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教養必修科目「感性」と幼児教育との関連についての考察

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(1)Title. 教養必修科目「感性」と幼児教育との関連についての考察. Author(s). 深井, 尚子; 横山, 芙由美. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 71(1): 327-337. Issue Date. 2020-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/11385. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第71巻 第1号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 71, No.1. 令 和 2 年 8 月 August, 2020. 教養必修科目「感性」と幼児教育との関連についての考察 深井 尚子・横山芙由美 北海道教育大学岩見沢校鍵盤楽器第5研究室. A Study of the Relationship between Required Cultural Subject“Sensitivity” and Early Childhood Education FUKAI Shoko and YOKOYAMA Fuyumi Depertment of Music, Iwamizawa Campus, Hokkaido Unversity of Education. 概 要 本学岩見沢校は,芸術,スポーツ,ビジネスという専門性に特化した独特の教育体制で,各々 の専門性の発展の下地となる教養必修科目に「感性」が課されている。教員は,自らの専門性 から見た「感性」について講義を行う。あいまいな概念を持つ「感性」について深く探究する 際, 「感性」と「五感」には,重要なかかわりがあることがわかった。また,「五感」を磨き, 研ぎ澄ますことは,学生たちのワークシートや小論文の記述から,意外にも,「幼児教育」に おける「感性」教育と類似点があることがわかった。「感性」の授業でティーチングアシスタ ントを務めた本学大学院生,横山芙由美が幼児教育との類似性を指摘したことから,本論文で は,大学における教養科目と幼児教育における「感性」の共通点を見いだし,教養の観点から 見た大学教育における「感性」と幼児教育における情操教育に含まれる「感性」の関連性を追 求するものである。. 序 論. 考力を養おうというものである。本論文は,この 大学における「感性」の講義内容が,幼児教育に. 本学岩見沢校では,芸術,スポーツ,ビジネス. おける「情操教育」に共通するたくさんの要素を. に特化された専門性を高めるカリキュラムが特徴. 見出したことで,「感性」を養うことは,幼少期. である。専門性を高めるためには,教養に代表さ. からの青年期まで,さらに,生涯教育の観点から. れる幅広い知識とその知識を生かすためのスキル. も重要であることを論じたものである。. が必要である。本学では,教養必修科目に「感性」. 第1章において,大学における教養必修科目「感. が開講されており,4つの専攻すべての1年生が. 性」の講義内容と学生のワークシートと最終試験. 受講する。「感性」というあいまいな概念を音楽. に課した小論文の分析から,「感性」における多. の専門性から掘り下げ,学生の多様性と柔軟な思. 角的なアプローチによる講義が学生の「五感」を. 327.

(3) 深井 尚子・横山芙由美. 刺激し,多様性を育み,各々の専門性がより深化. 回では,テーマを定めて,小論文を課す。本講義. することを提示する。第2章では,幼児教育分野. のテーマは,さまざまな観点からアプローチでき. における「感性」は,文部科学省,保育士資格試. る「感性」というキーワードから,音楽を例に「感. 験においてどのように扱われているかを調査す. 性」を見直し,音楽の専門性に必要な教養を織り. る。そこから, 「感性」の普遍的な共通点を見い. 交ぜて多角的に「感性」を再考するものである。. だすための,資料を提示するとともに,幼児教育. 音楽に限らず,「感性」を磨くという言葉は,. における「感性」の育みを見直す。第3章では,. 一般的によく使われる。特に,音楽分野では,日. 大学における「感性」と幼児期における「感性」. 常的に出現する言葉で,「感性を研ぎ澄まして聴. の共通点と相違点を比較し,「感性」の教育が,. きなさい」,「感性を豊かに表現しなさい」など,. 幼児期から青年期,そこから生涯学習の題材にも. 実技レッスンでは,多用されている。しかし,あ. 適していることを見出すものである。. らためて「感性」とは何か,と問われると,あい まいな言葉であることに気づかされる。そのため,. 第1章 教養必修科目「感性」から専門性を 深める実証報告. 講義を行う際, 「感性」について定義が必要となる。 その定義の1つの例として,現代における「感性」 について論じている,桑子敏雄1の著書から引用. この章では,大学における「感性」の授業の概. し,「感性」は,受動的なものではなく,能動的. 要を解説し,学生たちの小論文,ワークシートの. なものであるという,新しい観点を提示した。桑. 記述に見られた講義の意義を実証する。学生がこ. 子敏雄は,その著書「感性の哲学」で,現代にお. の「感性」の授業から何を学び,各学生の専門性. ける「感性」を以下のように述べている。. にどのような影響があったのかを検証し, 「感性」 教育の重要性を述べる。. わたしは,感性をこれまでの理解とは別の角 度から捉えようと試みた。一言でいえば,感. 第1節 音楽における「感性」の概要と音楽の基 礎から磨く感性の意義. 性とは, 「環境の変動を感知し,それに対応し, また自己のあり方を創造してゆく,価値に関. 本講義は,15回の授業を音楽教員が3回,美術. わる能力」である。このように捉えることに. 教員が3回,3名のスポーツ教員が9回担当し,. よ っ て, 感 性 は た ん に 外 界 か ら の 情 報 を. 各専門性から「感性」をキーワードに多角的に講. キャッチするだけの受動的な能力ではなく. 義を行うものである。筆者は,音楽の担当であり,. て,環境とのかかわりのなかの自己の存在を. その授業内容は,以下の通りである。. つくり出してゆく能動的,創造的な能力とな 2 る。. 第1回「音楽の基礎から磨く感性」 ワークシートの記入. この考え方は,近代哲学におけるドイツ観念論. 第2回「教養から磨く感性」. の祖といわれる,カント(Immanuel Kant 1724. ワークシートの記入. 3 に対するもので,桑 ~1804)が提唱した「感性」. 第3回「プロ意識と感性」. 子の提唱を理解するには,近代哲学の概要を知る. 小論文課題の実施. 必要がある。このように本講義において,ある論 述を理解するためには,その前提条件となる別な. 3回の講義では,授業の内容に沿ったワーク. 分野の知識が必要となることを示した。. シートを配布し,音楽の基礎,教養,プロ意識に. ここから,カントが「純粋理性批判」で述べて. ついて,各学生の専門性との関りを記述し,最終. いる「理性」,「悟性」,「感性」の解説とそこに現. 328.

