介護療養型医療施設の退院調整に携わる看護師・医療ソーシャルワーカーの
業務に関する認識とストレス対処力(SOC)
との関連
Associations between Recognition of the Duties of Nurses and Medical Social Workers Involved in Discharge
Preparations of Long-Term Medical Care Facilities for the Elderly and their Sense of Coherence (SOC)
望月宗一郎
1),小澤 結香
2),村松 照美
1),飯島 純夫
3)MOCHIZUKI Soichiro, OZAWA Yuka, MURAMATSU Terumi, IIJIMA Sumio
要 旨
本研究は,介護療養型医療施設の退院調整に携わる看護師と医療ソーシャルワーカー(以下,MSW とする)の,業 務に関する認識とストレス対処力(以下,SOC とする)との関連を明らかにすることを目的とした。 全国の介護療養型医療施設の看護師と MSW 計 500 人を対象に,無記名自記式質問紙郵送調査を実施した。調査 項目は対象の概要,SOC,役割受容等で,職種別に分析した後,多変量解析を行った。 有効回答数は 335 人(67.0%)であった。看護師・MSW ともに,SOC と役割受容との間に関連があった。また多変量 解析の結果,SOC が高い者には「経営者・管理者に業務内容の理解あり」「仕事にやりがいあり」「現職種としての継続 意欲あり」という特徴があった。SOC が高いことと他者からの「理解」が関連しており,これが仕事へのやりがいや継続意 欲に繋がることが示唆された。今後,多職種連携推進の際には,相互に理解を深めることが大切であると考えられた。The aim of this study was to clarify associations between recognition of the duties of nurses and medical social workers (MSWs) involved in discharge preparations at long-term medical care facilities for the elderly and their stress coping ability, namely, sense of coherence (SOC).
The target population was a total of 500 nurses and MSWs at geriatric medical care facilities for the elderly nationwide, and the study was conducted by means of a mailed anonymous self-report questionnaire survey. The investigation item is the summary, SOC, and role acceptance. After analyzing it according to the type of job distinction, the multivariate analysis was carried out. Valid replies were received from 335 persons (67.0%).
There was an association between SOC and role acceptance among both the nurses and the MSWs. In addition, the results of the multivariate analysis were characterized by “understanding of the nature of my duties by executives and administrators”, “my work is worthwhile”, and “I have a desire to continue in my present occupation” among persons with a high SOC. There was an association between high SOC and “understanding” by others, suggesting that it is linked to feeling that work is worthwhile and to a desire to continue. It appears that understanding each other will be important when promoting cooperation between members of various occupations in the future.
