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多文化への「気づき」から「共生」への方途 : 多文化クラスの日本人学生に焦点をあてて

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(1)

多文化への「気づき」から「共生」への方途

-多文化クラスの日本人学生に焦点をあてて一

加 納 陸 人

From A

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- Focus on ]apanese Studentsin the Multicultural Classes一

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Kano

The writer is currently responsible for a class involving tasks related to multicultural understanding(多文化理解演習)in the Department of Literature at Bunkyo University. 1n a class with a mixture of Japanese and foreign students, lessons involve deciding topics whereby discussion is the centerpiece

This paper discusses the multiculturalism class and Japanese students' awareness of topics within the variety of cultures that exist in Japan. A questionnaire revealed that 90 percent of Japanese students had undergone a change in their consciousness regarding multiculturalism. 1n particular, an awareness of the variety of cultures existing within J apan was realized. 1t is the writer' s belief that for future building of coexistence in a multi-cultural society, viewpoints from various angles were obtained. はじめに 筆者は文教大学文学部の「多文化理解演習

J

(以下、多文化クラス) という授業を担当している。多文化クラスは日本人学生と留学生によ る混在クラスで、グループ内での協働的な話し合いを通じ、相互理解 可E

4

(2)

文 教 大 学 言 語 と 文 化 第21号 や「発見

J

、「気づき」を促すことを目的としている。筆者は多文化クラ スを通じ、偏見やステレオタイプをいかに克服するかを課題にしてきた。 その中で加納 (2007)は、多文化クラスが異文化間トレランスlの転機 になっていることを述べた。 筆者は多文化クラスを進める中で、留学生に対するよりも日本人学生 に対して異文化意識を持つようになった。留学生が白文化のことを発言 した内容に関しては、ある程度予測できるが、日本入学生の発言の多様 さには驚かされた。文化の可変性を考えれば、当然のこととは言えるが、 「異文化」の言説に埋没されがちな「白文化

J

の多様性を欠落させてい ることは見逃せない。 これまでの研究は日本人と留学生とのこ項対立関係の中で論じられ、 留学生に焦点があてられたものが多い。留学生の「異文化」を強調する のではなく、日本人学生も留学生と同等レベルに置く視点が求められる。 日本社会におけるマジョリティーである「日本人」を知り、その多様性 に目を向けていくことが共生社会を生み出す力になるのではないだろう か。 本稿は日本入学生に焦点をあてて、多文化クラスで「白文化

J

におけ る多文化性をどのように気づき、捉えていくかを取り上げ、多文化共生 社会に向けての方途を探っていきたい。 1.多文化クラスについて 1 - 1 受講者数と構成 (2008年度〉 春学期と秋学期の受講者数と構成は以下であるO 1異文化問教育学会の造語。トレランス(tolerancelの訳語は「忍耐Ji寛存Ji共生Jなど や、また、使われ方も「態度や姿勢Ji関係」など多義にわたるが、ここでは参加型の多 文化クラスで双方向的な学びの中から生まれたものとして位置づける。 つ 臼 4 A

(3)

多文化への「気づき」から「共生」への方途 ー多文化クラスの日本人学生に焦点をあててー 春学期

(

4

-7

月):受講者数

7

5

名 -日本人学生:

5

9

名(1年生

-4

年生。日本語日本文学科(以下、 日文)20、英米語英米文学科(以下、英文)38、中国語中国文学 科(以下、中文)1) -留学生:

1

6

名〈学部生

6

、別科生

4

、交換留学生

4

、研究生

2)

留学生の国籍:中国

(

5

)、韓国

(

5

)、マレーシア

(

3

)

、 ドイツ (2)、ベトナム(1) 日本人学生は2年生が半数以上で、英文の学生が全体の約64%を占め ている。留学生は

5

か国で中国と韓国の学生が多く、各

5

名ずつである。 秋学期 (9月-1月):受講者数70名 -日本人学生 :54名(1年生- 4年生。日文12、英文40、中文2) ・留学生

1

6

名〈学部生

4

、別科生

6

、交換留学生

4

、研究生

2)

