看護学生の食品・栄養素摂取量測定教育の現状と課題
−栄養学生との比較−
Status of and Problems Related to Food Education and Nutrient Intake Measurement of
Nursing Students: A Comparison with Nutrition Students
古屋 洋子
1),中村美知子
1),西田 頼子
1),長崎ひとみ
1),大日向陽子
1),岩間 範子
2) FURUYA Yoko, NAKAMURA Michiko, NISHIDA Yoriko, NAGASAKI Hitomi, OOHINATA Yoko, IWAMA Noriko要 旨
看護学生と栄養学専攻の大学生(以下,栄養学生)の食品・栄養素摂取量の目測の実態を把握し,看護学生 の食事指導力強化のための教育方法を検討した。対象者(看護学生群 18 名,栄養学生群 19 名)は,調査日に 摂取する昼食の各食品の目測値を記入した。目測値の栄養価計算を実施し,実測値との誤差を算出した。食品・ 栄養素摂取量測定の体験・必要性・活用性の認識(全 17 項目)の調査には,「思わない」1 点〜「全くそう思う」4 点の 4 段階評価を用いた。看護学生群は栄養学生群と比較し,食品全般において食品重量の目測値のうち, レモン汁,砂糖,しょうゆ等の調味料類を多く目測していた。看護学生群は,食事摂取量の実測や目測体験 の必要性を高く認識している一方,実際の食事摂取量測定,栄養価計算等の学習の機会が極めて少ないと認 識していた。本結果から,看護学生群も正確に食事の目測ができるよう体験学習を増やし,食事指導能力を 身に付ける必要がある。This study aimed to compare the visual estimation of food and nutrient intake by nursing and nutrition students. Furthermore, we explored educational methods that would help improve the quality of dietary counseling offered by nursing students. The subjects (18 nursing and 19 nutrition students) visually estimated the nutritive value of and nutrient intake found in each food item. The subjects were asked about their views on the need for experience and the practical use of food and nutrient intake measurement as part of their education in the form of a 17-item questionnaire. Responses ranged from 1 (strongly disagree) to 4 (strongly agree). Wide variations in terms of the visual estimation of food were found among nursing students. In particular, seasoning agents such as lemon juice, sugar, and soy were estimated inaccurately because of their shape. The nursing students acknowledged the need for experience with the actual measurement and visual estimation of dietary intake; however, opportunities for practical learning, for example, measuring dietary intake and calculating the nutritive value, were very few. Our results highlight the necessity for education that includes practical experience.
キーワード 看護学生,栄養学生,食品・栄養素摂取量測定,実測値,目測値
