複数のPTZカメラを用いた保育施設のための複数ユーザの要求に応じた映像配信・提示システム
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(2) 論文/複数の PTZ カメラを用いた保育施設のための複数ユーザの要求に応じた映像配信・提示システム. ラサービスのように,各ユーザが見たい対象が異なり, またカメラ台数よりユーザの人数が多い場合は適用で. 表 1 サービス利用時間に関するアンケート結果 Table 1 Questionnaire result about active time of the service.. きない. 本研究は,保育施設におけるライブカメラサービス において,複数台の PTZ カメラを使用し,そのカメ ラ台数よりも多いユーザのアクセスがあった場合でも, 最大多数の最大幸福の原理に基づき,複数ユーザそれ ぞれの要求に応じた映像を提示するシステムの実現を 目標とする.そのため,本研究ではユーザに提示され. 表 2 ある時間帯にある人数がアクセスする確率 (%) Table 2 Probability that a user access for time periods. (%). る映像に対して,ユーザの満足度(=幸福度)を表す 評価関数を定義し,従来の操作権をだれかがもつシス テムのように誰かが優先的に満足するのはなく,すべ てのユーザを平等に扱い,すべてのユーザのこの評価 関数の総和を最大にする(=最大多数の最大幸福)こ とを目指すアルゴリズムによりカメラ制御を行う.ま た評価関数は,ユーザがどのような映像を見たいと. 表 3 サービス使用中の各シーンを見る時間の割合 Table 3 Time rate for watching each presenting scene.. 思っているのかをアンケートにより調査し,この結果 から定義する.複数ユーザの同時にアクセスについて は,複数ユーザの満足度を高くするカメラの割当と制 御を行い,カメラ台数よりも多いユーザの要求に応じ た映像提示を実現する.. 2. 複数の PTZ カメラを用いた複数ユーザ の要求に応じた映像提示. とする. また,ライブカメラサービスを使用しているとして, 異なる人数を含めた画像を見てもらい,サービスにア クセス中,各画像のような映し方の映像をどのくらい の時間見ると思うかを質問した.そしてアクセス時間. 2. 1 アンケートによる事前調査. に占めるそれぞれのシーンを見る時間の割合を表 3 に. ユーザはライブカメラサービスでどのような映像を. 示す.. 見たいと思っているのかをアンケートにより調査した.. 自分の子供が映っていないシーンについては全体の. アンケートは,現在または近い過去に幼稚園や保育園. 1 割程度と低く,当然のことながら自分の子供を映す. など保育施設を利用した経験のある,約 3 歳∼12 歳. 必要があることが分かった.また,何人を含めて映す. の子供をもつ保護者 92 名に対して行った.まず,同. かについては答えにばらつきが見られ,「自分の子供. 時に何人がアクセスするかを考察するために,サービ. の様子を詳細に見たい」と「自分の子供を含む周囲の. スを利用するとしたときの,利用頻度,利用時間,利. 状況を見たい」という要求があることが分かった.高. 用時間帯を調査した.その結果を表 1 に示す.1 回の. 速度ネットワークと高精細全方位カメラなどにより双. アクセス時間の平均が 13.3 分と,文部科学省の定め. 方の要求を同時に満たすことができるならば部屋全体. る幼稚園における一クラスの定員制限 35 名から,ポ. を撮影すればよいが,そうでない場合はそのときの子. ワソン分布を利用して,アクセスする時間帯が 1 時間. 供の状況等からユーザにより見たい人数は異なると考. から 5 時間の場合に,何人が同時にアクセスする可能. えられる.以上の考察から,本研究ではユーザの要求. 性があるかを算出した結果を表 2 に示す.アンケート. を「見たい子供=各ユーザの子供」と「見たい人数」. の結果,サービスの利用時間帯が開園時間から 14 時. の 2 点とした.. であり,保育施設に子供を預けに行く時間が主に 8 時. 2. 2 評価関数の定義. から 9 時であることから,ユーザがアクセスする時間. 評価関数はユーザの要求に合わせて,ユーザの「見. 帯を 5 時間で考えると,6 人以上が同時にアクセスす. たい子供」と「見たい人数」を映すことで評価値が高. る確率が 1%を下回って低いことから,本研究では 5. くなるように設定する.そこで,あるカメラ i につい. 人の同時アクセスに対応できるシステムの実現を目標. てあるユーザ u の満足度を表す評価関数 Sui は,カメ 283.