留学生の国籍:中国 (5)、韓国 (6)、マレーシア (2)、ドイツ

(

2

)

、ベトナム(1) 上記の受講者のうち、春学期からの継続が日本人学生35名、留学生14 名で、秋学期からの履修者が日本人学生19名、留学生2名となっている。 構成は日本入学生の70%近くは2年生で、全体の74%は英文の学生が占 めている。このことは03年度に本講座が開設されて以来のことで、英文 の学生の関心度が高いといえる。 1-2 日本人学生の国際交流体験 春学期と秋学期の最初に国際交流体験の有無に関して、以下のアン ケートを行なった。 Q:今まで国際交流や留学、サークル活動などで異文化交流体験をした

(4)

-43-文 教 大 学 言 語 と -43-文 化 第21号 ことがありますか。 春学期:(アンケート総数

5

9

名〉 有

3

8

2

1

秋学期:(アンケート総数17名〉 有9 無8 秋学期は体験者と未体験者がほぼ同数だが、春学期では約

64%

が体験 している。

0

5

年度の交流体験者は約

42%

で、

0

8

年度のほうが

2

0

ポイント 以上も多い。 理由としては国外留学やホームステイなどの国際交流が増えていると 考えられるが、学内の国際交流部「わっち」に参加している学生が10名 近くいた。具体的な交流体験としては、以下があげられる。 国際交流部の活動/オーストラリアやニュージーランド、アメリカ、カ ナダ、中固などに短期留学、ホームステイ/留学生と同じサークル/留 学生のチューター/中国の高校生と交流/留学生と同じクラス、など。

1-3

授業形態 日本人学生と留学生が各グループに混在するように配置したジグゾー 法2によるグループワークである。春学期は7グループ(1グループ10

-11

人)、秋学期は

8

グループ

c

l

グループ

8-9

人)。秋学期はグルー プのインターアクションを活発にさせたいという意図からグル←プを増 やした。 教師は従来の「教える」という立場ではなく、学生参加型の学びを促 進させるファシリテーターとしての役割を持っている。教師はあくまで 学生たちの協働作業の手助けをし、必要に応じてコメントをしている。 2社会心理学者アロンソン (Aronson)が開発した方法。グループワークでジク、ノeーパズル のようにお互いが異なった情報を持ち寄り、お互いに教えあうものである。多文化クラス では、日本人と留学生の混成で、テーマごとにグループ成員の組み合わせを変えることに より、多面的な視点が学べるようにした。

(5)

44-多文化への「気づき」から「共生」への方途 多文化クラスの日本人学生に焦点をあててー 授業は以下の流れで進めている。 授業の流れ

全体化

テ 一 一 一

G

設 一 一定 気一 き 一づ一 を一 一促 す一 一 一テ一 マ 一 グ ル ー プ ワ ー ク -グループでの話し合い .司会・記録・発表者分担 .グループの振り返り -協働関係づくり ・傾聴 -他者を知る ・気づきゃ発見の促進 G -他のグループを知る .気づきの相互作用 ・共感

G

-各グループによる発表 .質疑応答

振り返り ト ー │ 振 り 返 り ・ 内 省 シ ー ト │ ∞ G 「個」への気づきの 明確化 テーマ設定は最初の数回は、教師がいくつか準備するが、その後は学 生たちが話したいテーマを

K

]

法3で決めていく。グループでの話し合い では、司会者、記録係、発表者、発表補助を決め、毎回同じ学生が担当 しないように分担し合う。各グループが発表したあと、宿題として振り 返りシートを配布し、内省を行なうことにより気づきの明確化をはかつ ている。

2

.