Key Words Nursing Students, Nutrition Students, Food and Nutrient Intake Measurement, Actual Measurement, Visual Estimation
受理日:2012 年 8 月 21 日
1) 山梨大学医学工学総合研究部 基礎・臨床看護学講座: Interdisciplinary Graduate School of Medicine and Engineering (Department of Fundamental and Clinical Nursing), University of Yamanashi
2) 女子栄養大学短期大学部 栄養指導研究室:Laboratory of Nutrition Education, Junior College of Kagawa Nutrition University
Ⅰ.はじめに
現在の食習慣を改善したいと思っている者の割合は 48.5%と報告されており1),国民の食生活に関する認識 は高まっている。一方,20 歳代の朝食欠食率は最も高 く(男性 33.1%,女性 23.5%)2) ,若年成人の食生活の改 善は,健康習慣を身につける上での大きな課題となって いる。慢性疾患の増加に伴い,今後,臨床ならびに地域での食事・栄養指導を必要とする患者の増加は避けられ ない。臨床実習においても,看護学生が,患者への食事・ 栄養指導の場面に遭遇する機会が増えている。臨床での 食事・栄養指導において,直接患者指導にあたる看護学 生も患者の栄養状態を適切に判断,実践するために,患 者の食事内容や量を正確に把握し,評価するための基礎 となる食品重量等の知識が求められる。看護学生も栄養 学専攻の大学生(以下,栄養学生)と同様,早期から栄養 学的知識を身につけ,患者の生活指導に当たることは教 育上重要であると考えた。 栄養士教育では,早くから,食品重量の見積もり能力 向上のための教育がされてきた3)4)。栄養学生を対象と した,食品重量の目測値と実測値の誤差を分析した報告 では,食品重量の把握は個人差が大きいことや4),食品 重量の目測の精度は食品毎に異なり,形状が不明瞭な粒 子状,液状の調味料や不定形で廃棄量の多い野菜・果物 類等の食品の目測の精度は低い傾向にあること3)5)6)等, 食品重量把握の特徴や課題が明らかにされている。一方, 看護学生については,自分の食事記録から,エネルギーや 栄養素摂取量を算出する学習の成果が散見される7)8)9)。 自分の食事を見直すことは,栄養学に関する既知の学習 を活用し,患者の食生活修正の困難さを想起できること が示唆されている。しかし,食品重量の目測力やエネル ギー,栄養素摂取量計算の特徴は,まだ十分検討されて いない。また,栄養学生の食品重量目測力強化のための 教育方法については,食品重量の目測誤差と調理経験や 計量器具の使用習慣には関連があることや10),目測の 繰り返し訓練の成果11)が,既に報告されている。しかし, 看護学生の食事指導のための知識・実践力を強化する教 育方法については,ほとんど検討されていない。そのた め,看護学生の栄養学的知識・認識の現状を,栄養学の 基本的知識を有すると思われる栄養学生と比較すること により,看護学生の栄養学教育に関する課題が明確にな ると考えた。
Ⅱ.研究目的
本研究目的は,看護学生(以下,看護学生群)と栄養学 生(以下,栄養学生群)の食品・栄養素摂取量測定の体験 を通じて,食品・栄養素摂取量の目測値と実測値の誤差, 食品・栄養素摂取量測定教育の認識を比較し,将来,臨 地・臨床での食事指導に関わる看護学生への食事指導力 を強化するための教育上の課題を検討することである。Ⅲ.調査方法
1. 調査対象者 A 大学の看護学生 2 年生,B 大学の栄養学生 2 年生に 対し,調査の主旨説明後,協力に賛同した看護学生 18 名, 栄養学生 19 名を調査対象とした。 2. 調査内容と手順 調査日に,調査対象者 37 名,調査者 6 名は,B 大学 講義室に参集し,調査の内容と手順,調査日程について 書面で説明した。本調査の内容と手順の概要は,次の通 りである。 1) 調査日に摂取する昼食の食品重量の目測値の記載 調査対象者は,調査当日摂取予定の昼食の献立,食品 名が記載された用紙を用いて,各食品の重量を記載した。 予め用意した昼食は,調査者の中の管理栄養士により献 立作成された調理済みの昼食である(国民栄養調査によ る 20 代女性の 1 日栄養所要量の 1/3 量)12)。 