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動的バランス評価指標modified index of postural stability(MIPS)の再現性と有用性について

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(1)理学療法学 第 44 巻第 2 号 131 ∼ 137 頁(2017 MIPS 年) の再現性と有効性を明らかにする. 131. 研究論文(原著). 動的バランス評価指標 modified index of postural stability(MIPS) の再現性と有用性について* 岩 渕 慎 也 1)# 鈴 木 康 裕 1) 加 藤 秀 典 1) 田 邉 裕 基 1) 遠 藤 悠 介 2) 石 川 公 久 1) 羽 田 康 司 3). 要旨 【 目 的 】 姿 勢 安 定 度 評 価 指 標(index of postural stability: 以 下,IPS) , 修 正 IPS(modified index of postural stability:以下,MIPS)を測定し,MIPS,MIPS/IPS の再現性,MIPS の有用性を検討すること。 【方法】若年健常者 80 名を対象に MIPS,MIPS/IPS の再現性を系統誤差,偶然誤差より検討した。MIPS の有用性は Shapiro-Wilk 検定にて閉眼片脚立位検査との比較を行った。【結果】再現性について MIPS, MIPS/IPS は加算誤差を認めた。MIPS,MIPS/IPS の ICC (1.1)は 0.725,0.616 であった。また,有用性 について MIPS は p = 0.859 であり,有意に正規分布にしたがう結果となった。 【考察】MIPS は臨床応用 可能な評価指標であり,幅広い対象者の動的バランス評価に有効な手段であると考える。 キーワード 重心動揺計,MIPS,動的バランス能力,若年健常者. 位検査. 緒   言. Go Test.  バランス能力は,静的バランス能力と動的バランス能 力に大別される. 6). 1)2). 。前者は,安定した状態におけるバ. ,Functional reach Test 7)8),Timed Up and. 9). などがあり,複数の動作課題として Berg 10). balance scale(以下,BBS). がある。これらは,ある. 課題の遂行度で表されるパフォーマンステストであり,. ランス能力であり,後者は,動作を伴うなど不安定な環. 臨床場面や地域における機能評価指標として使用されて. 2). いる。特に,片脚立位検査は開閉眼といった視覚的な情. また,動的バランス能力の考え方は他にもいくつか存在. 報をコントロールすることで,時間ロンベルグ率(閉眼. し,漆畑らは,新たな支持基底面内に重心を移動させる. 片脚立位時間 / 開眼片脚立位時間)を算出し,視覚的代. 3) 能力と定義している 。さらに,振動・軟面・斜面・片. 償の程度について測定できるため,使用頻度の高い測定. 脚立位など,支持基底面の移動を伴わない能力として定. 方法である。しかし,片脚立位検査は,10 秒,60 秒,. 境下で姿勢を調整し,維持する能力であるとされる. 。. 1)4)5). 。このように,動的バランス能. 120 秒と上限値を設定し測定するため,天井効果を示し. 力の考え方は多様に存在し,環境や測定条件によって異. やすく,非高齢者など一定以上のバランス能力を有する. なるとされている。そのため,動的バランス能力の評価. 対象者において,その能力差を弁別することが困難な方. 指標はいくつか存在する。単一の動作課題として片脚立. 法である. 義した報告もある. *. Repeatability and Effectiveness of Modified Index of Postural Stability as an Evaluation Index of Dynamic Balance 1)筑波大学附属病院リハビリテーション部 (〒 305‒8576 茨城県つくば市天久保 2‒1‒1) Shinya Iwabuchi, PT, MSc, Yasuhiro Suzuki, PT, MSc, Hidenori Kato, PT, Yuki Tanabe, PT, Kimihisa Ishikawa, PT: Department of Rehabilitation, University of Tsukuba Hospital 2)茨城県立医療大学 Yusuke Endo, PT: Ibaraki Prefectural University of Health Sciences 3)筑波大学医学医療系リハビリテーション科 Yasushi Hada, MD, PhD: Department of Rehabilitation, Faculty of Medicine, University of Tsukuba # E-mail: keepaway.buchi.nari@gmail.com (受付日 2016 年 5 月 19 日/受理日 2016 年 11 月 25 日) [J-STAGE での早期公開日 2017 年 2 月 6 日]. 11). 。.  これらに対して,動的バランス能力の評価は,重心 (足圧中心)動揺計を用いても測定(以下,重心動揺検 査)が可能である。重心動揺検査は,立位時の重心動揺 について精密に測定することが可能であり,姿勢保持の 可否や安定性,保持時間,重心動揺面積が求められ る. 12). 。望月ら 13) は,この重心動揺検査を利用し姿勢. 安 定 度 評 価 指 標(index of postural stability: 以 下, IPS)を考案している。その基本的な考え方は,一定の 支持基底面内で随意的に重心移動できる範囲を安定性限 界と定義し,安定性限界が大きく重心動揺が小さいほど.