(3) 電子情報通信学会論文誌 2010/3 Vol. J93–D No. 3. ラ i のパン角 θi ,チルト角 φi ,ズーム値 Zi ,ユーザ u. ので,他の人物によってオクルージョンとなったとき. の見たい人物の環境中での三次元位置 Pu を用いて次. に値が低くなる.ここでの人物の幅は,人物の向きに. のように定義する.なお本研究では,保育室は長方形. 関係なく一定値を設定し,人物同士が重なる幅は人物. で,各カメラは部屋の隅に設置していることを想定す. の位置から求める.. る.また,保育室内にいる子供の位置は既知とする.. Sui (θi , φi , Zi , Pu ) = (W1 × Gui +W2 ×Fui )×Tui. 2 見たい人数に対する評価 式 (1) 中の見たい人数に対する関数 Fui は以下のよ うに定義する.. . (1) Gui はカメラ i の画像にユーザ u の見たい人物が映っ ているかを評価する関数であり,Fui はカメラ i の画. Z. − ln Zui i. 2. Fui (θi , φi , Zi , Pu ) = e. (3). Zui はユーザ u のカメラ i における理想のズーム値で. 像にユーザ u の見たい人数が映っているかを評価する. あり,ユーザ u の希望人数が画像内に納まるように画. 関数である.また,W1 ,W2 は各項への重みである.. 角を決定したときの焦点距離である.この画角はユー. そして,Tui はカメラが切り換わったときの見難さを. ザ u の見たい人物のいる方向を理想の方向とし,見た. 軽減することを目的とし,「イマジナリーライン」(後. い人物の周りにいる人物のうち近い順に希望人数に含. 3 )を考慮した撮影技法を適用して見やすい映像と 述. めて,この希望人数が画像内に入るように決定する.. するための係数である.以下に,評価関数 Sui につい. Zui と現在のカメラのズーム値 Zi が等しくなるとき,. て詳述する.. Fui は最大値となる. 3 イマジナリーラインによる評価. 1 見たい人物に対する評価 ユーザの見たい人物がユーザに提供される画像に. 見やすい映像とするための係数 Tui は「イマジナ. よく映っているかを評価するために,見たい人物が画. リーライン」を考慮した撮影技法を適用したカメラ間. 像中心に近く,またカメラに近く,他の人物とのオク. の遷移係数である. 「イマジナリーライン」とは主要な. ルージョンが少ないことを評価する.これらを考慮し. 二人の人物を結んだ線のことである(図 1).図 1 中. て式 (1) 中の見たい人物に対する関数 Gui は次のよう. のカメラ 1 からカメラ A への切り換えのように,この. に定義する.. ラインを超えた位置のカメラに切り換えると,人の位. . Gui (θi , φi , Zi , Pu ) = k1 ×. +k2 × 1.0−. dis ui diag. . . (w/2) − d2ui (w/2)2. +k3 × 1.0−. 2. . olui wid ui. . 2 (2). 置関係や動きの方向が逆になり,見ている人に映って いる人物の位置関係を分からなくさせてしまう.その ため,イマジナリーラインを超えた撮影はなるべくし ない方がよいという撮影技法がよく知られている [9]. そこで,あるカメラの映像を見ているユーザの,次に. k1 ,k2 ,k3 は各項への重みである.第 1 項の dui は画. 切り換わるカメラへの遷移係数を評価関数に影響させ. 像座標上において画像中心からユーザ u の見たい人物. ることで,ユーザの映像の見づらさを軽減する.本研. までの距離,w は画像の幅である.これは人物の三次 元位置をカメラ i の画像上に投影して計算する.第 1. 究では,ユーザ u が指定した見たい人物と,その人物. 項はユーザ u が見たい人物の画像内での位置を評価し ており,ユーザ u の見たい人物が画像中心に近いほど 値が高くなるように設定した.第 2 項の dis ui はカメ ラ i とユーザ u の見たい人物とのユークリッド距離,. diag は部屋の対角線の長さである.第 2 項はカメラ i とユーザ u の見たい人物との距離を評価し,この距 離が近い方が値が高くなる.第 3 項の olui はカメラ i の画像上でユーザ u の見たい人物と他人の重なる幅,. wid ui はカメラ i の画像上に投影したユーザ u の見た い人物の幅である.第 3 項はユーザ u の指定する見た い人物がオクルージョンとなっているかを考慮したも 284. 図 1 イマジナリーライン Fig. 1 Imaginary line..