授業で‘扱ったテーマから

2-1

r

気づき

J

の促進と「共通性・共感j 扱った主なテーマは以下である。 ①好きな食べ物・嫌いな食べ物/②食べるときの道具・マナー/③人生 3文化人類学者川喜田二郎のイニシャルから命名。多くの情報の中から関連のものをグルー プ化していき、その中からイメージの相互関係を見つけ、役立つヒントやひらめきを生み 出そうとするもの。

(6)

45-文 教 大 学 言 語 と 45-文 化 第21号 の三大事件(出来事)/④テレビ番組/⑤夏の行事、以上春学期。 ⑥海外の友達を案内する場所/⑦自分の持ち物で自国の文化を象徴する 物/⑧(家にあるもので)自国の文化を象徴する物/⑨(選ぴ歌)ど れにしょうかな

t/

⑩赤ちゃんのあやし方/⑪非言語行動/⑫冬の行事、 以上秋学期。 上記の中で、日本人学生がどのようなテーマによって多文化への気づ きを促したか、アンケートを実施した。

Q

1 :多文化への気づきを促したテーマは何でしたか(自国内のことも 含む)0 (複数回答可〉 表1

r

気づき」を促進したテーマ アンケート対象者 春 (33)・秋 (51) テーマ/人数(比率) ① 8 ② 23 ③ 5 ④ 14 ⑤ 6 (14%) (41 %) (9%) (25%) (11%) ⑥ 13 ⑦ 19 ⑧ 13 ⑨ 23 ⑩ 4 ⑪ 25 ⑫ 27 (ll%) (15%) (10%) (19%) (3%) (20%) (22%) 春学期のテーマでは②「食べるときの道具・マナー jが41%を占め、 最も高い数値を示している。①「好きな食べ物・嫌いな食べ物」と合 わせると60%に近い。授業では両者を連続した「食文化」の流れの中で 扱った。二番目は④「テレビ番組」で25%である。 秋学期のテーマでは⑫「冬の行事

J

22%、⑪「非言語行動」が20%で ほぼ同じ数値。次に⑨

i

(

選ぴ歌)どれにしょうかな

J

19%、⑦「自分 の持ち物で自国の文化を象徴する物

J

15%と続いている。 また、同時に文化の共通性や共感を得たことについてもアンケートを 実施した。

Q2:

異文化だと思う関係にあって、お互いの文化が共通していたこと や共感を覚えたテーマはありましたか。(複数回答可〉 46

(7)

多文化への「気づきJから「共生」への方途 ー多文化クラスの日本入学生に焦点をあててー 表2文化の共通性・共感 アンケート対象者:春 (33)・秋 (51) テーマ/人数(比率) ① 8 ② 9 ③ 7 ④ 6 ⑤ 7 (22%) (24%) (19%) (16%) (19%) ⑥ 11 ⑦ O ⑧ 5 ⑨ 9 ⑩ 24 ⑪ 11 ⑫ 28 (12.5%) (0%) (6%) (10%) (27%) (12.5%) (32%) 表

2

の中で一番高い数値を示したのは、⑫「冬の行事

J

である。同世 代の学生たちにとって、クリスマスや正月、バレンタインは国籍を問 わず、共通意識が持てるといえる。次に⑩「赤ちゃんのあやし方

J

27%

で、学生たちは固が違っても万国共通の面があるという意識を持ったよ うだ。反対に⑦「自分の持ち物で自国の文化を象徴する物」は0%であっ た。各自自分の持ち物を持参してもらったが、日本人学生の意識にはあ まり共通性が感じられないと受け取ったようだ。このことは後述したい。

2-2

r

気づきj と「共通性・共感

J

の分析 アンケートの中で上位の数値を示したテーマを取り上げ、発表や振り 返りシートから「気づき」と「共通性・共感」の部分を取り上げ、分析 していきたい。

2-2-1

食文化 全体的にみると、身近な食文化のテーマは個人差、国・地域差など気 づきを促すテーマとしては、相応しかったといえる。学生の振り返り シートの中でも、以下のことが書かれている。 -好き嫌いは個人差があることを改めて認識した。 -地域差を感じた。特に栃木県の郷土料理「しもつかれ」には驚いた0 ・固によっても違い、個人差がみられた。日本でも個人差がみられた0 ・固によっても文化の違いがたくさんあるが、同じ固の中でも家庭に よって違いがある。 円 i a ι τ