(2) 132. 理学療法学 第 44 巻第 2 号. 姿勢保持の安定性は高くなるというものである。最終的. た。対象者は,開眼片脚立位検査において退化が進行し. に安定性限界面積と重心動揺面積の比の対数値から IPS. ないとされている年齢(31 歳)までと設定することで. を算出する。この測定は,動的バランス能力を天井効果. バランス能力をある程度一定とした. なく示すことができる方法とされ,BBS との相関関係. て,視覚障害および四肢運動障害がない。末梢知覚障害 がなく,その場での直立姿勢が可能である。めまい・平. 。また,再現性については級. 衡障害の既往がなく,転倒事故経験がない。歩行および. 13)14). 内相関係数(intraclass correlation coefficients:以下, ICC)が 0.999. 13). 。適格条件とし. ,徐々に研究分野での適. も報告されていることから 応が報告されている. 13). 17). ,変動係数が 5%. 15). れており,系統誤差も認められない. であることが示さ. 15). と報告している。. 日常生活が自立している,の 4 条件とした。さらに,す べての対象者は,研究の意義や手順,転倒の危険性など について説明を受け,同意したうえで自主的に研究に参. このように IPS は臨床上,適応可能な評価指標である. 加した。. ことが示されている。.  また,安全性を確保するために,検者がモデルとなっ 16). は閉眼・. て事前に測定方法を示したうえで,対象者に閉眼・軟面. 軟 面 上 条 件 で 測 定 す る 修 正 IPS(modified index of. 上で立位姿勢を試行させ,10 秒程度,安定的に立位姿. postural stability:以下,MIPS)を考案した。この測. 勢を保持できることを確認した。なお,本研究の参加に. 定は,開眼,硬面上で行う重心動揺検査を,ラバーを用. 際しては,いかなる利益供与もなかった。また,本研究. い閉眼,軟面上で行う検査である。閉眼,軟面上での姿. 内容については筑波大学附属病院倫理委員会の承認を得. 勢制御において,視覚情報の遮断および足底からの感覚. ている(H26-58)。. 情報の入力が制御されているため,わずかな足底感覚に.  IPS,MIPS の測定は,重心動揺計(アニマ社製,グ. 依存することから,動的バランス能力における深部感覚. ラビコーダ GS-10 type C:測定周波数 20 Hz)および. の影響を詳細に検討できるとしている。また,IPS およ. 軟面マット AIREX. び MIPS の 2 指標を用いてラバー IPS ロンベルグ率(以. 3 製,25 % 圧 縮 抵 抗 20 kPa, 密 度 5 kg/m , 張 力. 下,MIPS/IPS)を算出することで,重心動揺面積の開. 260 kPa,410 × 500 × 60 mm)を用い,望月ら.  さらに,IPS の概念を応用する形で鈴木ら. ®. 16). Balance-pad plus(AIREX AG 社. 木ら. と視覚の複合的代償について検討できるとしている。鈴. 下のように実施した。. 16). は,この概念に準じ,IPS を動的バランス能力,. ,鈴. が考案した IPS,MIPS の検査手順に準じ,以. 閉眼の比より,安静時立位における姿勢制御の深部感覚 木ら. 13). ①対象者を裸足または薄手の滑らない靴下を履いた状態. MIPS を動的バランス能力における深部感覚,MIPS/. で重心動揺計に乗せ,開眼および足底内側を平行に. IPS を動的バランスの深部感覚と視覚の複合的代償と定. 10 cm 離した軽度開脚立位とする。. 義し,IPS および MIPS が動的バランス能力の評価指標. ②初期の大きな動揺がおさまった時点から 10 秒間の重. として有用であることを報告した。. 心動揺を測定する。.  しかし,これらの測定方法において,IPS では高い再. ③対象者に「直立姿勢を変えないように体を傾けてくだ. 現性が報告される. 13)15). 一方で,MIPS および MIPS/. さい」と指示し,前方・後方・右方・左方の順で重心移. IPS の再現性については十分な検討がなされていない。. 動した位置における 10 秒間の重心動揺を測定する。. また,幅広い対象者を測定し,年齢との関係性を横断的. ④対象者を一旦検査台から降ろし,検査台上に軟面マッ. に検討したものであり,各年代で十分な対象者数を確保. トをセットする。. できておらず,他のバランス測定との比較から MIPS の. ⑤対象者に十分な休息を与えた後に,検査台の軟面マッ. 