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小学校国語科における「確かに聞き取る」ことを育成するメモ指導の在り方 : 第2学年における実践を例に

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(1)        小学校国語科における. 「確かに聞き取る」ことを育成するメモ指導の在り方.     一策2学年における実践を例に一.   平成24年 3月  教育実践高度化専攻 小学校教員養成特別コース.   P09082K    永井 未希.

(2) 第1章 研究の目的と方法   第1節 問題の所在と目的・・・・・・…  1・・・・・・・・・・・・…  1.   第2節研究の方法・・・・・・・…  1・・・・・…  一・・・・・… 4 第2章聞くことの指導の特徴とその具体   第1節 聞くことを育てる意義・一・・…  一・一・・・・・・・・・…  一5.   第2節聞くことの指導の特徴とその具体     第1項 聞き方の機能別分類        (1)聞き方の機能…  一・一・・一一…  1一・…  一・…  7.        (2)低学年における聞き方の特徴・・1・・・…  1・…  1・l13        (3)聞くための意識・・・・・…  1・・・…  1・・・…  115        (4)聞き方と聞くための意識からみる聞くことの構造化・・・・…  18. 第3章聞くことにおけるメモ指導   第1節 低学年の教科書におけるメモを取ることを扱う単元の変遷1・・・… 23.   第2節 先行実践例の分析     第1項 メモの機能とその指導       (1)メモの機能・・・・・・・・…  一一一・・・・・・・・…  24       (2)メモ指導にお1ナる先行実践例・・・・・・・・…  一・一…  28.     第2項 メモ指導と聴写指導の関連        (1)聴写の機能・・…  一一・・・・…  一一・・・・・… 32        (2)聴写指導にお1ナる先行実践例・・一・・・・・・…  一…  34.     第3節 先行実践例からみる聞くことの手立てとしての                   聞き取りメモ指導の留意点…  一・・…  38. 第4章 実習校における授業実践の分析と考察.   第1節 実践の目的と概要.      第1項実践の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 41      第2項 実践の概要・…  一・一・・・・…  1一・・・・…  一・41.   第2節 実践の実際と考察     第1項 各回における児童のメモからみたメモの特徴       (1)全5回における実践の内容と結果及び考察・・・・・・・・・…  44      (2)実践の結果からみる児童の聞き取りメモに.                おけるつまずきと実践の問題点・…  一一・一・・48.      第2項 実践後のアンケートからみる実践の成果と問題点一一・・・…  49     第3項 本実践全体からみる実践の問題点と改善案・・・…  一・一・・51.

(3) 第5章総括と今後の課題・・・・…. ■ ■ ■ ・ ■ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …    55. 引用・参考文献一覧・・・・・・・…. ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …     ■ ・ ・59. 謝辞一・・・・・・・・・・・・・…. …    ■ ■ ・ ・ ■ ・ ・ ・ ・ ・ …    ■ ・ ■ ・60. 巻末資料・・・・・・・…  一・…. ・・・・・・・・・…. @ 1・・・・… 61.

(4) 第1章 研究の目的と方法 第1節 問題の所在と研究の目的  本研究の目的は,「聞くこと」の指導の中でも,特に低学年への「メモをとること」の指 導に着目し,その指導法について探ることである。.  現代社会はありとあらゆる情報が行き交い,その多くの情報の中から自らが必要とする 情報を選択し,さらにその情報をもとに新たな発想を生み出したり,深めたりしていくこ とが求められている。.  倉澤栄吉(1974)は,よく鍛えられた耳は,量的に拡大する一方である情報を自然にえ りわけると述べた上で,その耳を信頼するだけでなく,さらに力を与える必要性を示して いる。そして,質的に高度な情報をどのように選別するかについては,学校での計画的な 訓練が必要であるとも述べている。つまり,現代社会を生き抜く子どもたちに,聞く力を 育むことは,学校教育における大きな課題の一つであると考えられる。さらに倉澤は,聞 くことの指導について,「いわゆる,聞かない,聞けない,聞きとれない子をつくらないた めにも,1年生における聞くことの重要性を再認識して,指導に当たりたいものである1。」 と特に低学年から聞くことの指導にあたる二との重要性について提言している。.  聞くことの学習指導は,倉澤によると「話の内容を正確に聞き取る」ことから始まる2。 そこで「話の内容を正確に聞き取る」ための手立ての一つとして,本研究ではメモをとる ことを取り上げる。.  メモに関する記載は,平成20年版国語科学習指導要領においては第3・4学年におけ る「話すこと・聞くこと」の内容のうち,「ア 関心のあることなどから話題を決め,必要 な事柄について調べ,要点をメモすること3」が挙げられている。.  斎藤喜門(1989)の「メモ・記録は生活の基礎であり,その技術と習慣が身についてい ない者は,学習や学校生活にずいぶんと支障を来している4」という言葉があるように,メ モは様々な学習場面や生活場面で欠かすことのできない作業である。しかし,小学校国語. 科においてメモの指導が行われるのは,第3・4学年からであり,東京書籍,光村図書, 教育出版の教科書を平成16年版まで見る限り低学年ではほぼその指導はされていない。.  平成20年版国語科学習指導要領において,特に言語活動の充実が重視されるようにな った。そこで今回,言語活動の充実が重視される前である平成10年版の学習指導要領に もとづく平成16年版教科書と,言語活動の充実が重視された平成20年版学習指導要領に もとづく平成22年版の教科書を比較した。その中で,教科書の内容を東京書籍『新しい 国語』,光村図書『こくご』,教育出版『ひろがることば』の3社において「話すこと・間. 1倉澤栄吉『聞くことの学習指導』明治図書,1974,p.39 2同上書,p.15 3文部科学省『学習指導要領解説 国語編』東洋館出版社,2008,p.51 4斎藤喜門『「ひとり学び」を育てる』明治図書,1989,p.122 1.

(5) くこと」はどの程度扱われているのか,その中でも聞くことに重点が置かれているものは どの程度あるのかを明らかにした。また,学習指導要領の改訂に伴う,「話すこと・聞くこ. と」の取り扱いの違いと,メモに関する記載の違いを平成16年版と平成22年版の教科書 の比較によりおこなった。.  今回,研究の対象とするのは小学校第2学年であるため,低学年である小学校第1,2 学年のものを比較の中心とした。(巻末資料参照).  3社の比較より,明らかになったことは以下の3点である。 ①全単元数に対して「話すこと・聞くこと」の単元は非常に少ない。 ②「話すこと・聞くこと」の単元であっても「聞くこと」に特化した単元は少ない。. ③平成16年版と平成20年版では「話すこと・聞くこと」の単元数に大きな変化はない。  平成20年版国語科学習指導要領において設定されている「話すこと」と「聞くこと」 は」領域とされており,そのどちらをも均等に学習することが大切であることはいうまで. もない。平成23年度より学習指導要領改訂に基づき,小学校の教科書は完全移行され, 国語科に留まらず,どの教科・領域においても言語活動の充実に重点が置かれるようにな った。中でも,ことばを学ぶ教科の中心である国語科においては,より言語活動を充実さ せることが必須である。.  しかし,教科書の比較からも明らかになった通り,「話すこと・聞くこと」の単元数に大. きな増減はなかった。つまり,教師は「話すこと・聞くこと」の単元が教科書において設 定されていないからといって「話すこと・聞くこと」をおろそかにするのではなく,子ど. もたちにr話すこと・聞くこと」の力をつけることをr書くこと」やr読むこと」の指導 の中でも意識的に行う必要があるのである。また「話すこと・聞くこと」と一領域とされ ているにも関わらずとりわけ「聞くこと」に特化した単元は少ない。.  なぜ,これまでにも聞くことの指導は話すことの指導に比べ,あまり重視されてこなか ったのだろうか。.  この点において,森久保安美(1997)は,r聞くことの指導における最大の問題は,い つも話すことにつけ足されたような形での指導が多いということである。」と述べている1。 これは,「話すこと」が外的動作であるのに対して,「聞くこと」は内的動作が主であり,. 受動的であると思われがちなためその具体的指導が難しく,また「聞くこと」の定着が児 童にとってどの程度なされているのかといった評価についても同じことが原因であると考 えられる。このことは児童が聞くことに関する自身の成長を意識することの難しさにもつ ながると考えられる。.  倉澤栄吉(1989)は聞くことについて,話し手の言葉をあとから追うのでは,その話を 聞くことができないとし,人間が人の話を聞きとるには,予測することが必須であり,さ. 1森久保安美『聞く力を育て生かす国語教室』明治図書,1997,p.85.

