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プロジェクト型学習の実践と効果

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要旨  本稿の目的は,①プロジェクト型学習にはどのような効果があるのか,②プロジェクト型学習を通じて, 学生たちは「主体的な学び」,「対話的な学び」,「深い学び」が実践できたのか,二つの事例から検証するこ とである。検証の結果,筆者が運営したプロジェクト型学習では,教育,研究,社会貢献と相乗効果があり, プロジェクト型学習を通じて,学生たちは「主体的な学び」と「対話的な学び」を実践できたと結論付ける。 また,プロジェクト型学習を通じて,学生たちが「深い学び」を実践するためには,経験学習サイクル論 (コルブ 1984)をプロジェクト型学習に適応させた上で運営すべきであると強調する。 キーワード:プロジェクト型学習,能動的学修,協同学習,経験学習,地域産業振興

Ⅰ.研究課題

1.問題の所在  文部科学省中央教育審議会大学教育部会(2012a) では「高校までの勉強から大学教育の本質である主体 的な学修へと知的に跳躍すべく,学生同士が切磋琢磨 し,刺激を受け合いながら知的に成長することができ るよう,課題解決型の能動的学修(active learning) といった学生の思考や表現を引き出しその知性を鍛え る双方向の授業を中心とした質の高いものへと学士課 程教育の質を転換する必要がある」(4 頁)と結んで いる。さらに文部科学省中央教育審議会大学教育部会 (2012b)では「大学教育の質的転換を実践していく には,学生の主体的な学修を支えるための教育方法の 転換と教員の教育能力の涵養が必要であるが,それに は研究能力の一層の向上が求められる。……研究の成 果に基づき,自らの知識を統合して教育に当たること には大きな意義がある。教育と研究との相乗効果が発 揮される教育内容・方法を追求することが,一層重要 である」(8 頁)と締めくくられている。 2.研究の目的と意義  課題解決型能動的学習の一つ、プロジェクト型学習 にはどのような効果があるのか。プロジェクト型学習 を通じて,学生たちが「主体的な学び」,「対話的な学 び」,「深い学び」を実践できたのか1)。筆者が運営し た二つのプロジェクト型学習の事例から検証すること が,本稿の目的である。  プロジェクト型学習は,教育,研究,社会と相乗効 果があるかどうかを検証することは,経済教育研究に 対する本稿の学術的な貢献であると考えている2)。ま た,プロジェクト型学習を通じて,学生たちは「主体 的な学び」,「対話的な学び」,「深い学び」が実践でき たかどうかを検証することは,文部科学省中央教育審 議会大学教育部会(2012b)が示す教育内容・方法の 追求にもつながる。

Ⅱ.先行研究の整理

1.課題解決型の能動的学修に関する先行研究  課題解決型の能動的学修には,問題基盤型学習

Note

The Journal of

Economic Education No.36, September, 2017

研究ノート

プロジェクト型学習の実践と効果

-地域産業振興に向けた協同学習-

Implementation and Effects of Project-Based Learning: Cooperative Learning towards Regional Industries Promotion