(4) 教養必修科目「感性」と幼児教育との関連についての考察. れる「感性」が,現代で扱われる「感性」に影響. 性」を磨くことができることがわかった。次に第. を与えているという,歴史的な理論を知ることで,. 2回目の授業では,教養と感性の関りについて講. 桑子が述べている現代における「感性」の比較と. 義を行った。西洋音楽の背景には,ヨーロッパに. して,理解が深まる。カントの批判哲学について. おける人生の指針となるキリスト教の教えがあ. は,高等学校の授業でも扱われるため,高等学校. る。また,ヨーロッパの思想の基礎に紀元前に発. で学んでいる学生は,理解が早くワークシートの. 祥したギリシャ哲学,またギリシャ神話,ローマ. 記述も理論的であった4。. 神話からそのギリシャ哲学から発展したさまざま. 1つの事柄を深く知るためには,歴史を見直し,. な思想史が18世紀~19世紀の作曲家に色濃く表れ. 現代につながる思考との比較が必要になることを. ている。作曲家は,紀元前からの哲学やキリスト. 示した上で,音楽における「感性」も知識を得る. 教の原理から霊感を得てさまざまな楽曲を作曲し. ことによって理解がしやすくなり, 「感性」の幅. た。それらの思想や教義は,現代のヨーロッパの. が広がることを実感させた。音楽にもさまざまな. 人々にとっても重要な教養であり,今に受け継が. 分野があり,大学で学ぶ「音楽」は,いわゆるク. れている。日本に生まれ日本で暮らしていると,. ラシック音楽のことを指す。クラシック音楽は,. ヨーロッパで大切にされているこのような教養. 一般的に芸術音楽に分類され,専門性が高い分野. は,単なる知識として学ぶ機会が多いが,本講義. である。そこで,多くの学生たちに馴染みがある,. では,18世紀~19世紀の音楽家が,紀元前300年. J-Popなどのいわゆる娯楽音楽を取り上げ,芸術. ころからほぼ2300年も受け継がれた思想,教義に. 音楽との共通点は,西洋音楽の基礎が娯楽音楽の. 強い興味を抱き,そこから作曲家の「感性」を刺. 基礎となっていることを示した。そこから,この. 激され,作曲された楽曲が多数存在することを具. 2つの音楽の相違点をいくつかの例を示して理解. 体的に示している。本講義において,教養,つま. を深めさせた。. り,ヨーロッパにおけるリベラル・アーツ6の考. ク ラ シ ッ ク 音 楽 の 中 か ら, ベ ー ト ー ヴ ェ ン. え方について芸術作品を例に解説した。. (Ludwig van Beethoven 1770~1827)が作曲し. パリで活躍したハンガリー出身のピアニスト,. た,交響曲第5番作品69を取り上げ,知識や解説. リスト(Franz Liszt 1811~1886)は,晩年に聖. を行わずに鑑賞させた。その後,ベートーヴェン. 職者になったほどキリスト教に帰依したロマン派. の歴史的なエピソードやその作曲法をピアノに. を代表する作曲家である。リストは,『メフィス. よって解説した後,もう一度,同じ楽曲を聴いた. トワルツ』,『ダンテを読んで』という表題がつい. ところ, 「感性」が鋭くなり,多角的な聴き方が. たピアノ作品を書いた。ロマン派の時代には,題. できるようになった。4つの専攻,200名の学生. 名のついた「標題音楽」が多く作曲された。メフィ. のワークシートにおいて,8割以上の学生が,聴. ストとは,ゲーテ(Wolfgang von Goethe 1749. き方が深くなり,耳を澄ませて聴くことができた. ~1832)に代表される戯曲“ファウスト”に登場. 5. と記述されていた 。 このように, 第1回目の講義を受講した学生は,. する誘惑の悪魔とされ,人間の弱さにつけ込む悪 魔の誘惑に人はどう対処するのかという意味を含. 「感性」を磨くことは,知識を得ることが重要で. んでいる。また,ダンテ(Dante Alighieri 1265. あり,その知識を活用して物事を幅広い視野でみ. ~1321)が書いた叙事詩“神曲”は,地獄,煉獄,. ることができるようになったことが見出された。. 天国を古代ローマの詩人ウエルギリウス(Publius Vergilius Maro BC70~ BC19) と と も に 巡 り,. 第2節 教養から磨く感性の意義. 死後の世界観を著した。講義の中で,ダンテの神. 第1節では, 音楽から見た「感性」へのアプロー. 曲について,また,キリスト教について解説し,. チの入り口について, 「知識」を得ることから「感. その後,『ダンテを読んで』を鑑賞させた。第1. 329.

