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日本の天然ガス・LNGシフトとガスセキュリティー

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Academic year: 2021

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 2019年は、1969年11月に日本へのLNG(液化天然ガス)輸入が開始されてから、50年という大きな 節目となる。天然ガスは、石油・石炭など他の化石燃料に比べて、環境性(地球温暖化の原因物質であ るCO₂ 排出量をはじめ、大気汚染・健康被害の原因となる窒素酸化物〈NOx〉・硫黄酸化物〈SOx〉・粒 子状物質〈PM〉の排出が少ない)に優れ、産出地域の偏在も少ないといった特徴がある。  近年は、シェールガス革命を背景に、豊富な(Abundant)資源量を、手ごろな価格(Affordable)で、 安定性・信頼性の高い(Reliable)エネルギー源として、大気汚染対策、地球温暖化対策と経済成長を両 立させながら、また、新興国のエネルギーアクセスの向上に寄与し、将来の低炭素社会を実現していく までの間の重要なエネルギー源として利用拡大が見込まれている。  日本においては、オイルショック以降、エネルギー源の多様化、輸入先の分散化、環境対策のため、 世界に先駆けてLNGを導入した。その後、発電・産業・民生等さまざまな部門でのLNGの利用が拡大し、 更に、東日本大震災後の原発稼働の停止に伴うLNG火力発電所の稼働増により、2014年には過去最大 の89百万トンのLNG輸入を行っている。一方で、現行のエネルギー基本計画を前提にすれば、中長期 的には再生エネルギー(再エネ)・原発の稼働増、省エネの進展等により、日本のLNG需要は減少(2030 年に約62百万トン)する見込みである。また、気候変動に関する対応が求められるなか、現在のベース ロード電源を担う石炭火力の利用についても国際的な圧力が高まりつつあり、現在想定するエネルギー ミックスの実現が想定どおりに進まない場合、バランスの取れたエネルギー源である天然ガスが補完す るといった役割としてガスシフトも期待される。  2018年10月に開催されたLNG産消会議において、世耕経済産業大臣はLNGの利用の増大とともに「頼 れるエネルギー」であることがますます重要となり、LNGセキュリティー強化に向けた産消での連携を 呼び掛けた。各国が保有する資源・インフラ、経済成長の段階により対応策は異なるが、天然資源の多 くを輸入に頼る日本にとって、エネルギーは生活や経済活動を支える基盤となる。  本稿では、世界や日本における天然ガスシフトと、特に、LNGの特性をふまえ、日本におけるガス セキュリティーと、3E(Energy Security, Economic Efficiency, Environment)+S(Safety)のバランス の取れた実現のための方策について考察した。

じめに

日本の天然ガス・LNGシフトと

ガスセキュリティー

1.

世界における天然ガスシフト

(1)天然ガス需給、資源量動向

 IEA(International Energy Agency:国際エネルギー 機関)は2018年11月、2040年までの将来シナリオ、エ ネ ル ギ ー 需 給 に 関 す る 年 次 レ ポ ー ト World Energy Outlook 2018(WEO2018)を公表した。レポートの中 心的なシナリオである「新政策シナリオ」(New Policies Scenarios)においては、天然ガス需要は2040年に向け 約43%増(年率1.6%増)を見込み、一次エネルギー需要 の27%増(年率1.0%増)を大きく上回る(図1)。特に、 中国は 460Bcmの大幅増(2017 年 248Bcm→ 2040 年

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708Bcm)の見通しで、世界の需要増(1,646Bcm)の28% を占める。  天然ガスの資源量(Resource)は798Tcmと見積られ ており、このうち、非在来型(シェールガス・炭層メタ ン等)が約46%(370Tcm)を占める。また、経済性をもっ て 生 産 す る こ と が 可 能 と な る 確 認 埋 蔵 量(Proven Reserves)は221Tcmであり、2017年の生産量(3.8Tcm) の59年分に相当する(図3、図4)。  天然ガス供給見通しについては、現在、北米等を中心 にシェールガスの生産が増加しており、全体の 23%が 非在来型からの生産となっている。今後、この非在来型 (シェールガス・炭層メタン等)からの生産は、2040年 には数量で約2倍の1,744Bcm(全体の32%)に達する見 通しとなっている(図2)。 (2)天然ガス価格見通し ①IEA 見通し  2018 年 11 月に発表された IEAの WEO2018 におい ては、油価とともに LNG価格の将来見通しが引き下げ られた。特に、米国は埋蔵量、追加生産の柔軟性から、 米国天然ガス価格(HH価格)がLNGの価格を決める指標 となることが指摘されている。アジア着価格については、 米HH価格(3 ~ 4$/MMBtu)に、液化コスト・液化燃料・ 輸送費用に相当する5 ~ 6$/MMBtu程度を加えた価格を 上限とし、これを下回る価格競争力が新規LNGプロジェ クトの実現に向けた一つの目安となると考えられる。  油価に連動した LNG価格決定方式も残るが、日本着 の天然ガス(LNG)価格見通しは、油価(2017 年 52$/ bbl→2040年112$/bbl)にくらべて、緩やかな上昇(8.1$/ MMBtu→10.1$/MMBtu)に留まり、天然ガス利用の経 済性の向上が期待される(図5、図6)。 2,517 3,752 4,293 4,642 5,025 5,398 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 2000 2017 2025 2030 2035 2040 船舶燃料 ユーラシア 中東 アフリカ 欧州 中南米 北米 アジア(中・印・日除) 日本 インド 中国 年 Bcm 図1 地域別天然ガス需要見通し

出所:IEA World Energy Outlook 2018

50 28 19 51 103 134 44 11 15 5 10 9 10 21 66 41 18 40 11 10 53 7 0 5 0 0 17 21 134 84 47 101 122 171 139 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200Tcm

Conventional Tight gas Shale gas Coalbed methane ユーラシア 北米 中南米 欧州 アフリカ 中東 アジア

太平洋

図3 地域別天然ガス技術的可採資源量

出所:IEA World Energy Outlook 2018

2,506 3,768 4,294 4,641 5,023 5,401 196 851 1,229 1,744 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 2000 2017 2025 2030 2035 2040 アジア太平洋 ユーラシア 中東 アフリカ 欧州 中南米 北米 非在来型合計 Bcm 年 図2 地域別天然ガス供給見通し ※非在来型(シェールガス、炭層メタン等) 出所:IEA World Energy Outlook 2018

合計 221Tcm 北米 12 5% 北米 12 5% 中南米 9 3% 欧州 6 3% アフリカ 18 8% 中東 81 37% 中東 81 37% ユーラシア 76 34% ユーラシア 76 34% アジア太平洋 20 9% 図4 地域別確認埋蔵量

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②米EIA見通し

 2019年1月に公表された、米エネルギー省情報局(EIA) のAnnual Energy Outlook(AEO)では、HH価格は低コ ストで開発できる資源量が豊富にあること等により前年 見通しより大幅に引き下げられ、2030年3.76$/MMBtu (2018 年 予 測 は、4.26$/MMBtu)、2040 年 4.21$/ MMBtu(2018年予測は、4.50$/MMBtu)、2030年4.26$/ MMBtu(2017 年予測は 5.0$/MMBtu)、2040 年 4.50$/ MMBtu(2017 年予測は 5.07$/MMBtu)となった。米 EIAからは日本着価格の想定は示されていないが、仮に 液化に必要な燃料費・域内パイプライン費用等をHH価 格の115%、液化コストを3$/MMBtu、パナマ運河を経 由した日本までの輸送費を 2$/MMBtuと想定すると 2030 年 9.3$/MMBtu、2040 年 9.8$/MMBtuと IEAの想

定を下回る(図7)。 ③天然ガスの付加価値と競争力  天然ガスは、発電、生産工程の熱源・供給原料、住宅 暖房、旅客・貨物運送の燃料など、あらゆるエネルギー 用途に利用できる数少ないエネルギー源である。  特に、発電用途については、石炭や再エネなどが主な 競合相手となる。  北米では、シェール革命によるコスト低減により、石 炭火力と経済性で競合できる水準(3$/MMBtu)までに天 然ガス価格は低下している。一方で、日本を始めとする アジアにおいては、LNGとしての活用が前提となり液 化・輸送・貯蔵に要するコストが構造的に発生する。 LNG火力が石炭火力に対する優位性を持つためには、 表1 IEA 油価・天然ガス・石炭 価格想定

