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ケネス・R・アンドリュース著 中村元一/黒田哲彦訳『経営幹部の全社戦略』産能大学出版部(1991.1.25)

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長野大学紀要 第13巻 第1号 37-42真 1991

評〕

ケネス・R・アンドリュース著 中村元一/黒田哲彦訳

経営幹部の全社戦略』産能大学出版部

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The Concept of Corporate Strategy,

Kenneth R. Andrews. 3rd Edition.

原著者のケネス・R・アン ドルーズは--バー ト大学 ビジネス ・スクールの ドナル ド・カー ク ・ デ ィヴイッ ド記念講座名誉教授の職にあ る。訳者 の まえが きに も見 られ るように、 この書物はアメ リカ企業の幹部の問で全社戦略に関す る古典的な 書 として広 く読 まれているもので第三版 として内 容 を改め られ出版 された ものである。 第 1章 最 高執 行 責 任 者 、社 長 ゼ ネ ラル マ ネ ジ ャーその役割 と責任 その中心概念は原書名の とお り全社戦略

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に関す る考 え方であって、「そ の コンセプ トを自社事業 を導 く諸条件の中で具体 的なものにす るためには、それが企業全体 を包括 しているこ とが必要である」 としている。全社戦 略が企業全体 を絹羅す ることを意味 し、 この全社 戦略の コンセプ トにおいて経営幹部の役割 を重要 視 している。その役割 を次のように認識 している。 経営幹部は、人間 としての質 を他の人々に伝播 さ せ ることを通 じて、 目的 を質的に向上 させ、高度 に専門的な戦略の実行は、経営幹部の個人的な価 値観、質の基準、そ しで性格の純粋 さが どの程度 深 く、 また どの程度持続す るかに依存 している。 戦略は人間によって思考 され、実行 され るが、 それには知識、知恵 と行動が伴 なわなければなら ない。 これ らは価値観 と人間の感覚 に裏付け られ た もの となる。従来経営戦略 を考 える場合に人間 的側面があま り重要視 されなかったが、人間的要 因をおろそかにす ると戦略の成功は見込めない。 人間の能力 と技能は重要 な戦略的資源である。

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経営幹部の中で トノブについては、「と くに社長 の機能は人間が抱 く恒久的な大志の模範である」 と言 う。企業の トノブは企業の個人 と組織にいろ いろな価値意識の注入 をその形態 を問わずおこな っている筈である。 トノブが どのような価値観 を 抱 くかは全社戦略に大 きく影響す る。戦略 を見 る には トノブの価値観 を知 るとい うことも重要 な要 件 となる。 第 2章 全社戦 略 の コンセ プ ト 全 社 戦略 は企 業 に お け る意思 決 定 パ ター ン

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である。そのパ ター ンに よって、 自社 目的、存在理由、 目標が決定 され る。 次にそのパ ター ンに よってこうした E]標 を達成す るための主要 な方針 と計画書が作成 され る。 さら にそのパ ター ンによって、① 自社が運営す る事 業の範囲、② 自社が どんな種類の経済 ・人間組 織であった らよいか とい う点に関す る現在像 と望 ましい将来像、(卦 自社がその株主、社月、顧客、 地域社会に対 して どんな種類の経済的、非経済的 な貢献 を志向す るか とい う点、この三者が定義 さ れ る。 意思決定パターンは創造的なプロセスである。 誰れが意思決定パ ター ンの当事者 となるのか、常 識的には トノブであるが、現実的には組織に影響 力 を持つ く誰れかが〉提案 し、協議 し合 意に達 し た ものであるO この意思決定のプ ロセスは米国企 業 と日本企業 との間には相違がある。 このキイー となる人間の思考方法、性格、信念、価値観 とい うもの次第で意思決定パ ター ンが違い、 いろいろ

