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竹森俊平著『資本主義は嫌いですか それでもマネーは世界を動かす』(PDFファイル25KB)

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Academic year: 2021

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経済学者の書く文章はつまらないと相場が決 まっている。緻密な論理を積み重ねるという学問 の性格上これは仕方のないことなのかもしれな い。しかしその結果、本来多くの人に読まれるべ きものが読まれていないとしたら、実にもったい ない話である。この点、竹森教授は経済論壇で多 大な貢献をなしているといえるだろう。ページを 開くや否やぐいぐいと読者を引き込んでいく筆 力、そして読者がまるでその場に居合わせている かのような臨場感を持ったドラマ風演出は、前著 『経済論戦は甦る』でいかんなく発揮され、多く の読者を得たが、本書でも「竹森ワールド」は健 在である。 しかし、こうした表現技法はあくまでも内容を 際立たせるための演出であって、本書を推薦する 真の理由は充実したその内容にある。昨年からの サブプライム・ローン金融危機については種々の 解説本が出ているが、問題の本質に迫ったものは 必ずしも多くないように思われる。1997年以降な ぜ世界の各地でバブルが多発したのか、サブプラ イム・ローンはなぜこれほどまでの金融危機をも たらしたのか、流動性とは何かなどの根本的な問 題に対して、本書は最新の経済学研究を巧みに対 立させながら、鋭く切り込んでいく。こうした深 い論考は、ジャーナリスティックな解説本と一線 を画すものであり、経済学の有用性を改めて感じ させてくれる。しかも内容は決して難解ではなく、 一般読者にも理解できるように噛み砕いてある。 登場する経済学者は、サミュエルソン、シラー、 テイラー、ティロール、バーナンキ、カバレロ、 ロゴフ、ラジャン、シン、サマーズ、フィッシャー、 ブラインダー等々と、まさにノーベル賞クラスの オンパレードであるが、一流の経済学者こそ問題 の本質を突いた明快な議論を展開するものだとい わんばかりに、話はわかりやすく書かれている。 本書は3つの部分から構成されている。著者の 言葉によればサブプライム危機をテーマにした 「物語の三部作」である。第部「ゴーン・ウィ ズ・ア・バブル」は、サブプライム・ローンによ る金融危機がなぜ起きたのか、その根本的な原因 はどこにあるのか、をテーマにしたものだが、真の 原因を突きとめるべく問題の核心へ迫っていく様 は実に知的刺激にあふれている。サブプライム・ ローンがプライム・ローンと異なって連邦政府の 厳しい監督下になかったこと、証券化の過程で、 モラルハザードの発生、リスク分散への過信、甘 い格付けなどの問題があったことの説明は、どの 解説本にも書かれていることだが、住宅バブルは 果たして連銀の低金利政策によるものなのかに関 する議論辺りから、内容は次第に理論的な深さを 書 評

資本主義は嫌いですか

それでもマネーは世界を動かす

竹森 俊平 日本経済新聞出版社 専修大学経済学部教授 櫻井 宏二郎 ― 95 ―

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増していく。第部の焦点は、住宅バブルの背景 にある世界的な貯蓄・投資の不均衡が1997年以降 の新興国の貯蓄超過によるものか、それともアメ リカの経常赤字主導によるものか、米国の住宅バ ブルは果たして避けられたのか、バブルはどのよ うな条件下で経済厚生の改善に貢献するか、と いった論点である。不均衡の原因が新興国の貯蓄 超過にあるならば、世界のどこかでバブルが起き ることは避けられず、あるいは米国の住宅バブル は世界に(日本に対しても)高成長の恩恵をもた らしたとしてプラスに評価されることになる。一 方、米国の経常赤字に原因があるならば、今後、 経常赤字の縮小とドル安に伴って世界経済の減速 という調整が行われることになる。今後の展望に 関しては、著者はいくつかの論点を提示するにと どめ、強引な結論を導こうとはしていないが、あ る程度の方向性は示唆されている。 第部「学会で起こった不思議な出来事」は、 2005年8月にアメリカのリゾート地で行われた カンザスシティー連銀シンポジウムの実況中継で ある。ところどころ著者による専門的な解説が入 るが、あたかも我々が聴衆として参加し講演者の 顔を目の当たりにしているかのような、臨場感あ ふれる描写である。「グリーンスパン時代」と銘 打って開かれたこのシンポジウムは、グリーン スパン連銀議長の18年間の在職を記念したもので あったが、そのセレモニー的な雰囲気に抗して、 同氏の金融政策を暗に批判するシカゴ大学ラジャン 教授の気鋭の報告などが目を引く。さらに講演者 の何人かが、既に2005年の時点で金融システムに 潜む危険性を察知し、この次金融危機が起きると したら何が原因で、どのような展開をたどるかと いうことをかなり正確に予見していたことは、 驚愕に値する。時価会計の停止、金融機関のイン センティブ報酬体系の見直しなど、注目すべき提 案も多くなされている。 第部「流動性−この深遠なもの」では、流動 性不足と時価会計が危機の連鎖を生むメカニズム などが考察される。 今回の金融危機で、海外の惨事がまたたく間に 日本に波及するというグローバル化経済の怖さ を、日本の中小企業も痛感しているものと察する。 現下の金融危機の本質を知る好著として、本書を 多くの人に薦めたい。 日本政策金融公庫論集 第3号(2009年5月) ― 96 ―

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