キーワード 看護師,医療ソーシャルワーカー,介護療養型医療施設,ストレス対処力,退院調整
Key Words Nurse, Medical Social Worker, Long-Term Medical Care Facilities for the Elderly, Sense of Coherence, Discharge Planning
受理日:2010 年 1 月 20 日
1) 山梨県立大学看護学部地域看護学領域:Faculty of Nursing, Yamanashi Prefectural University
2) 甲府市地域包括支援センター城東:Kofu City Comprehensive Community Support Center Joto
3) 山梨大学大学院医学工学総合研究部(健康・生活支援看護学): Interdisciplinary Graduate School of Medicine and Engineering (Department of Health Science and Community-Based Nursing), University of Yamanashi
Ⅰ . 緒言
介護療養型医療施設は介護保険施設のひとつとして位 置付けられ,患者の治療・療養の場として重要な役割を 担っている。2006 年に成立した医療制度改革関連法で は,年々増大する医療費の抑制を目的として長期入院の 是正を含めた計画的な医療費の適正化1)を図ることとな り,同年に改正された介護保険法では,医療依存度の高 い患者は医療療養病床へ,医療依存度の高くない者は在宅及び居住系サービスへ1)2)と,介護療養型医療施設 12 万床を 2011 年度末に廃止する方針となった。これを受 け,介護療養型医療施設に勤務する医療職,特に退院援 助業務に携わる看護師や医療ソーシャルワーカー(以下, MSW とする)は,入院患者の退院後の行き先確保と患 者や家族への説明や対応に追われている1)。 看護師には患者とその家族の生活全体を多角的に捉え た退院支援が求められている3)ものの,退院調整に時間 がとられ患者への直接的ケアが十分に行えていない4)現 状にある。また,MSW は平均在院日数の短縮化や病床 利用率の向上に対する貢献が大きい5)∼ 7)と言われてい るが,患者の退院後の行き先確保に追われ,患者と向き 合った本来のコーディネート機能が十分に生かされてい ないことが予測される。専門職本来の役割が果たせない 場合,それがストレスとなり結果的にバーンアウトを生 み出す要因となり得る。 従来の研究に見られるようなバーンアウトを引き起こ す原因の究明は,ストレスのような人間を病気に追いや る要因の軽減・除去を目指すという「疾病生成論」の考え に基づくものである。しかしその危険要因(risk factor) に囲まれた状況でも健康な人々がいることを踏まえ「健 康生成論」という概念が近年注目されている。これは従 来の疾病生成論的見地で見落とされてきた健康の維持, 増進に寄与し,健康を作り出す要因(salutary factor)の 強化を図る中核概念である。例えば Self-effi cacy8)や Health Locus of Control9)10),Hardiness 11)等が挙げられ るが,Antonovsky が提唱したストレス対処力(Sense of Coherence)(以下,SOC とする)10)12)∼ 20)は,特に欧米 で注目され,その実証的研究も数多い。避けることので きないストレス環境へ適応するために必要な個人要素を 考える上で SOC 概念は極めて示唆に富んでおり18),仕 事上のストレスに関して SOC が高い者のほうがストレ スフルな状況に柔軟に反応し,精神的な状態をよく保っ ていたという報告19)20)がみられている。 患者の退院支援にあたりよりスムーズな調整を行うた め,看護師は MSW の協力を要請することが多い21)。 世界保健機関(WHO)は 1988 年に「健康のために協働し ていくには共に学ぶことが重要であり,これにより医療 職者の態度の変化,共通した価値観の確立,チームの編 成,問題の解決,ニーズへの対応,実践の変化,専門職 の変化が期待される」とし,これを踏まえて欧米では多 職種協働連携教育の推進に取り組む例が増えている22)∼ 24)。我が国でも近年「協働」をキーワードとした取り組み 25)∼ 28)が注目されてきているが,多職種が患者や家族の ニーズを共通認識として捉え,互いの役割のみならず, 専門職の気質や特徴,置かれている現状等も併せて,互 いに理解していくことが大切であると考える。 退院支援に関連した先行研究では,看護師を対象とし た報告21)29)∼ 37)や MSW を対象とした報告2)5)7)38)∼ 40)は 多数見られるが,複数の職種に対する研究は事例検討 41)∼ 43)が中心で,量的研究では阪口ら3)が看護師,医師, リハビリテーションスタッフに対し行った意識調査以外 には見当たらない。また,看護師や MSW のストレス関 連の研究44)∼ 47)は多いものの,退院調整スタッフを対象 とした調査は見当たらない。そこで本研究は,退院調整 に携わる看護師と MSW に対して業務に関する認識と SOC の関連を調査し明確にすることで,介護療養型医 療施設における多職種連携推進の一助としたい。