(5) 深井 尚子・横山芙由美. 節で述べたように,楽曲の説明があると知識がな. 前のアリストテレス(Aristotelēs BC384~ BC322). かった時と比較すると想像力が増し,その場面が. 時代の「感性」と「五感」の提唱から,18世紀の. 7. 映像として浮かぶようであった 。その点におい. カントの批判哲学を通して,桑子敏雄が提唱した,. ては,第1節で鑑賞したベートーヴェンの作品の. 現代における「感性」の受容の仕方の新しい角度. 鑑賞力の変化は同じであったが,音楽を通して,. からのアプローチまで,学生たちは,2300年の歴. ヨーロッパ人がどのような事柄を拠り所としてい. 史から現代につながる思考法を考察できた。本講. るのか,その「感性」と日本人の「感性」がどの. 義で気をつけたことは,筆者の嗜好に関わらず,. ように違うのかを考えるヒントとなった。. 多くの情報を与えたことである。桑子敏雄は,カ. 哲学,文学,美術,音楽などには,教養として. ントの批判哲学を基に理論を進めていることに対. の歴史的な観点,神話や教義など,日本において. 11 「哲学的思考のすすめ」 の中で, して,竹内均10は,. はほとんど深める機会がない知識を得る手掛かり. デカルト(René Descartes 1596~1650)の方法. となる要素があることを示した。本講義では,音. 序説を例に挙げ,「感性」を桑子とは正反対の意. 楽と美術の関りにも触れ,印象派時代において,. 味で論じている。このように多様な意見や論述を. 美術と音楽の時代区分が一致することを画家のモ. 提示し比較の対象が増えることで,学生たちの思. ネ(Oscar-Claude Monet 1840~1926),ルノワー. 考の幅が広がり, 「感性」が磨かれることがわかっ. ル(Pierre-Auguste Renoir 1841~1919)の絵画. た。. と,作曲家ドビュッシー(Claude Achille Debussy. 普段は,専門性の追求のための実践的な学習を. 1862 ~1918)の音楽作品を具体的に挙げて解説. 中心に行っている学生たちは,歴史や教養に当た. した。19世紀~20世紀という,現代に近い時代に,. る知識を得たことで,その専門性の深化につなが. 8. パリにおけるジャポニズム の影響からフランス. ることを感じていた12。本講義では,第1節,第. 音楽に斬新な作曲法が見られるようになり,芸術. 2節で示した内容以外に,4つの専攻すべての学. 分野における作家たちの「感性」の鋭さを提示し. 生に関わる要素として「五感」を挙げた。「感性」. た。パリにおける芸術家たちは,知らなかった知. と「五感」には深い関係性があり,歴史,教養と. 識や見聞を排除するのではなく,それらを取り入. いった知識を得て,それを具体的に自分の専門性. れ,作品に反映させた。この例から鋭い感性の持. に活用するために,アリストテレスが提唱した「五. ち主は,物事をどのように受け止め,どのように. 感」を研ぎ澄ますということが重要であることを. 実践していくのかを指し示した。このことから,. 述べた。「五感」をあらためて再考してみると,. リベラル・アーツの流れとして,自分の専門性の. 身体のあらゆる感覚を研ぎ澄ますということにな. みを極めることだけに集中するのではなく,さま. る。「五感」の再考によって,学生たちの専門性. ざまな分野から未知の知見を得ることによって,. にも深い関りがあることを発見した。例えば,音. 「感性」が磨かれることを提示した。. 楽を専門とする学生は,特に聴覚が最も鋭いと思 われるが,楽器を演奏する場合,触覚も重要な要. 第3節 大学の必修教養科目「感性」の意義. 素であり,また,楽譜を読むには,視覚が必要で. 第1節,第2節で「感性」を磨くことの意義を. ある。音楽分野の場合,聴覚の前に視覚によって. 講義内容と学生たちの受容から例を挙げて述べ. 楽譜を読むが,「感性」を研ぎ澄まし,さまざま. た。カントが提唱した,3つの人間の認識能力の. な角度から楽譜を読むことが要求され,その楽譜. うちの第3位に置いた「感性」の意味を考え,カ. を読んだ後,聴覚によってその楽譜の意図が表現. ントの意図を理解した上で,学生各々が自分の意. できているかを確かめるというプロセスをたど. 見を述べる際,学生たちは,「感性」とは何かと. る。表現という点において,今までの嗅覚,味覚. 9. いうテーマについて,真剣に向き合った 。紀元. 330. の経験も加味されることも多く,結局は, 「五感」.