出所: IEA World Energy Outlook 2018 欧州・中国の価格はパイプライン・LNG 輸入バランスを反映したもの。日本の天然ガス価格は、通関時点での LNG 価格。

2000 2010 2017 New Policies Current Policies

Sustainable Development 2025 2030 2035 2040 2025 2040 2025 2040 原油($/bbl) 39 88 52 88 96 105 112 101 137 74 64 天然ガス($/MMBtu) 米国 6.0 4.9 3.0 3.3 3.8 4.3 4.9 3.4 3.3 3.3 3.6 欧州 3.9 8.4 5.8 7.8 8.2 8.6 9.0 7.9 9.4 7.5 7.7 中国 3.6 7.5 6.5 9.2 9.4 9.5 9.8 9.3 10.2 8.3 8.5 日本 6.6 12.3 8.1 9.8 10.0 10.0 10.1 9.9 10.5 9.0 8.8 一般炭($/tonne) 米国 38 64 60 63 63 64 64 64 69 58 56 欧州 47 103 85 80 83 84 85 84 98 69 66 日本 45 120 95 85 88 89 90 89 105 74 70 中国沿岸部 35 130 102 91 93 94 106 95 106 81 79 USD/bbl 0 20 40 60 80 100 120 140 2 0 1 0 2 0 1 2 2 0 1 4 2 0 1 6 2 0 1 8 2 0 2 0 2 0 2 2 2 0 2 4 2 0 2 6 2 0 2 8 2 0 3 0 2 0 3 2 2 0 3 4 2 0 3 6 2 0 3 8 2 0 4 0

WEO 2018 WEO 2017 WEO 2016 WEO 2012

図5 IEA 油価想定

出所: IEA:World energy outlook。実質価格(2017 年、2016 年、2015 年、 2011 年価格) 0 2 4 6 8 10 12 14 16 2 0 1 0 2 0 1 2 2 0 1 4 2 0 1 6 2 0 1 8 2 0 2 0 2 0 2 2 2 0 2 4 2 0 2 6 2 0 2 8 2 0 3 0 2 0 3 2 2 0 3 4 2 0 3 6 2 0 3 8 2 0 4 0 USD/MMbtu

WEO 2018 WEO 2017 WEO 2016 WEO 2012

図6 IEA 天然ガス(日本着 LNG)価格想定

出所: IEA:World energy outlook。実質価格(2017 年、2016 年、2015 年、 2011 年価格)

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現行の約半分の 4 ~ 5$/MMBtuまで LNG価格の引き下 げが必要となる。これまでも、春から夏にかけての非需 要期のスポット価格で一時的には 4$/MMBtu台まで低 下したことはあったが、新規プロジェクトにおいて必要 な生産・投資を賄える水準としては、8 ~ 10$/MMBtu が一つの目安となる。  また、パリ協定においては、新興国も含めた気候変動 対応の必要性について合意がなされ、地球規模でのCO2 削減のための取り組みも更に進むものと見込まれる。競 合燃料としての再エネ・蓄電池の技術革新、コストダウ ンに加え、CO2排出への価格付けは、超長期的には天然 ガス火力の価格競争力にも影響を及ぼす。仮に、炭素価 格100$/t-CO2とすれば、炭素価格だけで5.1$/MMBtu、 発電コストに換算すると、3.6c/kWh* 1に達する。再エ ネの大量導入に伴う負荷変動・系統の周波数変動を補う ための役割が期待されるものの、価格競争力の低下、天 然ガス火力の稼働時間の減少、最先端機器の導入・高効 率化とも合わせて天然ガス需要増を抑制する可能性もあ る。  一方で、新興国においては、都市部で特に深刻な大気 汚染対策の遅れが経済成長の制約要因となる可能性もあ る。かつて日本で LNG導入が検討され、その後、順調 に利用が拡大してきたのは、経済性だけではなく、環境 性、輸入先の分散・燃料の多様化、CO2排出削減といっ たさまざまな理由、付加価値によるものであり、日本の 経済発展の基盤となってきたともいえる。今後も、エネ ルギー需要が増加する各国で、安定性、信頼性、柔軟性、 費用対効果に優れた低排出に向けて道筋をつけることが できる、バランスの取れたエネルギー源としての天然ガ ス拡大は当面、重要かつ必要であると考えられる。  IEAの WEO2018 においても、産業革命以前からの 気温上昇を2 ℃未満に抑え、新興国のエネルギーアクセ スの向上・大気環境改善にも寄与する、持続可能な開発 シナリオ(Sustainable Development Scenario)では、天 然ガスは2017年から2040年にかけて10%増(年率0.4% 増)が見込まれる。同シナリオにおいて、2017 年から 2040 年までに一次エネルギー需要は年率 0.1%減だが、 天然ガスについては新政策シナリオに比べて伸びは少な いものの年率0.4%増を見込んでおり、石油(年率1.5%の 減少)、石炭(年率3.6%の減少)と比較して化石燃料のな かでより大きな役割が期待されている。 年 0 1 2 3 4 5 6 7 8 2 0 1 0 2 0 1 2 2 0 1 4 2 0 1 6 2 0 1 8 2 0 2 0 2 0 3 0 2 0 3 2 2 0 3 4 2 0 3 6 2 0 3 8 2 0 4 0

AEO2019 AEO2018 AEO2017 AEO2012

USD/MMbtu

図7 EIA ガス価格想定

出所: 米 EIA Annual Energy Outlook 2019 をもとに、JOGMEC 作成。 価格は 2018 年実質価格。 0 2 4 6 8 10 12 原料ガスHH価格×115% 液化費用(3$/MMBtu) 輸送費(2$/MMBtu) 年 2 0 1 7 2 0 1 9 2 0 25 2 0 31 2 0 33 2 0 35 2 0 37 2 0 39 2 0 41 2 0 43 2 0 45 2 0 47 2 0 49 $/MMBtu 図8 米国産 LNG 日本着価格想定

出所: 米 EIA Annual Energy Outlook 2019 をもとに、JOGMEC 作成。 価格は 2018 年実質価格。 50 100 150 200 250 300 350 400 450 0 5 10 15 20 石炭単価 $/t LNG単価 $/MMBtu 燃料費のみ 燃料費+固定費・操業費 燃料費+固定費・操業費+CO₂対策費 LNG8$/MMBtu等価 ①燃料のみ:156$/t ②①+固定費:92$/t ③②+CO₂費:44$/t 固定費・CO₂費用込みで あれば、LNG火力優位 石炭80ドル/t等価 ①燃料のみ:4.1$/MMBtu ②①+固定費:8.1$/tMMBtu ③②+CO₂費:10.6$/MMBtu 図9 石炭・天然ガス価格競争力比較 出所: 長期エネルギー需給見通し小委員会に対する発電コスト等の検証 に関する報告(平成 27 年 4 月、経済産業省)を参考に JOGMEC 試算。発電効率(LNG 50%、石炭 40%)、資本費・運転維持費(LNG 1.6 円 /kWh、石炭 3.8 円 /kWh)、CO₂ 対策費(LNG 1.3 円 /kWh、 石炭 3.0 円 /kWh、約 4,000 円 /t-CO₂ 相当)、為替レート 100 円 /USD、発熱量(LNG 54.6GJ/t、石炭 25.7GJ/t)を基に JOGMEC 作成

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2.

