図画工作科における芸術に基づく探求の学習環境デザイン : 「 土」を用いた実践のA/r/tography試行
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第71巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 71, No.2. 令 和 3 年 2 月 February, 2021. 図画工作科における芸術に基づく探求の学習環境デザイン ― 「土」を用いた実践のA/r/tography試行 ―. 岩永 啓司・手塚 千尋* 北海道教育大学旭川校彫刻研究室 *. 明治学院大学心理学部. Design of a Learning Environment for Arts-Based Inquiry ― A Pilot Study of A/r/tography ―. IWANAGA Keiji and TETSUKA Chihiro* Department of Art Education, Asahikawa Campus, Hokkaido University of Education *. Department of Psychology, Meiji Gakuin University. 概 要 本研究では,Arts-Based Research (ABR) による芸術を基盤とした探求型学習の初等教育 への導入を目的に,図画工作科における探求型学習の題材開発及び学習環境デザインの検討を 試みた。学習者にとってつながりのある場所の土を造形素材として用いることが,自己と素材 の探求を促進するという仮説のもと,児童自身の主題が探求されていく過程を制作者と研究者, さらに教育者としての間主観的立場から捉えようとするA/r/tographyの方法で考察した。 その結果,①素材の探求と主題につながる探求が結びつきにくかった,②造形表現を構成する 諸要素間と主体との相互的な関わりを通して関係性の新たな意味や価値の創出につながる探求 的活動の端緒が確認された。. Ⅰ.はじめに 1 「主体的・対話的で深い学び」と探究/探求. カリキュラム・マネジメントの視点からカリキュ ラムの再構成がなされた。具体化された「生きる 力」の育成には「主体的・対話的で深い学び」が. 活動. 不可欠であり,各教科でその実現に向けた題材開. 平成29年度に改定された小学校学習指導要領. 発や方法の検討が喫緊の課題とされる。この「主. (以下新学習指導要領)では,予測困難な社会の. 体的・対話的で深い学び」のうち,「深い学び」. 担い手に必要とされる資質・能力の育成を主眼に. は「各教科の特質に応じた物事を捉える視点や考. 221.
(3) 岩永 啓司・手塚 千尋. え方である『見方・考え方』を習得・活用・探究. 2 図画工作科における「たんきゅう」とは. という学びの過程で働かせること」を通じて展開. 図画工作科の教科特性を端的に表現すると「唯. されることが求められる。すなわち,児童が暗黙. 一の正解はない,こたえは自分自身にある。こた. 的/明示的に獲得した知識を言語化したり,その. えに辿り着くための方法も自分で考える」となる. 知識を活用して他者と対話したりすることを通し. だろう。子ども一人ひとりは,自分だけのラーニ. て学びを深化させるのである。それは,各教科や. ングプロセスを経験することになる。すなわち,. 教科間で断片的に獲得された知識をつなぎあわ. 図画工作科における「知識」は,学習者個人の感. せ,新たな意味や価値などを含む知識を児童個人. 性や経験を通じて構築されたものになる。一般化. やクラスコミュニティで創出する探究/探求的な. された知識や情報を総合的に判断して課題解決を. 営みを各教科で実装していくこととしても理解で. 図ることよりも,個々の感性や視点の変化によっ. きる。. てもたらされる「気づき」による問題提起や問題. ところで, 「たんきゅう」には,探究:物事の. 発見が到達点となる学習活動であると特徴づけら. 本質を見極めようとすること,探求:あるものを. れる。したがって,図画工作科における「たんきゅ. 得ようと探し求めることのように,2通りの性質. う」とは,よりプロセスを重視した活動であるこ. がある。学習指導要領ではどの教科においても一. とから探求:あるものを得ようと探し求めること. 貫して「探究」が採用されている。例えば,平成. との親和性が高いと考えられる。このように,各. 29年告示小学校学習指導要領「総合的な学習の時. 教科および領域の特性から指向される「たんきゅ. 間」及び平成30年告示高等教育学習指導要領「総. う」の姿は異なることが仮定される。. 合的な探究の時間」では, 「探究」が採用されて. 以上より,本研究では図画工作科で扱う「たん. いる。その特徴は,教科・領域を横断した総合的. きゅう」を「探求」と表記することとする。(手塚). なテーマから課題を設定または発見し,これまで に獲得した知識を活用することを通して課題解決. 3 「創造」の過程と探求の関係性. する問題解決型の学習活動にある。設定された課. 『うみだす教科の内容学』によると,図画工作. 題を解決することを通して自己の生き方を考えら. 科は「創造性を育む主要教科」と位置づけられて. れるようにすること(総合的な学習の時間)から,. いる3。ここでの「創造」とは,「ビジョンを描く. 自己と社会との関係性から課題を見出し,解決し. こと,そしてそのビジョンを実現すること …. ていくための資質・能力の育成(総合的な探究の. (中略)… 当初思い抱いたビジョンを超えた実. 時間)へと段階的にカリキュラムがデザインされ. 現が果たされること」であり,「ビジョンを超え. ている。また,理科における「探究」では「自然. た実現」を「当初思い抱くことのできなかった未. の事物・現象についての問題を科学的に解決する. 開の領域に到達すること,自らのビジョンが更新. 1 . ための資質・能力の育成」 を目標に,「自ら問題. され拡張していくこと」と説明される4。図画工. を見いだし,それを追究していく活動を行うとと. 作科で子どもたちは,提示されたテーマや素材か. もに,見いだした問題を追究し(筆者下線),解. ら直感的に「イメージ」を生成し,具体物の操作. 決していく中で新たな問題を見いだし,繰り返し. による造形行為から得られる感覚や情動,想像と. 自然の事象・現象にかかわっていくこと」2 がで. いう思考活動を繰り返すことで,目の前の対象に. きる学習活動が展開される。 「追究」は高等教育. 対して当初の自己が保持していた意味や価値を拡. では「探究」と表記が変更され,「探究の過程」. 張したり刷新したりすることを経験する。さらに. を重視した科学的な問題解決型の学習活動が想定. は,探求する中で未知なる自分を見つけ出すこと. される。 (手塚・岩永). も期待される。「創造」が「(当初の)自分自身」 を「はみ出す」ことで到達できる帰着点であると. 222.
