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自動車整備業における外国人技能実習生の受入れ
ガイドブック
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受け入れる方式は、企業単独型と団体監理型に大別されます
監理団体を通しての受入れが約 95%を占めています。 団体監理型の場合(注)、技能実習生は入国後に講習(日本語教育、技能実習生の法的保護に必要な講 義等)を受けた後、実習実施機関との雇用関係の下で、実践的な技能等の修得を図ります。技能修得 の成果が一定水準以上に達していると認められるなどして「技能実習2号」への変更許可を受けるこ とにより、最長3年間の技能実習が行えます。 (注)企業単独型の場合も、講習の実施が必要ですが、実施時期については異なります。外国人技能実習制度とは
○技能実習制度は、国際貢献のため、開発途上国の外国人を日本で一定期間(最長 3 年間)
に限り受入れ、OJT を通じて技能を移転する制度です(平成5年に制度創設)。
○技能実習生の帰国後の産業の発展への貢献だけでなく、我が国の実習実施機関等にとっ
ては、外国企業との関係強化、経営の国際化、社内の活性化等の効果が期待できます。
○技能実習生は、入国直後の講習期間以外は、雇用関係の下、労働関係法令等が適用され
ています。
実習実施機関等の役割
実習実施機関は、技能実習生に対し実際に技能等を修得させる立場にあります。技能実習指導員を配 置し技能実習計画に従って技能実習を実施するとともに、生活指導員を配置し技能実習生の生活管理に も細かく配慮するなど、技能実習が円滑に行われるようにすることが求められます。○「技能実習1号ロ」(1年目)受入れの要件(団体監理型の場合)
「技能実習1号ロ」で行うことができる活動は、監理団体等が行う講習による知識の修得活動と、実習実 施機関との雇用契約に基づいて行う技能等の修得活動ですが、以下の要件をいずれも充足する必要があり ます。 ◆技能実習生に係る要件(団体監理型の場合) ・修得しようとする技能等が単純作業でないこと。 ・18 歳以上で、帰国後に日本で修得した技能等を生かせる業務に就く 予定があること。 ・母国で修得することが困難である技能等を修得するものであること。 ・本国の国、地方公共団体等からの推薦を受けていること。 ・日本で受ける技能実習と同種の業務に従事した経験等を有すること ・技能実習生(その家族等を含む。)が、送出し機関(技能実習生の送 出し業務等を行う機関)、監理団体、実習実施機関等から、保証金な どを徴収されないこと。また、労働契約の不履行に係る違約金を定め る契約等が締結されていないこと。○「技能実習2号ロ」(2・3年目)への在留資格変更の要件
(団体監理型の場合)
・「技能実習1号ロ」の全期間の4分の3程度を経過時点で、国の技能検定基礎2級相当以上の技能等を修得していること ・「技能実習2号ロ」の技能実習計画が「技能実習1号ロ」の成果の評価を踏まえた適正なものであると認められること ※企業単独型の場合は技能検定試験の合格等の要件が追加されます。 下記の要件、企業単独型の要件について は、巻末の参考資料等をご確認願います。 ◆管理団体に係る要件 ◆技能実習生受入れ人数枠 ◆技能実施機関に係る要件 ◆滞在期間 ◆不正行為の禁止 (後述の不適切な事例を参照)2
在留資格「技能実習」の4区分
○技能実習生の行う活動内容によ り、入国後1年目の技能等を修得 する活動と、2・3年目の修得し た技能等に習熟するための活動 とに分けられ、対応する在留資格として「技能実習」には4区分が設けられています。技能実習2号への移行
○技能実習生は、技能実習1号終了時に移行対象職種・作業について技能検定基礎2級等に合格し、 在留資格変更許可を受けると技能実習2号へ移行することができます。この場合、技能実習1号で 技能等を修得した実習実施機関と同一の機関で、かつ同一の技能等について習熟するための活動を 行わなければなりません。入国、在留手続(実習実施機関等)
○在留資格認定証明書の交付申請 →実習実施機関(企業単独型のみ)又は監理団体が届出します。この証明書は、申請に係る技能実 習生が入管法令の定める許可要件に適合していることを証するもので、有効期間は3ヶ月です。 ○査証(ビザ)の取得と上陸許可 →技能実習生は、在留期間1年(又は6月)とする上陸許可が必要です。実習期間中の在留期間の 更新も必要です。 ○在留資格変更許可 →技能実習1号から技能実習2号へ移行しようとする技能実習生は、移行対象職種・作業等に係る 技能検定基礎2級等の試験に合格した上で、地方入国管理局に在留資格変更許可申請を行うこと ができます。 ○在留カードの交付 →新しい在留管理制度では中長期在留者が対象者となり、在留カードが交付されます。技能実習の流れ
3 日本における自動車の定期点検や車検等による整備作業は、路上故障の未然防止など自動車の安 全確保等に重要な役割を果たしています。 一方で、途上国では自動車の保有台数が大幅に伸びている中、車検等の制度整備や、故障の未然 防止に繋がる点検整備に関する技術・技能の習得ニーズが高まっています。 このニーズに対応するため、平成28年4月に、技能実習2号移行対象職種へ自動車整備が追加 されました。
