パネルディスカッション デザインの哲学
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(2) の問題は科学的で論文になりやすいのですが、“What” の問題. 分化されると、デザイナーが主体性を持って意見を押し通すこ. は論文になりにくいということも、背景の一つにあったのかも. とが構造的に難しくなるのです。そのため、結果的に、主体性. 知れません。. を失ったデザインが商業システムにたくみに組み込まれてしま うのです。私はかつての自動車メーカでの経験から、この傾向. 物の豊かさ、心の豊かさ. を実感しています。デザインは時として商売の道具として表層. “What” の問題の重要性に気づかせてくれることに、毎年内. 的な役割を負わされることがあります。デザインの専門化・細. 閣府が行なっている「国民生活に関する世論調査」がありま. 分化では、主体性を発揮しづらい環境を誘発し、そのような傾. す。この調査には、「これからは心の豊かさか、まだモノの豊. 向を助長することはよくあります。しかしながら、「専門化・. かさか」というアンケートがあり、この結果によると、かつて. 細分化」は人工物の「大規模化・複雑化」を実現するために必. は物の豊かさを欲していた世論が、1989年くらいから逆転し、. 要であり、どうしても通らなければいけない道であるともいえ. 心の豊かさを求める傾向が高まり、モノを求める傾向との差は. るのです。. ますます乖離しています。今でもその傾向は顕著に進んでいま す。. 継続的な哲学共考の必要性. そして、この傾向はデザインが世論に対して十分に応えてい. では、どうすれば良いのでしょうか?その答えとしては、ひ. ない、つまり、我々がそれをやり切れていない現状を映して. たすら哲学論議を続けることしかないのではないかと私は考え. いるともとれるのです。デザインを取り巻く環境を見渡すと、. ています。「マッキンゼーの7S」の話をご存知だと思います. 今、人工知能や生命科学は日進月歩で発展し、我々が議論す. が、7つの S のうち、仕組みやシステムはすぐにできても、最. べき課題は山積です。さらに社会情勢も急激に変化しており、. 終的な価値観の問題については継続的に議論するしか対応策. デザインが心の豊かさに目を向け、何を創ってゆくかという. はありません。これと同様に、デザインにおいても継続的な. “What” の問題が一層大事な時期に来ているといえるのではな. “what” の問題に関する哲学論議が、今、必要と考えています。. いでしょうか。. そのためにも、学会においても、今回のような哲学としてデザ インを思考する場をつくり、取り組んでいければと思っていま. デザイナー個人の未来観と主体性. す。. 私がここでお話したいことは、「どのような哲学や未来観を. ご存知のように、西周(にし・あまね)は私たちが毎日のよ. 持つべきか」ということではありません。ただ、デザイナーが. うに使っている「芸術」や「科学」「哲学」「技術」という言葉. 何を作るべきかという “What” の問題についてもっと考えてゆ. を生み出したことで知られていますが、彼の思想を示す『百学. く必要があり、そのためには、自らの哲学とそれにもとづく未. 連環』という書籍があります。この書では、様々な縦割りの学. 来観のもとに、主体性を持ってデザインを考えることが大切だ. 問を連関させる横串として哲学を捉えていたようです。哲学と. と思うのです。たしかにそれは現場にいると難しいことかも知. いう言葉には多義性があり、特定の思想という狭義から、より. れません。経済を軸に回っている現実において、本当にデザイ. 幅広い教養としての “Philosophy” という広義まで様々です。. ンが主体性を持ち続けることができるのか?口にするのは簡単. 『百学連環』では、後者の “Philosophy” に近い意味で用いられ. ですが、実は大変困難なことだと思います。これには様々な要. ていますが、我々もそれに学び、様々な教養を含んだ哲学とい. 因が考えられます。. うものを横串として、今回のように様々な団体の枠を超え、と もに考える場があればと考えます。. デザインの専門化・細分化 デザインの現場について考えるべきは、「専門化・細分化」. デザイン哲学が真の創造性と経済効果を生む. に伴う問題です。これまで、人工物の大規模化・複雑化という. 最後になりますが、このような哲学論議において、決して、. ことにフォーカスしてきましたが、そのような人工物を生み出. 論議のみにとどまらない期待を持っています。そのような議論. す現場ではこの「専門化・細分化」により、結果としてデザイ. を通じて得られた哲学とそれにもとづく未来観のもと、あるべ. ンが主体性を持ちづらい状況が生まれています。例えば、自動. き社会の実現を目指してデザインを行うことは、魅力的なデザ. 車の場合、一つの車に多くのデザイナーが関わっています。首. インを生むと同時に、デザインするという喜びを深化させてく. 尾よく協働しているうちは良いですが、多くのデザイナーが関. れるのではないでしょうか。つまり、哲学論議は、真の創造性. 与し、協働でデザインが行われる場合、とかくデザインの主体. を育むものと考えています。そして、結果的に哲学論議が大き. 性が失われることが多々あります。行為としてのデザインが細. な経済効果を生むものと、私は確信しています。 デザイン学研究特集号 special issue of japanese society for the science of design Vol.24-2 No.94 2017. 37.
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