2) 摂取した昼食のエネルギーおよび各栄養素摂取量 の計算 調査対象者は,昼食摂取後,摂取した食品重量の目測 値から,エネルギーおよび栄養素・充足率,PFC 比率(た んぱく質・脂肪・炭水化物エネルギー%)等の栄養価を 計算し,記録用紙に記載した。栄養価計算には,エクセ ル栄養君 Ver.6(五訂増補日本食品成分表12),建帛社)を 用いた。栄養価計算ソフトの使用方法は,全対象者が事 前に学習済みである。 3) 摂取した昼食の食品重量,エネルギーおよび各栄 養素摂取量の実測値と目測値の比較 調査対象者は,摂取した昼食の食品重量,エネルギー および各栄養素計算値の記載を確認後,管理栄養士によ り献立作成時に計算された実測値(以下,実測値)と 1), 2)で算出した目測値を比較し,実測値と目測値の誤差 を算出して記録用紙に記載した。 4) 看護学ならびに栄養学教育における食品・栄養素 摂取量測定の体験・必要性・活用性の認識調査 大学教育における食品・栄養素摂取量測定教育の体験・ 必要性・活用性の認識の 3 要素,計 17 項目の調査用紙 を用いた。これらの項目は,食品の目測,実測に関する 調査報告5)8)13) より,本調査と関連する 14 項目を選択し た。調査対象者は,体験については,「全くない」1 点〜「3 回以上」4 点の 4 段階評価,必要性および活用性は,「思 わない」1 点〜「全くそう思う」4 点の 4 段階評価により回 答した。3 要素のクロンバックα係数は 0.80 〜 0.98,全 体は 0.92 であった。 3. 分析方法 看護学生群と栄養学生群の 2 群に分けて,以下の事項 を分析した。 1) 食品重量,エネルギーおよび栄養素摂取量は,実 測値,目測値から目測誤差(実測値と目測値の差) および目測率(実測値に対する目測値の割合)を求め,平均値,標準偏差を算出した。2 群間の目測率 の比較には,t 検定を用いた。 2) 教育における食品・栄養素摂取量測定の体験・必 要性・活用性の認識の 2 群間の比較には,Mann-WhitneyU 検定を用いた。 データ分析には,統計解析ソフト SPSS 20.0J を 用い,すべての解析は両側検定とし,有意水準は 0.05 とした。 4. 倫理的配慮 調査対象者全員に,研究の主旨,研究参加の任意性や 拒否・中断は学業成績と一切関係なく,不利益を被らな いことを説明し,実施した。調査票は無記名とし,結果 は数値化して処理を行うため個人の特定ができないこ と,研究以外の目的では使用しない旨を口頭と書面で説 明し,署名により同意を得た。また研究成果は,学会等 での発表や雑誌への投稿をする場合があることも説明 し,承諾を得た。本研究を実施するにあたり,山梨大学 医学部倫理委員会の承認(No.963)を得た。
Ⅳ.結果
本研究の対象者である看護学生 18 名,栄養学生 19 名 のうち,回答の得られた看護学生 17 名(94%)(以下, 看護学生群),栄養学生 19 名(100%)(以下,栄養学生群), 計 36 名を分析対象とした。看護学生群は 16 名(94%), 栄養学生群は 12 名(63%)が 30 歳未満であり,すべて女 性であった。 1. 食品重量の目測誤差と目測率 昼食の食品重量の目測誤差と目測率の結果を表 1 に示 す。目測率(目測値の実測値に対する割合)の平均値は, 看護学生群 1.6±1.0(range 0.3 〜 9.1),栄養学生群 1.1± 0.6(range 0.3 〜 3.2)であり,看護学生群は栄養学生群よ りも目測率が高かった。看護学生群の目測率が実測値よ り高値(+)の食品は 32 品目中 16 品目,低値(−)の食品 は 16 品目であった。栄養学生群では,目測率が高値の 食品は 13 品目,低値の食品は 18 品目であり,目測率 1 の食品はブロッコリー,ミニトマト,さつま芋,にんじ ん,小松菜であった。看護学生群の目測率高値の食品は, レモン汁(9.1±7.7),砂糖(鶏の唐揚げ)(4.2±2.6),生 姜(3.4±2.2)であった。栄養学生群の目測率高値の食品 は,レモン汁(3.2±3.0),揚油(2.1±1.5),みりん(1.9±1.4) であった。看護学生群の目測率低値の食品は,かつおだ し(青菜の煮浸し)(0.3±0.2),しょうゆ(青菜の煮浸し) (0.4±0.2),だし汁(大根と竹輪の煮物)(0.4±0.5)であっ た。栄養学生群の目測率低値の食品は,しょうゆ(青菜 の煮浸し)(0.3±0.1),大根(0.5±0.2)であった。