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太陽光発電量評価・予測のための日射スペクトル強度推定技術開発

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Academic year: 2021

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Title

太陽光発電量評価・予測のための日射スペクトル強度推定

技術開発( 内容の要旨(Summary) )

Author(s)

橋本, 潤

Report No.(Doctoral

Degree)

博士(工学) 甲第392号

Issue Date

2010-03-25

Type

博士論文

Version

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/33553

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

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氏名(本籍) 学 位 の 種 類 学位授与番号 学位授与 日 付 専 攻 学位論文題 目 学位論文審査委貞 橋 博 (工判 本土 潤(愛知県) 甲第 392 平成 22 年 3 月 25 日 環境エネルギーシステム専攻 太陽光発電量評価・予測のための日射スペクトル強度推定技術開発 (SolarspectralirradianCemOdelforevaluationandforeca眉tOfphotovoltaic powergeneration) (主査)安 田 孝 志 (副査)野々村 修 一 小 林 智 尚

論文内容の要旨

太陽電池の性能評価方法は,これまで結晶シリコン系およびアモルファスシリコン系太陽電池の刀S/IEC 規格が確立されている。しかし近年,新たな素材を用いた太陽電池やこれまでと異なる構造の太陽電池, 高性能な太陽電池など新型(色素増感,有機薄膜,高性能型,多接合,CIS系,化合物系など)が活発に開 発されてきている。これら新型の太陽電池は,従来の太陽電池と比べ発電特性が大きく異なるため,従来 技術で評価することが出来ないという課題がある。 異なるモジュールの発電特性を評価する際,日射条件(日射量,気温)とともにモジュールに入射する 日射スペクトル強度が重要となる。これは発電効率がモジュールの分光感度に依存していることに起因す る。このため大気状態に応じた太陽光のスペクトル特性を把握することが必要とされている。また固定価 格買取制度(日本版FIT)が,来年度から開始されるのに伴い,発電量が不安定な太陽光発電(PV)シス テムの発電量予測技術に注目が集まっている。日本の場合,立地条件の制約から欧州のようなメガワット 級の太陽光発電フィールドの建設に比べて,家屋設置型パネルの導入が主流となる。これは,小型な発電 所がいくつも電力網に組み込まれることを意味する。しかし天候によって発電量が左右される太陽光発電 が大量に電力網に接続されると,電力不安定が生じ変動調整のために既存発電所への負荷が高くなる。電 力安定供給のための調整には,技術的に出力の微調整が困難な原子力に比べて火力発電等の調整可能な電 力源によるバックアップが必要とされる。これら電力源の調整には,事前に電力需要と必要調整電力をあ らかじめ予測する必要がある。 本研究では,これらの課題を横断的に解決するために気象モデルと組み合わせた新しい大気放射伝達モ デルを開発した。ここで提案する大気放射伝達モデルは,気象モデルから得られる大気の諸物理量を入力 値とすることで,従来のモデルでは考慮できなかった雲などの減衰要因を含めた大気の状態を再現した日 射スペクトルを直達・散乱それぞれについて推定することが可能である。また気象モデルにより大気の予 測解析を行うことで,日射の予測を可能にするものである。 大気放射伝達モデルを開発するのに先立ち大気放射伝達モデルの基礎について体系的に纏めた。大気放 射のアルゴリズムのうち吸収と散乱の物理現象について数値的に求める手法について言及し,特に散乱現 象については散乱対象となる物質の粒度分布による光学特性について検証を行い,粒度分布と波長特性の 関係性についてまとめた。また本研究の入力データとして重要である局地気象モデルMM5について概要を まとめると共に,MM5の精度について吉野らの報告を引用し,その結果の考察を行っている。 次に既存のl次元大気放射伝達モデルSMARTS2の理論を基に,雲などの天候による影響を推算できる ように拡張した1次元大気放射伝達モデル(以下,1次元日射モデル)を構築した。従来のモデル(SMARTS2) が晴天日を想定しているのに対し,雲による遮蔽効果を再現可能な新しいモデルである。l次元日射モデル は,大きく3つのモデルによって構成されている。雪情報を提供する気象モデルMM5,雲による消散過程 をモデル化した雲透過率推定モデルTMCW,そして拡張されたSMARTS2である。対象となる任意の地点 上空に存在する雲を気象モデルにより再現し,気象モデルより得られる雲水混合比鉛直データをTMCWが 取り込むことにより雲の消散過程を再現可能となる。またTMCWにより算出された雲の透過率を消散因子 として取り込めるようにSMARTS2は拡張されている。これは雲の分布に応じた日射強度を推定できるこ とを意味する。l次元日射モデルにより推定された全天日射スペクトル強度は,財)気象協会が岐阜大学に て実施している観測データと比較され,スペクトル分布がよく一致していることが確認された。 さらにこのl次元日射モデルを用いた日射予測を行った。気象モデルMM5が予測する翌日24時間先ま での1時間毎の雲分布データを基に,2007年4月から9月までの半年間連続して予測を行った。予測結果 は,観測値と比較され過大評価ぎみではあるが日射のトレンドをよく予測しており気象擾乱の激しい夏着 を除いて概ね雲による全天日射変動を捉えることができることを示した。しかし直達・散乱それぞれの精 度に着目すると,特に散乱の推定に誤差が多いことが明らかとなった。これは,Ⅰ次元日射モデルが雲の水 平面分布を一様に仮定していることが一因であると考えられる。遮蔽効果の大きい雲の存在は,大気の状 態でも特に風の影響を強く受け,刻一刻と変化している。また雲の分布構造は,発生起因に応じて様々で ありその特徴は掴み所がない。したがって雲の3次元分布による散乱特性を解明するためには,雲の3次