(4) 図画工作科における芸術に基づく探求の学習環境デザイン. すれば, 「探求」 とはすなわちそこに至るまでの「プ. 教育や学校教育全体における位置づけなどのカリ. ロセス」として説明できる。(手塚・岩永). キュラム・マネジメントをどのように考えていく のかといった,学校教育へ実装するための検討は. 4 芸術を基盤とした探求活動. なされていない現状にある。. 本研究では,図画工作科における探求活動を. そこで本研究では,上記①と②に対し,図画工. Arts-Based Research(以下ABR)に論拠を求め,. 作科における探求による学習の題材開発及び実践. 題材開発を試みようとしている。1990年代初頭ア. を通して,図画工作科ならではの探求の諸相を記. メリカで生まれたABRは「芸術を基盤とする新. 述するとともに,学校教育への芸術を基盤とした. しい知の創出を目指す研究の考え方を示す概念及. 探求型学習活動の導入における課題を検討するこ. 5 . び実践の方法」 (笠原,2019) であり,「芸術が. とを目的とする。(岩永・手塚). 手段として用いている思考の形と表現の形式を活 6 。 用する活動」とされる(アイスナー&バロン,). ABRの最大の特徴は,アーティストの芸術制作. Ⅱ.研究の目的と方法. 時の探究それ自体を研究と位置づけることが大き. 本研究は,前章で提示した3つのリサーチクエ. な特徴である。それは,リサーチャーの主観や感. スチョンに対し,A/r/tographyによる質的研. 性に基づいた知識を取り扱うことを意味し,実証. 究の手法で進めていく。A/r/tographyとは,. 主義的な人文社会科学の研究手法とは一線を画. a/r/t(アート)とgraphy(記述)を組み合わ. す。ABRがひとつの研究手法として確立した背. せて探究する考え方,方法,理論,理論化する営. 景には,1980年代の実証主義的な質的研究からの. 9 。 みである。(笠原,2020,アーウィン,2019). パラダイムシフトがある。それまでに人文社会科. エスノグラフィーやオート・エスノグラフィーな. 学が対象としてこなかったことや,言語化できず. どの記述による質的研究でも対象化し難い感性や. に取りこぼされてしまったことを芸術により考察. 情動の問題を,実践者自身の感性で感受し,表現. し,表現することで顕在化することへの期待の高. と省察を繰り返すことで探求を深め,創造的に問. 7. まりがあったとされる(笠原,2019)。. いを生成していく手法といえる。接頭語のa/r/. 現在,国内におけるABR研究では,社会学に. t は,Artist(ア ー テ ィ ス ト),Researcher(研 究. おける研究(岡原,2016)や教育学における研究. 者),Teacher(教 師)を 意 味 し, 実 践 者 の /( ス. (秋田,2007・金田,2014),さらに臨床心理学. ラッシュ)で区切られながらも完全には切り分け. における展開の考察(伊藤,2018)など,多領域. られないアイデンティティを表している10。a/. に渡る。端緒となった美術教育分野では,芸術家. r/tに基づくと,本研究は彫刻家であり大学教. 養成の専門教育を対象にした哲学的研究(小松,. 員である岩永と,美術教育研究者であり大学教員. 2018)や,大学生を対象としたABRに関する授. である手塚という異なるバックグラウンドを持つ. 業実践(笠原)がある。これまで,専門教育や高. 筆者らによる題材開発及び実践の評価は,a/r/. 等教育を対象としてきたABRによる「自己と世. tのそれぞれの「あいだ(in-between)」の視点. 界との関係性に変容を促す」教育実践は,初等中. を帯びると説明できる。このような間主観的立場. 等教育の図画工作科や美術科にも開かれた探究的. から,学習環境デザインの検討と実践の考察を通. な学習法としての機能が期待されている(小松,. して図画工作科における探求型学習の展開の可能. 2018)8。一方で,①子どもたちの「芸術に基づく. 性を検討するための方略として,以下の2点をま. 探求」をどのような姿として捉えることが可能な. ず明らかにする。. のか,②学習者の発達段階を踏まえた探求活動の 学習活動デザインとはどのようなものか,③教科. ①A/r/tographyに基づき芸術を基盤とした探. 223.
