使用実態下における
VLWDÀR[DFLQPJ
日
回投与の
安全性・有効性
堀 誠治
1)・内納和浩
2)・松本卓之
2)・山口広貴
2)・高橋周美
2)・
濱島里子
2)・温井香織
3)・江田久乃
4)・椎名晶子
4)・瀧田 厚
5)・
山之内直樹
5)・水野正巳
2)・奥谷幸裕
2) 1)東京慈恵医科大学感染制御部 2)第一三共株式会社メディカルアフェアーズ部 3)第一三共株式会社薬制部 4)第一三共株式会社安全管理統括部 5)第一三共株式会社データサイエンス部 (2014 年 4 月 15 日受付) 経口キノロン系薬であるVLWDÀR[DFLQ(STFX,グレースビット®錠 50 mg・細粒 10%)は,2011 年 8 月に 1 回 100 mg 1 日 1 回投与が新たな用法・用量として承認され, 2011年 12 月から 2013 年 5 月にかけて本用法・用量における使用成績調査を実施し た。全国 226 施設の医療機関から 1,186 例の調査票を収集し,安全性は 1,089 例,有効 性は 1,069 例で検討した。 副作用発現率は 2.11%(23/1,089 例)であり,重篤な副作用は認められなかった。 主な副作用は下痢 1.10%(12/1,089 例)であり,12 例中 10 例が本剤投与開始から 4 日 以内に発現し,転帰は不明の 1 例を除き,いずれも回復または軽快した。 本剤と併用注意となっているフェニル酢酸系またはプロピオン酸系非ステロイド 性抗炎症薬は 17.6%(192/1,089 例)で併用されていたが,併用例で中枢神経系副作 用は認められなかった。 有効率は全体で 96.4%(1,030/1,069 例)であり,感染症領域別には,呼吸器感染症 97.0%(387/399 例),尿路感染症 96.7%(353/365 例),婦人科領域感染症 94.7%(36/38 例),耳 鼻 科 領 域 感 染 症 92.3%(132/143 例),歯 科・口 腔 外 科 領 域 感 染 症 98.4% (122/124 例)で,いずれも90% 以上であった。 菌消失率は全体で 94.4%(185/196 株)であり,グラム陽性菌 95.4%(62/65 株),グラ ム陰 性 菌 92.2%(94/102 株),偏 性 嫌 気 性 菌 100.0%(11/11 株),非 定 型 菌 100.0% (18/18 株)であった。 以上,STFX 1 回 100 mg 1 日 1 回投与は,その安全性に大きな問題点は認められず, 呼吸器,尿路,婦人科,耳鼻科,歯科・口腔外科の各領域感染症に対して 90% 以上の 有効率を示したことから,使用実態下においても有用な投与方法であることが確認 された。6LWDÀR[DFLQ(STFX)は,好気性,嫌気性のグ ラム陽性菌及びグラム陰性菌から非定型菌にまで 及ぶ幅広い抗菌スペクトルとこれら菌種に対して 高い抗菌活性を有する第一三共株式会社が創製し た経口キノロン系薬であり,呼吸器,尿路,婦人 科,耳鼻科,歯科・口腔外科の各領域の感染症を 適応症として 2008 年 1 月に承認され,同年 6 月か らグレースビット®の商品名で発売された。 承認当時の通常用法・用量は 1 回 50 mg 1 日 2 回(効果不十分と思われる症例には 1 回 100 mg を 1日 2 回)であったが,耐性菌発現の抑制を目的に 1回 100 mg 1 日 1 回投与の用法・用量追加の検討 が行われ,2011 年 8 月に承認された。 本剤は 14 疾患に適応を有するが,用法・用量 追加の開発試験1)で検討された疾患は,呼吸器感 染症(肺炎,慢性呼吸器病変の二次感染)であり, 検討症例数は 100 例と限られているため,市販後 に開発試験では検討されていない疾患も含め,多 数例を対象とした本剤 1 回 100 mg 1 日 1 回投与の 有効性,安全性の情報を収集し,医療現場に情報 提供することは重要である。 今回,本剤 1 回 100 mg 1 日 1 回投与の安全性お よび有効性を把握することを目的とした使用成績 調査を実施したので,その成績を報告する。 なお,本調査は「医薬品の製造販売後の調査及 び試験の実施の基準に関する省令(平成 16 年 12 月 20日付 厚生労働省令第 171 号)」に則り実施し た。
