気象情報のサービスプロセスにおける
官民の役割に関する研究
大西正光
1・竹之内健介
2・本間基寛
3・金井昌信
4 1京都大学 防災研究所 巨大災害研究センター([email protected]) 2京都大学 防災研究所 気象・水象災害研究部門([email protected]) 3一般財団法人日本気象協会 事業本部防災ソリューション事業部([email protected]) 4群馬大学大学院理工学府 広域首都圏防災研究センター([email protected])和文要約
本研究では、気象情報のサービスプロセスにおける官と民の役割について規範的考察を行う。ま ず、気象情報が生産され利用されるまでのサービスプロセスを経済学及び社会学的枠組みに依拠し て構造化を行う。その上で、わが国の気象情報サービスプロセスの類型化を行う。さらに、気象情 報サービスのプロセスにおける中間的生産物を官と民のどちらが供給すべきかと言う視点に立って、 官と民の役割分担を規範的に考察する。本研究の主要な結論として、1) 官、すなわち気象庁が提供 する情報は、コモディティ化された情報とならざるを得ない。官が提供する防災気象情報は、低コ ンテクスト情報であり、情報の受け手の意思決定に結びつきにくい。2) 高コンテクスト情報は、民 間による市場ベースでの供給が可能であることを指摘している。また、そのための条件として、情 報提供者である専門家にコミュニケーション能力が備わっていること、情報の潜在的利用者自身が、 自らが潜在的に災害リスクに晒されており、かつ平常時から情報提供者である専門家と信頼関係を 築いておく価値を認識することを指摘している。 キーワード:気象情報、サービスプロセス、意思決定フレーム、ガバナンス 1.はじめに 近年、コンビニにおける商品管理やスポーツイベント 開催判断など、ある特定の判断を行うことを目的として 気象情報を提供するサービスが拡大しており、気象情報 技術の高度化とともに、気象情報サービスの高度化が進 んでいる。こうした気象情報技術の発展は、気象情報提 供サービスの多様化のための必要条件ではあるが、必ず しも十分条件ではない。気象情報サービスの多様化が起 こるためには、気象情報技術の発展をチャンスと認識し、 より価値のある気象情報を提供しようとするインセンテ ィブをもつイノベーターとも呼ぶべきプレイヤーの存在 が不可欠である。 すでに、気象情報「技術」の高度化に関する研究は膨 大な蓄積がある。こうした技術志向のイノベーションを 目的とした研究アプローチが必要であることは言うまで もない。一方、より価値の高い気象情報「サービス」が 社会に提供されるためには、価値の高い気象情報が自発 的に生み出されるような社会システムを志向した研究ア プローチも技術志向と同様に重要である。しかし、災害 情報学の分野において、マクロ的視点に立った社会的シ ステムのあり方についての議論は、まだ少ない。 図-1 によれば、特に近年、民間気象会社が果たす役割 が拡大している。多様化する気象情報提供サービスの背 景には、民間気象会社がイノベーターとして機能してい る可能性が示唆される。また、2017 年には、気象ビジネ ス推進コンソーシアムが立ち上がっている。一方、気象 情報提供は、従来から、気象庁を所轄官庁として規制が 必要であると考えられてきた分野でもあり、官と民の役 割境界が変化しつつある中で、その境界をどう決めるべ きかについての原理原則論が必ずしも明らかになってい る訳ではない。本研究では、民によるイノベーションに 対するインセンティブを引き出しつつ、官と民の適切な 役割分担を通じて、価値のある気象情報が提供されるよ うな社会的制度、すなわち、気象情報ガバナンスのあり方について規範的考察を試みたい。 以下、2.では、わが国における気象情報サービスが提 供される社会的な仕組みについて、特に官と民の役割と いう視点で整理して概観する。3.では、気象情報サービ スの多様性を整理するための枠組みとして、気象情報サ ービスプロセスモデルを示す。その上で、多様化する気 象情報サービスの提供方法を類型化する。4.では、規範 的観点から気象情報のサービスプロセスにおける官と民 の役割、責任に関する規範的考察とわが国における各気 象情報サービス提供類型の規範的評価を試みる。また、 平常時に提供される気象情報と、災害時に提供される防 災気象情報の差異について考察し、民間事業者が果たし うる役割を論じる。 なお、本稿で用いる気象情報という用語は、気象庁が 定義する「警報や注意報に先立って注意を呼びかけたり、 警報や注意報の内容を補足するための発表(気象庁HP)」 といった厳密な意味ではなく、気象に関するあらゆる次 元の情報を包括した情報一般を指すものとして用いる。 2.わが国における官民の気象情報業務 (1)気象庁による気象業務 日本における気象情報サービスについては、長年、国 の行政機関である気象庁を中心として行われてきた。官 による気象情報サービスは気象業務法に定められている が、次節で示すように、法律改正を通じて、その一部が 民間に対しても許可されてきた。本節では、気象情報ガ バナンスを考える上で、まず気象庁により気象情報サー ビスがどのように行われており、民間事業者のサービス とどのような関係にあるのか、その現状を確認する。 気象情報サービスの大まかな流れとして、気象観測デ ータの収集、予測モデルの実行、予測結果の作成の手順 で行われる。まず気象情報を作成する上で基本となる気 象状況を把握するために「気象観測データ」が収集され る。次に、その観測データを用いて、気象学の知識を基 に開発された気象のシミュレーションモデル「予測モデ ル」(解析モデルを含む)を動かすこととなる。さらに、 その予測モデルの「予測結果」を基に気象情報の作成が 行われる。