LNGの需給、取引動向

(1)地域により異なる天然ガス・LNG利用

 天然ガスはマイナス162℃まで冷却すると液体(LNG: Liquefied Natural Gas)となり、体積は気体の600分の1 になって、専用の LNGタンカーで大量に輸送が可能と なる。  世界全体の天然ガス需要に対する LNGの割合は、増 加傾向にあるものの約 10%程度で、多くは、需要地の 近傍でのパイプラインによる供給・取引・消費となって いる。  米国では、カナダ、メキシコとのパイプラインによる 取引を含め、実質的には域内でほぼ生産・消費のバラン スが取れており、今後シェールガスの生産増により、パ イプライン(メキシコ向)、LNGで各国への輸出増が予 想される。欧州では、オランダ、ノルウェー、英国等か らの生産量は減少傾向にあるものの、それでも域内生産 で消費量の約半分を賄い、残りはロシア、アルジェリア、 カタール等からの輸入を行う。ロシアは主に欧州への天 然ガスパイプラインを通じた輸出とアジア向けにはサハ リンからの LNG輸出を行い、最近は、北極圏ヤマル半 島からの LNG出荷も開始した。中国は国内生産に加え て、ミャンマー、トルクメニスタンからのパイプライン による天然ガス輸入、豪州、カタールからの LNG輸入 を行う。インドについては、国内の天然ガス生産および、 カタール等からのLNGの輸入を行っている。 (2)LNG市場の拡大と変革  1960 年代に天然ガスの液化技術・輸送技術が進展・ 実用化され、日本、韓国といった大陸間ガスパイプライ ンがない北東アジア向けを中心に LNGによる取引が増 加してきた。  海上もしくは陸上のガス田から産出された天然ガス は、随伴するコンデンセートの分離、炭酸ガス・硫化水 素・水銀等の除去、脱水処理等の前処理プロセスを経た 後、冷却・液化・貯蔵され、LNGタンカーで輸送される。 需要地では、LNGとして陸上設備において、受入・貯 蔵され、需要に応じ、(海)水・空気・蒸気等により加温、 再ガス化され、パイプラインを通じ、発電・家庭向け等 に利用される。  LNGプロジェクトの立ち上げには、長期の LNG生産 を賄う埋蔵量が存在し、巨額の初期投資を賄う資金調達 の裏付けとなる信用力の高い買主との長期の引取契約を 締結し、また、需要側でも LNG受入・貯蔵・再ガス化 基地、火力発電所・都市ガス転換といった需要の確保が 必要となる。このバリューチェーン全体にかかる巨額の 建設資金やまとまった需要量の確保が必要なため、供給 側でも需要側でも複数の企業によるコンソーシアムが組 まれることも多くあった。また、プロジェクトの立ち上 げまでの期間、資金、ノウハウ、リスクが高い参入障壁 となり、LNG市場のプレイヤーも限られ、取引に際し ても仕向地の変更が制限されていた。  これに対し、2016 年 2 月に、米ルイジアナ州サビン パス LNG基地から初出荷された北米シェールガス由来 の LNG輸出は、主に以下の点から過去の LNGのビジネ スモデルと比較して革新的なビジネスモデルであったと いえる。 ◦ 上流資源開発と液化プロジェクトの分離。上流の資 源量によらず、買主の需要に応じて LNG生産能力を 決定できる。 ◦ 原則として、仕向地に関する制限なし。 ◦ 地域の天然ガス価格指標であった HH価格を、世界 の買主が活用可能(2000年代に入り本格化したシェー ルガス革命による豊富で低コストな原料ガスを、北 米の発達したパイプライン網から確保)。 ◦ 既存の LNG受入基地に液化設備を併設し、桟橋・タ ンク等を活用したコストダウン、建設遅延リスクの 低減。  また、LNG液化プロジェクトの、小型化、モジュー ル化も、技術面・投資リスク低減から注目される傾向で ある。これまで 1 系列 400 万~ 500 万トン /年の設備で プロジェクトにあわせた最適な設計・液化効率の向上・ 生 産 量 -400 -200 0 200 400 600 800 1,000 日本 米国 欧州 ロシア 中国 インド Bcm/年 PLガス国内生産・国内消費 PLガス輸入 LNG輸入 PLガス輸出 LNG輸出 国内 ・ 域内消費 輸 出 生 産 量 生 産 量 図10 各国の天然ガス・LNG の生産・消費(2017) 出所:BP Statistical Review 2018

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大規模化によるコスト低減が図られてきた。一方、米 Elba Islandでは、25万トン/年×10系列を予定しており、 最終投資決定(FID)から約3年での稼働開始を見込んで いる。Venture Global LNGの推進するCalcasieu Pass プ ロジェクトも、120mtpa×9 系列で、FIDから約 3 年で の稼働を目指している。上流開発と液化プラントの建設 を一体で行う必要がない北米の LNGプロジェクトにお いては、需要・契約数量に応じ、モジュール化した設備 の導入数により柔軟な計画・投資決定も可能となる。  探鉱から生産までに時間を要する石油・天然ガス産業 は、需要増局面における供給力不足(FIDから生産開始ま でのタイムラグ)による価格高騰、その後の追加投資設備 の稼働開始・供給増による価格低下といったブームとバ ストのサイクルを繰り返してきた。北米のLNGプロジェ クトにみられるこういった設備・供給力での柔軟性、リー ドタイムの短期化は、市場環境の平準化に一定程度寄与 するものと考えられる。  需要側についても、いくつかの変革がみられる。これ までの日本を始めとするアジアの伝統的な買主は、国内 市場の自由化の進展、原発稼働、再エネの技術革新・コ ストダウン等の影響により、長期需要見通しの不確実性 が高まっているため、より短期・柔軟性の高い契約を指 向する傾向にある。中国、インドは中長期的には大きな 需要が見込まれるが、他燃料、国産資源開発、パイプラ 図11 従来型 LNG 開発 出所:各種資料より JOGMEC 作成 図12 米国での LNG 開発 出所:各種資料より JOGMEC 作成 図13 LNG バリューチェーン 出所:各種資料より JOGMEC 作成

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イン等の選択肢もあり、また政策により大きく天然ガス 需要が変化するという不確実性が内在する。  中国、インド以外の新興国での LNG導入も増えてい るが、総じて比較的小規模であり、LNG利用の経験、 信用力もこれまでの伝統的な LNG輸入国に比べて劣後 する。近年では、初期コストのファイナンスが難しい新 興国において、陸上の受入・貯蔵・再ガス化基地の機能 を、LNG船により代替するFSRU(Floating Storage and Re-gasification Unit、浮体式貯蔵・再ガス化設備)の導 入も進んでいる。これは、移動・転用が容易、着工から 稼働までの期間の短縮が可能であり、更に、将来の需要・ インフラ整備までの期間に限定した契約(傭ようせん船契約・トー リング契約)が可能となるといった面での優位性も評価 されている。  このような需要側の変化に対応するため、一定の規模 を有するメジャー等、供給源・供給先・価格指標・供給 時期等の分散を図り、新規 LNGプロジェクトからの長 期の引取りを担える、ポートフォリオ供給者(BGを買収 したShell、EngieのLNG部門を買収したTotal等)が存 在感を増しているのも最近の一つの特徴といえる。また、 Vitol、Trafigura、 Gunvor、 Glencoreといったトレーダー 販売量が 2017 年は約 2,700 万トン程度にまで拡大して いる。トレーダーは、リスク(リターン)の大きな上流へ の投資(参画)は少ないものの、必要に応じ、中期・短期 の LNG契約の引取者となり、また、最終受入が可能と なる欧州の受入基地のキャパシティー確保も行う。ト レーダーが取引に参加することで、市場価格に応じた地 域間の需給の調整、最適化が図られ、LNG市場の柔軟性・ 流動性向上にもつながる。 (3)価格動向  天然ガスの価格決定方式としては、北米や英国等、主 に産ガス国のパイプラインハブにおける市場価格、日本 のように、長期・原油(石油製品)価格に連動した価格決 定方式、北米からの LNG輸出のように地域のガス価格 に液化コスト・液化燃料・輸送費等を加味した価格、ま たこれらを組み合わせたものが挙げられる。  また、LNGの契約期間も、期間契約(契約期間中、所 定の算定方法で算出された価格で、継続的な売買が行わ れる)と、スポット契約(合意した価格で、単発・カーゴ 単位での取引が行われる)に大別される。スポット契約 は、各種統計により異なるものの、契約から3カ月以内(長 くとも、1 年以内)での引き渡しが行われるものが多く を占める。 ①日本向(LNG)  日本向けの LNGは依然として長期契約・原油価格連 動による価格決定方式が大半を占め、JCC(全日本平均 原油輸入価格)を指標とし、原油価格のレベルに応じた 一定の調整要素を加味した上で算出される。これにより、 WTI・ブレント原油価格から約4 ~ 5カ月、JCCと比較 して約3 ~ 4カ月のタイムラグを経て、JLC(Japan LNG Cocktail、全日本着平均LNG輸入価格)に反映されるこ ととなる。  今後は、北米産LNGの輸出開始により、HH価格に連 動した価格決定方式や、需給に応じて価格が決まるス ポット LNG比率の増大も見込まれる。しかしながら、 これまでのところ、日本の最終需要家が長期契約を締結 する米国産LNGは約1,000万トン/年程度に留まり、現在、 稼働しているものは、Cove Point LNG(液化能力525万 トン /年のうち、東京ガス 140 万トン /年、関西電力 80 万トン/年の契約)に留まる。今後、長期契約に基づく 米国カーゴの日本向け輸入数量の増加、アジアの需給を 反映した価格指標の導入・LNG市場流動性の向上によ り、油価連動方式の割合は相対的には低下すると考えら れるが、当面(少なくとも、2020年頃までは)は日本向 け LNG価格が、原油価格に影響を受ける市場構造は大 きくは変わらないものと考えられる。 ②米国天然ガス価格の推移  米国の天然ガス価格(HH価格)は北米域内の需要(気 温要因、暖房需要、産業用需要、電力需要、天然ガス・ 石炭火力との価格競争力)、供給(掘削装置稼働数、パイ プライン、シェールオイル随伴ガス生産)、在庫状況、 輸出(LNG、メキシコ向パイプライン)等の影響により 変動する。  2000 年代後半以降のシェール革命により、米国の天 然ガス生産(Dry Gas)は増加を続け、HH価格は2008年 平 均 8.85$/MMBtuか ら 2010 年 代 に 入 り 概 ね 3$/ MMBtu前後で推移してきている。  2018年11月には、輸出増、気温要因等による発電需 要増、在庫低下により、一時的に 4$/MMBtu台後半ま で上昇したが、域内の生産増見通し・気温上昇もあり 1 カ月弱で3$/MMBtu前後まで下落している。  多くの国・地域では、天然ガス火力は環境優位性があ るものの経済性では石炭火力に劣後する。一方、北米で は、安価なシェールガスが確保できるため、炭素価格が なくとも老朽化した低効率な石炭火力発電所に対して天 然ガス火力が経済的にも優位性を有する例外的な地域で もあり、天然ガスの域内価格の変化に応じて天然ガス火

