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CHEMOTHERAPY
OCT.1986BRL 28500(Clavulanicacid-Ticarcillin)の β-lactamase産 生Escherichia
coliに 対 す る 抗 菌 力 お よ び 複 雑 性 尿 路 感 染 症 に 対 す る 臨 床 効 果 の 検 討
張
邦 光 ・兼 松
稔 ・山 羽 正 義 ・小 林 克 寿
斎 藤 昭 弘 ・加 藤 直 樹 ・坂
義 人 ・西 浦 常 雄
岐阜大学医学 部泌尿器科学教室(主 任:西 浦常雄教授)
Ticarciilinと β-lactamase inhibitorの ひ とつ で あ るclavulanicacidと の 合 剤 と して 新 しく開
発 され た 注 射 用 抗 生 物 質 製 剤BRL 28500に つ い て,尿 路 感 染 症 に対 す る有 用 性 を 検討 す る 目的 で,
基 礎 的 な らび に 臨 床 的研 究 を行 っ た。
1.BRL 28500は 各 種 の グ ラ ム陽 性 球 菌 や グ ラム陰 性 桿菌 に対 し優 れ た 抗 菌 力 を 示 した。 尿路 由
来 のampiciliin耐 性EScherichia coli(β-lactamse産 生菌)に 対す るBRL 28500のMIC分 布 は,
ticarcillinの そ れ に比 べ て3管 以 上 優 れ て いた 。 2.9例 の 慢性 複 雑 性 尿 路 感 染 症 に対 し,BRL 28500を1回0.89な い し1。69ず つ1日2回, 5日 間連 続 して経 静 脈 的 投 与 を 行 い,薬 剤 の 治療 効 果 と安 全 性 とを検 討 した 。 薬効 評 価 の可 能 な8 例 中5例 に治 療 効 果 を認 め,総 合有 効 率 は63%で あ った 。 本剤 投与 が原 因 と思 わ れ る副 作 用 を示 した症 例 は1例 も な く,ま た 本 剤 投与 後 の血 液 生化 学的 異 常 を示 した例 も なか っ た。. 以 上 の 検討 か ら,BRL 28500は 尿 路 感 染 症 に対 して,有 効 性 か つ 安 全 性 の高 い 薬剤 と思 われ た。 BRL 28500は,す で に 臨 床 上 各 種 感 染 症 に 使 用 さ れ て い るticarcillin(TIPC)と,英 国 ビ ー チ ャ ム 研 究 所 で 開 発 さ れ たclavulanic acid(CVA)を15:1(力 価 比)の 割 合 で 配 合 した 新 し い 注 射 用 抗 生 物 質 製 剤 で あ るoCVAは,Streptomyces clavuligeruS ATCC 27064 よ り産 生 さ れ る抗 生 物 質 で あ る が1),そ れ 自体 の 抗 菌 力 は 弱 く,む し ろ β-lactamaseを 不 可 逆 的 に 阻 害 す る と い う特 徴 的 な 性 質2)か ら,既 存 の 抗 生 剤 と 併 用 す る こ と に よ り,そ の β-lactamaseに 対 す る 安 定 性 と 抗 菌 ス ペ ク トラ ム の 拡 大 が 得 ら れ る と い う点 で 臨 床 的 意 義 が 高 い 。 す で にCVAは,amoxicillin(AMPC)と の 合 剤 と し て 尿 路 感 染 症 に 対 す る 臨 床 評 価 を 得 ら れ3,4),実 用 化 さ れ て い る 。 今 回,わ れ わ れ は,CVA,TIPCな ら び に そ の 合 剤 で あ るBRL 28500を 用 い て 細 菌 学 的 検 討 を 行 い,ま た BRL 28500を 複 雑 性 尿 路 感 染 症 に 投 与 し 臨 床 的 有 効 性 と 安 全 性 と を 検 討 し た 。 1.検 討 材 料 お よ び 方 法 1.抗 菌 力 当 教 室 保 存 の 標 準 株10株 と 尿 路 由 来 のampicillin (ABPC)耐 性E.coli 39株 に つ い て,BRL 28500, TIPCな ら び にCVAの 最 小 発 育 阻 止 濃 度(MIC)を 日 本 化 学 療 法 学 会 標 準 法5)に 従 っ て 測 定 し た 。 