Ⅱ . 目的
本研究は,介護療養型医療施設において退院調整に携 わる看護師と MSW の,業務に関する認識とストレス対 処力(SOC)との関連を明らかにすることを目的とした。Ⅲ . 対象と方法
全国の介護療養型医療施設に勤務する看護師 250 人と MSW250 人の計 500 人を対象に,無記名自記式質問紙 郵送調査を実施した。介護保険法に基づいた全国共通様 式の「介護サービス情報の公表」 (http://www.espa-shiencenter.org/)ホームページに掲載されている介護保 険適応の療養病床を持つ病院 1954 件のうち,MSW が 在籍していることが確認できた病院は 941 件であった (2009 年 1 月 1 日現在)。そのうちの 250 施設を無作為 抽出し,退院調整部署に所属していること,もしくは退 院調整を主に担当していることを条件として,看護師・ MSW 各 1 名が回答することとした。これは,各医療施 設の看護師と MSW の在籍人数の差から生じる回答結果 の偏りを減少させることに寄与している。 調査項目は,対象の概要として,性別,年齢,経験年 数,雇用形態,役職,介護支援専門員資格の有無,所属 医療施設の所在地(都道府県)を確認した。また,業務に 対する認識として「業務量が多いか」「医師との連携は困 難か」「看護師(または MSW)との連携は困難か」「(所 属している介護療養型医療施設の)経営者・管理者が業 務内容を理解しているか」「仕事にやりがいがあるか」 「今後も現職種として働いていきたいか」を「非常に思う」 から「まったく思わない」までの 4 件法で確認した。SOC については,山崎18)が開発した 13 項目スケール日本語 版を 7 段階のリッカート法で使用した。「把握可能感 (comprehensibility)」5 項目,「処理可能感(manage ability)」4 項目,「有意味感(meaningfulness)」4 項目の 3 つの要素で構成され,合計点が高いほどストレッサーに 対する感情の調整が上手にできていると考えることがで きる。自分の役割にどの程度満足し評価しているかについては,三川48)の役割受容尺度を使用した。「役割満足」 8 項目,「役割評価」7 項目,「役割有能感」5 項目,「役割 達成」7 項目の 4 下位尺度から構成された 27 項目で,「非 常によくあてはまる」から「全くあてはまらない」の 5 件 法に得点範囲 1 ∼ 5 点とし,合計点が高いほど役割を受 容できていると判断される。また,この SOC13 項目ス ケール及び役割受容尺度は,内的一貫性,信頼性,妥当 性が確立している17)48)。
解析には統計ソフト PASW ver.17.0 及び HALBAU 7.0 を使用し,各検定における有意水準は 5%とした。調査 期間は 2009 年 2 月 12 日から 3 月 24 日であった。
Ⅳ . 倫理的配慮
対象者には,研究の趣旨,匿名性の保持,調査への協 力は自由意志によるものであること,調査で得られたデー タをほかに使用しないこと等を文章で説明した。調査用 紙の回答及び返送をもって調査協力の受諾とし,質問票 は無記名のまま取り扱った。個人情報は施錠可能な場所 で厳重に管理した。本研究は「看護研究における倫理指 針(日本看護協会)」に沿って行い,山梨県立大学看護学 部倫理審査委員会の示す倫理指針に基づいて行った。Ⅴ . 結果
回収数 337 人(67.4%)のうち,有効回答数は 335 人 (67.0%)であった。そのうち看護師の有効回答数は 155 人(62.0%),MSW は 180 人(72.0%)であった。両職種 とも 47 都道府県すべてを網羅していた。 1. 対象の概要 対象の概要を職種別に表 1 に示した。看護師は男性 7 人(4.5%),女性 148 人(95.5%)で,平均年齢± SD は 43.6 ± 10.0 歳であった。