(4) 論文/複数の PTZ カメラを用いた保育施設のための複数ユーザの要求に応じた映像配信・提示システム. 図 2. イマジナリーラインによるカメラ間の遷移係数の 決定 Fig. 2 Determination of the coefficient by imaginary line. Fig. 3. 図 3 カメラ割当・制御の処理の流れ Flowchart of camera assignment and control.. に最も近い人物を結ぶ直線をユーザ u にとってのイマ. の割当はソフトウェアにより即座に実行できるのに対. ジナリーラインと考え,カメラ間の遷移係数はこのイ. して,カメラの制御はハードウェアの制限やあまり速. マジナリーラインを超えるか超えないかで決定する.. く動かすと画面が見づらくなるなどの理由により時間. 遷移係数の決定の例を,環境を上から見た図 2 に示. がかかるためである.そのため,まずはその時点での. 4 の映像を提示していた す.図 2 は,ユーザにカメラ. カメラパラメータの状態でユーザの満足度が最大とな. とき,指定人物と最も近い人物 a とを結ぶ線をイマジ. るようにし,その後ユーザの満足度が更に高くなるよ. ナリーラインとして遷移係数を決定する様子を表す.. うにカメラを機械的に制御した方がよい.. 1 と 4 はイマジナリーラインを超えない位置に カメラ 3 はイマ あるので,遷移係数は高く設定する.カメラ. 各ユーザへのカメラの割当は,2. 2 で定義した評価. ジナリーラインを超えているので遷移係数は低く設定. 関数により,現在のカメラパラメータの状態でユーザ. 3. 2 各ユーザへのカメラの割当. 2 はイマジナリーラインを超えて対角のカ し,カメラ. ごとに各カメラの満足度を求め,満足度が最大となる. メラなので,人物の位置や方向は真逆になるため,ほ. カメラをユーザに割り当てる.初期状態においてカメ. とんど切り換わらないよう低く設定する.また,対角. 1 の満足度が最大であるとき,このユーザにはカメ ラ. にあってもイマジナリーラインを超えないカメラは,. 1 を割り当てる.そして指定人物の移動などにより ラ. 1 , 4 と同様に高い値を設定する.遷移係数は, カメラ. 2 の満足度が最大 各カメラの満足度が変化し,カメラ. ユーザに新たに割り当てる場合はどのカメラも 1.0 で. 1 の満 となったとき,先に割り当てられていたカメラ. あり,図中の数値は出力される画像を見ながら主観に. 足度との差を比較し,しきい値以上であればカメラの. 基づいて経験的に決定した.. 割当を変更する.しきい値を用いることにより,カメ. 3. 評価関数に基づくカメラの割当と制御 3. 1 概. 要. ラの切り換わりが細かくなって見づらい映像となるこ とを抑える.. 3. 3 評価値の最大化によるカメラ制御. 図 3 に提案手法におけるカメラ制御の処理の流れを. カメラをすべてのユーザに割り当てた後,カメラご. 示す.本手法ではユーザにより人物指定と希望人数の. とにそのカメラを割り当てられているユーザの評価関. 指定が行われ,室内に存在する全人物の環境中の三次. 数により算出される満足度の総和を最大とするように. 元位置は何らかの方法で取得できるものとする.現在. カメラパラメータ(パン・チルト・ズーム値)を決定. のカメラの状態から,ユーザごとに全カメラ画像の満. する.カメラパラメータは 2. 2 で示した評価関数を. 足度を評価関数により算出し,満足度の高いカメラを. パン・チルト・ズームの各パラメータで偏微分した式. 