, 調査方法
使用薬剤 グ レ ー ス ビ ッ ト®錠 50 mg〔1 錠 中 に STFX を 50 mg含有するフィルムコーティング錠〕。 グ レ ー ス ビ ッ ト®細 粒 10%〔1 g 中 に STFX を 100 mg含有するコーティング細粒〕。 調査対象 本剤を 1 回 100 mg 1 日 1 回投与された患者を調 査対象とし,一度調査対象とした患者は,繰り返 し対象としないこととした。 調査方法 中央登録方式にて実施した。 調査担当医師は,本剤投与開始後,投与開始日 を含めて 7 日以内に登録票を登録センターに FAX することとした。 調査期間および調査予定症例数 調査期間は 2011 年 12 月 1 日から 2013 年 5 月 31 日までとし,調査予定症例数は 1,000 例とした。 調査項目 調査項目は,患者背景(性別,年齢,入院・外 来の区分,体重,感染症名,感染症の重症度,基 礎疾患・合併症,既往歴,アレルギー歴),薬剤投 与状況(本剤の投与期間,本剤投与前の抗菌薬, 併用薬剤等),細菌学的検査,臨床検査,臨床効 果,有害事象とした。 評価指標 ) 安全性 本剤投与後に発現した医療上好ましくない事象 を有害事象とし,そのうち本剤との因果関係を否定 できない事象を副作用とした。副作用発現率は,副 作用発現症例数 / 安全性評価対象症例数×100(%) として算出した。副作用の集計には「ICH 国際医薬 用語集日本版(0HG'5$-0HGLFDO'LFWLRQDU\IRU 5HJXODWRU\$FWLYLWLHV-)」(9HU)を用いた。 2) 有効性 臨床効果は,本剤投与中止・終了時の臨床症 状,検査結果等から担当医師の判断により,「有 効」,「無効」,および「判定不能」で判定した。有効率は,有効症例数 / 有効性評価対象症例数× 100(%)として算出した。 菌の消長は,本剤投与開始前に担当医師が原因 菌と推定した菌を対象に,本剤投与中止・終了時 の原因菌の消長を「消失」,「推定消失」,「存続」, お よ び「判 定 不 能」で 判 定 し た。菌 消 失 率 は, (消 失+ 推 定 消 失)/(消 失+ 推 定 消 失+ 存 続)× 100(%)として算出した。 3) 統計解析方法 背景因子のカテゴリー毎に副作用発現率を集計 した。カテゴリー間の検定にはȤ2検定を用い,有 意水準は両側 5% とした。なお,検定の際に,「不 明・未記載」のカテゴリーは除いた。有効率は感 染症毎に,菌消失率は適応菌種毎に集計した。
,, 結果
症例構成 全国 226 施設の医療機関から 1,188 例が登録さ れ,そのうち 1,186 例の調査票を収集した。各評 価対象の内訳を Fig. 1 に示す。1,186 例のうち,本 剤投与開始日以降の再来院なし等の 97 例を除い た 1,089 例を安全性評価対象症例とした。安全性 評価対象症例のうち,臨床効果が判定不能等の 20 例を除く 1,069 例を有効性評価対象症例とした。 患者背景 安 全 性 評 価 対 象 症 例 1,089 例 の 患 者 背 景 を 7DEOH に示す。 平均年齢は 54.7±19.9 歳(平均±SD)で,高齢 者区分の割合は 65 歳以上 75 歳未満が 17.4%(190 例),75 歳以上が 20.8%(227 例)であった。入 院・外来別では入院が 7.2%(78 例),外来が 92.8% (1,011 例)であった。感染症領域別では,呼吸器 感染症が 37.2%(405 例)と最も多く,次いで尿路 感染症が 33.8%(368 例)であった。基礎疾患・合 併症を有する症例は 45.3%(493 例)であり,その うち糖尿病が 5.3%(58 例),心疾患が 4.3%(47 例),脳血管障害が 3.3%(36 例),腎疾患が 2.0% (22 例),肝疾患が 1.4%(15 例)であった。