看護師としての平均経験年数 表 1 対象の概要 n=335 看護師(n = 155) MSW(n = 180) カテゴリ n % n % t 値 p 値 性別 男 7 4.5 60 33.3 *** 女 148 95.5 120 66.7 年齢 Mean ± SD 43.6 ± 10.0 33.8 ± 8.7 9.41 *** 25 歳未満 0 0 9 5.0 25 ∼ 29 歳 9 5.8 56 31.1 30 ∼ 34 歳 32 20.6 51 28.3 35 ∼ 39 歳 15 9.7 23 12.8 40 ∼ 44 歳 20 12.9 11 6.1 45 ∼ 49 歳 31 20.0 6 3.3 50 ∼ 54 歳 22 14.2 7 3.9 55 ∼ 59 歳 16 10.3 7 3.9 60 歳以上 8 5.2 2 1.1 無回答 2 1.3 8 4.4 経験年数 Mean ± SD 19.9 ± 10.1 6.1 ± 4.9 15.41 *** 5 年未満 5 3.2 91 50.6 5 ∼ 9 年 20 12.9 60 33.3 10 ∼ 14 年 30 19.4 17 9.4 15 ∼ 19 年 22 14.2 4 2.2 20 ∼ 24 年 26 16.8 4 2.2 25 ∼ 29 年 22 14.2 1 0.6 30 年以上 27 17.4 1 0.6 無回答 3 1.9 2 1.1 雇用形態 常勤 154 99.4 179 99.4 n.s. 非常勤 1 0.6 1 0.6 役職 管理職 96 61.9 42 23.3 *** 管理職以外 59 38.1 138 76.7 介護支援専門員資格の有無 持っている 75 48.4 76 42.2 n.s. 持っていない 80 51.6 104 57.8± SD は,19.9 ± 10.1 年であった。雇用形態は,常勤 が 154 人(99.4%),非常勤が 1 人(0.6%)であった。役職 については,管理職が 96 人(61.9%),管理職以外が 59 人(38.1%)であった。介護支援専門員資格を有する者は 75 人で,看護師全体の 48.4%を占めていた。 MSW は男性 60 人(33.3%),女性 120 人(66.7%)で, 平均年齢± SD は 33.8 ± 8.7 歳であった。MSW として の平均経験年数± SD は 6.1 ± 4.9 年で,雇用形態は常 勤が 179 人(99.4%),非常勤が 1 人(0.6%)であった。役 職については,管理職が 42 人(23.3%),管理職以外が 138 人(76.7%)であった。職種別に有意差の認められた 項目は,性別(p<0.001),年齢(t = 9.41, p<0.001),経 験年数(t = 15.41, p<0.001),役職(p<0.001)であり,本 調査対象の特徴として,看護師は MSW に比べ「女性が 多い」,「平均年齢が高い」,「平均経験年数が長い」,「管 理職の割合が高い」という特徴が見られた(表 1)。 2. 職種別にみた業務に関する認識 業務に関する認識について,職種別に表 2 に示した。 「業務量が多いか」(z = 3.67, p<0.001)と「医師との連携 は困難か」(z = 2.11, p = 0.035)については,看護師の ほうが MSW よりも有意に高かった。一方,「看護師(ま たは MSW)との連携が困難か」については,MSW のほ うが看護師に比べ有意に連携が困難であると認識して いた(z = 3.59, p<0.001)。また MSW は「経営者・管理 者が業務内容を理解しているか」(z = 4.05, p<0.001),「仕 事にやりがいがあるか」(z = 2.58, p = 0.010)について, 看護師より有意に高かった。「今後も仕事を継続してい 表 2 職種別業務に関する認識 n = 335 看護師(n = 155) MSW(n = 180) カテゴリ n % n % z 値 p 値 業務量が多いか 非常に思う 64 41.3 43 23.9 3.67 ***1) やや思う 68 43.9 90 50.0 あまり思わない 22 14.2 44 24.4 まったく思わない 1 0.6 3 1.7 医師との連携は困難か 非常に思う 27 17.4 14 7.8 2.11 *1) やや思う 67 43.2 82 45.6 あまり思わない 50 32.3 72 40.0 まったく思わない 10 6.5 12 6.7 不明 1 0.6 0 0.0 看護師(または MSW)との連携は困難か 非常に思う 5 3.2 9 5.0 3.59 ***2) やや思う 26 16.8 57 31.7 あまり思わない 88 56.8 99 55.0 まったく思わない 32 20.6 15 8.3 不明 4 2.6 0 0.0 経営者・管理者が業務内容を理解しているか 非常に思う 12 7.7 36 20.0 4.05 ***2) やや思う 58 37.4 82 45.6 あまり思わない 65 41.9 51 28.3 まったく思わない 18 11.6 11 6.1 不明 2 1.3 0 0.0 仕事にやりがいがあるか 非常に思う 34 21.9 60 33.3 2.58 *2) やや思う 93 60.0 100 55.6 あまり思わない 23 14.8 18 10.0 まったく思わない 4 2.6 2 1.1 不明 1 0.6 0 0.0 今後も現職種として働いていきたいか 非常に思う 73 47.1 56 31.1 3.25 **1) やや思う 71 45.8 98 54.4 あまり思わない 9 5.8 25 13.9 まったく思わない 2 1.3 1 0.6 Mann-Whitney’s U test,両側検定(p<0.05)での z 値の境界値は 1.96 *p<0.05 **p<0.01 ***p<0.001 1)看護師が MSW に比し有意に高かった 2)MSW が看護師に比し有意に高かった