各ユーザに割り当てる.全ユーザへのカメラ割当後,. を用いて,最大こう配法により最適解を探索すること. カメラごとにユーザの満足度を最大とするようにカメ. で決定する.この際,最大こう配法の初期値として直. ラパラメータを最適化してカメラ制御を行う.この処. 前のカメラのパン・チルト・ズーム値を利用する.こ. 理を繰り返し,ユーザには割り当てられているカメラ. れにより求まったパン・チルト・ズームの最適解をカ. の映像を提示する.このときカメラの割当とカメラパ. メラの制御パラメータとし,カメラ制御を行う.また,. ラメータの最適化を同時に行わなかったのは,カメラ. どのユーザにも割り当てられなかったカメラは,その 285.
(5) 電子情報通信学会論文誌 2010/3 Vol. J93–D No. 3. カメラに最も近い人物を指定するユーザにとっての理. 音声は,マイクを PTZ カメラにつながる一台の PC. 想のカメラパラメータを適用して,だれかに割り当て. に接続して,Windows Media エンコーダを利用して. られるのを待つ.. 遠隔地へ配信した.. 4. 複数の PTZ カメラによるライブ映像 配信システム. 4. 2 機 器 構 成 プロトタイプシステムにおける機器構成について述 べる.図 4 中の各 PC の仕様を表 4 に示す.すべての. 4. 1 システムの概要. PC は Gigabit Ethernet に接続した.魚眼カメラには. 本研究では,保育室にいる子供の位置情報から,ユー. POINT GREY RESERCH 社製カメラの Flea(解像. ザの要求に応じたカメラ映像を提示するシステムの実. 度:1024 × 768 pixels)に魚眼レンズを取り付けたも. 現を目的とする.このような目的を実現するためには,. のを使用し,PTZ カメラは SONY 社製の EVI-D30. ( 1 ) 部屋にいる子供の位置情報の取得. を使用した.. ( 2 ) ユーザの要求の入力. 4. 3 観測人物の位置推定. ( 3 ) (1),(2) の情報からの各カメラの制御パラ. プロトタイプシステムでは,2. で何らかの方法で既. メータの決定とカメラ制御 ( 4 ) カメラ画像の配信と受信. 知としていた室内にいる人物の位置推定を PTZ カメ ラとは別に魚眼カメラを使用して行う.カメラ画像上. の処理を行う必要がある.本研究では,実用に近いシ. での人物の追跡は CamShift アルゴリズム [10] を利用. ステムを目指し,図 4 に示す構成のプロトタイプシス. する.. テムを構築した.本システムでは,室内の子供の位置. 本システムでは,観測人物に色の異なる衣類を身に. 情報を魚眼カメラの画像より取得した.そして,ユー. つけてもらい,画像上で追跡する領域として,基準フ. ザの入力した要求と合わせて,サーバにおいて 2. で提. レームにおいて観測人物の衣類の領域を指定する.こ. 案した手法を適用し,ユーザにカメラを割り当てて各. の手法により得られた画像上での人物の追跡結果の. カメラの制御パラメータを決定した.その決定したカ. 座標から,カメラ中心とカメラ画像上の座標を通る世. メラの制御データを PTZ カメラにつながる各 PC に. 界座標系における空間直線を求め,その直線が床か. 送信し,制御データに従ってカメラを制御した.PTZ. ら 70 cm の位置に交差する点を子供の位置として計算. カメラにつながる各 PC は,そのカメラ画像を配信. する.. した.