学 位 論 文 内 容 の 要 約
氏名 新藤 裕治
論文題目
脳卒中患者の社会復帰に向けた回復力促進のための看護の展開と課題 -看護師への信頼の影響―
Nursing care for promoting resilience toward social recovery in the stroke patients -Effect on patients’ trust of nurses-
学位論文内容の要約 【目 的】 脳卒中患者の急性期から回復期における回復力(身体機能・日常生活動作・意欲)の変化と看護 師への信頼との関係を分析し,脳卒中患者の回復力を促進するための看護の展開と課題を見出す. 【方 法】 1. 調査対象 脳卒中発症しA 病院(急性期病院)脳神経外科病棟入院治療後,回復期リハビリテーション 病院(以下,回復期病院)に転院した患者12 名 2. 調査内容 1) 基本属性:年齢,性別,疾患名,病巣部位,再発の有無,家族構成,結婚歴,職業の有無, 趣味の有無,急性期病院在院日数,改訂版長谷川式簡易知能評価 2) 身体機能:脳卒中機能障害評価(SIAS)22 項目 4 段階評価(上下肢麻痺のみ 6 段階評価), 得点が高い程,機能障害がないことを示す.
3) 日常生活動作:Functional Independence Measure(FIM)18 項目を千野(2012)の文献 から詳細にした40 項目 4 段階評価,得点が高い程,自立していることを示す. 4) 意欲:やる気スコア14 項目 4 段階評価,得点が高い程,意欲が高いことを示す. 5) 看護師への信頼:患者信頼スケール下位尺度4 項目・全 28 項目 4 段階評価,得点が高い 程,信頼が高いことを示す. 3. 調査手順 急性期病院退院前(Ⅰ期)回復期病院転院1 週間後(Ⅱ期),回復期病院転院 1 か月後(Ⅲ 期)の3 回調査を実施した.基本属性・身体機能・看護師への信頼は調査者により,日常生活 動作・意欲は,入院前の生活状況や現在の症状・日常生活動作・意欲を経時的に記載できる「生 活記録」を作成し,項目毎に患者と担当看護師が両者で一緒に話し合い評価した. 4. 分析 基本属性は単純集計を行った.回復力のⅠ期~Ⅲ期における変化は,Wilcoxon の符号付き 順位和検定(Bonferroni 法による多重比較)を用いた.患者群の回復力における各期の関係性 は,Sperman の順位相関係数を用いた.看護師へ信頼のⅠ期~Ⅲ期における変化は,下位尺 度は反復測定分散分析(多重比較),細項目は Wilcoxon の符号付き順位和検定(Bonferroni 法による多重比較)を用いた.患者群の回復力と看護師への信頼の関係性は,Sperman の順 位相関係数を用いた.有意水準はp<0.05 とした. 5. 倫理的配慮 本調査は,山梨大学医学部倫理審査委員会による承認(No.1040)を得た.調査対象者に, 本研究の目的,調査内容を口頭と文書により説明し,同意を得て実施した.
学 位 論 文 内 容 の 要 約 ( 続 紙 )
氏名 新藤 裕治
【結 果・考 察】
患者の身体機能の変化では,合計得点がⅠ期Me=72.5 ,Ⅱ期 Me=74.5,Ⅲ期 Me=76.0 であり, Ⅰ期と比較しⅢ期が有意に高値であった.日常生活動作は,「浴槽への移動」がⅠ期Me=3.5 であり, その他はⅠ期~Ⅲ期Me=4.0 と高値であった.意欲は,「何かに興味を持っていることがある」はⅠ 期Me=2.0・Ⅱ期 Me=3.0・Ⅲ期 Me=2.5 と各期で低値であった.回復力における各期の関係性は, Ⅰ期では「毎日張り切ってすごしている」と「咀嚼し飲み込む」(rs=0.622 p<0.05)他 4 項目に有 意な正相関があったが,Ⅲ期は「上肢近位(膝・口)」(rs=0.638 p<0.05)や「15m の車いすでの 移動」(rs=0.638 p<0.05)など 24 項目に有意な正相関があり,回復期に移行する中で身体機能・ 日常生活動作と意欲において関連する項目が多くなった. 回復力の変化に伴う看護師への信頼の変化は,日常生活動作ではⅠ期「ふたを開ける」と「看護 師の話を聞いて目からうろこが落ちたような気がした」(rs=0.629 p<0.05)やⅡ期に「ベッドから 椅子への移動」と「病棟の看護師は誰でも私のことや私の世話についてよく知っている」(rs=-0.839 p<0.001)など,急性期・回復期直後に関連しており,急性期から回復期直後における患者の日常生 活動作や活動状況を把握し,患者を信頼する関わりが環境への適応に影響すると考えられる. 意欲では急性期から回復期にかけて有意な関連があったが,Ⅲ期に「自分自身にやる気がないと 思う」と「看護師は私の好みや意見を取り入れながら世話をしてくれる」(rs=‐0.611 p<0.05)他 6 項目など有意な負相関があることから,看護師は社会復帰に向けて意欲のない患者自身が自己の能 力を引き出せるよう主体的存在と認める態度や自己肯定しつつ社会復帰していく姿を見守ることが 重要であることが示唆された.また,Ⅱ期に「毎日張り切って過ごしている」と「ナースコールを 押すとすぐに対応してくれる」(rs=0.795 p<0.001)他 14 項目と有意な正相関があることから,患 者から信頼されるよう一貫して患者を尊重し,関心を持ち,患者に信用され安心感を与えることが できる関わりが重要であることが示唆された. 【結 論】 脳卒中患者が急性期から回復期において回復力を促進していくためには,身体機能回復のみなら ず,意欲の向上とそれを支える医療者の関りが重要である.その過程の中で,回復期では意欲のな い患者自身が自己の能力を引き出せるよう主体的存在と認める態度や,自己肯定しつつ社会復帰し ていく姿を見守ること,新しい情報を提供して自ら学習することで安心感を得ることが社会復帰に 向けて重要である.また,患者自身が回復促進できるよう,早期から急性期リハビリテーションの 必要性や回復期病院での専門的なリハビリテーションが可能であることなど情報提供していく体制 づくりと,看護師個々人が日々の関わりにおいて信頼されるよう一貫して患者を尊重し,関心を持 ち信用し,安心感を与える関わりが重要である.