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EMRからEHRに発展する医療情報ソリューション

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Academic year: 2021

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1.はじめに

わが国における医療分野の標準化は,通信規約や標準マ スタだけでなく運用も含めた標準化が急速に整備されつつあ る。今後,医療機関の間で利用される診療情報(生涯健康 情報)であるEHR(Electronic Health Record)を普及させてい くためにも,医療情報システムにおける標準化の推進は重要 な課題である(図1参照)。

医 療 機 関 内で利 用される電 子カルテシステム( E M R: Electronic Medical Record)は,数十の部門システムから成る 巨大システムである。 従来は,シングルベンダーによる構築も行われていたが,シ ステム範囲の拡大,顧客ニーズの多様化により,最近は個々 の部門システムを組み合わせて構築するマルチベンダー方式 へとシフトしている。 しかし,システム間の連携は標準化作業の遅れもあり,ベ ンダー・医療機関双方において多大な労力が必要とされてきた。 本来は標準規約に沿ってシステム間を接続すれば簡単に システム間連携できるはずであるが,具体的な使用方法が提 示されていないこともあり,簡単に接続できないのが実情 であった。通信規約の代表的なプロトコルにHL7(Health Level 7)が存在するが,(1)一連の業務を想定したメッセージ 送受信のタイミングが規定されていない,(2)オプションが多す ぎてベンダー間で解釈が行き違うことがある,(3)運用上必要 となる項目であるにもかかわらず設定するフィールドがないな ど,多くの問題を抱えていた。 このような状況を考慮し,打開する目的で発足したのが IHE(Integrating the Healthcare Enterprise)である。IHEとは 1999年米国で始まった医療連携のための情報統合化プロ ジェクトである。マルチベンダーシステム実装時に医療情報の 円滑な連携を可能とする標準規格DICOM(Digital Imaging

EMR

からEHRに発展する医療情報ソリューション

Future Healthcare Information Systems Developing from EMR to EHR

村上 芳樹

Yoshiki Murakami

芳賀 雅司

Masashi Haga

古沢 亜利耶

Ariya Furusawa 電子カルテ(EMR) 診療所 大学病院 標準化対応(IHE) 電子カルテ(EMR) 標準化対応(IHE) ドキュメント リポジトリ ドキュメント リポジトリ 地域中核病院 電子カルテ(EMR) 標準化対応(IHE) ドキュメント リポジトリ EHR ドキュメント レジストリ 電子カルテ(EMR) 診療所 標準化対応(IHE) ドキュメント リポジトリ 電子カルテ(EMR) 登録 登録 登録 登録 登録 検索 取得 診療所 標準化対応(IHE) ドキュメント リポジトリ

注:略語説明 EHR(Electronic Health Record:医療機関の間で利用される診療情報),EMR(Electronic Medical Record:医療機関内で利用される診療情報) IHE(Integrating the Healthcare Enterprise)

図1 EMRからEHRにつながるトータルソリューションの実現 標準化に対応した医療情報システムが普及することにより,施設間での診療情報が共有可能となる。各医療機関の診療情報はドキュメントの所在を管理するドキュ メントレジストリに登録することで,ドキュメントリポジトリがどこにあっても簡単に検索,取得が行えるようになる。 38 Vol.88 No.09 712-713 2006.09 健康・安心を支える日立グループの先進医療ソリューション

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39 and Communications in Medicine)やHL7の統合的運用方法