菌 株 の 前 培 養 に はMueller-Hinton broth(Difco)を,寒 天 平 板 希 釈 法 に はMueller-Hinton agar(Difco)を 用 いた。なお 尿 路 由 来 のABPC耐 性E.coliは,nitrocefi轟 を用 いた 変 色 基 質 法6)によ り,全 株 β-lactamase産 生株 であ るこ とを 確 認 した 。 2.臨 床的 検 討 1984年2月 か ら1985年4月 ま で の期 間 に岐阜大学医 学 部 附 属 病 院 泌 尿 器科 で診 療 した 入 院患 者 の うち,慢 性 複 雑 性 尿 路 感 染 症9例 に つ い て,BRL 28500の 臨床効果 と安 全 性 を検 討 した 。 薬 剤 の投 与 量,投 与 方 法 は,本 剤 を1回0.89な いし 1.69を5%ブ ドウ糖 液20m1に 溶 解 し,1日2回 、連 続5日 間経 静 脈 的 投 与 と した 。 臨 床 効 果 は,主 治 医 に よ る判 定 な らび にUTI薬 効評 価 基 準7)に したが っ て判 定 した 。 また.薬 剤投 与前後 の 血 液 生 化 学的 検 査 値 の推 移 自他 覚的 副 作用 の有無を検 討 した 。 な お,薬 剤 投 与 症 例 をTable 2に 示 し た が,Case No.9は 薬 剤投 与 前 の尿 培 養 が 陰 性 であ ったため,本 症 例 は安 全 性 の検 討 の み に 含 め た。 II.成 績 1.抗 菌 力 標準 株 に対 す る各 薬 剤 のMICをTable 1に 示 した。 BRL 28500は グ ラム陽 性 球 菌,グ ラム陰 性桿 菌の全般に わ た ってTIPCと 同等 あ る い はそ れ 以上 の 優れ た 抗菌
Table 1 Antibacterial activity of BRL 28500 against standard strains of bacteria
Fig, 1 Sensitivity distribution of ABPC-resistant E. coli isolated from urinary tract
力 を示 した 。 な か で もTIPCに 耐 性 を 示 すKlebsiella Pneumoniae PCI 602に 対 し3.13μg/mlと い う 低 い
MIC値 を 示 した 。
尿 路 由来 のABPC耐 性E.coli(β-lactamase produ-clngstrains)39株 の 各 薬 剤 に 対 す るMIC分 布 を Fig.1,2に 示 し た 。 接 種 菌 量 が106cfu/ml,108cfu/ml のいず れ に お い て も,Ecoliの 大 多 数 はTIPCに 対 し て100μg/mlを 超 え る 高 度 耐 性 を 示 した が,BRL 28500 に 対 して は25μg/mlに ピ ー ク を 有 す る 一 峰 性 のMIC 分布 を示 した 。CVAもBRL 28500と ほ ぼ 同 様 の 分 布 を 示 したが,BRL 28500中 に 含 ま れ るCVA量 は16分 の 1で あ る こ とか ら,TIPCとCVAと の 相 乗 効 果 はCVA の含量 が 少 な くて も,極 め て 著 明 で あ る こ と が わ か っ
Fig. 2 Sensitivity distribution of ABPC-resistant
E. coli isolated from urinary tract
た。
個 々 の 株 に つ い て,BRL 28500とTIPCに 対 す る
MIC相 関 をFig.3,4に 示 した 。TIPCに 対 して100
μg/mlを 超 え る株 が 、BRL 28500に 対 して は12.5μg/
mlか ら100μg/ml以 上 ま で 幅広 く分 布 して い た。
2.臨 床 的 検 討
本 剤 が 投 与 さ れ た 慢 性 複 雑 性 膀 胱 炎9症 例 の 一 覧 を
Table 2に 示 した 。Case No.1,2は 初期 の症 例 で,1回
投 与 量 が0.8gで あ っ た が,膿 尿 や 細 菌 尿 に対 す る効 果
が 不 十 分 であ る とい う印象 を受 け た の で,Case No.3以
降 は1回 投 与 量 を1.6gに 倍 増 した 。
