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携帯端末を利用した効率的な農作業データの収集

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Academic year: 2021

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農作業研究(Japanese Journal of Farm Work Research)55(2):87∼91, 2020

携帯端末を利用した効率的な農作業データの収集

松尾健太郎

農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センター Efficiently Collecting Farm Work Data Using a Smart Device

Kentaro MATSUO

Kyushu Okinawa Agricultural Research Center, NARO

 Bluetooth 機能付きの計測器や,外部出力を持った計測器に Bluetooth アダプタを取り付けて利 用することで,スマートフォンやタブレット PC などの携帯端末の表計算ソフトに計測データを 簡単に送ることができる.そこで,これらを使って簡単に一人で計測できる器具を作製した.圃 場における草丈や播種深さなどを測定する場合には,Bluetooth 機能付きレーザー距離計を一脚 に固定した鉛直方向の距離を測定する器具と携帯端末を使用する.この器具は,誤差範囲 2 mm 程度で高さの測定が可能であった.また,収穫物の重さや幅を測定する場合は,固定された板と スライドする板で対象物を挟みレーザー距離計で幅を測定する器具と Bluetooth アダプタを接続 した電子天秤および携帯端末を使用した.カンショの塊根の重さと幅を計測する作業を慣行の電 子天秤と定規を使って計測し野帳に記入する方法で行った場合の作業時間と比較して,この測定 方法の作業時間は 58%短かった. キーワード:自動入力,Bluetooth アダプタ,レーザー距離計

解 説

2019年 10 月 25 日受付 2020年 2 月 14 日受理 Corresponding author 松尾健太郎 Kentaro MATSUO 〒 885-0091 宮崎県都城市横市町 6651-2

Yokoichicho 6651-2 Miyakonojo, Miyazaki, 885-0091, Japan E-mail : [email protected]

1.緒言

都道府県の研究機関や農研機構などの研究現場 では,人員や予算が削減されている.しかし,業 務量は削減が進まず,研究員一人当たりの作業量 が増えている.現地試験に行く場合でも,研究員 一人で現地に行き,データを収集することがある. 従来,作物の草丈や収穫物の大きさなどデータを 収集する場合は,定規やノギスで計測し,野帳に 記入している.この作業を 1 人で行うと煩雑にな りやすく,時間の限られる現地試験などで多くの データを取ることは困難である. そこで,これらの問題を解決するために,近 年,販売されている Bluetooth 機能を搭載したレー ザー距離計や,外部出力がある計測器に接続でき る Bluetooth アダプタと携帯端末を利用して,圃 場における草丈などの高さや収穫物の重さや大き さのデータを計測して携帯端末の表計算ソフトに 自動入力する器具を作製したので紹介する.

2.使用機材

使用する機材は,Bluetooth 機能付きのレーザー 距離計である.本報では,Disto D810(Laica 社 製,以後,D810)を使用した(図 1,表 1).こ の機種は,iOS や Android の携帯端末上で外部キー ボードとして認識されるので,測定したデータを 表計算ソフトに直接入力できる.他の機種や他社 の製品でも Bluetooth 機能付きはあるが,専用ア プリにしか入力できない機種もあるので注意が必 要である.2 つ目は,計測器 Bluetooth アダプタ Pi! DKA–102(DIGI・TEK 社製)である(図 2).

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農作業研究 第 55 巻 第 2 号 − 88 − このアダプタはバッテリー駆動式で,データを外 部出力できる様々な計測機器(ノギス,電子天 秤,キャリパゲージ,デジタルフォースゲージな ど)に接続して,データを携帯端末に送ることが できる.詳しくは,web ページ(http://www.digi-tek.com/products/jirei/dka_available_list2.pdf,2019 年 9 月参照)に記載されている.このアダプタ も,携帯端末上で外部キーボードとして認識させ ることができ,表計算ソフトにデータの直接入力 が可能である.携帯端末は,Bluetooth 機能が搭 載されている端末であれば,Android 端末,iOS 端末のどちらでも使用できる.いずれも複数台の Bluetooth機器とペアリングすることができ,複 数台の Bluetooth 機器で計測されたデータを表計 算ソフトの同じシートに書き込むことが可能であ る.

3.設定方法

1)Disto D810 の設定方法 電源を入れて FUNC キー,設定キーの順で押 図 1  レーザー距離計 D810 11 ( A ) 5 図 1 レ ー ザ ー 距 離 計 D 8 1 0 図 2  計測器 bluetooth アダプタ DKA-102 13 ( A ) 5 図 2 計 測 器 b l u e t o o t h ア ダ プ タ D K A - 1 0 2 充 電 L E D 電 源 ・ 状 態 表 示 L E D 電 源 ボ タ ン 測 定 ボ タ ン 表 1 レーザー距離計 D810 の諸元 標準測定公差(mm)* ±1.0*** 最大測定公差(mm)** ±2.0*** 測定範囲(m)* 0.05∼250 測定に適さない環境の測定範囲(m)**** 80 最小測定単位(mm) 0.1

Bluetooth Smart Bluetooth v4.0 本体サイズ(mm)(H×D×W) 61×31×164 重量(g) 238   *:以下の条件で適用される:反射率 100%(白塗りの壁),強い光がな いこと,外気温が 25℃であること.  **:以下の条件で適用される:反射率 10 から 100%,強い光があること, 外気温 –10 ℃から 50℃であること.  ***:公差は,95% の信頼性で,0.05 m から 10 m で適用される.最大公差 は,10 m から 30 m では 0.1 mm/m,30 m から 100 m では 0.20 mm/m, 100 m以上の距離では 0.30 mm/m 発生することがある. ****:以下の条件で適用される:反射率 100%,周囲の明るさが 30,000 lux であること.

