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(1)

超大型ブロックの施工について

~下田港防波堤整備事業~

三﨑隆央

1

・吉田明俊

2 1清水港湾事務所 第三建設管理官室(下田港事務所)(〒415-0023 下田市3丁目18番25号) 2清水港湾事務所 第三建設管理官室(下田港事務所)(〒415-0023 下田市3丁目18番25号) 下田港では、避難港として荒天時における海上航行船舶の避泊水域を確保するための防 波堤整備が行われている。防波堤の整備にあたり、大規模地震により発生する津波に対し てもその機能を維持することが求められる。特に、津波来襲時に防波堤の開口部で発生す ると想定される強い「流れ」に耐えられる性能を満足するため、開口部において大型かつ 大重量の構造を配置することが必要とされた。このため、超大型ブロック(約1,400t/基) を製作し開口部に配置することとした。超大型ブロックの製作・据付にあたっては、その 構造や、下田港の現地条件を踏まえた施工方法の検討を行い現地の施工を進めた。 キーワード:避難港、防波堤、津波、ブロック 1. はじめに 下田港では、避難港として荒天時における避泊水域の 確保を目的とした防波堤の整備が進められている。 防波堤の整備にあたり、その要求性能として、荒天時 における高波浪のほか、今後発生すると想定されている 東海・東南海地震等の大規模地震により発生する津波に 対しても防波堤の機能を維持することが求められている。 特に、津波来襲時において防波堤の開口部で発生すると 想定される強い「流れ」に耐えられる性能を満足する必 要がある。このため、開口部において大型かつ大重量の 構造が必要とされた。同構造について検討した結果、超 大型のコンクリートブロック構造を採用し、開口部に配 置することとした。 本報告では、下田港防波堤開口部に配置する超大型ブ ロック(約1,400t/基)の施工について報告するものであ る。 写真-1 下田港全景写真(H19.10) 写真-1 下田港全景写真(H19.10 撮影) 図-1 下田港防波堤投影図 :ケーソン設置済 :今後整備箇所 凡例

防波堤(西)500m

防波堤(東)400m

▼ ▼ -15m ▼ -21m ▼ -21m ▼ -15m ▼ -12m ▼ -9m ▼ -45m 現地盤 基礎石 ケーソン ケーソン 基礎石 現地盤

開口部

鵜島防波堤 東防波堤 防波堤(西) 500m 防波堤(東)400m 開口部

(2)

2.下田港について 下田港は、1854年のペリー来港そして日米和親条約の 締結により開港し、昨年(2014年)開港160周年を迎え た歴史の深い港である。 その一方で、下田港の周辺海域は地形及び海象条件が 厳しいことから、海難事故の多発地域となっている(写 真-2、写真-3)。

10/30座礁船

10/4座礁船

写真-2 神子元島付近貨物船座礁事故(H19.10) 写真-3 石廊崎沖貨物船衝突事故(H19.7.26) このため、下田港は古くから荒天時における航行船舶 の避難場所として利用されており、昭和26年には港湾法 に基づく避難港に指定された。 避難港とは、暴風雨等の荒天時に小型船舶が避難停泊 するための静穏が保たれた水域を有する港湾であり、我 が国の沿岸域航行の安全性を確保するため、全国で36港 が指定されている(図-2)。 下田港 図-2 全国の避難港の配置 昭和26年に避難港として指定を受けた下田港は、昭和 28年から避難船の避泊地整備のため鵜島防波堤(昭和41 年完成)及び東防波堤(昭和48年完成)が港湾整備事業 として整備されてきた。 その後、航行船舶の増加や大型化に対する避泊水域面 積の拡大を目的として(図-3)、昭和55年度から国の直 轄事業として、下田港の湾口部において新たな防波堤の 建設が開始された。 湾口部の防波堤の整備計画は防波堤(西)500m、防 波堤(東)400mの全長900mである。平成26年度末まで の整備状況は、防波堤(西)については仮航路150mを 除く350m、防波堤(東)については255mが暫定断面で 完成している。また、現在(平成27年度)は平成25年度 から着手した防波堤の開口部について鋭意整備を進めて いるところである。 写真-4 下田港での船舶避泊状況(H9)