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力向けの需要も変化する(または、他の燃料コストの変 動に応じて発電向け天然ガス需要・天然ガス価格が影響 を受ける)。 ③欧州天然ガス価格  欧州における天然ガス価格は、「ハブ」における市場価 格連動での価格決定方式と、石油製品価格連動によるも のがある(約3割程度に減少)。需要については気温、電 力供給源(再エネ・石炭との競合、原子力・水力稼働状況) 等の要因での変動が生じる。供給については地下貯蔵、 域内の生産、パイプラインを通じた天然ガス輸入、LNG といった複数の供給源を有し、欧州以外の市場にも需給・ 価格で相互に影響を及ぼすこととなる。 ④スポットLNG  スポット LNG価格は、その需給に応じて価格が決ま り、原発稼働状況・気温要因による追加需要、LNG生 産好調時や新規プロジェクトの試運転段階でのカーゴ販 売、供給支障時の代替カーゴ確保等に用いられる他、複 数の供給源を組み合わせて買主に販売(ポートフォリオ 供給)を行う売主による調整・最適化のための活用も多 くみられる。  2011 年の東日本大震災以降の需給逼迫時には、特に 北東アジアでの需要増がスポット LNG価格を引き上げ たが、2014年以降の原油価格の下落、2016年以降の仕 向け地制限のない北米新規プロジェクト等の稼働増によ り、価格の低下とともに、市場の流動性も高まってきて いる。突発要因による短期間での需要増により、特定の 地域での価格急騰は特に冬場で生じる傾向にあるが、一 定のタイムラグはあるものの、欧州天然ガス・LNG価格、 北東アジアLNG価格は概ね連動(再ガス化費用・輸送費 用差を含めれば、特定の地域が長期間高価格にならない ような調整が進む)するといえる。  これまでも、九州電力川内原子力発電所の 2015 年末 の再稼働や 2016 年初頭の北東アジアでの暖冬等により 2016 年 5 月に 4.1$/MMBtuにまで下落した一方、中国 の急速な天然ガス転換により需要が急増した 2018 年 2 月には、11$/MMBtu台後半まで上昇した。特に、冬場 については、原油価格と熱量等価水準(原油価格 $/bbl ×17.3%)まで上昇する一方、春以降の非需要期には価 格は下落する傾向にある。LNG取引量全体に占めるス ポット取引の割合は、約20%程度であり、新規プロジェ クトの稼働開始・供給支障、気温・政策等による需要等 が価格へ大きく影響する。供給国の分散も図られており、 原油に比べて地政学的な要因・投機による変動よりも、 需給要因による価格への影響がより顕著であるといえる だろう。 18 年 0 5 10 15 20 25 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 ドル/百万Btu

ドイツ-ロシア国境渡(Gas) NBP(UK-gas、 ICE) HH(US-Gas、 NYMEX)

JLC(Japan LNG Cocktail) JCC(Japan Cruide Cocktail) 日本向SPOT(契約ベース、 METI)

図14 世界の天然ガス・原油価格推移

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<公正取引委員会 LNG取引実態に関する調査>  2017 年 6 月、公正取引委員会は、40 年ぶりとなる独占禁止法第 40 条に基づく調査* 2の結果、「液化天然ガス の取引実態に関する調査報告書」を公表し、仕向け地制限、(仕向け地変更に伴う)利益配分条項、Take or Pay 条項についての方向性が示された。同調査では、国内事業者を販売先とする液化天然ガスの取引が対象ではある ものの、強制力を伴う調査に基づく取引実態が示されている。 ⅰ)スポット契約の割合・推移  日本向けには、現在、長期契約が 8 割、中期契約および短期契約の合計が 1 割、スポット契約が 1 割となって いる。直近では、震災以降、短期・スポット契約の割合が増加していたが、原発の一部再稼働、新規LNGプロジェ クトの稼働開始(長期契約)等によりスポット契約の割合が若干減少している。 ⅱ)価格決定方式  期間契約における、価格決定方式としては、従来石油価格連動の LNG契約が大勢を占めていたが、米国産 LNGの輸出開始により、米国天然ガス価格に連動した価格決定方式も増加傾向にある。ただし、2020年代中盤 以降も、石油価格連動方式が、7割超を占めることとなる。 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000万トン 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015年 スポット契約 短期契約 中期契約 長期契約 図15 LNG 契約における契約期間 ※ カーゴ単位(契約締結後、短期間で一定または複数のカーゴを引き 渡す)もしくは、1 年未満の契約をスポット契約と定義 ※ 1 年以上 4 年未満の契約を短期契約、4 年以上 10 年未満の契約を中 期契約、10 年以上の契約を長期契約、短期契約、中期契約および長 期契約を総称して期間契約(term contract)と定義。 出所: 公正取引委員会 液化天然ガスの取引実態に関する調査報告書、 2017 年 6 月 0 20 40 60 80 100 % 2006 2008 2010 2012 2014 2016 2018 2020 2022 2024 年 ハイブリッド方式 ICP価格 ブレント原油価格 JCC価格 JLC価格 米国天然ガス価格 HH価格 図16 LNG 契約における価格決定方式 ※ 赤線は、石油価格連動方式の長期契約の契約数量の割合の合計。 ※ 「米国天然ガス価格」は、HH 価格とは別の米国内の天然ガス 調達価格に基づく価格指標を指す。

※ 「ICP 価格」(Indonesia Crude Oil Price)はインドネシアの原 油価格。従来、インドネシア産 LNG は ICP 価格を価格指標と していたが、現在、ICP 価格を価格指標としている長期契約は ない。 出所: 公正取引委員会 液化天然ガスの取引実態に関する調査報 告書、2017 年 6 月 表2 (2016 年 4 月時点。年間契約数量ベース)期間契約別の価格決定方式の割合 出所: 公正取引委員会 液化天然ガスの取引実態に関する調査報告書、2017 年 6 月 価格決定方式 長期契約 中期契約 短期契約 期間契約全体 石油価格連動方式 (JCC 価格、ブレント原油価格または ICP 価格) 97.7% 96.0% 84.0% 96.9% 市場価格連動方式 (HH 価格、米国天然ガス価格、NBP 価格、JKM 価格) 0% 4.0% 5.3% 0.4% ハイブリッド方式 (ハイブリッド方式、JLC 価格) 2.3% 0% 10.6% 2.8%