看護学 生群,栄養学生群間の食品重量の目測率において,レモ ン汁,砂糖,生姜,にんにく,油揚,しょうゆは,看護 学生群が高値で 2 群間に有意差があった(p < 0.05)。 2. エネルギーおよび各栄養素摂取量の目測誤差と目 測率 昼食のエネルギーおよび各栄養素摂取量の目測誤差と 目測率の結果を表 2 に示す。目測率の総平均値は,看 護学生群 0.9±0.3(range 0.7 〜 1.3),栄養学生 0.9±0.2 (range 0.6 〜 1.1)であった。看護学生群の目測値が実測 値より高値(+)の栄養素は,25 項目中 4 項目,低値(−) の栄養素は 21 項目であった。栄養学生群の目測率高値 の栄養素は 3 項目,低値の栄養素は 22 項目であった。 看護学生群の目測率高値の栄養素は,脂質(1.3±0.4), ビタミン E(1.2±0.4)であった。栄養学生群の目測率高 値の栄養素は,亜鉛,ビタミン E,脂質(1.1±0.3 〜 1.1) であった。看護学生群の目測率低値の栄養素は,ビタミ ン B12,水分(0.7±0.2 〜 0.3)であった。栄養学生群は, ナトリウム(0.6±0.2),塩分相当量(0.7±0.1)であった。 看護学生群と栄養学生群間のエネルギーの目測率は,看 護学生群が高値で 2 群間に有意差があった(p=0.02)。 3. 看護学・栄養学教育における食品・栄養素摂取量 測定の体験・必要性・活用性の認識の相違 看護学・栄養学教育における食品・栄養素摂取量測定 の体験・必要性・活用性の認識の結果を表 3 に示した。 食品成分表の活用(看護学生群 1.9±0.4,栄養学生群 3.9 ±0.2),栄養価計算の実践(1.9±0.3,3.9±0.3),食事摂 取量調査の実践(1.8±0.4,3.9±0.3),栄養価計算ソフト の活用(1.5±0.5,3.9±0.2)等の食品・栄養素摂取量測定 に関する体験頻度は,栄養学生群が高値で,2 群間に有 意差があった(p < 0.001)。学習の必要性は,看護学生 群と栄養学生群の両群とも高値であったが,自分の食事 摂取調査(2.9±0.4,3.3±0.6),自分の栄養価計算(2.9± 0.5,3.3±0.5),栄養価計算ソフトの使用(2.9±0.5,3.5 ±0.5),食物を目測する(2.9±0.6,3.6±0.6),食物の目 測値と実測値を比較する(2.9±0.7,3.7±0.6)等,栄養学 生群がより高値で,2 群間に有意差があった(p < 0.01)。 今回実施した食品重量の目測や栄養価計算等の体験を臨 床や臨地の食事指導等に活用したいという項目は,看護 学生群と栄養学生群(3.6±0.6,3.5±0.6)とも高値で,2 群間に有意差はなかった。Ⅴ.考察
1. 食品・栄養素摂取量測定教育における看護学生の 特徴 本研究における食品重量の目測率の平均値は,看護学表 1 食品重量の目測誤差(目測量と実測量の差)と目測率 ─看護学生、栄養学生間の比較─ 実測値 (g) 看護学生群 (n=17) 栄養学生群 (n=19) P 値3) 平均目測誤差1)(g) 平均目測率2) 平均目測誤差1)(g) 平均目測率2)
Mean ± SD Mean ± SD Mean ± SD Mean ± SD
ご飯 胚芽米 (米・胚芽精米) 80 4.5 ± 37.4 1.1 ± 0.5 -6.4 9.6 0.9 ± 0.1 0.25 鳥肉の唐揚げ 野菜添え 鶏もも肉 90 -5.6 ± 26.1 0.9 ± 0.3 -15.0 ± 13.2 0.8 ± 0.1 0.19 しょうゆ 5 0.9 ± 3.4 1.2 ± 0.7 -1.1 ± 1.7 0.8 ± 0.3 0.04 * 酒 4 0.9 ± 4.4 1.2 ± 1.1 -0.5 ± 2.1 0.9 ± 0.5 0.23 にんにく 0.8 1.6 ± 1.7 3.0 ± 2.1 0.2 ± 1.0 1.4 ± 1.2 0.01 * 生姜 0.8 1.9 ± 1.7 3.4 ± 2.2 0.3 ± 1.2 1.5 ± 1.6 0.01 * 砂糖 0.8 2.6 ± 2.1 4.2 ± 2.6 0.6 ± 0.8 1.8 ± 1.1 0.001 ** 片栗粉 8 -2.0 ± 5.9 0.7 ± 0.7 -2.7 ± 4.2 0.7 ± 0.5 0.68 揚油 4 5.1 ± 6.9 2.3 ± 1.7 4.3 ± 6.1 2.1 ± 1.5 0.73 ミニトマト 10 -1.5 ± 2.6 0.8 ± 0.3 -0.3 ± 4.2 1.0 ± 0.4 0.32 ブロッコリー 20 -3.1 ± 6.0 0.8 ± 