本剤 の平均投与日数は 7.2±6.0 日(平均±SD)であり, )LJ 'LVWULEXWLRQRIWKHSDWLHQWV7日以内が 74.6%(812 例)を占めていた。 安全性 ) 副作用発現状況 安全性評価対象症例 1,089 例中,副作用は 23 例 (24 件)に認められ,副作用発現率は 2.11%(23/ 1,089例)であった。主な副作用は「下痢」1.10% (12/1,089 例)であった。その他の副作用は「発 疹」が 2 件(0.18%,2/1,089 例),「浮動性めまい」, 「アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加」 等が各 1 件(0.09%,1/1,089 例)であり,キノロ ン系抗菌薬の重大な副作用として知られている痙 攣,光線過敏症,横紋筋融解症,腱炎,QT 延長等 の副作用は認められなかった(7DEOH)。 また,本調査で重篤な副作用は認められなかった。 2) 副作用発現に影響を与える要因 副作用発現に影響を与える要因を検討するた め,「性別」,「年齢」,「感染症領域」,「基礎疾患・ 合併症の有無」等のカテゴリー別に副作用発現率 を検討した。その結果,有意差が認められた要因 は「感染症領域」であった(7DEOH)。 各感染症領域の副作用発現率は,呼吸器感染症 3.21%(13/405 例),尿路感染症 0.54%(2/368 例), 婦人科領域感染症 2.56%(1/39 例),耳鼻科領域感 染症 1.40%(2/143 例),歯科・口腔外科領域感染 症 3.20%(4/125 例),その他 11.11%(1/9 例)で あり,呼吸器感染症,歯科・口腔外科領域感染症, 婦人科領域感染症の副作用発現率が全体の発現率 2.11%より高かった。 感染症領域別の副作用発現状況を7DEOH に示 7DEOH ,QFLGHQFHRIDGYHUVHGUXJUHDFWLRQV
7 DEOH ,QFLGHQFHRI $'5VE\W\SHVRILQIHFWLRQV
す。副作用発現率が高かった呼吸器感染症,歯 科・口腔外科領域感染症,婦人科領域感染症にお いて最も多く認められた副作用は下痢であり,各 感染症領域で特異的に高い発現率を認めた副作用 はなかった。 3) 下痢の発現状況 本調査で認められた主な副作用である下痢(軟 便含む)の発現状況を以下に示す。 安全性評価対象症例 1,089 例中,下痢(軟便含 む)は 12 例(1.10%)に認められた。下痢,軟便 の内訳は下痢 11 例,軟便 1 例であり,重篤な症例 は認められなかった。下痢(軟便含む)の発現時 期を7DEOH に示す。12 例中 10 例が本剤投与開始 から 4 日以内に発現していた。転帰が不明の 1 例 を 除 き,い ず れ も 回 復 ま た は 軽 快 し て お り, 90.9%(10/11 例)が下痢発現から 7 日以内に回復 または軽快していた。 4) 非ステロイド性抗炎症薬併用時の安全性 フェニル酢酸系またはプロピオン酸系非ステロ イド性抗炎症薬(以下,フェニル酢酸系・プロピ オン酸系 NSAIDs)は,キノロン系抗菌薬との併 用により痙攣を起こすことが報告されている2,3) ことから,「使用上の注意」の相互作用の項に「併 用注意」と記載されている。そこで,フェニル酢 酸系・プロピオン酸系 NSAIDs 併用時の本剤の安 全性を検討した。 NSAIDsの併用率は 27.4%(298/1,089 例)で,そ のうちフェニル酢酸系・プロピオン酸系 NSAIDs の併用率は 17.6%(192/1,089 例)であった。 副 作 用 発 現 率 は,NSAIDs 非 併 用 例 で 2.28% (18/791 例),フェニル酢酸系・プロピオン酸系 NSAIDs併 用 例 で 1.56%(3/192 例),そ の 他 の NSAIDs併 用 例 で 1.67%(2/120 例)で あ り, NSAIDs併用例で副作用発現率の上昇は認められ なかった。また,中枢神経系副作用(神経系障害 7 DEOH 'D\VWDNHQWRGHYHORSGLDUUKHD ( LQFOXGLQJORRVHVWRRO )