(6) らには,聞き手は常に話し手よりも先に早く待ち迎える余裕があると述べているi。つまり,. 聞くことには,常に先を予測していく能力が必要であり,それは受動的であるというより も,むしろ能動的な行為であるということができる。.  しかし,聞くことは話すごとのように音声として現れるわけでも,書くごとのように文 字として現れるわけでもない。そこで,聞くことの指導としてメモの指導を取り入れる。 なぜならば,メモをとることは,話し手の話すことを耳にし,その話の大切な部分を自分 で文脈にそって聞き取り,それを文字に表現するといった,聞くという目に見えないこと を視覚化できる行為であるためである。また,メモをもとに自分の考えを広げたり深めた りするような,思考のヒントにもなり得ると考えられる。つまりメモの指導によって,児 童に,正しく大事なことをきく方や,聞いたことをもとに思考を深める力を育むことがで きると考えるためである。.  上記したように,学習指導要領においては第3・4学年からメモを取ることを学習する ことが「ア 関心のあることなどから話題を決め,必要な事柄について調べ,要点をメモ すること2」と挙げられている。しかし,メモを取ることは中学年になったからといって急 にできるようになるのではなく,低学年からの積み重ねの結果できるようになるのである。. 低学年が中学年と同じメモはできないとはいえ,低学年なりのメモをとることは,取り入 れた情報を整理することや,児童の思考や発想を引き出し,新たな観点に気づくために必 要なことであろう。そこで,教師はメモを取ることが癖になるような学習をその目的に合 わせて積極的に取り入れ,児童にメモを取ることが「話すこと」や「聞くこと」のみなら ず「書くこと」や「読むこと」の手立てとしても大いに役立つことを実感させていく必要 がある。.  既に明らかにした通り,言語活動の充実がいわれるようになった平成20年版学習指導 要領を受けた平成23年版の国語科教科書と,言語活動の充実がいわれていない平成10年 版学習指導要領を受けた平成16年版の国語科教科書での「話すこと・聞くこと」の単元 数に大きな増減の変化はなく,また「聞くこと」に特化した単元数は非常に少なかった。.  しかし,低学年の平成16年版と平成22年版の国語科教科書において,メモを取ること を題材とした単元数を東京書籍,光村図書,教育出版の3社で比較したところ,メモを取. ることを題材とした単元数は3仕合計で平成16年版よりも平成22年版の方が第1学年で は3単元,第2学年では5単元増加していた。詳細については,第3章第1節において述 べる。.  以上の3社を検討した結果,「話すこと・聞くこと」に関する単元の増減は特にみられな. かったが,平成22年版教科書にはメモを取ることを学習する単元が増加していた。また 低学年では,「書くこと」の手立てとして取るメモと,「話すこと」と「聞くこと」の手立. 1倉澤栄吉『倉澤栄吉国教育全集10話しことぱによる人間形成』角川書店,1989,p.22 2文部科学省『学習指導要領解説編 国語科』東洋館出版社,2008,p.51                    3.

(7) てとして取るメモの能力を育成することが求められていることが明らかになった。  「書くこと」と「話すこと」の手立てとしてのメモは,自分の考えや伝えたいことを想 起し,整理していくものであるため,話し手や書き手のぺ一スでメモを取ることが可能で ある。一方,「聞くこと」の手立てとしてのメモは聞いたことを想起し,整理する以前に,. 話の中から必要な情報を正しく聞き取ることが必要であり,しかもその情報源は音声であ るため,その瞬間に消えていってしまう。したがって,「聞くこと」の手立てとしてのメモ. は,聞き手が話し手のぺ一スに合わせてメモを取らなくてはならないという難しさがある. といえる。しかし,これまでにr書くこと」またはr聞くこと」に限定せずとも,低学年 でのメモ指導に関する先行研究は少ない。本研究では,特に「聞くこと」の手立てとして の,低学年におけるメモ指導の方法やその留意点について明らかにする。. 第2節研究の方法  本研究においては,小学校国語科における3領域のうちr話すこと・聞くこと」におい て,低学年における「聞くこと」の手立てとしてのメモの有効性について論じる。そして 「聞くこと」の手立てとしてメモを行うことの指導を効果のあるものとするために,どの ような手立てで指導を行うべきであるのかを研究の目的とする。そのための具体的な研究 の方法は以下に示す通りである。.  まずr聞くこと」の機能について聞き方と聞く力の観点から整理する。そこで明らかに なったr聞くこと」の機能に基づき先行研究を整理,考察する。(第2章)  次に,先行研究よりメモと聴写の機能を明らかにする。さらにメモ指導と聴写指導につ いての先行研究の分析と考察を行い,メモの指導の留意点を見出す。(第3章).  最後に稿者が実習校でおこなったメモ指導について分析と考察を第2章,第3章から得 た知見をもとに行い,今後の課題について検討する。(第4章). 4.

(8) 第2章聞くことの指導の特徴とその具体 第1節 聞くことを育てる意義  倉澤栄吉(1989)は,「きくことは,きわめて,たいせつな,人間のはたらきである。」. と述べた上で,それがあまりに日常的な営みであるために,私たちは重大な意義を忘れが ちであると指摘している1。.  また,大村はま(1991)は子どもたちに聞くことを育てる必要性を,学校生活全体を通 した視点から,聞くという仕事がとても多いことを述べ,聞く耳が育っていない場合には,. どの教科にもひびが入ってくると指摘している。この具体的な例として,作業的な学習活 動,新しい学習活動,実験を挙げ,どの場面でも聞く耳が育っていることがその学習活動 の大前提であるととらえていることがわかる2。この点において大村は,教師がたとえ「聞 くこと」の授業を行っていないことに気づいたとしても,授業をしていなくても,聞く力 があると勘違いし,結局,指導しないということを危惧している3。実際に私たちは成長す る過程において,自然に聞くことを繰り返し,様々な聞く経験を重ねている。そのため,. 学校において聞くことの指導を特別にしなくてもよいと思われがちである。  また,聞くことの指導がおこなわれていたとしても,「大人しく聞きなさい」,「静かにし て聞きなさい」というような,態度的側面で我」1曼して聞くことを求めるものや,「よく聞き. なさい」という,指示に具体性のないものによっておこなわれがちである。  荻野勝(1994)は,話を静かに聞いているにこしたことはないと述べた上で,強制的な r沈黙」は,主体的な聞き手を育てないとしている。さらに,強制的沈黙の繰り返しが受 け身で消極的な聞き手を作ってしまうとも指摘している4。.  さらに,大村はまは,『rよく聞いていなさい」と言ったらよく聞くというのは,先生の 甘いどころではないか。聞いているような顔をしていても,聞いていないこともあるでし ょうし,やっぱり,ぐっと心をとらえなければ,口でどうせよという命令ではできないよ うに思います。』と述べている5。つまり「よく聞く」ということを,教師が児童の具体的 な姿としてどのようにとらえ,またどのように具体的に指導することができるかが聞く力 を育成するためには重要になってくる。.  加えて大村は,話を「なんとなく聞いているとか,ぼやっと聞いている」というような 癖がつくと,話を一度で聞こうとする神経が発達しないと指摘している6。また,「いちば んまずいことは,よく聞いていないということは,授業時間に終始気が散っているという ことです。それはいちばん頭をわるくすることです。何は教えられなくとも,それだけは 1倉澤栄吉『倉澤栄吉国語教育全集2 国語教育の基礎問題』角」11書店,1989,p.292 2大村はま『大村はま国語教室2』筑摩書房,1991,p.9. 3同上 4荻野勝「聞くという行為を支えるもの」『聞くことの指導』明治図書,1994,p.209 5上掲書3,pp.41−42 6上掲書3,pp.50−51.                    5.