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(Problem-Based Learning)とプロジェクト型学習 (Project-Based Learning)の二つがある。問題基盤 型学習は医学教育,プロジェクト型学習は工学教育で, それぞれ発展してきた教育方法である。湯浅・大島・ 大島(2011)は「プロジェクト型学習では,プロジェ クトの成果物が学習目標の大きな割合を占めるため, 知識の適用により主眼が置かれるのに対し,問題基盤 型学習では,学習サイクルのプロセスに大きな比重が 置かれるため,新しい知識の獲得により主眼がおかれ る 」(19 頁 ) と 指 摘 し て い る。 そ の 上 で 湯 浅 ら (2011)は「問題解決型学習では学習プロセスが明確 に定義され,活動デザインに反映されているのに対し, プロジェクト型学習ではそれが個別の実践に委ねられ ている」(15 頁)とまとめている。  なお日本国内ではプロジェクト型学習の実践方法と し て, 駒 谷(2011) が PDCA サ イ ク ル (plan-do-check-act cycle) に「start( 新 規 立 ち 上 げ)」を加えた,S-PDCA サイクルを実践している。 2.能動的学修(active learning)に関する先行 研究  本稿では,協同学習論(ジョンソン兄弟&ホルベッ ク 1984)と経験学習サイクル論(コルブ 1984)を能 動的学修の源流と捉えている。なお日本国内では,課 題文を仲間と協力して深く読み解く協同学習の学習法 「 話 し 合 い 学 習 法(Learning through Discussion)」 (安永 1995;1999;2006)が議論されている。  ジョンソン兄弟ら(1984)は,協同的な学びの条件 を検討した上で,①肯定的な対人関係,②社会的能力, ③達成への努力を養うための「協同学習(coopera-tive learning)」を理論化している3)。ジョンソン兄弟 ら(1984)は「協同学習の典型的なグループ規模は 2 ~4人である」(邦訳34頁)とし,「すべての生徒が積 極的に活動でき,また誰もが等しく参加できるように するためには,小規模であることが必要である」(邦 訳 35 頁)と述べている。  他方,コルブ(1984)は,体系化・汎用化された知 識を受動的に習い覚える知識付与型の学習と経験学習 を区別して,図 1 のように「経験」,「振り返り」,「概 念化」,「実践」の四段階から成る経験学習サイクル論 を唱えている。コルブは「具体的な経験(Concrete Experiences)」 か ら, よ り 深 く 学 ぶ に は 経 験 を, 「じっくり振り返ること(Reflective Observation)」 が重要だとしている(Kolb, 1984, pp.23-26)。その上 でコルブは,振り返ったあとでその経験を次の経験に 生かすべく,「概念化すること(Abstract Conceptual-ization)」 も 重 要 だ と 述 べ て い る(Kolb, 1984 pp.23-26)。「経験」と「概念化」から得られた新しい 考えや方法に基づいて「実践すれば(Active Experi-mentation)」,今までとは異なる「経験」を積むこと に な り, 経 験 学 習 は よ り 良 い 形 で 循 環 し て い く (Kolb, 1984, pp.23-26)というのがコルブの経験学習 サイクル論である。 実践 Testing implication of concept in new situations 経験 Concrete experience 振り返り Observation and reflections 概念化 Formation of abstract concepts 図 1 経験学習サイクル論 出所:Kolb, D. A. (1984, p.21), Figure 2-1. 3.本稿の着目点,およびプロジェクト型学習 の運営フレームワーク  湯浅ら(2011)が指摘した,プロジェクト型学習は 知識の適用に主眼を置くという点が,経験学習サイク ル論(コルブ 1984)に適合すると本稿では考え,プ ロジェクト型学習に着目する。また,湯浅ら(2011) が整理した,プロジェクト型学習が成果物を重視する 点と,プロジェクトの設計と過程が個別の実践に委ね られる点で,ジョンソン兄弟ら(1984)が指摘する, 協同学習の三つの利点(①肯定的な対人関係,②社会 的能力,③達成への努力)が養われると予測して,プ ロジェクト型学習を支持する4)  グループワーク(group work)やグループディス カッション(group discussion)を行う際は,ジョン ソン兄弟ら(1984)の典型的グループ規模に基づき, 学生 2 人と社会人 1 人の 3 人一組とした。  プロジェクト型学習が経済教育へより良く適応する ように,経験学習サイクル論(コルブ 1984)を土台 として,「実践」と「経験」の間に,先行研究と対話 する時間を設けた5)。具体的には図 2 に示された通り, 「経験」,「振り返り・概念化(前)」,「実践」,「振り返 り・概念化(後)」の流れでプロジェクト型学習を運