および精神障害)は,NSAIDs 非併用例で浮動性 めまいが 1 例認められたが,フェニル酢酸系・プ ロピオン酸系 NSAIDs 併用例,その他の NSAIDs 併 用 例 で は 認 め ら れ な か っ た。な お,痙 攣 は NSAIDs併用有無にかかわらず認められなかっ た。 有効性 ) 臨床効果 有効性評価対象症例 1,069 例における有効率は 96.4%(1,030/1,069 例)であった(7DEOH)。 感染症領域別の有効率は,呼吸器感染症 97.0% (387/399 例),尿路感染症 96.7%(353/365 例),婦 人科領域感染症 94.7%(36/38 例),耳鼻科領域感 染症 92.3%(132/143 例),歯科・口腔外科領域感 染症 98.4%(122/124 例)であり,いずれの感染症 領域においても 90% 以上の有効率を示した。ま た,疾患別にみても中耳炎の 86.7%(26/30 例)を 除き,いずれの疾患も 90% 以上の有効率を示し た。 2) 細菌学的効果 有効性評価対象症例のうち原因菌として本剤の 適応菌種が検出され,菌の消長を判定できた 196 株における菌消失率は 94.4%(185/196 株)であっ た(7DEOH)。好気性または通性嫌気性のグラム陽 性菌の消失率は 95.4%(62/65 株)で Streptococcus pneumoniaeの消失率は 100.0%(5/5 株)であった。 同じくグラム陰性菌の消失率は 92.2%(94/102 株) で, Escherichia coli は 93.2% (68/73 株), Pseudomonas aeruginosaは 85.7% (12/14 株) で あった。偏性嫌気性菌の消失率は 100.0%(11/11 株),非定型菌(Chlamydia trachomatis)の消失率 は 100.0%(18/18 株)であった。 3) 前治療抗菌薬無効例に対する臨床効果 有効性評価対象症例 1,069 例のうち,前治療抗 菌 薬 無 効 例 に 本 剤 が 投 与 さ れ た 症 例 は 179 例 (16.7%)であった。主な前治療抗菌薬は,経口薬 ではセフェム系薬が 51 例(4.8%),キノロン系薬 が 43 例(4.0%),注射用抗菌薬ではセフェム系薬 が 13 例(1.2%)であった。 前治療抗菌薬無効例に対する本剤の有効率は 95.5%(171/179 例)であった(7DEOH)。有効率 を前治療抗菌薬の剤型・系統毎にみると,経口キ ノロン系薬無効例で 95.3%(41/43 例),経口セ フェム系薬無効例で 96.1%(49/51 例),経口マク ロライド系薬無効例で 94.4%(34/36 例),注射用 セフェム系薬無効例で100.0%(13/13 例)であった。 特別な背景を有する患者における本剤の安全 性・有効性 特別な背景を有する患者として,高齢者,肝疾 患合併例,腎疾患合併例における本剤の安全性・ 有効性を以下に示す。 ) 高齢者 年齢別の副作用発現率は,65 歳未満:2.53% (17/672 例),65 歳以上 75 歳未満:1.58%(3/190 例),75 歳以上:1.32%(3/227 例)であり,年齢 層間の副作用発現率に有意差は認められなかった (P=0.4690)。また,各年齢層間で副作用の種類 に大きな差は認められず,年齢の上昇に伴う副作 用発現頻度の明らかな上昇は認められなかった (7DEOH)。 ま た,年 齢 別 の 有 効 率 は,65 歳 未 満 : 96.7% (641/663 例),65 歳 以 上 75 歳 未 満 : 96.8%(179/ 185例),75 歳以上 : 95.0%(210/221 例)であり, 全ての年齢層で 95% 以上の有効率であった。 2) 肝疾患を有する患者 肝疾患を有する症例の副作用発現率は 6.67% (1/15 例),肝疾患を有さない症例の副作用発現率 は 2.07%(22/1,061 例)であり,肝疾患有無別の
