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「学会誌のあるべき方向についての一所感」

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Academic year: 2021

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巻  頭  言

学会誌のあるべき方向についての一所感

鎌 形 洋 一

いきなり他の学会の話で大変恐縮ですが,日本微生物生態学会が 20 余年に亘って出版してきた学会誌

Microbes and Environments がトムソン・ロイター社によって本年初めてインパクトファクターが与えられ

ました。初めてのインパクトファクターは 2.248 となり,我が国で発刊されている微生物学関連国際誌にお いてトップに躍り出たことになります。これは,過去 10 年近くに亘る学会誌の歴代の編集委員長を初めと する多くの方々の驚くべきご尽力の賜物です。すなわち定例的に発行される学術誌として,いっさい遅滞な く一定の水準を保ちながら一定以上の論文数を掲載するという,一見容易そうで実は大変難しい作業を長年 に亘り怠り無く進めてきた努力の結晶です。時として集まりの少ない投稿論文をいかに増やすか,査読のプ ロセスをいかに迅速化するか,いかにオンラインでのアクセスを増やして行くか,こうした地道な問題に取 り組んできたことの結果としてようやく辿り着いた地点であると言えるでしょう。この雑誌に限らず日本発 の雑誌を国際的なものへ育てようとしている多くの方々にあらためて敬意を表する次第です。 インパクトファクターの価値に関しては,当然多くの議論はありますし,この数値が今後,恒常的に維持 されていくわけではありません。インパクトファクターは所詮水物であり,引用されなくなればたちまちそ の数値は転落していくものです。しかし今,微生物生態学会ではこの雑誌をいかに大切に育て続けていくか について編集委員長を中心に真剣に議論がなされており,環境バイオテクノロジー学会の会員の方もその中 心メンバーに入っています。 私がこの話を敢えて書かせていただいた最大の理由は,現在,我が国において少なくとも数十の微生物関 連学会が存在し,かつ,それぞれの学会が独自に学会誌等を刊行しているという状況をそろそろ変えるべ き時代が訪れているのではないか,と考えているからです。例えば,米国ではアメリカ微生物学会 (ASM) が微生物学会の中心として存在しており,極端に言えば,ASM の発行する学会誌さえ眺めていれば,微生 物学の最新動向を鳥瞰図的に知る事ができます。しかし,今の日本では,残念ながらそれに相当する雑誌が 存在しません。あまりに多くの学会が独自に学会誌を発刊しており,それぞれが決して多くの部数を発行し ているわけではありません。学会員でなければ,そうした雑誌の内容を見ることはなかなか難しいのも現実 です。それぞれのコミュニティーがそれぞれに独自の考えをもって活動することは大変重要なことである一 方,学会誌を共有することは決してそれぞれの活動に反するものではなく,むしろ情報の共有と発信という 観点では大きなメリットがあると感じています。Microbes and Environments が中核となって日本の微生物 学を発信していく事が最善であるとここで主張したいわけではありません。しかし,私達環境バイオテクノ ロジー学会もこのような潮流から孤高でいることは決して得策ではないと感じます。 今微生物の研究分野全般に順風が吹いているとは決して言いがたい状況です。社会貢献を常に求められる 風潮になったこと,研究環境がさまざまな面で悪化していることが大きな原因として挙げられるでしょう。 今はむしろそれぞれの分野の基礎・基盤研究をもう一度見直し,時間をかけて微生物学の復権を目指してゆ く時代だと思います。同時に,いかなる研究分野も組織も,戦略性と自発的自由度をいかにバランスさせて 行くかが強く問われており,かつそれは日本が(決して研究に限らないことですが)最も苦手としている部 分であるように感じてなりません。以上を一つの問題提起としてとらえて頂ければ幸いに存じます。 産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門     

北海道大学大学院農学研究院応用生命科学部門(兼務)

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