(8)

文 教 大 学 言 語 と 文 化 第21号 -同じ「箸文化

J

でも中園、韓国、日本との違いがあることを知った0 ・日本国内の地域や他の固と比較することによって、自分の一般的に 持っていたステレオタイプとはまったく違った習慣などを考える ことができた。 -自分のうちでは

My

箸、

My

茶碗があるが、グループの中では、区別 が必ずしもない人やほとんどの食器に区別がある人がいて、自分 が普通だと思っていたことが違うことに気づいた。 食文化はふだん自分の食事が当たり前だと思っているだけに、白文化 の中での違いや多様性を認識する機会になった。特に「しもつかれ」は 栃木出身者が持参したこともあり、印象に強く残ったと考えられる。 また、グループワークで「割り勘

J

や誕生日に誰がお金を支払うのか が話題になったが、文化の違いを知り、その違いに寛大になりたいと書 いている学生もいた。本テーマは国による違いと共通性、日本の中での 地域差、個人差が色濃く出る要素があったといえる。

2-2-2

テレビ番組 本テーマは受講生が選んだテーマである。グループでの話し合いは笑 い声も聞こえ、かなり盛り上がっていた印象を持っている。あるグルー プが発表時に「一日何時間ぐらいテレピを見ているか」についてアン ケートを実施したが、多文化の受講生は平均すると

2-3

時間であった。

1

時間未満は約

25%

で、部活やアルバイトなどで見る時聞が取れないと いう学生もいたが、中には常にテレビをつけている者もおり、多文化の 学生にとってテレピは身近な存在だといえる。以下、振り返りシートに 記載された代表的なものを取り上げたい。 -国の違いや日本人学生の感じ方の違いや共通点、相違点が見つかっ た。

(9)

-48-多文化への「気っき」から「共生」への方途 多文化クラスの日本人学生に焦点をあてて -テレビはどの国でも似ているという印象だったが、違っている点が 多かった。 -日本のアニメが世界に通用していることが分かり、嬉しかった0 ・韓国ドラマの内容が視聴者の要望で変わることやベトナムではテレ ビの吹き替えは一人が全部こなすことには驚いた。 上記のほかにも、

CM

の流し方やドラマの放映時間、チャンネル数、 番組の内容の違いについても触れている日本入学生が多かった。特にア ニメに関しては、留学生も日本のアニメをよく知っており、共通の話題 として共感が生まれた。中でも『ドラえもん.1

r

名探偵コナン.1

r

ポケモ ン.1rONEPIECE (ワンピース).1などはかなり細かい部分にも触れて いた。また、宮崎駿の『となりのトトロ』や『千と千尋の神隠し

J

など、 さまざまな作品についても取り上げていた。

2-2-3

選び歌・非言語行動 選ぴ歌とジェスチャー・しぐさなどの非言語行動は「言葉・動作か ら

J

の一連の流れの中で、扱ったものなので、ここでは一緒に取り上げる。 前述したアンケートでは、日本人学生の秋学期のテーマの中では、「気 づき

J

に関して非言語行動

20%

、選び、歌

19%

で二番目と三番目の数値で ある。 選び歌は、子どもの頃に何かを選ぶときに使った「どれにしょうかな (天の)神様の言うとおり」の後に続く言葉を出し合うもので、かなり 多岐にわたる言い方が出された。振り返りシートでは、ほほ全員の受講 生が選ぴ歌について触れており、その違いに言及している。 非言語行動については、話し合いによってふだんの何気ないしぐさに 重要な意味を持っていることを認識した。このグループワークでは、日 本入学生に内省を促す役割を果たした留学生の役割が大である。以下、

4

9

(10)