最後に、それがサービスとして利用者に伝達 される。 「気象観測データ」としては、アメダスなどの地上観 測やレーダーなどの遠隔観測、ひまわりなどによる衛星 観測などが行われているが、いずれも設置や運用にかか るコストが高く、一部局所的に独自の観測を行っている 民間事業者も存在するが、世界的にも国の機関により行 われていることが多い。 また「予測モデル」も同様に、専門的な気象学に対す る知識とそれをスーパーコンピュータシステム上で 24 時間運用する技術力が必要であるため、「観測データ」同 様、国の機関による開発や運用が行われる場合が多い。 ただし、「予測モデル」については、研究機関等が開発し たモデルを自由に利用できる場合もあるなど、民間事業 者が、事業の中で活用している場合も見られる。 「予測結果」を利用した気象情報の作成について、気 象庁は全国を網羅した一般的な情報作成を担っており、 様々なメディアを通して、社会に提供している。なお現 在では、次節で示すように、許可のもと民間事業者も情 報作成を行うことも可能となっている。ただし、防災気 象情報については、例外とされており、警報については、 1993 年に予報業務許可制度の導入時において、気象業務 法第23 条において「気象庁以外の者は、気象、地震動、 火山現象、津波、高潮、波浪及び洪水の警報をしてはな らない。ただし、政令で定める場合は、この限りでない。」 と明記されるなど、民間による警報発令を規制している。 このように防災気象情報のあり方は、その社会的責任の 観点からも規制がかけられた状況にあり、度々議論に挙 がっている(国会運輸委員会(1993)や気象庁(2009) など)。 一方で、気象庁は情報の利活用を促進するという目的 から、情報の応用利用や情報消費の拡充にも力を入れて おり、民間による気象情報サービスの拡充に向けた技術 的な発展にも努めている。例えば、従来情報毎に異なっ ていたデータ形式を統一するために、2007 年に気象情報 部外提供推進委員会の下、気象情報提供形式検討部会を 立ち上げている。また、2009 年には気象庁防災情報 XML フォーマット」(Ver.1.0)の仕様を策定し(杉山ら, 2012)、 本格的に汎用的なXML 形式での配信を開始している。 このような気象情報にデータ形式の汎用化および一元化 によって、気象情報の社会利用の促進を図っている。気 象ビジネスの活性化という点からは、2017 年に、基盤的 気象データのオープン化・高度化を進めるとともに、産 学官が連携して気象ビジネスを推進するために、気象ビ ジネス推進コンソーシアムの立ち上げを支援し、気象情 報の活用に関する議論や企業間マッチング等を通じて、 官民合同で気象情報サービスの社会における拡充を図っ 図-1 気象情報提供事業の年間総売上と事業者数の推移 (事業者数は各年度末現在)(気象庁,2012) 0 50 100 150 200 250 300 350 19 86 19 88 19 90 19 92 19 94 19 96 19 98 20 00 20 02 20 04 20 06 20 08 20 10 0 20 40 60 80 100 120 年度総売上高( 億円) 年度 事業者数 総売上高(億円) 事業者数
ている。 以上のように、気象庁は、気象情報の一次生産者とし ての役割を果たしており、また、その利活用促進に向け た取組を進めている。そうした中、産官学連携に向けた 取組も進んでおり、気象庁のみではなく、民間事業者の 役割に期待する方向に向かっている。一方で、官民の役 割分担についての原理原則は必ずしも明らかではなく、 民間事業者を活用するための指針が欠如している。本稿 では、今後、気象情報サービス分野において、民間事業 者がいかなる役割を果たしうるのか、これまで気象庁が 主導的に行ってきた業務も含めて包括的に整理し、官民 の役割のあり方について、規範的考察を試みる。 (2)民間による気象業務 気象業務における官民境界は、1952 年に制定された気 象業務法がその基礎となっている。当初は、「特定利用者 向け予報」と気象庁が発表した予報を一般向けに解説す る「解説予報」が予報業務としての許可対象であった(羽 鳥,2016)。1993 年の気象業務法改正では、気象予報士制 度が新たに創設された。1995 年 5 月には、予報業務許可 事業者による市町村程度の範囲の局地を対象とした一般 向けの予報(一般向け予報)1)が許可され、解説予報は許 可対象ではなく自由化された(気象業務支援センター, 2015)。また、2007 年の法改正では緊急地震速報の導入に 伴い、地震動に関する予報業務にも許可制度が導入され た。このように、民間気象会社の業務範囲は時代の要請 に応じて変化しており、1980 年代までは 1 桁台だった民 間予報事業者は1990 年代以降増加し、現在は約 110 社の 民間予報事業者が存在する(図-1)。 民間事業者は、一般財団法人気象業務支援センターを 通じて気象庁が保有する各種気象データを有償で取得し、 さらには独自の観測データや他国の気象機関からも気象 データを取得することで、高精度化や高解像度化などの 加工を行って付加価値の高い気象情報を利用者へ販売し 収益を上げている。例えば、気象予測の高度化の例とし てポイント予報がある。気象庁は「地域時系列予報」と して一次細分区域単位で3 時間単位の天気や気温、風の 予測を提供しているが、ある民間気象会社では市区町村 単位で1 時間単位の天気、気温、風、降水量をホームペ ージやアプリを通じて一般向けに提供している。 民間による気象情報サービスでは、情報のコンテンツ の充実化、提供地点数の増加、時間解像度の詳細化など 顧客ニーズに応え、サービス対価を受け取っている。