ドイツ日本人学校における国際理解教育 : 国語科を中心に
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(2) . 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第4 5巻. 第1号. 平成6年10月. f Hokka i i lo i do Un i l i fEduca Journa ty o t t onIC)Vo ver s on(Sec ‐l ‐45 , No. oc tobe r ,1994. ドイツ日本人学校における国際理解教育. ÷「÷国語科を中心に一-- 鈴. 1. 木. 信. 義. 国際化時代と海外日本人学校における国際理解教育. 国際化時代といわれて久しい‐ 臨時教育審議会第三次答申 ( 19 87 ) ‐ 4) の 「第5章第1節 国際化への対応」 の 「Q 自らの手で国際化を進める教育システム--新機軸のすすめ-一三では,「ァ, 学校においては, 指導方法● , カリキュラ ムの研究開発を進め, また, 地域社会においては, 幅広い国際的交流を図るなど, 種々の創意工夫を積極的に行うこと が望まれる. ( 2 )いくつかの具体的提言」 において,「①異なるものへの関心と寛容--国際的 」 と提唱していた‐ また,「 に開かれた学校. 」 として,「日本の学校の望ましい在り方としては, 帰国子女や外国人子女がどの学校でもどの段階. でも, 円滑に入学し, 共に学び, その海外における体験が生かされていくような開かれた学校を目指すべきである‐ 」と 述 べ, その具体策を提示している‐ しかし, その後も海外子女は増えつづけ, 外国人子女も増加しているのにもかかわ らず, 国内における開かれた国際化教育, 国際理解教育が着実に行われつつあるとはいいがたい‐ いや, 海外子女の主 として通学している日本人学校においてすら, 理想的な国際化教育, 国際理解教育を行うのが難しいのが現状である‐ たとえば, ここに総務庁長官から外務大臣及び文部大臣に対しての勧告 (昭和6 3=1988. 6) があるが, そこでは 「日本人学校の国際化」 について 「日本入学校は その設立の趣旨からも我が国の義務教育に準じた教育を行うことを , , 建前とするものであるが, その運営において, 帰国後の進学問題のみを念頭に置くような教育に傾斜したり, あるいは 国内と全く同一の教育を行うということではなく, 海外で教育を行う利点をいかして, 例えば, 在外国の言語や歴史 , 地理などの現地の事情を取り入れた教科編成等や, 近隣の現地校との相互の交流の実施, 可能な範囲での現地の子女の 1 ( } 受入れなどの方法により,『開かれた日本人学校』 を志向することが要請される‐ 一 と指摘している‐ このことは, 経済 の成長とともに日本人が容易に海外に進出し, その子女のために各地に日本人学校が設立されて教育がなされても 日 , 本人の性格がしからしむるのか, 閉鎖的で真の国際化教育からは未だほど遠いことを明らかにする‐ こうして 国内に , おける国際化, 国際理解教育を考えるにあたって, まずその最前線に立つ海外日本人学校における国際化 国際理解教 , 育を考えてみるのも意味がないことではないと思う. 特に, 教員養成大学は, 若い 「在外教育施設派遣教員」 にも影響 を与えうる立場にあるのであるからして, そうした意味でも, この問題の検討には意義があると思うのである ‐ また, 私が直接かかわる 国語科教育においても, 現行学習指導要領国語科編 (平成1=1 9 89 ‐ 3告示) では, 小学校 「第3指導計画の作成と各学年にわたる内容の取扱」 中 3-教材の観点として 「 9 )日本人としての自覚をもって国を , ,( 愛し, 国家, 社会の発展を願う態度を育てるのに役立つこと」 とともに,「側世界の風土や文化などに理解をもち ー国際 , 協調の精神を養うのに役立つこと」 をあげており, 中学校では, 同じく 「 ( 7 )我が国の文化と伝統に対する関心や理解を 深め, それらを尊重する態度を育てるのに役立つこと」 と並んで 「 ( 8 )広い視野から国際理解を深め, 日本人としての自 覚をもち, 国際協調の精神を養うのに役立つこと」 をあげ, これは高等学校国語1 でもほぼ同様である このことは ‐ , 海外日本人学校においてこそ, 最も厳しく対決を迫 られる課題であり, 以下の考察でもこの点に留意してその解決への 道を探っていきたいと思う‐. =. デュッセル ドルフ日本人学校における国際理解教育とその問題点. 私は,1 9 93年5~6月, 独・英・仏の日本人学校を訪問・調査する機会に恵まれ フランクフルト デュッセル ドル , , フ, ハ ン ブ ル グ, ロ ン ドン, パ リ の 日 本 人 学 校 を そ の 対 象 と した‐ こ の う ち 開 校 を 早 い 順 に 並 べ る と デ ュ ッ セ ル ド , , 165.
(3) . . . 鈴. 木 信. 義. ), ハ ン ブル グ (1981‐ 4), フ ラ ンク フ ル ト (1985. 4) の ル フ (1971‐ 4), パ リ (1973‐ 10 ), ロ ン ドン (1976‐ 10. 0年代に次々と開校されていったことがわかる. そして実際訪問してみると, どこも皆郊外の閑静な 97 0~8 順になり,1 住宅街にあり, 周辺に日本人が多く住む点で共通しており, また, 文部省から3年間ということで選考・派遣された日 本人教員が, 無償で配付された日本の教科書 (各教科それぞれ国内で最も採択率の高いもの) を使用して, 日本の学習 指導要領に基づいて国内とほとんど同じ教育を熱心に行っていた/ しかし, 私のテーマとする国際理解教育という点か ら考えると, その置かれた状況や関心の高さからいっても, 最も注目に値するのは ドイツにおける日本人学校であると 思われたので, ここに焦点をしぼって考察をすすめていきたい‐ 8 9 8名, 校長 3 1 9 9 2年5月現在で小学部51 ブュッセル ドルフ日本人学校は最も古く規模も大きい学校 ( , 中学部4 , 計99 ・松田紀文) であり, ヨーロッパ における日本人学校が歩んできた一つの典型的姿が見られる‐ 当校の学校要覧によっ 2 ( ) て生徒数の推移を中心に, その歩みを示した表を掲示しよう. (表1) (人) 99 8 967. 9 3 1. 児:童 生託走 数 の 推 移 デ ュ ッ セ ル ドル フ 日 本 人 学 校. 889. (注)人 数調査月 日は1971 ‐73年 .72 を除き毎年4月 3 o 日 現 在. 8 9 1. 917. (除補習 教室). 848 850. 、. 9 0 8 ▼. 全校. 3 78. 卿 醐 .. 732 712 674 69 3. 鋤. 66 4. 6 57 656. 662. Jご葺 と 壱 H 3 ′. 656. 鋤 0 5 5 509 500. 472. 497. 48 1. 450 416 400. 3 41. 394. 350 300 250. 269. / 中学部. . . ′ ,8 … L′. 200 ・88< 4月24 臼) .. 159. 16 3少 ′′ 115 圭 - ′′ 106 ン÷′. 150 127( 5月3日) ′ J ・ 1 . -弓頑. 100. 入学式. 5バ ”、. 禦 痛言三日 72. 73. . 一 . 74. 75. 憂 製〆三. ドメ′櫨;. 日本語補習敦室 -ふ ‐= ず ▼ず ず - ‐ i D 2 ず‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ 棚 噸 き み 1 g 夢 耕 滋 守 ー っ - ‐ - - -. 3 2 ′‐. 71. / ノ以 ′. 9三 ′ 7 0 〆蔓 〆 ・き少. 53 ′-′ 44′′′′. 50. 76. 77. 78. 79. 80. 81 82. 83. 84. 85. 86. . . 166. . . 塁. . 87. 88. 89. (年) 90 91 92. .