文 教 大 学 言 語 と 文 化 第21号 日本人学生の振り返りシートから主なものを記載する。 〈選び、歌について〉 -全国共通だと思っていたが、同じ県でも地域によって違っており、 世界には多くの文化があるのだろうと改めて思った。 -日本で非常に多くの言い方があることを知り、地域の違いだけでな く年齢でも違いがあると感じた。 -同じ埼玉出身でもこんなに違うものかと思うほど違いがあり、驚き と感銘を受けた。 -考えてみたら、誰に教わったのか、気づいたら口から出るように なっていた。無意識に身についたことを客観的に見られるように なった0 ・「鉄砲撃ってパンパンパン、柿の種、あベベのベのベの言うとお り。」を地域特有などではなく、日本の子どもはみんなこれをやる のだと思っていた。あまり当たり前すぎて他の地域には他の選ぴ 歌があるなんて考えたこともなかった。 -他の学生は自分が発表した言い方を知らなかったので、カルチャー ショックを受けた。 -今回のテーマの中で一番の発見は、固によっても文化が違うことは 分かるが、日本の地域によっても違うことだ。 -選ぴ歌は中園、韓国、ドイツにもあることを知り、共通性を感じた。 しかも、意味がよくわからないものが多く、不思議だと思った。 〈非言語行動について〉 -非言語行動が人に与える影響や顔の表情などちょっとしたニュアン スを占める割合が多いことを身をもって感じた。 -指l本のしぐさでも世界には様々な意味があり、日本でなにげな く使っているしぐさでも世界では敬遠される意味であったりして、

(11)

-50-多文化への「気づき」から「共生」への方途 多文化クラスの日本人学生に焦点をあててー 世界は広いと実感した。 ・ジ、ェスチャーの多様さ、あいづちなどのしぐさを多用する日本、あ まり使わない中国の話し方の違いなど、自分の知らない非言語行 動の側面に気づかされたことが何よりの収穫であった。 選び歌は自文化の中の多様化を気づかせるテーマであった。同じ地域 であっても世代差、個人差もあり、多様な言い方が存在している。日本 入学生は日本だけでなく、中国や韓国、ドイツにもあることを知り、国 は違っても共通性を感じたようだ。言葉も日本と同じように意味はよく わからないが、リズムという点では一致しており、日本人学生はもっと ほかの言い方を知りたいという意欲が高まり、いい動機づけにもなった。 非言語行動については、コミュニケーシヨンをはかる上での重要性に 気づき、閉じジ、ェスチャーやしぐさでも相手に誤解を与えたり、侮辱の 意味につながることを認識した。たとえば、

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サイン

J

は日本人学生 が写真を撮るときなどによく使用しているが、手の甲を相手に向ける 「逆Vサイン」は、イギリス文化圏では「侮辱」を表したり、マレーシ アで

r

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J

を表す場合、インド系は首を横に振るので、マレ一系や中 国系の学生が誤解したことなどが話題になった。 このテーマを通して、ふだん何気なく使っている言葉や動作を客観的 に見ることができたのではないだろうか。

2-2-4

冬の行事 本テーマは受講生が選んだテーマであり、秋学期の中では「気づき」 と「共通性・共感」について最も高い数値を示した。グループワークで は、冬の行事の中でも主にクリスマス、正月、成人式、バレンタインな どに話が及んだ、。以下は日本人学生から出された主な感想である。 ・クリスマスは国を問わず、各人の過ごし方に違いがある。 電 B よ F h d

(12)

文 教 大 学 言 語 と 文 化 第21号 -日本や韓国、中国(南方)、ベトナムの正月の習慣には共通部分が ある。 -韓国、中園、ベトナム、マレーシア(中国系)の正月は旧暦でやっ ており、日本が少数派であることを知った。 -正月は日本の中でもすることが違っていることに気づいた0 ・中国の春節(

I

日正月)は、北と南では違うことを認識した。 ・バレンタインは女性が男性に贈るものと思っていたが、男性から女 性に贈る国が多いことは意外だ、った。 -大晦日には栗を食べるものとずっと思っていたが、栗を食べるのは 自分の家庭だけだったのに驚いた。 -冬の行事は楽しみの人もいれば苦痛な人もいることを知った。 冬の行事のテーマは