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松尾:携帯端末を利用した効率的な農作業データの収集 す(図 3).次いで,Bluetooth メニューに移動し, 数値モードにする.さらに,Bluetooth 設定メ ニューに移動し,数値の後に enter もしくは tab を挿入するように設定する. 2)DKA–102の設定方法 DKA–102の設定は,購入する際に接続する機器 をメーカーに伝えると基本的な設定がされて,納品 されるが,いくつか設定を変える部分もあるので, 説明書を参考に設定する.ここでは,電子天秤(A&D 社製,FZ-1200iWP)に接続して数値のみを送信 する場合の設定方法を説明する.最初に電池ボッ クス内部にある 1 から 4 番までの動作モード設定 用スイッチが,パラメータ動作(OFF,ON,ON, ON)になっていることを確認する(図4).このスイッ チを本体設定変更の設定グループ 1(OFF,ON, OFF,ON)にし,電源を入れる.測定ボタンを短 く押して,状態表示 LED を緑点滅にする.測定ボ タンを長押しして,緑点灯にし,緑点滅回数が 1 回(先頭付加なし)になるように測定ボタンを短く 何回か押す.再び測定ボタンを長押し,緑点滅させ, 測定ボタンを短く押して赤点滅にし,測定ボタン を長押し赤点灯させ,点滅回数が 3 回(自動オン / オフ しない)になるように測定ボタンを短く何回 か押す.電源ボタンを長押しし,電源を切る.同 様の操作を設定グループ 2(ON,ON,OFF,ON) でも,緑点滅を 1 回(キーボード設定:英語キーボー ド),赤点滅を 1 回(終端付加:Enter),橙点滅を 2回(送信間隔:中速 200 ms)となるように設定し, 電源を切って,動作モード設定スイッチをパラメー タ動作(OFF,ON,ON,ON)に戻す.電源ボタ ンと測定ボタンを同時に長押して起動させて,携 帯端末とペアリングを行う.次に使用する場合は, 電源ボタンだけで,自動的にペアリングされる.設 定を変更した場合などは,端末側のデバイス登録 を解除して,改めて登録し直す必要がある. 3)携帯端末の設定方法 表計算ソフトに数値が入力された後,カーソル を次の行もしくは列に自動で移動させるために, 携帯端末の仮想キーボードを英語入力にする.特 に,iOS 端末の場合,Bluetooth 機器を接続する と仮想キーボードの設定が変更できなくなる場合 があるので,接続前に仮想キーボードを英語入力 に変更する.

4.圃場における高さおよび深さの測定

作物の草丈や畝高さ,播種深さなどの高さを測 定する使用例を示す. レーザー距離計をカメラの一脚に固定した延長 図 3  D810 の設定画面 14 ( A ) 図 3 D 8 1 0 の 設 定 画 面 F U N C 設 定 b l u e t o o t h 設 定 数 値 モ ー ド 図 4  DKA-102 の電池ボックス内部 15 ( A ) 5 動 作 モ ー ド 設 定 ス イ ッ チ 図 4 D K A - 1 0 2 の 電 池 ボ ッ ク ス 内 部 図 5  高さの測定装置 ( A ) 5 図 5 高 さ の 測 定 装 置 延 長 バ ー レ ー ザ ー 距 離 計 一 脚 基 準 距 離 対 象 物 ま で の 距 離

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農作業研究 第 55 巻 第 2 号 − 90 − バーに取り付ける(図 5).延長バーにはレーザー 距離計が左右に振れるのを防止するための固定枠 および,水平を確認するための水準器がある.ま た,地面に沈み込むことを防止するために,一脚 の足元の接地面積を広くする板がある. この器具を使って測定する場合,まず,圃場の 平な場所でレーザー距離計から地面までの距離を 測定する.これが基準距離になる.次に,草丈な どの場合は,指などに取り付けたターゲット板の 高さを測定位置に合わせて,対象物までの距離を 測定する.基準距離から対象物までの距離を引く ことで,対象物の高さが出る. 精度を確認するために,室内および圃場で 3 段 階の高さを作り,この上に測定器具を載せて測定 した.1 つの高さについて,10 回計測の3反復で 行った.対照としてデジタルノギス(ミツトヨ社 製,CD-S15C)の測定値と比較して,測定精度を 調査した. その結果,室内でのレーザー距離計で測定した 高さの標準偏差は 0.5∼1.0 mm とレーザー距離計 の公差の範囲内であった(図 6).ノギスの測定 値と比較すると最大差は 1.6 mm であった.また, 屋外においてレーザー距離計で測定した高さの標 準偏差は 0.8 ∼ 1.1 mm で室内よりも大きかった. さらに,ノギスの測定結果と比較すると,最大で 2.0 mmの差であった.屋外で使用する場合,太 陽光の影響を受けることや,地面に装置を置いた 時に地面が沈下したことで,誤差が大きくなった と考えられた.しかし,この方法は,事前に基準 距離を測定するので,地表面の土を除いて計測す る播種深さなどの定規やノギスで測定が難しい対 象でも容易に測定が可能である.