(9) させてはいけない『散漫な頭でいる時間』を,授業時間に持っていることになってしまっ て,」番残念なことです」と,よく聞けないことが何よりも子どもたちの学力に悪影響を 及ぼすことに言及している。そのようなことにさせないために必要なことが聞く力をつけ ることであり,はっきりその目標を立て,教材を整え,指導法を考案して立ち向かってく る,専門にそのためにくふうするということが必要であると述べ,「聞くこと」も「話すこ. と」や「読むこと」と同じような心構えで教師が指導しなくては授業にならないとも述べ ている1。.  つまり,日常生活の申でごく当たり前に行っているレベルにおける子どもたちの聞く姿 に満足するのではなく,教師は子どもたちにどのような聞くカをつけたいのかを明確にし, その力をつけるための的確な指導をおこなっていく必要があるといえる。  では,「聞くこと」を子どもたちに育む意義は何なのであろうか。  まず倉澤は,「きくということが,はなすことなしに単独で存在することはないけれど,. きくというぽ走ら去は,はなすことと相島侯って存在する2。」と述べ,話すことも聞くこ とも,単独で成立するのではなく,双方の活動があって始めて成立するということを明ら かにしている。加えて従来,実生活の場面において,相手の言うことを理解しないと,そ の場面への適切な順応ができないということから,話し方の前提として,まず聞き方であ るといわれてきたことを述べた上で,話し方のために聞き方を育成することは,「その場面. への適応としてのレディネスであり,はなしかた技術のために,ききかた技術がレディネ スになるということではない3。」と指摘している。.  換言すると,話し手がスムーズに話すために,聞き手の聞き方技術があることは必要で はあるが,だからといって聞き手の聞き方技術が直接に,その聞き手の話し方技術のレデ ィネスになるということではないということである。.  また倉澤は,聞きとりと読みとりには深い関係があるとし,話し方技術のレディネスよ りもむしろ,「よみとりのレディネスとして,ききとりの力が考えられるべき」であると述. べている4。このように述べる理由として,聞き取りにおいて,「正しく順を追って理解す る力」が練られれば,読みとりにおいても「指示に従うよみ」といわれているものも伸び ることを挙げ,話のあらすじをつかむという力は,そのまま大意の把握に通ずるものであ. るとしている5。ここでいう「正しく順を追って理解する力」は,平成20年版国語科学習 指導要領における,第1・2学年の「聞くこと」の目標とされている「大事なことを落と さないように,聞く能力」にあたるといえる。それは,指導事項においても,話し手が知. 1大村はま『大村はま国語教室2』筑摩書房,1991,pp.50−51 2倉澤栄吉『倉澤栄吉国語教室10話しことばによる人間形成』角川書店,1989,pp.297  −298. 3同上書,p.295 4同上書,p.293. 5同上.

(10) らせたいと思っている事柄の大事なことをおとさないようにすることにおいて,事柄の順 序を意識しながら聞き取ること1が大切であることが明記されているためである。  一方,「指示に従うよみ」は,第1・2学年の「書かれている事柄の順序や場面の様子な どに気付いたり,想像を広げたりしながら読む能力を身に付けさせる」,第3・4学年の「目. 的に応じ,内容の中心をとらえたり段落相互の関係を考えたりしながら読む能力を身に付 けさせる」,第5・6学年の「目的に応じ,内容や要旨をとらえながら読む能力を身に付け させる」という,それぞれの目標にあたる2。.  以上のことから,聞くことは話すことと併せて,国語科学習指導要領の一領域として「話. すこと・聞くこと」とされているが,教師は,聞くことが話すことのみにつながるもので あると狭義に捉えるのではなく,読むことにもつながるという意識をもって指導すること も忘れてはならないといえる。. 第2節 聞くことの指導の特徴とその具体 第1項 聞き方の機能別分類 (1)聞き方の機能.  第1節では,聞くことはあらゆる生活場面で必要であり,聞くことが身についていなけ れば,多くの学習にも支障を来すことから,聞くことの指導は必要であるにも関わらず, その指導は態度面ばかりに集中しており,その聞き方の特徴から聞くこと基礎的な力を育 まなくてはならない低学年ほど,態度面のみでの指導が指導の中心になっているというこ とが明らかになった。しかし,聞くことの指導は態度面のみで行うべきではない。聞くこ との指導も読むことや書くことと同じように様々な視点から行われるべきである。  しかし,「きく3」とは一体いかなる行為なのであろうか。「みる」という行為には,「眺 る」「見る」「現る」「診る」「調る」等があるように,「きく」という行為も分析的に捉える. とさまざまな様相があるヰ。第2節では,rきく」という行為を分析し,具体的な姿として どのような姿があるのかを明らかにする。.  倉澤栄吉(1989)は,「はなすことの多くなった世の中は,それ以上にきくことの多い世. の中である5」と述べ,そのことにも関わらず聞き方がみだれているということを指摘して いる。聞き方の乱れの原因としては,聞き方そのものにどのようなものがあるのかがわか. 1文部科学省『学習指導要領解説 国語編』日本文教出版,2008,p.31 2同上書,p.11 3「きく」は本節において,その機能の違いから,「聞く」,「聴く」,「説く」という三種類  で表す。そのため,漢字表記による限定はせず,rきく」と表記している。 4桑原正夫『視写・聴写の新しい指導』明治図書,1981,p.55 5倉澤栄吉『倉澤栄吉国語教育全集2 国語教育の基本間題』角川書店,1989,pp.52−.  54.

