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列車編成同士の衝突を考慮した耐衝突構造の研究(列車編成の車両間におけるエネルギー吸収特性について)

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Academic year: 2021

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(1)

(列車編成の車両間におけるエネルギー吸収特性について)

Study of Crashworthy Structure for Head on Collision between Train Units

(Characteristics of Energy Absorbing Structure between Cars in Train Unit)

Makoto TAGUCHI

*1

and Takao YOSHIKAWA

*1 Kawasaki Heavy Industries, LTD. Rolling Stock Company Wadayama-dori 2-1-18, Hyogo-ku, Kobe, 652-0884 Japan

Rail vehicles have the particularity in that pluralities of vehicles are operated as a set of connected units. This particularity is to be considered in the crashworthiness design of the coupling end structure of the vehicles in a train unit. In the case of a collision between long trains that are composed by a rigid coupling end structure, a large space for energy absorption in the structure of the cab end of the leading car will be needed. However, there is the possibility that the appropriate energy absorption characteristics of the coupling end can reduce the load of energy absorption at the cab end. Calculations of a collision between train units using a mass-spring model were conducted to study the force-displacement characteristic of a coupling end structure that can absorb more crash energy. The collision scenario applied to the calculation was that of a stationary 8-car train unit colliding with another identical train unit traveling at a speed of 36km/h based on EN15227. The results showed that the deformation of the cab ends in the leading cars can be greatly reduced by adjusting the force displacement characteristics of the coupling end to be lower than the reaction force of the cab end and achieve a progressive profile.

Key Words : Railway, Numerical Analysis, Structural Design, Rail Vehicle, Crashworthiness, Energy Absorption

1. 緒 言 鉄道車両の耐衝突設計は,衝突してもできるだけ変形させない設計思想が長い間,適用されてきた.これは, 特に米国連邦規則にみられるような車体の高い前後方向耐荷重 3556 kN(=800 klbf)の要求に色濃く反映されて いる(1).しかし,耐荷重が高い車両同士が衝突した場合,生存のための空間は確保されたとしても,乗員,乗客 は,高い衝撃加速度を受けることになり,必ずしも安全上好ましいとはいえない. 90 年代以降は,衝突解析技術の発達により,鉄道車両の耐衝突設計にも,過大な加速度が生じないように車体 構造を衝突時に適切な荷重で破壊して衝突エネルギーを吸収する部位(クラッシャブルゾーン)と衝突時には変 形を極力防ぎ乗客乗員の生存空間を確保する部位(サバイバルゾーン)に分けた構造とする設計思想が適用でき るようになり,日本国内では踏切衝突対策として,1994 年に登場した E217 系と呼ばれる電車から適用されるよ うになった(1).この設計思想は自動車で広く用いられている思想であるが,自動車と異なり鉄道車両には 2 両以 上を連結した列車編成として運用されることが多いという特殊性がある.特に列車編成同士の衝突に関しては, 列車編成におけるクラッシャブルゾーンの配置とその特性の決定にはこの特殊性を考慮する必要がある.たとえ

田口

*1

,吉川

孝男

*2 * 原稿受付 2013 年 7 月 26 日 *1 正員,川崎重工業(株) 車両カンパニー(〒652-0884 兵庫県神戸市和田山通 2-1-18) *2 九州大学 工学研究院 海洋システム工学部門 船舶海洋構造工学 E-mail: [email protected]

列車編成同士の衝突を考慮した耐衝突構造の研究

* 79 巻 808 号 (2013-12)

(2)

