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平成 28 年 10 月 25 日 報道機関各位 東北大学大学院工学研究科 熱ふく射スペクトル制御に基づく高効率な太陽熱光起電力発電システムを開発 世界トップレベルの発電効率を達成 概要 東北大学大学院工学研究科の湯上浩雄 ( 機械機能創成専攻教授 ) 清水信 ( 同専攻助教 ) および小桧山朝華

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平成28年10月25日 報道機関 各位 東北大学大学院工学研究科 【概要】 東北大学大学院工学研究科の湯上 浩雄(機械機能創成専攻 教授)、清水 信(同専 攻 助教)および小桧山 朝華(同専攻 博士課程学生)の研究グループは、幅広い波 長の光を含む太陽光を、太陽電池に最適な波長の熱ふく射※1に変換し発電する太陽熱光 起電力発電(Solar-thermophotovoltaic: Solar-TPV)システム※2において世界トップレ ベルの発電効率を達成しました。 本研究では、“熱ふく射のスペクトル制御”と“熱ふく射の一方向への輸送”という概 念に基づいた熱ふく射の変換・輸送効率を新たに提案し、この概念に基づき Solar-TPV システムの全体設計を行いました。これにより、高い熱ふく射変換・輸送効率を得るた めの基盤技術を開発し、5.1%の世界トップレベルの発電効率を達成しました。 この研究成果は、多接合太陽電池とは異なる概念による高効率太陽光発電の実現につ ながるものと期待されます。また、“熱ふく射のスペクトル制御”や“熱ふく射の一方 向への輸送”は Solar-TPV のみならず、未利用エネルギーの有効利用に関連して様々な 分野への適用が可能な概念であると考えられます。 本研究の一部は、科学技術振興機構「先端的低炭素化技術開発(ALCA)」のプロジェクト の一環として実施されました。また、本研究は科研費(No.16H02117)の助成を受けており ます。

なお、本研究成果は、2016 年 10 月 25 日付で、Applied Physics Express に掲載され、 同誌 Spotlights 論文に選出されました。

熱ふく射スペクトル制御に基づく

高効率な太陽熱光起電力発電システムを開発

— 世界トップレベルの発電効率を達成 — 問い合わせ先 東北大学大学院工学研究科 機械機能創成専攻 教授 湯上浩雄 TEL:022-795-6924 E-mail:yugami@tohoku.ac.jp 東北大学大学院工学研究科 情報広報室 TEL/FAX :022-795-5898 E-mail:eng-pr@eng.tohoku.ac.jp

(2)

【背景】 太陽から放射される光(熱ふく射)は、図 1 に示すように幅広い波長分布(=スペクト ル)を持っています。単接合太陽電池は、使用される半導体材料のバンドギャップ※3より 短波長の光しか電気に変換できないため、バンドギャップより長波長の光は電気に変換さ れず損失となります。一方で、太陽電池を複数枚重ね合わせた多接合太陽電池は、吸収で きる波長域を拡げることで幅広い波長分布を持つ太陽光スペクトルを無駄なく電気に変換 することができます。しかしながら、多接合太陽電池は作製が難しく、単接合太陽電池に 比べ生産コストが高いといった課題があります。 Solar-TPV システムの特徴と概要図を図 1 と図 2 にそれぞれ示します。このシステムで は、まず集光太陽光により太陽光選択材料・波長選択エミッタが加熱された後、波長選択 エミッタからの感度波長域に合わせた熱ふく射により光電変換セルが発電を行います。太 陽光をいったん熱に変換することにより、太陽光のもつ光子エネルギー総量を保存したま ま、別波長の光(熱ふく射)へ変換することが特徴です。これにより、安価な単接合太陽 電池を用いても高効率な発電が可能になります。 本研究グループは、Solar-TPV システムにおいて、新たに提案した熱ふく射輸送効率の 概念に基づき、世界トップレベルの発電効率 5.1%を達成しました。 【研究成果概要と本成果の意義】 本研究では、“熱ふく射のスペクトル制御”と“熱ふく射の一方向への輸送”という概念 に基づいた熱ふく射の変換・輸送効率を新たに提案しました。Solar-TPV システムでは、 太陽光が太陽光選択吸収材料においていったん熱に変換された後、波長選択エミッタから の熱ふく射に変換されます。つまり Solar-TPV は光子から光子への波長変換システムであ り、同様に太陽光を熱に変換する従来の集光型太陽熱発電とは異なります。そのため、 Solar-TPV システムでは吸収した太陽光のエネルギーを損失なく波長選択エミッタのみに 輸送すること、つまり、高い熱ふく射の変換・輸送効率を達成することが重要となります。 さらに、高効率な Solar-TPV システムを達成するためには、波長選択エミッタからの熱ふ く射スペクトルが光電変換セルの感度波長域にマッチングしていること、つまり高い光電 変換効率を達成することが重要となります。この 2 つの効率は太陽光選択吸収材料と波長 選択エミッタの光学設計と幾何学設計により高めることが可能です。理想的には、太陽光 選択吸収材料は太陽光スペクトルの強度が強い短波長域で高い吸収率を持ち、長波長域で は低い放射率(吸収率)を持つことが求められます。これにより、放射損失が小さく高い 熱輸送効率が期待できます。一方で、波長選択エミッタは光電変換セルの感度波長域にお いて高い放射率を持ち、それ以外の波長域では低い放射率を持つことが求められます。こ れにより高い光電変換効率が期待できます。 図 3(a)(b)にそれぞれ本研究で設計・作製した太陽光選択吸収材料と波長選択エミッタ の光学特性を示します。新たに提案した熱ふく射の変換・輸送効率に基づき、光学設計 と幾何学設計を行いました。作製した太陽光選択吸収材料と波長選択エミッタでは、よ り高い熱ふく射の変換・輸送効率を得るため面積比を持たせ、太陽光選択吸収材料から の反射・放射損失を抑制しました。その結果、熱ふく射輸送効率 54%、光電変換効率 28% が期待できる太陽光選択吸収材料と波長選択エミッタの設計と作製に成功しました。作 製した太陽光選択吸収材料、波長選択エミッタ、ガリウムアンチモン光電変換セルを用 いた発電試験において、世界トップレベルの発電効率 5.1%を達成しました。 本研究は“熱ふく射のスペクトル制御”と“熱ふく射の一方向への輸送”の概念に基づ いた高い熱ふく射の変換・輸送効率が高効率な Solar-TPV システムに寄与することを明ら かにするとともに、世界トップレベルの発電効率 5.1%を達成しました。熱ふく射の変換・ 輸送効率をさらに向上させることで、Solar-TPV システムのさらなる高効率化が期待でき