(11) らないがために,その具体的指導も改善もできないと考えられる。では,「きく」にはどの ような態度や行為があるのだろうか。.  まず,倉澤は以下5つの聞き方とその行為の内容を挙げている1。これは,倉澤が独自に むずかしさの胴として並べたものである。.  1つ目は,「きく態度をととのえる」である。話し手の方を向く,静かにする,聞ぎょい 態度をとる外面的な準備と相手の話を真剣に聞こうとする内面的な準備との両方の態度を ととのえることが必要であり大事な基本段階であると述べている。.  2つ目は,「すなおにきく」である。話を忠実に,もれなく聞くことや相手の気持ちにな って聞くことがこの聞き方の行為に値する。.  以上2つの聞き方は倉澤がいうには,従来の日本人がよく訓練されてきた聞き方である。. しかし同時に,以下3つはあまり訓練されてこなかったためにそれらの聞き方は弱いと指 摘している。.  3つ目は「まとめぎき」である。話を聞きながら再構成したり,聞いた後で大意をしっ かりつかんだりすることや,聞きながら過去の経験や知識と対照させながら聞く行為であ る。.  4つ目はrききひたる」である。放送劇,演劇等を鑑賞する場合,自分を投げ出してそ の中にとけ入る聞き方や,夢中になって聞き入るといった情的なきき方を指す。また,倉 澤によると,「聞きひたり」には,対事意識と対人意識の二方向がある。話の中身にひたっ. ているだけでなく,話し手の人がらに打たれたり,話し手の話ぶりに共鳴したりしている 状態を示している。さらに,「主体が話の中に没入しているのは,話に自己を奪われている というよりも,話と一体になっているわけで,主体の精神は生き生きとはたらいている」 と述べている。.  5つ目はr批判的にきく」である。聞きながら意見を構成したり,相手の意図を考えて 自分の考えと比べたりする,知的活動が主となる聞き方を指す。倉澤は特に五つ目の「批 判的にきく」が訓練されていない場合,聞き方が感情的なったり,聞いても正しい批判や 独創的な意見が持てなかったりすると指摘している。.  ここで倉澤が独白に並べたむずかしさの順は,平成20年版国語科学習指導要領における 「話すこと・聞くこと」の目標において「聞くこと」の目標2と指導事項3に注目した場合,. 各学年の目標とほぼ一致しているといえる。.  例えば,倉澤の挙げる「すなおにきく」という聞き方における「話に忠実に,もれなく. きく」という行為は,表1に示した学習指導要領における第1・2学年の「大事なことを. 1倉澤栄吉『倉澤栄吉国語教育全集2 国語教育の基本間題』角川書店,1989,pp.52− 54 2文部科学省『学習指導要領解説 国語編』日本文教出版,2008,p.11 3同上書,p.14.

(12) 表1平成20年版国語科学習指導要領「話すこと・聞くこと」目標. 第1学年及び第2学年. 第3学年及び第4学年. 第5学年及び第6学年. 相手に応じ,身近なことなど. 相手や目的に応じ,調べた. 目的や意図に応じ,考えた. について,事柄の順序を考え. ことなどについて,筋道を立. ごとや伝えたいことなどに. ながら話す能力を考えなが. てて話す能力,話の中心に気. ついて,的確に話す能力,梱. ら話す能力,大事なことを落. を付けて聞く能力,進行に沿. 手の意図をつかみながら間. とさないように,一間く能力,. って話し合う能力を身に付. く能力,計画的に話し合う能. 話題に沿って話し合う能力. けさせるとともに,工夫をし. 力を身に付けさせるととも. を身に付けさせるとともに,. ながら話したり聞いたりし. に,適切に話したり聞いたり. 進んで話したり聞いたりし. ようとする態度を育てる。. しようとする態度を育てる。. ようとする態度を育てる。. 落とさないように聞く」と似ている。また,倉澤の挙げる「批判的にきく」という聞き方 における「相手の意図を考えて自分の考えと比べたりする」という行為は,学習指導要領. における第5・6学年のギ相手の意図をつかみながら聞く」とほぼ一致する。つまり,倉 澤の5つの聞き方の提唱は現在から20年以上も前のものであるにも関わらず,未だその聞 き方が現代の聞くことの指導においても求められているということができる。.  また森久保安美(1996)は,4つの聞き方とその行為の内容を挙げている1.  1つ目は,r確かに聞き取る」聞き方である。森久保によると,聞く力の基本,聞き取る べき内容は,r大体」r順序」r要点」r中心点」等話された内容を,できるだけ客観的に正 確に聞き取るということであり,話された内容をただすべて聞き取るということではない。.  2つ目はr詳しく聞き分ける」聞き方である。さらに森久保はその行為を3つの働きと して示している。1つ目は話し手の意図や場面の様子や人の気持ちなどをとらえる働き,. 2つ目は細かい点も逃さず聞きとって,深く理解する働き,3つ目は話を分析的に聞き取 って,その構成や展開をとらえたり,また事実と意見,中心と付加とを聞き分けたりする 働きであり,どれも知的な特徴をもつとしている。.  3つ目は「心を寄せて聞きひたる」聞き方である。森久保は話し手に心を寄せて聞いた り,話の内容をわが身のことと思って聞いたりするような行為がこれにあたるとしている。.  4つ目は「思いを加え豊かに聞き添う)」聞き方である。森久保は,話の内容を正確に, また詳しく聞き分けるだけでなく,入の話を聞いて,新しいものをつけ加えていくような 豊かな創造的な聞き方であるとし,聞く力の中で最も複雑な最終段階のものであるとも述 べている。加えて,この聞き方は大人だけの高度な能力を指すわけではなく,子どもには 子どもなりの(子どもだからこその)創造的な豊かな聞き方ができると考えるものであると. 1森久保安美『話しごとば教育の実際一国語教室に魅力を一』明治図書,1996,pp.17−  24 9.

(13) 指摘している。.  さらに大村はま(1985)は子どもたちに育みたい聞くカとして以下の4点を挙げている 1。.  第1に蛉静で透明な聞く力」について考える。「冷静」とは,憾情に動かされること なく、落ち着いていて物事に動じないこと2」であり,「透明」とは「すきとおること,く もりなく明らかなことB」を表す。つまり,大村の示す,「冷静で透明な聞く力」とは,自. 分の考えや思いを加えずに耳から入る内容そのままに受け止める聞き方であると考えるこ とができる。この力は,聞くことの基礎になる態度で,目に見えてその姿をとらえること ができる。具体的には,おしゃべりをしない,最後まで聞く,話し手に反応して聞くこと ができるといった状態を指す。.  第2に「機敏に整理しつつ聞く力」とは,聞いた情報を自分の中に取り込む状態や,そ のことと対称的に,聞いた情報を自分と切り離して客観的に内容をとらえる状態を繰り返 す聞き方をさす。具体的には,自分の経験や持っている情報をもとに,比較することや反 論すること,反対に,自分のもつ情報や経験とは切り離して,.話の構成を把握すること, 話が事実を反映しているのかを確認することができる状態を指す。.  第3にr共に追究しつつ聞く力」とは,聞き手が聞いたことをもとに,わからないこと や知りたい事を自分自身に問いかけたり,またその問いを仲間へ間うたりすることや,意 見を交わすことにより自分の考えをより深めていくことのできる聞き方をいう。.  第4は「人間的な,あたたかな心まで聞く力」である。大村は,話し合いは聞き合いで なければならないと述べ,その話し合いの中で何よりも先行しなくてはいけないこととし て,rだれかがだれかをあなどっていない,また,だれかがだれかにあなどられていると思 っていないということ」を挙げている。つまり大村は,子ども同士が互いに尊重し合い,. 認め合ってこそ話し合いや聞き合いが成立すると述べているのである。このことからもわ かるように,話し手の話を一生懸命に聞こうとすることや,話し手の話す内容だけでなく,. その奥にある話し手の思いに寄り添うように聞くことが「人間的な,あたたかな心まで聞 く力」である。よってこの力は,どの聞くカよりも先行して聞き手になくてはならない聞 き方であると同時に,最終的にも重視したい聞き方である。.  以上3者のとらえる聞き方を,その行為に着目し分類して表2に示した。  まず,倉澤は聞き方の1つ目に「きく態度を整える」ことを挙げていた。ここでいう「き く態度」とはすでに述べたように,静かにすることや相手の方を見ることなど聞くことを 始める前の準備段階にあたる。この準備は外的な態度だけではなく,聞こうとする心構え としての内的な態度としても整えられるべきである。一方,森久保は倉澤のようにあえて,. 1大村はま『国語教室 おりおりの話』共文杜,1985,pp.11−12 2新村出『広辞苑』岩波書店,2005,p.2829 3同上書,p.1894                     10.