民 間気象会社によるビジネスモデルのパターンとしては大 きく分けて、①企業や自治体、公的機関の内部での情報 利用を目的として情報を提供する「BtoB モデル」、②民 間気象会社がアプリや Web サイト等を通じて一般市民 向けに直接情報を提供する「BtoC モデル」、③報道機関 やインターネット会社、自治体等を通じて間接的に一般 市民向けに情報が提供される「BtoBtoC モデル」の 3 つ がある。なお、「B」は business の頭文字であり、一般に 企業を指す。一方、「C」は customer の頭文字であり、一 般消費者を指す。すなわち、BtoB モデルは、企業間取引、 BtoC モデルは、企業と一般消費者の取引を、BtoBtoC は 企業が別の企業を介して行う取引を意味する。 ①BtoB モデル 民間事業者は、道路、鉄道、航空、船舶といった交通 インフラを管理または運行(運航)する事業者や、自治 体、製造業、レジャー施設、小売業といった幅広い事業 者に向けて、その事業者内での防災対応や運行管理、リ スクマネジメントへの利用を前提として、特定の利用者 に供するオーダーメイドの高付加価値な気象情報を提供 している。この特定の利用者に供する気象情報は、気象 等の予報許可業務における「特定向け予報」として位置 づけられており、民間事業者は企業(利用者)と契約等 の関係を結び、その契約した利用者に限って気象予報を 提供することができる。特定向けの気象情報を提供する にあたっては、その情報の利用者が予報の内容や利用上 の留意点等について必要な知識を有していることを前提 としており、民間事業者は気象情報をデータ伝送するだ けにとどまらず、予報にはどのような誤差を伴うのか、 その精度を元にどのような活用をすべきかといったコン サルティングを行い、利用者が提供される気象情報を理 解することが必要である。すなわち、民間事業者による 気象ビジネスは、情報提供者と利用者の双方によるサー ビスの「共同生産」によって成り立つと言える。そして、 これらの情報提供やコンサルティングといったサービス にかかるコストや利活用によって生まれた付加価値の一 部を対価として受け取ることでビジネス化している。 ②BtoC モデル コンシューマ向けの気象情報提供事業では、web サイ トやアプリなどを通じて気象情報を配信する事業を展開 している(WNI 有料会員向けのアプリ、JWA tenki.jp web
サイトやアプリ)。一般向け予報と異なり、予測・提供可 能な気象情報が制限されている。例えば、台風進路予報 について、気象庁とは異なる独自の予報を発表すること はできない。ただし、コンシューマ向けの情報提供であ っても、ホームページやアプリを通じた会員向けであれ ば「特定利用者向け」の情報提供と位置づけ、一般向け 予報では許可されていない気象情報を提供することがで きる。 一方、前項で示したように気象庁もweb サイトを通じ た気象庁の観測データや予報データを一般向けに発信し ており、民間気象会社が特定利用者向けに有償で提供し ているような気象情報と類似のコンテンツが一般向け予 報として気象庁web サイトから無償で提供されることも ある(例えば、危険度分布情報)。 ③BtoBtoC モデル ②の BtoC とは異なり、民間気象会社の直接の契約先は 公的機関や事業者となるが、これらの機関を通じて一般
市民向けに気象に関する各種情報がされている。例えば、 民間気象会社から自治体へ大雨情報や警報に関する情報 が提供され、それを踏まえて自治体から市民向けにアラ ートメールの配信やweb サイトでの情報提供などが行わ れている。また、報道機関やインターネット会社(Yahoo! など)に対しても有償で気象情報が提供され、そこから 一般市民向けに情報提供されるケースもある。輸送イン フラ管理者は、道の駅や駅構内または電車内のサイネー ジを通じた一般市民向けの気象情報提供を行っている。 民間気象会社からの直接の契約先、即ち気象情報サー ビス先が特定利用者である事業者や公的機関であっても、 そこから不特定多数の個人・法人へ気象情報が提供され る場合は「一般市民向け予報」と同様の位置づけとなり、 提供される気象情報の内容は制限を受けることとなる。 また、BtoBtoC モデルの場合、民間気象会社だけでな く、そこから情報提供を受けて二次配信を行う自治体や インターネット会社等も情報消費プロセスに関与するこ とになる。この場合、必ずしも予報許可事業者として認 可されている必要はない。 3.気象情報のサービスプロセス (1)気象情報サービスのサプライチェーン 前章では、わが国における気象情報サービス提供にお ける官民の役割に関する現状を考察した。以下では、気 象情報のサービスの構造を経済学的側面から分析するた め、気象情報が生産され、消費すなわち利用されるまで のプロセスをサプライチェーンの観点から図-2 のよう に概念化する。以下、サプライチェーンにおける中間的 生産物について説明しておこう。 a) 気象観測データの収集 気象観測データは、気象予測モデルの入力値となる変 数の集まりである。気象予測に用いられるデータとして、 宇宙衛星観測データ、地上機器観測データなどが存在す る。なお、不特定多数の利用を想定した観測を行う場合 は、質を確保するために、気象業務法において定められ た方法によって測定された公式のものでなければならな いとされている。経済学的側面を見れば、気象観測デー タの収集には、観測衛星を含む多くの観測機器施設への 固定的投資が必要となる。 b) 予測モデルの開発と予測結果の出力 予測結果を得るためには、観測された気象データを入 力値として、予測結果を出力するような、予測モデルの 開発が必要となる。予測モデルを動かすためには、当該 モデルで要求される観測データが必要となり、その意味 で、気象観測データと予測モデルは補完的である。