0.3 -0.7 ± 8.4 1.0 ± 0.4 0.34 大根と竹輪の煮物 竹輪(焼き竹輪) 10 4.7 ± 7.6 1.5 ± 0.8 2.0 ± 4.8 1.2 ± 0.5 0.21 大根 40 -17.2 ± 9.3 0.6 ± 0.2 -18.5 ± 10.0 0.5 ± 0.2 0.72 人参 20 -1.2 ± 11.7 0.9 ± 0.6 -4.1 ± 6.4 0.8 ± 0.3 0.35 こんにゃく(板こんにゃく) 10 -1.6 ± 3.2 0.8 ± 0.3 -2.8 ± 3.3 0.7 ± 0.3 0.30 しょうゆ 3 2.2 ± 4.9 1.7 ± 1.6 0.4 ± 2.3 1.1 ± 0.8 0.14 砂糖 2 1.8 ± 2.1 1.9 ± 1.1 0.5 ± 1.5 1.3 ± 0.8 0.04 * 酒 2 1.6 ± 2.1 1.8 ± 1.1 1.5 ± 2.1 1.7 ± 1.0 0.81 だし汁 40 -24.9 ± 21.9 0.4 ± 0.5 -17.0 ± 15.6 0.6 ± 0.4 0.22 青菜の煮浸し 小松菜(葉‐生) 40 -10.6 ± 11.0 0.7 ± 0.3 0.5 ± 21.1 1.0 ± 0.5 0.05 油揚 3 3.8 ± 3.7 2.3 ± 1.2 1.3 ± 2.2 1.4 ± 0.7 0.02 * みりん 1.5 1.9 ± 1.5 2.3 ± 1.0 1.6 ± 2.1 1.9 ± 1.4 0.40 しょうゆ 10 -6.3 ± 1.9 0.4 ± 0.2 -7.5 ± 1.3 0.3 ± 0.1 0.04 * かつおだし 20 -14.1 ± 4.7 0.3 ± 0.2 -7.9 ± 9.1 0.6 ± 0.5 0.01 * さ つ ま 芋 の レ モ ン 煮 さつま芋(生) 30 -1.5 ± 11.0 1.0 ± 0.4 0.0 ± 10.9 1.0 ± 0.4 0.69 砂糖 4 1.9 ± 4.0 1.5 ± 1.0 -0.4 ± 1.8 0.9 ± 0.5 0.03 * レモン汁 0.5 4.0 ± 3.8 9.1 ± 7.7 0.9 ± 1.7 3.2 ± 3.0 0.01 * 味噌汁 キャベツ 20 -9.4 ± 5.9 0.5 ± 0.3 -6.3 ± 6.7 0.7 ± 0.3 0.15 にんじん 5 1.2 ± 3.7 1.2 ± 0.7 0.1 ± 2.4 1.0 ± 0.5 0.27 しめじ 15 -6.0 ± 6.2 0.6 ± 0.4 -5.5 ± 5.6 0.6 ± 0.4 0.82 みそ 10 -1.8 ± 7.0 0.8 ± 0.7 -2.3 ± 2.8 0.8 ± 0.3 0.80 だし汁 170 -73.4 ± 65.4 0.6 ± 0.4 -27.4 ± 16.3 0.8 ± 0.1 0.01 * 総平均値 1.6 ± 1.0 1.1 ± 0.6 1) 食品重量の目測誤差(g)= 目測値(g)−実測値(g) 2) 食品重量の目測率 = 目測値(g) / 実測値(g) 3) 2 群間の目測率の差の検定 t 検定(対応なし),*p < 0.05,**p < 0.01
表 2 エネルギーおよび各栄養素摂取量の目測誤差(目測量と実測量の差)と目測率 ─看護学生、栄養学生間の比較─ 実測値 (g) 看護学生群 (n=17) 栄養学生群 (n=19) P 値3) 平均目測誤差1)(g) 平均目測率2) 平均目測誤差1)(g) 平均目測率2)
Mean ± SD Mean ± SD Mean ± SD Mean ± SD
エネルギー(Kcal) 706 83.2 ± 170.1 1.1 ± 0.2 -33.1 ± 94.8 1.0 ± 0.1 0.02 * 水分(g) 523.2 -140.4 ± 118.5 0.7 ± 0.2 -105.2 ± 72.1 0.8 ± 0.1 0.28 たんぱく質(g) 28.4 -1.0 ± 4.7 1.0 ± 0.2 -3.9 ± 3.7 0.9 ± 0.1 0.05 脂質(g) 20.7 5.8 ± 8.1 1.3 ± 0.4 1.7 ± 5.5 1.1 ± 0.3 0.08 炭水化物(g) 98.3 7.3 ± 30.4 1.1 ± 0.3 -8.8 ± 11.5 0.9 ± 0.1 0.05 ナトリウム(mg) 1727 -256.9 ± 752.9 0.9 ± 0.4 -651.5 ± 341.7 0.6 ± 0.2 0.05 カリウム(mg) 1254 -188.6 ± 184.8 0.9 ± 0.1 -211.6 ± 245.5 