(6) 教養必修科目「感性」と幼児教育との関連についての考察. を研ぎ澄ますことで,感性豊かな音楽が実現でき るのである。このことは,美術,スポーツにおい. 第1節 「幼児期の終わりまでに育ってほしい 姿」と「感性」. ても分野は異なるが,同様のプロセスによって専. 文部科学省の『幼稚園教育要領』では,幼稚園. 門性が深化すると考えられる。ビジネス分野にお. 教育において育みたい資質・能力として,「知識. いては,五感を研ぎ澄まし感性を幅広く磨くこと. 及び技能の基礎」,「思考力,判断力,表現力等の. で,さまざまな専門性を多角的に分析し,それら. 基礎」,「学びに向かう力,人間性等」の3項目が. を総合的に包括し,自らのアイディアによって創. 掲げられている14。これは,幼稚園以降の学校教. 造的な企画を提案することができるようになると. 育とつながっており,全ての学校教育において大. 考えられる。. きな柱となるものである。 『幼稚園教育要領』では,. このように, 大学における教養必修科目「感性」. この柱に沿って,幼児が卒園までに獲得したい資. の授業は,音楽,美術,スポーツ,ビジネスに特. 質・能力として,具体的な次の10項目が挙げられ. 化された本学の教育プログラムの中で,すべての. ている15。. 専門性を深化させ,発展させるために非常に重要 ⑴ 健康な心と体. な意義があることが見出された。. ⑵ 自立心. 第2章 幼児教育における「感性」の意義 本章では,幼児教育における「感性」について. ⑶ 協同性 ⑷ 道徳性・規範意識の芽生え ⑸ 社会生活との関わり. を検討する。幼児教育を見直すことで,人間は,. ⑹ 思考力の芽生え. 誕生してからどのように「感性」を育み,成長し. ⑺ 自然との関わり・生命尊重. ていくのかを再考し,第1章で述べている大学に. ⑻ 数量や図形,標識や文字などへの関心・感. おける青年期の「感性」教育を通して,生涯教育 としての「感性」まで発展させたい。. 覚 ⑼ 言葉による伝え合い. 幼稚園では,3歳以上の幼児を対象とし,文部. ⑽ 豊かな感性と表現. 13. 科学省が発行する『幼稚園教育要領』 に基づい て教育が行われる。この『幼稚園教育要領』を,. これらは,幼児の将来を見据えた指導を行うた. 「感性」の視点から改めて見直すことで,幼児の. めの,「理想の姿」の方向性を示すものとして捉. 「感性」がどのように養われていくのかを再認識. えられている。そのため,これらの項目における. し,幼児教育において「感性」を育むことの重要. 「感性」の発達目標は,生涯における「感性」教. 性を提示する。. 育につながる基礎であると考えられる。. 第1節では, 『幼稚園教育要領』に示される「幼. これらの10項目の中で,「感性」が明確に取り. 児期の終わりまでに育ってほしい姿」を見直し,. 上げられているのは,「⑽豊かな感性と表現」で. 幼児教育における「感性」の重要性を考察する。. ある。これには,以下のような説明がされている。. 第2節では, 『幼稚園教育要領』に示される,「ね らい」と「内容」を幼児の発達面からまとめた5. 心を動かす出来事などに触れ感性を働かせる. つの領域を見直し, 「感性」が具体的にどのよう. 中で,様々な素材の特徴や表現の仕方などに. に育まれていくのかを探る。第3節では,音楽分. 気付き,感じたことや考えたことを自分で表. 野における「感性」を取り上げ,幼児期に音楽を. 現したり,友達同士で表現する過程を楽しん. 通して育まれる「感性」を考える。. だりし,表現する喜びを味わい,意欲をもつ 16 ようになる。. 331.

(7) 深井 尚子・横山芙由美. ここから, 「感性」は,表現するために必要な. 第2節 幼児教育の5領域における「感性」. 資質・能力であると捉えられていることがわか. 『幼稚園教育要領』では,第1節で示した,幼. る。 「感性」を働かせることによって,身の回り. 稚園教育において育みたい資質・能力及び「幼児. の様々なことに気付き,そこから感じたことを自. 期の終わりまでに育ってほしい姿」に近づくため. 分なりの方法で表現できるようになっていく。つ. の「ねらい」と「内容」を,次の5領域に分けて. まり, 「感性」を働かせるためには,様々なもの. 示している。1.心身の県境に関する領域「健康」,. に触れ,感じ,表現することが重要となる。その. 2.人との関わりに関する領域「人間関係」,3.. 17. ため, 『幼稚園教育要領解説』 でも指摘されてい. 身近な環境との関わりに関する領域「環境」,4.. 「感性」は,表現活動のみで育まれ るように18,. 言葉の獲得に関する領域「言葉」,5.感性と表. るのではなく,幼児の活動全体を通して豊かに. 現に関する領域「表現」。本節では,「感性」が,. なっていくと考えられる。. 全ての活動の基礎になっていることを具体的に示. 特に,⑹思考力の芽生えの項目では,「感性」. すため,これらの内容を理解した上で,各領域に. との密接な関わりを見出すことができる。この項. おいて,どのように「感性」が育まれるのかを考. 目では,次のような説明がされている。. 察する。. 身近な事象に積極的に関わる中で,物の性質 や仕組みなどを感じ取ったり,気付いたりし,. 1.「健康」領域で育まれる「感性」 「健康」は,幼児が自発的に体を動かして活動. 考えたり, 予想したり,工夫したりするなど,. し,様々な体験を積み重ねていくために,重要で. 多様なかかわりを楽しむようになる。また,. 基礎となる要素である。幼児は,体を思い切り動. 友達の様々な考えに触れる中で,自分と異な. かすことで,自らの体をコントロールできるよう. る考えがあることに気付き,自ら判断したり,. になっていき,着替えや手洗いなどによって体が. 考え直したりするなど,新しい考えを生み出. 清潔になることの気持ちよさを体感することで,. す喜びを味わいながら,自分の考えをよりよ. 衛生管理の大切さを理解していく。また,健康診. 19. いものにするようになる。. 断や,怪我や病気を通して,自らの体に関心をも ち,自らの体調の変化に気付けるようになってい. ここに示されている,物の性質や仕組みなどを. く。このように,自分の体への気付きを重ねるこ. 感じ取ったり,自分と異なる考えに気付いたりす. とで,自分の体に対する「感性」が養われると考. ることができる力は, 「感性」の働きによるもの. えられる。また,健康な体をつくる食事面におい. と考えられる。幼児は,初めての社会生活となる. ても,教師や友達と一緒に料理の手伝いや食事を. 幼稚園において,様々な未知の事象に出会う。そ. することで,その食材や料理の,色,味,形など. の際, 幼児はその事象について知るために, 「感性」. に興味をもち,味覚や視覚,嗅覚など,五感に関. を働かせ,自分なりに感じ取り,考え始める。こ. わる「感性」を豊かにすることができる。. のことから,思考力は,「感性」を基礎として芽 生えてくるものだと考えられる。. 2.「人間関係」領域で育まれる「感性」. このように,幼児教育における「感性」は, 「幼. 教師や友達との交流の中では,自分が他者に受. 児期の終わりまでに育ってほしい姿」の中では,. け入れられる安心感を得たり,共感する喜び,一. 「豊かな感性と表現」の項目に分類されているが,. 緒に活動する楽しさなど体感したりすることがで. 全ての活動の基礎になると考えられる。. きる。しかし,時には,行き違いや対立なども経 験する。このような他者との関わりの中で,幼児 は,他者が自分とは違う「感性」をもっているこ. 332.