臨床 症 状,膿 尿,細 菌 尿 な どを 勘 案 した 主 治 医 判 定 で
Fig. 3 Correlation of MIC values between BRL 28500 and TIPC against 39 strains of ABPC -resistant E. coli 有効率は8例 中5例 の63%で あ っ た。 UTI薬 効評 価 基 準 に よる総 合 臨 床 効 果 をTable 3に 示した。膿 尿効 果 は正 常 化5例(63%),不 変3例(38%) で,細菌 尿効 果 は陰 性化5例(63%),不 変3例(38%) であった。 したが って,著 効4例(50%)、 有 効1例,無 効3例一とな り,総 合有 効 率 は63%で あ った 。 疾患病態群 別 の総 合 臨 床効 果 をTable 4に 示 した 。=検 討症例数 が少 な いた め各 群 間 の比 較 は で き な い が,単 独 感染が5例 と混 合 感 染 が3例 で 総 合 有 効 率 は 各 々80%F と33%で あ った 。 カ テ ー テ ル 留置 症 例 は1群 と5群 合 わせて2例 あ り,そ の有 効 率 は50%で あ っ た 。
Fig. 4 Correlation of MIC values between BRL
28500 and TIPC against 39 strains of ABPC
-resistant E. coli
細 曹 学 的 検 討 の 成 績 をTable 5に 示 し た 。8症 例 か ら 14株 が 分 離 さ れ,そ の 内 訳 はE.coli,Staphylococcus epidermidis,Enterococcus faecalis, .A.calcoacetimsが 各2株K.pneumoniae,Einterobaoter aerogenes,Pse-udomonaS aeruginosaが 各1株 お よびP.aeruginosaを 除 く ブ ド ウ糖 非 発 酵 グ ラ ム 陰 性 桿 菌(NF-GNR)が3株 分 離 さ れ た 。P.aeruginosa,A.calcoacetfcus各1株 と NF-GNR 2株 が 存 続 した ほ か は す べ て 消 失 し,細 菌 消 失 率 は79%で あ っ た 。 分 離 さ れ た14株 中 β-lactamase産 生 菌 は6株 に み ら れ,そ の 内 訳 はE.,oli 2株A.calcoaceticus 2株
Table 3 Overall clinical efficacy of BRL 28500 in complicated U.T.I. 0.8g•~2/day•c•c2 cases 1.6g•~2/day•c•c6 cases
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CHEMOTHERAPY
OCT.1986Table 4 Overall clinical efficacy of BRL 28500 classified by the type of infection
Table 5 Bacteriological response to BRL 28500 in complicated U.T.I.
* Regardless of bacterial count
[]
fl-lactamase-producing strain
K.pneumoniae,E.aergeneS各1株 で あ っ た 。 そ の う ち,A.calcoaceticus 1株 を 残 し て す べ て 消 失 し,消 失 率 83%(5/6)で あ っ た 。 本 剤 投 与 に よ る 自 覚 的 副 作 用 は9例 中1例 も 認 め な か っ た 。 薬 剤 投 与 前 後 の 血 液 生 化 学 的 検 査 値 の 変 化 は Table 6に 示 し た 。RBC,ヘ モ グ ロ ビ ン 値,ヘ マ ト ク リ ッ ト値 の 軽 度 な 異 常 が2例(No.1、8)に み ら れ た が,こ れ らは患 者 の病 状 の変 化 に よる もの であ り,本 剤投与 と は無 関 係 と考 え られ た 。 III.