1

2

月という時節も影響しており、学生たちには話 しやすかったという印象を受けた。アンケートにも表れているように、 同じ行事でも「違い」と「共通性」への意識が高まったテーマといえる。 正月はかつて日本も旧暦でやっていたこともあったが、現在ではほと んどなくなった。日本人学生は、アジアの国では旧正月のほうが主流 であることを知り、日本が少数派であることを認識した。日本の圏内で あればどの家庭でも自分の家庭と同じであろうという意識を持っており、 大晦日に「栗」を食べたり、新年に日付が変わる瞬間にジャンプをする 学生もいることを知り、多様な面を認識できたのではないだろうか。 バレンタインについても女性が男性にチョコレートを贈るのは、日本 が少数派であり、行事における日本の位置を客観視できたと考えられる。 一方、餅を食べることやお年玉などについては、アジアの国では共通 性が高いことを知り、何歳までお年玉をもらうのか、金額はいくらか、 餅をどのように食べるのかなど、細かい部分にも話が及んだ。 つ 中 F h d

(13)

多文化への「気づき」から「共生jへの方途 多文化クラスの日本人学生に焦点をあててー

3

.

多文化に対する意識の変化 日本人学生が多文化クラスで多文化に対する視点やものの見方が変化 したかどうかについて、アンケートを実施した。 Q3:この授業で多文化に対する視点やものの見方が得られましたか。 表3多文化に対する意識変化 アンケート対象者:51名(春・秋受講者 (33名)・秋受講者 (18名)> はい 46 (90%) いいえ

o

(0%) よくわからない 5 (10%) 表 3にあるように 90%の日本人学生は、多文化に対する意識が変化し たとある。「いいえ」は0%で、「よくわからない」と答えた学生は 10% である。春学期、秋学期とも多文化に対する視点やものの見方が得られ たという学生の数値が高く、多文化に対する意識形成に影響を与えてい ると考えられる。「はいj と答えた学生に、さらに、アンケートでどん な点かを尋ねた。いくつか共通しているものを以下に挙げた。 -まず、ステレオタイプを作らないという根底の部分に初めて気づき ました。

.

r

中国人は

00

J

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韓国人は

00

J

などのステレオタイプでもの を見るのではなく、その個人に目を向けることの大切さが得られ ました。 -文化は国や地域だけでなく、もっと小さなコミュニティー(家庭な ども)にもあると気づきました。 -特に他国に対する思い込みが間違いだと知り、圏内地域差に多く気 づきました。 -今まで留学生と接する機会がなく、異文化はイメージでしかなかっ たが、今はもう、さまざまな面での共通点や相違点など、リアル な実態を知ることができました。 円 べ u p h d

(14)

文 教 大 学 言 語 と 文 化 第21号 -日本対他国ではやはり文化の違いが大きく、また他国内(中国や韓 国など)でも文化は異なるから、一概に「中国は

00

だ」などの イメージを持つべきでないと思えるようになった。同じことが日 本国内でも言えるということが最も勉強になった点でした。 -多文化といったら「留学生」との話し合いというイメージがとても 強かったのですが、選ぴ歌などをグループで話し合ったとき、多 文化というのは外国だけでなく、日本で地域によって異なること も多文化なんだと改めて気づくことができました。 -日本では当たり前だと思っていたことが他国では違っていたり、同 じことをしても違った解釈をされてしまうことがあることなどに 気づけました。 ・自分の身の回りで起きている物事や習慣は、自分にとって当たり前 だけど、留学生の話を聞いて他の固では全く違う習慣などを知る と、もっといろんなことを知ったら視野が広がるのではと思いま した。 -物事をとらえる時、一つの考え方や視点から入るのではなく、世の 中にはいろいろな目視で物事を考えたりすることができることを 学びました。 *表記、文体はそのままにしである。 日本人学生は、ふだんあまり考えたことのない「当たり前のこと