(8) 教養必修科目「感性」と幼児教育との関連についての考察. とを知ることができる。またそれは同時に,自分. 豊かになっていく。. のもつ「感性」を知ることにもなる。そのような. また,絵本や物語では,家庭ではなかなか触れ. 経験を重ねることで,他者の気持ちを理解し,他. ない言葉に触れることができる。未知の世界に思. 者の立場になって考えられるようになり,共感や. いを巡らせ,登場人物に共感したり,感動したり,. 思いやりを身につけていく。このように,人間関. 嬉しさや悲しさ,悔しさなどの様々な感情を味わ. 係の中では,多様な「感性」があることを知るこ. うことで,言葉に対するイメージも豊かになって. とで,自らの「感性」を豊かにすることができる. いく。このように,言葉に対するイメージを豊か. と考えられる。. にしていく過程で,その言葉の響きや意味を感じ る「感性」が育まれると考えられる。. 3. 「環境」領域で育まれる「感性」 幼児は,好奇心と探究心をもって,主体的に環 境へ関わっていく。その中で「感性」は,自然や. 5.「表現」領域で育まれる「感性」 「表現」領域では,豊かな「感性」を養うこと. 動植物に触れて心を動かしたり,物の性質や数量,. も「ねらい」に含まれている。幼児は,感じ取っ. 文字などに興味をもったり,見つけたものを遊び. たことを,幼児なりにイメージ化し,率直に,素. に活用したりと,様々な発見や体験をすることに. 直に表現する。このような表現は拙いことが多い. よって豊かになっていく。つまり,幼児の身の回. が,教師が受け止め,認めることによって,幼児. りのすべての事象が「感性」を育む材料となると. は自分の感じたことや思いについて理解を深め,. 考えられる。教師が適切にその材料を幼児の身の. 様々な表現を工夫するようになる。つまり, 「感性」. 回りの環境に整備することで,幼児の好奇心や探. は表現活動の基盤となる。この「感性」は, 「人. 究心がより一層刺激され,豊かな「感性」が養わ. 間関係」領域や「環境」領域で見たように,他者. れていく。. と関わったり,様々な事象に触れたりすることで. また,自然の中には,家庭内では接することの. 刺激され,表現意欲や想像力,創造力を高めたり,. ない音や色,形,匂い,味,手触りなどがたくさ. 表現を工夫するきっかけになる。このように,豊. んある。そのような色々な感覚を,遊びを通して. かな表現活動をするためには,「感性」を豊かに. 感じ,五感を養うことで,より多くのことに気付. することが重要である。. けるようになり,豊かな「感性」が養われると考 えられる。. このように,幼児教育における「感性」は,5 領域すべてにおける活動で育まれ,同時にそれら. 4. 「言葉」領域で育まれる「感性」. の活動を豊かにするものだと改めて認識された。. 言葉のもつ響きやリズム,音の美しさや楽しさ. 幼児は生まれ持った「感性」で様々な事象に向き. を味わうことや,言葉のもつ意味をイメージする. 合う。「感性」をより豊かにするためには,一人. ことは, 「感性」を豊かにする。言葉は音であり,. 一人の「感性」を受け止めながら,より多くの事. 話し方や言葉の組み合わせによって,その響きや. 象に接し,他者とその経験を共有することで,色々. リズムが変わる。中でも,手遊び歌や童謡は,言. な見方・考え方を学んだりすることが重要である. 葉のもつ響きやリズムを体で感じることができ. ことがわかった。. る。歌いながら手を叩いたり,踊ったりすること は,言葉のリズムの面白さや,その言葉のもつ意. 第3節 幼児教育における「感性」の意義. 味のイメージの表現につながる。このように体を. 第1節,第2節で見たように,幼児教育におけ. 使いながら言葉を聞いたり,発したりする活動を. る「感性」は,「表現」領域と結びついてはいる. 通して,言葉の響きやリズムを味わう「感性」が. ものの,幼児の全ての活動を通して養われるもの. 333.