技能実習生に実習させる内容の例(到達レベル目標のイメージ)
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※雇い入れ時からの継続した安全衛生教育、作業も必要です。
関連作業
(技能実習2号の習熟度に応じて) ・ナビ・ETC 等の電装品の取付作業 ・車体車枠の整備調整作業 ・自動車板金塗装作業5
実習生を受入れる際の注意点
◆計画に沿った技能実習の実施
○技能実習生には、技能実習計画の内容を実習実施前に十分に説明し、理解させることが必要です。 また、計画の達成の度合いを確認するために、技能実習日誌を作成する必要があります。◆生活指導員の役割(日常生活のフォロー等)
○技能実習生の生活指導を行う生活指導員は、技能実習生の我が国における生活上の留意点について 指導するだけではなく,技能実習生の生活状況を把握したり、技能実習生の相談に乗る等して、問 題の発生を未然に防止するよう努めなければなりません。◆労働関係法令、労働・社会保険関係法令の適用
○技能実習生は、実習実施機関との雇用関係の下に報酬を受け、労働基準法上の「労働者」に該当す ることから、通常の労働者と同様、労働基準法をはじめ労働関係法令等が適用されます。◆賃金の支払い
○技能実習生の賃金は、日本人が従事して受ける報酬と同等又はそれ以上の額の報酬としなければい けません。安価な賃金(最低賃金割れ)で日本人労働者が敬遠する作業だけをさせることは、技能 等を習得、習熟する制度の目的から大きく逸脱する行為として禁止されています。◆労働時間
○実習実施機関は、技能実習生に1週間について40時間、1日について8時間を超えて労働させては なりません。労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合は少く とも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければなりません。 ○実習実施機関は、技能実習生に対して毎週少なくとも1日の休日(又は4週間に4日の休日)を与 えなければなりません。また、年次有給休暇を付与しなければなりません。◆安全衛生管理体制の確立・健康確保の措置
○実習実施機関は、安全衛生管理体制を確立するとともに、必要な危害防止措置などを講じなければ いけません。安全衛生教育は、母国語の安全標識・説明や分かりやすい日本語の使用等、技能実習 生が教育内容を確実に理解・実行することができるように、配慮する必要があります。 ○実習実施機関は、労働保険、社会保険、その他の保険に加入なければなりません。◆実習生の人権の尊重
○法定最低賃金を下回る時給、パワハラやパスポートや貯金を強制的に預けさせられる例、安全対策 が不十分なため発生した死亡事故等が報告されています。実習生は雇い主を告発すれば自分も帰国 せざるを得なくなる弱い立場であることを理解し、適正な技能実習を実施しましょう。適正な技能実習の実施について
○技能実習制度を活用することにより、日本の点検整備や車検制度に精通した人材が育成され、途上国 への輸出・販売が拡大している日本車の優れた性能の維持や、自動車の安全の確保が図られるほか、 日本型の車検制度等のソフトインフラ輸出にも繋がります。 ○一方で、外国人技能実習生を雇用することは、衣食住の手配から時間を割いた指導まで、企業にとっ て相当な負担となることに留意が必要です。 ○また、職場慣行の違いやコミュニケーション不足、日本語能力の低さ等からくる不信感等外国人技能 実習生と受入れ企業の間でのトラブルは多数報告されていますので、上記の点について、十分注意し た上で、適正な技能実習の実施をお願いします。6 外国人技能実習制度は、企業などでの実習を通して技術を習得し、母国の経済発展を担う人材を育成 することを目的としています。 しかし、実習実施機関では、労使協定を超えた残業、危険・健康障害防止措置などの未実施、割増賃 金の不払いといった労働基準関係法令に違反したケースが依然として存在しています。以下の事例は、 全国の労働局や労働基準監督署などの労働基準監督機関が、技能実習生の実習実施機関に対して行った 監督指導や送検の一例です。厚生労働省は、度重なる指導にもかかわらず法令違反を是正しないなど重 大・悪質な事案に対しては、送検を行うなど厳正に対応していきます。
実習制度に係る不適切な事例(実習実施機関に対する監督指導、送検)
厚生労働省の監督指導による違反内容の内訳(平成 26 年)
(H27.9 厚生労働省、報道発表資料)
労働基準監督官が監督指導した事例
事例1厚生労働省ホームページの「労働基準
関係情報メール窓口」に技能実習生から
寄せられた「月給5万円、残業手当の時
間単価350円で長時間働かされている」
との情報を端緒に、監督指導を実施
事例2監督署に技能実習生から寄せられた
「1日13時間働かされる日が多い」との
情報を端緒に、監督指導を実施
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