した がって、予測モデルの開発は、どのような気象観測デー タが入手できるかを考慮する必要があり、同時に気象観 測データも、予測モデルに利用されるものを収集する必 要があり、互いに調整が必要となる。また、経済学的側 面から見れば、気象観測データ収集同様に、予測モデル の開発にも、膨大な R&D の固定的な投資費用が必要と なる。 c) 言語/記号化された予測情報 予測モデルによって得られた出力データは、将来時点 における気象状態を規定する数値の集合である。予測モ デルの出力結果そのままでは、一定の知識がないと理解 が難しい。 コンピューターによって計算された予測モデルの出力 結果は、人間が直感的に認識できるように言語化や記号 化、図化される必要がある。例えば、天気予報の晴れマ ークや雨マークなどの記号がそれに当たる。以下では、 言語化、図化も含めて、便宜上、記号化と呼ぶ。 記号化の仕方は、お天気マーク、降水確率といった代 表的なものから、メッシュごとの天気の時間的推移を地 図上で示す方法など多様である。記号化は情報提供者に よって行われるが、記号化された情報は、情報の受け手 に伝達され、意思決定を促す予測情報となる。したがっ て、図-2 に示すように、言語/記号化された予測情報は、 情報生産プロセスの最終アウトプットであると同時に、 情報消費プロセスのインプットであり、生産と消費を媒 介する重要な役割を果たす。ただし、言語/記号化された 予測情報が、情報の受け手の行動、意思決定に寄与する ためには、次に説明する意思決定フレームが必要となる。 d) 意思決定フレーム 気象情報は、情報の受け手が、その情報の意味を理解 し、何らかの意思決定を通じて、望ましい帰結を得るた めの判断材料として用いられてはじめて価値を生む。す なわち、情報の受け手が、情報を意思決定に結びつける ことを可能にする概念的装置を本研究では「意思決定フ レーム」と呼ぶ2)。 図-2 気象情報サービスのサプライチェーン
人は、日々、さまざまな意思決定に迫られる。気象情 報に関わる意思決定だけでも、明日の服装や傘を持参す るか、休日はアウトドアで楽しむのか等、枚挙に暇がな い。人間は、意思決定の帰結に影響を及ぼす諸々の要素 を考慮した上で判断を行う。例えば、標高の高い山に登 る場合には、平地の天気予報の情報だけでは不十分であ ろう。平地の気温を参考にして、高地の気温を推論した り、近年であれば、登山者向けに出されている天気予報 を参考にしたりするであろう。このように、人間は、自 身が直面していると認識している状況において、関連性 のある情報の意味を理解し、状況を規定する諸々の事柄 を適切に関連づけて、意思決定フレームを形成する 3)。 意思決定フレームは、直面した状況において、考慮すべ き事柄の集合を励起し、それらの事柄に関する情報を処 理する概念的装置であると理解できる。もっと平たくい えば、意思決定者は、意思決定フレームという「レンズ」 を通じて、直面した状況を認識、理解し、判断、行動す る。こうしたレンズとしての意思決定フレームは、意思 決定者がこれまでの学習や経験を通じて獲得してきた知 識によって形成される。したがって、情報の送り手が、 何らかの意味を込めて提供した情報であっても、情報の 受け手が、その意味を理解するための意思決定フレーム を持っていなければ、行動に結びつかない。そのため、 図-2 に示すように、意思決定フレームと言語/記号化され た予測情報の間にも補完性が存在し、情報の送り手と受 け手の間で、意思決定フレームの調整、すりあわせが必 要となる。 (2)関連性の普遍度 一般にテレビや新聞など不特定多数に向けて発信され る天気予報の情報は、洗濯をいつするのか、どのような 服装で出かけるべきか、傘を持参すべきなのか等、多く の人々が日常生活の中で直面するさまざまな意思決定に 共通して関連する情報である。本稿では、このような情 報を関連性の普遍度が高い情報と呼ぶ。関連性の普遍度 が高い情報は、コモディティ的である。コモディティと は、ライバルとの差別化が難しい財やサービスを意味し、 その結果、コモディティの消費者の選択基準が価格だけ となり、供給する企業にとって利益の確保が難しくなる。 そのため、民間事業者が、関連性の普遍度が高い情報を 供給する場合、利益を生み出すのは容易ではない。 将来の天気予測を示すだけの最もプリミティブな天気 予報は、任意のコンテクストで利用可能な情報であり、 最も関連性の普遍度が高く、最もコモディティ的である。 これに対して、明日、洗濯をするかどうかの判断に用い られることを意図した洗濯指数のように、ある特定のコ ンテクストにおける意思決定を支援する意図を持つ気象 情報もある。このように、社会一般に広く存在する意思 決定に関連した情報も、コンテクストとの関連性の普遍 度が高い情報である。コンテクストとの関連性の普遍度 が高い情報は、多様なコンテクストと関連性があるが故 に、意思決定者は、例えば、「天気予報の太陽のマークや 降水確率が何を意味するか?」などの基本的知識のみに 基づいて情報の意味を理解し、意思決定を行う。したが って、意思決定フレームの形成において、情報提供者と の調整、すりあわせが行われる程度は小さい。 一方、気象情報には、例えば、悪天候が予想される場 面でスポーツイベントを開催すべきかどうか、気象災害 のリスクに直面した状況において、交通運営者が交通サ ービスをいつ取りやめるか、といったような、コンテク ストが高度に特定化された意思決定の場面では、より時 空間的に精度の高い気象予測情報、あるいは、予測情報 の信頼性も含めた情報が必要となる。このように、高度 に特定化されたコンテクストにのみ関連性がある情報を、 関連性の普遍度が低い情報と呼ぶ。関連性の普遍度が低 表-1 気象情報サービスプロセスの類型