(3)

ます。また、“熱ふく射のスペクトル制御”や“熱ふく射の一方向への輸送”は Solar-TPV のみならず、未利用エネルギーの有効利用に関連して様々な分野への適用が可能な概念で あると考えられます。

【論文情報】 [DOI]

Asaka Kohiyama, Makoto Shimizu, Hiroo Yugami

“Unidirectional radiative heat transfer with a spectrally selective planar absorber/emitter for high-efficiency solar thermophotovoltaic systems”

Applied Physics Express, DOI:10.7567/APEX.9.112302. 【謝辞】 本研究の一部は、科学技術振興機構「先端的低炭素化技術開発(ALCA)」の支援を受けて 行われました。また、本研究は科研費(No.16H02117)の助成を受けております。 【用語説明】 ※1 熱ふく射 高温物体から放射される光のこと。熱ふく射の強度は物体の温度の 4 乗に比例して強 くなる。また、温度上昇とともに熱ふく射のピークは短波長側に移動する。太陽光強度 のピークは約 500 ナノメートルにあり、これは約 6000Kの黒体からの熱ふく射に相当す る。各波長の熱ふく射の強度は、その波長における物質の放射率にも依存することから、 放射率を制御することで、高温物体からの熱ふく射スペクトルを制御できる。 ※2 太陽熱光起電力発電(Solar-thermophotovoltaic: Solar-TPV)システム 太陽光スペクトルを太陽光選択吸収材料で受光して熱に変換して波長選択エミッタか ら太陽電池の最適な波長の光(ふく射)に変換して発電するシステム。太陽光を効率よ く波長変換することで、最大 40%程度の効率が期待できる。 ※3 バンドギャップ 結晶のバンド構造において電子が存在できないエネルギー領域。物質固有のものであ り、絶縁体や半導体において、バンドギャップエネルギー以下のエネルギーを有する光 は吸収しない。太陽電池ではバンドギャップ以上のエネルギーをもつ光子が入射するこ とで電力を発生するが、変換効率はバンドギャップ近傍の波長帯で最も高くなる。多接 合型太陽電池では、バンドギャップの異なる太陽電池を積層することで、太陽光スぺク トル全体を利用できるようにして高効率化を行う。

(4)

図 1 多接合太陽電池と Solar-TPV システムの特徴 図 2 Solar-TPV システムの概要図

太陽光

スペクトル

GaSb光電変換セルの

外部量子効率

感度波長域に合わせた

熱ふく射

波長変換

近赤外域

可視~近赤外域

紫外~可視域

多接合型太陽電池

バンドギャップの異なる

太陽電池を重ね合わせて

高効率化

太陽熱光起電力発電(Solar-TPV)

太陽光スペクトルを

太陽電池の最適な波長に変換して

高効率化

波長

近赤外域

感度波長域に合わせた

熱ふく射

電力

太陽からの

熱ふく射

太陽 太陽光 選択吸収材料 波長選択エミッタ 光電変換セル

(5)

図 3 試験に用いた(a)太陽光選択吸収材料と(b)波長選択エミッタの光学特性。図中の写 真は耐熱金属基板(直径 9mm)の両面に作製した太陽光選択吸収材料(直径 6mm)と波長選 択エミッタ(直径 9mm)である。 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 GaSb光電変換セルの 外部量子効率

放射率

波長(

m)

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

光電変換セルの外部量子効率

0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

吸収率

波長(

m)

太陽光 スペクトル 0 500 1000 1500 放射強度 (W/m 2 / m)

(a)

(b)

図 1  多接合太陽電池と Solar-TPV システムの特徴    図 2  Solar-TPV システムの概要図 太陽光スペクトル GaSb光電変換セルの外部量子効率 感度波長域に合わせた波長変換熱ふく射近赤外域可視~近赤外域紫外~可視域多接合型太陽電池バンドギャップの異なる太陽電池を重ね合わせて高効率化 太陽熱光起電力発電(Solar-TPV)太陽光スペクトルを太陽電池の最適な波長に変換して高効率化波長近赤外域感度波長域に合わせた熱ふく射太陽からの電力熱ふく射太陽太陽光選択吸収材料波長選択エミッタ光電
図 3  試験に用いた(a)太陽光選択吸収材料と(b)波長選択エミッタの光学特性。図中の写 真は耐熱金属基板(直径 9mm)の両面に作製した太陽光選択吸収材料(直径 6mm)と波長選 択エミッタ(直径 9mm)である。 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.00.00.20.40.60.81.0GaSb光電変換セルの外部量子効率 放射率波長(m) 0.00.20.40.60.81.0 光電変換セルの外部量子効率0.51.01.52.02.53.00.00.20.40.60.81.0吸収率波長(m)

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