(4) . ドイツ日本人学校における国際理解教育. 98 0年代以後の増加傾向は比較的ゆるやかで一応の安定 表1で見ると, 生徒数では未だ増加の傾向にあるとはいえ,1 期を保っていることがわかる. この学校では, 教育目標を, まさに 「国際化時代をたくま しく生きる子どもの育成」 と しており, 教育方針として次の2点を掲げている. 1‐ 生涯にわたって自ら学習していくための基礎・基本を身につけさせるため, 個人差に応じた授業開発をおこなう‐ 2‐ ドイツにある学校としての特質を生かした国際教育を推進することにより, 両国間の相互理解と信頼関係を深め, 併せて21世紀に生きる日本人として国際性豊かな人間性を培う. また, 当校では当然のことながら 「国際教育」 に力を注く が, これを 「国際理解」 と 「国際親善」 に分け, この二つ は 「載然と切り離すことは難しいが, 相互に関連して補完し深化させるような教育活動を目ざしている‐ 」 とし, これは 「児童生徒に対する教育のみならず 学校職員も含めての理解と親善であるのは言うまでもない‐ 」 とも述べる. このこ , とは注意すべきで, 子どものみならず, 3年間ということで派遣されてくる日本人教員ともどもに 「理解」 と 「親善」 の必要性を言うものである‐ 実はこの前文で,「当地の日本人社会は年々膨張し, 日常生活が国内とほとんど変わりなく 営まれている現状から, 日本からやってきた児童生徒たちが自然に国際感覚を身につけることはほとん ど期待できな い- 」 と述べているのだが, このことは学校職員にも当然当てはまることで, 隔離された日本人村ともいうべき場所で, 衛星放送で日本のテレビを見, 毎日配達される日本の新聞を読んで暮らしている日本人家庭の子どもと教員はほとんど 同じ状況に置かれているとしてよい‐ したがって,「本校においては教育方針の一項に 『ドイツにある学校としての特質 を生かす国際教育を推進する』 と掲げ, 日常の教育活動の中に国際理解教育を系統的に組み込むとともに, 特別活動と して各種の国際親善行事に取り組んでいる‐ 」 という時, その困難さは並大抵ではないとしなければなるまい. 「 当校が 国際理解」 とて掲げているものは次の通りである. 1‐ ドイツ語教育の充実 (小人数クラス, 全学年, 週2時間) 2‐ 各教科による現地素材の教材化 (国語, 社会, 理科, 音楽, 美術など) 3‐ ドイツの地理, 歴史, 経済, 社会制度, 風俗, 習慣, 芸術などの研究 4‐ 文化施設, 史跡, 工場等の見学 ま た, 「国 際親 善」 と して 掲 げ て いる も の は 次 の 通 り で ある‐ i Uen Gymna 1‐ 姉 妹校 Cec i s nm など現地校との生徒相互訪問, 合同授業, 交歓. 2‐ 各種音楽会, 伝統的行事, 展覧会などへの参加や案内 3‐ 現地スポーツクラブへの参加, ス ポーツの親善, 交歓試合 4- 学校祭への現地の人々の招待. 5‐ 現地の人々に対する日本語教育, 日本文化の紹介 このうち, 「国際親善」 の項目については, どこの日本人学校においても比較的盛んに行われているようであったが, そ -れもその場かぎりの形式的な親善に終わってしまう場合が多く, 真の国際教育として, 個々人の態度として身につく までには至らないとの声が方々で聞かれた‐ もっとも, デュッセル ドルフ日本人学校の場合は, 合唱団キソダーコーア が 「国際親善のための特別活動」 として学校組織の中に位置づけられ, 各種市民行事に参加して好評を得るなど, かな り深く市民と交流がなされているようだ. いずれにせよ, もっ と地道で大切な方法は,「国際理解」 教育が授業の中で系 統的にきちんと位置づけられ, 子ども達と教員達が共々に学び, 精神と態度に深く根づいたものとするための工夫や努 力が必要となるのだと思う‐ ドイツにおいては言葉が大きな障害となり, どこの家庭でも両親が多少の英語は知っていても, 日本で ドイツ語をき ちんと学んできた人は少なく, したがって子どもも現地の環境に溶け込むには大変な問題を抱えている. この点に留意 してデュッセル ドルフ校でも小学1年生から週2時間の ドイツ語を課しているが, 子 ども達の移動も激しく, また ドイ ツ語講師に招いた現地人教師とのコミュニケーショ ンが必ずしもうまくいかず, 大変な苦労をしているようだ‐ その中 でも成功している例として見学を許されたのは, 1年生の会話で, もと日本で長く神父をしていて日本語も達者な講師 によるものであったが, これは日本語で冗談を交えながらの巧みな授業で子ども達も楽しそうであった‐ しかし, 言葉の面での障害があっても, ドイツの国情・文化・地勢等に目を開けば, 日本人の関心をひき 知的に理 , 解し深めていきたいものが多く, そこに現地 (地域) 素材の教材化や研究・見学等への誘いかけをいかに系統的に位置 づけるかが大事な課題となってこよう‐ この点, デュッセル ドルフ校の資料では詳細に知り得ないので 他の日本人学 , 167.
(5) . 鈴. 木 信. 義. 校の資料を参考にしながら考察をすすめることにする.. m ハンブルグ日本人学校における地域 (現地) 素材を生かした授業実践 ハンブルグ日本人学校は,1 9 9 2年5月現在で小学部21 0 70名という規模の小さな学校であるが, 谷口 , 中学部60 , 計2 武志校長の下, 国際教育に大変意欲的に取り組んでいる‐ 学校教育目標としては 「豊かな心を持ち, 国際感覚を身につ け, たくましく生きる児童生徒の育成」 を掲げ, その中で 「国際感覚を身につける」 を説明するのに,「外地での生活を 通して広い視野にたって考える力を育てることであり, 異質なものを認め理解し合える力を持つことである. こうした 力は, ひいては家庭や郷土・国を愛する心につながっていく- 」 としている. また, 「教育課程編成の基本方針」 として 4項目掲げる中で国際教育に関わるものとして, 3. ドイツをはじめとする諸外国の人々の生活や文化を理解し尊重するとともにわが国の文化と伝統を大切にする態度 の育成を重視し, 健全な国際感覚を身につけた児童・生徒の育成を図る内容にすること. 4‐ ドイツ社会や地域の実態に考慮しながら, 地域素材を効果的に活用し, ゆとりのある充実した学校生活を実現する ため, 運用に創意工夫が加えられること‐ としている‐ また, 平成4 ( 1 99 2 ) 年度の研究記録を見ると,「国 際性のある人間に育てる教育はいかにあるべきか-- 《地域に根ざし, 地域素材を生かした教育をめざして》 }-」 (3年次) と題している‐ その設定理由として, ・ 学校目標の 「国際感覚を身につける」 ことは, 日本人学校の共通課題と捕らえることができる. この課題の実現に は, 本校を取り巻くあらゆる環境条件を素材として, 教材化していくことが求められていると考える‐ ・ 一年次に行われた現地に対するアンケートなどから, 子供達が数多くの異文化なものに接する機会を生かし切れて いない実態がある‐ このため, 現地素材に触れる意図的な指導が求められていると考える‐ ・ 日本での教材が, 季節・習慣の違いから実践しにくいものもあり, 現地素材の発掘・利用が求められていると考え る-. 、. の 3点 を あ げて い る‐. こうした研究記録のうち, 小学校国語科でなされている作文の例を見よう. 作文は, 子どもが自分達の置かれた環境 を観察し, 自分の視覚・聴覚・触覚・喚覚・味覚とあらゆる感覚を使ってとらえ, 相対化し, 理性的に思考し整理する という意味で, 比較的手軽にできてしかも異文化に対時しその中で生きる態度を身につけることが可能であり, どこの 学校でもよくなされる方法である. ただし, ハンブルグ校ではこうした作文を取り上げるのに一つの確かな方法を工夫 3 ( } し授業実践を試みている点, ユニークであると思う‐ 以下は研究記録からの抜粋である‐. 3学年. 単元 作文 「ドイツで生活して」. 2 時数 1. 教科・関連教科. 国語・学活. 時期. 9・1 0月、. 授業の位置づけ 本校の多くの児童は, 年月の差はあるが日本からこちらに来て生活している毎日の生活や ドイ ツ社会の中で, 日本と ドイツの生活様式や習慣・環境の違いを直接感じたり, 間接的に聞いたりしていると思われ. a 子どもの実態. る. しか し, そ の こ と を 深 く 追 及 した り, み ん な で考 え た りす る こ と は ほ と ん どな い と 思わ れ る‐. b. 単元での現地素材 (内容). 毎日の生活. c. 学習の手立て (方法). 聞き取り調査 (日本の様子を親に). d 単元目標. ・. 題材の取材集め. ドイツ・日本の生活様式や習慣・環境に対する取り組みなどの違いを作文に書き表すこと が で きる‐. ・. ドイツ・日本の生活様式や習慣・環境に対する取り組みなどの違いを自分なりの意見で理 由づけすることができる,. ・自分の知らない ドイツと日本とのさまざまな違いを知る.. 168.