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営した。 振り返り・概念化 (後) 経験 実践 振り返り・概念化 (前) 図 2  プロジェクト型学習に適用させた経験学習サイ クル論 出所: 経験学習サイクル論(Kolb, 1984, p.21, Figure 2-1)を 基に筆者作成。  本稿では,経験学習サイクル論(コルブ 1984)を プロジェクト型学習へ適用するにあたって,表 1 に示 された通り,全体としては内省日誌交換法,①「経 験」にはトランプ式討論,ブレインストーミング,親 和図法,②「振り返り・概念化(前)」にはジグソー 法,ピア・インストラクション,映像活用学習,③ 「実践」にはブレインストーミング,親和図法,クリ エイティブ・セッション,④「振り返り・概念化 (後)」にはジグソー法,ライティング・ディスカッ ション,クリエイティブ・セッションの能動的学修を それぞれ取り入れた6)

Ⅲ.研究とプロジェクト型学習の相乗効果

 筆者は,筆者の研究課題「縮小傾向の地場産業であ るもかかわらず,なぜ多数の小企業が集積するのか」 (竹田 2016)について,東京城東地域の「袋物」地場 産業(ハンドバッグと小物入れ)に着目し,アンケー ト調査による記述統計分析から「縮小傾向にある地場 産業であったとしても,新規参入者の事業展開に必要 な地域特有の産業風土と,『特定の地域をもっと良く したい』という思いを心底に抱く地域主義の概念が該 当地域に醸成されていれば地域産業振興の要因と成り 得る」(p.72)という考えに至った(以下では,「地域 特有の産業風土と地域貢献」(竹田 2016)と省略して いる)。  筆者が目指す教員活動「教育,研究,社会貢献の往 還」は,地域産業振興の要件を探り出すことにある。 プロジェクト型学習の運営および最終目標決定にあ たっては,研究上の着目点「地域特有の産業風土と地 域貢献」(竹田 2016)を反映させた。

Ⅳ.プロジェクト型学習と教育,社会貢献

の相乗効果 ①:経験学習サイクル論適用の

場合

1.プロジェクト型学習(産学協同)概要  研究上の着目点「地域特有の産業風土と地域貢献」 (竹田 2016)を取り入れて,最終目標を「愛媛県南予 地方(大洲市,八幡浜市,宇和島市,西予市,内子町, 伊方町,鬼北町,松野町,愛南町)の地場産業と観光 産業の振興」とし,産学協同(三原産業株式会社,デ キル株式会社,松山短期大学)のプロジェクト型学習 を運営した7)。このプロジェクト型学習では,三原産 業株式会社(愛媛県宇和島市)従業員 1 人と松山短期 大学(愛媛県松山市)短大生2人の混合六チーム18人 によって,「宇和島闘牛」,「食文化(南予鯛めし)」, 「里山生活」などの地域文化と,「魚肉練加工(じゃこ 天,かまぼこ)」,「水産加工(阿古屋貝,真珠)」,「海 面養殖(真鯛,平目,ブリ)」などに関する産業風土 が再発見され,愛媛県南予地方の特産品「じゃこ天」 表 1 経験学習サイクル論適用プロジェクト型学習と能動的学修各技法の組み合わせ 経験 振り返り・概念化(前) 実践 振り返り・概念化(後) 能動的学修(Active Learning)の技法 内省日誌交換法 トランプ式討論 ジグソー法 ブレインストーミング ジグソー法 ブレインストーミング ピア・インストラクシ ョン 親和図法 ライティング・ディスカッション 親和図法 映像活用学習 クリエイティブ・セッション 出所:ジョンソン兄弟ら(1984),コルブ(1984),中井(2015)を基に筆者作成。