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なパ ター ンが出現す るO最終的には全社的なコン センスを得 なけれけれ ば戦略的強味は発揮 されな いので意思決定パ ター ンに至 るプロセスを充分考 慮す る必要がある。 また戦略的な意思決定の統一制 (Unity)、整合 性 (Coherence)、社 内的な一貫性 (Consistency) のおかげで、環境の中に自社 を位置づけ ることが で きる。 そ してこれに より、(》 自社 に固有のア イデンティティ、② 自社の強みの動月力、③ 市 場地位におけ る成功 の確率 を得 ることができると している。 意思決定パ ター ンに至 るプ ロセスは、非定型的、 不明朗 な前提、仮定が存在す る。決定のための不 確実、不確定な変数 が 多 く存在す る。そのため矛 盾 をもった不確実な略戦が作成 されることが 多い。 しか し企業に とって未来は複数以上であるとい う こと。未来にはある意志が存在す るし、その意志 を発見 し戦略 を形成す る必要がある。例 えば社会 的価値観の変化予測 であ り、 自己の価値観の変化 である。 また意思決定の統一性、整合性、一貫性は複数 の人間、複数の組織 はその数だけの考 え方 を持 っ ているもので、異な る思考 を一本化す ることに近 づ け ることにほかな らない。人間各 自の欲求 と組 織の欲求 とそれぞれ主体性を発揮 させ、人間各 自 と組織 を行動- と導 くエネルギー源、心理的な力 を発揮 させ る状況 を作 ってお く必要がある。 これ によ り、固有のアイテ㌧′ティティ、強みの動員力、 成功の確率 を得 るもの と思 う。 これ らについては 後に誘 因 と制約のシステムで触れ られている。 著者は、「合理的に到達 し、社月の参加 によって 感情的に受け入れ られ た明確 な目的に導かれた企 業は、当てず っぽ うとチャンスに 自社の将来 を委 ねた企業 よ りも、利益 の面で も社会的な善(Social good)とい う面 で もよい結果 を得 るこ とが多い」 としている。合理的に到達 した戦略は全社的なコ ンセンサスを得 た状況 であ り、全員参加 によるエ ネルギー と方向が定 まった状況におかれているこ とを意味す る。 この段 階において成功の確率 は高 め られ る。理想的に このプロセスを考 えられ るが 戦略実行 においては葉箆しい問題が要所 に潜む場合 がある。 この克服が課題 となるのである。 - 38-第

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章 自社 と自社環 境 自社が知 るべ きことは何か、次に掲げる五つの 質問に答 えることによ り (機会 とリスク)の変化 を推定す るこ とがで きるとい う。 1.その企業が参加 している産業の経済、技術、 構造面 での本質的な特徴 は何か。

2.

経済、技術面での特徴におけ る将来変化 を示 す トレン ドの中で、 どんな トレン ドが明 らかだ ろうか。

3.

その産業内の競争お よび他産業 との間の競争 の本質は何か。

4.

その企業が属す る産業の中で競争に成功す る ための必要条件 は何か。

5.

最 も直接的に応用 され る技術、経済、社会、 政治面での発展 を前提 とす ると、 この産業に属 す るどんな企業に も利用可能な戦略の範囲は何 か。 企業はいま急激な環境の変化か ら戦略的な挑戦 を受け、外部環境 を意識 した戦略的な意思決定 と 実行能力 を身につけなければならない。外部環境 の分析はあ くまで も推定領域の中で機会 とリスク を発見 し、戦略的には積極的な行動 をとらなけれ ばならない。推定の中には不確定要 因が多 く存在 す る。推定にあたって分析 とか洞察 とい う過程が 入 り込む。「自社の本質的な強み を識別 し、新事業 に着手す ることが、適切か どうか を決め るのに必 要 な洞察力 (insight)は、 自然発生的に生 まれ る ものではない」、「そ うした洞察力 を養成す るため には、分析のニー ズを認識す るこ とがおそ らく役 に立つだろう」。 また「自社能力 を超 えたかなたに 目を向ければならない」 とのべ ている。(beyond thecompany'scapacity)

外部環境の分析、認識、洞察 とい うことは概念 的には事象の奥に潜む もの を見抜 く力に関係す る。 戦略 を形成す るときには不確実性要 因を出来 るだ け排除 しなければならないがいか ように もしがた い局面が存在す る。認識す る力、洞察す る力には 個人差がある。 これは戦略 を考 えるときに極めて 重要 な用語 となる。社会現象ない しは社会状況は 時の経過 と共に変化 し、それが企業に とって機会 とな り脅威に生 まれ変 る。不確実 なデー ター、不 確定な要因の もとで変化の速度 と方向を察知 し、 決定 と行動 をしなければならない。企業の命運 を