ユーザ側 PC では,割り当てられたカメラ番号. プロトタイプシステムでは上記のような簡易な人物. の情報から,そのカメラの画像を受信した.各 PC 間. 推定手法を使用したが,実用のシステムでは他のコン. のデータの送受信はネットワークを介して行った.各. ピュータビジョン研究や RFID タグなどを応用して人. カメラの制御パラメータと,ユーザとカメラの対応を. 物の位置を推定する必要がある.. 決定するサーバの役割は,プロトタイプシステムでは. PTZ カメラにつながる一台の PC で行った.保育室の. 4. 4 ユーザの要求入力インタフェース ユーザが PC を使い慣れているとは限らないため, ユーザの使用するシステムのインタフェースは,操作 が簡単であることが必要である.そのため,できる限 り簡単に要求を入力できるインタフェースとした. ユーザの要求は,事前に行ったアンケートの結果か. Table 4. 図 4 プロトタイプシステムの構成 Fig. 4 Configuration of prototype system.. 286. 表 4 PC の詳細 Specifications of PCs..
(6) 論文/複数の PTZ カメラを用いた保育施設のための複数ユーザの要求に応じた映像配信・提示システム. ら決定した,「見たい子供」と「見たい人数」である. アンケート結果(表 3)より,自分の子供が映っていな. 5. ライブ映像配信システムの被験者実験. いシーンは低い値であったので,ユーザの「見たい子. プロトタイプシステムを用いて実際の親子 5 組によ. 供」は自分の子供であるとした.本システムではユー. る評価実験を行った.保育施設を模擬するには子供を. ザがシステムにアクセスしたときに自動的にユーザと. 最高 35 人で実験すべきだが,システムの検証には同. 子供の対応がとれるものとする.そして,「見たい人. 時にアクセスするユーザが 5 人であればよい.実際に. 数」の入力はスライドバーを操作するだけの簡単な入. 子供が最高の 35 人になった場合でもユーザの「見た. 力とした.ユーザインタフェースを図 5 に示す.図 5. い人数」が変化するのみで,同時にアクセスするユー. 中の右側にあるスライドバーにより「見たい人数」を. ザはほとんどの場合 5 人以下のため,人物の位置推定. 入力し,上に上げることで希望人数が一人に近づき,. ができれば提案する手法は適用可能である.本実験は,. 自分の子供を大きく映してほしいという要求の入力と. ユーザに提示される映像の満足度,システムの有用性. なる.周りの子供を含めて映したいときには,バーを. を被験者により主観的に評価してもらうことを目的と. 下げることで希望人数を増やすことができる.. する.そして,実験結果と幼稚園児をもつ実際の母親. またシステムでは,同じカメラを割り当てられるす べてのユーザの満足度を最大とするようにカメラ制御 を行うため,ユーザが希望人数の変更を行っても,希 望どおりの制御が行われるとは限らない.そのため,. による主観評価の結果から考察を行い,本システムの 有効性を検証する.. 5. 1 実験環境と条件 保育施設を模擬した実験環境は図 6 に示すような,. 図 5 に示すように,カメラが映そうとしている人数を. 10 m × 4.5 m の部屋で,PTZ カメラは部屋の四隅に. 表示することで,ユーザのストレスを軽減する工夫を. 配置した.また式 (1),(2) における各項の重み係数は. している.