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を自宅で調理する調理キットや,愛媛県南予地方の名 所を双六形式で体感しながら巡るスマホ・アプリなど に関する新規事業六案が創り出された8)。このプロ ジェクト型学習(産学協同)は,筆者の研究成果を教 育や社会貢献に結び付けたものである。 2.プロジェクト型学習(産学協同)の効果: 経験学習サイクル論適用の場合  プロジェクト型学習(産学協同)の参加学生は松山 短期大学 1 ~ 2 次年生から公募で募り,応募者 21 人に 対して,筆者が面接試験と筆記試験を実施した上で, 1 年次生 12 人に絞った。このプロジェクト型学習(産 学協同)は,経験学習サイクル論(コルブ 1984)を 土台に「経験」,「振り返り・概念化(前)」,「実践」, 「振り返り・概念化(後)」の 4 回 1 サイクルを七周し た(1 回 2.5 時間,合計 28 回 70 時間)。経験学習サイ クル論をプロジェクト型学習に適用した結果,プロ ジェクト型学習受講生の大学編入学率に効果が表れて いる。短大生の多くは,入学当初,松山大学への編入 学を望んでいる。しかしながら,図 3 に示された通り, プロジェクト型学習受講生と同学年全体(松山短期大 学 2016 年度卒業生)の編入学率は全体の 37%にすぎ ない。 大学編入学 37% 就職 34% 専門学校 5% 未定 24% 図 3  松 山 短 期 大 学 2016 年 度 卒 業 生 の 進 路 (N=83) 出所: 松山短期大学公式 web ページ(2017 年 6 月 1 日現在)。 https://www.matsuyama-u.ac.jp/juniorcollege/gradu ate/graduate-syusyoku/  他方,図 4 に示したように,プロジェクト型学習受 講生の大学編入率は,75%と高い。大学編入学に対す る意志の強い短大生たちがプロジェクト型学習を受講 したという偏りは捨てきれないものの,短大生間,短 大生と社会人の協同学習を通じて,短大生たちが「主 体的な学び」,「対話的な学び」,「深い学び」を実践で きた結果であると筆者は考えている。 大学編入学 75% 専門学校 8% 未定 17% 図 4 プロジェクト型学習受講生の進路(N=12) 出所: 筆者による聞き取り結果から作成(2017 年 3 月 11 日現 在)。

Ⅴ.プロジェクト型学習と教育,社会貢献

の相乗効果 ②:経験学習サイクル論未

適用の場合

1.プロジェクト型学習(官学協同)概要  前述のプロジェクト型学習(産学協同)と同じく研 究上の着目点「地域特有の産業風土と地域貢献」(竹 田 2016)を取り入れて,最終目標は「愛媛県の地域 産業振興」とし,官学協同(愛媛県庁,えひめ産業振 興財団,松山大学)によるプロジェクト型学習「2016 年度えひめベンチャー起業塾」を運営した。松山大学 (愛媛県松山市)大学生15人と愛媛県内社会人10人の 混合九チーム 25 人が,新規事業の開発と事業計画書 (Business Plan)作成に取り組み,高齢者施設入居者 に対する愛媛県特産品贈答支援サービスや,県外サイ クリストに対する県内稀有情報提供サービスなどの新 規事業九案が創り出された9)。このプロジェクト型学 習(官学協同)も前述のプロジェクト型学習(産学協 同)と同じく筆者の研究が社会貢献へ発展したもので ある。しかしながら,「実用」を重視するあまり,教 育(学術的知識)へは帰結できなかった。 2.プロジェクト型学習(官学協同)の失敗: 経験学習サイクル論未適用の場合  図 5 は実施回以外に費やした 1 週間あたりの時間を 集計したものである。大学生の場合,実施回以外に費 やした 1 週間あたりの平均時間は 7.0 時間(中央値 8.7 時間)であった。  プロジェクト型学習(官学協同)は,1 回 3 時間を 合計15回45時間実施したが,「実用」を重視するあま り,II 章 3 節・図 2 で適用した経験学習サイクル論と, II 章 3 節・表 1 で組み合わせた能動的学修各技法を用 いないまま進めた。その結果,図 6 に示されたように, プロジェクト型学習を通じて学術的知識が身に付いた

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かどうか(図中「大学生習得」)は,大学生 15 人のう ち,33%(5 人)が「身に付いた」,67%(10 人)が 「やや身に付いた」と答えている。それにもかかわら ず,プロジェクト型学習で身に付いた学術的知識を 使って現実社会の課題に対応できるかどうか(図中 「大学生自信」)は,大学生 15 人のうち,「自信あり」0 人(0%),「やや自信あり」5 人(33%),「あまり自信 がない」7 人(47%),「自信がない」3 人(20%)で あった11)  実施回以外に費やした 1 週間あたりの時間が平均 7.0 時間もあったにもかかわらず,「プロジェクト型学 習で身に付いた学術的知識を使って現実社会の課題に 対応できる自信がない,やや自信がない」と答えた大 学生が多い(67%,15 人中 10 人)原因は,プロジェ クト型学習の学習目標である成果物作成のための作業 時間に費やされたからである。つまり,経験学習サイ クル論をプロジェクト型学習に適用しなかった場合, 大学生たちは,経験を学術的知識に帰結できなかった し,「主体的な学び」と「対話的な学び」を実践でき たが,「深い学び」には至らなかった。