を示したガイドラインであり,その日本版がIHE-Jである。 ここでは,医療情報システムの標準化と,IHE-Jに対応した E M Rを実 現 する日 立製 作 所 の病 院 情 報ソリューション 「HIHOPSシリーズ」,および岡崎市民病院への導入事例に ついて述べる。 2.IHE-Jの概要 部門システムとの連携を考える場合,システム単位よりも, システムを適度な粒度の機能ユニットに分解したほうが整理し やすい。システムを機能ユニットに分解し,機能ユニット間で やり取りされる処理内容を設定することで,実務に即した業務 フローのモデル化が簡単に行えるようになる。 IHEではこの考えを基にガイドラインが作成されており,前述 の機能ユニットを「アクタ」,各アクタ間の処理内容を「トランザ クション」と呼び,テーマごとにモデル化したものを「統合プロ ファイル」と呼んでいる。 2.1アクタとトランザクション 放射線業務の一連の流れをシステム間の連携で考えた場 合,医療事務システム,オーダーエントリシステム,放射線科 情報システム(RIS:Radiology Information System),画像管理 システム(PACS:Picture Archiving & Communication System), 検査装置(Modality)の5システムで表現できるが,5システム では粒度が大きすぎるため,IHEでは適度な粒度の機能ユ ニット(アクタ)に分解し,業務フローを設定する(図2参照)。 この5システムは12のアクタに分解することで,きめ細かな業 務フローが作成可能となる。 代表的なアクタとしては,患者登録を行うADT(Admission Discharge Transfer),オーダー発行を行うOP(Order Placer), オーダーの実施管理を行うOF(Order Filler)などがある。

また,必要な処理業務に対応したトランザクションをアクタ間 に定義している。例えば,ADTは登録された患者情報をどの ような形式でOPに伝えるのか,OPはオーダー情報をOFにど のように伝えるかなどを定めている。 2.2統合プロファイル 統合プロファイルとは,医療機関における共通業務シナリオ に対する標準的な情報化ソリューションと言える。 システム全体で整合性が確保されることを目的に作られて おり,アクタ間のインタフェースを完全に定義することで,標準 規格の適用にあたっては,ほとんどオプションをつくることなく 対応可能となっている。現在,統合プロファイル(放射線部門) は全部で15定義されている(図3参照)。 この中から,システム全体に関係する通常運用のワークフ ローSWF(Scheduled Workflow)と患者情報の整合性確保 PIR(Patient Information Reconciliation)について以下に述 べる。 2.2.1 SWF SWFとは,通常運用ワークフローの統合プロファイルである。 医療情報システムの標準化は,EHR(医療機関の間で利用される診療情報)を実現するうえで重要である。 医療分野は,標準化の遅れが指摘されてきたが,近年,急速に整備されつつある。 通信規約や標準マスタだけでなく,医療連携のための情報統合化プロジェクト「IHE」が発足し, 標準規約に沿った医療情報の円滑な連携が可能になってきた。 IHEは放射線分野からスタートし,臨床検査・循環器など,対応範囲を急速に広げており,EHRを最終目標として活動を進めている。 日立製作所は,国内で最も広範囲にIHEに準拠した統合情報システムを2006年1月に岡崎市民病院で稼動させており, EHRの実現に向けてソリューションを拡充している。 Feature Article ADT RR RC EC IM, IA ID OP CP 医療事務システム 画像管理システム(PACS) オーダエントリシステム 放射線科情報システム(RIS) 患者登録 オーダ発行 OF, PPSM オーダの実施管理 検査装置(Modality) AM 撮影 会計処理 レポート保管 レポート保管 レポート作成 画像管理・保存 CAD/3D ワークステーション 画像検索 画像保存 撮影完了 検査情報リスト 受付・完了通知 検査オーダ 患者情報 撮影完了 画像検索 読影 ワークステーション レポート情報 検査予約情報

注:略語説明 ADT(Admission Discharge Transfer),CP(Charge Posted) OP(Order Placer),OF(Order Filler)

PPSM(Performed Procedure Step Manager) PACS(Picture Archiving & Communication System)

RR(Report Reader),RC(Report Creator),EC(Evidence Creator) ID(Image Display),IM(Image Manager),IA(Image Archive) AM(Acquisition Modality),RIS(Radiology Information System)