考 案 現 在,臨 床 的 に 最 も頻 繁 に使 用 され て い る抗菌剤は, ペ ニ シ リソや セ フ ェム な どの β-lactam系 薬剤 であるが, これ ら の薬 剤 を 加 水分 解 す る β-lactamase産 生菌 の増 加 が,臨 床 上 直 面す る 重 大 問 題 とな って い る。 この 問 題 に対 処 す る 努 力 が 精 力 的 に 行 わ れ,一 方 で は,β-lactamaseに 安 定 か つ 抗 菌 力 の優れ た 薬剤 の開発,他 方 で は β-lactamaseを 永 久 的 に阻 害す るinhibitorの 開発 がす す ん だ こ とは 周 知 の ご と くであ る。 β-lactamase in-hibitorは それ 自体 抗 菌 力が 弱 くて も,酵 素 を不可逆的 に阻 害 す る活 性 が 強 けれ ば,既 存 の β-1actam系 薬剤と 併 用 す る こ と に よ り,そ の薬 剤 の抗菌 力 の復活 と抗菌ス ペ ク トラ ム の拡 大 を はか る こ とが でき る。 β-lactamase inhibitorの 代 表 的 な も の と して,CVAやsukbactam8,9) が 開 発 され て お り,種 々 の β-lactam系 薬剤 との配合剤 や エ ステ ル 結 合 した 薬剤 と して,検 討 がすす め られてい る。 BRL 28500は 前 述 の よ うにTIPCとCVAと を15 対1の 割 合 で 配 合 した 注射 用 抗 菌 剤 で あ る。TIPCは 1964年 英 国 ビー チ ャム 研 究 所 で 開 発 され た 注射用半合 成 ペ ニ シ リン で,carbenicillin(CBPC)やsulbenlci-ilin(SBPC)と 同様 に緑 膿菌,変 形 菌 を含む 諸菌 に広範Table 6 Changes in laboratory test results
囲の抗菌 ス ペ ク トル を 有 す る と い わ れ て い る10)。 し か し,TIPCは,RICHMoND分 類 に よ るIc ,II,III,IV, V型 β-iactamaseに 対 し て は 比 較 的 不 安 定 で あ る11)
。わ れわ れ の 検 討 し たABpc耐 性 瓦coliの 多 く はIII型 (TEM型)の β-lactamaseを 産 生 し て い る と思 わ れ, Fi島1 ,2の よ う にTIPCに 対 して も 多 く の 株 は 耐 性 を 示 した。CVAの β-lactamase阻 害 作 用 はRICHMOND分 類のIc,II,III,IV.V型 β-lactamaseお よ び ブ ド ウ 球菌 産 生 の β-lactamaseに 対 して 認 め ら れ て い る の で11),TIPCにCVAを 併 用 す る こ と は 酵 素 学 的 見 地 か らも意 義 が あ る。 わ れ わ れ は 今 回ABPCに 対 して 耐 性 のE.coliに つ い てBRL 28500の 抗 菌 力 を 調 べ た が , TIPCの 抗 菌 力 に 比 べ て3管 以 上 も 強 力 に な っ て い た 。 一 般 に ,TIPCに 対 し て 強 い 感 受 性 を 示 す 株 の 場 合 に は,BRL 28500に も 同 様 な 感 受 性 を 示 し,CVAの 併 用 効果 は 著 明 で な い が,β-lactamase産 生 菌 の 場 合 に は , CVAの 併 用 効 果 が 明 らか と な るk2)。 と く にpenidllinase
産 生 株 やProteus vulgaris,Bacteroides fragilisな ど の
β-iactamase産 生 株 に対 して は,BRL 28500の 抗 菌 力 は TIPC単 独 に比 ベ て,極 め て強 くな っ て い る。 泌 尿 器 科 領 域 にお け る尿 路 感 染 症 に対 す る本 剤 の 治 療 成 績 をみ る と,全 国19機 関 の集 計13)では,314例 の う ち主 治 医判 定 で 複 雑 性 腎 孟 腎 炎,複 雑 性 膀 胱 炎 と も 72%の 有 効 率 であ った 。 これ らの症 例 の うちTIPC耐 性 菌 の検 出率 は67%で あ り、これ らTIPC耐 性 菌 検 出症 例 の有 効 率 は 複 雑 性 腎 孟 腎 炎65%,複 雑 性 膀胱 炎70% であ った 。 また,β-lactamase産 生 菌 は128例 か ら検 出 され これ ら の症 例 にお け る本 剤 の有 効 率 は,複 雑 性 腎 孟 腎 炎70%,複 雑 性 膀 胱 炎73%で あ った 。 これ ら の数 字 ば 本 剤 がTIPCの 単 独 投 与 で は 臨 床 効 果 が 期 待 薄 の症 例 に 投 与 され た 場 合 で も,安 定 した 効 果 が 得 られ る こ とを 示 して い る。