Ⅵ.考察

 プロジェクト型学習に経験学習サイクル論(コルブ 1984)を①適用した場合と,②適用しなかった場合の 二つの事例を比較した結果,プロジェクト型学習を運 営するにあたっては,「協同学習の典型的なグループ 規模 2 ~ 4 人」(ジョンソン兄弟ら 1984)で,「経験学 習サイクル論」(コルブ 1984)をプロジェクト型学習 に適用させて,能動的学修の各技法(中井 2015)を 組み合わせることが効果的であったと纏める。  III 章で触れたように,筆者が目指す教員活動「教 育,研究,社会貢献の往還」は地域産業振興の用件を 探し出すことである。V 章でも取り上げた通り,たと えプロジェクト型学習(官学協同)を通じて「深い学 び」が得られなかったとしても,受講を終えた社会人 たちと大学生たちが「特定の地域をもっと良くした い」と思うに至れば,地域産業振興につながると考え, プロジェクト型学習を通じて地域産業振興の種がまか れたかどうかを検討する。  プロジェクト型学習を通じて「愛媛や地元をもっと 良くしたい」と思ったかについては,図 7 に示された 通り,社会人 10 人のうち 90%(9 人)が「思った」, 10%(1人)が「多少思った」,大学生15人のうち67% (10 人)が「思った」,33%(5 人)が「多少思った」 と答えている。  図 8 は社会人と大学生の起業意欲の増減を表したも のである12)。社会人の場合,プロジェクト型学習受講 後の起業意欲は,+ 2 が 5 人,+ 1 と+ 3 がそれぞれ 2 人,± 0 が 1 人であった。整理するとプロジェクト 型学習受講後,社会人の起業意欲は,10 人中 7 人 (70%)が二段階以上上昇していた。  他方,大学生の場合,プロジェクト型学習受講後の 起業意欲は,+ 2 が 6 人,+ 3 が 5 人,+ 4 が 2 人,+ 1 と± 0 がそれぞれ 1 人であった。整理するとプロ ジェクト型学習受講後,大学生の起業意欲は,15 人 中 13 人(87%)が二段階以上上昇していた。  プロジェクト型学習(官学協同)では,大学生たち と社会人たちは「深い学び」を実践できなかったが, その一方でプロジェクト型学習を通じて,大学生たち と社会人たちには「愛媛や地元をもっと良くしたい」 という地域貢献の精神が養われていて,起業意欲が二 段階以上上昇した大学生と社会人の合計は総数 25 人 のうちの 80%(20 人)を占めているので,地域産業振 興の種はまかれたと考えられる。 図 5  実施回以外に費やした 1 週間あたりの時間 (N=15) 出所:筆者が実施したアンケート調査の結果から筆者作成)。 図 6  学術的知識の習得,ならびに現実対応の自信 〔 あ り・ や や あ り・ あ ま り な し・ な し 〕 (N=15) 出所:筆者が実施したアンケート調査の結果から筆者作成。 5 5 2 1 2 6 4 2 0 時間 大学生 人 1~3 3~6 6~9 9~12 12~1515~1818~21 21~2424~27 人 0 5 10 15 20 あり 5 ややあり10 あまりなし0 なし0 あり 0 ややあり5 あまりなし7 なし3 大学生習得 大学生自信