J

に グループワークを通し、客観的に物事を捉えられるようになったといえ る。留学生を常に属性である「国」として見るのではなく、「個」に向 けることによってステレオタイプを排除していくことができたと考えら れる。 また、他国の文化の「相違点jだけでなく「共通性」にも視点が及ぶ ようになり、「意外と思考回路が同じだった」と同じ人間なんだという

(15)

-54-多文化への「気づき」から「共生」への方途 ー多文化クラスの日本人学生に焦点をあててー 意識に変化してきた。さらに、日本国内においても「同文化」だという 意識から、地域差や個人差に着目し、「日本国内でも多文化が存在して いる」ことに気づいたことが窺える。この多文化クラスを通して、文化 に対して複眼的にものを見る視点を養うことができたといえる。

4

.

まとめと今後の課題 多文化クラスにおける日本人学生の多文化への「気づき」を中心にア ンケートなどから分析を行なった。その結果、留学生に対して当初個人 ではなく、属性である固という括りで見ていたが、グループでの話し合 いを通じ、一人の人間として見る視点に変化してきた。それと同時に自 文化に対しでも多様な文化が存在していることを実感できた。その背景 には、身近なテーマが「気づき」を促進させる大きな要素でもあった。 日本人学生はアンケートの結果にもあるように、「食文化」や「テレ ピ番組

J

["冬の行事

J

["選ぴ歌

J

r

非言語行動」について、「気づき」を促 進させるテーマとして上位の数値を示した。「選ぴ歌

J

は自文化の中の 多文化を知るうえで効果的であった。「アニメ」は同世代の日本人学生、 留学生に関係なく共通の文化であり、共感が得られたといってもいい。 一方、テーマ「自分の持ち物で自国の文化を象徴する」については、 アンケート結果 (0%) を見る限り共通性が見出せなかったようだ。グ ループでの話し合いを見ていても、日本人学生は、なかなか思いつかな い様子であった。「御守り」ゃ「扇子

J

["ストラップ

J

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だるま

J

などが 出されたが、ルーツが中国であるものも見られた。日本入学生にとって 「日本文化」はイメージしにくいものであるといえる。 日本語教育でも「日本文化」を取り扱い、伝統的な行事などを取り上 げることもあるが、必ずしも現代の日常生活に密着しているとはいえな い。いわゆるステレオタイプされた「日本文化」規範を日本語学習者に F 同 U F 同 U

(16)

文 教 大 学 言 語 と 文 化 第21号 学ばせる機会を与えてしまっている。アンケートの中に「自分の固や出 身地域の文化をまず知ることが、多文化を知るうえで大切だ。」とあっ たが、白文化をどのように捉えていくのか、今後、その視点が問われる であろう。 当初、日本人学生は留学生の文化を一元的に捉える傾向があり、自文 化に対しでも同様の現象が見られた。その根底にあるのは、「日本人」 は均質であるという潜在意識が無意識に働いていたからではないだろう か。それを崩す役割を果たしたのはグループワークである。 多文化クラスの授業形態はジグソー法を取り入れているが、学生たち は主体的な参加者として協働的な活動の中で学び、人間関係づくりにも 寄与している。日本人学生対留学生のような二項対立的な国籍のカテゴ リーからグループの仲間としての意識や共感が生まれ、再カテゴリー化 されていったと考えられる。日本人学生は、上記の活動によって複眼的 な視点が生まれ、留学生と日本人学生の「異なり」を対等の関係に置く ようになった。そのことによって、日本社会における多様性を見出し、 多文化の存在に気づいていったのではないだろうか。 山鳥 (2002)は学校教育の形式はどこかにモデルがあって、それを唯 一のよりどころとする重ね合わせ的理解に重点が置かれているとしてい る。しかし、答えが自分の外にしか存在しないタイプについては、以下 のように述べている。 自分の中に重ね合わせるべきモデルは用意されていません。つま り、既知の答えはありません。参照すべき教科書もなく、先生は 教えてくれません。自分で新しく発見してゆくしかないタイプです。 一