有用性について詳細に検討がなされていない。. ト上にて閉眼・直立姿勢での重心動揺を測定する。その.  よって,本研究においては,MIPS,MIPS/IPS の再. 後,前方・後方・右方・左方の順で重心動揺を測定す. 現性について系統誤差および偶然誤差を用いて検討する. る。軟面マット上での測定では,対象者が転倒しないよ. こととした。さらに,同一対象者に対して,従来から使. うに特に注意して実施する。. 用されている閉眼片脚立位検査を行い,対象者の基本と.  これらの測定は,IPS,MIPS を一手技として,1 日. なるバランス特性を把握すると同時に,正規分布にした. 以上の間隔をあけて 2 回目の測定を行った。また,IPS,. がうかを MIPS と比較検討することで,MIPS 測定が有. MIPS の算出は望月ら. 用なものであるかを測定の難易度も含めて詳細に評価す. 積は前後,左右の重心移動位置における平均重心位置の. ることとした。. 距離を乗じた短形面積,重心動揺面積は中央・前方・後. 対象および方法. 13). の方法に準じ,安定性限界面. 方・右方・左方に重心移動した位置における 10 秒間の 短形重心動揺面積の平均値とし,log[(安定性限界面積.  研究参加者は,19 ∼ 31 歳の若年健常者 80 名(男性. + 重心動揺面積)/ 重心動揺面積]の式を用いた。. 39 名,女性 41 名)であり,平均年齢は 23.9 ± 3.4 歳であっ.  閉眼片脚立位検査は,文部科学省が定めた「新体力テ.

(3) MIPS の再現性と有効性を明らかにする. 133. 表 1 身体的特徴および動的バランス能力 男性. 女性. p値. 80. 39. 41.  . 年齢(歳). 23.9 ± 3.4. 24.1 ± 3.1. 23.7 ± 3.7. 0.567. 身長(m). 1.65 ± 0.09. 1.72 ± 0.06. 1.59 ± 0.05. p < 0.001. 体重(kg). 30.9 ± 12.3. 68.4 ± 10.9. 53.8 ± 8.9. p < 0.001. BMI (kg/㎡). 22.2 ± 3.62. 23.3 ± 4.04. 21.2 ± 2.83. 0.0114. 閉眼片脚立位検査(秒). 43.5 ± 18.4. 49.3 ± 16.5. 37.9 ± 18.3. p < 0.05. IPS. 2.13 ± 0.20. 2.11 ± 0.20. 2.15 ± 0.20. 0.364. MIPS. 0.78 ± 0.20. 0.74 ± 0.22. 0.82 ± 0.17. 0.058. MIPS/IPS. 0.37 ± 0.09. 0.35 ± 0.10. 0.38 ± 0.07. 0.108. IPS. 2.12 ± 0.20. 2.10 ± 0.20. 2.13 ± 0.20. 0.486. MIPS. 0.82 ± 0.20. 0.79 ± 0.22. 0.84 ± 0.18. 0.277. MIPS/IPS. 0.39 ± 0.09. 0.38 ± 0.10. 0.40 ± 0.17. 0.422. N(人). 1 回目 測定値. 2 回目 測定値. 平均値±標準偏差 BMI:Body mass index IPS:index of postural stability MIPS:modified index of postural stability. 表 2 系統誤差と偶然誤差 Bland-Altman 分析 加算誤差. LOA. 比例誤差. CI. 有無. 回帰直線の傾き. MIPS. 0.034 ∼ 0.040. あり. ‒ 0.007. MIPS/IPS. 0.016 ∼ 0.024. あり. ‒ 0.013. ICC(1, 1). 有無. 下限. 上限. p = 0.954. なし. ‒ 0.26. 0.33. 0.725. p = 0.906. なし. ‒ 0.14. 0.18. 0.616. IPS:index of postural stability MIPS:modified index of postural stability LOA:limits of agreement ICC:intraclass correlation coefficients CI:Confidence Interval. 