(5) 岩永 啓司・手塚 千尋. 求(ABR)が起きる学習環境デザインの検討。 ②A/r/tographyによる児童の探求の姿の観察 と同定。. Ⅲ.芸術を基盤とした学習環境のデザイン 1 実施校の研究テーマ 実践先である北海道教育大学附属旭川小学校. ①については,デザイン研究の手法に基づき,. (以下附属小)では, 「全教科・領域研究による知・. 「探求」が起きると仮定できるプロセスを活動と. 徳・体の調和の取れた子供の育成」という教育研. してデザインする。学習科学におけるデザイン研. 究理念に基づいて,今日的課題への対応や在籍児. 究では,研究者がのぞましいとする現象が起きる. 童の実態,過去の研究成果からの展開を図る形. 状況を学習理論に基づきデザインし,実践と評価,. で,3年をタームとする全体研究の主題が設定さ. 調整を繰り返す中で学習環境デザインの原則を見. れ,そこから教育課程編成を柱とした各教科の教. 出す仮説生成型の研究である。一方で,本来は. 育研究課題が決まり実践が展開されている(北海. ABRには確立された手法はなく,芸術作品の素. 道教育大学附属旭川小学校,2019)11。これまで. 材やコンセプト,見た目が多様であるのと同様に. の附属小の研究主題と教育理念からも,児童の主. 方法もプロセスも実践者それぞれによるものであ. 体性の育成を柱とするカリキュラム研究が中心で. る。そのため,そもそも「ABRのプロセスをデ. あることと,実践時期が新しい研究課題を決定す. ザインする」ことは理論上矛盾が生じることにな. る時期と重なっていたことから新学習指導要領へ. る。芸術に基づく探求活動を教科教育としてカリ. の接続も意識し,「学びを広げ,深める子供を育. キュラム化するためには,目的や到達点の設定,. てる教育活動の展開」という研究主題を仮定し,. ラーニングフレームワークを準備する必要がある。. 具体的な調整に入った12。(岩永). そ こ で 今 回 は,ABRと 学 校 教 育 の フ レ ー ム ワークのバランスについてディスカッションする ことをねらいにして,目的①と②に対し次のよう な研究デザインを行った。. 2 実施校とのテーマの共有 本研究は,芸術に基づく探求型学習の学校教育 への実装を指向することから,探求型題材の実践. 【プロセス1】 :彫刻家である岩永が自身の制作. 研究を通して得られる教育者の立場からの知見も. プロセスである,1)対象となる素材の特徴や. 重要なデータとなる。附属小との調整は教務主任. 活かし方を探ること,2)自分自身と社会(他. の教諭とのメールでの応対に加え,対面での打ち. 者)との関係性についてふりかえること,3). 合わせを行った。調整段階を通して附属小から出. 1)と2)を繰り返すことで制作のコンセプト. された質問や依頼の内容は,以下の通りである。. を抽出すること,4)制作・表現する中で新た. ・本題材が扱う「探求」が総合的な学習の時間で. な気づきが生まれ制作物に対して意味づけや価. 扱う探究学習や,他教科の調べ学習との違いは. 値づけをすることの,4つのフェーズを抽出し,. 何か。. 学習環境デザインのデザイン原則とする。 【プロセス2】 :児童を取り巻く文化的・社会的 環境をリサーチしテーマを設定する。. ・本題材で育成される資質・能力と学習目標と対 応する評価(項目)方法の明示。 ・学習内容の定着を図る自己評価アンケートの実. 【プロセス3】 :仮設のデザイン原則およびプロ. 施。. セス2でのリサーチを踏まえた題材を開発する。. 各事項の調整過程についての叙述をここでは省. 【 プロセス4】:A/r/tographyによる実践の. き,概略のみを記す。先ず図画工作科における探. 分析と考察。 (手塚). 求の説明に関しては,ABRの考え方に基づいた 2つの実践事例と1つの題材案の説明と活動計画 を提示し,附属小側で対象学年と合わせて選定し. 224.
(6) 図画工作科における芸術に基づく探求の学習環境デザイン. てもらうこととした13。次に,学習評価に関する. を通して知覚され,その過程で発想や構想が創発. 事項については,1章の創造と探求の関係でも触. されていくため,敢えて素材の種類や組み合わせ. れたが,未開の領域に到達する過程を「探求」と. を指定していない。その一方で,彫刻領域には形. して捉えるならば,主体者である児童は当然,活. 象化が上位で素材を副次的に捉える,可塑材を用. 動を見守る教師にとっても想定外のモノやコトが. いた塑造的な造形アプローチがある。この表現技. 発生することを意味しており,従来の観点別評定. 法では形象化された状態を固定化する目的で素材. 方法では捉えきれない活動にも対応した新しい評. 置換が必要となるが,それまでの過程において素. 価の枠組みが必要となる。したがって,本実践で. 材はあくまでも形態の追求を支える,つまり,イ. は附属小の教育課程とは切り離して実施すること. メージを実体化するための媒体として位置付けら. となったが,学校現場との実践の内容を共有する. れる。こうした彫塑用材としての素材が持つ意味. ため,指導案と旧学習指導要領に即した仮定の評. について,神戸 (1987) は,①形態優先の立場か. 価観点を作成した。 最後に自己評価アンケートは, 附属小の教育課程とは切り離して実施することと. ら,形象化のための単なる媒材的役割しか演じな イメージを実体化するための媒体として位置付け. 学習の最後のまとめの時間で扱うこととした。 なったが,学校現場との実践の内容の共有するた. いものと,②各材質固有の特性と形態とは密接に られる。