5.収穫物の重さと幅の測定

収穫物の重さの計測には,Bluetooth アダプタ を接続した電子天秤(A&D 社製,FZ-1200iWP) を使用した(図 7).また,大きさ(長辺と短辺) の測定には,スライダ付きレール(THK 社製, スライドパック FBW2560XR)を固定し,スライ ダにレーザー距離計および縦板を取り付けた測定 器具を用いた.スライダの端付近に設置された板 と,スライダの縦板で対象物を挟むことで大き さを測定する.ただし,D810 の最小測定距離は 50 mmなので,ターゲット板を 50 mm 以上離し て取り付け,対象物の大きさが 0 mm の時のター ゲット板からD810までの距離を基準距離とする. 対象物を挟んで測定した距離から基準距離を引く ことで対象物の幅が出る. これらの器具を用いて,カンショの塊根の重さ および大きさ(長辺および短辺)を測定する場合 の作業時間の削減効果を明らかにするために,本 測定方法と電子天秤および定規を使って記帳する 図 7  収穫物の重さと幅の測定装置 18 ( A ) 5 ス ラ イ ダ 付 き レ ー ル レ ー ザ ー 距 離 計 電 子 天 秤 B l u e t o o t h ア ダ プ タ 図 7 収 穫 物 の 重 さ と 幅 の 測 定 装 置 タ ー ゲ ッ ト 板 縦 板 図 6 D810 を使った高さ測定の精度    注:図中のエラーバーは標準偏差 17 ( A ) 5 図 6 D 8 1 0 を 使 っ た 高 さ 測 定 の 精 度 注 : 図 中 の エ ラ ー バ ー は 標 準 偏 差 室 内 屋 外 ノギス測定値(mm) レーザー計測定値( mm ) 25 20 15 10 5 5 10 15 20 25 ノギス測定値(mm) レーザー計測定値( mm ) 17 ( A ) 5 図 6 D 8 1 0 を 使 っ た 高 さ 測 定 の 精 度 注 : 図 中 の エ ラ ー バ ー は 標 準 偏 差 室 内 屋 外 5 10 15 20 25 25 20 15 10 5

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松尾:携帯端末を利用した効率的な農作業データの収集

Abstract

A measuring apparatus with an external output function connected to a Bluetooth adapter and a laser distance meter with Bluetooth function can easily send measurement data to a smart device such as a smartphone or a tablet. We fabricated such an apparatus that could be easily operated by one person. For measuring plant height and seeding depth in the field, the vertical distance measuring apparatus used was a laser distance meter with a Bluetooth function fixed to a monopod and a smart device. The apparatus could measure height with an error range of about 2 mm. To measure the weight and width of an object, an electronic balance with Bluetooth adapter and an apparatus (in which the object was placed between a fixed plate and a sliding plate) measured the width with a laser distance meter and a smart device were used. The working time when measuring the weight and width of sweet potato roots using this measuring method was 58% less than that for a visually measuring method that required using a ruler, an electronic balance and filling in a field book.

Key Words

Bluetooth adapter,easily measuring ,laser distance meter 方法を使って,カンショの塊根を 10 個体 3 反復 で測定し,作業時間を計測した. その結果,10 個体の測定にかかく作業時間は, 本測定方法で 2 分 22 秒,慣行方法で 5 分 33 秒 であった(図8).本測定方法により作業時間を 58%削減できた.さらに,慣行方法では,野帳か らパソコンにデータを入力する必要があるが,本 測定方法は,パソコンにデータを転送してデータ 配列を整えるだけで良く,作業時間の削減効果は 高いと考えられた.

6.最後に

Bluetoothアダプタは,様々な外部出力のある 計測に取り付けることができ,紹介した測定器以 外に,ノギスなどに取り付けて圃場における茎径 の測定など,様々な場面で利用が可能と考えられ る.本解説が皆様の研究に役に立てば幸いである. 図 8 開発した測定方法の作業時間の削減効果    注:図中のエラーバーは標準偏差 19 ( A ) 5 図 8 開 発 し た 測 定 方 法 の 作 業 時 間 の 削 減 効 果 注 : 図 中 の エ ラ ー バ ー は 標 準 偏 差 開発法 400 350 300 250 200 150 100 50 0 作業時間( s/1 0 個) 慣行法

参照

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