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Ⅶ.結論

 本稿の目的は,①プロジェクト型学習にはどのよう な効果があるのか,②プロジェクト型学習を通じて, 学生たちは「主体的な学び」,「対話的な学び」,「深い 学び」が実践できたのか,二つのプロジェクト型学習 の事例から検証することであった。  プロジェクト型学習(産学協同)では「愛媛県南予 地方の地場産業と観光産業の振興」に関する新規事業 六案,プロジェクト型学習(官学協同)では「愛媛県 の地域産業振興」に関する新規事業九案が創り出され た。筆者が運営した二つのプロジェクト型学習では, 筆者の研究上の着目点「地域特有の産業風土と地域貢 献」(竹田 2016)からプロジェクト学習の最終目標を 決定したので,研究とプロジェクト型学習には,つな がりや発展性があった。  また,経験学習サイクル論(コルブ 1984)をプロ ジェクト型学習に適用した場合,短大生たちは「主体 的な学び」,「対話的な学び」,「深い学び」を実践して いた。その一方で,経験学習サイクル論をプロジェク ト型学習に適用しなかった場合,大学生たちは「主体 的な学び」と「対話的な学び」を実践していたが, 「深い学び」には至らなかった。それでもプロジェク ト型学習には,学生たちが「主体的な学び」,「対話的 な学び」,「深い学び」を実践できる教育の効果もある といえよう。  二つの事例のうちの一つしか検証はできていないが, プロジェクト型学習受講後,社会人たちと大学生たち の「地域貢献の精神」は強まっていたし,プロジェク ト型学習自体も地域産業振興について社会人たちと大 学生たちが協同で解決案を考える機会と場になったの で,プロジェクト型学習は社会貢献の効果もあった。  以上のことから,筆者が運営したプロジェクト型学 習では,教育,研究,社会貢献と相乗効果があり,プ ロジェクト型学習を通じて,学生たちは「主体的な学 び」と「対話的な学び」を実践できたと結論付ける。 なお,プロジェクト型学習を通じて,学生たちが「深 い学び」を実践するためには,経験学習サイクル論 (コルブ 1984)をプロジェクト型学習に適応させた上 で運営すべきであると強調する。 付記  本稿は,松山大学 2016 年度特別研究助成による成 果の一部である。 註 1) 文部科学省中央教育審議会教育課程部会 高等学校部会 (2016)では、①「主体的な学び」、②「対話的な学び」、 ③「深い学び」の三者を、いかに組みあわせて学生たち へ提供するかが検討され始めている。以下、同書 4 頁に よる。  ・ 学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成 の方向性と関連づけながら、見通しを持って粘り強 く取組み、自らの学習活動を振り返って次につなげ る「主体的な学び」が実現できているか。  ・ 子供同士の協働、教員や地域の人との対話、先哲の 考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自らの考 えを広げ深める「対話的な学び」が実現できている か。  ・ 習得・活用・探究の見通しの中で、教科等の特質に 応じて育まれる見方・考え方を働かせて思考・判 断・表現し、学習内容の深い理解や資質・能力の育 成、学習への動機付け等につなげる「深い学び」が 実現できているか。 2) 大学教員には、自分らの教育、研究、社会貢献の質につ いて、確かな根拠を提示し、説明責任を追う必要が生じ ている。単に何を達成したかではなく、業績を達成した スキル、能力、姿勢、理念も重視されるようになってい る。近年ではセルデン&ミラー(2008)によって、教育、 研究、社会貢献に関する成果、質、意義を示す文章と資 料をまとめたアカデミック・ポートフォリオ作成が求め られている。 3) ジョンソン兄弟ら(1984)によれば、「互いに協力して学 図 7  プロジェクト型学習を通じて,愛媛や地元を もっと良くしたいと〔思った・多少思った・ あ ま り 思 わ な か っ た・ 思 わ な か っ た 〕 (N=25) 出所:筆者が実施したアンケート調査の結果から筆者作成。 図 8  プロジェクト型学習(官学協同)受講後の起 業意欲増減(N=25) 出所:筆者が実施したアンケート調査の結果から筆者作成。 人 0 5 10 15 20 思った 10 多少思った5 思った 9 多少思った1 大学生 社会人 0 1 2 3 4 5 6 0 5 10 人 起業意欲の増減 社会人 大学生 1 1 12 5 6 5 2 2