こうした彫塑用材としての素材が持つ意. (岩永) め,指導案と旧学習指導要領に即した仮定の評価. 関連するものとして,①の媒材的意味合いに加え 味について, 神戸(1987)は,①形態優先の立場から,. 観点を作成した。最後に自己評価アンケートは,. 形象化のための単なる媒材的役割しか演じないも て,題材や発想の動機をも含めた造形要素として. 学習の最後のまとめの時間で扱うこととした。 3 土というメディア・素材について (岩永). 旭川市は地方中核都市でありながら,周辺環境 として広大で豊かな自然を有しており,そうした 3. 土というメディア・素材について. 土地の持つ性質と深く結びついた文化や産業を中. 旭川市は地方中核都市でありながら,周辺環境. 心に据えて発展してきた街である。特に地名にお として広大で豊かな自然を有しており,そうした. のと,②各材質固有の特性と形態とは密接に関連 位置付ける二通りの意味があることを指摘してい するものとして,①の媒材的意味合いに加えて, 14. る 。したがって,本実践における「土」に関し. 題材や発想の動機をも含めた造形要素として位置. ても,イメージした何かを表すためのメディアと 14. 付ける二通りの意味があることを指摘している. 。. して活用する側面と,思考を触発するきっかけと. したがって,本実践における「土」に関しても,. なる側面,さらに双方の側面を持った素材として イメージした何かを表すためのメディアとして活. いては,先住民のアイヌが使用していたものが多 土地の持つ性質と深く結びついた文化や産業を中. 捉えることができる(図1)。ABRにおける「素 用する側面と,思考を触発するきっかけとなる側. 心に据えて発展してきた街である。特に地名にお く,場所固有の地理・地形的な特徴が表わされて. 面,さらに双方の側面を持った素材として捉える 材」が探究の深化にどのように貢献できるのか,. いては,先住民のアイヌが使用していたものが多 おり,現在では漢字が当てられているが語音はそ. ことができる(図 1)。ABR における「素材」が 児童の取り組みを通して確認する必要がある。. く,場所固有の地理・地形的な特徴が表わされて のままに残っている。実践対象校は,以上のよう. 探究の深化にどのように貢献できるのか,児童の. おり,現在では漢字が当てられているが語音はそ. 取り組みを通して確認する必要がある。(岩永). な都市部と自然環境が混在した地域に立地し,附. (岩永). のままに残っている。実践対象校は,以上のよう. 属学校としての特性上,校区が広範囲に及ぶため. な都市部と自然環境が混在した地域に立地し,附. 材質固有の特性と形態が密接に関連した主題(発想). 対象者 (児童) の生活背景も多様であることから, 属学校としての特性上,校区が広範囲に及ぶため その多様性が引き出せるような探求型の学習環境 対象者(児童)の生活背景も多様であることから, デザインを試みることにした。そこで着目したの その多様性が引き出せるような探求型の学習環境 デザインを試みることにした。そこで着目したの が「土」という素材や「土地の記憶」というキー が「土」という素材や「土地の記憶」というキー ワードである。以下,土に着目する理由をA/r/ ワードである。以下,土に着目する理由を. tographyの視点より記述する。. 図1 彫刻家/研究者からみた素材の機能 図1 彫刻家/研究者からみた素材の機能. A/r/tography の視点より記述する。. ⑴ 表現の媒材/要素としての素材(a/rの視点). (1)表現の媒材/要素としての素材(a/r の視点). 筆者(岩永)は,主に木を用いて彫刻制作に取. 筆者(岩永)は,主に木を用いて彫刻制作に取. (2)素材/主題/要素としての土(a/t). ⑵ 素材/主題/要素としての土(a/t). ここでは芸術に基づく探究型題材において素. り組んでいる。 「主に」を冠した理由は,金属や陶, り組んでいる。「主に」を冠した理由は,金属や. ここでは芸術に基づく探究型題材において素材 材が持つ意味について,前項の表現行為における. ガラス等の異素材を併用する場合が多いためであ 陶,ガラス等の異素材を併用する場合が多いため. が持つ意味について,前項の表現行為における2 2つの素材観を踏まえ,教育的な視座から位置づ. である。また,木材についても,木彫では一般的 る。また,木材についても,木彫では一般的に作. つの素材観を踏まえ,教育的な視座から位置づけ けを試みる。. に作り手が「彫り心地」や外面的な木質の特徴等 り手が「彫り心地」や外面的な木質の特徴等から. 山﨑,金子(1987)が行なった,美術教育にお を試みる。. から特定の樹種を設定している場合が多いが,自 特定の樹種を設定している場合が多いが,自身の. 15 ける素材の印象に関する研究調査 では,土とい 山﨑,金子(1987)が行なった,美術教育にお. 身の場合,そうした各素材固有の性質は加工する. う素材に対して就学期の子どもたちの関心が全体 15. 行為を通して知覚され,その過程で発想や構想が. を通して低いことが示されているが,この結果を. 創発されていくため,敢えて素材の種類や組み合. 考察する前に,背景となる美術教育における素材. わせを指定していない。その一方で,彫刻領域に. の位置づけを確認しておきたい。金子によると, 225. は形象化が上位で素材を副次的に捉える,可塑材. 美術の表現媒体の物質的側面を表わす言葉として,. を用いた塑造的な造形アプローチがある。この表. 先在する目的に規定される「材料」と,具体的な. 場合,そうした各素材固有の性質は加工する行為. ける素材の印象に関する研究調査 では,土とい.