(6) . ドイツ日本人学校における国際理解教育. 単元計画 事 前 準 備 習. 学. ・ ・. 日本に住んでいた頃の生活様式や習慣・環境などを家の人に聞いてくる‐ ドイツに住んで生活様式や習慣・環境など気のついた事を調べてくる.. 活. 動. 指. (時 数). 導 上. の. 留. 意 点. 料. 資. 「ドイ ツ で 生 活 して」 と い う 題 で作 文. 1. を書く‐ ・ 家の人に聞いてきた事や自分が気が ・ ついた事を発表する. 日 本 ・ ドイ ツ の. ・. に気づかせる‐ ・ 下書きが完成した児童から, こちらが読 み, 助言したり指導したりする. ・ 作文が苦手な児童は, 個別指導を何度も 行う-. ・ 作文の書き方をみんなで考えたり, 1 ( ) 2 ( ) 1 ( ) 2 ( ). 知 らせ た りす る‐ ・ 下書き ・ 推考 ・ 清書. 児童が調べてきた事柄を発表させ, いろ. い ろ な 点 で ドイ ツ と 日 本 に 違 い が あ る こと. 1 ) (. 生活・習慣を簡単 にま とめ た. B紙. 2 作文に書かれている内容で, 共通して いる話題についてみんなで考える‐ ・ 、児童が書いた作文を事前に読み, みんな ・ 環境問題 (緑について)( 1 ) ・ .で追及していく題材を決めておく 1 ・ 習慣につ いて ( ) ・ 追及題材についてよく書いてある作文を ・ 家の大きさ ( 1 ) - 児童分印刷しておく‐ 3 みんなで考え, 追及した事柄をB紙に ・ 同じ内容を書いた児童を中心にグループ. 事後処理. ま とめ る.. 2 ( ). 児童の作品. を 作 っ て ま と め さ せ る‐. ・ 学級文集として冊子作りをする‐ ・ 単元終了後も, 日本・ ドイツの生活様式や習慣の違いなどで気のついたことがあったら随時作文に 書かせていく.. 2 本時指導案. 3年国語科学習指導案 3年1組. 榔. 野. 宏. 人. 「ドイ ツ で 生活 して」. 1. 単 元名. 2. 日. 3. 本時の指導. 時. 平 成 4 年 1 0月 2 1 日 (水). 4校時. ( 1 ) 目 標 ・. ドイツの人々は, どうして緑あるいは森林を大切にしているのか, 児童の作文をもとに考え・話し合い自分 な りの 考 え を も つ こ と が で きる‐. ( 2 ) 指導過程 活 1. 動. (予想される考え). お. 日本と ドイツの緑や森林の様子を比べてみる‐. ドイ ツ÷‐‐叢緑 が 多 い‐ 木 を 大 切 に して い る. 至 る 所 に 木 々 が あ る‐. さ. え. ・ 子供達の考えた, ありのま ま の 意 見 を 出 さ せ, その意見を出来るだけ板書する. ・ 多くの児童が発言できるように心がける‐. 日本 ÷÷南 緑が少ない‐ 都会は全然縁がない. ゴルフ場建設などで木が倒されている‐ 2 学級の友達の作文を読んで, 日本と ドイツの緑や森林に 対する考えを調べてみる. ・ 代表児童の作文を配布し, 1~2名の生徒に ・ 2人の作文を読み, 大切なところに線を引く‐ 読 ま せ る‐ ・ 2 人 は 日 本 と ドイ ツ の 違 い を 何 と い っ て いる か, 確 ・ 机間巡視をして 個々の作 業 の 状 況 を つ か , 認 する.. ・ 作文を参考にし, 自分なりの意見を考える‐ 3. 日本と ドイツの緑や森林に対する考え方の違いについて 自分の考えをまとめる. ・ (自 己 評 価). む‐. ・ 机間巡視をして, 個々の意見を把握するとと もに, 考えがもてない児童 に は個 別 指 導 を 行 う‐. 机間巡視をして, 個々の 作 業 の 状 況 を つ か. む‐. 169.
(7) . 鈴. 木 信. 義. ( 3 ) 評 価 ・. ドイツの人々は, どうして緑あるいは森林を大切にしているのか, 児童の作文をもとに考え・話し合い自分 なりの考えをもつことができたか, 発言などから判断する.. 授業を終えて. 3. 本単元を実践するにあたり, 次の2点を主眼において行った. ① 日本を離れて言葉・生活習慣な どいろいろ違う ドイツで生活している子供たちに, 日本と ドイツを様々な視点で 比べ, 自分の言葉で書かせる. ② 友達の作文に書かれている視点について, みんなで深く追及する‐ 単元を終えて, 以下の課題があったように感じる. ・ 子供たちが書く作文の指導を1学期から計画的に行って本単元に望んだほうが, 一人ひとりの作文がよりよいも の にな っ た.. みんなで深く追及する視点を 「家の広さ・習慣・自然に対する考え方」 の3点に絞って行ってみた. それぞれに. ・. ついては共通する理解することが出来たと考えるが, そのことを, これからの ドイツの生活の中にどう生かしてい くのかなどについて, もう少し3年生なりに考えさせるべきであったと思う. 4. 12時間完了を,15時間完了とする. 日本に住んでいた頃の生活様式や習慣・環境など気のついた事をメモできる プリントを作り, それに書. 修正単元計画 ・. 事前. かせ てく る‐. 準備. ・. ドイツに住んで生活様式や習慣・環境など気のついた事をメモできるプリントを作り, それに書かせて く る-. ー 、 竺 、 、 、 や 、 ‐ ‐ 1 「ドイツで生活して 」 という題で作文を書く 1 ) ・家の人に聞いてきた事や自分が気がついた事を発表する‐(. ・作文の書き方をみんなで考えたり, 知らせたりする.. ( 1 ). ・下 書 き. ( 2 ). ・ 推考. (教 師と 一 緒 に 推 考 す る). 2 ( ). ・ 清書. ( 1 ). ・ みん なの作 文 を 読 む. 2 ( ). 2 作文に書かれている内容で, 共通している話題についてみんなで考える. ・. 環 境 問題 (緑 に つ い て). 1 ) (. ・. 習慣 に つ い て. 1 ( ). ・. 家 の大 きさ. ( 1 ). みんなで考えた話題について, 再度自分で考え作文に書き表す. 事後 ・ 学級文集として冊子作りをする‐. 3. ( 3 ). 処理 ・ 単元終了後も, 日本・ ドイツの生活様式や習慣の違いなどで気のついたことがあったら随時作文に書か せて いく. 申し送り事項. 5. さいわい本学級の児童は, 全員日本で生活した経験があったので日本と ドイツとのいろいろな点 で比 べ ることがで き, それをもとにして全員で追及することができた‐ しかし, 本校に転入してくる児童も多様化してくると思われるの で, このような単元で授業を進めるときは, 児童一人ひとりの成育した国などを, 家庭環境調査票などで事前に十分調 べておく必要があると考える‐ 以上が研究記録に見られる作文単元 「ドイツで生活して」 (小3) からの抜粋である‐ ここでは, 小学校3年生の子 ど 170.