18). スト実施要項(65 ∼ 79 歳対象) 」 ,および財団法人中. 証できる反復回数についても併せて検討した。この際,. 央労働災害防止協会が定めた「転倒等災害リスク評価. ICC(1,1)が 0.7 を上回ることを条件とした。. 19). セルフチェック実施マニュアル」. を参考とし左右そ.  有効性の検討は,閉眼片脚立位検査の左右平均値,. れぞれ 2 回ずつ測定した。計測時間は,閉眼で最長 60. MIPS の散布についてヒストグラムを作成し,得られた. 秒までとし,1 回目 60 秒の場合には,2 回目の測定は実. データが正規分布にしたがっているかを Shapiro-Wilk. 施しなかった。. 検定を用いて検討した。.  統計解析は,MIPS,MIPS/IPS の系統誤差を検討す.  使用統計ソフトには SPSS(IBM 社製,ver.21)を用. るため Bland-Altman 分析を用いた。Bland-Altman 分. い,すべての統計学的有意水準は 5%とした。. 析を行ううえで,2 回の MIPS および MIPS/IPS の差(2-1 回目間)を y 軸,平均値を x 軸にプロットした散布図 20). 結   果. の報告を参考に,それらの測定.  研究参加者の身体的特徴および動的バランス能力の基. 値に内包する系統誤差の有無を確認した後,測定時の誤. 本属性について表 1 に示した。身長,体重を除いて,男. 差が臨床応用上問題があるかどうかを検討するために,. 女間に統計学的有意差は認めなかった(p < 0.05) 。. 2 つの測定値間の誤差の許容範囲である,臨床応用上の.  系統誤差と偶然誤差について表 2,MIPS,MIPS/IPS. 許容範囲(limits of agreement:以下,LOA)を算出し. の差と平均値の分布(Bland-Altman 法)について図 1. を作成した。下井ら. た。また,LOA は 95%信頼区間(Confidence Interval:. に示した。系統誤差の検討において,MIPS における差. 以下,CI)により標本から得られた LOA を算出した後,. の平均値は 0.037,CI の最大値が 0.040,最小値が 0.034. 母集団における信頼限界を推定した値としての LOA を. であり,この区域において 0 を含まなかったため加算誤. 用いた。さらに,偶然誤差を検討するため ICC(1,1)を. 差を認めた(図 1-a)。相関係数 r = ‒ 0.007,p = 0.954. 算出し,Spearman-Brown の公式を用いて信頼性が保. で あ り, 比 例 誤 差 は 認 め な か っ た( 図 1-b)。LOA は.

(4) 134. 理学療法学 第 44 巻第 2 号. 図 1 MIPS,MIPS/IPS の差と平均値の分布(Bland-Altman 法). 図 2 閉眼片脚立位検査,MIPS のヒストグラム. ‒ 0.26 ∼ 0.33 であった。MIPS/IPS における差の平均値.  閉眼片脚立位検査の左右平均値,MIPS におけるヒス. は 0.020,CI の最大値が 0.024,最小値が 0.016 であり,. トグラムの結果を図 2 に示した。Shapiro-Wilk 検定の結. この区域において 0 を含まなかったため加算誤差を認め. 果より,閉眼片脚立位検査の左右平均値は p < 0.05 で. た(図 1-c) 。相関係数 r = 0.013,p = 0.906 であり,比. あり有意に正規分布にしたがわないことが明らかとなっ. 例誤差は認めなかった(図 1-d)。LOA は ‒ 0.14 ∼ 0.18. た(図 2-a)。MIPS は p = 0.859 であり有意に正規分布. であった。. にしたがうことが明らかとなった(図 2-b) 。.  偶然誤差の検討において,MIPS,MIPS/IPS の ICC (1,1)は 0.725,0.616 であり,MIPS/IPS は 0.7 を下回っ. 考   察. た。そのため,Spearman-Brown の公式より反復回数.  本研究は,運動器障害およびめまい・平衡障害のない. を測定した。その結果,1.45 回であり少数桁を四捨五入. 若年健常者を対象に,閉眼片脚立位検査,重心動揺計を. して 2 回以上の反復測定が必要であることが明らかと. 用い IPS および MIPS,MIPS/IPS を測定し,MIPS お. なった。. よび MIPS/IPS の再現性,閉眼片脚立位検査との比較.