ば,1999 年に発行された米国連邦規則 CFR238 では TierⅡというカテゴリの鉄道車両に対して,列車編成同士の 衝突を想定して先頭車両に客席を設けてはならないとされ(2),先頭車両のクラッシャブルゾーンでほとんどの衝 突エネルギーを吸収する思想となっていると考えられる.しかし,一両 0.045 Gg として 8 両編成であれば列車編 成の質量は 0.36 Gg 程度となり,時速 36 km/h(10 m/s)でも運動エネルギーは,18 MJ に達する.先頭車両のみ で衝突エネルギーを吸収しようとすると先頭車には長大なクラッシャブルゾーンを設ける設計が必要となる.構 造物の塑性変形を利用したエネルギー吸収では限界があると考えられ,機械的なスライド機構を応用したエネル ギー吸収構造の開発の報告がある(3).一方,列車編成を構成する車両同士は,一般的に 0.5 m 程度の間隔を空けて 連結されている.この空間にある連結装置の破壊など車両間の連結部のエネルギー吸収を有効に使い,編成全体 でエネルギーを吸収することができれば,先頭部のクラッシャブルゾーンを短縮できる可能性がある. 本研究では,列車編成の連結部のクラッシャブルゾーンの荷重変位特性をどのように設定したら,編成全体で 衝突エネルギーを吸収することができ,先頭部のクラッシャブルゾーンを短縮できるかを検討した. 2. 衝突条件と編成衝突のモデル化 2・1 衝突条件 2009 年に発行された欧州規格 EN15227:車両の耐衝撃性(4)では,乗客の安全性を考慮して,静止した列車編成 に同じ構成の列車編成が時速 36 km/h(=10 m/s)で衝突した場合の各車両の加速度が 5 G 以下であることを要求し ている.この規格は先頭車に客室がある電車で構成される列車編成にも適用されることから,本研究では,この 衝突条件を用いることにした. 2・2 ばね-質点系モデルによる編成衝突のモデル化 列車編成同士の衝突を模擬する解析は,具体的な構造をモデル化する詳細な FEM 解析では手間がかかるため, ばね-質点系モデルによる簡略化した解析とした.解析モデルを図1に示す.列車編成は 8 両編成で 1 両 0.045 Gg の車両によって構成される.静止した列車編成の車両番号は A01~A08,初速 36 km/h=10 m/s の列車編成の車両 番号は B01~B08 とした.また,各車両の質量,変位量及び車両間の非線形ばねは,それぞれ M1~M16,X1~ X16,K1~K15 で表現した.先頭車同士の衝突面の非線形ばね K8 は,連結部の非線形ばねと異なる特性を用い, 連結部の非線形ばねの荷重変位特性を変化させることにより,先頭部の変形量がどのように変化するかを検討し た.なお,非線形ばねの特性について,たとえば K8 は,A08 号車,B01 号車のそれぞれの先頭部の破壊時の荷 重変位特性を直列バネとして合成した特性となっているので,出力される変形量は A08 号車の変形量と B01 号車 の変形量を合計した値となることに注意する必要がある. 解析のアルゴリズムを図2のブロック線図に示す.加速度および速度の時間積分は,時間増分Δt=1×10-4 s と した差分法によって行った.時間増分Δt=1×10-4 s は,初速 10 m/s であるので1計算ステップの変位量が 1 mm 以下となることに相当するが,非線形ばねの荷重変位特性を離散化するときの変位のピッチを 5 mm としてモデ ル化したので,荷重変位特性をトレースするのに十分に小さい時間増分であると考える.

Fig.1 Spring-mass model for train set collision

A01 A02 A03 A04 A05 A06 A07 A08 B01 B02 B03 B04 B05 B06 B07 B08

M 1 - M 2 - M 3 - M 4 - M 5 - M 6 - M 7 - M 8 - M 9 - M 10 - M 11 - M 12 - M 13 - M 14 - M 15 - M 16 K 1 K 2 K 3 K 4 K 5 K 6 K 7 K 8 K 9 K 10 K 11 K 12 K 13 K 14 K 15

X 1 X 2 X 3 X 4 X 5 X 6 X 7 X 8 X 9 X 10 X 11 X 12 X 13 X 14 X 15 X 16

A01~A08:Car number in stationary train M 1~M 8:Mass of each car in stationary train is 0.045 Gg

B01~B08:Car number in moving train M 9~M 16:Mass of each car in moving train is 0.045 Gg K 8:Non-liner spring at cab end of leading car X 1X 8:Displacement of each car in stationary train K 1~K 7、K 9~K 15:Non-liner spring at coupling end X 9~X 16:Displacement of each car in moving train

Collision

(3)

Ki-1 Ki 1/Mi ∫dt ∫dt i i xi xi-1 xi+1 + + + - - -

Note: Subscript "i" represents a location number of a car in train Fig.2 Block diagram of analysis for train set collision

2・3 鉄道車両の連結部の荷重変位特性 連結部の非線形ばねの特性として,(1)一般的な連結部の構造,(2)エネルギー吸収要素を備えた連結部の構造, (3)エネルギー吸収要素を備えその荷重変位特性が漸増型となる連結部の構造の 3 種類の構造を想定した荷重変位 特性を以下に示す. (1)一般的な連結部の構造 一般的な鉄道車両の連結部は,車両を連結する時や急制動停車時に発生する車両間の荷重を支える構造として 設計されている.構造の概略図を図 3 に示す.車両同士は Coupler(連結器)によって連結され,連結器は Draft gear (緩衝装置)を介して Draft stop(伴板守)に取り付けられ,伴板守はリベットなどの機械的締結によって Center sill(中ばり)に取り付けられている.緩衝装置は,上記の荷重が負荷された時の衝撃を緩和しそのエネルギーを 吸収する.