(14) 表2 倉澤,森久保、大村による聞き方の分析とその機能分類 段. 倉澤栄吉(1988). 森久保安美(1997). 機能. 大村はま(1985). 階 1. きく態度を整える. 人間的な. 聞くために外面・内. あたたかな心まで. 面両方の態度を整え. 聞くカ 2. すなおにきく. 冷静で透明な. 確かに聞き取る. 聞く力. る. 自分の考えや思いを. 加えず,客観的に正 確に聞く. 3. まとめぎき. 詳しく聞き分ける. 機敏に整理しつつ 聞く力. 様子や気持ちを想像 して聞く. 話の構成や展開に着 冒し,要旨をつかむ ように聞く. 4. ききひたる. 心を寄せて聞きひ. 話の内容と自分自身. たる. を近づけて夢中にな 共に追究しつつ. 5. 批判的にきく. 思いを加えて豊か. 聞く力. って聞く. 話し手の意図も自分 の考えも踏まえて,. に聞き添う. 主体的に新たな考え を生み出すように聞 く. 聞き方として聞くことを始める前の準備については触れてはいないが,それは決して態度 面を重要視していないということではなく,態度面が整っていることを前提としてその他 の聞き方を提唱しているのである。また,大村が「人間的なあたたかな心まで聞く力」と して挙げている聞き方は,既に述べたように,話し手を尊重して聞く聞き方である。聞き 手の態度が貫に見えて悪ければ,まず話し手には話す気が起きないであろう。態度面を整 えることは,良くも悪くも多くの聞くことの指導の中心になっていることからも明らかで. あるように聞くことの指導に欠かすことはできないと考えるため,第1段階として表に挙 げた。.  次に,第2段階として,倉澤の「すなおに聞く」,森久保の「確かに聞き取る」大村の「冷. 静で透明な聞く力」を並べた。倉澤がこの聞き方を「話を忠実に,もれなく聞くことや相 手の気持ちになって聞くことがこの聞き方の行為に値する」と述べていることと,森久保 が「できるだけ客観的に正確に聞き取るということ」と述べていること,また大村が冷静 11.

(15) や透明という言葉を用いていることから,第2段階における聞き方はその機能として自分 の考えや思いを加えず,事実として客観的に聞くことであるべきであると捉えた。  続いて第3段階として,倉澤の「まとめぎき」と森久保の「詳しく聞き分ける」,大村の 「機敏に整理しつつ聞く力」を並べた。まとめて聞くことと,聞き分けることは違った聞 き方をしているように捉えるが,大村の「整理しつつ」という言葉をヒントにその整理の 方法として,まとめて聞くことと,聞き分けることがあると捉える。倉澤が「まとめぎき」. の具体的行為として「話を聞きながら再構成したり,聞いた後で大意をしっかりつかんだ りすることや,聞きながら過去の経験や知識と対照させながら聞く」ことを挙げているこ とと,森久保が「詳しく聞き分ける」聞き方の具体的行為を,話し手の意図や話される内 容の様子をとらえること,話されたことを逃さず聞き取り理解すること,構成や展開,事. 実と意見とを分析的に聞き取ることと挙げていることから,この二つの聞き方には,第2 段階よりも聞き手が話を詳しく捉えようと,様子や気持ちを想像して聞くことや,話の構 成や展開に着目し,要旨をつかむように聞くことであると捉えた。  第4段階として,倉澤の「ききひたる」と森久保の「心を寄せて聞きひたる」を並べた。. 両者共に「ひだる」という言葉を使って,その行為を話の内容に聞き手が寄り添って聞く という,聞き手と話し手の心的距離を近づける機能を表している。  最後に第5段階として,倉澤の「批判的にきく」と森久保の「思いを加えて豊かに聞く」 を並べた。「批判的にきく」とは「聞きながら意見を構成したり,相手の意図を考えて自分. の考えと比べたりする,知的活動が主となる聞き方」である。また森久保の「思いを加え て豊かに聞く」という聞き方も「話の内容を正確に,また詳しく聞き分けるだけでなく,. 人の話を聞いて,新しいものをっけ加えていくような豊かな創造的なきき方」と述べてい るため,聞き手が主体的になり,話し手の意図も自分の考えも踏まえて,主体的に新たな 考えを生み出すように聞くことであると捉えた。.  また,大村の「共に追究しつつ聞く力」は第4段階と第5段階に置いた。「共に追究しつ つ聞く力」は既に述べたように,聞き手が聞いたことをもとに,わからないことや知りた い事を自分白身に問いかけたり,またその問いを仲間へ間うたりすることや,意見を交わ. すことにより自分の考えをより深めていくことのできる聞き方をいう。第4段階は話し手 の内容に聞き手が寄り添って聞く聞き方であり,第5段階は話し手の話と自分の意見や考 えから新たな考えを生み出すように,聞き手が主体的に聞く聞き方である。よって大村の. 「共に追究しつつ聞く力」は第4段階と第5段階の両方を意味すると捉え,表のように位 置付けた。.  以上のように,倉澤,森久保,大村が述べる聞き方と行為は表現している言葉こそ違っ. てはいるものの,第1段階から第5段階に至るにつれて,話し手主体の聞き方から,聞き 手が話し手と心的距離を徐々に近づけていき,最終段階にあたる第5段階では,聞き手が 話し手の話す内容を聞くのみに留まらず,そこに自分の考えを加えたり,不足している情 12.

(16) 報を付け加えるようにしたりして新たな発想を生み出すような,聞き手主体の聞き方にし ていくことが,聞く力を育てるということであると捉えていることが明らかになった。.  なお本研究では,この3者の提唱する聞き方の段階のうち,倉澤や大村の用いている言 葉よりも機能面がイメージしやすいと考えるため,森久保の挙げている「確かに聞き取る」,  「詳しく聞き分ける」,「心を寄せて聞きひたる」,嘔いを加えて豊かに聞き添う」という. 聞き方を表した言葉を主に取り上げる。. (2)低学年における聞き方の特徴.  倉澤(1989)は,rきくというのは,はなしことばを媒介として,種々の社会的場面に 適応していくことであるから,その適応には基礎になる社会経験の基盤がなければならな い」と述べ,児童は話し合いに参加する際も,その中心になっている話題に関する経験が ないと理解することができないことを指摘している。同時に,経験の広がりから聞くべき 内容が豊かになるため,関心領域を知る際にその基盤にあるのは,実際の経験であること も述べている。しかしながら,聞くことに直接関与するのは,実際の経験の中でも「話題 に関する知識と興味」であるため,どのようなことに強い関心を示しているかが,その児 童の聞く力の基礎となると述べている1。.  つまり,児童に聞くカを育む際に選ぶ題材は,児童の経験と照らし合わせて選択する必 要があるといえる。また,児童の実際の経験の中からさらに児童が興味や知識を持ってい ることを選択することで聞く力の基礎を育むことができるのである。.  さらに倉澤は,聞き手がよく聞きえない原因として,上記したような知識や経験の不足 の他に,聞き方の発達もその要因であると付け加えている。倉澤によると聞き方の発達と. は,社会的な要因,知的な要因,情緒的な要因の3つがある。そして,それぞれの要因に ついて以下の3つを例示している2。 まず,社会的な要因の例として,「はずかしかったり,きこうとする気にならなかったり,. 忍耐づよくなかったり,意図的にきこうとする気構えにならなかったりする」というよう な,聞き手の態度面を挙げている。.  次に,知的な要因の例として,「中心的なものをぬき出す力,まとめる力が足りなかった. り,自分の考えを加えて見なおす力がなかったり,自分の考えを加えて見なおす力がなか ったり,きいたことをすぐ忘れてしまったりする」というような,聞き手の表現面や技能 面を挙げている。.  最後に,情緒的な要因の例として,「おちついて,はっきりいうことができないとか,相. 手に対してまちがった先入観を持ったりする」というような,聞き手の心理面を挙げてい. 1倉澤栄吉『倉澤栄吉国語教育全集10話しことばによる人間形成』角川書店,1989,  P.300. 2同上書,p,301 13.