い情報において、情報提供者は、意思決定者が直面する 問題のコンテクストを共有し、提供する情報の意味づけ を行う必要があり、情報の送り手と受け手の間で意思決 定フレームの綿密な調整、すりあわせが必要となる。一 方で、このすりあわせによって形成される意思決定フレ ームの存在が、民間事業者にとって情報サービスの差別 化を可能にし、付加価値の源泉をもたらす。 (3)気象情報サービスプロセスの類型 気象情報サービスのサプライチェーンの各段階の主体 の関与の仕方の違いによって、表-1 のように、気象情報 サービスの類型は4 つに分類できる。 a) 気象庁型 気象庁は、気象観測データ収集から情報提供までのす べてのサプライチェーンプロセスにおいて権限を有して いる。気象庁が、気象観測データの収集から予測モデル の開発、予測結果の出力と記号化された気象情報の生産 までの一連のプロセスを担って提供する気象情報サービ スの類型を気象庁型と呼ぶ。 気象業務法では、気象庁が気象に関する予報及び警報 を行う義務を定めている。ここで、予報は「観測の成果 に基づく現象の予想の発表(気象業務法第2 条 6)」と、 警報は「重大な災害の起るおそれのある旨を警告して行 う予報(気象業務法第2 条 7)」と定義される。この定義 に基づけば、予報及び警報は「発表」であり、現象の予 想に関する不特定多数への情報提供を意味している。ま た、情報の内容もあくまでも「現象の予想」であり、「人々 がどう行動すべきか」については何も言っていない。し たがって、意思決定フレームの形成は、情報の受け手に 完全に委ねられている。一方で、予報、警報は、関連性 の普遍度が高い情報であり、情報の受け手の多岐にわた る意思決定に用いられる。 b) 民間解説型 気象予報士制度の下では、気象の知識や技術に精通し た気象予報士の資格を有する専門家が、気象庁が提供す る予測結果及び予報、警報という形で提供される気象情 報に基づいて、メディアなど、不特定多数に対して解説 を提供する。専門家は、個人あるいは民間気象会社に所 属する民間主体であり、こうしたサービスプロセスの類 型を民間解説型と呼ぶ。気象予報士が解説を行うための 許可は不要である。 民間解説型では、服装や傘の持参など、不特定多数の 共通の関心事項を踏まえつつ、情報の受け手の意思決定 を支援することを目的とした情報の提供を行う。したが って、民間解説型で提供される情報は、不特定多数への 情報提供を意図しているという意味では、コモディティ 化されているものの、情報の受け手の意思決定フレーム との関連性を高めることを意図しており、情報の送り手 が、意思決定フレーム形成に部分的に寄与している。 c) 民間気象会社型(一般向け) 気象庁とは別に、民間気象会社も、独自の気象情報を 提供している。民間気象会社は、気象業務支援センター から得られる気象観測データや予測結果と民間気象会社 自身で収集したデータを活用し、また、独自開発した予 測モデルに基づき、必ずしも気象庁の予測結果とは一致 しない予測結果を得て、独自の予報を行っている。不特 定多数の一般向けに予報業務を行うためには、予報業務 許可が必要となる。こうしたサービスプロセスの類型を 民間気象会社型(一般向け)と呼ぶ。2.(2)で示した類型 では、BtoCモデル、あるいはBtoBtoCモデルに該当する。 民間気象会社型(一般向け)は、不特定多数への情報 提供という点で、気象庁型に近い。ただし、気象庁型と の違いは、台風進路予報など一部の予報を除き、民間気 象会社が独自の予測に基づき予報を行う点、予測結果の 記号化の仕方が、例えば洗濯指数のように、特定の意思 決定に役立つことを意図して情報提供をしている点にあ る。しかし、不特定多数が共通して関連する情報を提供 しているという点で、関連性の普遍度が高い。 d) 民間気象会社型(特定向け) 2.(2)で示した通り、民間気象会社は、BtoB のように、 特定の相手に向けた情報提供サービスを行っており、こ のようなサービスプロセスの類型を民間気象会社型(特 定向け)と呼ぶ。この類型では、民間気象会社(一般向 け)同様、民間気象会社独自の観測データや予測モデル を基に、特定化されたコンテクストにおける意思決定を 支援するためのコンサルティング業務が行われる。民間 気象会社は、特定の場所や時間における天気や降水量、 気温、災害危険度など意思決定者が直面するコンテクス トに関係した予測情報を提供する。 上記a)-c)の 3 つの類型では、不特定多数向けて情報が 提供されており、意思決定フレームの形成は、情報の受 け手に委ねられている。また、情報提供者は受け手によ り形成する意思決定フレームを忖度しつつ、情報の出し 方を決めている。これに対して、民間気象会社型(特定 向け)では、意思決定フレームは、情報生産者と受け手 の間で双方向のコミュニケーションを行いながら形成さ れる。すなわち、カスタマイズされた意思決定フレーム を情報生産者と情報の受け手が共創するという点で特徴 的である。 以下、4. では、気象情報の生産及び消費にかかわるプ レイヤーが置かれている制度的環境を明らかにし、それ ぞれの官と民の役割、インセンティブ上の仕組みについ て明らかにする。 4.気象情報サービスプロセスにおける官民の役割 以下では、サプライチェーンにおける各段階の生産に おける官民の役割分担について検討を行う。 (1)気象観測データ収集