副作用発現率に有意差は認められなかった(P= 0.2220)。肝疾患を有する症例で認められた副作 用は,下痢 1 件であった(7DEOH)。 また,有効率は肝疾患を有する症例で 93.3% (14/15 例),肝 疾 患 を 有 さ な い 症 例 で 96.4% (1,005/1,043 例)であった。 3) 腎疾患を有する患者 腎疾患を有する症例(22 例)に副作用は認めら れなかった(7DEOH)。 また,有効率は腎疾患を有する症例で 86.4% (19/22 例),腎 疾 患 を 有 さ な い 症 例 で 96.5% (1,000/1,036 例)であった。なお,腎疾患を有す る症例の無効 3 例は,いずれも尿路の基礎疾患を 有する複雑性尿路感染症であった。
,,, 考察
近 年,抗 菌 薬 の3KDUPDFRNLQHWLFV3KDUPDFR G\QDPLFV(3.3')に関する研究が進み,有効性 および細菌の抗菌薬に対する耐性化は,その薬物 動態と密接に関連していることが解明されてき た。キノロン系薬は濃度依存的な殺菌作用を示 し,治療効果に相関する主要な3.3'パラメー 7DEOH %DFWHULDOHUDGLFDWLRQE\FDXVDWLYHEDFWHULDタ は AUC/MIC で あ り4∼7),耐 性 化 抑 制 に は &PD[0,& が 相 関 す る こ と が 報 告 さ れ て い る8∼10)。ま た,抗 菌 薬 の 血 中 濃 度 が MIC か ら PXWDQWSUHYHQWLRQFRQFHQWUDWLRQ(MPC) の 間 の PXWDQWVHOHFWLRQZLQGRZ(MSW)と呼ばれる濃度 域にある場合,耐性菌が選択されやすいとの報告 があり11),耐性化抑制のためには,血中濃度が MSWの範囲を推移する時間を短くすることが重 要 と な る。STFX は 1 回 50 mg 1 日 2 回 を 通 常 用 法・用量として 2008 年 6 月から呼吸器感染症や 尿路感染症等の各種感染症に使用されてきたが, 2011年 8 月に 1 回 100 mg 1 日 1 回投与が新たに用 法・用量に追加された。用法・用量追加の開発試 験1)で検討された疾患は,呼吸器感染症(肺炎, 慢性呼吸器病変の二次感染)で検討症例数は 100 例と限られているため,今回,全適応症を対象と した STFX 1 回 100 mg 1 日 1 回投与の使用成績調 査を 1,000 例を目標に実施した。 STFX 1回 100 mg 1 日 1 回 投 与(100 mg×1 投 与)の副作用発現率は 2.11%(23/1,089 例)であっ た。本剤は 1 回 50 mg 1 日 2 回投与(50 mg×2 投 与)を中心とした使用成績調査12)を 2008 年 12 月∼2010 年 11 月に実施しており,50 mg×2 投与 の副作用発現率は 4.41%(130/2,951 例)であった。 患者背景等が異なるため直接比較することはでき ないが,100 mg×1 投与の副作用発現率 2.11% は 50 mg×2 投与の副作用発現率 4.41% を上回るこ とはなかった。 主な副作用は下痢(軟便含む)が 1.10%(12/ 1,089例)であり,過去に実施した 50 mg×2 投与 を中心とした使用成績調査12)においても下痢(軟 便含む)の発現頻度が 1.65%(55/3,331 例)と最 7DEOH &OLQLFDOHI¿FDF\E\QRQUHVSRQGHUVWRSUHYLRXVDQWLEDFWHULDOGUXJWKHUDS\
7 DEOH ,QFLGHQFHRI $'5VE\DJHDQGWKHSU HVHQFHRIKHSDWLFGLVHDVHU HQDOGLVHDVH