図2 IHEにおける機能ユニット(アクタ)への分解

5システムを12のアクタに分解することで,きめ細かな業務フロー作成を可能と した。

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40 Vol.88 No.09 714-715 2006.09 健康・安心を支える日立グループの先進医療ソリューション 患者登録からオーダー発行,検査受付,検査実施,実施情 報送信,画像データの保存管理・表示までの一連の流れをモ デル化しており,上流から下流へのスムーズなメッセージ伝達 を可能としている。 2.2.2 PIR PIRとは患者情報の整合性を確保するための統合プロファ イルである。臨床の現場では,一度登録された患者情報に誤 りがある場合や,患者情報が不明または不完全な場合があ り,そのまま検査しなければならないことがある。 このような場合は,検査を実施する前に,ADTで仮の患者 情報を登録しOPに配信する。検査終了後,患者の身元が明 確になった時点で,ADTで正式な患者情報を登録することに よってOPに対して再度配信処理が行われ,システム間の患 者情報の整合性が確保される。PIRで対象となる患者情報は, 氏名・生年月日・性別・住所・連絡先などである。この統合プ ロファイルは救急患者や新生児患者などに有効であり,PIRに 対応していない場合は,システム単位に患者情報を修正する こととなり,非効率となる。 3「HIHOPSシリーズ」の対応 日立製作所の病院情報ソリューション「HIHOPSシリーズ」 は,電子カルテで必要となるアクタ(ADT,OP)と統合プロファ イル(PIR,SWF)に完全対応している。さらにIHE-Jに完全準 拠したうえで,実運用を考慮した拡張機能も備えている。こ の拡張機能の中で特に効果が大きいのが PIRの拡張機能である。 P I Rのメリットについては前 述したが , IHE-Jで規定されているのは患者基本情報 (氏名,生年月日といった医療事務システ ムで入力される項目)だけである。 日立製作所は,患者基本情報だけでな く患者身体情報(感染症,アレルギー情報 など)も必要であると判断し,IHE-Jに完全準 拠したうえで患者身体情報も扱えるように なっている。 また,日立製作所のADTは,医療事務 システムと電子カルテシステムを論理的に統 合する形で実現しており,患者基本情報以 外に患者身体情報もPIRとして扱えるように なっている。患者基本情報・患者身体情報 どちらの内容が変更されてもADTから部門 システムに対してリアルタイム配信される。 メッセージはHL7Ver.2.5でやり取りされてお り,患者身体情報に関しては病院ごとに項 目が異なる可能性があるため,拡張性を考慮しHL7メッセー ジ内にXML(Extensible Markup Language)を埋め込む形で対 応した。XMLのタグは極力J-MIX(電子保存された診療録情 報の交換のためのデータ項目セット)に準拠した形で実装され ており,簡単に項目を設定できるようになっている。さらに,検 査システムから得られる感染症情報などについては,検査結 果が到着した時点で自動的にADTから部門システムに配信 される仕組みも備えている(図4参照)。 患者基本情報 医療事務システム 部門システム 部門システム 部門システム 部門システム 部門システム 電子カルテシステム (1)患者番号 (2)患者氏名 (3)生年月日 (4)性別 (5)住所 (6)連絡先 (7)死亡日時 (8)入外区分 (9)患者所在場所など HL7 Ver.2.5 患者身体情報 (1)感染症情報 (2)輸血関連情報 (3)薬剤アレルギー (4)食事アレルギー (5)造影剤・体内金属 (6)治験情報 (7)抗生剤テスト歴 (8)障害・介助・通訳 (9)身体計測情報など ADT 図4 PIRの拡張 検査システムから得られる情報は,自動的にADTから部門システムに配信され る仕組みも備えている。 通常運用のワークフロー NMI 核医学 イメージ CPI 画像表示の 一貫性確保 ED エビデンス ドキュメント KIN キーイメージ ノート PGP PIR 複数検査の 一括処理 PWF 画像処理 ワークフロー 放射線部門情報へのアクセス RWF レポーティング ワークフロー TCE SWF SINR ARI 可搬媒体による画像交換 PDI 施設間画像データ共有 XDS-I 単純な画像と 数値付き レポート CHG 放射線検査の 会計 ティーチング ファイルと 臨床データ エクスポート

注:略語説明 SWF(Scheduled Workflow),PIR(Patient Information Reconciliation) CHG(Charge Posting),PGP(Presentation of Grouped Procedure) PWF(Post-Processing Workflow),RWF(Reporting Workflow)

TCE(Teaching File and Clinical Trial Export),NMI(Nuclear Medicine Images) CPI(Consistent Presentation of Image),ED(Evidence Document)

