 3 母指と示指の対立運動による等尺性収縮時のF波出現 頻度の変化 F波出現頻度は、安静時が35.1 ± 19.7%、センサー把持時が77.9 ± 17.2%、25%収縮時が95.7 ± 5.6%、50%収縮時が94.8 ± 6.3% であった。また安静時と比較してセンサー把持時、25%収縮 時、50%収縮時において、F 波出現頻度は有意な増加を認め た(p<0.05)。さらにセンサー把持時と比較して 25%収縮時、 50%収縮時においても、F 波出現頻度は有意な増加を認めた (p<0.05)。 図 4 母指と示指の対立運動による等尺性収縮時の振幅F/M 比の変化 振幅F/M比は、安静時が2.03 ± 0.96%、センサー把持時が5.39 ± 3.51%、25%収縮時が13.38 ± 15.54%、50%収縮時が17.12 ± 16.99%であった。また安静時と比較してセンサー把持時、25% 収縮時、50%収縮時において、振幅F/M比は有意な増加を認め た(p<0.05)。さらにセンサー把持時と比較して50%収縮時にお いても、振幅F/M比は有意な増加を認めた(p<0.05)。
たと推察できると述べている。また、脊髄前角細胞の興 奮性の増加の生理学的要因としては大きく2 つ考えられ ると報告している。第一には筋紡錘からの求心性インパ ルスの増加、Renshaw 細胞の反回抑制機能の低下によ る脊髄レベルでの相対的な興奮性の上昇である。前者の 随意収縮中の筋紡錘からの求心性インパルス、いわゆる Iaインパルスについては、Hagbarthら9)による人間の末 梢神経を用いての報告がある。それによると、随意収縮 時には収縮程度に比例してIa インパルスの活動が増加 している。これは随意収縮中にγ 運動神経の作用で伸張 反射活動を生じさせた結果、Ia インパルスの活動が増 加し、脊髄前角細胞の興奮性を高めていると考えられる。 後者のRenshaw 細胞の反回抑制機能の低下については、 Hultbornら10)や永田ら11)によれば、H波出現後の導出筋 図 5 健常成人1例におけるF波波形と相関係数(安静時) 健常成人1例における安静時のF波波形(上図)とMicrosoft ExcelのCORREL関数を用いて記録できた波 形の組み合わせの相関係数(下図)を示す。F波波形に関しては縦に30波形並んでおり、一番下が1番目 の波形を示しており、一番上が30番目の波形を示している。15番目の波形と19番目の波形が相関係数 1.00となっており、図では塗りつぶし部分として示されている。しかし、目視にて波形を確認するとF波 は出現していないと判断したため、F波はすべて異なっていることがわかる。
による筋放電振幅が随意収縮度を増すほど増加する要因 を、Renshaw細胞による反回抑制機能の低下としている。 鈴木ら5)の先行研究より母指対立筋の等尺性収縮度の増 加に伴いF 波出現後の筋放電の増加現象が認められたこ とから、F 波に関しても Renshaw 細胞による影響は大き いと考えられる。第二の要因としては上位中枢レベルで の相対的な興奮性の上昇である。これらについては断定 できないが、単に上位中枢からの興奮性のインパルスが 増加しただけでなく、脳幹網様体や小脳からの抑制のイ ンパルスの減少による相対的な興奮性の上昇も考えられ る。これらの生理学的要因から、母指対立筋の等尺性収 縮度の増加は脊髄前角細胞の興奮性の上昇を導くことが 推察された。 さらにF 波を構成する波形の種類に関しては、安静 時、センサー把持時、25%収縮時、50%収縮時の 4 施行 において、F 波波形の形は安静時と比較して収縮強度が 増大するにつれて類似してくることが目視にて確認で きたが、いずれもすべて異なっていた。著者らは先行研 図 6 健常成人1例におけるF波波形と相関係数(センサー把持時) 健常成人1例におけるセンサー把持時のF波波形(上図)と相関係数(下図)を示す。F波出現頻度が安静 時と比較して上昇したことが確認できる。相関係数の表を確認すると塗りつぶし部分は認めず、目視に て波形を確認しても同一波形はないことがわかるため、すべてのF波波形の種類は異なると判定できる。