きたいか」については,看護師の方が MSW よりも有意 に継続していきたいと認識していた(z = 3.25, p = 0.001) (表 2)。 3. ストレス対処力と役割受容 職種の違いや立場,介護支援専門員資格の有無によっ て,SOC 得点や役割受容得点に違いがあるかについて の結果を表 3 に示した。まず SOC 得点は,看護師と MSW で有意な差は認められなかったものの,管理職は それ以外の者よりも有意に高く(t = 3.21, p = 0.001), 介護支援専門員資格を有する者は資格のない者に比べ有 意に高かった(t = 3.26, p = 0.001)。これに併せて,役 割受容についても介護支援専門員資格の有する者は有意 に高いことが明らかとなった(t = 3.66, p<0.001)(表 3)。 SOC と役割受容との関連を表 4 に示した。看護師, MSW とも SOC 得点と役割受容得点が相関関係にある ことが分かり,特に,看護師においては比較的強い相関 が認められた(r = 0.72, p<0.001)。また,本研究対象全 体においても,SOC と役割受容は相関していることが 明らかとなった(r = 0.63, p<0.001)(表 4)。 4. ストレス対処力が高い者の特徴 13 項目スケールの場合,SOC 得点の平均は一般の人 で 52 ∼ 60 点であり,60 点以上を高いとする17)18)。こ れを参考に,60 点をカットオフ値として SOC の高低で 2 群に分け多変量解析を行い,その結果を表 5 に示した。 説明変数は,調整変数も含め「年齢」「経験年数」「業務 量多い」「医師との連携困難」「(看護師,MSW がそれ ぞれ他職種に対し)相互に連携困難」「経営者・管理者に 業務内容の理解あり」「仕事にやりがいあり」「現職種と しての継続意欲あり」を投入した。その結果,看護師, MSW 及び全体で有意に高かった項目は「経営者・管理 者に業務の理解あり」であった(p<0.001)。そのほか,看 護師は「現職種としての継続意欲あり」(p<0.05),MSW 表 3 SOC と役割受容の属性別比較 n = 335 SOC(合計 91 点) 役割受容(合計 135 点) カテゴリ n Mean ± SD t 値 p 値 Mean ± SD t 値 p 値 職種 看護師 155 55.9 ± 11.2 0.19 n.s. 89.3 ± 14.7 -1.34 n.s. MSW 180 55.7 ± 8.9 91.4 ± 13.5 管理職の有無 管理職 138 57.9 ± 11.1 3.21 ** 91.8 ± 15.1 1.45 n.s. 管理職以外 197 54.2 ± 8.9 89.5 ± 13.3 介護支援専門員資格 あり 151 57.7 ± 9.8 3.26 ** 93.5 ± 12.6 3.66 *** なし 184 54.2 ± 9.9 87.9 ± 14.8 t-test **p<0.01 ***p<0.001 表 4 SOC と役割受容の相関 看護師(n=155) MSW(n=180) 全体(n=335) カテゴリ r 値 p 値 r 値 p 値 r 値 p 値 SOC と役割受容 0.72 *** 0.57 *** 0.63 ***
Spearman's correlation coeffi cient by rank test ***p<0.001
表 5 SOC 高群(≧ 60)の低群(< 60)に対する多重ロジスティックモデル カテゴリ 看護師(n = 155) MSW(n = 180) 全体(n = 335) 調整オッズ比 95% 信頼区間 調整オッズ比 95% 信頼区間 調整オッズ比 95% 信頼区間 年齢 1.05 0.980-1.125 1.06 0.996-1.126 1.05 0.992-1.095 経験年数 1.00 0.994-1.005 1.00 0.992-1.006 1.00 0.997-1.003 業務量多い 0.95 0.544-1.675 1.52 0.889-2.582 1.17 0.811-1.695 医師との連携困難 0.95 0.589-1.538 0.89 0.739-2.614 0.93 0.694-1.437 相互に連携困難 0.99 0.857-2.420 0.57 0.291-1.123 0.95 0.721-1.537 経営者・管理者に業務内容の理解あり 2.21 1.311-3.708 ** 2.01 1.305-3.107 ** 2.15 1.316-2.614 *** 仕事にやりがいあり 1.71 0.892-3.291 2.02 1.010-4.819 * 1.65 1.006-2.700 * 現職種としての継続意欲あり 1.92 1.005-3.813 * 0.99 0.446-2.216 1.40 1.002-2.251 *