通常,車両同士を連結する時の車両間の速度は歩く程度の速度であるが,踏切衝突などの,より速い車両間の 速度では,緩衝装置のエネルギー吸収では足りなくなる.このため,車両間の荷重が高くなり伴板守や中ばりが 破壊して緩衝装置と連結器が脱落するような破壊が実際の衝突事故では発生している(5).緩衝装置や連結器が車 体から脱落すると急激に荷重が落ち,その後,向かい合う車両同士で Car body end(車端)の衝突が生じる.車端部 の圧縮破壊時の荷重は,宇治田らの行った圧縮破壊試験では 3500 kN 程度の値であった(6) 伴板守や中ばりが破壊して緩衝装置が脱落する直前の荷重は,車体の加速度が,前述の欧州規格 EN15227 の要 求(5 G 以下)を満たすことができるように,2000 kN に設定した.この荷重設定により加速度は,車両の質量を 0.045 Gg として,2000 kN/0.045 Gg=4.54 G<5 G 以下とすることができる.また,緩衝装置が脱落する直前の変位 量は,緩衝装置の圧縮量を 100 mm,緩衝装置を支える構造(伴板守や中ばり)の車体長手方向の変形量を 100 mm と想定し,その合計の 200 mm とした.緩衝装置が脱落すると一旦,荷重値は 0 N となり,変位量 500 mm で車 端部同士が接触し荷重値が 3500 kN まで上昇するとした.荷重変位特性を図 4 に示す.この例では緩衝装置によ る吸収エネルギーと伴板守と中ばりの破壊による吸収エネルギーの合計は約 0.2 MJ である. Coupler Draft gear Center sill Center sill Draft stop Draft stop 500mm Carbody

(4)

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 Fo rce: k N Displacement: m (a) Force-displacement curve

2000kN 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 Ab so rbed ener g y : M J Displacement: m

(b) Absorbed energy displacement curve Fig.4 Typical characteristics of coupling end in a train set

(2)エネルギー吸収構造を備えた連結部の構造 連結部におけるエネルギー吸収量を増やすために,緩衝装置と伴板守の間に一定荷重で変形するエネルギー吸 収要素(1)を追加した連結部の構造を図 5 に示す.この場合の荷重変位特性を図 6 に示す.エネルギー吸収要素の エネルギー吸収時の反力は,後で示す図 4 の特性を用いた解析結果を考察した結果,図 4 における伴板守や中ば りの破壊荷重 2000 kN より少し低い 1900 kN とした.また,エネルギー吸収要素(1)の長さを 250 mm 弱の寸法と することで,1900 kN の荷重を車両間の変位量 0.5 m まで維持する構造とした. (3)エネルギー吸収構造を備えその荷重変位特性が漸増型となる連結部の構造 図 5 の構造では,緩衝装置と伴板守の間のエネルギー吸収要素が変形すると車両同士が接近する.図 7 に示す ように,車端に配置した長さの短いエネルギー吸収要素(3)は,緩衝装置と伴板守の間のエネルギー吸収要素(2) の変形の途中から機能するので,荷重変位特性を漸増型とすることができる.この場合,エネルギー吸収要素(2) の反力を 1000 kN,エネルギー吸収要素の反力(3)を 450 kN×2=900 kN とすれば,図 8 に示す荷重変位特性となる. Coupler Draft gear Center sill Center sill Draft stop Draft stop 500mm Carbody end Energy absorbing element (1) Energy absorbing element (1)

Fig.5 Configuration of coupling end with energy absorbing elements

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 Fo rce: k N Displacement: m (a) Force displacement curve

1900kN 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 Ab so rbed ener g y : M J Displacement: m