(17) る。.  したがって児童に聞くカを育むには,児童の経験や興味・関心を捉えることの他に,聞 き手となる児童の態度面,表現・技能面,心理面のどの力を育むべきなのかを捉えてその 指導に当たらなくてはならないのである。しかし,児童の経験や興味・関心はもちろんの こと,児童の発達の段階によって各面の具体は違ってくる。倉澤はその具体を各学年の児 童の聞き方の特徴として述べている。.  まず倉澤は,小学校!年生を「きく力に重点を置くべき時期」として挙げている1。その 理由として,児童が小学校という新しい社会に加わって新しい生活に適応していくために は,聞く力の基本が養われなければならないとしている。.  倉澤によると,1年生の聞き方には以下の3つの特徴がある。  !つ目は,態度面において「「話し手のほうをよく見ている習慣ができていないために,. だれかの話の途中でも,すぐ,先生や友達の方へ向きなおってしまう,そして何かをいお うとする」というものである。加えて,紙芝居や童話のような直接可視化できる対象の仲 介により話し手の話に結びつくことができるとしている。.  2つ目は,表現・技能面であるr絵や模型や,現物などを見ながら何かをきく場合は, 内容を理解することが速いが,それらは断片的である。また,物そのものに目を向けてい て,耳は,さっぱりはたらかしていないことが多い」というものである。さらに,話の概 要をつかむことはできず,終わりの場面や印象的なところくらいしか記憶できないことも 挙げている。.  3つ目は,心理面である「友人同士の経験発表をきくときも,想像のまなこを輝かして いるようであって,案外,自分の体験の回想内に遊んでいることが多い」というものであ る。さらに,一心に聞いているように見えて実は,話し手を見ているだけということもあ ると指摘している。.  また2年生について,聞き方の指導は「内容の正しいつかみかたに向けられるべき時期」. であり,児童は学校生活にも慣れ,先生のことば,学習上のことば,学校生活に必要な語 彙などを理解していると述べている。さらに,朗読や芝居のことばなどをきくことも多く 経験したので,それらへの習慣はできているとしている2。.  倉澤によると,2年生の聞き方は以下の3つの特徴がある。  1つ目は,態度面において「さわがずに静かにきくとか,自分勝手におしゃべりしない ことなどは,習慣づけられている。けれども,席を立ったり,姿勢をくずしたりする子も まだある」というものである。.  2つ目は,表現・技能面である「紙芝居や,ごっこあそびなどのときなどは,そのあら 1倉澤栄吉『倉澤栄吉国語教育全集10話しことばによる人間形成』角」l1書店,1989, pp.301−302 2同上書,pp.302・303.                    14.

(18) すじを大体あやまりなくつかむことができる。物語の放送なども,場面の変化がはげしく なけれぱ,大体まちがいなくつかむことができる。話中の人物でよい人と悪い人などをは っきりききわけることもできるようになっている」というものである。.  3つ目は,心理面である「簡単な伝言などはまちがいなくできる。給食調理場や,上級 生の教室へなどのお使いができる」というものである。.  以上のように,2年生の聞き方の特徴は,1年生の聞き方と比較するとわかるように, 1年生の間に,1年生に求められる聞き方が児童に身に付いていることを踏まえて述べら れているものである。しかし,すべての児童にそれができるとは言いきることはできない ため,たとえ2年生であっても1年生に求められる聞き方が身についていないのであれば, その児童に合った指導を行う必要性があると考えられる。.  以上1,2年生の聞き方の特徴から,低学年では,まず態度面について聞き方の姿勢や きまりをつくるといった聞くための準備の指導が必要である。続いて,1,2年生なりの 聞いたことの内容理解のための聞き方の指導,さらに話し手を意識して聞くための聞き方 指導をしていくべきであるということが明らかになった。特に倉澤が知的な要因として述 べる表現・技能面では,まだ経験の少ない低学年には,具体的であったりイメージしやす くなったりする手立てを準備することや,話を聞くことに集中できる手立てによって,話 の内容が理解しやすくなるということも明らかになった。.  聞き方の指導の中でも特に態度面への指導は,第1節で述べてきたように「静かに聞き なさい」,「相手を見て聞きなさい」というように行われてきている一方で,聞き方のうち. の表現・技能面や心理面のような,聞き手の内面における聞き方への指導は少ない。特に 低学年を対象にそのような指導をしている先行実践例はとりわけ少ない。.  森久保(1996)は,自身の提唱した4つの聞き方と倉澤が挙げたような低学年の聞き方 の特徴を踏まえて,低学年における4つの聞き方を具体的な姿として表3のように提案し ている1。. (3)聞くための意識   話すことは一人でもできるが,聞くことは音や声が周りになくては成立しない。.  高橋(1998)によると,人が話を聞くときには対事意識,対他意識,対自意識という3 つの意識が働く2。高橋によると,対事意識とは話の内容の興味深さに引き込まれて生まれ るものである。また,対他意識とは話し手がどのような話をするのかという期待からくる 意識である。この意識がはたらくとき聞き手の「聞く」ことが始まるという。対他意識と は話し手がどのような話をするのかという期待からくる意識である。. やがて,その対自意識または対他意識から対自意識へと意識の方向は変わっていく。高橋 はそのとき聞き手は,聞いた話をどう受け止め,どう考えるべきなのかをなどと考え. 1森久保安美『聞く力を育て生かす国語教室』明治図書,1996,pp.18−19 2高橋俊三・声とことばの会『聴くカを鍛える授業』明治図書,1998,pp.19−22                     15.

(19) 表3 森久保(1996)によるr聞くカのあらまし」に稿者が機能面を書き加えたもの. 聞く態度を 整える. ●話し手を見なが ら聞く. 機能. 第2学年. 第1学年. ●最後まで聞く. 聞くために外面・内面面. ●素直に聞く. 方の態度を整える. ●内容を正しく聞き. 様子や気持ちを想像し. ●ほかのことをし ないで聞く. 確かに 聞き取る. ●内容の大体を聞 き取る. ●お話のおもしろ. 取る. ●順序を考えながら. いところに気づ く. 聞く. ●お話の大事なとこ. き. 自分の考えや思いを加 えず,客観的に正確に聞 く. ろを聞き取る. 聞. 方. て聞く. 詳しく. 聞き分ける. ●場面を思い浮か. ●様子を想像しなが. べながら聞く. ら聞く. 話の構成や展開に着目 し,要旨をっかむように 聞く. 心を寄せて 聞きひたる. 思いを加え 豊かに. ●経験と結びつけ. ●聞いて分かったこ. て聞く. ●簡単な感想や意. 聞き添う. と・おもしろかった. 近づけて夢中になって. とを指摘する. 聞く. ●お話の好きなとこ. 見を持っ. 話の内容と自分自身を. ろを聞き取る. ●知りたいことを進 んで聞く. 話し手の意図も自分の 考えも踏まえて,主体的. に新たな考えを生み出 すように聞く.  め,聞き手の沈黙がいっそう深まり,聞いた話に自分にとっての意味が生み出されると 述べている。.  さらに高橋はこの対自意識がある状態を主体的・創造的に「聴く」ことを始めた状態で あるという。そしてその創造性が高まっていくと,聞き手は話し手に対して,不明なとこ ろを質問したり疑問を投げかけたりして,知りたいこと・聞いてわかりたいことを完成さ せたいと思う,r説く」ことを始めるという。.  つまり,一見同じような行為である聞くことも,聞き手の意識によって聞き方は違って くるということである。r聞く」に比べてr聴く」は話し手と聞き手の心的距離がより近く なり,話や話し手に興味を持つからこそ自分の経験やそれまでに持っている情報と比較し たり,価値を見出したりして必要な情報を求めたりするようになると考えられる。また「説. く」は本来の意味として相手に質問して訊ねるということである。しかし高橋は相手に訊 16.