(8) . ドイ ツ日本人学校における国際理解教育. もが父親の会社や家庭の都合で ドイツという外地に連れてこられ, それまでとは異質な外国の人々の生活・習慣や環境 という 「実の場」 で, これを対象化してもっと広い視野に立って考え, 理想にむかってたくましく生きる力を育てると いう面 で恰好の題材となっていよう‐ 因みに日本の小学校学習指導要領国語第3学年の 「表現」 の指導事項には,「書こ うとするものをよく観察してから書くこと」 「聞いたり読んだりした内容から素材を見付け, その素材を使 っ て表現 し て み る こと一 等 が あ っ て, こ の 点 に も 合 致す る も の と な っ て い る‐. ハンブルグ校での地域素材を生かしたこの作文単元は, 事前準備として 「日本に住んでいた頃の生活様式や習慣.環 境などを家の人に聞いてくる‐ 」 「ドイツに住んで生活様式や習慣・環境など気のついた事を調べてくる‐」 の2点を課 すところに特色があり, それを発表し合いながらドイツと日本の違いについて考え, 各自自分の立場からまとめて作文 に書き, 更に作文に表現された共通の話題を深く追及してグループごとにまとめ, また文集として残そうとする一連の 学習はュニークで創造的・生産的である‐ 榔野教諭の授業実践では, 子どもの作文をもとに 「日本と ドイツの緑や森林 の様子を比べ」, 友達の考えを作文から知り, 「日本と ドイツの緑や森林に対する考え方の違いについて自分の考えをま とめる」 ようにしている‐ その主眼としたことは, ①様々な視点で比べ自分の言葉で書かせること, ②友達の視点につ いて皆で深く追及すること であって, こうして得たものを今後の ドイツの生活で生かしていこうとする点も共感がで きる‐ 修正単元計画として, 「教師と一緒に推考する」 時間を2時間に増やし, 作文後 「みんなの作文を読む」 を2時 間, 最終的に 「みんなで考えた話題について, 再度自分で考え作文に書き表す」 ことを3時間新たに設けているのも, 各自が着実に自分の考えをまとめ, また他人の考えを聞き, 更に発展させて自分の考えをまとめるという面で意味があ り, 納得 で きる.. こうした学習から生まれた作文の実例が,1 9 92年度 『学校文集』 に収められているので, それを次に掲げてみること. 級 ) に す る‐. 森林でのできごと. ク, スプーンを利用しています‐ 農家も日本は少ない け ど, ドイ ツ は多 い し, ドイ ツ と 日本 と は, ち が いが. 三年. 寺 地. 航. も の す ごく は っ き り して いま す‐ フ ラ ンス な ん か ひ 行 場 に, 野う さ ぎ が 「ぴ ょ ん ぴ ょ ん」 は ね 回 っ て い ま. ドイ ツ と 日 本 の 森 林 の ち が い を, 書 きま した. 日本. は森林をどうして大切にしないのかと, ふしぎに思い ます‐ それにくらべて ドイツは, 森林をものすごく大. す. ドイツは庭に, はりねずみやりすが入って来たり します‐ 日本は犬やねこなどをかんたんにすててしま いま す. だ か ら 日 本 人 は気 が あ ら い と 思 いま す‐ ドイ. 切にしています‐ 日本と ドイツは, 大切にする物がち. ツ はや さ しい と 思 い ま す‐ そ れ は な ぜ か と 言 う と, ド. が う の か な と 思 っ た‐. イツ人は森林や, 花を大切にしているため,Jもがゆた かになっているからだと思います‐ 日本人は, 森林と. ドイ ツ は昔, 大 こ う 水 に な っ た 時 が あ り ま した‐ そ. の時に, 森林が助けてくれました‐ だから ドイツは森 林を大事にしているんだなっ と思った. 日本はこう水. います‐ 日本は, 森林をもっとふやせばいいと思いま. になって森林が助けてくれても, 日本は森林を大事に. す. ドイ ツ 人も, さ い しょ は気 が あ らか っ た と 思 いま. せず今だに, しぜんはかいを続けています‐ ドイツ人 が 日本に行ったら, 一目見ただけで, 森林が少ないと. す‐ 二十一世紀には, 日本人もみんなゆたかな心を持っ. びっくりすると思います. その反対に, 日本人が ドイ ツに来たら森林が多いとびっくりすると思います‐. た人間になってほしいと思います‐ たぶん二十一世紀 にはぼくが言ったとおりになると思います‐ この作文. 日 本 は木を 切 り た お し て 「お は し」 や 「つ ま よ う. でぼくは, 人間は植物とともにゆたかな未来を作って 行くことを言いたかったのです‐. じ」 と か に使 っ て いま す‐ ドイ ツ は, ナイ フ, フ ォ ー. か を 切 り た お して る か ら, 気 が あ らく な っ て い る と 思. 171.