(b) Absorbed energy displacement curve Fig.6 Characteristics of coupling end with energy absorbing elements

(5)

Coupler Draft gear Center sill Center sill Draft stop Draft stop 500mm Energy absorbing element (2) Energy absorbing element (2) Energy absorbing element (3) Energy absorbing element (3)

Fig.7 Configuration of coupling end with progressive characteristics

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 Fo rce: k N Displacement: m (a) Force displacement curve

1900kN 1000kN 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 Ab so rbed ener g y : M J Displacement: m

(b) Absorbed energy displacement curve

Fig.8 Characteristics of coupling end with progressive profile

3. 衝突解析 図 1 に示す静止した列車編成に時速 36 km/h の列車編成が衝突する衝突条件で,先頭部の荷重変位特性を変え ないで,連結部の荷重変位特性を変化させた表 1 に示す 3 ケースの衝突解析を行った. 図 9 に示す先頭部の荷重変位特性は,衝突時の加速度を 5 G 以下とする制約から荷重値の上限を決め,吸収エ ネルギーの制約から荷重を維持する変位量を決めた.まず,荷重値は,前述の連結部の特性と同様に 2000 kN と することで,車体質量が 0.045 Gg であるので,衝突時の加速度が 2000 kN/0.045 Gg=4.54 G<5 G となる.次に, 荷重を維持する変位量を求めるために,まず,衝突によって消費されるエネルギーE を次のように求めた. 質量 M の物体に速度 V で質量 m の物体が衝突する場合,反発係数を 0 とすると,衝突によって消費されるエ ネルギーE はエネルギー保存則と運動量保存則によって式(1)で表される. (1) 編成質量が 0.045 Gg×8 両=0.36 Ggで衝突速度が 10 m/sであるので,衝突によって消費されるエネルギーは 9 MJ となる.このエネルギーを先頭部と連結部で吸収する必要がある. 連結部の荷重変位特性を図 6 の特性とすると,連結部 1 か所あたりの緩衝装置による吸収エネルギーと伴板守 と中ばりの破壊による吸収エネルギーの合計は約 0.2 MJ であり,2 つの列車編成の連結部(14 か所)における吸 収エネルギーの合計が約 2.8 MJ となる.残りを先頭部のクラッシャブルゾーンで吸収するとすれば,先頭部の吸 収エネルギーは,9 MJ-2.8 MJ=6.2 MJ となる.この結果から先頭部の荷重変位特性が 2000 kN を維持する変位量 は,6.2 MJ を吸収するためには 3.1 m(=6.2 MJ/2000 kN)以上必要となるので,余裕をみて 3.4 m とした.

(6)

Table 1 Calculation cases

Case No. Characteristics of non-liner spring at cab end of leading car Characteristics of non-liner spring at coupling end

1 Fig.9 Fig.4 2 Fig.9 Fig.6 3 Fig.9 Fig.8 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 Fo rce: k N Displacement: m (a) Force-displacement curve

2000kN 0 1 2 3 4 5 6 7 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 Ab so rbed ener g y : MJ Displacement: m