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(4)LNGの需給動向  新規LNGプロジェクトのFIDは、2011年から 2015 年頃まで、毎年 2,000 万トン超で推移して きたが、2014 年以降続く低油価・低ガス価とそ の長期化、また、長期の需要見通しの不確実性か ら、2016 年はインドネシア Tangguh拡張(380 万トン /年、PLN・関西電力が引取)、米国 Elba Island(250 万 ト ン /年、Shellが 引 取 ) の 2 件、 2017年には、モザンビークCoral FLNG(340万 /年トン、BPが引取)の1件のみであった。  2018年に入り、米国Corpus Christi LNG(Train3 450 万トン /年、CNPC・Trafiguraが引取)、カ ナダLNG Canada(1,400万トン/年、Shell他参加 各社が原料ガスを独自に調達した上で、持分比率 に応じて引取) の 2 件が FIDを行った。特に、 LNG Canadaについては、新規(グリーンフィー ルド)での大型プロジェクトとしては、2013年の ロシア Yamal LNG以来となる。  需要の確保を前提に、最終投資決定に移行可能 で技術的な検討が進むプロジェクトだけでも 2.5 億トン /年を超える。なかでも、カタールは、現 在の7,700万トン/年の供給力を、2023年以降に、 約 1.1 億トン /年に拡張する計画(2019 年 FIDを 目指す)を明らかにしている他、米国、ロシア、 東アフリカ他多数の計画もあり、長期的には、 2030 年頃までの世界の需要増にも対応は可能と 考えられる。  需要面では、世界全体の LNG需要は、2.9 億ト 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 45,000 19 70 19 72 19 74 19 76 19 78 19 80 19 82 19 84 19 86 19 88 19 90 19 92 19 94 19 96 19 98 20 00 20 02 20 04 20 06 20 08 20 10 20 12 20 14 20 16 20 18 20 20 20 22 ロシア 欧州 中南米 アフリカ アジア 中東 北米 豪州オセアニア 万トン 年 図17 国・地域別 LNG 生産能力推移 出所:各種情報をもとに JOGMEC 作成 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 Texas LNG Delfin LNG

Sabine Pass Train6

Freeport Train4

Corpus Christi Phase3

Jordan Cove LNG

Magnolia LNG

Rio Grande train1,2 Calcasieu Pass LNG

Cameron

(拡張)

Lake Charles

Driftwood LNG Woodfibre LNG Bear Head LNG Mozambique Area 4 Mozambique Area 1

Sakhalin 2拡張 Baltic LNG Arctic LNG Congo B Flng Fortuna FLNG PNG LNG train3 Papua LNG Pluto LNG (拡張) Nigeria拡張 Qatar (拡張) Qatar (拡張 ・ 予備) 米国 モザンビーク ロシア カタール 液化能力 (万トン/年) 液化能力累計 (万トン/年) (右軸) 図18 計画段階の LNG 液化プロジェクト 出所:各種情報をもとに JOGMEC 作成 表3 建設段階の LNG プロジェクト一覧 出所: 各種情報をもとに JOGMEC 作成 プロジェクト名 国 FID 生産開始 生産能力 (万トン / 年) Prelude FLNG 豪州 2011 2019 360 Elba Island 米国 2016 2019 250 Corpus Christi(Train2) 米国 2015 2019 450 Cameron LNG(Train1・2) 米国 2014 2019 450 Freeport LNG(Train1・2) 米国 2014 2019 928 Sengkang インドネシア 2011 2019 200 Cameron LNG(Train3) 米国 2014 2020 450 Freeport LNG(Train3) 米国 2014 2020 464 Petronas FLNG 2(Dua) マレーシア 2014 2020 150 Tangguh(拡張) インドネシア 2016 2020 380 Corpus Christi(Train3) 米国 2018 2021 450 Coral FLNG モザンビーク 2017 2022 340 Tortue FLNG モーリタニア/ セネガル 2018 2022 250 Golden Pass LNG 米国 2019 2024 1,560 LNG Canada カナダ 2018 2020年代中頃 1,400 合計 8,082

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ン/年(2017年)から、2030年には約5億トン/年まで 増加する見通し。  特に、中国は、2018 年天然ガス(パイプライン+ LNG)の輸入量で日本を超え、今後、LNG輸入量につい ても2020年代半ばに日本を上回る可能性が高い。一方、 2017 年には、中国は大気汚染対策の一環としての急速 な天然ガス化を進め、北東アジアでのスポット LNG価 格の高騰の要因となった。2019 年以降は、LNG受入基 地の設備容量の制約(2021年まで新規に竣工予定なし)、 ロシアからのパイプラインガス供給等により、当面は、 2017 年(輸入量 39 百万トン、前年比 12 百万トン増)、 2018 年(輸入量約 55 百万トン、前年比 16 百万トン増) のような大幅な増加ではなく、緩やかな増加に留まる可 能性は高い。中国のエネルギー需要見通し、天然ガス需 要見通しは政策により大きく変動する上、国産ガスの生 産量や輸入パイプラインガスの供給量にも左右される。 中国のエネルギーミックスの1%の変動は、LNG需要約 3,000 ~ 4,000 万トン /年に相当し、これらの変動を補 うために、国際取引市場からのLNG調達が行われれば、 同じ北東アジアでのエネルギー輸入を行う日本(韓国、 台湾)等にとっての影響も大きく、自国の需給と同様に 注視していく必要があるだろう。  なお、現在建設段階の大規模プロジェクトが順調に稼 働すれば、2020年頃に向けて引き続き需給が緩和(1,000 ~ 3,000 万トン /年の供給余力)していく。ただし、年 間を通じた需給のバランスは取れていても、想定外の供 給支障、冬場の需要期におけるスポット価格高騰のリス クは常にある。  また、LNG液化プロジェクトは FIDから稼働開始ま での約5年のリードタイムがあり、現在計画段階のプロ ジェクトが、2019 年以降順次 FIDに至ったとしても、 2022 ~ 2025 年は、新興国の需要増が想定以上進めば 需給逼迫のリスクもある。  短期で開発が可能な北米シェール由来の LNG、液化 プラントの小型化・モジュール化、LNG市場の流動性 向上も進むが、現時点では、将来の不確実性を回避し、 需要を支える安定的な投資を促進するための抜本的な解 決策は非常に難しいところである。

3.

ガスシフトと日本におけるガスセキュリティー

(1)日本における天然ガスシフト  エネルギーは、生活、経済活動を支える基盤であり、 日本はエネルギーの 3E(Energy Security, Economic Efficiency, Environment)+S(Safety)を前提に、「必要 十分な量を」「合理的な値段で」「いつでも」手に入れら れるよう、多様化(燃料の多様化)、分散化(中東等特定 の地域への依存を減らす)、産油ガス国との関係強化、 システム・インフラの多重化、備蓄(油・LPG)、省エネ 等の対策を進めてきた。エネルギーの安定的かつ低廉な 供給を担うJOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構) 0 100 200 300 400 500 600 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 百万トン OECDアジア 中国 その他アジア インド 欧州 その他 年 図19 地域別 LNG 需要見通し 出所:BP エネルギー見通し 2018 から JOGMEC 作成 万トン -5,000 5,000 15,000 25,000 35,000 45,000 55,000 65,000 20 01 20 02 20 03 20 04 20 05 20 06 20 07 20 08 20 09 20 10 20 11 20 12 20 13 20 14 20 15 20 16 20 17 20 18 20 19 20 20 20 21 20 22 20 23 20 24 20 25 20 26 20 27 20 28 20 29 20 30 計画段階(FID前・未着工)液化能力 建設中液化能力 稼働済液化能力 供給量想定(稼働率90%想定) 需要想定 需給ギャップ 年 図20 LNG 需要・供給見通し

出所: IEA, Natural Gas Information、 GIIGNL(国際 LNG 輸入者協会)、 日本エネルギー経済研究所 IEEJ アウトルック 2018 等を基に JOGMEC 作成。2024 ~ 2030 年にかけては計画段階の 2.5 億トン / 年が投資決定後、順次稼働と仮定

