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物質科学における倫理的卓越性を目指して

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Academic year: 2021

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炭 素  TANSO 2021[No.297]80-81

物質科学における倫理的卓越性を

目指して

大阪工業大学 工学部環境工学科 機能性材料研究室

1. 研究室の概要

会員の皆様は幣学をご存じない方も多いかと思われますの で,はじめに幣学の簡単な紹介をいたします。大阪工業大学は 学校法人常翔学園の中核をなす組織です。1922年に本庄京三郎 らによって創設された関西工学専修学校がそもそもの始まりで す。実は同じ学園に属する摂南大学の「摂南」が先に使われて おりましたが1949年に「大阪工業大学」と法人名を改称してお ります。 大阪工業大学は大阪市旭区大宮に拠点を置き8学科から成る 工学部,梅田に2学科から成るロボティクス&デザイン工学科, 枚方に位置し4学科から成る情報科学部,大宮の知的財産学部 から構成されております。私たちの研究室は大宮キャンパスに ある工学部の環境工学科に属しております。梅田から約 5 km というアクセスの良さから多くの学生さんは自宅から通学して おります。 本研究室は筆者が2018年4月に着任し立ち上げた歴史の浅い 研究室です。大宮キャンパスの東端にある治外法権的な建屋に 入ることになりました。実験室としていただいた部屋は会議室 として使用されていたため床は綺麗ではありましたが付帯設備 が何もない状況でした。着任前に電気容量,ガス,水道につい て細かく聞かれ詳細を回答したのは一体何のためだったのかと 今でも思い出します。何もない部屋に持参したPC 1台から始ま りましたが,一人の空間は意外に落ち着きました。独自の進化 を遂げた学内稟議地獄,ほとんど談合の電気工事とそれに伴う 複数回の停電,荷物の搬入トラブル等,日々発生する諸事は尽 きませんでしたが腐らず怒らず明るく過ごすことに注力いたし ました。学生さんは関西人らしく明るく元気な方が多く賑やか です。幣学? 幣学科? において私の研究室は論文紹介,教 科書の輪読,研究報告会を行う奇異な研究室となっており,こ のまま何が何でも継続してやろうと思っております。 図 1 は 2019 年度に学生さん達と塩田温泉と世界遺産姫路城 に研究室旅行に行った際のものです。他の研究室にも声を掛け ましたが全て断られ我々のみで行ってまいりました。夜遅くの 大浴場は貸し切り状態で節度を保って大いに楽しみました。 2020 年度は 7 名の 4 回生を迎え大学院生 1 名と賑々しく研究を 行う予定でしたが数度の大学閉鎖,コロナ感染拡大防止に伴う 入構制限等で教育活動だけでなく研究活動も大きく制限されま した。後期に入り研究活動を再開することができ,本原稿を執 筆中の現在も例年以上にバタバタとしております。

2. 研究内容

これまで主に分子性固体を対象とした物性物理分野におい て,超伝導,低次元磁性,金属絶縁体転移,極端条件下の物性 に興味を持っておりました1, 2)。大阪工業大学に着任後は環境 工学科に属していることから純粋な固体物理ではなく,環境と いうキーワードと物性の接点を探るべく研究の方向性を模索し ているところです。近年地球環境保全の取り組みが世界的規模 で急加速していることを受けて,筆者らしくなく? カーボン ゼロとSDGsを意識した研究を始めております。 2.1 分子性固体電解質 環境工学に来て何を始めようかと思った時に真っ先に思い付 いたのがポストリチウムイオン全固体電池に関する研究でし た。温室効果ガス削減→エネルギー効率の向上→電気駆動化の 推進→次世代電池? となった次第です。論文を読む限り固体 電解質の合成は自分でもできそうで,測定も最先端で競わなけ ればそれ程難しくはない,と考えたからです。素人の考えは恐 ろしいものです。当初学生さんからの強い要望もあり無機系固 体電界質の研究に手を出しましたが,現在は自分の強みを活か すため分子性固体に注目しております。現在取り組んでいるイ オン種としましてはマグネシム,ナトリウム,およびカリウム です。これらの超? イオン伝導性を目指した分子性固体電解 質の研究を進めています。ご専門の先生方には到底及ばない内 容で恥ずかしい限りですが,いつか炭素材料学会で凡庸な成果 発表をさせていただければと思います。 2.2 分子性水素吸蔵体 筆者は環境工学科のエネルギー分野に配置されております。 時流もあり再生可能エネルギーや新エネルギー関連に少しでも 絡みたいと考えておりました。筆者はエネルギーを創出するこ とができる物質群の開発に関するアイデアを持ち得ません。エ 図1 研究室旅行の様子(筆者は左最奥)