932
CHEMOTHERAPY
OCT. 1986 複 雑 性 尿 路 感 染症 に関 す るUTI薬 効 評価 基 準 に よる 判 定 の成 績13)は,287例 中 著効76例,有 効119例,無 効92例 で 総 合有 効 率 は68%で あ った 。 少 数 例 で は あ るが わ れ わ れ の 検討 で も同様 な成 績 が 得 られ て い る。 これ は,cefotaxime(CTX),ceftizoxime(CZX),ce-fmenoxime(CMX),1atamoxef(LMOX)な ど の いわ ゆ る第III世代 の セ フ ェム 系 薬剤 の 複雑 性 尿 路 感 染 症 に対 す る臨 床 効 果 の成 績14∼17)と比 較 して も,同 等 あ る い はそ れ 以 上 の値 とな って い る。 臨 床 効 果 の成 績 に関 係 が 深 く、 抗 菌 効 果 が 直 接 的 に 繁 栄 さ れ る 細 菌 学 的 効 果13)を菌 種 別 にみ る と,K.pneumoniae,Enterobacte rcloacae, Serratia marcescenensな ど の菌 種 の 細菌 消失 率 の 高 さ が注 目され る。 と くに β-lactamase産 生株 につ い てみ る と,K.pneumoniaeは14株 中13株 が消 失(消 失 率 93%)し,E.cloacaeは8株 中5株 が 消 失(同63%), S.marcescensは28株 中25株 が消 失(同89%)し て い る。K.pneumoniaeの 産 生 す る β-lactamaseはCVAに よ りよ く阻 害 され るの で,BRL 28500投 与 に よ る細菌 学 的 効 果 の成 績 は酵 素 学的 に も説 明 で き る もの で あ るが, EcloacaeやS.marcescensの 産 生 す る β-lactamaseは CVAの 阻 害 作 用 の及 ぼ な い 種 類 で あ り,BRL 28500に 対 す るMIC分 布 も 耐 性 に 偏 位 して い る に もか か わ ら ず,細 菌 消 失 率 が 比 較的 高 い の は理 論 的 に説 明 が 困難 と 思 わ れ る。 こ の現 象 はAMPCとCVAと の 併 用 剤 の検 討 の際 に もみ られ,こ の 場 合 に はSerratiaの 細 菌 消 失 率 が予 想以 上 に高 く,Serratiaを 原 因菌 とす る尿 路 感 染 症 の 治療 成 績 も高 か った18)。こ の理 由 は,Serratia.En-凄erobacterな どの株 に対 す るCVAの 抗 菌 力 を再 検 討 し た 結 果,尿 中 レベ ル で得 られ る濃 度 で はCVA自 体 が こ れ らの菌 種 に発 育 を 阻 止 す る こ とが 判 明 し,先 述 の 問 題 に対 す る 説 明 が つ け ら れ た19)。BRL 28500の 場 合, TIPCに 比 べ てCVAの 含量 が少 な いが 、健 常 人 に おけ る尿 中 濃 度 の検 討20)では,BRL 28500 0.89投 与 の場 合 0か ら2時 間 に お け るCVAの 尿 中 濃 度 は100μg/mi以 上,1.69投 与 の場 合300μg/ml以 上 が 得 られ て い る。 したが っ て,本 剤 に お け るCVAの 存 在 意 義 は,尿 路感 染 症 に限 っ て言 え ば,β-iactamase阻 害 剤 と して の補 助 的 役割 とい う立 場 に と どま らず,抗 菌 剤 と して の 役 割 の 一 翼 を担 うこ とに あ る と言 う こ とも で き る。 本 剤 投 与 が 原 因 と考 え られ る 自覚 的 副 作 用 や 血 液 生化 学 的 検 査 値 の 異 常 は,わ れ わ れ は1例 も 経 験 しな か っ た 。