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としては、出資・債務保証等の支援を通じ、緊急時の日 本への持込も想定した自主開発権益確保・自主開発比率 の向上も進めてきている。  日本は 1960 年代に、エネルギー源の多様化、供給地 域の分散化、環境対策のため、世界に先駆けて LNGを 導入した。その後、オイルショックや東日本大震災後の 原発の稼働停止等を経て、一次エネルギーに占める天然 ガス(LNG)の割合は右肩上がりで増加している。  中長期的には、エネルギー基本計画において再エネ・ 原発稼働の増加、省エネの進展等により、LNG需要は 減少する見込みである。原子力発電所の稼働がすべて停 止した 2014 年には LNG輸入量は 8,900 万トン /年にま で達したが、2018年には8,300万トン/年にまで減少し、 現行のエネルギー基本計画に基づく LNG需要は、2030 年に約 6,200 万トン /年程度まで減少することも想定さ れる。  しかしながら、ベースロード電源としての石炭火力発 電所の稼働への環境面からの国際的な圧力、原発の稼働 が想定(2030年約30基)を下回る場合、また、今後のコ ストダウン・大量導入が期待される再エネを最大限に活 用するための基盤整備(送配電網の整備、負荷変動への 対応のための調整電源・慣性力を有する発電機の確保等) の必要性なども考えられ、天然ガス火力発電はさまざま な場面で、他のエネルギー源を補完する役割も期待され る。また、超長期的には、天然ガスインフラの活用によ る水素社会の基盤としての役割としてもバランスの取れ たエネルギーミックス以上に、天然ガスの果たす役割が 大きくなる可能性もあり得るであろう。 (2)エネルギーの安全保障  国産のエネルギー源が限られた日本においては、供給 面では地政学的リスク(主に、中東の政情不安、ホルム ズ海峡等のチョークポイント)、地質学的リスク(埋蔵 量)、価格変動、天災・事故等のエネルギーの安全保障 を脅かし得るリスクに対し、国産エネルギー源の開発、 輸入先の多様化(分散)、燃料の多様化、インフラの多重 化、備蓄等により緊急時の備えとしてきた。  更に、2018年7月に改訂された、第5次エネルギー基 本計画においては、以下のようなエネルギーをめぐる情 勢変化への対処の必要性も挙げられている。足元のエネ ルギー供給については、災害時に特定の地域で一時的な 停止はあっても早期に復旧が進み、総じて安定したエネ ルギー供給は確保できているともいえる。しかしながら、 以下の変化のうち、自給率低下、新興国の需要拡大等、 すでにリスクとして顕在化しているもの、サイバー攻撃、 自由化に伴う安定供給の確保等、今後起こり得る環境変 化に対し、中長期的なガスセキュリティー策の対処(強 化)が必要となる。 ◦ デジタル化の進展による、サイバー攻撃の脅威の高 まり。 ◦ 資源の海外依存(震災前の自給率20%から、震災後、 原発停止により 2016 年のエネルギー自給率は 8%に 留まる)。 ◦ 電気・ガスの小売り全面自由化による新規参入の増 加。競争促進に加えて、安全性の確保や安定供給等 にも取り組む必要がある。 ◦ 中国、インド等新興国における LNG需要の急拡大。 市場の流動性向上。柔軟なLNG契約を志向。 66 102 101 81 82 85 86 518 426 428 415 403 390 379 0 5 10 15 20 25 30 -50 50 150 250 350 450 550 2000 2016 2017 2025 2030 2035 2040 Mtoe 天然ガス 石炭 石油 原子力 水力 バイオマス・廃棄物 他の再生可能エネルギー 再エネ比率(右軸) 天然ガス比率(右軸) % 年 図21 日本の一次エネルギー需要見通し 出所:IEA WEO2018 248 406 400 290 287 294 285 1,058 1,052 1,077 1,065 1,072 1,080 1,088 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 0 200 400 600 800 1,000 1,200 2000 2016 2017 2025 2030 2035 2040 TWh 天然ガス 石炭 石油 原子力 水力 バイオマス・廃棄物 風力 地熱 太陽光 集光型太陽熱 潮力・波力 天然ガス比率(右軸) 再エネ比率(右軸) % 年 図22 日本の発電量見通し 出所:IEA WEO2018

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(3)供給源の分散と日本向LNG  日本の原油輸入における中東依存度は約 87%に対し、 LNGの中東依存度は 21%となっている。またオマーン を除く、カタール、UAEはLNG液化・出荷基地がペルシャ 湾内に位置し、ホルムズ海峡を通峡する日本向け LNG は全輸入LNGのうち、17.7%に相当する。  カタールの 2017 年の LNG輸出量は、77.5 百万トン / 年(世界第一位、約27%)、また、パイプラインにより、 オマーン、UAEに約20Bcm(LNG換算約1,500万トン/ 年)を輸出している。  このうち、日本向けのLNG輸出量は、10.1百万トン/ 年(豪州、マレーシアに次いで第3位、日本のLNG輸入 の約12%)であり、2021年までに、JERAを中心に日本 企業が締結している約 7 百万トン /年相当の長期契約が 期限を迎える予定となっている。一方で、供給先として は、日本、韓国、インドを中心に、アジア向けが約66% を占め、また、今後も、液化設備の増強を予定しており、 アジアへの安定供給には非常に重要な供給国となってい る。  2017 年 6 月 5 日、サウジアラビア、UAE、エジプト など6カ国からカタールに対する外交・経済関係断交の 発表がなされ、LNGの供給に関する懸念が高まったも のの、LNG輸出に関して実際には大きな支障は発生し なかった。また、カタールから UAEへのパイプライン ガス供給(18Bcm/年、LNG換算約13百トン/年)も継 続している。また、断交発表直後、欧州向の LNG輸送 に際し、エジプトが管理するスエズ運河の通峡に制限が 課せられるような懸念や混乱はあったものの、実際は支 <エネルギー安全保障を脅かしうる主要なリスク> 〇 地政学的リスク ・ 各国(産資源国及び近隣国+輸送経路近隣国)の政治・軍事 情勢(戦争、内戦、禁輸等) ・国際関係 ・ 外交ツールとしての利用(原油禁輸、パイプラインの送ガ ス停止等) ・資源ナショナリズム(接収・国有化、課税引上げ、輸出規制等) ・消費国間の資源争奪(資源権益獲得競争、領土紛争等) ・その他の地政学的リスク   ※近年、テロ、海賊等のリスクが顕在化 〇 地質学的リスク ・埋蔵量の減少 ・資源の偏在 〇 国内供給体制リスク ・設備投資減退(設備老朽化) ・技術開発停滞 〇需給逼迫リスク 〇市場価格リスク(需給ファンダメンタルズ+投機プレミアム) 〇天災・事故・ストライキ・パンデミック等のリスク <評価指標> (1)国産・準国産エネルギー資源の開発・利用  …一次エネルギー自給率(原子力含む) (2)エネルギー輸入先多様化  …各資源輸入相手国の寡占度 (3)エネルギー供給源構造多様化  …一次エネルギー供給源の分散度  …発電電力量構成の分散度 (4)資源の輸送リスク管理  …チョークポイントリスクへの依存度 (5)国内リスク管理  …電力供給信頼度(停電時間) (6)需要抑制  …エネルギー消費の GDP 原単位 (7)供給途絶への対応  …石油備蓄日数 出所:エネルギー白書 2010、2015 サウジアラビア 40.2% UAE 24.2% カタール 7.3% クウェート 7.1% ロシア 5.8% イラン 5.5% イラク 1.7% 2017年 原油輸入 約18,700万kℓ メキシコ 1.4% インドネシア 1.2% オマーン 1.0% その他 4.8% 中東依存度86.9%、ホルムズ依存度86.0% 図23 日本の原油輸入 出所:財務省通関統計 オーストラリア 30.7% マレーシア 17.7% カタール 12.1% インドネシア 7.8% UAE 5.6% ブルネイ 5.1% パプアニューギニア 4.5% ロシア 8.7% 2017年 LNG輸入 約8,400万トン オマーン 3.3% ナイジェリア 1.8% その他 2.7% 中東依存度21.0%、ホルムズ依存度17.7% 図24 日本の LNG 輸入 出所:財務省通関統計