(b) Absorbed energy - displacement curve Fig.9 Characteristics of cab end

3・1 Case 1:先頭部のみにエネルギー吸収構造を設ける場合

列車編成の各車両の加速度履歴を図 10(a)に示す.時刻 0 s で A08 と B01 の衝突が始まり,A08,B01 それぞれ の加速度は+4.5 G,-4.5 G に達する.時刻 0.05 s で A07 と B02 がそれぞれ A08 と B01 に衝突することで A07,B02 の加速度の絶対値が立ち上がり始め,同時に A08,B01 の加速度の絶対値の減少が始まる.そして,時刻 0.1 s で A08,B01 の加速度が 0 G となる.この現象が各列車編成において A08,B01 に近い順番で各車両について繰り 返される結果となっている.加速度の絶対値は,編成を構成するすべての車両について 5 G 以下の結果となった. 列車編成の各車両の速度履歴を図 10(b)に示す.B01~B08 の列車編成の各車両は,初速 10 m/s から速度 7 m/s まで減速した後,最後尾車(8 両目)が 7 m/s に減速するまでその速度を維持する.これは,列車編成の各車両で は,先頭部に近い連結部の荷重が先に立ち上がり 2000 kN に達することで,車両に初速 10 m/s から速度 7 m/s ま での減速が生じ,その後,先頭部から遠い連結部の荷重も立ち上がり 2000 kN に達し,先頭部に近い連結部の荷 重と釣り合うことにより,車両は 7 m/s を維持した等速運動をすると考えられる.この時,隣り合う車両の相対 速度は 0 →3 →0 m/s のように変化するため,隣り合う車両の間では,相対的な運動エネルギーは,0 →0.2→0 MJ のように変化する.この変化量は,表 2 の連結部一か所あたりのエネルギー吸収量 0.2 MJ と一致している. 表 2 は,図 10(c)および(d)に示す連結部の変形量や先頭部の変形量を基に,図 4,図 9 のエネルギー変位特性か ら吸収エネルギー量を求めた結果である.先頭部の変形量は 3.2 m,連結部の変形量は約 0.2 m に,吸収エネルギ ー量は,先頭部で 6.3 MJ,連結部一か所あたり約 0.2 MJ となった.連結部の 14 か所の合計の吸収エネルギーと 先頭部の吸収エネルギーを合計すると 9.07 MJ となり,式(1)から求めた値 9 MJ との差は,0.07 MJ で全体の吸収 エネルギーの 1%未満の差であった.また,先頭部の吸収エネルギーは全体の 69%であった. ところで,B01~B08 の列車編成の各車両は,初速 10 m/s から速度 7 m/s まで減速した後,最後尾車(8 両目) が 7 m/s に減速するまでその速度を維持するが,B01 と B02 が速度が 7 m/s で等速運動している時,先頭部の発生 する荷重と B01 と B02 間の連結部の発生する荷重は釣り合っていると考えられる.先頭部が発生する荷重に対し て,連結部が発生する荷重が小さくなるように連結部の荷重変位特性を設定すれば,先頭車 B01 が減速運動する ことになり,2 両目 B02 との相対速度が生じ,連結部における変形量が増加するので,連結部のエネルギー吸収 が促進され,その結果,先頭部のエネルギー吸収量が低減できる可能性があると考えられる.

(7)

Table 2 Absorbed energy of cab end and coupling ends:MJ

Location Case 1 Case 2 Case 3

Coupling end A01/A02 0.185 0.178 0.076 A02/A03 0.195 0.179 0.254 A03/A04 0.189 0.183 0.596 A04/A05 0.201 0.183 0.619 A05/A06 0.201 0.189 0.619 A06/A07 0.201 0.219 0.619 A07/A08 0.225 0.815 0.634 Cab end A08/B01 6.275 5.179 2.215 Coupling end B01/B02 0.225 0.815 0.634 B02/B03 0.201 0.219 0.619 B03/B04 0.201 0.189 0.619 B04/B05 0.201 0.183 0.619 B05/B06 0.189 0.183 0.596 B06/B07 0.195 0.179 0.254 B07/B08 0.185 0.178 0.076 Total 9.069 9.071 9.049

(8)