0.8 ± 0.2 0.72 カルシウム(mg) 160 -23.5 ± 34.7 0.9 ± 0.2 -18.1 ± 51.5 0.9 ± 0.3 0.70 マグネシウム(mg) 120 -5.8 ± 23.9 1.0 ± 0.2 -18.2 ± 16.1 0.8 ± 0.1 0.08 リン(mg) 458 -47.4 ± 93.0 0.9 ± 0.2 -75.8 ± 54.7 0.8 ± 0.1 0.26 鉄(mg) 3.9 -0.3 ± 0.7 0.9 ± 0.2 -0.4 ± 1.0 0.9 ± 0.3 0.70 亜鉛(mg) 3.6 -0.04 ± 0.7 1.0 ± 0.2 0.4 ± 3.9 1.1 ± 1.1 0.64 銅(mg) 0.40 -0.01 ± 0.1 1.0 ± 0.2 -0.04 ± 0.1 0.9 ± 0.2 0.23 レチノール当量(ビタミン A)(μg) 332 -67.4 ± 136.2 0.8 ± 0.4 -38.7 ± 103.7 0.9 ± 0.3 0.48 ビタミン D(μg) 0.5 -0.1 ± 0.2 0.9 ± 0.3 -0.1 ± 0.1 0.8 ± 0.3 0.57 トコフェロール(ビタミン E)(mg) 3.1 0.7 ± 1.2 1.2 ± 0.4 0.3 ± 0.9 1.1 ± 0.3 0.30 ビタミン K(μg) 191 -26.2 ± 38.9 0.9 ± 0.2 -13.5 ± 66.5 0.9 ± 0.3 0.48 ビタミン B1(mg) 0.44 -0.03 ± 0.1 0.9 ± 0.2 -0.05 ± 0.1 0.9 ± 0.1 0.39 ビタミン B2(mg) 0.41 -0.1 ± 0.1 0.9 ± 0.2 -0.1 ± 0.1 0.8 ± 0.2 0.62 ビタミン B6(mg) 0.73 -0.1 ± 0.1 0.9 ± 0.2 -0.1 ± 0.1 0.9 ± 0.2 0.48 ビタミン B12(mg) 1.4 -0.5 ± 0.4 0.7 ± 0.3 -0.3 ± 0.1 0.8 ± 0.1 0.07 葉酸(μg) 182 -33.0 ± 31.3 0.8 ± 0.2 -31.1 ± 60.9 0.8 ± 0.3 0.91 ビタミン C(mg) 69 -12.8 ± 12.3 0.8 ± 0.2 -7.1 ± 21.9 0.9 ± 0.3 0.34 コレステロール(mg) 91 -5.1 ± 25.7 0.9 ± 0.3 -16.3 ± 11.8 0.8 ± 0.1 0.12 食塩相当量(g) 4.4 -0.7 ± 1.9 0.8 ± 0.4 -1.5 ± 0.6 0.7 ± 0.1 0.11 総平均値 0.9 ± 0.3 0.9 ± 0.2 1) エネルギーおよび各栄養素摂取量の目測誤差(g)= 目測値(g)−実測値(g) 2) エネルギーおよび各栄養素摂取量の目測率 = 目測値(g) / 実測値(g) 3) 2 群間の目測率の差の検定 t 検定(対応なし),*p < 0.05 表 3 看護学・栄養学教育における食品・栄養素摂取量測定の体験・必要性・活用性の認識 ─看護学生、栄養学生間の比較─ 質問項目 看護学生群 (n=17) 栄養学生群 (n=19) P 値1) Me Mean ± SD Me Mean ± SD 体 験 日本食品標準成分表を活用したことがある 2.0 1.9 ± 0.4 4.0 3.9 ± 0.2 <0.001 *** 自分の食事摂取量を用いて栄養価計算を行ったことがある 2.0 1.9 ± 0.3 4.0 3.9 ± 0.3 <0.001 *** 自分の食事摂取量調査を行ったことがある 2.0 1.8 ± 0.4 4.0 3.9 ± 0.3 <0.001 *** 栄養価計算ソフトは活用したことがある 1.5 1.5 ± 0.5 4.0 3.9 ± 0.2 <0.001 *** 他者の食事摂取調査を行ったことがある 1.0 1.1 ± 0.2 4.0 3.2 ± 1.0 <0.001 *** 他者の食事摂取量の栄養価計算を行ったことがある 1.0 1.1 ± 0.2 3.0 3.2 ± 1.0 <0.001 *** 必 要 性 自分の食事摂取調査は必要である 3.0 2.9 ± 0.4 3.0 3.3 ± 0.6 0.03 * 自分の食事摂取量を用いた栄養価計算は必要である 3.0 2.9 ± 0.5 3.0 3.3 ± 0.5 0.02 * 栄養価計算ソフトを用いる授業は必要である 3.0 2.9 ± 0.5 3.0 3.5 ± 0.5 0.002 ** 