また,割り当てられているカメラ映像の解. シミュレーション実験と同様である.また式 (1),(2). 像度は 640 × 480 pixels で提示される.. における各項の重み係数はカメラ台数に関係なく,経. 4. 5 ユーザの要求に応じた映像の配信と受信. 験的に W1 ,W2 は 0.6,0.4,Tui は 2. 2 で説明した. ユーザ側では,割り当てられているカメラの映像の. ように子供の位置に関係して値が変化する係数となっ. みを提示する.これはすべての PTZ カメラから映像. ており,図 2 に示す数値を利用した.k1 ,k2 ,k3 は. をリアルタイムに配信し,ユーザ側の PC で割り当て. 0.7,0.15,0.15 とした.室内にいる子供の位置推定に. られるカメラの映像を取得することで実現した.この. 用いる魚眼カメラは,部屋の一隅に約 2.7 m の高さで. 際,各 PTZ カメラから得られた動画像をマルチキャ. 設置した.子供は幼稚園の年中・年長に通う 5 人であ. ストプロトコルを用いて伝送することにより,カメラ. り,身長は 110 cm 前後であった.5 人のユーザの子供. 台数以上の複数のユーザが配信される動画像を受信し. を表 5 に示す.実験中,子供達には位置推定のため,. ても,ネットワークの負荷は増えることはないように. 表 5 に示す色の異なる服を着てもらい,1 人の大人が. した.. 付き添っている状態で,室内で自由に遊んでもらった. 各子供の母親には,別室においてそれぞれの PC から 本システムを使用して,子供のいる部屋の様子を見て. 図 5 要求を入力するためのユーザインタフェース Fig. 5 User interface for user requirement.. Fig. 6. 図6 実験環境 Experimental environment.. 287.
(7) 電子情報通信学会論文誌 2010/3 Vol. J93–D No. 3. もらった.子供の服の色と母親の利用する PC が対応. •. するようにシステムの設定はあらかじめ行っている.. •. 希望人数の入力は,子供の人数のみで入力してもらい,. •. 1 4 使用) 1 回目カメラ 2 台(図 6 のカメラ 1 2 4 使用) 2 回目カメラ 3 台(図 6 のカメラ 3 回目カメラ 4 台(図 6 のカメラ 1 ∼ 4 使用). 付き添っている大人は人数に含めないよう説明した.. 各実験後には提示された映像の評価アンケートを行い,. 実験はカメラ台数による影響を比較するために次のよ. 最後に,システムの評価アンケートを行った.. うに 3 パターン行い,一回の実験時間は 15 分とした.. 5. 2 実 験 結 果 各ユーザに提示された映像から,目標としたカメラ. 表 5 各ユーザの子供 Table 5 Children of the users.. 制御ができていたかを検証する.カメラ割当の変化が 分かるように,カメラ 4 台の実験中,ある時間におい て各ユーザに提示された画像を図 7 に示す.これは約. 30 秒間の各ユーザに提示される映像から,6 フレーム を抜き出した画像である.画像中には説明のために, 各ユーザの子供を矢印で示し,画像左下にはユーザの. (a) User A. (b) User B. (c) User C. 図 7 各ユーザへの提示画像 Fig. 7 Presented image for each user.. 288. (d) User D. (e) User E.
