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肺がん発生における薬物代謝酵素の遺伝子多型の役割

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平成11年4月15日 第46巻 日本公衛誌 第4号 241

肺がん発生における薬物代謝酵素の遺伝子多型の役割

キヨハラ チカコ

清原千香子

オオノ ヨシユキ

大野

良之

 発がん性物質は二つの異なる反応系を経て解毒される。第1相において発がん性物質は代謝的 に活性化(中間代謝産物の生成)されDNAと結合し,突然変異を起こす。この第1相に関与し ているのが薬物代謝酵素cytochrome P450 (CYP)である。CYPの分子種であるCYP1A1は芳香 族炭化水素水酸化酵素(aryl hydrocarbon hyroxylase, AHH)とも呼ばれている。CYP1A1 (AHH)は煙草煙中に存在するbenzo(a)pyreneなどの多環芳香族炭化水素の代謝的活性に関与 しているので,肺がん発生リスクとの関連が示唆されている。分子生物学の進歩により薬物代謝 酵素の遺伝子多型から個体の発がん感受性をより容易に判定することができるようになった。 CYP1A1遺伝子の多型は日本人においては肺がんとの関連が示されている。第1相に引き続い て起こる第2相はグルタチオンS-転移酵素(glutathione S-transferases, GSTs)などの酵素が関 与しており,中間代謝産物の解毒的代謝が行われる。GSTには4つの分子種(GSTA,GSTM, GSTPおよびGSTT)があり,GSTAを除き遺伝子の多型性が報告されている。GSTM1活性の 欠損は両方の対立遺伝子が欠失した場合に生じ,人種を問わず集団中に約50%存在する。 GSTM1はCYP1A1よりも肺がん発生への関与は小さいと考えられている。個体の感受性は, 第1相と第2相を組み合わせることで鋭敏に決定できる。第1相と第2相における肺がん感受性 遺伝子型を有する者への禁煙指導が,今後も上昇傾向にある肺がん罹患率に歯止めをかけるのに 有効であろう。

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