(3)

3.防波堤の津波に対する要求性能について 平成23年3月11日に発生した東日本大震災に伴う大津 波により、東北地方の多くの港湾の防波堤について、倒 壊が生じたことは記憶に新しい。図-4及び写真-5は釜石 港湾口防波堤の被災状況である。釜石港湾口防波堤では、 開口部に潜堤としてケーソンが配置されていたが、津波 によりそのほとんどが滑落し、捨石部が露出してしまっ た。このため、防波堤堤頭部が洗掘され、本体ケーソン が開口部側すなわち航路側へ傾斜するという被災が生じ たと考えられる。 下田港防波堤は、津波来襲後もその本来の機能(避泊 水域の確保)が確保される必要がある。このため、津波 に対して所要の対策を講じることとし、特に、防波堤の 開口部で発生すると想定される強い「流れ」に耐えられ る性能を満足するため、開口部において大型かつ大重量 の構造物を配置することとした。これにより、防波堤全 体の被災の軽減を図ることができる。 写真-5 釜石港湾口防波堤(北堤)被災状況写真

避泊

水域

拡大

整備前

整備後

東防波堤 鵜島 防波堤 鵜島 防波堤 東防波堤 (西) (東) 防波堤 図-4 釜石港湾口防波堤被災状況図(ナローマルチ測量結果) 図-3 下田港防波堤整備効果(イメージ)

港内

南堤

北堤

港外

津波により滑落した潜堤 (ケーソン) 被災前の潜堤位置 (防波堤開口部)

(4)

4.超大型ブロック構造の採用 防波堤開口部に配置する大重量の構造物について、 その要求性能を満足する構造として、ケーソン構造もし くはブロック構造が想定された。 構造本体部分については、下田港内の当所所有の作 業基地で製作することを前提とした。 また、下田港の厳しい気象海象条件を踏まえ、構造 写真-6 超大型ブロック(約 1,400t/基)全景 写真-8 大型クレーン船による超大型ブロック吊り上げ状況 本体の製作場所から現地(開口部)への運搬、現地据付 の作業日数が1日間で可能となるブロック構造(図-5、 写真-6)を採用することとした。具体的には、下田港内 の製作場所から本体を大型クレーン船にて吊り上げ、吊 り上げた状態の大型クレーン船を据付場所まで曳航した のち、吊り降ろし方式にて現地に据付を行う施工方法を 採用することとした(写真-7、8、9)。 なお、開口部において超大型ブロックを全 14 基据え 付ける予定である。 写真-7 超大型ブロック製作場所・据付場所 写真-9 超大型ブロック運搬状況(大型クレーン船曳航) 作業基地 開口部 大型クレーン船 による運搬 図-5 下田港防波堤開口部標準断面図 被覆石 2.5t/個(二層積以上) -14.00 根固ブロック (5.0x2.5x2.2) 根固ブロック (5.0x2.5x2.2) -19.00 -21.00 -24.00 本体ブロック (L)9.7x(B)9.1x(H)7.0 被覆石 2.5t/個(二層積以上) -43.00 9,100 1:2 基礎捨石(5~200kg/個) 18,748 9,100 9,498 1:2 基礎捨石(200~500kg/個) 港外側 港内側 摩擦増大用マット L.W.L H.W.L ±0.00+1.70 2, 000 2,00 0 7,0 00 (μ=0.8以上) H= 7.0 m

(5)