は「仕事にやりがいあり」(p<0.05)が有意に高かった。 対象全体でも「仕事にやりがいあり」と「現職種としての 継続意欲あり」は有意に高かった(p<0.05)(表 5)。
Ⅵ . 考察
1. 職種による属性比較 平均年齢は,看護師のほうが MSW より有意に高く, MSW が他の医療・福祉の専門職よりも比較的低年齢で あるという先行研究44)と一致していた。また,経験年 数も看護師のほうが長かったが,経験年数 5 年以上とい う介護支援専門員資格の条件を満たすことにより介護支 援専門員として異動する実態49)がその要因のひとつで あると考えられた。 雇用形態は,看護師,MSW ともにほぼ常勤であるも のの,管理職の割合は看護師のほうが有意に高かった。 MSW は一施設平均 5 人未満の少数配置の場合が多い44) ことから,ベテラン・中堅・新人といった組織体制が成 立し難い現状にある。これには年齢や経験年数の関連も 十分予測されるものの,看護師とは異なった組織形態で あることが示唆された。 2. 職種別にみた業務に関する認識 看護師は MSW に比べ,有意に「業務量が多い」と認識 していた。看護師が多忙であることは以前より報告50) されており,全国的にも未だ解決の糸口が見つかってい ない。職種の専門分化が進む中で,看護師本来の役割を 明確にしていく必要性が示唆され,看護基礎教育の段階 においてもその専門性を他職種と比較しながら学ぶ必要 があると考えられる。 看護師は MSW に比べ,有意に「医師との連携困難」と 認識していた。患者の退院後の状況は,退院支援に関わっ た者の知識や技術に影響される。猪川51)は他職種とい かに連携を図るかが重要で,患者や家族のために自分に 何ができるかを積極的にアピールし周囲に理解してもら う必要性を言及している。医師との連携は退院支援にお いて不可欠であり,互いの職種の違いから生じる特徴を 理解し合うことが要求される。MSW は看護師との連携 が困難であることについて,看護師が MSW に抱くより も強く認識していた。退院支援に関して,永田ら52)は「他 部門・他職種が共有認識を持って進めることが大切であ り,通常ケアにあたるスタッフの役割が大きい」と述べ ている。患者や利用者の生活の流れに切れ目なく関わる 看護師の理解と協力なくしては患者のニーズを満たした 退院は成立しない。MSW が看護師のカンファレンスに 参加する3)等,互いに理解を深めることができる機会を 増やすシステムの構築が必要であると考えられた。 MSW は経営者等に「業務内容を理解してもらってい る」と看護師よりも有意に認識していた。MSW は国家 資格等がなくてもそれを職業とできるが,近年では MSW の採用条件として「社会福祉士資格有する者」を含 める医療機関が増加している28)53)。これは,MSW の業 務が専門分化されその役割がより一層明確になることを 意味している。MSW は少数配置のため,一人にかかる 責任が大きい可能性が示唆されている。しかし,鈴木ら 44) が「MSW は他職種が自分たちの仕事を理解してくれ ていることが仕事の満足度に影響する」と述べている通 り,本研究ではその大変さがやりがいに繋がっていると 考えられた。看護師が MSW より「今後も仕事を継続し ていきたい」と認識していたことについては,看護師の チームケア特性から先輩看護師とともに仕事をする場面 が多く,将来の自身の姿を想像しやすいことが継続意欲 に結びついているのではないかと考えられた。 3. ストレス対処力と役割受容 SOC 得点については看護師と MSW の両職種間の平 均値に差はなく,一般平均 52 ∼ 60 点のうちに収まって いた。しかし,藤野54)の看護職を対象とした研究の SOC 得点(50.06 ± 7.8)に比べると高い結果であった。 管理職及び介護支援専門員資格を有する者がそれ以外の 者より高かったことについては,これらの経験自体が SOC の後天的形成過程として環境への信頼や安心の感 覚を取り組んだ自信55)に繋がっていることが示唆され た。また,介護支援専門員資格の有する者が役割受容得 点について有意に高かったことについては,この尺度の 特徴である「自分が果たすべき役割をどの程度重視し受 容しているか」48)という肯定的感情が介護支援専門員の 役割意識として定着していることを意味していると考え られた。 結果より,SOC が高いほど役割受容ができているこ とが明らかとなった。