津波と図書館 -- スマトラ島沖地震とスリランカ (
特集 災害と図書館)
著者
東川 繁
権利
Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア
経済研究所 / Institute of Developing
Economies, Japan External Trade Organization
(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp
雑誌名
アジ研ワールド・トレンド
巻
210
ページ
34-35
発行年
2013-03
出版者
日本貿易振興機構アジア経済研究所
URL
http://hdl.handle.net/2344/00003753
二〇〇四年一二月二六日午前六 時 五 八 分( ス リ ラ ン カ 時 間 )、 ス マトラ島北西沖で発生した地震は 時速約七〇〇キロという超高速で 伝わる津波を引き起こし、同島の みならず周辺諸国をも襲った。ス リランカには九〇分で到達したと いう。短時間で海岸地域の六〇% 以上が深刻な被害を受けた。スマ トラ島に面した東岸地域の被害が 大きかったのは当然であるが、イ ンドに面した西岸地域でも被害が あったのは、いわゆる 回 かい 折 せつ 現象に よ っ て 波 が 回 り 込 ん だ た め で あ る。このため、コロンボ発ゴール ( Galle ) 行 き の 列 車 が 津 波 に の ま れ、多数の死者が出るという悲劇 も起きている。 今回の津波によるスリランカ全 体 の 死 者 は 三 万 八 〇 〇 〇 人 以 上、 全壊家屋数は八万戸以上との報告 がある。道路、鉄道、通信、電力 などがしばらく機能不全に陥った 地域もある。人命やインフラのほ か、重要な記録・文書類も被害を 受けた。たとえば、人口密度の高 い南部州(州都ゴール)ではすべ ての選挙人名簿と六〇万件に及ぶ 不動産登記簿が消失したという。
●図書館の被害状況
スリランカの図書館がどの程度 の被害を受けたのか、図書館の種 類別に簡単な報告が出ているので それをみてみよう。 学校図書館関係では、全国九七 九 〇 校 の う ち 一 八 二 校 が 被 災 し、 約一二〇万冊の図書・雑誌が利用 不 能 と な っ た。 公 共 図 書 館 で は、 全国九五〇館のうち六二館が被災 し、 こ の う ち 二 八 館 が 全 壊 し た。 海岸地帯の公共図書館はこれまで 観光、漁業、鑑賞魚養殖、伝統工 芸 品、 貴 金 属 製 品、 香 辛 料 栽 培・ 加工などに関する資料の収集に力 を入れてきたが、これらの資料の 多 く が だ め に な っ た。 こ の ほ か、 六八の仏教寺院付属の図書館が被 災した。その数は公共図書館の数 とほぼ同じで、いかにも仏教国の スリランカらしい。ヤシの葉に記 した経典、アーユルヴェーダ(イ ン ド 伝 統 医 学 ) 関 係 古 文 書 な ど、 貴 重 な 資 料 が 損 な わ れ た と い う。 水資源研究機構図書館、港湾局図 書館などの著名な専門図書館も被 害を受けている。 スリランカは以前から教育が普 及しており、識字率も九五%と高 い。これに平行して各種図書館も よく整備されており、国土の規模 に比較して図書館数も多い。その ぶん被った被害も大きかったとい える。所蔵資料のみでなく、受入 台帳、カード目録、コンピュータ システムなどが被害を受けた館も 多く、被害の正確な把握と速やか な業務の再開に支障を来した。●復興への動き
政府は、被災直後の比較的早い 時期から地方自治体と協同した復 興 へ の 取 り 組 み を 開 始 し、 食 料、 医薬品、衣類の供給、仮設住宅の 設置などに取り組んだ。このよう な対応が可能であったのは、政府 の情報収集体制が機能していたの と、地域社会や宗教団体による援 助活動が活発であったためといわ れている。 津波被害状況。色の濃い地域ほど被害が大きい(http://www.thinktheearth. net/jp/thinkdaily/report/2005/03/rpt-21.html) India Sri Lanka Jaffna Mullaitivu Batticaloa Ampara Galle Colombo Hambantota Trincomalee Kilinochchi特 集
災 害 と 図 書 館
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アジ研ワールド・トレンド No.210 (2013. 3)次 の 段 階 に 入 っ て ま ず 問 題 と な っ た の は、 土 地 不 足 で あ っ た。 これは図書館のみでなく、一般住 宅、公共施設全般に関わってくる ことである。政府は海岸から一〇 〇メートル以内での新規建築物を 禁止にしようしたが、代替地の取 得に多額の費用がかかること、禁 止区域の外の土地利用がかなり進 んでしまっていること、などの理 由で壁に突き当たった。 また、前例がない事態に対処す るには既存の法律や規則が整備さ れておらず、制度上の壁に突き当 たることが頻繁に発生した。この 種の問題については、地方政府よ り中央政府の方が深刻であったと いう。以上のような問題を解決す るため、政府与党が全面に出て調 整を図った。