3・2 Case 2:先頭部と連結部にエネルギー吸収構造を設ける場合 Case 2 では,連結部におけるエネルギー吸収の促進を意図して,連結部の荷重変位特性を,先頭部が発生する 荷重に対して連結部が発生する荷重が小さくなるように,荷重の値を 2000 kN から 1900 kN に下げるとともに, 1900 kN の荷重を変位量 0.5 m まで維持する特性とした. 列車編成の各車両の加速度履歴を図 11(a)に示す.加速度の絶対値は,編成を構成するすべての車両について 5 G 以下の結果となった. 列車編成の各車両の速度履歴を図 11(b)に示す.B01~B08 の車両の速度履歴に関して,B01(先頭車)は,初 速 10 m/s から速度 7 m/s まで減速したあとも緩やかに減速が続く.これは,先頭車に作用する荷重は,7 m/s まで 減速した時点から先頭部からの反力 2000 kN に加え,2 両目との連結部からの反力 1900 kN が負荷されるが,そ の差 100 kN による減速であると考えられる.このため,先頭車と 2 両目の速度は一致しないため,先頭車と 2 両目の間の連結部の変形量が時間とともに増加している.一方で,2 両目よりも先頭部から遠い連結部について は,反力値の差がないため変形が進まなかったと考えられる. 列車編成の各車両の変形量の時刻歴を図 11(c)(d)に示す.先頭部の変形量は,2.7 m で Case 1 に比べて約 0.5 m 減少させることができた.連結部の変形量は,A07-A08 間と B01-B02 間(各編成の先頭車と 2 両目の間)で 0.5 m, その他の連結部で 0.2 m 程度となった.表 2 に示す吸収エネルギー量は,先頭部で 5.2 MJ,連結部では各編成の 先頭車と 2 両目の間で 0.8 MJ,その他で 0.2 MJ 程度となり,Case 1 に比べて,エネルギー吸収量が,先頭部では 低減し,先頭車と 2 両目の間では大きく増加する結果が得られた.また,先頭部の吸収エネルギーは全体の 57% であった. Case 2 の結果から,列車編成の先頭部寄りの連結部に比べて中央寄りの連結部の反力値を小さくすることで列 車編成の中央部の連結部における変形量を増やしエネルギー吸収量を増加させることができる可能性があること が分かった.しかし,多数ある連結部の特性を別々に設定することは現実的でない.一方で,衝突時の連結部変 形量の時刻歴を見ると,列車編成の先頭寄りの連結部と中央寄りの連結部で変形量が立ち上がる時間に差がある. このため,同じ時間で,列車編成の先頭寄りの連結部と中央寄りの連結部で変形量を比較すると,先頭寄りの連 結部の方が大きな変形が生じている.このため,連結部の荷重変位特性を,変形量が大きくなると反力値も大き くなる漸増型の特性とすることで,エネルギー吸収 性能を損なうことなく,実質的に列車編成の先頭寄りの連結 部に比べて中央寄りの連結部の反力値を小さくできる可能性があると考えられる. 3・3 Case 3: 連結部のエネルギー吸収構造の荷重変位特性を漸増型とする場合 Case 3 では,漸増型荷重変位特性を連結部に用いて解析を行った.列車編成の各車両の加速度履歴を図 12(a) に示す.加速度の絶対値は,編成を構成するすべての車両について 5 G 以下の結果となった.さらに先頭車以外 の車両では,加速度が 2.5 G 未満を持続する時間が長い結果となった.これは,図 8 に示すように連結部の荷重 変位特性が階段状であるので,先頭から 2 両目以降の車両では,先頭に近い連結部の荷重が 1900 kN に達した時, 先頭から遠い連結部の荷重は,まだ 1000 kN であり,その差の 900 kN によって減速が生じると考えると,加速度 は約 2 G(=900 kN/0.045 Gg))程度となり傾向を説明できる. 列車編成の各車両の速度履歴を図 12(b)に示す.B01,B02 の車両は初速 10 m/s から 5 m/s 付近まで連続して速 度が減少するが,B03~B08 の車両の速度履歴には,短時間であるが約 8 m/s で等速運動をする時間帯がある.こ れは代表として B03 の車両に関して言えば,連結部 B02/B03 の反力値が 1000 kN で 1900 kN まで上昇していない 段階で,連結部 B03/B04 の反力値が 1000 kN に達した状態であると考えられる. 列車編成の各車両の変形量の時刻歴を図 12(c)(d)に示す.先頭部の変形量は 1.2 m で Case 1 に比べて約 1/3 程度 の値まで減少した.また,連結部の変形量は,ほとんどの部位で 0.5 m 程度の値となった.エネルギー吸収量に 関しては,先頭部のエネルギー吸収量が全体の 24%となり Case 1,Case 2 に比べて大きく減少する結果となった. このことから,連結部の荷重変位特性を,変形量が大きくなると反力値も大きくなる漸増型の特性とすることで, 実質的に列車編成の先頭寄りの連結部に比べて中央寄りの連結部の反力値を小さくした効果が得られ,先頭部の 変形量を低減することができたと考えられる.

(9)

Fig.11 Calculation result of Case 2 with energy absorbing elements

(10)