も高かった。これは本剤が嫌気性菌に対して高い 抗菌活性を有しているため,腸内細菌叢に影響を 与えることで発現すると考えられるが,過去に実 施した使用成績調査も含め下痢が報告された 67 例に重篤例は報告されておらず,転帰は不明の 5 例を除き,いずれも回復または軽快であった。ま た,1 回投与量が 50 mg から 100 mg に増量される ことから,濃度依存的な副作用である痙攣等の中 枢神経系副作用およびその発現頻度の上昇が懸念 されたが,本調査における中枢神経系副作用の発 現率は 0.09%(1/1,089 例)であった。過去に実施 した使用成績調査の 50 mg×2 投与時の中枢神経 系の副作用発現率は 0.17%(5/2,951 例)であり, 1回投与量が 100 mg に増量されたことによる中枢 神経系副作用発現率の上昇は認められず,最も注 意すべき痙攣は本調査および過去に実施した使用 成績調査においても認められなかった。また, フェニル酢酸系・プロピオン酸系 NSAIDs が併用 された 192 例に中枢神経系副作用は認められな かった。本剤はOHYRÀR[DFLQ(LVFX)と同様に, NSAIDsによる痙攣誘発作用が小さいことが動物 実験で報告されている13)。本調査では 192 例と限 られた症例数での検討結果であるため,引き続き 注意は必要であるが,過去に実施した使用成績調 査においてもフェニル酢酸系・プロピオン酸系 NSAIDsが併用された 421 例に中枢神経系副作用 は認められず,臨床においても本剤はフェニル酢 酸系・プロピオン酸系 NSAIDs との併用による中 枢神経系副作用発現増強のリスクは低い可能性が 示唆された。 有効率は全体で 96.4%(1,030/1,069 例)であり, 感染症領域別にみても全て 90% 以上の有効率を 示した。用法・用量追加の開発試験1)は,呼吸器 感染症(肺炎,慢性呼吸器病変の二次感染)を対 象としており,それ以外の感染症については検討 されていない。本調査において呼吸器感染症の有 効率は 97.0%(387/399 例),その他領域の感染症 の有効率は 92.3%∼98.4% であったことから,呼 吸器感染症ならびにその他領域の感染症に対して STFX 100 mg×1 投与は有効であることが確認さ れた。 過去に実施した使用成績調査12)の 50 mg×2 投 与の有効率は全体で 93.2%(2,671/2,867 例),感染 症領域別にみても 91.7%∼97.4% であり,100 mg ×1 投与と 50 mg×2 投与の有効率に大きな違いは なかった。用法・用量追加の開発試験1)で,S. pneumoniaeが原因菌として分離された呼吸器感 染症における 100 mg×1 投与及び 50 mg×2 投与 の AUC は 9.31 ȝg・KUP/,9.46 ȝg・KUP/,治療
効 果 の パ ラ メ ー タ で あ る AUC/MIC は 266.07, 271.26といずれも同様の値であったことから,本 調 査 と 過 去 に 実 施 し た 使 用 成 績 調 査 に お け る 50 mg×2 投与の有効性に大きな違いが認められ なかったと考えられる。 一方,100 mg×1 投与及び 50 mg×2 投与の&PD[ は 0.94 ȝg/mL,0.58 ȝg/mL,耐 性 化 抑 制 の パ ラ メータである&PD[0,& は 26.26,16.83 といずれ も 100 mg×1 投与で高い値になることが確認され ているが1),キノロン系薬の S. pneumoniae に対す る タ ー ゲ ッ ト 値 は&PD[0,&≧5 との報告があ り8),その値を指標とすると 50 mg×2 投与でもそ の値を超え,耐性化抑制が期待できると考えられ る。ま た,50 mg×2 投 与 の&PD[ は 0.58 ȝg/mL1) であるため,MIC が 0.12 ȝg/mL 以下であれば &PD[ MIC≧5 を確保することができる。2010 年に実施 された全国規模の感受性サーベイランス14)では, S. pneumoniaeに 対 す る STFX の MIC が 0.12 ȝg/ mL以 下 の 株 の 割 合 は 98.9%(654/661 株)と 高 かったことから,本調査では耐性化抑制について 検討することはできなかったが,現時点では耐性 化抑制の点においても 100 mg×1 投与と 50 mg×2 投与に大きな違いはないと考えられる。しかし, これらの検討は S. pneumoniae による呼吸器感染 症に限られており,その他の菌種や疾患では検討
