Title
Alteration of Temporomandibular Joint Remodeling in the
Growing Period ; Effect of Ovariectomy and Reduction of
Maximal Intercuspal Position( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
奥田, 孝
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第991号
Issue Date
1995-07-19
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/15283
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氏名 (本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 奥 田 孝(岐阜県) 博 士 (医学) 乙第 991号 平成 7
年
7月19
日学位規則第4条第2項該当
AIteration of TemporomandibularJoint Remodelingln the Growlng Period;Effect of Ovariectomy and Reduction of Maxima(
IntercuspaJPosition (主査)教授 岡 (副査)教授 松 教授 玉
金
輝 彦光信
伸隆
永 論 文 内 容 の 要 旨 顎関節の機能障害は,口腔外科領域において高頻度にみられる疾患であり,女性に多くみられ,男性の8∼10 倍の発生率を示すとされている。さらに,女性の年齢別発生頻度では15∼25歳と45∼55歳の2つの年齢層に好発 し,これらはいわゆる思春期(puberty)と閉経期(menopause)に一致している。これらの時期は女性ホルモ ンの分泌が急激に変化する時期であり,女性ホルモンが顎関節の機能障害に関与していることが示唆される。こ れまでにも,疫学的調査から女性ホルモンと顎関節の機能障害の関係を示唆する報告がみられ,顎関節における エストロジュンレセプターの存在も報告されている。しかし,女性ホルモンと顎関節機能障害との関係を実験的 に追究した報告はまだみられない。 思春期においては乳歯列から永久歯列に交換する,あるいは交換直後の時期であり,校合状態は不安定で,校 合機能に種々の問題が起きてくる時期でもある。よって,この時期に好発する顎関節障害には,これら嘆台状態 の不安定さや,唆合機能の異常が関与しているものと推察される。しかし,校合機能と顎関節機能障害との因果 関係についてはまだ結論は得られていない。 今回申請者らは,卵巣摘出と校合状態の変化が顎関節にどのような影響を与えるかを検討するために,成長期 ラットにおいて卵巣摘出と臼歯の削合を施行し,顎関節の変化を病理組織学的,骨形態計測学的に検討した。 実験方法 4週駄雌のWistarラット80匹をコントロール(sham-Operated)群(CTL),校合変化群(Abr),卵巣摘 出群(0VX),嘆合変化+卵巣摘出群(0VX+Abr)の4群に分け,ベントパルビタール全身麻酔下に,Abr 群および0VX+Abr群では上下,左右の臼歯を削合し校合高径を低下させ,0VX群および0VX+Abr群では卵 巣を摘出した。なお,Abr群およびCTL群においては卵巣摘出のsha町OPerationを施行した。各群とも1,2, 4,8週目に各5匹ずつを全身麻酔下に採血,屠殺し,顎関節部の軟Ⅹ線写真を撮影後,適法に従い脱灰標本を 作成した。採血した血液はRIA法により,17β-エストラジオール(E2),カルシトニン(CT),C末端副甲状 腺ホルモン(PTH-C)を定量した。脱灰標本は矢状断連続切片を作成し,関節頭幅径の中央において病理組織 学的観察と軟骨層の厚径,および骨形態計測を前方(Ant),中央(Cent),後方(Post)部において計測した。骨形態計測ではChalkleyの原動こ基づくhit-pOint counting法により,bone volume(BAr),OSteOid surface (OPm),erOded surface(EPm),およびquiescentsurface(QPm)を計測した。 実験結果および考察 1)cTL群およびAbr群においては,血清中のE2,CTは思春期(成長期)に増加がみられたが,PTH-Cは実 験期間中変化がみられなかった。CTL群においてはosteoid surfaceの増加に一致した骨梁面積の増加が12週齢 でみられ,顎関節の成長の思春期性スパートと考えられた。顎関節の成長においてもE2が直接的,あるいは間接 的に重要な役割を有していることが示唆された。 2)cTL群の軟骨層の厚径は8∼12週齢において週齢が進むに従い減少を示し,顎関節軟骨層における思春期 性スパートと考えられた。 63
3)CTL群における軟骨下骨梁や軟骨層の週齢による変化は部位によりパターンが異なり,これは顎関節に加 わる校合力の大きさや唆合力を負担する部位の違いによる影響と考えられた。 4)Abr群においては臼歯削合後,AntおよびCentにおいて軟骨層の厚径の増加,骨梁面積の増加が4週目ま でに認められたが,Postでは変化は認められなかった。これら部位による反応の差は1日歯削合に伴い関節頭に 加わる校合力の大きさや部位が変化したためと考えられた。 5)Abr群における軟骨層や骨梁の変化はt 8週目にはCTL群と有意差がなく,正常化していた。唆合の変化 に伴う顎関節頭のremodelingの変化は,一過性で可逆的な変化であると考えられた。 6)0VX群では一過性の軟骨層厚径の増加と,持続的な骨梁面積の減少が認められ,卵巣摘出により顎関節 にもosteoporotic changeが惹起されることが確認された。 7)0VX+Abr群においては,軟骨層厚径はAntおよびCentにおいて一過性の増加がみられたがPostでは変 化はみられなかった0骨梁の変化もAntおよびCentにおいて4週目に増加がみられ,これらは校合の変化に伴う 影響と考えられ,4)の結果からも臼歯削合に伴う影響は前方部により強くみられるものと考えられた。 8)0VX+Abr群における骨梁の増加は8過日には減少していたが,これは卵巣摘出による影響と考えられ, 特にPost部でより強く認められた。 9)0VX+Abr群では,病理組織学的所見において関節頭前縁部におけるfibrouszoneの肥厚,軟骨層の月隈 変性,Calcifiedzoneの増加,軟骨下骨梁の硬化像と,後方部における骨梁面積の著しい減少が認められ,前方 部でのosteophyteの形成と後方部でのosteoporoticchangeへの移行が示唆された。 10)0VX+Abr群では,血清中のE2およびCTは有意に減少し,逆にPTH-Cは二相性の変化を示し2週目まで は減少し,その後8過日まで増加を示した。以上の結果から,卵巣摘出によるE2の減少はl直接的に,あるいは CT・PTH-Cの血清中濃度を変化させ間接的に顎関節のremodelingに影響を及ぼし,唆合変化に伴う関節頭の可 逆性の変化をdegenerativechangeへと移行させうる可能性が示唆された。 11)軟Ⅹ線写真では・deformity以外軟骨や骨梁の変化はdetectされず,顎関節のosteoarthrosisにおける初期 変化は必ずしもⅩ線検査にてdetectし得ないことが示唆された。 論文審査の結果の要旨 申請者 奥田 孝は・顎関節症の発症機序に閲し・特に女性ホルモンと唆合異常との関連を臼歯の削合と卵巣 摘出をラットに行い・顎関節における変化を組織学的に検討し,卵巣摘出によるE2の減少は,顎関節の remodelingの活動を抑制し,退行性病変へと移行させることを明らかにした。 この研究は・顎関節症の研究に新しい知見を加え,口腔外科学,関節外科学の進歩に少なからず寄与するとこ ろ大であると認める。 [主論文公表誌]
Alteration ofTemporomandibularJoint Remodelingln theGrowlngPeriod; Effect of Ovariectomy and Reduction of MaximalIntercuspalPosition
平成7年3月発行 ActaSch Med Univ Gifu43(2):264∼274,1995