(7) 践では,「土地の記憶」とつながりのある土を用. ① 学習者と. いることで,児童と素材との関係の再組織化(主. の求が起. 題の探求)の発生の有無も検証していきたい。 (岩. 活動の設. 岩永 啓司・手塚 千尋. 永). う素材に対して就学期の子どもたちの関心が全体. 未開の領域に到達する意味での創造(芸術における探求). ② 色や形,. る思考を. さらに,上. を通して低いことが示されているが,この結果を. のフェーズの. 考察する前に,背景となる美術教育における素材. ① 自分とつ. の位置づけを確認しておきたい。金子によると,. る。採取. 美術の表現媒体の物質的側面を表わす言葉とし. いた土の. て,先在する目的に規定される「材料」と,具体. ておく。. 的な目的が先行しない「素材」の2つの捉え方が. ② 採取した する。. あるとし,初等教育における木版画や水彩画の制 作過程を例示しながら,下絵が本制作の構想とし. 図2 彫刻家/教育者からみた素材の機能 図 2 彫刻家/教育者からみた素材の機能. て機能するには,作品となる素材が予め体験に よって理解されており,イメージと結び付くため 16. ⑶ 土地の文脈をもつ素材としての土(r/t) 6. に素材の再組織化が不可欠であるという 。さら. 身近な素材である「土」は自然,文化や歴史,. に,日常の中で児童の素材体験の機会が失われつ. 工芸・民芸や美術などの地域性をかたちづくる一. つある状況への対処として,美術教育では効果的. 要素として生活に深く結びつく素材である。また,. な素材との出会いを意図した題材の体系化が指向. 「甲子園の土」に代表されるように,その場所で. された。その結果,わざ(技能)の習得を目的と. の記憶や思い出を「土」に託し,微量を採取して. した構成と,素材が持つイメージの質やモチーフ. 手元に持つなどメモリアルな行動を取ったりす. として構成する二通りの体系により素材体験が構. る。すなわち「土」は,動くことのない「土地」. 想され,単元計画が作られていたとされ,当時は. での出来事を語るためのポータブルで強力なメ. 17. 前者が大勢であったという 。. ディアとして機能を有すると考える。自分が住む. これまでの内容を整理すると,美術教育におけ. 街の歴史的な出来事や文化的に意味深い場所,自. る素材の位置付けでは,メディアとしての「材料」. 分にとって思い入れがある場所などの自己との. と主題に関わる「素材」は前項の媒材的機能と題. 「つながり」を感じる場所の土を採取し,①造形. 材(主題)や発想の動機を含めた要素としての機. 素材として,②自分と他者,自分と社会とのつな. 能と対応する関係にある。さらに教育的価値とし. がりを探るためのメディアとしての側面を活用し. ては技能習得を目的とした素材体験としての役割. た探求活動が可能であると考察する。(手塚). があり,表現者の立場からすれば表現力の向上を 意味し,自己の表現主題の深化に通じるものとな. 4 仮説の学習環境デザイン原則と授業デザイン. る(図2) 。本項冒頭の調査は,児童・生徒が素. 実践校である附属小学校の研究テーマや,これ. 材に対して抱くイメージの質(きれい,きれいで. までの題材とのつながりを踏まえ,旭川という土. ないを5段階評価)に照準を当てた結果であった. 地が持つ文化的背景と児童自身とのつながりを見. が,その根拠となる授業では系統性に基づく素材. いだすことを目的とした「土の色プロジェクト」. 体験が前提にあり,問い自体も個人と素材との間. を計画した。「芸術に基づく探求が起きる学習環. の価値や意味を測るものではなかったと言える。. 境」の学習環境のデザイン原則として以下の2点. 本実践では, 「土地の記憶」とつながりのある土. を仮定した。. を用いることで,児童と素材との関係の再組織化. ①学習者と場とのつながりを起点とした主題探の. (主題の探求) の発生の有無も検証していきたい。. 求が起きるための自己省察や,他者へ語る活動. (岩永). の設定。 ②色や形,イメージ,モノ(素材や道具)による 思考を促す活動の設定。. 226. ③ 採取した. あるのか.
(8) 図画工作科における芸術に基づく探求の学習環境デザイン. さらに,上記のデザイン原則を踏まえて,5つ. 3時間目 土を使った表現. のフェーズの活動を計画した。. 4時間目 できた作品の鑑賞・発表⑵. ①自 分とつながりのある場所の土を採取してく. 実践前の予備活動として,児童にとって思い入. る。採取した土について,採集した理由や気づ. れのある場所の土を採取し,ワークシート(①採. いた土の特徴などをワークシートに記入をして. 集した日②採集場所③同行した人④選んだ理由⑤. おく。. 場所の説明⑥場所の思い出や出来事⑦土を見て気. ②採取した土を並べて展示してグループで鑑賞す. づいたこと)への記入に取り組んでもらった(可. る。. 能な場合,そこの様子や場所のスチール記録)。. ③採取した土が自分にとってどのような意味があ. 本題材の構成は,ⅰ)児童が自己と結びつきの. るのかを考えながら,制作の主題を見つける。. ある場所の土との関わりについて,思い出や記憶. ④主題に基づき表現活動に取り組む。. から捉え直し,さらに,ⅱ)土に直接働きかける. ⑤作品のプレゼンテーションを行う。(手塚). ことで五感や行為を通して観察を行い(土の探 究),ⅲ)その一連の行為の中で立ち上がってき た思いやテーマといったものを作ったり,表した. Ⅳ.実施概要. りすることで探る(主題の探求),という3つの. 旭川という土地が持つ文化的背景と児童自身と. 探求場面に基づいている。. のつながりを見いだすことを目的とした「土の色. 探求の各場面や児童の姿を見取るために,振り. プロジェクト」を以下の内容で計画した。. 返りと発表の時間を設定した。A/r/tography. 〈授業実践の概要〉. が「自己と出来事,自己と世界との「あいだ」に. 実施日:2019年9月11日・12日. 生成(becoming)する探求的な取り組み」18であ. 場 所:北海道教育大学附属旭川小学校図工室. るならば,体験や行為を振り返り,外へ向かって. 参加者:3年1組(35名). 発表する場面は他者との共有化であると同時に,. 3年2組(34名). 自己の相対化,すなわち自己と土(思い出)の間. 時 間:8時45分〜12時20分(215分). にある経験や出来事を捉え直す(fold)活動とし. (休憩40分). て 位 置 付 け ら れ, そ こ か ら 主 題 に 基 づ く 展 開. 授業計画:. (unfold) に つ な が る こ と を 意 図 し て 構 成 し. 1時間目 採取した土の鑑賞・発表⑴. た19。(岩永). 2時間目 土を使った表現(色に名前をつける). Ⅴ.授業実践の実際 1 1回目の活動[9月11日(3年2組)] 材料・用具:ふるい(篩) ,乳鉢・乳棒,新聞紙,蓋付きビン,ボンド,工作のり,洗濯のり,画用紙,スポンジ,筆, ローラー 宿 題. 活動の概要. 分. 活動の様子. ①「自分と関わりのある土を持参しよう」 (自分と場所の接続,動機付け) ・土の採集とワークシートへの記入(日付・場所・人)。 採集の様子・場所の写真等の記録も依頼。. 土の採集. 227.