5.超大型ブロックの施工について (1)超大型ブロックの製作 開口部の本体構造となる超大型ブロックの製作は、 マスコンクリートとして取り扱う必要があるため、施工 を開始する前に実際の施工条件を勘案して、セメントの 水和熱による温度ひび割れを抑制する対策を検討した。 具体的には、セメントの種類(高炉セメント・低熱 セメント)、打設回数(1層当たりの打設厚さ)を勘案 し温度応力解析を行った。解析結果により温度ひび割れ が発生する部位については、必要に応じて補強鉄筋を配 置する。 なお、開口部に配置する超大型ブロックは、構造的 に必要な鉄筋が無い無筋構造であり、鉄筋の腐食による 耐久性の低下は生じないため、ひび割れにより機能が低 下するものではない。ただし、ひび割れが進行しブロッ クが一体の構造物として保持できない状態は問題となる ため、ひび割れ幅が過大とならないよう制限する必要が ある。このため、目標ひび割れ指数は表-1 から 1.0 以上 を規格値とした。 表-1 ひび割れ発生確率とひび割れ指数の参考値 ひび割れ 発生確率 ひび割れ指数 (安全係数) ひび割れを防止したい場合 5% 1.85 以上 ひび割れの発生をできるだけ 制限したい場合 15% 1.40 以上 ひび割れの発生を許容する が、ひび割れ幅が過大となら ないように制限したい場合 50% 1.0 以上 表-2 は、温度応力解析結果に基づく最小ひび割れ指 数分布である。 温度応力解析の結果、材料に水和発熱の小さい低熱 セメントを使用することでひび割れ指数が 1.0 を下回る 範囲を低減できることが確認された。 また、低熱セメントを使用する条件下にて、打設回 数について3回(1層当たりの打設厚さ 2.0m~2.5m) の場合と4回(1層当たりの打設厚さ 1.0m~2.0m)の 場合で比較した結果、4回打設の方が1層当たりの打設 コンクリート量が小さくなり、水和熱の蓄積が抑制され るため、ひび割れ指数 1.0 を下回る範囲を低減できる結 果となった。しかし、4回打設でもブロックのすべての 部位についてひび割れ指数が 1.0 以上となる結果は得ら れなかった。このため、ひび割れ対策として補強鉄筋を 配置することとし、施工性やコスト面も含め、改めて適 切な打設回数について検討した。その結果、3回打設が 適切となった。 以上の結果を踏まえて、開口部に配置する超大型ブ ロックについては、「低熱セメントコンクリート」「3回 打設(1層当たりの打設厚さ 2.0m~2.5m)(図-6)」「補 強鉄筋配置」にて製作することとした。 図-6 超大型ブロック コンクリート打設ロット割り図

CASE1:高炉セメント、3回打設 CASE2:高炉セメント、4回打設 CASE3:低熱セメント、3回打設 CASE4:低熱セメント、4回打設

コ ン ク リ ー ト 表 面 の ひ び 割 れ 指 数 分 布 ・何れのロットにおいても最小ひび割れ指数は1 を下回っている。 ・天端面を含め、コンクリート表面の広い範囲で ひび割れ指数1を下回っている。 ・最小ひび割れ指数は 0.4 ・何れのロットにおいても最小ひび割れ指数は1 を下回っている。 ・コンクリート表面の広い範囲でひび割れ指数1 を下回っている。 ・最小ひび割れ指数は 0.4 ・1層目以外のロットにおいて最小ひび割れ指数 は1を下回っている。 ・コンクリート表面の一部でひび割れ指数1を下 回っているが、範囲は高炉セメントと比較して 小さい。 ・最小ひび割れ指数は 0.8 ・3,4層目のロットにおいて最小ひび割れ指数 は1を下回っている。 ・限られた部分でひび割れ指数1を下回っている が、範囲は高炉セメントと比較して小さい。 ・最小ひび割れ指数は 0.9 コ ン ク リ ー ト 内 部 の ひ び 割 れ 指 数 分 布 ・何れのロットにおいても最小ひび割れ指数は1 を下回っている。 ・2層目のコンクリートは、内部までひび割れ指 数1を下回る範囲がある。 ・1層目以外のロットにおいて最小ひび割れ指数 は1を下回っている。 ・2、3層目のコンクリートは、内部までひび割 れ指数1を下回る範囲がある。 ・コンクリート内部には最小ひび割れ指数1を下 回る部分は発生していない。 ・コンクリート内部には最小ひび割れ指数1を下 回る部分は発生していない。 3回目 4.5~7m 2回目 2~4.5m 1回目 0~2m 地盤 3回目 4.5~7m 2回目 2~4.5m 1回目 0~2m 地盤 3回目 3~5m 2回目 1~3m 1回目 0~1m 地盤 4回目 5~7m 3回目 4.5~7m 2回目 2~4.5m 1回目 0~2m 地盤 3回目 3~5m 2回目 1~3m 1回目 0~1m 地盤 4回目 5~7m 1回目 0~2m 2回目 2~4.5m 3回目 4.5~7m 地盤 1回目 0~1m 2回目 1~3m 3回目 3~5m 地盤 4回目 5~7m 1回目 0~2m 2回目 2~4.5m 3回目 4.5~7m 地盤 1回目 0~1m 2回目 1~3m 3回目 3~5m 地盤 4回目 5~7m 表-2 温度応力解析に基づく最小ひび割れ指数分布 7000 9700 3回目打設 2回目打設 1回目打設 2500 2500 2000