3・4 解析結果の総括 (1)先頭部のエネルギー吸収時の荷重値を衝突時の加速度の制限から 2000 kN を上限とし,一般的な連結部の構造 として連結部のエネルギー吸収時の荷重値も同じ値とした列車編成の解析を行った.この場合,先頭部が吸収 するエネルギーは,編成全体の吸収エネルギーの 69%という高い割合となった. (2)連結部にエネルギー吸収要素を追加することで,車両間変位 0.2 m から 0.5 m の間でもエネルギー吸収を可能 とし,さらに,反力値を先頭部の反力に比べて小さい値とすることで,先頭車と 2 両目の間の連結部における エネルギー吸収量を増やすことができた.これにより先頭部が吸収するエネルギーは,編成全体の吸収エネル ギーの 57%まで減少した.しかしながら,2 両目よりも先頭部から遠い連結部については,エネルギー吸収量 は増えなかった.これは,2 両目よりも先頭部から遠い連結部においてはそれぞれの連結部の間に反力値の差 がないため変形が進まなかったためであると考えられる. (3)連結部のエネルギー吸収要素による反力が先頭部の反力に比べて小さい値とするとともに,その荷重変位特性 を漸増型とすることで, 2 両目以降の連結部におけるエネルギー吸収を促進することができた.その結果, 先頭部が吸収するエネルギーは編成全体の 24%と大きく減少し,先頭部の変形量も一般的な連結部の構造の 場合に比べて 1/3 まで減少した. (4)表 2 に示す各解析ケースにおける吸収エネルギーの合計値であるが,式(1)で計算される値 9 MJ に対する差は, 0.1 MJ 未満すなわち 1%未満の差であった. 4. 結 言 静止した列車編成に同じ構成の列車編成が速度 10 m/s で衝突する衝突条件において,連結部の特性が先頭部の 吸収エネルギー量や変形量に与える影響について,バネ-質点系モデルを用いて解析を行い次の結果が得られた. (1) 衝突時の最大加速度をある一定の値以下にするためには,先頭部および連結部がエネルギー吸収する際の荷 重値に上限を設ける必要がある.先頭部のエネルギー吸収時の荷重値を加速度の制限から決まる上限値とし, 一般的な連結部の構造として,連結部のエネルギー吸収時の荷重値も同じ値とした列車編成の解析を行った. この場合,先頭部の吸収するエネルギーが,編成全体の連結部が吸収するエネルギーの合計よりも大きい結果 となった.これは,列車編成同士の衝突において,2 両目が先頭車両に衝突すると,先頭部が発生する荷重値 と連結部が発生する荷重値が釣り合うことで先頭車両は等速運動となり,その結果,ある一定時間,先頭車両 間の相対速度が減少せず先頭部の変形量が大きくなるためであると考えられる. (2) 連結部にエネルギー吸収要素を追加することで,車端同士が接触するまで一定荷重を維持される特性とする とともに,その荷重値を先頭部の反力に比べて小さい値とすることで,先頭車と 2 両目の間の連結部における エネルギー吸収量を増やすことができた. (3)列車編成の先頭寄りの連結部の変形量と列車編成の中央寄りの連結部の変形量に時間差があることを考える と,連結部の荷重変位特性を漸増型とすることで,実質的に先頭寄りの連結部に比べて中央寄りの連結部の荷 重値を小さくすることができる.これにより 2 両目以降の連結部におけるエネルギー吸収を促進することがで き,先頭部が吸収するエネルギーが,編成全体の連結部が吸収するエネルギーの合計値を下回る結果となった. この結果,先頭部の変形量は,連結部の荷重変位特性を漸増型とする前と比較して大きく減少させることがで きた. 文 献 (1) 畑 弘敏,大野 潔,“衝突シミュレーションを活用した車両の安全性確保対策に関する研究”,JR EAST Technical Review-No.3 (2003), pp.35-40.

(2) US DOT, 49CFR238 Passenger Equipment Safety Standards,Code of Federal Regulations Title 49 Transportation Part 238 (2009).

(3) Mayville, R., Johnson, K., Stringfellow, R. and Tyrell, D., “The Development of A Rail Passenger Coach Car Crush Zone”,

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(4) CEN, EN15227 Railway applications – Crashworthiness Requirements for Railway Vehicle Bodies (2008).

(5) 運輸安全委員会, “平成 22 年 1 月 29 日に北海道旅客鉄道株式会社 函館線で発生した事故”, 平成 23 年報道発 表, http://www.mlit.go.jp/jtsb/houdou23.html(参照日 2013 年 6 月 11 日).

(6) 宇治田 寧, 舟津 浩二, 鈴木 康文,“鉄道車両の圧縮破壊特性”, 日本機械学会第 6 回交通・物流部門大会論文集 (1997), pp.491-492.

Table 1 Calculation cases
Table 2 Absorbed energy of cab end and coupling ends : MJ

参照

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