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障はなかった。非需要期であったこともあるが、スポッ トLNG価格への影響も生じていない。2018年以降の米 国によるイランに対する経済制裁に伴い、イランによる ホルムズ海峡の封鎖懸念はあるものの、全面封鎖の可能 性は低く、また、米国等による通行の自由確保のための 軍事的対応により、数日での再開、3 カ月程度での通常 レベルの通航回復といった、関係者のコンセンサスもあ る模様である。  今後、豪州、カタール、米国、更にロシアが 2020 年 代後半には各国約0.7 ~ 1.1億トン/年の液化設備能力を 有する 4 大 LNG供給国となるなど、供給地域の多様化 により、特定国の供給リスクは低下しているともいえる。 一方、これら大供給国のなかで、カタールについては航 路・出荷基地が1カ所に集中する。また、米国は、航路 や生産国としての地政学的なリスクは相対的に低くと も、メキシコ湾岸周辺に LNG液化・出荷基地の大部分 が立地し、ハリケーン等自然災害による影響とその長期 化も懸念される。油については、米国は戦略備蓄(SPR) の放出等により対応を図ったが、今後 LNG生産量の増 加とともに市場に与える影響の深刻化にも留意が必要で あろう。 (4)LNGの追加供給余力  サウジアラビア等の産油国は、原油の安定供給を担保 することが、エネルギー供給における油のシェアを維持 し、中長期的な市場の拡大を下支えし、中長期的な収入 の最大化にも寄与するといった認識を有し、サウジアラ ビア、UAE等は90日以内に生産開始し一定期間生産量 を維持できる“余剰生産能力”を維持・公表している。また、 消費国側についてもIEAを通じた情報集約・発信ととも に、国際的な備蓄義務も含め緊急時の対応を図っている。  一方で、天然ガス(特に、LNG)については、需要の 増加が進むものの、油や LPGのような備蓄体制が整備 されているわけではない。LNG液化・LNG船に必要な 初期投資が高く、早期に投下資金回収をすべく設備の稼 働率を可能な限り高く維持する運用が一般的である。ま た、LNG液化設備のFIDから稼働開始までの期間(約5年、 LNG船の場合3 ~ 4年)は長く、備蓄に際してもタンク の建設コストが高く(低温材が必要、液密度が低い)、タ ンク容積の0.1%/日程度発生するBOG(Boil off Gas)の 処理も必要で、高コストになるといった特徴がある。結 果として、供給支障や需要増に応じた、追加供給、備蓄 の確保・放出といった手段は容易ではない。  世界の LNG液化設備能力に対する生産量は約 8 割程 度で推移しているが、原料ガス不足、政情不安、設備ト ラブル・メンテナンス、天候等を考慮した稼働率は、 2017 年は 97%に達し、原油のような、実質的な追加生 産余力は有していない(図28)。  LNGの取引については新規の LNG液化プロジェクト の稼働開始、仕向け地制限のない米国産 LNGの開始に より、市場の拡大、流動性向上が進んでいる。しかしな がら、2017年のLNG取引2.9億トン/年に対し、スポッ ト・短期割合(4年以下の契約)は78百トン/年(全体の 27%)、このうち、契約から 3 カ月以内に引き渡しとな るスポットでの取引割合は、全体の約20%(59百万トン、 2017年)となっている。スポット・先物取引市場が発達 し、期間契約でもほとんどが数年以内の取引となる原油 (約1億bbl/d≒LNG換算41億トン/年)と比べれば、同 じ化石燃料ではあってもマイナス162℃での輸送を前提 としたバリューチェーン全体にわたる特性の違いから、 日本 10.1 13% 日本 10.1 13% 韓国 11.8 15% 韓国 11.8 15% 中国 7.7 10% 中国 7.7 10% インド 10.1 13% インド 10.1 13% アジア 52.2 67% アジア 52.2 67% 台湾 5.2 7% 台湾 5.2 7% 英国 4.4 6% イタリア 4.8 6% エジプト 4.2 5% 欧州 17.7 23% 欧州 17.7 23% 中東 6.0 8% 中東 6.0 8% アメリカ 1.7 2% アメリカ 1.7 2% 合計 77.5百万 トン/年 図25 カタールの LNG 輸出

出所:GIIGNL、IEA Natural Gas Info から JOGMEC 作成

0 5 10 15 20 25 30 35 % 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 1 9 9 3 1 9 9 4 1 9 9 5 1 9 9 6 1 9 9 7 1 9 9 8 1 9 9 9 2 0 0 0 2 0 0 1 2 0 0 2 2 0 0 3 2 0 0 4 2 0 0 5 2 0 0 6 2 0 0 7 2 0 0 8 2 0 0 9 2 0 1 0 2 0 1 1 2 0 1 2 2 0 1 3 2 0 1 4 2 0 1 5 2 0 1 6 2 0 1 7 百万トン 年 日本向け百万トン/年 日本以外百万トン/年 世界のLNG取引におけるカタール比率(右軸)% 図26 カタールの LNG 輸出量推移

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市場規模・流動性で劣後するといった特徴がある。 (5)天然ガス・LNG 貯蔵  世界の天然ガス需要は、北半球の暖房需要が大きく、 春から秋にかけて、地下貯蔵としての在庫を積み増し、 11月以降の冬場の需要期に在庫を払い出すこととなる。  欧州、米国では、地下貯蔵等で天然ガスを貯蔵、在庫 量、増減を週ごと/日次で公表している。欧州では各基 地の LNG貯蔵量も基地ごとに公表を行っている。ただ し、LNGは、天然ガス地下貯蔵としての在庫の 1/30 程 度に留まるが、需給・価格に応じた受入・払出等、柔軟 な運用がなされている。  日本も、統計法に基づき電力事業、ガス事業における 月末在庫が公表(約2カ月程度遅れて公表)される。米国、 欧州と同様に、冬場の需要期の前に在庫が増加するが、 夏場の電力需要期には減少するといった特徴もあり、日 本の消費量の約15 ~ 25日に相当する数量となっている。  また、日本国内の地下貯蔵としては、季節間変動吸収 によるガス田の利用効率向上を目的に、枯渇ガス田を利 用した地下貯蔵が行われており、ワーキングガス* 3 約11.4億m3(LNG換算約80万トン)であり、日本の天然 ガス需要の約 2 ~ 3 日分に相当する* 4。なお、現行の日 本の天然ガス地下貯蔵において、国産天然ガスについて は、「鉱物資源を合理的に開発する」ことに資するとの判 断から、現行の鉱業法の下でガス田を利用した地下貯蔵 が行われているが、輸入 LNGの気化ガスについては鉱 業法の目的に合致しないとの判断から認められていな い。また、枯渇ガス田は主に新潟周辺地区に集中してお り、首都圏とはパイプラインで接続されているものの、 輸送能力は限定的といった課題もある。 (6)ガスセキュリティーの向上のための方策  IEAは、2016 年から天然ガスセキュリティーに関す る報告書、“Gas Security Review“を毎年公開している。 2018 年の報告書では、LNG市場の流動性向上・スポッ ト割合が増加しているが、あくまで、「供給不足低減の 一つのツール」であり、天然ガスセキュリティー向上の ため、次のような供給・需要両面での総合的な対策の必 要性を指摘している。 ◦ 地下貯蔵、LNG貯蔵の容量の増加 ◦ ピーク季節の需要レベルよりも、大きなガス貯蔵量 の保持・維持 ◦ 地域間のガスグリッドの建設・強化 ◦ 電力グリッド、連系線の強化 ◦ ガス火力から転換可能な、電力セクターのミックス の維持 ◦ 短期的な電力輸入の増加 ◦ 主要な大規模産業需要家、中流事業者との緊急時、 需要増減に関する契約検討 図28 LNG プラントの稼働率・利用率推移