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2021[No.297] 物質科学における倫理的卓越性を目指して ネルギー変換,特に熱電変換に関しては学生の頃から熱測定の 難しさを知っているため手を出しません。そこで分子性固体電 解質の横展開という意味で水素吸蔵能の評価を始めました。専 用の測定装置を持っておらず上長からいただいた検知管を使っ て微妙な評価を行っております。均質で大量の試料を準備でき ないのが難点ですがいつか専用の装置で測定できればと願って おります。 2.3 体内埋め込み型デバイス 人工心臓に代表される体内埋め込み型デバイスの開発はまだ まだ発展途上と言えます。海外製品は現地人の体格に合わせた つくりになっており日本人や特に小児向けではありません。前 職の際,幸運にも知り合うことができた友人に誘われ炭素材料 を体内埋め込み型デバイスに活かす取り組みを少しずつ続けて おります。筆者を知ってくださっている先生方は筆者のこの取 り組みを意外に思われるかもしれません。 2.4 「純粋に理学である」物性探究 昔取った杵柄が急になくなるものではなく,確かめたいこと 挑戦したいことが思いのほか多い事に気づかされます。僭越な がら「学問は我儘でよい」と思っております。研究成果の社会 的意義や還元を考えず,時間的,環境的制約を言い訳にするこ となく分子性物質における超伝導,磁性に関する研究を細々と 続けております。あまり自身の興味をぶっちぎりますと学生さ んたちが付いてきてくれませんので時折様子を見ながら,時に は個として合成から測定までを行っております。

3. 研究設備

大阪工業大学はまだまだ研究大学として位置付けられる大学 ではありません。学部や学科で保有する共通設備はなく,精密 な測定を行うためには自前で用意するか外部共同利用施設を利 用する必要があります。現在研究室内にはグローブボックス, 真空蒸着機,冷凍機,赤外分光装置,電気化学測定装置,充放 電装置,インピーダンスアナライザ,各種計測器,電気炉,遠 心分離機,ガラス真空ライン,油圧プレス,卓上型旋盤とフラ イス盤,各種自作冶具等があり何とか試料作製はできる環境に あります(図2,3)。実験室が極めて狭いため物置化している ことが否めず電気抵抗や赤外分光の測定,および真空蒸着の際 は物を除けて空間を作る必要があります。ターボ分子ポンプや チラーの梱包が解かれていないのは稼働させる場所がないとご 理解下さい。近々納品されるX線回折装置をどこに設置するか が直近の大きな課題です。

4. おわりに

環境工学科では学ぶことも多いです。これまで全く興味がな かった地方の浄水設備や上下水の仕組み,廃棄物の燃焼や資源 循環に関して,知り,考える機会を得ました。炭素材料学会の 会員に加えていただき,さらに岡山大学の後藤先生にお声掛け いただき次世代の会にも参加させていただいた時と同様に新し い出会いにあふれております。筆者は最先端の研究をする立場 にはありませんが,重見天日となり物質科学の倫理的卓越性を 目指して自身の強みを活かしたマニアックな研究を続けていく 所存です。先生方のご研究の役に立てることはありませんが, 引き続き炭素材料学会の末席に加えていただけますと幸甚で す。今後とも炭素材料学会の会員の皆様にはご指導ご鞭撻を賜 れますよう何卒よろしくお願い申し上げます。私立大学の現状 や筆者の近況にご興味のある方はぜひ幣学,幣研究室にお越し ください。学内宿泊施設を予約してお待ち申し上げておりま す。

文 献

1) S. Heguri, TANSO 2018 [No.284] 151-163 [in Japanese].

2) S. Heguri, Keynote Lecture, 46th Annual Meeting of the Carbon Society

of Japan, Nov. 28-30, 2019, Okayama University.

連絡先: 〒535-8585 大阪府大阪市旭区大宮5-16-1 大阪工業大学工学部環境工学科 平郡 諭 TEL: 06-6954-4375 E-mail: [email protected] URL: http://www.oit.ac.jp/env/ 図3 一部物置と化している実験室 図2 空間的ゆとりのない実験室

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