最 近 開 発 され て い る抗 菌 剤 は一 般 に抗 菌 力 が 強 く し か も抗 菌 ス ペ ク トラ ムが 広 い た め,腸 内細 菌 叢 の変 化 に と もな う下 痢や 軟 便 が 多 いが,本 剤 の場 合 は全 国集 計 の 成 績21)でも,983例 中,下 痢4例,軟 便1例,腹 痛1例 で,主 に 消 化器 症 状 であ った 。 また 、 これ らを 含 め た全 体 の副 作 用 発 現 率 はわ ず か2.5%と い う 低 い 値 であっ た。 臨 床 検 査値 の異 常 発 現 例 は,GOT,GPT,LDH , AI-Paseな どの 上 昇 に よる肝 機 能 異 常や,好 酸球増多な どの血 液 の異 常 が 主 な もの で あ るが,そ の発 現率 は,他 の ペ ニ シ リン系 薬 剤 や セ フ ェム系 薬 剤 に比 べ て特 に高い もの で は な い。 以 上 の こ とか ら,BRL 28500は,β-lactamase産 生菌 の増 加 が 問 題化 して い る現 在 の尿 路 感 染症 の治療 におい て,有 効 性 が 高 く,か つ 安 全 性 の極 め て 高い薬剤 と考え られ る。文
献
1) BROWN, A. G.; D. BUTTERWOTH, M. COLE, G. HANSCOMB, J. D. HOOD, C. READING & G. N. ROLINSON: Naturally-occurring ƒÀ-lactamase
inhibitors with antibacterial activity. J. An-tibiot. 29(6): 668•`669, 1976
2) READING, C. & M. COLE: Clavulanic acid : a beta-lactamase-inhibiting beta-lactam from Streptomyces clavuligerus. Antimicrob. A-gents Chemother. 11(5): 852•`857, 1977 3) 大 川 光 央, 他 (17施 設 お よ び 関 連 施 設): 複 雑性 尿 路 感 染 症 に 対 す るBRL 25000 (Clavulanic acid -Amoxicillin) とAmoxicillinの 二 重 盲 検 法に よ る 臨 床 評 価 。Chemotherapy 31 (S-2): 44∼ 63,1983 4) 河 田 幸 道, 他 (22施 設 お よび 関 連 施 設): 複雑 性 尿 路 感 染 症 に 対 す るBRL 25000 (Clavuianic acid-Amoxicillin)とCefatrizine propylene gly-colの 比 較 検 討 。Chemotherapy 31 (S-2): 64∼ 82, 1983
5) MIC測 定 法 委 員 会 (代 表: 三 橋 進): 最小 発 育 阻 止 濃 度 (MIC) 測 定 法 再 改 訂 に つ い て。Chemo-therapy 29: 76∼79, 1981
6)
O' CALLAGHAN,
C. H.; A. MORRIS, S. M. KIRBY
&
A. H. SHINGLER: Novel method for detection
of 19-lactamase by using a chromogenic
cep-halosporin
substrate.
Antimicrob.
Agents
Chemother.
1(4): 283-288,
1972
7) UTI研 究 会 (代 表: 大 越 正 秋): UTI薬 殉評 価 基 準 (第2版)。Chemotherapy 28: 321∼341, 1980
8) ENGLISH, A. R.; J. A. RETSEMA, A. E. GIRARD, J. E. LYNCH &, W. E. BARTH: CP-45, 899, a beta-lactamase inhibitor that extends the antibacterial spectrum of beta-lactams initial bacteriological characterization. Antimicrob.