(9) 岩永 啓司・手塚 千尋. 校時. 1. ②採集した土をクリアケースに入れ,並べた状態をグループ 15 (4−5人)で鑑賞。ワークシート左側記入。 ③グループごとで写真等記録を使って土について話す(他者 10 と共有) 。 ④土について知ろう(五感による素材の探求ⅱ). 校時. 2. 20. クリアケース(85×85×25mm). ⑤土 からの気づきや発見と,ワークシートの左側を参考に 15 ウェッビングでまとめ(ワークシート右側) ,土に名前を つける ⑥○○(〜な)土で「 」 (つくったり,かいたり,やっ 15 てみたり)何ができそう? ・多摩湖の「元気土」のエピソードを紹介(授業者) ・材料・用具の説明. 校時. 3. 校時. 4. ⑦土でできることを探る活動. 15. ⑦土でできることを探る活動(続き). 30. ⑧展開で作られた土を瓶に入れ,片付け. 15. ⑨活動を振り返り,ワークシートへ記入。. 15. ⑩鑑賞・発表. 30. アンケート記入. 土の記憶と体験をウェッビング. 土による主題の探求(ⅲ). ⑴ 児童の様子 1回目の実践では,活動の展開部分となるⅲ) 探求がおよそ1時間であったのに対し,ⅰ)土と 関連する思い出や記憶の捉え直しの時間とⅱ)五 感による土の探究活動の合計が2時間弱という時 間配分であったこともあり,全体的に行為を重ね た深い探求までには至らずに終了した印象を受け た。児童は探求の各場面を通して素材との多様な 関係を築き,深めていた様子がワークシートから. 図3 場所の思い出から生まれた表現主題. 読み取れるが,振り返りシートと作品を比較する と,場面ごとの探求が独立し,活動相互の関連が あまり見られなかった。傾向として,土と関連す る場の思い出や記憶を象徴する具体物として表わ されたり,素材体験で見つけたことが展開された りする様子が多く見られていた(図3,4)。 ⑵ 考 察 本実践でのピークは素材体験にあったと言え る。準備した学習環境が「すり鉢で土をすりつぶ. 228. 図4 素材体験で見つけたことから展開した活動.
(10) 図画工作科における芸術に基づく探求の学習環境デザイン. す」 という行為を誘発した(afford)と考えられる。. る。その結果,自己を開示する契機となるはずの. 事前の活動(土採集の説明)において,実践者か. 土が,「土絵の具で描く」という具体的目的が先. らの伝達ミスで, 「土で絵具を作る」という活動. 行した材料としての価値付けに留まり,土に働き. を方向付ける予告がされていたこと,その結果. かけること(造形行為)と土で自己省察や主題を. 「(土絵の具で)何を描くか」が強く志向された. 探求することが結びつきにくい展開を生じたと考. ことから,「土」が表現するための材料として捉. えられる。また,活動⑤で想定したワークシート. えられていた可能性が高い。また,活動①で最終. への記入は,話し合いの言語活動から得た気づき. した土を,活動②で土の色や粒子の大きさ,質感. を文字化することでトーンダウンする様子が見ら. を観察できるようにすることを意図して準備した. れた。. クリアケースに移し替えて並置したことが,均質. 以上のことから,①土がもつ個人の文脈を維持. 化(材料化)につながったとも考えられる。加え. したまま,造形行為を重ねることで新たな意味づ. て,自分とつながりのあるはずの土が,持参した. けや価値付けがされ,さらに主題の創出に向けた. 容器から全員が統一された器に移し替えらたこと. 自己探求が展開されるようにすること,②ワーク. で,自己が匿名化されてしまい,個人の文脈を断. シートに記入する分量の調整が課題点として挙げ. ち切る状況を生み出してしまったことも推測され. られる。(岩永・手塚). 2 2回目の活動[9月12日(3年1組)] 材料・用具:ふるい(篩) ,乳鉢・乳棒,新聞紙,蓋付きビン,展色材(工作のり+洗濯のり+水) ,画用紙,スポ ンジ,筆,ローラー 宿 題 校時. 1. 活動の概要. 分. 活動の様子. ①「自分と関わりのある土を持参しよう」 (自分と場所の接続,動機付け) ・土の採集とワークシートへの記入 (日付・場所・人)。 採集の様子・場所の写真等の記録も依頼。 ②採集してきた土についてグループで話す。ワークシー 5 トに記述されたこと(記憶や思いなど)からみんなに 伝えたいことは?(グループ:4−5人) ③話 したことや思い出から土に名前をつける(ワーク 10 シート右側) 土のエピソードを班で共有し,名前を付ける。 ・多摩湖の「元気土」のエピソードを紹介(授業者) ④紙上に土を出して見て感じてみる(匂い,感触,色な 5 ど,五感を通して土の違いに気付く) ⑤土を/で探求する。 25 ・土をとった場所での思い出やそこで感じた気持ちを見 える「カタチ」にしてみよう。 「自分と○○土のエピソードをカタチにしよう」 「ど んな方法があるかな」 ・材料・用具の説明(展開範囲の設定) ⑥展開場面. 45. 3. ⑥展開場面(続き). 20. 校時. 2. 校時. ⑦展開でつくられた土をクリアケースに入れ,片付け。 25. 授業者による土のエピソードの紹介. ふるいにかけたりすりつぶしたり(土の探求). 229.