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伊藤 治郎 握 る トップ は く先 験 的意識)(transzendentales Bewuβtsein)を磨 き深い洞察力 を身につける必要 があろうか と思われ る。 この努力によ り著者の言 う次のカギを得 られ もの と思われ る。 「自社の成功や、 さらには 自社の将来の発展に とってまさにカギとなるのは、真の意味で 自社に 特有の能力 を発見 した り、創造 した りす る努力で ある」。先験的意識 を磨 くことによ り特有の能力発 見がなされ、それは創造性の発揮につ なが り視界 が広 くなる。 そのための努力 をすべ きであると理 解 したい。 ここには深い東洋的意義がある。 第

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章 自社 と自社の戦略ゼネラル ・マネジャー 全社戦略を個人的な価値観に関連づける。 従来戦略 というものを 「自社 とその環境 との間 の絶 えず変化す る関係 を検討す るにあたって、意 思決定者の個性や、個 人的な 目標によって影響 さ れない純粋 な経済戦力が可能であるかのように考 えられていた」。戦略は単なる論理的プ ロセスを経 るこ とによって成立す るものではな く、「ある企業 に とって最 もす ぐれた経済戦略 を断行す る意思決 定 と、その選択 を行 う幹部の個人的な価値観 とは 分艶 しえない」 ものなのである。立案者の個 人意 識、経験、知識、柔軟性、価値観、考 え方が戦略 において大 きな影響与える。本来社月 ひ とり一人 の価値観が企業組織の価値観 を構成 し、企業全体 の価値観が社員ひ とり一人の価値観 をつ くりあげ るものであるが、 もしも個 人 目標 と全社 目標 を収 赦 させ るこ とができれば、社月間に熱狂的な協調 関係が成立す る。 もしも 「個人的な価値観の違い が言語で表現 されていない と戦略的な提案の間に 対立が発生す る」。この対立は戦略の上 で力 を阻害 す る要因に転化す る。「明示的で率直で、ぴった り 焦点のあった戦略 をもっていない企業が存在す る が、この辺に事情があることも確かである」。全員 異 なる考 えをもつ人間のコンセンサスを取 りつけ る形成手順 をいかに組み込むか、戦略形成以前の 人間的な深い コンフ リフ トが存在す ることが多い。 「価値観 とは人生についての見方であ り、何が 望 ましいかについての判断である」 と説明 してい るC価値 とは主体 の側か ら見てそれは善か悪かの 判断 を量頁在化 させ るもの と言ってよい.通常人間 の もつ価値観 を変更す ることは至難のわざである。 〔書 評〕 人間は新 しいこ とを始め るよ りも、 自己にな じん だ古い もの を捨てることが難 しい。 しか し企業が 逆境 に追いや られ死活の周辺にあるならば組織 リ ーダー はその価値観 を変 えなければならない。価 値観の変更 これが真の リス トラクチ ャ リングの連 なが って行 くものである。別 な面か ら企業慣習が 組織文化 を形成 し、組織文化が企業 を動かす。企 業体質 を変 えることは企業文化 を変 えることであ る。個人の意識 と組織の意識 これに横 たわる価値 観は個 人の人格、組織の文化 を貫 き一体 となって 企業の将来 を方向づけ る。「自社の 目指す方向 とエ ネルギーおよび変革には、文化的な適応(Culutur -aladaptation)が必要 である」、とい うこ とは価値 観の変更 と企業文化の適応 とい うこ とが課題 とな る。 第