(6)

(2)超大型ブロックの現地への据付 製作した超大型ブロックについて、防波堤開口部の 所定の位置への据付を行った。 耐津波の観点では、ブロック間の間隔(目地幅)が 広い場合、同目地への津波の「流れ」の流入により目地 洗掘が起こりブロックの変位が生じる恐れがある。この ため、ブロック据付にあたっては、ブロック間の目地幅 について標準の出来形管理基準(20cm 以下)よりも可 能な限り小さい出来形に収めることが望ましい。 その一方で、下田港の現場条件からブロックの据付 にあたり、以下の課題があった。 ・超大型ブロック全体が水面下に水没した状態での 据付となり、大型クレーン船からの超大型ブロッ クの位置把握(視認)が困難。 ・大水深(水深 20m 以深)での据付のため、潜水時 間に制約が生じ、潜水士による超大型ブロックの 位置誘導を一定時間以上行うことが不可能。 写真-10 ゼロガイドナビを活用した超大型ブロック据付状況 6.おわりに 本報告の超大型ブロックの施工により、現地条件に 適切に対応しつつ品質の確保された防波堤開口部の整備 が可能となった。本報告で得られた知見をもとに、引き 続き防波堤の整備を着実に進めてまいりたい。 以上の課題を克服するため、ゼロガイドナビ(NETIS 登録技術)により、防波堤堤頭部上に設置した3台の自 動追尾式トータルステーションから、超大型ブロック上 空にある吊り枠の対角隅に取り付けたターゲットプリズ ムを常時追尾し、測位データをクレーン船操作室のモニ タに送信することで、本体ブロックの現在位置をリアル タイムで把握しつつ据付作業を行った。また、既設(据 付済)ブロックと新設ブロックのそれぞれに事前にマー キングし、既設ブロックに LED 付水中カメラを据えた 上で、新設ブロックのマーキングを既設ブロックのマー キングに寄せるようにカメラ映像を確認しながら新設ブ ロックの据付作業を行った。(写真-10、図-7、写真-11) 上記を始めとした技術的工夫を実施することで、ブ ロック間の目地間隔の出来形値は平均で 7.7cm と管理基 準の半分以下の出来形となった。このことにより、耐津 波の性能を十分に確保した開口部構造を整備することが できたと考えている。 → 新設本体ブロック 既設(据付済) 本体ブロック ワイ ヤ ー LED付 水中 カメラ 映像を見ながら 新設ブロックを 誘導 マーキング カメラ映像 はクレーン 船の操作 室へ → 新設 既設 図-7 水中カメラを活用しての超大型ブロックの 位置誘導イメージ図 参考文献 1)国土交通省港湾局:防波堤の耐津波設計ガイドライン(平成 25 年 9 月),2013 2) 有川太郎,佐藤昌治,下迫健一郎,富田孝史,辰巳大介,廉 慶善, 高橋研也:釜石港湾口防波堤の津波による被災メカニズムの 検討-水理特性を中心とした第一報-,港湾空港技術研究所 資料,No.1251,March 2012 ターゲット プリズム (3点) 常時自動追尾 吊り枠 本体ブロック トータル ステーション 写真-11 大型クレーン船操作室でのモニタ画面 トータル ステーション からの測位 データ モニタ画面 LED付 水中 カメラ 映像 大型クレーン船操作室

参照

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