(5) MIPS の再現性と有効性を明らかにする. 135. から MIPS の有用性について検討した。. 定に対し,MIPS が閉眼・軟面上であり,測定の難易度.  先行研究によると再現性の検討については,対応する. が高くなったことでバラツキが生じてしまったことが大. 複数の測定値から,ピアソンの積率相関係数や ICC を算. きく影響したのではないかと考えられる。. 出することが多いとしている。しかし,これらの手法で.  MIPS の有用性については,閉眼片脚立位検査との比. は,特に加算誤差や比例誤差といった系統誤差の抽出は. 較にて検討した。閉眼片脚立位検査は両脚 60 秒達成者. 困難で,複数の測定値が内包する誤差の量や種類に関す. が 31 名であり,正規分布にしたがわなかった。この結. 21). 。一方. 果は,非高齢者など一定以上のバランス能力を有する対. で Bland-Altman 分析は,ICC や相関係数では検討でき. 象者において,その能力差を弁別することが困難な方法. ない,2 つの測定値間にある誤差の量や種類といった系. である。という森岡ら. 統誤差を簡便な手順で明らかにできると報告してい. あり,本研究における対象者においては難易度として優. る情報を得ることはできないと報告している. 22). 11). の先行研究を指示するもので. 。よって,本研究においても,従来から使用頻度. しい測定であったと考えられる。一方,MIPS は有意に. の高い ICC に加え,Bland-Altman 分析による系統誤差. 正規分布にしたがうことが示され,閉眼片脚立位検査と. を検討することで,臨床応用の可能性も含めて検討した。. 比較し,難易度が適切な測定方法であり,個々の能力を.  Band-Altman 分析において MIPS,MIPS/IPS ともに. 詳細に評価することが可能であったと考えられる。. 加算誤差を認めた。加算誤差は,測定値(真の値)の大.  これは,バランス能力の安定した健常若年者を対象と. 小にかかわらず,特定方向に生じる誤差であるとされて. し,閉眼片脚立位検査を測定した場合,短時間での計測. おり,その場合,臨床応用上の許容範囲を設定するため. では容易に天井効果を示してしまうこと. る. LOA を算出する必要があるとしている. 22). 。そのため,. 11). 。上限値を. 設けた場合に時間によっては,筋力,筋持久力といった 17). が原. 本研究においても LOA を算出した。結果,MIPS の測. 筋疲労の要因が影響してくる可能性があること. 定を 2 回行った場合,2 回目の測定値は 1 回目の測定値. 因として考えられる。一方,MIPS の測定方法は,IPS. よりも ‒ 0.26 ∼ 0.33 以内の差であれば測定誤差の可能性. の検査手順. があり,‒ 0.26 以下,0.33 以上の差が認められれば介入. 揺面積の和を取り,これを重心動揺面積で除した後に対. 効果などによる「真の変化」と判断できることが明らか. 数値を算出している。そのため,天井効果のない評価指. となった。同様に,MIPS/IPS においては ‒ 0.14 ∼ 0.18. 標であり,個々の能力をより詳細に評価できると考えら. 以内の差であれば測定誤差の可能性があり,‒ 0.14 以下,. れる。したがって,MIPS は先行研究. 0.18 以上の差が認められれば介入効果などによる「真の. バランス能力における深部感覚を評価するうえで幅広い. 変化」と判断できることが明らかとなった。一方で,本. 対象者に対して有効な手段であり,臨床応用可能な測定. 研究で導き出された許容範囲をどのように解釈するかに. 方法であると考えられる。. ついては非常に難しい課題であると考えられる。また, この許容範囲を臨床で用いて,「真の変化」を得るため. 13). に準じており,安定性限界面積と重心動. 16). と同様に動的. 結   論. に,どのようなバランストレーニングを,どの程度実施.  本研究において,系統誤差を検討し,LOA を算出す. すべきかに関してははっきりしていない。そのため,今. ることで,臨床上の解釈では,同じ対象者に IPS を 2. 後,介入研究等の縦断的な検討が必要であると考えら. 回行った場合,MIPS において ‒ 0.26 以下,0.33 以上の. れる。. 差が認められれば介入効果などによる「真の変化」と判.  ICC (1,1)は,MIPS で 0.725,MIPS/IPS で 0.616 であっ. 断できることが明らかとなった。同様に MIPS/IPS に. た。先行研究において ICC の判定基準はいくつか存在す. おいては ‒ 0.14 以下,0.18 以上の差が認められれば介入. 23‒25). が定めた判定基. 効果などによる「真の変化」と判断できることが明らか. 準を用い,0.7 以上の信頼性係数を確保することをひとつ. となった。また,MIPS においては一定の再現性を確認. の基準とした。結果,MIPS は上回ったが,MIPS/IPS. し,MIPS/IPS においても 2 回以上の反復測定を行うこ. は下回った。このため,MIPS/IPS は Spearman-Brown. とで一定の再現性を獲得できることが明らかとなった。. の公式を用い検討した結果,2 回以上の反復測定が必要.  MIPS の有用性について,有意に正規分布にしたがう. であることが示された。これは,MIPS を IPS で除した. 結果となったこと,天井効果がなく,難易度が適切であ. 値であり,MIPS と比較した場合,再現性が得られにく. ることから,個々の動的バランス能力を評価することが. くなったためではないかと考えられる。さらに,先行研. できる可能性がある。. 究より,IPS が偶然誤差,系統誤差の観点から,高い再.  この測定方法は動的バランス能力の評価における一助. る. 。本研究においては,Fleiss. 24). 現性が確認されている. 13)15). 。 一 方,MIPS お よ び. MIPS/IPS ともに IPS の測定と比較し,十分な再現性が 得られなかった。これは,IPS が開眼・硬面上で行う測. になり得ると考えられ,理学療法研究として意義がある ものと考えられる。.