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章 自社 と 自社 の 社 会 的 責 任 一全 社 戦 略 を倫理価 値 観 に関連づ け る。 著者は価値観の産物 として倫理的な行動 につい て考慮 している。今 日企業の社会的意義 は多面的 に論ぜ られ、一企業 自身の考 えのみでは継続的に 存在 して行 くことはで きない。 戦略の決定にあた り、戦略作成の主要 な側面 と して、① 自社環境の中での現在お よび将来の機 会 とリスクの評価、② 自社 の現在お よび潜在的 な資源 ない し能力のユニー クな組合せ の査定、(卦 個人 と組織の満足すべ き非経済的な ものの採択、 ④ 自社の社会的責任の識別 と受容の四つ を掲げ ている。 この最後の社会的責任の識別、受容は前 三者 とは異なる範噂に属す るものであ るが、「基盤 の確立 した企業は、社会 の中で、経済的 な価値観 だけではな く、倫理的な価値観によって支配され る」。戦略担当者は 「経済的な動機 と能力」だけで はな く 「倫理的な動機 と能力」 も必要 であること は承知 していることであろうが、多分 ミクロ的に は きちん と意識 されてい るが、マ クロ的局面にお いては倫理的な面が希薄化 されているこ とも事実 である。個々の企業が戦略面において 「機会 とリ スクの評価」、「資源 と能 力の組合せ」 を考慮す る ときに どこで組合せ の妥協点 を見つけ るのか、企 業の社会的責任、倫理観 を意識 した経営 戦略の妥 協点 を定め ることは容易 ではない。個 々の企業 は 暖昧なま 、、相矛盾 した状態で戟略が展 開されて

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いる。それぞれの企業が 「自社の戦略の定義に沿 った形で、企業が実力を行使 し活動 を行 お うとす れば、そ うした企業 に対 して社会は懸念 を持つ」。 主要 な問題 として考 えられ ることは、① 利用可 能な諸資源の投入範囲は どこまでか、(塾 機会選 好の考慮すべ き指針 は何かの二つである。懸念の 範囲 として、国家、地域社会、業界か ら企業の単 一の個人による自由の行使の問題 まで及ぶ。 これに関連 して トノブの意思決定の質 を評価す るための批評プロセスは将来はるかに重要になる としてい る。 この考 え方 は既存の社会 的 システ ム ・企業 システムの一点が変革 しつつあると思わ れ る。 第6章 戦 略 の 実 行、 存 在 目的 に向 けて資 源 を全 力投 入 す る。 「戦略は組織行動 に具体化 され るまでは、 きれ いな言葉で飾 った表現であるにす ぎない。 目標 を 目指 した実行 は戦略経営の要諦である」。実行の伴 わない戦略案は単なるアイデアである。戦略の決 定は次の四つの分析的なサブ活動の組合せ である とい う考 え方が多い。① 〈機械 とリスク) を識 別す るための 自社環境の調査、② く自社の強み と弱み〉に関す る憤重な評価、③ 自社の リー ダ ーたちの特徴に組み込 まれている個人的な (価値 観〉の識別 と重みづ け、④ 自社が どんなレベル の倫理的 (社会的責任〉 まで負担す るか とい うレ ベ ルの設定、 これ らを基準 として戦略の決定がお こなわれ、 これ を実行に移す変換 システム として 管理的な活動 を補完す る必要がある。① 仕事 の 責任の専 門化、② 分割 された責任の調整、③ 情 報 システムの提供 とい うプ ロセスを通 じて有機的 な成果の達成 を目指す とい うものである。戦略の 実行 には協働が必要 である。 このほかに柔軟性、 適応能力、熱意、忠誠心 などを必要条件 とし、こ れ らが欠けると戦略的実行能力は弱体化す る。 さ らに トノブの強力な リー ダー シップが加 えられな けれはならない。 日本の経営幹部は慨 して管理面 にかたよった思考 をとる傾 向がある。そのため戦 略思考 と管理思考の区分があいまいになる場合が ある。著者 も言 うように 「戦略の決定が、管理活 動 として実行段階に移行 した場合、企業全体のニ ー ズを超 えて個々の特別 な存在 目的 を追求 しよう - 40 -とす ると、全社戦略 とは逆の方向 を志向す る。」こ とがある。 戦略 を論ず ることは容易であるが、実際に成果 を生むことは難 しい。実行 に対す る間違 ったアプ ローチ と仮説は言いつ くされているが念のために 次に掲げてお きたい。 1.経営幹部が単細胞的に戦略についての コンセ プ トをめ ぐらし、取締役会 に報告 して、形式的 な承認 を求め、すでに決 った方針 として、それ を公表 し伝統的な命令、 コン トロール手続 きの もとで部下が、その戦略 を速か に執行 して くれ るとい う仮説。 2.戦略は、 自社能力、個人的な価値観、入 り組 んだ文化的 な忠誠心に一切おか まいな く、経済 機会 に関す る没価値的な評価 と選択および成果 か らなっているとい う仮説。