(9) 深井 尚子・横山芙由美. である。 「感性」は,何かに気付いたり,探求し. いものへの興味や関心を持たせる方法などは,幼. たり,工夫したりと,新たな発見や学びに出会う. 児期に「情操教育」として与える教育法にすでに. ためのセンサーとなる。また,そうした「感性」. 現れていた。この発見から,幼児期から青年期の. が養われることによって,全ての活動がより豊か. 学習過程,さらに生涯学習にまで発展できる「五. になっていく。このように,幼児教育における「感. 感」, 「情操」というキーワードを用いて, 「感性」. 性」は,全ての活動を支える,基礎的な能力・資. 教育を多角的に見直す。. 質と考えることができる。 そのような「感性」は,様々な感覚や知識,経 験を蓄積することによって養われる。これらは,. 第1節 幼児教育と大学における「感性」の授業 の共通点. 周りの環境の中で幼児自らが体験的に獲得してい. 大学では,高等学校までの知識の蓄積を基に,. くものである。幼児にとって,身の回りの事象は. 哲学,文学,思想などの歴史的観点からみた教養. 全て新鮮であるため,幼児は常に好奇心や探究心. を再考し,その発展としての新しい知識の発見か. をもってそれらの事象に接し,新たな発見をし,. ら「感性」が磨かれることが立証された。音楽専. 新たなことを学び,「感性」が養われていく。. 攻の学生も音楽が専門ではない学生にとっても,. しかし,大人になるにつれて,全ては「当たり. 紀元前から現代までの思考術や哲学は,共通の知. 前」になってしまう。新たに得る感覚や知識,経. 識として認識され,そこに音楽分野における専門. 験も,自らの興味に偏りがちになり,身の回りの. 性から「感性」を磨く方法を提示した。この知識. 様々な事象から,様々な「感性」を豊かにすると. から磨く「感性」は,第2章第1節で述べた,幼. いった感覚は薄れていく。しかし,幼児の活動か. 児教育における,思考力の芽生えと第2節で述べ. らわかるように,本来は「感性」を養うことが活. た表現の領域で生まれる感性のプロセスによく似. 動の基礎となり,同時に「感性」によって活動を. ている。幼児は,身体的な成長とともにさまざま. より豊かにすることができる。だからこそ,人間. な経験から知識を蓄積し,その知識から行動がで. 形成の基本である幼児教育における「感性」を見. きるようになる。大人とは異なりすべての事柄が. 直すことは,大人が再び豊かな「感性」を養うた. 新しく新鮮で未経験であるため,日々,さまざま. めの手掛かりの一つになると考えられる。. な事柄を吸収し成長していく。特に音楽分野では, 3歳以前から,身体を動かすことは,リズムを育. 第3章 大学における「感性」の授業と幼児 教育の共通点の考察. み,聴こえる音や楽器が奏でる音を認識すること で,心地よい音や不快な音に反応するようになる。 このような基本的な音の聴き方や体に感じるリズ. 第1章では, 大学における教養必修科目「感性」. ムは,音楽専攻の学生にとってすでに当たり前に. が,五感を研ぎ澄まし,歴史と教養の知見を得る. なっていることではあるが,当たり前なことを再. ことで,専門性の深化と発展に重要な関連性があ. 認識し「その音は,本当に美しい音なのか」,また,. ることを述べた。また,第2章では,日本におけ. 「そのリズムは正しいのか」など専門的に培った. る幼稚園,保育園での情操教育の重要性を検証し. 耳や身体を見直すことにつながる。幼児期に楽し. た。この2つの章を俯瞰すると,幼児期と青年期. いと思ったことややってみたかったことを思い起. における「感性」教育の共通点が見出された。日. こし,記憶をたどることで,大人になると忘れて. 本国政府が,経験が少なくすべての事柄を吸収し. しまいがちな,新しいことへの興味が再度,確認. ようとする幼児のための教育指針は,意外にも,. できる。. 青年期に差し掛かった学生に対する教育に共通す. 本学岩見沢校では,小学校免許や幼稚園免許は. るものがあった。大人になると忘れがちな,新し. 取得できない。専門性を重視した中学校,高等学. 334.

(10) 教養必修科目「感性」と幼児教育との関連についての考察. 校の専門の免許のみ取得できるため,岩見沢校の. がれている演奏の規則を知り,音符が書かれてい. 学生は,芸術,スポーツ,ビジネスの各専攻の学. ない部分にも意味を見出すことである。楽譜は,. 生としか接することができない。しかし,教養必. 1つの情報であり,強く(f)や弱く(p)などの. 修科目「感性」の授業によって,専門性の追求の. 表示を,どの程度の強弱にするのかは,演奏者に. みではなく,芸術,哲学,思想などの教養として. 任されている。そこで,知識や専門的な規則を深. の知識を広く知ることができる。高等学校までの. く知り,その上で,楽譜を読む際, 「感性」の鋭. 知識を基に, 大学という高度な研究機関における,. さが必要になってくる。音楽以外の歴史的背景や. 専門性の融合による多角的な授業は,幼児教育に. 哲学,思想,社会情勢を理解していることで,作. おける, 「健康」,「人間関係」,「環境」,「言葉」,. 曲家の意図が読み取れる場合がある。また,幅広. 「表現」という5つの要素を重点的に行おうとい. い視野で楽曲や作曲家を見ることで,楽譜の読み. う教育方針とは,共通点がはっきりと見られる。. 方が深化し,表現が多彩になるのである。次に演. 幼児教育における5つの要素は,6歳時における. 奏技術の面から「感性」を見ると,高度な部分を. 達成目標となっているが,内容の深さは異なって. 100回繰り返して練習することは,時間の無駄で. いるが, この5つの要素は,そのまま大学生にとっ. ある。 「感性」を磨くことで,なぜその部分が上. ても重要な要素ということができる。 「感性」の. 手く行かないのかを考えるようになり,その原因. 授業では,その5つの要素がすべて関わって,各. を見つけ出して注意力を高めることができるので. 学生の専門性と結びつき, 「健康」であるためには,. ある。技術面でも「感性」を磨くことと「五感」. 五感を研ぎ澄まし,自分の体調を敏感に察知でき. を敏感にすることで,短時間で早くに上達するこ. る。 