(20) ねるだけでなく,聞き手が自分白身にrなぜそう言えるのか」rつまりこう言いたいのか」, 「この点はどう考えるのか」などと問いかけながら,話し手が伝えようとしている内容・ 意味を形作っていく聞き方であると述べている。.  つまり,話し手の意図を汲み取るだけでなく,聞き手自身の経験や考え方から話し手の 話をより正確に聞こうとし同時に自分の発想にも話し手の考えを取り入れようとする行為 が高橋の「説く」であるといえよう。  さらに安居総子(2002)は,「聞く」,「聴く」,「説く」の違いを,聞き手の意識の積極. 性の違いで示している1。安居によるとまず,「聞く」は「物音や人の話が耳に届くこと」. をいう。そして,rきこうとしてきくこと」がr聴く」である。つまり,受け身であった聞. き手が能動へと変わるのがr聴く」ということであり,話の内容や話している人の思いや 考えを理解する行為をいう。安居はこのことを「人と関係を持つこと,持とうとすること によって起こる動作」と示している。そして,安居は「説く」は「聴く」よりもさらに積 極性を表した行為であり,話すことが加わるとしている。  以上のように高橋と安居の両者の述べる「聞くこと」には「聞く」,「聴く」,「説く」の. 3段階があり,高橋はr聞く」からr説く」へ移り変わっていく各段階に聞き手の対事意 識,対他意識,対自意識がはたらくとしている。高橋が「聞く」は聞き手が対事意識を持 っており,すでに聞き手が物事への興味を持っている状態を示していることに対し,安居. はr物音や人の話が耳に届くこと」という表現でr聞く」はあくまでも聞き手が話や話し 手に興味を持つきっかけであるように示している。しかし,稿者はこれを高橋または安居 の考えのどちらかに限定せず,「聞く」は話の内容や話し手に興味をもつきっかけとなるこ. と,または興味を持ち始めた状態であるとする。また両者共にr聴く」はr聞く」に比べ て主体的であり,話し手や話の内容を意識している,話し手と聞き手の心的距離が近づい た状態を示している。さらに,「説く」は「聴く」よりもさらに話し手と聞き手の心的距離. が近く,また聞き手が自身に問いかけながら話し手に問うということを繰り返し行う状態 を示している。.  高橋は,「説く」という聞き手が主体的な聞き方になればなるほど,話し手が伝えたかっ. たことは本当に自分(聞き手自身)が受け止めた通りでいいのだろうかという問いが聞き 手には必要となり,そのような自己への問いがなければ聞き取りは独りよがりのものにな りかねないと指摘している2。.  そのようなことからも,対事意識中心で聞くことのきっかけとなる「聞く」から話し手 に興味をもち理解しようとする対他意識中心の「聴く」,やがて理解をしていくために自己. や相手に問うていく対自意識中心の「説く」へとそれぞれの聞き方を育む中で,常に相手 あっての「聞くこと」であることを子どもたちに意識させ,自己中心的な聞き手にならな 1安居総子『「伝えあい学び合い」の時代へ』東洋館出版社,2002,pp.27−28 2高橋俊三・声とことばの会『聴く力を鍛える授業』明治図書,1998,p.21.                    17.

(21) いように指導していくべきである。. (4)聞き方と聞くための意識からみる聞くことの構造化  これまでに述べてきた,聞き方と聞くための意識のモデルを図1のように示した。.  話を聞くときには,まず高橋のいう対事意識,対他意識,対白意識が必要である。何か しらの意識がなければ,それは音や声が耳に届いているだけであり,その音や声の意味を 捉えることはできない。そこで,(3)聞くための意識で述べた「話の内容の興味深さに引 き込まれるときにできる,話の内容への構え」である対事意識または「話し手の魅力に引 かれて主体的・創造的に聞こうとする話し手への構え」である対他意識が生まれる。これ らの意識が生まれ,まず聞く態度を整えることから聞くことを始めなければならない。表. 3からもわかるように,低学年であれば,子どもたち自身も意識しやすい,話し手を見な がら聞くことや他のことをしないで聞くというような外的な態度面と,最後まで聞くとい うような内的な態度面を整える必要がある。なぜならば,(2)低学年の聞き方の特徴でも 述べた通り,低学年の意識は自己中心的で,誰かが話していても,どうしても自分の話を しようとしたり,声を掛けなければ自分に話しかけられていると分かっていなかったりす るからである。つまり,基本的な聞くこととはどのような状態を示すのかを指導する必要 があるだろう。.  態度面が整い,聞くことを意識し始めると,「確かに聞き取る」聞き方をおこなうように なる。「確かに聞き取る」聞き方は,自分の考えや思いを加えず,客観的・鑑賞的に聞くと. いう話の内容そのものを受容する機能を持つ。そして,聞き手が話し手の話すことを素直 に受け入れると,そのことに対して「この話の中心は何だろう」,「この登場人物は何を考. えているのだろう」と客観的に内容を捉えようとする「詳しく聞き分ける」聞き方を始め るようになる。「詳しく聞き分ける」聞き方は様子や気持ちを想像して聞く,自分の考えや. 思いを加えず,客観的に正確に聞くという機能を持つ。この間に聞き手の意識は対事意識 と対他意識の問を行き来すると考えられる。話される内容そのものに対する対事意識と話 し手に興味を持つ対他意識のどちらかが欠けていても,話を聞き続けることはできない。. 対事意識と対他意識の間で,聞き手は正しい内容を確かに聞き取り,その集まった情報を もとにして,さらに詳しく聞き分けようとするのである。この「聞く態度を整える」から 「詳しく聞き分ける」聞き方までの段階を稿者は情報収集の段階であると捉えた。このと きの聞き手の思考や話し手への質問としては,rこのお話には何が出てくるのだろう。」,rど んな出来事があるのだろう。」,「どんな場面なのだろう。」などの話を客観的に聞き,必要. な情報を集めようとするものが出てくると考えられる。.  次に話の要旨や様子を十分に理解した聞き手は,その話の中に自分なりにおもしろさや 魅力的なところを見つけていく「心を寄せて聞き混る」聞き方をするようになる。この聞 き方に至るまでに,「確かに聞き取る」聞き方や「詳しく聞き分ける」聞き方によって客観 18.