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戦略計画における目標は、将来年度の数字 を おか まいな しにふ くらませ るとい うや り方で高 い売上高成長率や利益成長率 で表わす傾 向。 戦略 を単に定量的な表示 をもってすれば即実行 に移せ るとい うわけにはいかない。将来の姿 を理 念的に述べ、現状延長的数値の表示 を終 るもの、 静態的、精神的、抽象領域での願望の表示 を戦略 課題 とす るものなどがあるが、戦略にはさらに「人 間的、社会的、倫理的な要素」 を加味 した、到達 可能な将来像 を定量的、定性的な戦略案 として確 立すべ きである。 革新的な企業における実行の見解 として 「草新 志向の企業では聞 く耳 をもつ社員が意図的に開い たチャンネル を通 じて、新 しい機会 につ いて語 る」。ここでは協力的で創造的な組織が成立 してい ることが示 されている。 この ときこそ管理の方針、 実践の面 で社員 を巻 き込み、その結果 として企業 の存在 目的のためにエネルギー を投入 し、持続 し なければならない。相互に情報 を共有 し合 い、信 頼関係の中で魅力があ り社員が協力す る戦略 を考 え出す ことが課題 となる。社員が 目標設定に どの 程度 まで参画 しているかはエネルギー顕在化に役 立つ例 といえよう。 第

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章 戦略 の実行 資源投入 か ら経営成果 へ 本来 「戦略が先行 し、組織機構がそれに追随す る」、やがては「組織機構が先行 し、戦略がそれに

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伊藤治郎 追随す る」傾向 となる。 これは組織の硬直化現象 であ り防止策 として次の三つの例 を示 している。 (丑 柔軟性 と非公式性 に対 して高いランクづ け を与える。② タスクフォー スに頼 ること。③ ス ペ シャ リス トと部門相互間の乗 り入れを研究す る。 一方で革新的な企業は、独創的 な貢献 を可能に す る創造性、率先性、個 人の 自治について留意 し ている。そのための管理 システム としては、① パ フォーマ ンスの公平 な評価、(む 効果的な刺激 と 報酬、(診 方針の合理的な確立 と要望、径) 経営 幹部の能力開発の四点 を示 している。 組織の硬直防止 と創造性の発揮 について管理 シ ステムの面か ら説明 を加 えている。 とくに人的資 源管理の方針 を重要視 し、経営幹部 は、戦略 を促 進 させ る行動 として、動機づ け誘因システム、戦 略 を促進 させ ない行動 として、制約、統制 システ ムの二つ を掲げ、組織行動に対す る影響力 をこの 二点か ら説明 している。 動機づ け誘因システムの うち、非金銭的誘因シ ステム として、(》 仕事 の達成の誇 り、② 自由 な組織風土、(卦 有能で楽 しい同僚 と交流す る喜 び、④ 価値のある仕事か らの満足の四例がある。 組織風土 としては、不必要 な制約 な しに 自らのア イデアを実験、通用す る自由が認め られ ることを 指摘 している。 経済的誘 因システムは経済原理 を基準 とす るも のであるが、 この非金銭的誘因システムは心理原 理 ともい うべ きものに基準 をおいている。実態の ない見えない もの高度心理社会 とい うべ きものが 誘 因システム として幅 をきかせて来ている。 こ 、 では人的資源管理 のメカニズムよ りも、組織風土 を重要視 し、それか ら得 られ る心理的効果 ・満足 に管理の視点 を移 している。組織風土は、 自然生 成的であ るが、組織風土のあ り方によって新 しい 行動様式が生 まれる。 自由で強力な組織風土か ら、 自由で強力な心理エネルギーが生 まれる。 革新的な企業の創造性 は管理 システムか らの接 近法だけでな く、 トップが創造的であること、全 社 的に創造意識 を高めること、企業の各個人が、 思考、問題意識、価値観 を改め る企業組織にす る よう仕向け る必要がある。 トノブの信条、指導方 針、価値観、行動様式の変革は組織に大 きく影響 す る。論ず ることは容易 であるが、 多 くの困難 を 〔書 評〕 伴 いなが らこの変革に接近す る必要がある。 能力開発は戦略の実行 において必要 となるもの であるが、 ここではアメ リカの経営管理基調がよ く表現 されている。 それは個 人の責任、意思決定 の責任の明確 さ、フォーマルなシステムが明確に されてい る。能力開発 は、「共通 の知識体系の提 供、一般化 したよいマネジャーの輩出を求め るも のではな くて、それは組織の存在 目標に密接に結 びついてお り、存在 目標 それ 自体 の要請に応 じて、 能力開発の種別、程度、分 量 を決め るものである