(6) 136. 理学療法学 第 44 巻第 2 号. 文  献 1)Nardone A, Schieppati M: The role of instrumental assessment of balance in clinical decision making. Eur J Phys Rehabil Med. 2010; 46: 221‒237. 2)Brown CN, Mynark R: Balance deficits in recreational athletes with chronic ankle instability. J Athl Train. 2007; 42: 367‒373. 3)漆畑俊哉,衣笠 隆,他:女性前期高齢者のバランス能 力を改善させる運動介入:無作為化比較試験.体力科学. 2010; 59: 97‒106. 4)Cone BG, Levy SS, et al.: Wii Fit exer-game training improves sensory weighting and dynamic balance in healthy young adults. Gait Posture. 2015; 41(2): 711‒715. 5)Lee BG, Lee JH: Immediate effects of ankle balance taping with kinesiology tape on the dynamic balance of young players with functional ankle instability. Technol Health Care. 2015. [Epub ahead of print] 6)Jonsson E, Seiger A, et al.: One-leg stance in healthy young and elderly adults: a measure of postural steadiness? Clin Biomech. 2004; 19(7): 688‒694. 7)Ryckewaert G, Luyat M, et al.: Self-perceived and actual ability in the functional reach test in patients with Parkinson’s disease. Neurosci Lett. 2015; 589: 181‒184. 8)Dite W, Temple VA: A clinical test of stepping and change of direction to identify multiple falling older adults. Arch Phys Med Rehabil. 2002; 83: 1566‒1571. 9)Shumway-Cook A, Brauer S, et al.: Predicting the probability for falls in community-dwelling older adults using the Timed Up & Go Test. Phys Ther. 2000; 80: 896‒903. 10)Shumway-Cook A, Baldwin M, et al.: Predicting the probability for falls in community-dwelling older adults. Phys Ther. 1997; 77: 812‒819. 11)森 岡  周, 松 尾  篤, 他: 高 齢 者 の 立 位 バ ラ ン ス に 関 する臨床研究の成果と今後の課題.理学療法.2010; 27: 887‒895. 12)今岡 薫,村瀬 仁,他:重心動揺検査における健常者. データの集計.Equilibrium research.1997; suppl 12: 1‒84. 13)望 月  久, 峯 島 孝 雄: 重 心 動 揺 計 を 用 い た 姿 勢 安 定 度 評価指標の信頼性および妥当性.理学療法学.2000; 27: 199‒203. 14)根本慎司:高齢者虚血性心疾患患者の退院後の身体活動強 度は下肢筋力だけでなくバランス機能の影響を受けてい る.心臓リハビリテーション.2012; 17: 98‒102. 15)鈴木康裕,田邉裕基,他:姿勢安定度評価指標(IPS)に よる適切なバランス能力評価の臨床指標についての検討. PT ジャーナル.2014; 48: 232‒236. 16)鈴木康裕,中田由夫,他:重心動揺計を用いた動的バラン ス能力と年齢の関係.体力科学.2015; 64: 419‒425. 17)森岡 周,宮本謙三,他:年代別にみた立位姿勢バランス 能力と足底二点識別覚の変化過程.PT ジャーナル.2005; 39: 919‒926. 18)文部科学省ホームページ 新体力テスト実施要項(65 ∼ 79 歳対象) .http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/stamina/ 03040901.htm.(2015 年 9 月 10 日引用) 19)財団法人中央労働災害防止協会ホームページ 転倒等災 害リスク評価 セルフチェック実施マニュアル.http:// www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/ anzen/dl/101006-1a_07.pdf: p. 11.(2015 年 9 月 10 日引用) 20)下井俊典:評価の絶対信頼性.