(11) 岩永 啓司・手塚 千尋. 校時. 4. ⑧振り返りシート・アンケート記入. 10. ⑨土とワークシート,土からできた形を並べて鑑賞。. 25. ⑩感想・まとめ. 10 鑑賞の様子. ⑴ 児童の様子 前回の課題を踏まえ,探究へのアプローチとし ては, 「記憶や思い出を話す(振り返る)」「土を. 図6 土の絵具による表現の探求が作品へと昇華し た活動. ⑵ 考 察 1回目の実践では,「土地の記憶」と土からの 図5 主題の追求が表現によって展開された活動. 気付きや発見したこととを関連させながら土の名 前を考えることによって,土での探求へと発展す. 見る」 「土に触れて感じる」など,具体的な行為. ることを企図していたが,土がはじめに保持して. に沿って進行させ,導入段階での記述する場面は,. いた場所の思い出や記憶は,活動の進行に伴い,. 土への名前付けのみとした。また,学習環境に関. 実際の行為から受けた印象に上書きされていくよ. しても土での探求に関与しない用具・材料の見直. うであった。そこで,「土に関する自己の記憶や. し(展色材を調合し各テーブルに配布)を行い,. 思い出など」は,土に触れる前に名前付け(記号. 活動展開場面には2コマ分の時間を確保した。. 化)をすることによって対象化し,つくる活動や. その結果, 「土地の記憶」から生成された主題. 振り返りの各場面で土による体験行為へと還元. が表現行為の中で追求されたり,土でできたもの. (相対化)させ易くなることをねらった。結果的. (土の絵具)によって試行が繰り返されたりした. に土での探求との明確な相関性についての確認は. 結果,作品へと昇華する様子などが見られるよう. できていないが,振り返りシートの中では,初期. になった(図5,6)。. の土のエピソードの捉え直しと思える記述が見ら れており,そうした思考が表現と結びつくための 余地が足りなかったと思われる。(岩永). 230.
(12) 図画工作科における芸術に基づく探求の学習環境デザイン. Ⅵ.まとめ. がって,本実践では「(当初の)自分自身」を「は み出す」ことで到達しうる「創造」の手前で終了. 本研究では,図画工作科における探求による学. を迎えることとなった。それにはメタ認知に必要. 習の題材開発及び実践を通して,図画工作科なら. な時間的有余や物理的間隔が足りなかったことは. ではの探求の諸相を記述するとともに,学校教育. 否めない。一方で,発達段階にある児童の芸術に. への芸術を基盤とした探求型学習活動の導入にお. 基づく探求の姿を確認し,記述することができた. ける課題を検討することを目的とした。1つ目の. ことは今後の学校教育への導入を考える上で成果. 研究目的であるA/r/tographyに基づき芸術を. を得られたといえる。. 基盤とした探求(ABR)が起きる学習環境デザイ. 本稿では,紙幅の関係により,学習成果の精緻. ンを検討では,a/r,a/t,r/t,のそれぞ. な分析と鑑賞場面まで含めた本題材における芸術. れの立場がもつ「土」の素材観,材料観を示しな. に基づく探究型学習の環境デザインの検討には及. がら,それらを起点とした芸術に基づく探求が起. ばなかったが,次回以降の課題として継続的に取. きる学習環境を仮設のデザイン原則に基づき検討. り組んでいきたい。(岩永・手塚). した。2つ目の研究目的であるA/r/tography による児童の探求の姿の観察・同定では,以下の. [謝 辞]. ように考察した。 活動前後のテキストと成果物の比較分析から. 本研究での授業実践にあたり,その機会と環境. は,①土にまつわる場所の記憶や思い出,②土と. をご提供いただき,準備から実施まで多大なご協. それ以外の材料や用具を使った素材体験,③土の. 力とご支援をいただきました北海道教育大学附属. 色や感触などの知覚体験が,探求行為を生起させ. 旭川小学校校長南部正人先生を始め,教務主任小. ることを確認した。確認できた割合としては,素. 野晴子先生,他全ての教職員の皆様,並びに授業. 材体験,記憶や思い出,知覚体験の順で,特に前. にご協力いただきました全ての児童の皆様と保護. 2つの要素が多い印象であった。しかしながら,. 者の皆様に,感謝の意を表します。. 活動の実相としては,ほとんどの子どもたちが, 3つの要素を複雑に関連づけて,探求を展開させ. [付 記]. ていたことも読み取れる。そこからは,それぞれ の要素を横断することで徐々に探求が深まるプロ セスが推測される。. 本実践研究は,JSPS科研費JP18H0101(代表: 笠原広一)の助成を受けたものです。. また,成果物からは,特定の主題のもと複数の 平面作品が描かれたり,土絵具と定着液や水で色 の幅を試したりする姿を確認できた。