とい う。 このプロセスを経て、ニー ズの発生に先 がける形で社員は専 門能力 を身につけることがで き、企業の戦略発展が要請す るよ うな卓越性水準 を もつ社員像に到達す るのであるとい う。 日本の 組織機構では経営管理者は多様 な職能に応ず るこ とがで きるように教育 され る傾 向がある。個人の 責任 はあまり強調 されす、意思決定は多数の合意 でなされ、 インフォーマルで共通 な物の考 え方に 到達す るような関係にある。日本の能力開発は「共 通 の知識体系の提供、一般化 したよいマネジャー の輩出を狙 っている面 もある。短期的な成果主義 か長期的な業績 を目指すかの相違 も能力開発のあ り方に関係す る。 終 章 戦 略経営 と全社 総括 戦略作成は単一な個人の構想 を書面 に した もの ではな くて、それ 自体一つの組織プロセス として 完成 させ ることに意義がある。現実的には、① 不 確実 な環境、② 不明確な 自社能力、③ 限定 さ れた諸資源、⑥ 表面的に不明な個人の価値観、 ⑤ 社会的責任要求の出現、 これ らの制約 された 条件下 で事実 を認識 し、調和 させ なが らの組織プ ロセスであると理解 され る。 しか し例 えば トノブ の幹部の個人的価値観は当然異なるであろうが、 そこには暗黙の合意が存在す るのか、 データーの 選択や組合せによりさまざまな解釈が成 り立つ し、 判断 と推測にもとづ くために妨害、反対の意見 も 考 えられ る。 これ らを克服す る能力 も必要になる。 戦略は管理の-イアラルキーにおいて広範に共 有 され る活動であって、戦略において具体的な機 会 の受入れ、棄却はそれぞれ組織能力の強化 ない しは弱体化の結びつ くことになる。戦 略 と分離 し た現在のみ を考 えた希望的数値 を羅列 し、定量要

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因を重視 した現状延長的な戦略 を追求す ることは、 企業の強み を弱体化 させ る。 これは能力の欠如に よるものでベ ス トな未来像はな く、戦略効果、成 功の確率、 リスクの判断す ら出来ない ものになる。 ここでは競合企業の攻撃に非常 に弱 くなる。 戦略プ ロセスにおけ る四つの不可欠な要素 を次 のように掲げているが、強力な戦略形成 と実行の ために必要 な もの と言えよう。 1.問題 と戦略的な機会の識別 に中核的な人物 を 参加 させ ること。

2.

個人的な選好、組織の価値観、全社的な能力 を分析 に含め ること。 3.今後の市場の成長に関す る正確 な関連デー タ を整 えること。 4.資本の源泉 と予想利益に関す る財務的な制約 を認識す ること。 仮 に上記四つの不可欠要素が整 った とした場合 に戦略実行面において大 きな成果 を上げるこ とが できるだろ うか とい う疑問が発せ られ る。 また戦 - 42 -略の成果 を得 るため上級の経営幹部は次の項 目に 留意すべ Lとしている。 自社 目標に照 らしてパ フォーマ ンスを評価す る こと。 自社 目標 を社会的立場か ら評価す る。 自社 戦略が継続的に妥当性 をもってい るか どうか何度 も議論す る。 こうすれば、(丑 自社の本質、② 自社 の活動 の現状、(卦 自社 の進行方向、① 自社の存在 と 成長はメンバーの最良の貢献になぜ値す るのかに 関 して組織の理解 を得 ることがで きる。 経営幹部は、戦略的な意思決定 の継続的なプロ セスを管理す る義務 を負 っている。 本書で主張す る全社戦略は、環境 あるいは社会 における自社の全社最適像の構築 とその実現 を目 指 している。 グローバル化進展の 中で 日本企業は、 トノブ主導型の全社戦略像の構築 と実現のため真 剣に取組 まなければならないことが うかがわれる。 (い とう じろう 教授) (1991. 5.21受理)

参照

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