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び合うとともに、その意義に気づき、他者と協力する技 能を磨き価値観を内面化する教育活動」(邦訳 224 頁)が 協同学習である。 4) 「経済学の知識や理論は、地域貢献を目指したプロジェク ト型学習においても有用性・有効性を十分に有しており、 他の学問分野では提出できない分析力を発揮できると考 えている」(福留 2016、53 頁)という報告もある。 5) 『イノベーションと企業家精神』(ドラッカー、2015 年、 ダイヤモンド社、エッセンシャル版)と『先生、イノ ベーションって何ですか?』(伊丹敬之、2015 年、PHP 研究所)を用い、各回 2.5 時間かけて学術的理論を振り返 ることで、「実践」から「経験」の受け渡しが円滑に進ん だ。 6) 以下の、能動的学習の各技法については、中井(2015) による。  ・ 内省日誌交換法(reflective journal)とは「授業後、 授業時にグループで行った対話について、自己の体 験と関連させて振り返りを書かせる技法」(中井 2015、 167 頁)である。  ・ トランプ式討論とは「自分の意見をカードに書き、 それをトランプカードのように扱って議論を進める 技法」(中井 2015、163 頁)である。  ・ ブレインストーミング(brainstorming)とは「多様 な意見やアイデアを出させる技法」(中井 2015、164 頁)である。  ・ 親和図法(affinity diagram)とは「出された意見を 整理する技法であり、ブレインストーミングとセッ トで用いられることが多い」(中井 2015、164 頁)。  ・ ジグソー法(jigsaw)とは「メンバーごとに担当を決 めて教え合う技法」(中井 2015、170 頁)である。  ・ ピア・インストラクション(peer instruction)とは 「教員が提示した課題について、学生同士で解答を考 えさせる技法」(中井 2015、168 頁)である。  ・ 映像学習法とは「ドキュメンタリーなど映像を活用 して議論やグループ研究する技法」(中井 2015、172 頁)である。  ・ クリエイティブ・セッション(peer instruction)と は「学習した内容を、歌、絵、模型、図解、紙芝居 などにして発表する技法」(中井 2015、168 頁)であ る。  ・ ライティング・ディスカッション(writing discus-sion)とは「紙をベースにして議論を展開していく技 法」(中井 2015、163 頁)である。 7) デキル株式会社(東京都世田谷区)が開発した「イノ ベーションカードⓇ」(トランプ式討論、ブレインストー ミング、親和図法を一体化したもの)を「経験」で使用 した。 8) 愛媛新聞社(2016)「南予売出しへ事業案」『愛媛新聞』 2016 年 3 月 26 日朝刊 7 面も参照されたい。 9) 愛媛新聞社(2017)「起業塾 25 人羽ばたく」『愛媛新聞』 2017 年 2 月 9 日朝刊 6 面も参照されたい。 10) アンケート調査の設計は次の通りである。調査日:2017 年 2 月 7 日。調査対象:プロジェクト型学習(官学協同) を受講した大学生 15 人と社会人 10 人。回収数:25 人。 回収率:100%。 11) 現実社会に対応できる自信があるかどうかを問うている のは、Biggus & Tang (2007). の「深い学び」に対する 学習活動の動詞(p.27, Figure 2.1)の上位二番目「Apply: far problems(離れた問題に適用する)」に基づくもので ある。 12) 起業意欲は、下記の七段階に定めた。  起業意欲 1:起業や社内事業立ち上げの意思がない。  起業意欲 2: 起業や社内事業立ち上げの意思はあるが、 アイデアはない。  起業意欲 3: ニーズは思い描けているが、アイデアが定 まっていない。  起業意欲 4: ニーズとアイデアは定まっているが、需要 があるかはわからない。  起業意欲 5: ニーズとアイデアも定まり、需要の大きさ も調べがついている。  起業意欲 6: ビジネスモデル(儲ける仕組み)と将来像 が差別化できている。  起業意欲 7: ビジネスモデルと将来像の差別化が終わっ て、事業計画書も仕上がっている。 参考文献 [1] 伊丹敬之(2015)『先生、イノベーションって何ですか?』 PHP 研究所、254 頁。 [2] 愛媛新聞社(2016)「南予売出しへ事業案」『愛媛新聞』 2016 年 3 月 26 日朝刊 7 面。 [3] 愛媛新聞社(2017)「起業塾 25 人羽ばたく」『愛媛新聞』 2017 年 2 月 9 日朝刊 6 面。