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-47-元分布を物理的に再現し日射を推定する必要があると考えた。そこで本研究では,新たに3次元大気放射 伝達モデル(以下,3次元日射モデル)の開発を行った。この3次元日射モデルは,特定の地点における日 射の推定に不要な熱放射過程を省き単散乱現象に限定することで簡便化した3次元大気放射伝達モデルで ある。吸収係数の推定には,H20の推定にグッディー・モデル,02,CO2,0,,N20,CH.の5つの気体 による吸収にマルクマス・モデルのバンドモデルを採用した。また散乱係数の推定は,エアロゾル,雲粒 それぞれの粒度分布から推定できるようになっている。3次元メッシュのすべての領域での吸収・散乱現象 を再現し各波長に対応する透過率を推定することで目的地点の日射スペクトル強度を推定可能である。3 次元日射モデルの快晴日における日射スペクトル強度推定値は,AMl.5のSMARTS2解析結果と比較検討 され,同程度の精度を有していることが確認された。 最後に,本研究では2つの大気放射伝達モデルを開発した。1次元日射モデルは,既存のモデルを拡張し て構築されており計算の時間コストにすぐれ年間計算などに優れている。また予測を行う場合など,時間 的制限がある暑合についても有効である。3次元日射モデルは,雲による日射の3次元構造を再現すること が可能であり,雲と日射の関係性について解明するために有効である。いずれのモデルも一定以上の精度 が確認されており,太陽光発電の評価に重要な日射スペクトルや予測技術などに役立つことが期待される。