「人間関係」は,「感性」を磨くことで他人の. とになる。最後に音楽演奏分野で最も重要な「表. 気持ちが理解できるようにもなる。「表現」は,. 現」には, それらすべての総合的な考察と鋭い「感. まさに, 「感性」と直接的に結びつき,個性的な. 性」が必要不可欠になる。美術でもスポーツでも. 表現は,感性を養うことで多彩になる。. 同様のプロセスと思考力が重要であると考えられ. このように,幼児教育という人間の成長の初期 段階に養われる要素は,大学における「感性」の 授業と深く結びついていることが明らかになった。. る。 このように「感性」を磨くことは,「五感」の 鋭さとともに育まれることであり,「感性」を磨 くことで,専門性の深化と実践力につながるので. 第2節 「感性」の意義. ある。学生は,この事実を知ることによって,あ. 第1章,第2章で, 「感性」をキーワードに幼. いまいな言葉である「感性」について深く考え,. 少期と青年期の成長とその発展には深い関りがあ. 各々の専門性にフィードバックさせることができ. ることがわかった。本学岩見沢校における必修教. た20。. 養科目「感性」は,専門性を高めようとする,芸 術,スポーツ,ビジネスの学生たちにとって,個々 の専門性を支える背景を見直す内容になってい. 第3節 幼児教育と高度な大学教育との共通点か ら見た「感性」. る。音楽専門の学生を例に挙げると,複雑で高度. 一般的に「感性」は,芸術分野で多用される言. な読譜,楽器の演奏技術を磨くだけでは,人を感. 葉で,感性豊かな表現,感性が研ぎ澄まされた演. 動させる演奏にはならないことは,常に実技指導. 奏などと使用される。それに対してスポーツ分野. で指摘されている。楽譜を正しく読むということ. やビジネス分野においては,あまり重視されない. が文字通りの理解だけでは,専門性につながらな. 概念であった21。授業の冒頭で,各専攻の数人の. い。つまり,正しいとは,作曲家の意図をくみ取. 学生に,「感性」の概念と自分の専門性との関係. ることであり,クラシック音楽の歴史的に受け継. について質問したところ,「感性」という言葉に. 335.

(11) 深井 尚子・横山芙由美. は表面的な理解しか持っておらず,芸術と呼ばれ. が大事なのかというと,そこに含まれる知識. る専攻の音楽や美術の学生さえ,あいまいな概念. そのものというより,その知識や知識を構成. と具体的な応用方法を答えることができなかっ. する概念の使い方を学べるから26. た。 「感性」の講義では,「感性」を幅広く,多角 的に再検証し,本学岩見沢校で高度な専門性を学. このように,幼児期の「感性」の育みが,青年. ぶ1年生の学生に,専門性の背景にあるさまざま. 期の「感性」に結びつき,大学の授業で「感性の. な事象,つまり,歴史,思想,哲学を含む教養か. 授業を受講することで,青年期の学生たちが,忘. ら見た「感性」について講義を行った。この講義. れがちな幼少期の体験や感動を回想したり,初心. を受講した学生は,専門性に特化した技術の習得. に戻って再考することのきっかけとなった。「感. に, 「感性」が必要であることを理解し,専門的. 性」というキーワードから,多角的な視野を持つ. な知識だけではなく,他分野の知識を知ることで,. ことの重要性と,その方法論がいくつか見出され. 今まで,全く興味がなかった事柄にも興味を抱け. たことは意義があったと考えられる。. るようになったことが小論文やワークシートの記 述から明らかになった。多角的で幅広い視野で物 事を広く見られることから,各々の専門性と比較 して分析ができるようになり,その比較から専門 22. 性の深化につながることがわかった 。. 結 論 本論文では,本学岩見沢校における教養必修科 目「感性」の授業受講した学生のワークシートや. 幼児教育における「感性」の育みは,青年期の. 小論文の記述を参考に,「感性」の概念から多角. 知識の蓄積が増加した時に,あらためて振り返っ. 的な視野を身につけることができ,「感性」教育. てみると,幼少期からの感性の育みが,影響して. の重要性を論じたものである。「感性」は,あい. いることがわかった。例えば,スポーツ専攻の学. まいな言葉であるため,講義における「感性」の. 生は,幼少時から体を動かすことが好きであった. 定義をする際,哲学,思想,歴史に見られる教養. り,音楽専攻の学生が,幼少期から音楽的な習い. に深くアプローチすることになった。また, 「感性」. 事に興味を持っていたなど,幼少期の「好きなこ. と「五感」の関連性からは,学生の専門性に直接. と」が育まれ,現在に至っている事例が多数見ら. 結びつく要素であったため,学生の理解度が高. 23. れた 。未熟ではあるが幼少期に興味を持った事. かった。幼児教育における幼稚園指導要領にも「表. 柄が,成長とともに発展し,幼少時の「感性」に. 現」という項目があり,学生たちの幼少時の興味. よって見出された興味が,大人になっても継続す. が大人になってからも引き継がれていることがわ. ることも学生の記述によって明らかになった。本. かった。この点は,「感性」の授業の受講によっ. 学岩見沢校における「感性」の授業では,教養や. て回想されたことで,幼児教育との関連性を見出. 歴史の知識が直接専門性に結びつくことはなくと. したきっかけとなった。「感性」は,専門的な知. も,専門性に結びつく思考力や工夫する方法など. 識だけではなく,教養に分類される広範囲で多角. 24. 的な知識を得ることによって磨かれることがわ. 25. ことは,社会学者,刈谷剛彦(1955~) が次の. かった。そのさまざまなことへの興味は,幼児期. ように述べている。. から成長の過程として現れるものであり,幼児教. に応用できることを学生が自ら発見した 。この. 育においてその興味を上手に育むことが重要であ 言葉,特に概念の使い方のスキルを獲得する. り,幼児の「感性」を育てることは,青年期の専. ことによって,世界の見え方がいくつもある. 門性に結びつくと考えられる。. ことを学ぶのです。これは蓄積がなければで きないことで,なぜギリシャ哲学を読むこと. 336.