このことから本対象の看護師と MSW では,SOC の 3 要素,有意味感・把握可能感・処 理可能感が自分の果たすべき役割の認識や生き方への満 足感を得ることに関連していることが示唆された。 4. ストレス対処力が高い者の特徴 多変量解析の結果,看護師・MSW・全体で有意に高かっ た項目は「経営者・管理者に業務の理解あり」であった。 SOC が高い者の特徴として,経営者等に自分の業務内 容をしっかり理解してもらえていると認識していること が示唆された。また,対象全体で「仕事にやりがいあり」 と「現職種としての継続意欲あり」は有意に高く,職種別 では看護師が「現職種としての継続意欲あり」,MSW が 「仕事にやりがいあり」の項目で有意性が認められた。 Antonovsky12)17)は,ストレス処理の成否や良質の人生 体験の有無が SOC の強さを決定し,その SOC がまた次の緊張の処理過程に影響するとしている。退院を迫ら れている患者や家族に対し専門職として誠心誠意関わ ることは精神的負担が非常に大きいことが予測される。 そうした日頃の業務内容について経営者や管理者が理 解を示してくれていると認識できれば,それが仕事の やりがいに繋がり,延いては継続意欲を高めることに 関連する。この傾向が看護師と MSW の両職種で認め られたことから,ストレス対処の観点で言えば,職種 間の理解に併せ,経営者・管理者から理解されている と認識していることが非常に重要であることが示唆さ れた。今後,関係する様々な社会資源と他部門・他職 種の人材が共有認識を持って連携することは当然であ り,そのうえで退院支援部門や管理者を設置し,そこ で働く専門職が経営者を含む周囲の人々に理解しても らえていると認識できるような環境整備56)が職務満足 感にも影響する57)と考えられた。 疾病を抱えた患者や障害のある人々の複雑かつ多様 な課題とニーズを解決するために,チームの構成や役 割を変化させられる多職種による集団的アプローチが 効果的である25)と言われている。特に,保健医療福祉 の各専門職が協働し,より質の高い保健医療福祉サー ビスを提供するためには,経営者や管理者の業務にお ける理解が今後の課題解決策のひとつに繋がるのでは ないかと考えられた。
Ⅶ . 結論
1. ストレス対処力(SOC)と役割受容とは比較的強い 関連がみられた。 2. ストレス対処力(SOC)が高い者には「経営者・管理 者に業務内容の理解あり」「仕事にやりがいあり」 「現職種としての継続意欲あり」という特徴があっ た。 3. 看護師は MSW よりも「業務量が多い」「医師との 連携困難」「現職種としての継続意欲あり」という 特徴があった。 4. MSW は看護師よりも「看護師との連携困難」「経営 者・管理者に業務内容の理解あり」「仕事にやりが いあり」という特徴があった。Ⅷ . 本研究の限界
本研究では,退院調整に携わらない者との比較をし ていないため,今回得られた結果は退院調整業務に携 わる者の特徴として一概に言及することはできない。 また,本研究デザイン上正確な因果関係を探るには不 十分であり,今後もコホート研究の実施を含め更なる 検討を行う必要性があると考えられる。謝辞
本調査にご協力くださいました全国の介護療養型医 療施設の看護師及び MSW の皆様方には,心より感謝 を申し上げます。 引用文献 1) 三浦公嗣(2006)医療費の適正化を図るため,療養病床の再編成 を実施.転換先には介護老人保健施設が有望.GP net,53(3): 13-17. 2) 小鯖覚(2007)療養型病院から発信する地域連携.病院,66(6): 500-503. 3) 阪口陽子,島中小百合,春見良子(2008)退院支援に関する看護 師・医師・リハビリテーション科スタッフに対する意識調査. 日本看護学会論文集(地域看護),39:12-14. 4) 西川紀子,嶌田寿美子,関谷典子,他(2008)療養型病院におけ る看護職員満足度の現状.日本看護学会論文集(看護管理), 39:111-113. 5) 阿部真菜美,加藤由美,関田康慶(2006)MSW のコーディネー ト機能と平均在院日数,病床利用率への影響分析.病院,65 (10):838-841. 6) 加藤由美,関田康慶(2007)MSW のコーディネート機能による 患者不安度軽減効果の評価.病院,66(1):64-69. 7) 岩村庄英(2008)療養型病院における MSW の働き.病院,66(7): 600-603.8) Bandura A(1977) Self-effi cacy: Toward a unifying theory of behavioral change. Psychological Review, 84: 191-215. 9) Rotter JB(1966)Generalized expectancies for internal versus
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