KIN(Key Image Note),SINR(Simple Image & Numeric Report) ARI(Access to Radiology Information),PDI(Portable Data for Imaging) XDS-I(Cross-Enterprise Document Sharing for Imaging)

図3 統合プロファイル(放射線部門)

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41 4.IHE-J対応の統合情報システムの導入事例 岡崎市民病院は,電子カルテシステム「HIHOPS-HR」を中 心とした15ベンダー44部門システムから成るIHE-J対応の統合 情報システムを2006年1月から運用している。岡崎市民病院 は,救命救急センターを擁する岡崎地区唯一の中核病院で あり,病床数650,外来患者数1日あたり約1,500人の大規 模病院である。 国内で最も広範囲にIHE-Jに準拠しており,画像検査業 務・生理検査業務・検体検査業務の3業務と,調剤・給食・眼 科・透 析などを含めた8 部 門の連 携を実 現している(図 5 参照)。大きなトラブルもなく順調に稼動を続けており,IHE-J の統合プロファイルの完成度の高さも実証できたものと考える。 5.おわりに ここでは,医療情報システムの標準化と,日立製作所の病 院情報ソリューション「HIHOPSシリーズ」,および岡崎市民病 院への導入事例について述べた。 他分野と比較して標準化の遅れが指摘されてきた医療分 野であるが,近年政策と技術開発の両輪がかみ合い,急速 に「標準化技術」が整備されつつある。日立製作所は,EHR の実現に向け,今後も,ソリューションの拡充に努めていく考 えである。 終わりに,この論文の執筆にあたっては岡崎市民病院の関 執筆者紹介 村上 芳樹 1983年日立製作所入社,情報・通信グループ 公共システ ム事業部 医療情報システム本部 所属 現在,医療情報システムの製品開発に従事 日本医療情報学会会員 Feature Article 古沢 亜利耶 2003年日立製作所入社,情報・通信グループ 公共システ ム営業統括本部 医療営業部 所属 現在,医療情報システムの製品企画に従事 芳賀 雅司 1993年日立製作所入社,情報・通信グループ 公共システ ム事業部 医療情報システム本部 所属 現在,医療情報システムの製品開発に従事 日本医療情報学会会員 1)IHE-J渉外委員会:IHE入門,篠原出版新社(2005.4) 2)JAHIS(保健医療福祉情報システム工業会),http://www.jahis.jp 3)MEDIS-DC(医療情報システム開発センター), http://www.medis.or.jp 4)IHE-J,http://www.ihe-j.org 参考文献など 患者登録 電子カルテシステム PACS/  レポートクライアント PIRのみ対応 PACS/  レポートサーバ IMAGER RIS/  生理検査システム 検体検査システム 検像システム モダリティ群 40台 心電図システム Time Server (時刻同期) サーバ台数 クライアント台数 検体検査 画像検査 ADT Order Placer

HL7 Ver. 2.5 JLAC 10 JLAC 10 JJ1017 Ver.3 JJ1017 Ver.3 JJ1017 Ver.3 Order Placer 生理検査

Order Placer Print Composer

Image Archive DSS/Order Filler Order Filler MFER規格 Acquisition Modality Order Filler Image Manager Report Repository Print Server Order Result Tracker Automation Manager : 52台(部門システム含) : 800台(高精細モニタ:約200台) 調剤支援システム 透析システム 眼科システム 栄養指導システム

注:略語説明 DSS(Decision Support System),MFER(Medical Waveform Format Encoding Rules)

図5 岡崎市民病院の統合情報システム(IHE-J適用部分から抜粋)

統合プロファイルとして放射線業務(SWF)と検体検査業務(LSWF:Laboratory Scheduled Workflow),患者情報の整合性確保(PIR),画像表示の一貫性確 保(CPI)に対応している。標準規格・コードについてもHL7 Ver.2.5(放射線データ交換規約Ver.1.1準拠),および標準画像検査マスタJJ1017 Ver.3,臨床検査コー ドJLAC10を採用するなど,統合情報システムの標準化を図っている。

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