買可能なものを情報財と定義している。情報財は、固定 費用が大きく、限界費用が小さいという特徴がある(藤 山ら,2001)。限界費用とは、財を再生産するための費用 である。気象観測データは、膨大な数値情報であるが、 デジタル化されたデータの複製自体は安価である。情報 財の供給を競争的市場に任せれば、社会的総余剰の観点 からは望ましいものの、限界費用が小さいために、固定 的費用の回収が難しく、市場が成立しない可能性もある。 そのため、藤山ら(2001)は、情報財の市場が成立する ためには、民間事業者に対して、一定の独占力を認める 必要があると主張する。固定費用が限界費用に比して大 きい技術の下で、市場を通じた財の供給を行う場合、自 然独占が生じ、過少供給となる可能性がある(八田,2008)。 ただし、音楽や映画のように、コンテンツの差別化がで きれば、コンテンツの差別化を通じた競争、すなわち独 占的競争となり、競争性を維持できる(Chamberlin, 1933)。 気象観測データの場合、アート作品のように差別化は容 易ではないかもしれないが、差別化が完全に困難という 訳でもない。 上述の通り、気象観測モデルと予測モデルの間に補完 性があり、なおかつ予測モデルがデファクト化している 場合、気象観測データは必然的に固定化しやすい。気象 観測データ収集サービスの差別化が難しい場合には、自 然独占を回避するために、官がその役割を担うことを正 当化できる。一方、現在、気象庁が行っている気象観測 データの収集を民間供給に任せれば、気象観測データの 精度、迅速性の向上や安価に収集可能な技術開発を通じ た競争は起こるかもしれない。技術開発のためのR&D投 資費用に見合うだけの利益が得られれば、市場は成立す る可能性がある。例えば、近年では、衛星開発及び打ち 上げに要する費用が安価になりつつあることを鑑みれば、 気象庁によるデータ品質確保の仕組みが具備されること を前提として、気象観測データ収集でも、民間の競争を 通じたサービス向上が期待できる可能性がある。 利用する観測データは同じであっても予測モデルは多 様にありうる。また、官が提供するデータに加えて、独 自に収集するデータを使う予測モデルを開発することも あり得る。このとき、民間企業は独自の予測モデルによ り解析するために、民間企業自身が観測データを収集す ることが考えられ、その権利は認められるべきである。 (2)予測モデルの開発 予測モデル自体は、電子的に複製が容易であり、非競 合性を有する。しかし、予測モデルは、観測データとは 異なり、解析の効率化や精度向上など創意工夫によって 価値の向上が期待できる。例えば、局所的な気象予測や ある特定の気象条件に絞り込んだ予測モデルのように、 対象に応じてさまざまな予測モデルを生み出すことがで きる。したがって、音楽や映画のように、民間が市場ベ ースで予測モデルを供給することは望ましい。 一方、予測結果は、音楽や映画のように、その価値が 多くの人々に容易に理解できるものではなく、記号化処 理を経て、人間が理解可能な価値のある情報へと変換さ れる。すなわち、予測モデルの開発は、どのような気象 情報を提供するかと密接に関連している。したがって、 予測モデルの開発の官民分担を議論する前に、予測結果 の記号化、すなわち気象情報の提供の仕方を行うプロセ スにおける官民分担について考える。 (3)記号化/意思決定フレームの形成 数値情報である予測結果をどのように人間に理解でき る表現に変換するかは、気象情報サービス提供において、 情報の価値を決定づける重要なプロセスである。関連性 の普遍度が高い情報は、不特定多数の人々に関連する情 報であり、コモディティとしての性質を持つ。提供情報 の差別化の余地が制限されており、情報伝達にかかる費 用が無視できるとすれば、無料で情報を利用できるよう にすることが総余剰最大化の条件となる。総余剰最大化 を目的とすれば、公共財供給の理論が主張するように、 官によって供給されるべきとなる。また、関連性の普遍 度が高い情報は、そのコモディティ的性質のため、市場 において民間事業者が自発的に供給するインセンティブ は低い。しかし、近年では、HP において、情報そのもの は無料で提供しつつ、情報のビジビリティを高める工夫 を行い、広告掲載により広告主から収益を得ることによ り、収益ベースのビジネスが成立するようになっている。 また、関連性の普遍度が高い情報でも、○○指数のよう に、民間事業者が記号化の仕方を工夫する中で、差別化 された情報を提供するインセンティブが生み出されてい る。このように、単なる気象の予測だけではなく、日常 的にしばしば直面する問題に絞り込んだ指数表示や情報 提供により、市場が成立する可能性があり、すでに、現 行の民間気象会社もこうしたビジネスを行っている。 一方、関連性の普遍度が低い情報は、汎用化された表 現方法によって情報を提供するわけではなく、意思決定 者が直面する高度に特定化されたコンテクストに関連す る情報を臨機応変に提供する。こうした情報は、特定の 意思決定者のみに価値がある一方で、情報サービスの差 別化を可能にする。民間事業者は、差別化競争を通じて 情報に付加価値をつけ、情報提供サービスをビジネスと して成立させることができるかもしれない。関連性の普 遍度が低い情報の提供にあたっては、情報提供者は、意 思決定者が置かれている詳細なコンテクストを共有しつ つ、予測結果を専門的知識というフィルターを通して、 意思決定者に役立つようにカスタマイズしながら情報と して提供する。すなわち、意思決定フレームの存在をア プリオリに仮定せず、情報提供者と意思決定者の間での コミュニケーションを通じて、調整、すりあわせをしな がら形成される。こうした民間事業者による自発的供給