(22)               ・・払はOOと。いうとこ.るか.昌OO一走.ど冒・コた 一.                弘はOOがおもしろい。               ・.払はOO一たと患・コでいた.けと,ご.命諸山O.                ○といらところ出ら。oたと考.えま互 〆. ・払1=も似たこζが砺コーたな∴   ooについでも・ゴ・と散見て1目…LL‡赴一. ァIま。。た箏在.旭餉詰一ふ≡  ラな. ’どん蛙火加率τく肋唯. 一・査る1榊{えずユ1!!   卑・醐差. ・どん姐す音こ帥唖一事帥哺. ・・. ∴.        一        一         一        一        一        一        一       素1一. 。一. アの.話Φお・も一レーち・劃まqOかな.              .ノ    町一=串育・ラ.. ■どんな順番τ話が進竈.の一がな. H. ・どんな儲子の坦面出疽. ㊤. ・静か1;しよう. 相手碑よう ・作業在止勒よ.ら. 一対対. .毒1斡世禰奮臨. 他事 意意 識・識.. ・どん臨時ち一吐の問う. \. 対一・. 自 幸し=(周書曲一オ著 ・謝.. ■が1=聞書聰る.     、. 対対 他事 意意. ㌔識誠一. 目.く壷喧在塾生 .ノ. 旨編血生. ㌔. 自弓幸正.. 自己とφす。合化世 健一{一歴記. 1可血1号. 評ム娃円.と{葦書{. 華世…一窄. どんな?.. あな牟は. 図1 聞き方と意識の関連モデル1. どう一で可か{.

(23) 的に聞いていた聞き手はこのr心を寄せて聞き混る」聞き方によって,自分の経験と話し 手の話を結びつけたり,話し手の話に感動を覚えたりするような情的な聞き方を行うよう になる。「心を寄せて聞き混る」とき,そこには対自意識が生まれる。既に述べたように,. 対白意識とは,聞いている自分への構えであり,その意識によって,聞くことへの主体性 や創造性がさらに深まっていく意識である。このときは聞き手がこれまでの自己の経験を 通して話を聞く段階であるため,聞き手は「私のときはOOだったけど,このお話は違う。」, 「このお話のおもしろさは○Oなところだ。」などと思考する。.  そして,最終的には「思いを加えて豊かに聞き添う」聞き方ができるようになる。この 聞き方は話し手の意図も自分の考えも踏まえて,主体的に新たな考えを生み出すように聞 く聞き方である。「確かに聞き取る」,「詳しく聞き分ける」という客観的な聞き方から,や. がて「心を寄せて聞き混る」という自分の思いや経験をもとに聞く情的な聞き方になる。. 最終的にそれら3つの聞き方をふまえた上で,聞き手は話し手の話をもとにできた自分自 身の感想や意見,新たな考えを持つことができるようになる。よって,「思いを加えて豊か. に聞き添う」聞き方は,対自意識によって自分の経験と照らし合わせたり,話に感動した りしたときに生まれた新たな疑問を解決するためや,聞き手自身の意見や話の捉え方が,. 話し手の話や患いと一致しているのかどうかを確認するための聞き方であるといえる。そ れらの解決や確認のためには,再び対事意識や対他意識を持って客観的に聞くことが必要 となってくる。したがっ一で,「心を寄せて聞き混る」聞き方や「思いを加えて豊かに聞き添. う」聞き方をするとき,聞き手の意識は対事,対他意識と対自意識の間を行き来する。こ. のとき聞き手はr私はOOだと考えるが,あなたはどうですか?」と言った質問や,r私は O○という考えだが,なぜ話し手は○Oという考えなのだろう?」という自己主張と他者 理解を意識した思考をするようになる。.  図1の聞き方と聞くための意識は,段階的に,まず対事意識や対他意識が働くことによ って「確かに聞き取る」聞き方から始まり,対自意識を経て「思いを加えて豊かに聞き添. う」聞き方に行き着くというように構造化した。図1は,森久保らの提唱する聞き方の段 階と,高橋の提唱する聞く意識の働き方の段階をもとに稿者が作成したものであり,理想 的な聞き方の育ち方である。.  しかし,いっもどの児童も図1のような順番で聞くことへの意識を持ち,「確かに聞き取. る」聞き方から「思いを加えて豊かに聞き添う」ことができるだろうか。第2章でも既に 述べたように,特に低学年の児童はその聞き方が自己中心的であるという特徴がある。よ って聞き方と意識の順序として,まず対自意識をもち,「心を寄せて聞き混る」,自分の経. 験や思いから話を聞こうとすることもあると考える。そこから,話の内容や話し手のこと をさらに知りたいと思うことで「思いを加えて豊かに聞き添う」聞き方をするようになる。. しかし,この対自意識ばかりでは,話の内容が十分に聞き取れていないがために,情報が 不足したり,疑問点が出てきたりする。そこで,情報の不足を補ったり,疑問点を解決し. 20.

(24) たりするために,対事意識や対他意識を働かせて,r確かに聞き取る」聞き方や「詳しく聞 き分ける」聞き方によって聞き手は情報収集をおこなう。以上のような聞き方と聞くため. の意識を構造化したものが以下の図2である。聞く態度はどの聞く意識が働いていようと 次かしてはならないことであるため,対白意識から対事意識,対他意識へ意識が向かうと きも,またその逆のときも常に必要なものとして,それぞれの聞き方を覆うように図に示 した。. 聞く態度を整える. 心を寄せて     思いを加えて 聞き漫る     豊かに聞き添う. 対事意識. 対白意識. 対他意識. 詳しく    確かに 聞き分ける    聞き取る. 聞く態度を整える. 図2 聞き方と意言哉の関連モデル2.  理想的な聞き方としては,図1のような,対事意識や対他意識を持つことから「確かに 聞き取る」聞き方が始まり,やがて対白意識を持つことで「思いを加えて豊かに聞き添う」. 聞き方に終着していくことが挙げられる。しかし,いつも図1のような聞き方でなくては ならないと聞き方を狭義に捉えるのではなく,図2のような聞き方を認めることも聞き方 の指導にあっていいであろう。つまり,対自意識を持つことで,自分の経験や興味がその 中心である「心を寄せて聞き混る」聞き方に始まったとしても,それがやがて対事意識や 対他意識を持って客観的な聞き方ができるように指導することが,教師の聞き方の指導の 一つの役割であってもいいと稿者は考える。. 21.

(25)  一見受け身であると捉えられ,話すことの指導に隠れてきた聞き方の指導は,聞き方に はどういうものであるのかが認識され難かったことから,目に見える外的な態度面への指 導がその中心であった。.  しかし以上のように,聞くための意識と聞き方を構造化したことから,聞くことは,決 して受け身ではなく,聞き手が目的に合わせて聞くための意識を働かせることで,聞き方 に変化をもたらすことができるということが明らかになった。野地潤家(1972)は,どう いう聞解力(きちんとききとる力)を習得しているかは,聞くことの基礎技能であり,ど う聞き分け,どう味わっているかは,聞くことの中核技能であり,どう聞き,何を生み  出しているかは,聞くことの創造として,聞くことの究極の技術と述べているがこの言 葉が,一言に聞くことと言ってもその段階によって聞き方が違ってくることをよく示して いると同時に聞くことの指導の重要性を表している1。.  教師は聞くことの指導で使うrよくききなさい」,rしっかり聞きなさい」という表現だ けではなく,その場面や子どもたちの実態に合わせて,児童が客観的な聞き方も主体的な 聞き方もできるように聞き方の指導をおこなわなくてはならないのである。. 1野地潤家「学習力・生活力・創造力としての聞くことの技能の演練」『教育科学国語教育』 NO.161,明治図書,1972,pp.9−12.                    22.

参照

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