Agents Chemother. 14 (3): 414•`419, 1978 9) ASWAPOKEE, N. & H. C. NEU: A sulfone
lactam compounds which acts as a 13-lactarnase inhibitor. J. Antibiot. 31: 1238•`1244, 1978 10) 上 田 泰: Ticarciilin (TIPC) の 基 礎 的 ・臨 床 田
研 究 の ま と め 。Chemotherapy 25: 2389∼2403, 1977
11) HUNTER, P.A., K. COLEMAN, J. FISHER & D. TAYLOR: In vitro synergistic properties of clavulanic acid with ampicillin, amoxycillin and ticarcillin. J. Antimicrob. Chemother. 6: 455•`470, 1980 12) 三 橋 進: 第33回 日 本 化 学 療 法 学 会 総 会, 新 薬 シ ソ ポ ジ ウ ム, BRL 28500 (Clavulanic acid-Ticarcillin)。1985 13) 西 浦 常 雄: 第33回 日 本 化 学 療 法 学 会 総 会, 新 薬 シ ソ ポ ジ ウ ム, BRL 28500 (Clavulanic acid-Ticarcillin)。1985 14) 清 水 保 夫, 他 (16施 設 お よ び 関 連 施 設): 複 雑 性 尿 路 感 染 症 に 対 す るCefotaxime (CTX) とSu-lbenicillinの 効 果 の 比 較 。Chemotherapy 29: 107∼131, 1981 15) 守 殿 貞 夫, 他 (11施 設 お よ び 関 連 施 設): 複 雑 性 尿 路 感 染 症 に 対 す るCeftizoximeとCefazolin の二 重 盲 検 法 に よ る 比 較 試 験 。Chemotherapy 29: 759∼781, 1981 16) 河 田 幸 道, 他 (7施 設 お よ び 関 連 施 設): 複 雑 性 尿 路 感 染 症 に 対 す るCefmenoxime (SCE-1365) とCefazolinの 比 較 検 討 。Chemotherapy 29 (S-1): 912∼929, 1981 17) 坂 義 人, 他 (16施 設 お よ び 関 連 施 設): Oxace-phem系 抗 生 剤6059-Sの 複 雑 性 尿 路 感 染 症 に 対 す る 臨 床 評 価-Sulbenicillinを 対 照 に 用 い た 比 較 検 討 (Well controlled study)。Chemotherapy 29: 533∼566. 1081
18) NISHIURA, T.: Efficacy of Augmentin (BRL 25000) in urinary tract infections, Augmen-tin, Proceedings of an International Sympo-sium. Montreus. Switzerland. 17. July. 1981, p. 65•`77, Excerpta Medica, Amster-dam-Oxford-Princeton, 1982
19) NAKAZAWA, H.; T. HASHIMOTO, T. NISHIURA & S. MITSUHASHI: Efficacy of BRL 25000 against Serratia marcescens, Enterobacter cloacae, and Citrobacter freundii in urinary tract infections. Antimicrob. Agents Chemother. 24(3): 437•`439, 1983 20) 斉 藤 玲: 第33回 日本 化 学 療 法 学 会 総 会, 新 薬 シ ン ポ ジ ウ ム, BRL 28500 (Clavulanic acid-Ticarcillin)。1985 21) 斉 藤 篤: 第33回 日 本 化 学 療 法 学 会 総 会, 新 薬 シ ソ ポ ジ ウ ム, BRL 28500 (Clavulanic acid-Ticarcillin)。1985
STUDIES
ON THE
ANTIBACTERIAL
ACTIVITY
OF BRL 28500
(CLAVULANIC
ACID-TICARCILLIN)
AGAINST
J3-LACTAMASE
PRODUCING
ESCHERICHIA
COLI
ISOLATED
FROM
THE
URINARY
TRACT,
AND
THE
CLINICAL
UTILITY
OF
BRL 28500 IN THE
TREATMENT
OF COMPLICATED
URINARY
TRACT
INFECTION
PANG-KWANG
CHANG, MINORU KANEMATSU,
MASAYOSHI
YAMAHA,
KATSUTOSHI
KOBAYASHI,
AKIHIRO SAITOH, NAOKI KATOH,
YOSHIHITO
BAN and TSUNEO NISHIURA
Department of Urology, Gifu University School of Medicine
A new antibiotic formulation BRL 28500, containing ticarcillin and clavulanic acid (ƒÀ-lactamase inhibitor), was studied both fundamentally and clinically and the following results were obtained
1) The antibacterial activity of BRL 28500 was excellent against gram positive cocci and gram nega-tive bacilli especially against 13-lactamase producing Escherichia coli.
2) Nine patients with chronic complicated urinary tract infections were treated with BRL 28500 at daily doses of O. 8 or 1. 6 g i. v. for 5 days, and the therapeutic results were evaluated by the criteria proposed by the UTI Committee, Japan. The overall clinical efficacies of the treatment were found to be excellent in 4 patients (50%), moderate in one patient (13%) and poor in 3 patients (37%). The overall effectiveness rate was thus 63%. None of the patients complained of any drug-related side effect.