が成立しうる取引環境において、官自らサービス提供を 行う場合、民間事業者の事業機会を奪うクラウディング アウトが生じ、民間事業者の市場参入インセンティブが 低下させ、結果として効率的供給の妨げになる恐れがあ る。 (3)防災気象情報サービスにおける官民の役割 気象情報は、天気予報のように平常時の気象現象にか かわる情報と、重大な災害が生じる恐れにかかわる防災 気象情報に分けられる。平常時の気象情報は、コモディ ティ化された情報であり、服装選びからビジネス上の多 岐にわたる意思決定に利用されるが、それらの意思決定 の責任は、情報の利用者である意思決定者に委ねられて いる。これらの意思決定が直接的に生命や財産に影響を 及ぼすとは想定されておらず、意思決定の責任は、官で はなく意思決定者本人に帰することが前提となっている。 一方、防災気象情報の提供は、重大な災害が生じる恐 れを周知し、生命及び財産を守るための適切な行動を促 すことを目的としている。災害対策基本法では、政府に 対して、国民の生命及び財産を保護するための措置を行 う責務を課している。防災気象情報が高度化しているに もかかわらず、逃げ遅れの問題は、依然として大きな課 題となっている。逃げ遅れの事態が発生する度に、生命 及び財産を守るという責務を負う官としての情報提供の あり方の問題が議論の的となる。 最近では、気象庁が提供する防災気象情報は、土砂災 害危険度のメッシュ情報のように、具体的にどこが危な いかを示すことにより、地理的コンテクストを高度化さ せる努力が行われている。しかし、気象庁の気象情報の サービスプロセスは、一方向の関連性の普遍度が高く、 コモディティ的な情報を提供する仕組みであり、意思決 定フレームの形成は依然として意思決定者に委ねざるを 得ない。したがって、官の防災気象情報提供のみで、す べての人々に適切な避難を促すというアプローチは自ず と限界に直面する。防災気象情報を意思決定に結びつけ るためには、情報提供者と意思決定者の意思決定フレー ムの共同形成が必要である。この分野では、民間が主導 的役割を果たすことが可能となりうる。民間が主導的役 割を果たすためには、1) 意思決定フレームの共同形成を 行うためのコミュニケーション能力、2) 潜在的に災害リ スクに直面している主体が、災害リスクに晒されている ことを認識し、そのための備えとして情報提供者と意思 決定フレームの形成に価値があるという認識が要件とな る。1 つ目の要件は、専門家である情報提供者が意思決 定者と信頼関係をどう築くかという問題である。2 つ目 の要件では、民間企業は、意思決定フレームの共同形成 をビジネスとして成立させるために、災害リスクの認知 向上に向けた取組をマーケティングと位置づけて主体的 に行うこともあり得る。また、マーケティング戦略の方 法は、民間が大学などの研究機関と模索していくアプロ ーチも考えられる。 5.おわりに 本研究では、気象情報が生産され、利用されるまでの サービスプロセスを経済学及び社会学的枠組みに依拠し て構造化した。その上で、わが国の気象情報サービスプ ロセスの類型化を行った。さらに、気象情報サービスの プロセスにおける中間的生産物を官と民のどちらが供給 すべきかと言う視点に立って、官と民の役割分担を規範 的に考察した。 本研究の主要な結論として、1) 官、すなわち気象庁が 提供する情報は、コモディティとならざるを得ない。官 が提供する防災気象情報は、関連性の普遍度が高い情報 であり、情報の受け手の意思決定に結びつきにくい。2) 関連性の普遍度が低い情報は、私的財としての性質を持 つために、民間による市場ベースでの供給が可能である。 しかし、市場が成立するためには、潜在的な情報の消費 者の需要が存在しなければならない。すなわち、潜在的 な情報の消費者が、日頃から専門家と意思決定フレーム を形成し、災害の危険性に直面した場合には、信頼でき るいわば町医者のような専門家の情報=高度に特定化さ れたコンテクストに役立つ情報には、価値があると認識 する必要がある。災害情報学の分野では、リスクコミュ ニケーションが深く認識されているが、関連性の普遍度 が低い情報の市場成立のためにも、情報提供者である専 門家としての民間事業者は、需要の掘り起こしを目的と して、潜在的な情報の消費者=顧客との関係性を構築し ていく努力が必要となる。こうした実践的試み・努力は、 既に多く蓄積されており、現実には、本稿で考察したよ うな市場が容易に成立するわけではない。したがって、 以上の結論は、あくまでも防災気象情報を適切な避難の 意思決定に結びつけるためのアプローチの試論としての 位置づけである。しかし、防災気象情報を意思決定に結 びつけるためには、個々の取組を積み重ねるだけでなく、 社会全体で自律的に機能する仕組みを考えて行く必要が ある。本研究の結論が、今後の議論の端緒となれば、著 者等にとって本望である。 補注 1) 予報業務の許可内容は、気象庁長官が定めた「予報業務の許 可並びに予報業務の目的及び範囲の変更の認可に関する 審査基準」に規定されており、契約等に基づき特定の者に 限って提供する予報であって、かつ、当該特定の者の利用 に供するものである「特定向け予報」と特定向け予報以外 の予報である「一般向け予報」に区分されている。特定向 け予報は、利用者が予報の内容・利用上の留意点等につい て必要な知識を有していることを前提としており、一般向 け予報よりも予報の最小時間単位や区域、予測対象期間の 制限が大幅に緩和されている。 2) 意思決定フレームは、意思決定のコンテクストに基づいて