(9) . . 鈴. 木 信、 義. フランク7ルト日本人学校における国際理解教育の研究. W. 海外日本人学校に入学している子 ども達は, 日本の経済成長による会社の進出とともに, 3年位の単位で家族 ごとに 移住した子が多く, 日本人学校を中心に居住し, 日常的に日本語を話し, 日本食を食 べ, 衛星放送 で日本のテ レビを 見, 日本から取り寄せた雑誌類を読んで生活している‐ 彼等を教える教師も, 文部省から3年間の約束で派遣された教 員が, 子ども達と全く同じように生活し, 日本の学習指導要領に従って日本と同じ授業をしている‐ 国語を中心に ドイ ツでの授業を見せてもらったが, 激動するヨーロッパ社会の中でここだけは平穏この上なく, 国内と同じ日本語での授 業はどこか間延びして, 異質の感を免れえなかった‐ ヨーロッパ, 特に ドイツは今や確かに激動のさ中にある‐ 東西統一後の厳しい経済状態の中で, 流入する外国人居住 者の問題で危機的な状況にあり, その教育への関わりも大きな課題となっている. ドイ ツの教育に詳 しい天野正治氏 は, その解決への道としてW‐ ニーケの異文化間教育論を紹介している‐ 即ち, 自文化への適応や同化を要求するエス ノセントリズム, また 「すべての文化は等価値である」 と主張しているだけの文化相対主義を克服 しつつ, 互いに理性 5 { ) 的に理解し合っていこうとする立場の 「多文化社会 ドイツ」 こそ選択すべき道だとするのである. 〈身〉 の構造」 の論である‐ 氏 は 一方, 子 どもの自己形成と環境について考える時示唆を与えるのは, 市川浩氏の 「 く身〉 を成層的な統合体ととらえ, それは 「すでに分節化され制度化された, 意味をも っ た文化的世界のなかに生ま れ, それを受け入れながら, 同時にまた文化的分節を集合的に再分節化することによっ て自己組織化」 するの であ っ て, これは自己を中心にして世界とかかわる自己中心化であり, 自己形成とはこう して 「中心化一脱中心化一再中心 6 ( } 化」 と いう ダイ ナミ ッ ク な 過 程 を とる の だ と い う. こ の こ と は, 子 ども が 日 本 で 生ま れ 成 長 し, そ して 異 文 化 の ドイ ツ. にやって来てそこで自己形成を続けていく際にもあてはまることと理解してよい. ところで, ヨーロッパ 有数の歴史的文化都市であり, また外国人居住者 が多く, まさに激動する ドイツの象徴のよう な都市フランクフル, その日本人学校において ーランク ‐行われている国際理解教育には注目すべきものがある 一同校はフ 56名という 8 0 9 92年5月現在の生徒数は小学部1 フルト日本人国際学校と称して, 谷口哲校長の下に,1 , 中学部76 , 計2 1 9 92年度) に, その成果を研究 小規模な学校である‐ 当校では, 文部省海外子女教育研究指定校に指定されて3年目 ( 7 ( ) 紀 要 第 3 集 (最 終 ま と め) 『リ ンデ ンバ ウ ム m』 を 発 行 して いる の で, そ れ に した が っ て 考 察 す る こ と に す る‐ ま ず,. 紀要の目次を表2に掲げよう. (表2) 目. 次. ‐”…””“”…”…””””…“””… …. ‐…”“…-…”““““… …””…””…“””””… …“…”‐ は じめ に … …““…”””‐. 海外の日本人学校における国際理解教育の視点……………………………………………………………………………… 研究の全体構想…………………………………………………………………………………………………………………… 焔 1 3. 1. ドイツ事情・現地の様子の調査・日本との比較研究 1. ゲーテの少年時代とフランクフルト……………………………………………………………………………. 2. ドイツ連邦共和国の学校教育制度・その1 -フランクフルト市を中心に- ………………………… 1 )………………………………………………………………………………………………‐ 37 3. シュタイナー教育( 2 )… … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … …… … … … … … … … 41 4‐ シ ュ タイ ナ ー 教 育( 1 )………………………………………………………………… 47 5 シュタイナー教育 -絵画教育について一(. . 2 )………………………………………………………………… 51 6. シュタイナー教育 」絵画教育について-( 7‐ ドイツの数学教育との比較および数学科の指導法…………………………………………………………… 57 8. 本校小学部の修学旅行について………………………………………………………………………………… 63 - につ い て ドイ ツ に お る- の 並 9‐ ドイツにおける武道の普及について. … … … … … … … … … … … … … … 73 - ! の 合 一 … … … … … … … …………………………………… -剣道の場合-…………………. 9 10 ‐ 在留邦人を中心にした剣道の活動……………………………………………………………………………… 7 9 1 1 ‐ 諸活動における剣道のあり方について………………………………………………………………………… 8 1 2 . ドイツのスポーツクラブについて 172. -陸上競技を中心にして-…………………………………………… 103.
(10) . ドイツ日本人学校における国際理解教育. 3 1 0 9 ‐ サッカーについて - ドイツと日本の選手養成課程を比較して-………………………………………… 1 ドイツ 1 1 1 4 の学校音楽週間について………………………………………………………………………………… 5 ‐ i k und B i l dung 15‐ ドイ ツ の 音 楽 教 育 雑 誌 「Mus 」 に見られる最近の傾向 …………………………………… 123. 1 6 ‐ ドイツ音楽教育の様子…………………………………………………………………………………………… 17 ッッ物語…………………………………………………………………………………………… . アウシュ ヴィ、 「 ド 1 8 イツの道 、‘ 」 物語………………………………………………………………………………………………. 133 137 153. 19. ベ ル リ ン の 壁 解 放 と東 西 ドイ ツ の 統 一 … … … … … … … … … … … … …・ ・」… … … … … … … … … … … … …・ ・181. 20 . 旧東西 ドイツの交通事情………………………………………………………………………………………… 205 21 ‐ ヨーロッパの昔を訪ねよう……………………………………………………………………………………… 217 22 ‐ フランクフルトの歴史的建物…………………………………………………………………………………… 219. 1 日本人学校の児童生徒の実態から -教育効果の向上をめざして- 1‐ 表現力の向上をめざした国語科指導法( 1 )……………………………………………………………………… 223 2‐ 表現力の向上をめざした国語科指導法( 2 )……………………………………………………………………… 229 3‐ 効果的な家庭学習のあり方……………………………………………………………………………………… 233 4‐ 国語科における平和教材について - 「あのころはフリー ドリヒがいた」 による-…………………… 239 5. 現地に対する子供たちの認識. -日記を通してみられる傾向-…………………………………………… 246. 6‐ 生徒の現地理解 -スピーチ学習から学んだこと-………………………………………………………… 254 7‐ グリム童話と子ども………………………‐ ‐…………………………………………………………………… 258 8‐ 課題作成 (数学科)( 1 )…………………………………………………………………………………………… 279 9‐ 課題作成 (数学科)( 2 )………‐ ‐………………………………………………………………………………… 283 1 0 7 ‐ 日本人学校に通う子供たちの音楽的環境と暗好…………………r…………………………………………” 28 ↓ 1 1 小学校音楽歌唱教材に関する-考察 . ・ ………………………………………………………… ……………… 295 ‐ 1 2 ‐ 図画工作科指導資料……………………………………………………………………………………………… 301 1 3 ‐ 図画工作科 年間指導実践記録………………………………………………………………………………… 305 1 4 . 学級新聞作りの指導を通して…………………………………………………………………………………… 311 15. ア ソネ フ ラ ンク と ユ ダ ヤ 人-----…… … … …-… …・… …--… … …-”… … … …””””… … … … … … …‐319. m‐ 社会科副読本……………………………………………………………‐ ‐………………………………………………… 327 r 理科副読本…………………………………………………………………………………………………………………… 383 N . V. 特別活動実践記録…………………………………………………………………………………………………………… 433 付. 表. 実態調査の記録……………………………………………………………………………………… 474. おわりに……………………………………………………………………………………………………………………… 47 6 紀要巻頭に谷口校長は 「海外の日本人学校における 国際理解の教育の視点」 なる文章を書き,「国際理解の教育は 日 , 本の国家と世界の民主主義と平和の維持, 発展に貢献できる国民の育成を目標にして行われるものであり これは海外 , の学校においても同じである. 1 )日本人と しての自覚と 誇 」 という‐ そしてこのことを教育する方法を具体的にあげ,( 2 り,( )自己のかかえる諸問題の明確化,( )日本の伝統と文化の研究・理解と保持 について述べた後, 3 ◎ 相手の人や外国の立場を見つめ, 仕事や人類愛をとおしての共通性と, 言語, 風俗, 習慣などをとおしての個別性 を冷静に識別し, 相手の立場を尊重することができる教養の習得につとめる. ( 5 ) 自分の意見や立場をはっきりと相手に伝え, 共感と理解を得るための正しい自己表現と主張ができる能力の育成に 173.