出所:IEA Gas Security Review 2018

図27 LNG プラントの不稼働(要因別)の推移

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◦ ビルの熱効率向上、再エネ熱システムの拡大    各国の有する、資源、インフラ、他国との関係、経 済発展の状況により、上記のなかでも取り得る対策は 異なるが、特に島国である日本については、自国の資 源・大規模な貯蔵設備がなく、また、国際的なパイプ ライン・電力連系線は有していないといった特徴・制 約についても留意する必要がある。また、これらの課 題解決のための単一な対策は難しく、当面は、LNG 市場戦略にも示された内容強化の発展として、以下の ような対策が考え得る。 ◦ LNG市場の拡大。継続的なLNG市場の発展。これに より、市場の「厚み」を増すことが、結果的に、日本 のエネルギー安定供給にも中長期的には寄与する。 ◦ 市場の透明性・流動性向上。日本も含め、今後 LNG 需要が増大するアジア各国や、将来的には供給国も 含めた透明性の高い統計の整備により、市場に対し て適切な価格シグナルを送り、価格の予見可能性を 高めて投資を促し、世界全体での需給の調整・不足 時の円滑な供給増加を促す。情報の偏在・特定の参 画者情報操作等による価格高騰を抑えるためにも網 羅性・市場の厚みも重要。 ◦ インフラ形成。上流側設備・パイプライン・LNG船・ 液化設備・備蓄・代替燃料(電源)等の物理的なイン フラについても、日本を含めた国際的な枠組みとし て、コスト効果的な増強・活用策を検討。  なお、緊急時についても、供給・需要それぞれにリス ク要因・事象が想定されるものの、過去に前例のない状 況をすべて想定し、対処していくのは困難となる。セキュ リティーの強化に際しては、インフラ・契約等さまざま な面で、平時には必要とされないコスト要因となるため、 ①短期的には、生命・健康・財産・環境を保護するため に必要な対策を行ったうえで、②中長期的には、3E+S のバランス(両立が望ましいが、セキュリティー向上と コストとは通常はトレードオフ)のある対策の実施が重 要となろう。 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100Bcm ガス貯蔵量(Bcm) LNG在庫量(Bcm) 2012/1/1 2013/1/1 2014/1/1 2015/1/1 2016/1/1 2017/1/1 2018/1/1 2019/1/1 図29 欧州の天然ガス・LNG 貯蔵量推移 出所:GIE 2012/1/1 2013/1/1 2014/1/1 2015/1/1 2016/1/1 2017/1/1 2018/1/1 2019/1/1 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5Bcm LNG在庫量(Bcm) 図30 欧州の天然ガス・LNG 貯蔵量推移 出所:GIE 0 20 40 60 80 100 120 140 Bcm 2012/1/7 2013/1/7 2014/1/7 2015/1/7 2016/1/7 2017/1/7 2018/1/7 2019/1/7 図31 米国のガス貯蔵量推移 出所:EIA 0 1 2 3 4 5 6 7 (電力)月末貯蔵(Bcm) (ガス)月末貯蔵(Bcm) Bcm 2016年4月2016年6月2016年8月2016年10月2016年12月 2017年2月2017年4月2017年6月2017年8月2017年10月2017年12月 2018年2月2018年4月2018年6月2018年8月 図32 日本の LNG 貯蔵量推移 出所:EIA

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 世界においては、ガスシフトが進展している。天然ガ スは環境性に優れ、産出地域の偏在が少なく、近年は更 に、“Affordable(手ごろな・安価な)”、“Abundant(豊 富な)”、“Reliable(信頼性の高い)”エネルギーとして、 現行政策の延長線上でも大幅な需要の増加が見込まれ、 また、気候変動への対応や、大気汚染対策・エネルギー アクセスの向上も目指す、「持続可能な発展」シナリオに おいても、長期的に利用拡大が期待されている。  天然ガスは、再エネ、石炭等と特に発電分野で競合関 係にあるが、天然ガス火力は慣性力を持つ回転機として、 瞬時の負荷変動への追従と、再エネの天候等に左右され る発電量を補う役割がある。将来的には、再エネの余剰 をメタネーションとして貯蔵、低炭素エネルギー源とし て既存インフラの活用、また水素社会の基盤としての役 割も期待される。  近年の LNG市場は、北米のシェールガス由来の LNG 輸出といったビジネスモデルの変革もあり、市場の拡大、 流動性の向上、供給・需要側ともにプレイヤーの多様化 が進んでいる。多数の計画段階の液化プロジェクトがあ る一方、次の FIDに向けたプロジェクト間の競合も激 化しており、今後、豪州、カタール、米国に加え、ロシ アが4大供給国として台頭し、LNG市場全体の拡大とあ わせ、供給源の多様化は一定程度、市場の安定化に寄与 すると考えられる。  日本においては LNGの利用が増大するにつれて、 LNGが「頼れるエネルギー」であることがますます重要 になってきている。2018 年 10 月の LNG産消会議にお いては、世耕経済産業大臣から、LNG市場の拡大、セキュ リティー強化のための日本の貢献、産消の連携、緊急時 の対応に備えた官民のグローバル・ネットワークの構築 についての表明がなされた。  原油については、安定供給が中長期的には原油市場・ 需要の拡大につながるとのコンセンサスの下、サウジア ラビアを始めとする産油国において一定の余剰生産能力 が維持されているが、初期投資の大きな LNGは、早期 の投下資金の回収のため、通常、余剰生産能力を残した 運用は行わず、また、BOG処理等も必要であるため、 備蓄に際しても他燃料に比べて高コストになるといった 物理的な特徴がある。  このため、すべてのリスクを想定し、かつ LNGだけ でのセキュリティーの確保は困難かつ多大なコストを要 する。初期投資が大きな LNGの追加供給力の限界を認 識したうえで、他燃料を含めた対応体制、多国間の連携・ 協調も含め、バランスの取れたエネルギーミックス、セ キュリティー実現が必要となろう。  2018 年 7 月の第 5 次エネルギー基本計画では、「平時 において、エネルギー供給量の変動や価格変動に柔軟に 対応できるよう、安定性と効率性を確保するとともに、 危機時には、特定のエネルギー源の供給に支障が発生し ても、その他のエネルギー源を円滑かつ適切にバック アップとして利用できるようにする必要がある。」と整理 されている。  平時対応については、LNG市場戦略にも示されるよ うに、インフラの形成(第三者利用の促進)、透明性のあ る価格の形成、流動性の向上、将来の販売について予見 可能性を増すことにより、継続的な LNG市場の発展を 促す。これにより、市場の「厚み」を増すことが、結果的 に、日本のエネルギー安定供給において中長期的には寄 与することとなると考えられる。供給者と需要家の情報 の透明性・アクセスの向上はこの実現に寄与する。なお、 オイルショック、自然災害、価格高騰等々、リスクの顕 在化によりエネルギーセキュリティーへの関心が高まる ものの時間とともに関心は薄れ、安定供給よりも経済性 や市場の効率性に過度に期待することにも留意が必要で 需給の逼迫から生産開始までの時間を考慮した石油・天 然ガスの継続した上流投資可能とする仕組みは、今後と も市場を機能させるための大前提として必要となる。日 本においては、原油換算約4.3億トン/年(2017年)のエ ネルギー燃料需要があり、この大量の物量を確実かつ着 実にその調達・輸送・利用ができるような対応・対策は 平時にこそ重要な視点となろう。  現時点では、3E+ Sを実現する単一の解決策はない。 近年技術革新やコストダウンが続く再生可能エネルギー についても、適地が限られる他、大量導入による山間地 の伐採等地域環境への影響も懸念され、再生可能エネル ギー=持続可能ではない。気候変動対策へ関心が高まる が、緩和策(CO2削減)とのバランスを取らなければ、特 に途上国にとっては経済成長への投資を減らし、国連が 掲げる貧困・紛争・人権侵害といった SDGsに示された 地球規模での目標達成を妨げる恐れもある。  1960年代の日本におけるLNGの導入とその拡大には、 大気汚染対策、燃料の多様化、供給地域の分散等という 理由があったが、気候変動への対応の必要性が高まるに つれ、天然ガスの高効率な利用による CO2排出削減と

とめ

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<注・解説> *1: LNGの発熱量:54.6GJ/t-LNG、CO2排出量:0.0135t-C/GJ、発電効率50% *2: 独占禁止法第 40 条に基づき液化天然ガスの取引慣行、契約条件の詳細について、国内事業者を販売先とする 液化天然ガスの取引等の調査。書面調査として国内需要者14社に対する報告命令、国外需要者6社(回答数4社)、 国内外供給者32社(回答数24社)に対し報告依頼を実施。国内外需要者・供給者31社から、聴取調査を実施。 *3: 平時の受入・払出に使用する「ワーキングガス」とワーキングガスを導管に送出するための機能を有する「クッ ションガス」とに区分される。 *4: 2012年1月、第一回 天然ガスシフト基盤整備専門委員会 http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9516313/ www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/sougou/kiban_seibi/001_haifu.html 執筆者紹介 田村 康昌(たむら こうしょう) (独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構〈JOGMEC〉 調査部調査課 主任研究員 東京ガス株式会社入社後、工場向けの都市ガス営業、排出権取引、環境省出向、LNG船の契約・運航業務等 に従事。2016年4月より現職。 Global Disclaimer(免責事項) 本稿は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は 本稿に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本稿は読者への一般的な情報提供を目的と したものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本稿に依拠し て行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本稿の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨 を明示してくださいますようお願い申し上げます。 いった面でも、(結果的に)大きな影響があった。石炭、 原子力もそれぞれメリットがあるものの、その利用拡大 には不確実性が残る。天然ガスは、使い方、組み合わせ により、バランスの取れた燃料でもあり、今後、より頼 れる燃料として、その市場拡大は日本のエネルギーの安 定供給にとっても重要となろう。

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