(12) 教養必修科目「感性」と幼児教育との関連についての考察. 【注】 1.桑子敏雄(くわこ としお 1951~)哲学者。東京. かな感性と表現 文部科学省 p72 19. 『幼稚園教育要領解説』文部科学省 2018 p.64 20.小論文の5つのテーマの1つは,「感性と五感を磨く ことの意義」であり,小論文のテーマに選んだ学生が. 工業大学名誉教授。 2.桑子敏雄「感性の哲学」(日本放送出版協会 2001) 「はじめに」から(下線は筆者による) 3.カントは,認識の三段階において, 「感性」, 「悟性」 , 「理性」を提唱し,「感性」は対象を受け取る最初の段 階であると述べている。 4.ワークシートの設問は,《「感性」を磨くことや意識. 多かった。 21.第1回目の授業で,各専攻から3名ずつ指名し, 「感 性」について述べさせた。 22.小論文の内容から得られたデータである。 23.小論文の内容から得られたデータである。 24.特に今まで「感性」は関係ないと述べていたビジネ ス専攻の学生によるワークシートの記述から見出され. することで,どのような利点があるのか,自分の専門 性との関連から記述しなさい》というもので,学生の 多くが,カントの認識の三段階を引用していた。 5.ワークシートの設問は,《今日鑑賞したベートーヴェ ンの2つの作品について知ったことを挙げ,知ったこ とによって作品の聴き方がどのように変わったかを述 べなさい。》というものである。. た。 25. 刈 谷 剛 彦( か り や た け ひ こ 1955~) オ ッ ク ス フォード大学教授。社会学者。 26.刈谷剛彦 吉見俊哉『大学はもう死んでいる? トッ プユニバーシティからの問題提起』 . 集英社新書 2020 p.148. 6.ギリシャ,ローマ時代に源流を持つ,人が持つ必要 となる実践的な知識や学問の基本で,自由七科といわ. 【参考文献】. れた。現代では,文系理系に必要な教養教育を指すよ うになっている。 7.ワークシートの設問は,注5と同じ。 8.19世紀後半にヨーロッパで起こった日本趣味のこと。 パリ万国博覧会で日本文化が紹介されたことがきっか けである。 9.最終試験となる小論文の記述の際,テーマを5つ提 示し,そこから学生が選んで自由に論じさせた。その 際,30%ほどの学生がカントの哲学から見た感性とい うテーマを選んで,理論的に論じた。 10.竹内均(たけうち ひとし 1920~2004)地球物理 学者でありながら,哲学的な著書多数。 11.竹内均 『デカルト 方法序説に学ぶ,感性の時代 の理性開発法 哲学的思考のすすめ』PHP研究所 1984 12.ワークシートの設問は,《歴史と知識を得たことで自 分の専門性に有益と感じたことを述べなさい》である。 13.『幼稚園教育要領』文部科学省 2017 14.『幼稚園教育要領』 第1章 総説 第2節 幼稚園 教育において育みたい資質・能力及び「幼児期の終わ りまでに育ってほしい姿」pp.3-4 15.『幼稚園教育要領』 第1章 総説 第2節 幼稚園 教育において育みたい資質・能力及び「幼児期の終わ りまでに育ってほしい姿」文部科学省 pp.3-5 16.『幼稚園教育要領』 第1章 総説 第2節 幼稚 園教育において育みたい資質・能力及び「幼児期の終 わりまでに育ってほしい姿」文部科学省 p.5. 阿部謹也 『 「教養」とは何か』 . 講談社現代新書 1997. ダンテ,アンギエーリ 平川佑広訳 . 『神曲 地獄篇』 河出文庫 2008. カント,インマニュエル 篠田英雄訳 . 『判断力批判 上』岩波文庫 1964. ゲーテ,ヴォルフガング フォン 高橋義孝訳 . 『ファウスト 上下』 新潮文庫 1967. 刈谷剛彦 吉見俊哉『大学はもう死んでいる? トップ ユニバーシティからの問題提起』 . 集英社新書 2020. 小泉義之 『デカルト 哲学のすすめ』 . 講談社現代新書 1996. 熊野純彦 『西洋哲学史』 . 岩波新書 2006. 桑子敏雄 『感性の哲学』 . 日本放送出版協会 2001. 桑子敏雄 『何のための「教養」か』 . ちくまプリマ―新書 2019. 大澤真幸 『社会学史』 . 講談社現代新書 2019. 竹内均 『デカルト 方法序説に学ぶ,感性の時代の理 性開発法 哲学的思考のすすめ』 . PHP研究所 1984. 『幼稚園教育要領』 . 文部科学省 2017. 『幼稚園教育要領解説』 . 文部科学省 2018. (深井 尚子 岩見沢校准教授) (横山芙由美 岩見沢校研究科音楽教育専修). 17.『幼稚園教育要領解説』文部科学省 2018 18.『幼稚園教育要領解説』『幼稚園教育要領』 第1章 総説 第2節 幼稚園教育において育みたい資質・能 力及び「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」⑽豊. 337.

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参照

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