(11) . 鈴. つとめる‐ (含. 木 信. 義. 外国語力). と して いる‐. 「研究の全体構想」 によれ ば 研究主題は 「現地をよりよく理解するためと 現地に理解される日本人学校の指導の , , 2 1 )教材研究,( )「ドイ とし てその研究内容を あり方--国際性豊かな日本人育成の実践 研究の推進にあた っ 」 ,( , ツ事情」 の個人研究,( 3 )社会科・理科の副読本の作成としている. また, 「国際理解」 のとらえ方を3段階にわけて, 徐々に上の段階に移行するための意図的な教育計画を樹立し実践する活動を考え, ①交流活動の充実, ②国際理解能力 6ページ の育成, ③国際理解の態度とし 7 ,て, それぞれを相乗的に作用 させようとする‐ いずれにせよ, その研究紀要は4 におよぶ膨大なもので, 教職員・事務職員の力を結集している‐ 研究紀要は1~V部に分かれるが,「1‐ ドイツ事情・現地の様子の調査・日本との比較研究」 は, 上に記した研究内 「 1 ) 容( 2 )にあたり, 「工 日本人学校の児童生徒の実態から-教育効果の向上をめ ざして-」 は( , m. 社会科副読本」 「W‐ 理科副読本」 は( 3 )にあたる‐ このうち1部の内容は特に熱のこもった調査・研究で, 長年現地に滞在し既に 『ユ ダヤ人と ドイツ』(講談社現代新書,1 991 ) 等の著書をものしている事務局長大洋武男氏の 「ゲーテの少年時代とフラン クフルト」 をはじめ, 教頭橋本フミエ氏の 「ドイツ連邦共和国の学校教育制度・その1-フランクフルトを中心に-」 や, その他各教諭がフランクフルトとその周辺を中心に教育・文化・政治・歴史等に関する調査・研究を発表 してい る. ま さに W‐ ニ ー ケ の い う よ う に, 互 い に 理 性 的 に 理 解 し合 っ て 「多 文 化 社 会 ドイ ツ」 に 参 画 して い こ う と す る 日本. 人側からのア プローチとも見なされ, また, 谷口校長のめざす 「国際理解の教育」 の方法をまず教師の側から開拓しよ うとする姿勢を表すものでもあって, こうしたフランクフルト校のあり方を高く評価したい‐ これらの研究は, 主とし て日本語で書かれた文献によっているが, このことは日本人という国民の知的・文化的関心の高さを表し, その点から あらゆる国の言語を翻訳する専門家が存在し, そうした文献によって各自が資料を収集し, 現地に立って自らの見解を 獲得することが可能であるのは, むしろ誇りにしてよいことであると思う‐ 虹部の教材研究とその実践については国語 r部の社会科・理科の副読本作成について付言すると 特にこれらの教科 科を中心に次章でふれることにするが, m・N , において日本の教科書とは違う現地素材の手作り教材が要求されるだけにその意欲を多としたい. し・ずれにせよ, この研究紀要に著されたように, 教師側の調査・研究による 「国際理解教育」 への努力が, こども達 に還元されることは間違いない. 即ち, 環境に順応しやすい子 ども達は, まず 「①交流活動の充実」 からはじめて当然 だが, 次にこれこそ研究紀要で自ら教師が手本を示した如く,「②国際理解能力の育成」 に進み, 更に次の段階 「③国際 理解の態度」 として身につくまでに至らせるものであろう. その際, 考え合わせられるのは市川浩氏の論で,「文化的分 節を集合的に再分節化することによって自己組織化」 する自己形成,「中心化-脱中心化一再中心化」 というダイナミッ クな過程をいかになさせるかであり, これは子どもだけの問題ではなく, 大人である教師自身の問題でもあるとしなけ ればならない‐. V. フランクフルト日本人学校における平和教材の扱い方. フランクフルト校研究紀要 『リンデンバ ウムm』 の 「=. 日本人学校の児童生徒の実態から-教育効果の向上をめざ して-」 には, 現地教材を生かした教科の実践研究が報告されているが, その中で私の関心から, 中学部での文学教育 実践 「国語科における平和教材について一 『あのころはフリー ドリヒがいた』 による一」 (栗原博) を取り上げ, 考察し てみたい‐ 1‐ 現地素材を生かす国語教材と 『あのころはフリー ドリヒがいた』 栗原博教諭は, 中学部国語科において, 使用している光村図書版教科書の教材を中心に, 現地素材を生かす教材の学 年別配当計画を次のようにたてている.. 174.
(12) . ドイツ日本人学校における国際理解教育. 学. 年. I. 教. ・ ‐. 材. *少年の日の思し・出. 理解 表現. 備. 考. 作 者 ・ヘ ル マ ン= ヘ ッ セ. ドイ ツ ・Ca lw (カ ル プ) 出 身. 理解. 『環境問題 (酸性雨)』. 理解 表現. 作 者 H‐P‐リ ヒ タ ー. *日本語と国際交流. 理解. 『ドイツ語と日本語の比較』. *民族と文化. 理解. 『生活習慣の違い』. 理解. 『森鴎外 (元ベルリン在住). *気象と人間. 2. 領域. あの こ ろ はフ リ ー ドリ ヒ力丸・た. ドイ ツ ・Kol n (ケ ル ン) 出 身. 『ユ ダヤ 人 の 迫 害』. 3. 日本近代文学史. … 日本の近代化と西欧のかかわり』. 上の教材のうち, *印のついたものは光村図書版教科書所載のものであり, その他の 「あのころはフリー ドリヒがい た」 と 「日本近代文学史」 は栗原教諭が補って使用したものである‐ このうち, 後者中学3年での 『森鴎外』 について l i は, 「中学部の修学旅行がBe r n(ベルリン) ということもあり, 歴史的背景を学 ばせると同時に, 全員に 『舞姫』 を印 刷・配布し読ませた‐ 読みは難解ではあるが, 通りの名前などに親しみをもって読んでいた生徒も見られ, 西欧の言葉 の導入・書き言葉の変遷にも興味をもって取り組むことができた- 」 という‐ 確かに, 中学3年にと って は難解な 『舞 姫』 が, ベルリンという小説舞台をなす現実の場に立ち, 通りの名前などに親しみをもちながら小説の内容と歴史的背 景を考え, 更に西欧の言葉の導入・書き言葉の変遷にも興味をもって取り組むというのはまさに生きた勉強であり, す ばらしいことである‐ いずれにせよ, 栗原教諭が 「上記のような系統を設定し, 意識的に ドイツの文化・作家・歴史・ 自然に触れて考え」 ようとしたのは意義あることといえよう‐ 『あのころはフリー ドリヒがいた』 は 栗原教諭が中学2年に使用した作品で 教育出版教科書にある′「ベ ンチ」 を , , 投げ込み教材として授業したものと思われる‐ あえてこの教材を選んだのは, 「作者リヒターが Kol n (ケルン) 出身と いうだけではなく, この国のユダヤ人という民族に対する偏見が招いた結果を再認識してほしいという 点 に あ っ た‐」 といい, 「各地にその傷跡を残すユダヤ人の問題は, 生徒にも興味づけのよい材料と考えた‐ 」 という如く同教諭は述べ て いる‐ 『あの こ ろ は フ リ ー ドリ ヒ が い た』 (Dama l i i s war es Fr edr ch) は, ハ ソ ス ・ ペ ー タ ー ・ リ ヒ タ ー (Hans Peter. R i ) 作‐ 作者リヒターはフランクフルト北西, 特急で約3時間足らずにある歴史・宗教・工業都市であるケルンに t ch e r おいて, 主人公フリー ドリヒと同じく19 2 5年に生まれた児童文学作者, 社会学者である‐ 本書は1961年に出版され, 1 97 7(昭和52 ) 年に上田真而子によって岩波少年文庫として邦訳され, 教材もこれによっている‐ この作品は, 第1次 大戦後から第2次大戦にかけて ナチ ズムが台頭しつつある-都市で, 必死に生き抜こうとし遂には死んでいくユダヤ人 少年とその一家の物語を, 階下に住む同年の少年の目を通して描いている‐ 訳者が述べている如く,「これは, フリー ド リヒ一家とその周囲の人々の特殊なできごとではなく, 当時の一般の-代表例です‐ 社会から手荒くはじき出され, 差 別されて, フリー ドリヒ一家のような運命をたどったユダヤ人は, 当時, 何十万, いや何百万といたわけですし, そう いう社会に生きねばならなかった周囲の人々の反応も, そのいくつかのタイ プがこの作 中で明確に描かれているよう に, さま ざま だ っ た こ と で しょ う‐ つ ま り, こ れ は, 現 代 史 を た だ 舞 台 に した の で は なく 現 代 史 そ の も の を テ ー マ に ,. した作品です. 」 というのは, まさに真実であろう‐ 全32編の短編よりなり, その多くは少年のごく 日常的な挿話を映し とっているが, これを足立悦男氏は,「日常生活の中に忍び入るユダヤ人差別の事実を, たんねんに積み重ねるという手 法である. ごく 日常的な出来事の累積から,『現代史』 そのものに迫ろうとしているわけだ‐ 日常的細部のしつようなま 8 { } で の累 積 でも っ て, 『現 代 史』 を 射 ぬ こう と して い る の で あ る- 」 と 述 べ る の は至 言 であ る‐ 教 材 と な っ た の は, 『あ の ころ はフ リ ー ドリ ヒ が い た』 全32編 中24番 目 に あ た り, 「ベ ンチ」 (1940年) と い う 題 が つ い 175.