食物の目測値と実測値を比較する授業は必要である 3.0 2.9 ± 0.7 4.0 3.7 ± 0.6 0.001 ** 食物を目測する授業は必要である 3.0 2.9 ± 0.6 4.0 3.6 ± 0.6 0.001 ** 日本食品標準成分表を用いる授業は必要である 3.0 2.8 ± 0.4 3.0 3.2 ± 0.7 0.06 他者の食事摂取調査は必要である 3.0 2.7 ± 0.7 3.0 3.4 ± 0.7 0.01 ** 他者の食事摂取量の栄養価計算は必要である 3.0 2.7 ± 0.7 3.0 3.4 ± 0.6 0.01 ** 活 用 性 本日の体験を保健・健康指導(患者を含む)に活用したい 4.0 3.6 ± 0.5 3.0 3.3 ± 0.9 0.18 本日の体験を自分の食生活管理に活用したい 4.0 3.6 ± 0.5 4.0 3.5 ± 0.6 0.85 本日の体験を臨床・臨地実習に活用したい 4.0 3.6 ± 0.6 4.0 3.5 ± 0.6 0.51 1) Mann-Whitney の U 検定,*p < 0.05,**p < 0.01,***p < 0.001 体験は「全くない」〜「3 回以上」の 4 段階評価,必要性・活用性は「思わない」〜「全くそう思う」の 4 段階評価で回答
生群 1.6±1.0,栄養学生群 1.1±0.6 であった。一般的に, 栄養学生の目測精度の許容範囲は,目測の誤差率が± 10%と言われている3)。栄養学生群の食品の目測率は, 許容範囲内であったが,看護学生群は平均 60%程度多 かった。特に,レモン汁,砂糖,生姜,にんにく,油揚, しょうゆ等の調味料類を多く目測する傾向があった。定 型的な食品の目測率の向上は調理等の経験を通じて修得 しやすく,魚一匹,魚一切れ,豚肉等の主菜となるよう な食品は,1 回分,1 人前の量が大よそ決まっており, 形態面からもとらえやすいと言われている。一方,形状 が不明瞭な粒子状や液体の調味料や不定型な野菜の食品 は目測精度が低い傾向にある5)6)14)15)。塩分や砂糖,油 類等の調味料類の摂取は,疾病の予防・管理に大きく影 響するため,特に調味料類の目測による判断は,食事・ 栄養指導にあたる看護師が強化したい能力である。看護 学生群のエネルギーおよび栄養素摂取量の目測の特徴と して,エネルギーの目測率は高値で,栄養学生群と有意 差があり,脂質,炭水化物とビタミン E も高く目測す る傾向があった。臨床看護学実習で担当する患者は,食 事制限や食欲不振で栄養障害(低アルブミン血症,浮腫, 貧血等)を生じていることも多い。それらの患者の食事 摂取量を目測に頼ることにより,摂取量を 2 倍以上また は 1/2 以下と判断して,さらに低栄養状態を招く危険性 がある。例えば,本調査では,両学生とも食塩相当量を 70 〜 80%に見積もっている。すなわち,1 日塩分制限 7 〜 8g/日の患者に,10g/日の食事指導をする可能性があ ることを示していることから,食品の成分や量を正確に 判断できる学習の必要性を示す結果であった。本結果か ら,看護学生群は,栄養学生群と比較し,食品全般にお いて目測値のばらつきや誤差が大きかった。看護学生は, 今後,臨床・臨地実習で直接患者を担当し,食事・栄養 指導をする機会が多いため,食事摂取量の実測や目測の 体験の必要性を高く認識している一方で,食品成分表の 活用,自己・他者の食事摂取量測定,食品の栄養価計算 等の実践的な学習経験の機会が極めて少ないことが明ら かとなった。 2. 看護学生への食品・栄養素摂取量測定教育におけ る教育上の課題 本調査の看護学生群の調味料類の目測精度が低かった 原因として,調理の際の使用料が数 g という極端に少 ないものは,計量する実験や実習の機会が少ないため, 重量感覚が身についていないことが考えられる。臨床で は,注射液や内服薬等,少量の液体や薬品等を扱う機会 が少なくないことから,学生時代から重量感覚を身につ けることも重要である。食品重量感覚は,経験を積むこ とで身に付くことが多く,「食事作り」の頻度が高いほど, 食品重量の誤差は低く,目測力は有意に優れていたこと が明らかにされている16)。「食事作り」の習慣は,食品 の目安量の情報を正しく理解し,食事管理能力を定着さ せるための基礎となることが指摘されている。目測の繰 り返し学習の効果として,食品重量と目測量を対比させ ながら繰り返し訓練した学生は,目測のばらつきが小さ くなり,目測力が向上したことが報告されている11) 。 現在,看護学生の教育の特徴として,実践的な学習を取 り入れた教育の機会が少ないことがあげられる。看護の 基本は,患者が安全で安楽な日常生活を送ることにある。 そして健康的な日常生活を送るためには,実践能力を強 化する必要があり,患者が主体的に実践できる教育が求 められている。そのためには,医療者自らが実践できる 学習を身につけておかなければならない。今回実施した 食品重量の目測や栄養価計算等の体験学習は,安全で健 康的な食事・栄養管理教育の基本であり,自らの健康管 理の基である。これらの体験を踏まえた教育こそが,医 療者のみならず対象者が自己管理に活用できる学習とな るため,今後の看護学生の体験学習方法の検討が課題で ある。