中には,土 の特性から粘土をつくりだし立体物をつくった り,紙コップを組み合わせて砂時計をつくったり した児童もいたが,土が持つ文脈を生かした主題. 註及び引用文献 1 文部科学省(2018) 「第4節理科」 『小学校学習指導 要領(平成29年告示) 』東洋館出版社,p.94 2 文部科学省(2018)『小学校学習指導要領(平成29年 告示)解説 理科編』東洋館出版社,pp.12-13. とは言えない作品となっていた。活動前後のテキ. 3 日本教育大学協会全国美術部門特別課題検討委員会. ストの比較からは,主題が徐々に明瞭化されたり. (2015)『うみだす教科の内容学』日本教育大学協会全. 場面ごとに興味の対象が変容したりする過程が記 録されていたが,児童が経験や行為,その結果と の 間 に 存 在 す る 関 係 を 捉 え 直 し(fold) ,展開 (unfold)する段階にまでは至らなかった。した. 国美術部門,p.10 4 前掲書3,p.14 5 笠原広一 (2019)「Arts-Based Rsearchによる美術教 育研究の可能性について―その成立の背景と歴史及び 国内外の研究動向の概況から―」美術科教育学会『美. 231.
(13) 岩永 啓司・手塚 千尋. 術教育学第40号』,p.114 6 Baron, Tom.,Eisner, W.Elliot., ARTs Based Research, Sage Open, 2012, p.xi. 笠原訳,前掲,p.120. 7 笠原,前掲5,p.118 8 小松佳代子(2018)『美術教育の可能性 作品制作と 芸術的省察』勁草書房,p.76. 9 笠原広一・リタ・L・アーウィン(2019)『アートグラ フィ 芸術家/研究者/教育者として生きる探求の技 法』ブックウェイ,pp.7-8. 10 笠原,前掲書9,p.7. 11 北海道教育大学附属旭川小学校(2019)『学習指導の 実践研究 第66号 学びをつなぐ子供を育てる教育活. 岡原正幸,高山真,澤田唯人,土屋大輔「アートベース・ リサーチ:社会学としての位置づけ」見た社会学会『三 田社会学』No.21,2016,pp.65-79. 笠原広一「Arts-Based Rsearchによる美術教育研究の可 能性について―その成立の背景と歴史及び国内外の研 究動向の概況から―」美術科教育学会『美術教育学第 40号』 ,2019. 金田卓也「教育に関する質的研究におけるArts-Based Researchの可能性」 ,日本ホリスティック教育協会『ホ リスティック教育研究』17号,2014,pp.1-16. 小松佳代子『美術教育の可能性 作品制作と芸術的省察』 勁草書房,2018.. 動の創造』北海道教育大学附属旭川小学校,p.5. 12 北海道教育大学附属旭川小学校,前掲11,p.5. 同校過去3期の研究主題は,以下の通り。 「自ら学びを創造する子供を育てる教育活動の展開 (平成22-25年)」,「自ら学び,考え,行動する子供を 育てる教育活動の創造(平成25-28年)」,「学びをつな ぐ子供を育てる教育活動の創造(平成28-30年)」 13 2018年に香川大学と北海道教育大学旭川校の学生を 対象に行なった地域間交流プロジェクトの「土の色プ ロジェクト」,一般向けアートワークショップとして実 践された色をテーマに風景写真を使った自己探求型プ ロジェクト学習の「カラーウォーカー」,新たに,小学 生を対象とした探求型題材「私たちの住むまちを表す, 色,形,場所〜私と場所のかかわりを形にしよう〜」 の3案を提示した。 14 神戸武志(1976)「木彫研究 彫塑素材としての木材 の特殊性について」『埼玉大学紀要教育学部(人文・社 会科学)第25巻』埼玉大学,p.125. 15 山崎猛,金子一夫(1987)「児童・生徒の美術教育に 関する意欲・意識の基礎的研究⑵―主要な素材に対す る好悪度―」 『茨城大学教育実践研究6』茨城大学, pp.81-82. 16 山崎猛,金子一夫,安西仁人,雨具義孝,瀧ヶ崎正 彦(1986) 「美術教育における素材について⑵」『茨城 大学教育実践研究5』茨城大学,pp.71-72. 17 山崎,前掲16,p.73. 18 笠原,前掲書9,p.8. 19 笠原,前掲書9,p.9.. 参考文献 秋田喜代美「教育・学習研究における質的研究」,能智正 博,秋田喜代美,藤江康彦『はじめての質的研究法: 教育・学習編』東京図書,2007. 伊藤留美「アートベース・リサーチの展開と可能性につ いての一考察」南山大学短期大学部『南山短期大学部 紀要』終刊号,南山大学,2018,pp.203-213.. 232. . (岩永 啓司 旭川校准教授) . . (手塚 千尋 明治学院大学専任講師).
(14)
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