-

n

わかる j とはどういうことか一認識の脳科学』ちくま新書一 多文化理解もどこかにモデルがあって答えを見つけていくものではな

5

6

(17)

多文化への「気づき」から「共生」への方途 ー多文化クラスの日本人学生に焦点をあててー い。学生たちを取り巻く環境は、マスメディアをはじめ、物事を一般化 する傾向にある。そこに重ね合わせ的な理解が行なわれ、ステレオタイ プや偏見が生まれる可能性が高い。それを克服するには、「海図なき海

J

に出たときと同じように、自分が使える海図を自ら作っていくしかない だろう。それには他者と向き合い、コミュニケーション力やっき合う力 を身につけていかなければならない。 山脇 (2003) は「多文化共生社会基本法の提言」の中で、多様な文化 的な背景を持った人々が多文化共生社会を形成するために法制度のあり 方を検討し、外国人との共生する社会をいかに築いていくかが重要な課 題だとしている。また、筆者が勤務する大学の地域である埼玉県「東部 地域センター」においても「多文化共生・共栄の地域づくり」が推進さ れつつある。われわれを取り巻く環境は、大きく変化してきており、社 会の一員として黙止できない状態に置かれている。 しかし、「多文化共生社会」といっても、各人捉えかたは同じではな い。前述した山脇の「多文化共生社会基本法の提言」の中には「多文化 共生社会とは、国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的違いを認 め、対等な関係を築こうとしながら、ともに生きていく社会をいう。」 とある。一方、戴 (2005) は

r

r

多文化共生』とは、異なる『文化jの 共生ではなく、社会的に異なる位置に置かれている人々の聞の共生を意 味している。」と述べている。 前者の社会のマイノリティーの人たちに照射し、人権の確立や文化的 アイデンテイテイの保障などは、「多文化共生社会」を形成していく上 で前提になることである。また、社会の立場や異なる位置に置かれてい る「日本人」も視野に入れていかなければならない。 多文化クラスで日本人学生が同文化の中にも異なる部分があり、多文 化への「気づき」の契機になったことは、社会の中のさまざまな立場の 司 t F h u

(18)

文 教 大 学 言 語 と 文 化 第21号 人々に対して目を向けていく方途になるであろう。そして、さらに多く の実践の中からさまざまなタイプの「日本人」を認めていく多元的な視 点を構築し、多文化共生社会を形成していく可能性を切り拓いていくこ とになろう。 引用文献 (1)山鳥重

(

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わかる」とはどういうことか一認識の脳科学』 ちくま新書

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)

外国人との共生に関する基本法制研究会・山脇啓造代表

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3

)

『多文化共生社会基本法の提言

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D

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)

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外国人との共生に関す る基本法制研究会事務局 ( 3)戴エリカ (2005)

1

1

多文化共生」と「日本人

J-

I

文化」と「共 生」の再検証

J

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異文化問教育

J

2

2

異文化問教育学会(アカデ ミア出版会) 参考文献 (1)加納陸人

(

2

0

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7

)

I

多文化を理解する双方向の学び場一異文化問ト レランスの転機

J

r

日本語文化研究』第

7

集 学苑出版社 (2 )倉地暁美(1998)

r

多文化共生の教育』勤草書房 ( 3)浅間正道編著 (2

0)

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異文化理解の座標軸一概念理解を超えて

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日本図書センター (4)中島智子 (2

5)

I

異文化問教育研究と「日本人性

J

J

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異文化問教 育

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22異文化問教育学会(アカデミア出版会)

(19)

-58-多文化への「気づき」から「共生」への方途 多文化クラスの日本人学生に焦点をあててー (5 )高木栄作 (2005)

r

マスコミの視点から考える異文化理解」竹下裕 子・石川卓編『多文化と白文化一国際コミュニケーションの時代』 森話社 (6 )川村千鶴子 (2002)

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人の『異なり

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とは何か 多文化教育を拓く もの」渡戸一郎・川村千鶴子編著『多文化教育を拓く マルチカ ルチュラルな日本の現実のなかで

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明石書店 Q d F h d

参照

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