形成される。コンテクストとは、情報を解釈(処理)する にあたって想定されていることがらの集合である(大澤, 2017)。 3) 人間が、なぜ直面した状況で、その都度、適切なコンテクス トを選び出し、関連性のある情報と結びつけることができ るのか、その認知のメカニズムは分かっていない(大澤, 2017)。 4) 実際、対価を支払わない主体がデータを使えないように、排 除することは技術的に可能であろう。 参照文献 気 象 庁 HP ,( 参 照 年 月 日 : 2018.12.15 ), https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/kishojoho.html 気象庁(2012),気象業務はいま2012,研精堂印刷. 国会運輸委員会(1993), 気象業務法の一部を改正する法律案に 対する附帯決議, 第 126 回国会運輸委員会第6号. 気象庁(2009), 長官記者会見要旨(平成 21 年 10 月 15 日)(参 照 年 月 日 : 2018 年 8 月 17 日 ) , https://www.jma.go.jp/jma/kishou/tyoukan/2009/dg_20091015.ht ml. 杉山善昭・竹田康生・山腰裕一・清本真司・中村政道・長谷川 昌樹・平原隆寿・横井貴子(2012), 気象庁防災情報 XML フォーマットの詳細と策定経緯, 測候時報, Vol.79.5-6, pp.53-146. 気象業務支援センター(2015),気象年鑑 2015 年版,気象業務 支援センター. 羽鳥光彦(2016), 報告 気象業務法等の沿革-法制度から見た特 徴とその意義-,測候時報, Vol.83, pp.47-70. 大澤真幸(2017),コミュニケーションの(不)可能性の条件, 現代思想,Vol. 45, No. 6, pp. 36-50.
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(原稿受付 2018.12.15) (登載決定 2019.3.31)
(原稿受付 2018.12.15)
Role of the Public and the Private
in the Weather Information Service Process
Masamitsu ONISHI
1・
Kensuke TAKENOUCHI
2・
Motohiro HONMA
3・
Masanobu
KANAI
41Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University([email protected]) 2Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University([email protected]) 3Japan Weather Association([email protected])
4School of Science and Technology, Gunma University([email protected])
ABSTRACT
This paper conducts a normative analysis on the role of the public sector and the private sector in the service process of weather information. For that purpose, firstly, the service process of weather information including its production to consumption is structurally formulated from the aspect of economics and sociology. Based on the formulated structure, the service process of weather information in Japan is classified into patterns. In addition, the normative role of the public and the private sector is discussed from the aspect of ‘which sector should provide intermediate output in the service process’. The main conclusions of this paper are 1) the information provided by the public, i.e. the JMA (Japan Meteorological Agency) in Japan, cannot help being commoditized. Therefore, the severe weather terminology is the most likely to be low-context and difficult to trigger decision-making. 2) High-context information of severe weather terminology can be provided by the private sector on the market basis. In addition, it is argued that the prerequisites for marketization are 1) the ability of communication of information provider as an expert and 2) potential information users’ awareness of their exposure to disaster risk and of the value of establishing trust relationship with information provider as an expert in the normal time.