[4] 駒谷昇一(2011)「PBL(Project Based Learning)型授 業実施におけるノウハウ集」先導的 IT スペシャリスト育 成推進プログラム、73 頁。 http://grace-center.jp/wp-content/uploads/2012/05/ pblknowhow20110726.pdf [5] 竹田英司(2016)「地場産業の集積メカニズム:東京城東 地域の袋物工房ショップを事例として」『地域経済学研究』 32、60-75 頁。 [6] 中井俊樹(2015)『アクティブ・ラーニング:シリーズ大 学の教授法 3』玉川大学出版部、228 頁。 [7] 福留和彦(2016)「プロジェクト型学習と経済学教育」 『奈良学園大学紀要』4、49-59 頁。 [8] 文部科学省中央教育審議会教育課程部会 高等学校部会 (2016)「第 5 回配付資料 1:学習指導要領改訂の方向性 (案)」10 頁。 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chuk y o 3 / 0 7 5 / s i r y o / _ _ i c s F i l e s / a f i e l d -file/2016/07/07/1373892_1.pdf [9] 文部科学省中央教育審議会大学教育部会(2012a)「第 11 回配付資料 4:大学分科会の審議状況について」11 頁。 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/ gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2012/03/22/1318900_6.pdf [10] 文部科学省中央教育審議会大学教育部会(2012b)「第 21 回配付資料 1:未来を創出する大学教育の構築に向けて (答申案):生涯学び続け、主体的に考える力を育成する 大学へ」33 頁。 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/ siryo/__icsFiles/afieldfile/2012/08/14/1324511_1.pdf [11] 安永悟(1995)「LTD 話し合い学習法の導入:参加者の評 価と指導上の注意点」『久留米大学文学部紀要(人間科学 科編)』12-13、43-57 頁。 [12] 安永悟(1999)「LTD 話し合い学習法の大学教育への適 用」『久留米大学文学部紀要』15、45-47 頁。 [13] 安永悟(2006)『実践・LTD 話し合い学習法』ナカニシ出 版、156 頁。 [14] 湯浅且敏・大島純・大島律子(2011)「PBL デザインの特 徴とその効果の検証」『静岡大学情報学研究』16、15-22 頁。 [15] Biggs, J., & Tang, C. (2007). Teaching for Quality learn︲

ing at University, Third Edition, London: SRHE and Open University Press, 335p.

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[16] Drucker, P. F. (1985). Innovation and Entrepreneurship: Practice and Principles, New York: Harper and Row, 277p(ドラッカー〔上田惇生訳〕(2015)『イノベーショ ンと企業家精神』ダイヤモンド社、エッセンシャル版、 272 頁).

[17] Kolb, D. A. (1984). Experiential Learning: Experience as Source of Learning and Development, New Jersey: FT Press, 288p.

[18] Johnson, D. W., Johnson, R. T., Holubec, E. J. & Roy, P. (1984). CIRCLES OF LEARNING: Cooperation in the

classroom, Alexandria: Assn for Supervision and Curricu-lum, 88p(ジョンソン、ジョンソン、ホルベック〔石田裕 久・梅原巳代子訳〕(2010)『学習の輪:学び合いの協同 教育入門』第 5 版邦訳、二瓶社、230 頁).

[19] Seldin, P. and Miller, E, D. (2008). The Academic Portfo︲ lio: A Practical Guide to Documenting Teaching, Re︲ search, and Service, San Francisco: Jossey-Bass, 384p(セ ルデン&ミラー〔栗田佳代子訳〕(2009)『アカデミック・ ポートフォリオ』玉川大学出版部、364 頁).

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参照

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