理学療法科学.2011; 26: 451‒461. 21)Ludbrook J: Statistical techniques for compairing measurers methods of measurement: a critical review. Clin Exp Pharmacol Physiol. 2002; 29: 527‒536. 22)下井俊典,谷 浩明:Bland-Altman 分析を用いた継ぎ足 歩行テストの検者内・検者間信頼性の検討.理学療法科 学.2008; 23: 625‒631. 23)Landis JR, Koch GG: The measurement of observer agreement for categorical data. Biometrics. 1977; 33: 159‒ 174. 24)Fleiss JL: Statistical Method for Rates and Proportions. John Wiley & Sons, Toronto, Ontario, Canada, 1981. 25)栗 原 洋 一, 斉 藤 俊 弘, 他: 検 者 内 お よ び 検 者 間 の Reliability(再現性,信頼性)の検討─なぜ統計学的有意 が得られないのか─.呼吸と循環.1993; 41: 945‒952..

(7) MIPS の再現性と有効性を明らかにする. 〈Abstract〉. Repeatability and Effectiveness of Modified Index of Postural Stability as an Evaluation Index of Dynamic Balance. Shinya IWABUCHI, PT, MSc, Yasuhiro SUZUKI, PT, MSc, Hidenori KATO, PT, Yuki TANABE, PT, Kimihisa ISHIKAWA, PT Department of Rehabilitation, University of Tsukuba Hospital Yusuke ENDO, PT Ibaraki Prefectural University of Health Sciences Yasushi HADA, MD, PhD Department of Rehabilitation, Faculty of Medicine, University of Tsukuba. Objectives: In this study, we aimed to measure the index of postural stability (IPS) and modified IPS (MIPS), both of which reflect dynamic balance capability, by using force plates. We also aimed to evaluate the repeatability of MIPS and the rubber IPS Romberg ratio (MIPS/IPS), and the effectiveness of MIPS. Methods: The IPS, MIPS, and score in the balance capability test (one-foot standing with eyes closed [COFS]) were assessed for 80 healthy young subjects. The repeatability values of MIPS and MIPS/IPS were evaluated, considering systematic bias and random error. A histogram was generated for the effectiveness of MIPS, which was compared with that of the COFS score by using the Shapiro-Wilk test. Results: Fixed bias was found in both the MIPS and MIPS/IPS. The intraclass correlation coefficient (1.1) was used as a measure of repeatability. The repeatability values of MIPS and MIPS/IPS were 0.723 and 0.616, respectively. The effectiveness of MIPS showed p values of 0.859. This result suggests that MIPS significantly follows a perfect normal distribution. Discussion: MIPS can be considered a clinically applicable evaluation index. Furthermore, it can be an effective measure of balance capability of subjects in a wide age range. Key Words: Stabilograph stabilometer, Modified index of postural stability, Dynamic balance, Healthy young subjects. 137.

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図 2 閉眼片脚立位検査,MIPS のヒストグラム

参照

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