論文審査結果の要旨

これまで太陽光発電量に関係する日射スペクトル強度は,快晴日つまり「雲なし大気」を想定して推定 されていた。しかし太陽光発電システムの普及に伴い,雲が存在する実際の気象条件下での日射強度・発 電量の把握が求められてきている。さらに従来モジュールに比べて分光特性の異なる新型モジュールが活 発に開発されるに伴い,実際の天候に則した日射スペクトル強度の推定が必要とされている。太陽光発電 は発電量が不安定という短所を持ちながら低炭素社会実現のために必要な技術である。 本研究ではこれらの課題を横断的に解決するために気象モデルと組み合わせた新しい大気放射伝達モデ ルを開発した。ここで提案する大気放射伝達モデルは,領域メソ気象モデルMM5によって推定された雲の 鉛直分布を入力値とすることで大気状態を表す諸物理量のなかでも日射強度の推定に最も重要なファクタ ーである雲による放射過程を再現する「雲あり大気」を想定した新タイプの全天候型大気放射モデルであ る。 はじめに,大気放射伝達モデルを開発するのに先立ち大気放射が大気を伝搬し地表面に到達するまでの 物理理論について太陽光発電分野の視点で体系的に纏めた。大気の放射過程のうち吸収と散乱の物理現象 について数値的に求める手法について言及し,特に散乱現象については散乱対象となる雲の粒度分布と波 長特性の関係性についてまとめた。また上空大気における雲分布を取得するために重要となる領域メソ気 象モデルMMについてその推定精度を再計算解析結果および予測計算結果から検討した。 次に「雲あり大気」を想定した大気放射モデルの構築と検討を行った。提案する大気放射モデルには SMARTS2が採用している透過率の積算によるパラメタリゼーションを拡張し,雲による透過率を評価する ことで「雲あり大気」における地上に到達する日射スペクトル強度を推定可能とした。また領域メソ気象 モデルより得られる雲水混合比鉛直分布から雲の透過率を推定するために雲水透過率推定モデルmCW を開発し,拡張されたSMARTS2と光学特性を推定するTMCWを統合することで,新しい全天候型大気放 射モデルを構築した。構築した大気放射モデルを用いて大気中の主要な消散要因である「雲」・「水蒸気」・ 「オゾン」・「二酸化炭素」による日射強度とスペクトル分布への影響について感度分析をした結果,雲水 混合比の濃度によって最大帥%以上の日射強度減少が推定でき,最も支配的であることが確課された。 構築した大気放射モデルの精度検証を行うために,推定された日射スペクトル強度を日射強度とスペク トル分布に分離して評価を行った。日射強度の推定精度は,全天日射強度の平均誤差が3.$%,相関係数が 0.g5,直連日射強度の平均誤差が10.7%,相関係数が0.77といずれも観測値と良く一致した.一方散乱日射 強度の平均誤差は一名.7%,相関係数が-0.07と無相関を示し,散乱成分の推定手法には改良の余地を残した。 スペクトル分布の推定精度を検証した結果,lケ月の平均二乗誤差が9.45∼69.45%(平均23.67%)の範 囲で推移しており,相関係数は0.95と高い相関を示した。以上の結果から日射スペクトル強度の推定精度 は全天・直達両成分ともに良く再現できている。 最後に,額域メソ気象モデルMM5から取得した雲鉛直分布の予測データを利用して日射スペクトル強 度の予測を行い,その結果を再計算解析値と比較することで予測誤差について検証した。その結果MM5 による日射スペクトル強度の予測誤差は再現計算とほぼ同等であり,全天・散乱・日射スペクトル強度につ いては平均誤差,平均二乗誤差および相関係数のいずれの統計的指標も良い数値を示した。 以上の様に本研究では全天候型大気放射モデルを開発し,日射強度およぴスペクトル分布推定の精度検証 を通してこのモデルの有用性を示した。このような試みは国内外でもなく,先進的な取り組みおよび成果 であった。

最終試虞結果の要旨

安田孝志,野々村修一および小林智尚で構成する審査委員会は,本論文および別刷り(査読付き論文1 編を含む主要論文3編,参考論文6編,計9編)などを慎重に検討した。本論文は本人により作成され, 学位論文として十分完成された内容を有していることを確認した。また最終試験(公聴会)を平成22年2 月4日午後に開催し,審査委員会での審査の結果,合格と判定した。 ・48・

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