(13) . 鈴. 木 信. 義. 5歳前後の物語である‐ ここでは, ュダャ人に対する人種差別政策がさまざまな制限を加えるにいた ており,‐主人公が1 り, 公園のベ ンチ使用もュ ダヤ人は専用の黄色のベ ンチにしか座ることを許されなかったのであり, このベ ンチが人種 差別の重要な装置として機能している‐ 教育出版教師用指導書では, これを5段構成にわける‐ 即ち, ( 1 ) 発端 不意に現れたフリー ドリヒ………町のまん中で, 不意に現れ, 「ぼく」 の返事も待たないで突然話 し出すフ リ ー ドリ ヒ. (以 下 聞 き 手 の 「ぼく」 は 一 切 登 場 しない‐ す べ て フ リ ー ドリ ヒ の 独 白 で ある‐). 2 ( ) フリー ドリヒとヘルガとの出会し-……・4週間ほど前のこと. 前を行く少女の重そうな網袋から落ちたりん ご. そ の転がったりん、ごを拾うのを手伝い, 少女の家まで送っていく‐ 少女の名前はヘルガといい, 幼稚園で働いているこ リ と を知 る. そ の 時, お 礼 に も ら っ た りん ごを 今 も と っ て あ る と い う フリ ー ド , ヒ.. ( 3 ) 二人の交際………ヘルガが幼稚園の勤めから帰るのを待って, 近づき, あいさつをするフリー ドリヒ‐ そして, 毎 晩送 っ て いく よう に な る‐ フ リ ー ドリ ヒ の ヘ ル ガに 対 す る 思 い が だ ん だ ん 深 まら て いく.. ( 4 ) 初めての約束………町の公園で出会った二人. 公園に置かれた緑色のベ ンチ‐ ユ ダヤ人であることは知らないヘル ガは, フ リ ー ドリ ヒ に ベ ンチ に 腰 か け る こ とを 勧 め る‐ 言 い 訳 も 見 つ か らず, 思 わ ず 座 っ て しま っ た フ リ ー ドリ ヒ‐. ヘルガは彼がユ ダヤ人であることを察する. しかし, ヘルガはそのことについてふれず, 態度を変えたりはしない. しかも来週のデートの約束さえするヘルガ‐ ( ) フリー ドリヒの決意………迷い, 悩み抜いた末, ヘルガを思うがゆえにその思いを断念することを決意するフリー 5 ド リ ヒ.. の5段である. このことを頭において栗原教諭の授業実践を以下に見ることにする‐ 2‐ 「ベンチ」 の指導の実際 栗原教諭の 「ベ ンチ」 の指導は, 「二人の中を引き裂くもの, さらには少女 『ヘルガ』 のとった行動に注目しながら, 人間の生き方について考えさせたい」 として, 次のような5時間扱いの指導計画によって行われた‐. 時. め. あ. て. 「ユダヤ人に対する抑圧」 につい. 1. て 考 え さ せ る‐ I. 学習 の 目 標 を つ か ま せ る‐. 2. 「ベ ンチ」 の 朗 読 を 聞 きメ 初 発 の. 3. 学. 習. 活. 動. 今 ま で に 「ュ ダ ヤ 人」 に つ い て 見 聞 き し, 知 っ て いる こ と をメ モ し,. 発表する. 文学単元としての目標をつかみ, 見通しを立てる‐ 教師の範読で初発の感想をまとめる‐. 感想をまとめさせる‐. 2. 4. 作品全体の構成をつかませる.. 5. 第 1場 面 「フ リ ー ドリ ヒ の ヘ ル ガ. に対する気持ちを読みとらせる. 」. 3. 4. 5. 物語の形態を確認し, 場面の構成をつかむ‐ 「深 い 秘 密」 を も つ 「フリ ー ドリ ヒ」. 『話したらもう会えなくなる』 という気持ちを押さえる‐. 第2場面 「ベ ンチを前にした二人 父親の 息子 に 対 す る 態 度, 「フ リ ー ドリ ヒ」 の ユ ダ ヤ 人 と し て の 不 快 な思い, 「ヘルガ」 の人間性について考える. の心情を読み取らせる‐ 」. 6. 第3場面 「主題をつかみ, 自分の 生き方を考えさせる‐ 」. 7. 「一緒にいるところを見つかったら彼女は収容所行き」 という言葉に 注目し, 主人公の気持ちにせまる‐. 8 作品を読み終えて, 感想をまとめ ユ ダヤ人迫害の年表を資料として提示し, 補足・説明する‐ さ せる‐ 強く心に残ること, 考えさせられたことをまとめる. (文集 と してま とめる. ). この作品は, 特に主人公と同 じ1 5歳前後の生徒であれ ば, 一度通読しただけでも心を深く揺り動かす, 質の高い衝撃 力 を もつ こ と は明 らか で あ る. しか も 生 徒 は フ ラ ンク フ ル トに 住 み, 彼 等 の よく 知 っ て い る街の作りや生活習慣が随所. に現れ, 場面の理解が容易であるのだから, その扱いは国内と違って当然である‐ 栗原教諭は,「文学作品は, その中味 176.