がなされていない。また,S. pneumoniae に対する STFXの MIC90は 0.06 ȝg/mL14)と高い抗菌活性を 示 し て い る が,MIC が 0.12 ȝg/mL を 超 え る と, 50 mg×2 投与では&PD[0,&≧5 を確保すること が困難になる。従って,今後の耐性菌発現防止の ため,年齢,合併症,腎機能等の患者背景を考慮 し,十分な&PD[ を確保する必要があると思われ る患者には 100 mg×1 投与を選択すべきと考えら れる。 菌消失率は全体で 94.4%(185/196 株)で,呼 吸器感染症の主要原因菌である S. pneumoniae,
+DHPRSKLOXVLQÀXHQ]DH, Moraxella catarrhalis の
消失率はいずれも 100.0% であった。さらに,近年 キノロン系薬に対して耐性化が報告されている E. coliに対して 93.2% の消失率を示した。2010 年 に実施された感受性サーベイランス14)において, E. coliのSTFXに対する感性率は 91.9%を示してお り,他のキノロン系薬である LVFX,FLSURÀR[DFLQ (CPFX),WRVXÀR[DFLQ(TFLX)に対する感性率は いずれも約 70% であることを踏まえると,E. coli が原因となる尿路感染症の治療において本剤は有 効と考えられた。また,偏性嫌気性菌に対する消 失率は 100.0% であった。STFX は既存の経口キノ ロン系薬の中で偏性嫌気性菌に対する抗菌活性が 最も高く15),歯科・口腔外科領域感染症や医療・ 介護関連肺炎,嚥下性肺炎等,嫌気性菌が原因菌 となる疾患での有用性が示唆された。 本 調 査 で は 前 治 療 抗 菌 薬 無 効 例 に 対 し て 100 mg×1 が投与された症例が約 15% 含まれてお り,キノロン系薬を含む他剤無効例に対する有効 率は95.5%(171/179 例)と高い値であった。キノロ ン系薬は作用機序の違いからȕラクタム系薬やマ クロライド系薬に交差耐性は示さず,S. pneumoniae 等の DNA ジャイレースおよびトポイソメラーゼ IVの野生型ならびに変異型酵素に対し,他のキノ ロン系薬(LVFX 等)と比較して高い阻害活性を 示すことが報告されており16,17),STFX の有する 特徴が臨床において示されたものと考えられた。 以上,STFX 1 回 100 mg 1 日 1 回投与の安全性 に大きな問題点は認められず,呼吸器,尿路,婦 人科,耳鼻科,歯科・口腔外科の各領域感染症に 対して 90% 以上の有効率を示したことから,使用 実態下においても有用な投与方法であることが確 認された。 謝辞 STFXの使用成績調査にご協力を賜り,貴重な データをご提供いただきました先生方に厚く御礼 申し上げます。 利益相反自己申告 著者 堀 誠治は第一三共株式会社から研究資 金等の提供を受けている。 内納和浩,松本卓之,山口広貴,高橋周美,濱 島里子,温井香織,江田久乃,椎名晶子,瀧田 厚,山之内直樹,水野正巳,奥谷幸裕は第一三共 株式会社の社員であり,利益相反はない。
文献
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DQG HPHUJHQFH RI UHVLVWDQFH $QWLPLFURE $JHQWV&KHPRWKHU∼1060, 1987 11) ZHAO, X. & K. DRLICA5HVWULFWLQJWKHVHOHFWLRQ
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