Ⅵ.まとめ
看護学生と栄養学生の食品・栄養素摂取量測定教育の 認識を比較し,将来,臨床での食事指導に関わる看護学 生への食事指導力を強化するための教育上の課題を検討 した結果は以下のとおりであった。食品重量の目測率の 平均値は,看護学生群 1.6±1.0,栄養学生群 1.1±0.6 で あり,看護学生群は,食品全般において食品重量の目測 値のばらつきや誤差が大きかった。看護学生群は,レモ ン汁,砂糖,生姜,しょうゆ等の目測率が高値(p < 0.05) であり,調味料類を多く目測する傾向があった。また, エネルギーの目測率が高値(p=0.02)であり,脂質,炭水 化物とビタミン E も多く目測する傾向があった。看護 学生は,食事摂取量の実測や目測の体験の必要性を高く 認識している一方で,実際の食事摂取量測定,食品の栄 養価計算等の学習の機会が極めて少ないと認識していた (p < 0.001)。本結果から,看護学生も正確な食品重量 感覚を身につける必要がある。特に,塩分や砂糖,油類 等の調味料の目測力強化をはかるために今後の看護学生 の体験学習方法の検討が課題である。付記
本研究の一部は,平成 23 年度戦略・公募プロジェク ト(教育関連プロジェクト)の助成を受けて実施した。引用文献 1) 厚生労働省(2007)平成 17 年国民健康・栄養調査結果の概要. http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/05/dl/h0516-3c.pdf. 2) 厚生労働省(2009)平成 21 年国民健康・栄養調査報告書. h t t p : / / w w w . m h l w . g o . j p / b u n y a / k e n k o u / e i y o u / h21-houkoku.html. 3) 吉本優子,梅本真美,他(2011)管理栄養士養成課程生の食品・ 料理重量見積力向上プログラムの開発(第 1 報).人間科学部研 究年報,13:82-97. 4) 冨和美智子,白石徳子,他(1990)食品目測量調査の一事例.聖 徳栄養短期大学紀要,21: 24-28. 5) 堀内理恵,大浦麻衣子,他(2009)栄養士養成課程学生の目測能 力および食意識変化.日本食生活学会誌,20(3):230-238. 6) 吉本優子(2001)コンピュータ画面上における食品重量の見積も りに関する検討.大阪大学教育学年報,6:185-198. 7) 張替直美(2002)看護基礎教育課程における糖尿病食事療法の体 験学習の意味について:学生のレポート内容からの検討.山口 県立大学看護学部紀要,6:91-102. 8) 荒木玲子(1995)看護学生の食に関する問題の明確化:1 日の食 事摂取の調査から考える.足利短期大学研究紀要,16(1): 37-41. 9) 白神佐知子(2006)成人看護学における体験学習の効果:食事療 法の理解への課題を分析して . 新見公立短期大学紀要,27: 91-99. 10) 宮地洋子,佐々木弘美(2000)調理における計量に関する研究: 食 品 重 量 の 目 測 に つ い て. 仙 台 白 百 合 女 子 大 学 紀 要,4: 67-75. 11) 冨和美智子,佐藤紀子,蒲原洋子(1994)食品重量の目測におけ る学習効果.聖徳栄養短期大学紀要,25:21-36. 12) 文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会(2010)日本食 品標準成分表 2010.全国官報販売協同組合. 13) 西村美津子,伴みずほ,武田安子(2011)栄養士養成課程におけ る学生の献立作成エフィカシーと食品重量把握能力との関連に ついて.山陽学園短期大学紀要,42:9-16.
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