(14) . ドイツ日本人学校における国際理解教育. について, 細部にわたる語句指導・心情表現に触れることによって新鮮な味わいを損ねてしまうと指摘されることがあ る‐ この作品に関しては, まさにその指摘の通りだと感 じた‐ 作品を通読することによって, 間接的な体験をし, 各自 の意識をもつことが重要である. ドイツで生活する生徒たちにとっては, 身近に存在するゲットー, ユダヤ人博物館, 強制収容所跡, ユ ダヤ人墓地など, 細かい説明を割愛しても, 常日頃から目にすることのできるものが多い. その点を 鑑みるならば, 『読書教材』 として提示するだけでも価値があったのではなかろうか. 」 とするのも納得できる‐ 上の指導計画によれば, 全体の構成を3段落に分けて学習作業をさせているのもこの点を考えてのことだろう‐ 先に 見た教師用指導書の( 1 ) ( 2 ) ( 3 )の場面を1, ◎を2,( 5 )を3としているのだろうが, 生き方や人間愛について集中して考え 『生きる』 とは 『人間愛』 とはという問い掛けこそ 文学作品の大きなテーマ る点からするとこれでよい‐ 同教諭も,F , , である‐ ドイ ツ に 生 活 し, よ り 近 しい 社 会 の 中 で, 『ユ ダ ヤ 人』 を めく り, 『生 き 方』 に つ い て 考 え る こ と が で き た の は, 幸 いな こと で あ る. 」 と して い る‐. 3‐ 授業後の生徒の感想と平和教育としての意味 栗原教諭は授業の最後に, 原作末尾にも付してあるュダャ迫害の 「年表」 を資料として提示し, 補足・説明後, 強く 心に残ること, 考えさせられたことをまとめさせたが, その中の÷編を紹介しよう‐ 「行 け な い じゃ な い か !. ぼくが一緒にいるところを見つかったら, 彼女は収容所行きなんだもん !」. 『ベ ンチ』 という悲しい話は この 決定的な言葉で終わっています ヒトラーのユダヤ人に対するひどさは 他 . , , の本でも読んだり, ダッハウ収容所を見学したりして知っていましたが, ドイツ人でさえユダヤ人と一緒にいるだ けで収容所行きだなんて, 信 じられない程驚かされま した‐ ヒトラー率いるナチスはュダヤ人を大量虐殺しただけでなく, 友情, 愛, 思いやりなど人間として一番大切なも のを当時のすべての人々から破壊し, 抹殺しようとしたのです‐ フリー ドリヒはどんなに, 約束どおりヘルガに会 いに行きたかっ たことでしょう‐ だけど, 大切なヘルガのために, 彼は行くのをあきらめました‐ そんな自分のつ らい気持ちをヘルガに伝えることもできないままに…… 彼はその後ュダヤ人ということで受けたどんな強い迫害よりも, この時の方がつらかったの で はな い で しょ う か. 彼 の 父さ え も ま た, 息子の心に気付いていて, 不慨に思い, やりきれない気持ちだったと思います 息子の外 り. 出も制止しきれなくて, 「あとは黙ったまま, じっとぼくを見て, そして顔をそむけてしまった- 」 という一文にそ れがにじみ出ています. 私はこの話で, フリー ドリヒがユ ダヤ人とわかったのにもかかわらず, 顔色一つ変えることなく, やさしい心で 接したヘルガに一番強く感動しました‐ ヘルガが少しの動揺も見せず, それどころかユダヤ人専用のベンチに自分 も何のためらいもなく腰を下ろしたり, 差別のベ ンチのない郊外の森に誘ったりしたのは, ヘルガの差別に対する 正義感でも同情でもなくて, フリー ドリヒを心の底から好きだったその愛だったと思います‐ きっと, 当時の ドイツ人はヒトラーがまきちらした残酷な思想の影響を受けて, 同じ人間同志だということも忘 れて, ユ ダヤ人を差別し, 憎み, 軽蔑していたと思います. そんな中でヘルガの純粋な愛は, 差別を気にせず, 収 容所行きさえ恐れない勇気ある行動を生み出したのでしょう‐ みんなの心が異常になってすさんでしまっているこの時期にユダヤ人のフリー ドリヒを一 人の人間として好きに なったヘルガの純粋な心は, 荒野にそっと咲いた一輪の清らかな花のようだと思います‐ ドイツにおいては第2次大戦終結の5月 8 日を, 強制収容所で命を奪われた6 00万のユダヤ人を中心として, 「人々が 嘗めた辛酸を心に刻む日」 であり,「歴史の歩みに思いこらす日」 でもあるとの名演説をしたヴァイツゼッカー大統領の 9 { } 言を待つまでもなく, 未だにナチズムの再来を厳しく警戒し平和を保持しようとする動きが大勢を占めている‐ しか し, 全く偶然に ドイツに連れてこられた日本人学校の生徒がこの国の苦しみを知り, 平和への願いを全身的に体験する には 「ベ ンチ」 のような作品を通した文学教育が有効であろう‐ 栗原教諭も, 「文学教育を通じて 人間的な感性を養 , い, 人間的な感情を発達させ, 状況とかかわりあって生きている人間の生き方を認識する力を発達させることは 間接 , 的平和教育の重要な役割でもある‐ 」 ととらえて, この教材を実践したのは全く妥当であって, その成果は上の生徒の感 177.
(15) . 鈴 木. 信 義. 想文にもいかんなく発揮されていると見なすことができよう‐ 先に紹介した市川浩氏は, 構造をもち具体的に生きられる身体を 〈錯綜体〉 としてとらえ, また, 我々が多元的・重 層的で暖味性をもつ芸術作品に対時 しこれを身をもって知るようなとらえ方をするとは, 「身の錯綜体をも っ て錯綜体 としての芸術複合体に感応」 し 「同 調」 す る こと で あ り, そ れ は 「自 己 を 中 心 と した パ ー ス ペ ク テ ィ ヴか ら 外 へ 出て, l o ( } 脱中心化」 することであるとする. 考えてみれば, 人類の平和をめぐって歴史の辛酸を最も厳しく引き受けた ドイ ツ という地に立ち, これを扱った文学作品という く錯綜体〉 に感応・同調することによって, 個々の生徒が 「中心化-脱 中心化-再中心化」 をはかること, これこそ国外現地における平和教育でなけれ ばなるまい‐ それは無論, 単にユダヤ 人を排斥した ドイツ人を責めることではなく, まさに栗原教諭のいう 「状況とかかわりあっ て生きている人間の生き 方」 そのものをきわめ認識する ことでなくてはならないであろう‐. (注) - -. 、. ・. 3=1988 総務庁行政監察局編 『帰国子女教育等の現状と問題点÷÷総 務庁の行政監察結果からみて--』 大蔵省印刷局, 昭和6 .. 1. 9) に拠る‐ 199 2 ) 年度 学校要覧』 に拠る‐ デュッセル ドルフ日本人学校 『平成4 (. 2. 19 92 ) 以下, 生徒数, 学校教育目標, 教育方針・計画, 教育課程の基本方針等についての言及も, それぞれの学校の 『平成4( 年度学校要覧』 に拠っている‐ 3 ハンブルグ日本人学校研究記録 『平成4年度 (第3次) 国際性のある人間に育てる教育はい かにある べ きか 《地域に根 ざ 93 し, 地域素材を生かした教育をめざして》 』 19 ‐3 1992年度 学校文集 第12号』 1993 ハンブルグ日本人学校 『 ‐3 「 93 5 天野正治 『日本と ドイツ 教育の国際化』 (玉川大学出版部,19 ‐ 7) 三, 多文化社会 ドイツにおける教育の課題」 「 『 ) n 〈身〉 の構造とその生成モデル」 中, 1 〈身〉 の構造 6 市川浩 〈身〉 の構造--身体論を超えて--』 (青土社,1984 ) 993 (なお, 同書は1 ‐ 4, 講談社学術文庫と して刊行され, それに拠った.. 4. 3‐ 3) 以下, 研究紀要の引用は全てこれに拠る‐ 199 7 フランクフルト日本人国際学校 『研究紀要 リンデンバウムm』 ,( 『ベンチ』 論--視点構造と装置」 (中学校国語科教材シリーズ5 『小説教材の作品論的研究』, 教育出版,1 8 83 8 足立悦男 「 ‐ 5) 9. ヴァイツゼッカー 『荒れ野の40年--ヴァイツゼッカー大統領演説--』 (岩波ブックレッ ト,1986 ‐ 2). 10 6と同書‐ 「N. 錯綜体としての身体」 の中, 2 錯綜体について (本 学 教 授. 178. 函 館 校).
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