図 7 健常成人1例におけるF波波形と相関係数(25%収縮時) 健常成人1例における25%収縮時のF 波波形(上図)と相関係数(下図)を示す。F 波出現頻度および振 幅F/M比が上昇し、波形の形が類似してくることが確認できる。しかし、相関係数の表を確認すると塗 りつぶし部分は認めず、目視にて波形を確認しても同一波形はないことがわかるため、すべてのF波波 形の種類は異なると判定できる。 究において、健常者における安静時F 波を構成する波形 の種類は多様であるという結果を得た。その要因とし て、第一に健常者はF 波導出の電気刺激により再発火す る脊髄前角細胞の種類が多様であるということを考え た。また第二にすべての脊髄前角細胞が電気刺激により 一度に反応するのではなく、刺激に応じてさまざまな脊 髄前角細胞が興奮することも考えられた。これを踏まえ 本研究における等尺性収縮度の増大とともにF 波波形 の形は類似してくるが、波形の種類は異なり多様であっ たという結果から、健常者は安静時、随意運動時に関係 なく、さまざまな脊髄前角細胞の興奮性が増加すること がわかった。また等尺性収縮によりさまざまな脊髄前角 細胞が同時に興奮することでF 波波形の形は類似する が、加えて別のさまざまな脊髄前角細胞も時間が少し異 なって興奮するために波形の形は異なることが考えら れた。したがって等尺性収縮度の増大とともに同一波形
図 8 健常成人1例におけるF波波形と相関係数(50%収縮時) 健常成人1 例における 50%収縮時の F 波波形(上図)と相関係数(下図)を示す。振幅 F/M 比が上昇し、 波形の形が類似してくることが確認できる。しかし、相関係数の表を確認すると塗りつぶし部分は認め ず、目視にて波形を確認しても同一波形はないことがわかるため、すべてのF波波形の種類は異なると 判定できる。 を認めることなくF 波波形の種類が増加したということ は、収縮強度の増大により脊髄神経機能の興奮性が増加 しただけでなく、波形を構成する脊髄前角細胞の種類も 増加したと考えられる。 おわりに 本研究より、健常者において等尺性収縮時には安静時 と比較して、脊髄神経機能の興奮性が増加するだけでな く、F 波波形を構成する脊髄前角細胞の種類も増加する ことがわかった。今回は健常者の非利き手側正中神経刺 激によるF 波の波形を分析したが、今後はより巧緻動作 が可能であると予測される利き手側における等尺性収縮 時のF 波波形の種類や脳血管障害片麻痺患者の非麻痺側 における等尺性収縮時のF 波波形の種類の傾向を明確に していきたいと考える。
また鈴木ら3)も述べているように、運動療法の経過と ともにF 波波形の種類を分析し健常者における F 波波形 の種類の傾向と比較することは、リハビリテーションの 効果を評価する手段として有用であると考える。 文 献 1) 鈴木俊明:脳血管障害片麻痺患者の痙縮の病態生理と持続 的筋伸張を用いた治療効果に関する筋電図学的検討.藤田 学園医学会誌 臨時増刊 学位論文集 21: 269–290, 2002. 2) 鈴木俊明・他:随意運動能力の回復にともない F 波波形の 変化も改善する.脊髄機能診断学36: 59–62, 2015.
3) Suzuki T, et al.: A new analysis method of F-waves to obtain “F-Wave Waveform Values”. SM J Neurol Neurosci 2: 1005, 2016.
4) Eisen A, et al.: Amplitude of the F-wave: a potential means of documenting spasticity. Neurology 29: 1306–1309, 1979. 5) 鈴木俊明・他:等尺性収縮度の変化および対側等尺性収
縮におけるF 波の検討.理学療法ジャーナル 25: 125–128, 1991.
6) Schiller HH, et al.: F responses studied with single fibre EMG in normal subjects and spastic patients. J Neurosurg Psychiatry 41: 45–53, 1978.
7) 小森哲夫・他:痙性脊髄麻痺患者における F 波の性質.臨 床神経 21: 517–521, 1981.
8) 小松義成・他:痙性対麻痺の F 波.臨床脳波 30: 12–15, 1988.
9) Hagbarth KE, et al.: Discharge characteristics of human muscular afferents during muscle stretch and contraction. Exp Neurol 22: 674–694, 1968.
10) Hultborn H, et al.: Changes in recurrent inhibition during voluntary soleus contraction in man studied by an H-reflex technique. J Physiol 279: 229–251, 1979.
11) 永田 晟・他:H 波による随意収縮時の筋放電振幅の低 下現象(Quiet Period)について.日本生理誌 45: 307–313, 1983.