(8) 論文/複数の PTZ カメラを用いた保育施設のための複数ユーザの要求に応じた映像配信・提示システム. 入力した希望人数を,右下にはユーザに割り当てられ たカメラ番号を表示してある.この結果から以下のと. 表 6 システムが算出した各ユーザの満足度の平均 Table 6 Averages of satisfaction rates estimated by the system.. おり,各ユーザの希望に応じたカメラの割当及び制御 がされていることが確認できる. [ユーザ A への提示画像] はじめはユーザ D と同じ カメラが,22 秒からはユーザ E と同じカメラが割り 当てられている.ユーザ A は希望人数を変化させず, システムはほぼ希望人数通りの画像を提示している.. Table 7. 表 7 提示映像に対する評価結果 Evaluated result about presented images.. [ユーザ B への提示画像] ユーザ B は希望人数を頻 繁に変更している.22 秒では希望人数を 1 人に変更 し,17 秒のときよりズームインされている.しかし, 同じカメラを割り当てられている他のユーザの子供か らユーザ B の子供が離れていくため,これ以上はズー ムインされず,26 秒では割り当てられるカメラが変更 されている. [ユーザ C への提示画像] ユーザ C は希望人数を変 化させず,同じカメラが 30 秒間割り当てられている. 同じカメラを 13 秒まではユーザ E が,26 秒ではユー ザ B が割り当てられているが,ほぼユーザ C の希望. 表 8 システムの評価結果(評価点) Table 8 Evaluated result about the system (by points).. 人数通りの画像が提示されている. [ユーザ D への提示画像] 同じカメラが 30 秒間割り 当てられている.ユーザ D は希望人数が少ないが,は じめはユーザ A と同じカメラが割り当てられている ため,あまりズームインされていない.22 秒において ユーザ A に他のカメラが割り当てられたため,ユーザ. D の子供を中心にとらえることができている. [ユーザ E への提示画像] ユーザ E の子供が,はじ めはユーザ C の子供と,17 秒から 22 秒ではユーザ B. んで遊んでいたために,床から 70 cm の位置を子供の. の子供と,22 秒と 26 秒ではユーザ A の子供と近くに. 位置とする位置推定誤差が大きくなったことが原因と. いたために,希望人数が少ないが他のユーザと同じカ. 考えられる.子供の動きが少ないためシステムは満足. メラが割り当てられている.. 度が高い結果を示したが,アンケートのその他の意見. 5. 3 被験者による主観評価. にあるとおり「1 回目の実験で,人物群が中心にいな. システムが算出した各ユーザの満足度の実験時間中. かったのが気になった」ということから主観評価は低. の平均の結果と,被験者実験におけるアンケート結果. くなったと考えられる.. を表 6∼表 9 に示す.アンケート項目はすべて 1∼5. (ii) システムの評価. の 5 段階で自由筆記による理由もつけて評価してもら. システムの評価としては,表 8 から平均 3 ポイン. い,3 を普通として,数値が低いほど悪い評価,数値. ト以上の評価であり,特に操作方法や画質,映像の見. が高いほど良い評価とした.. やすさについては高い評価が得られた.しかし,同じ. (i) 提示画像に対するユーザの満足度. カメラを割り当てられる全ユーザの満足度を高くする. 表 7 から,カメラの台数が増えればユーザの満足. ようにカメラ制御が行われるため,希望人数の入力を. 度が向上していることが分かる.しかし,表 6 では. しても大きく反映されないこともあり,このときにス. システムが算出した各ユーザの満足度の平均はカメラ. トレスを感じることが質問 2,6 におけるコメントか. の台数が 2 台のときが高かった.結果を解析したとこ. ら読み取れる.このストレスを軽減する機能としてカ. ろ,カメラ 2 台の実験において子供たちが床に座り込. メラが映そうとしている人数を表示したが,この効果 289.
(9) 電子情報通信学会論文誌 2010/3 Vol. J93–D No. 3 表 9 システムの評価結果(コメント) Table 9 Evaluated result about the system (by comments).. 今後の課題として,子供の位置検出の改良,ユーザ インタフェースの改良などが挙げられる.被験者のア ンケート結果では,子供の指定を変更できる機能を必 要とする意見もあった.これについては,全方位カメ ラ [11] を保育室に設置し,ユーザは見たい方向を見な がら,画像上で見たい子供をマウスクリックにより指 定できる機能を導入することが考えられる.保育施設 におけるイベント時などアクセス数がかなり多い場合 でも,この全方位カメラの設置により,解像度は低い が全方位画像から作成した画像を利用し,10 人以上の アクセスにも対応することが可能になると考えられる. 文 [1] [2]. 献. 株式会社インターネットオープンカレッジ,“キッズカメ ラ.NET, ” http://www.kidscamera.net/index.html イルガラージュ株式会社,“ライブキッズ, ”. [3]. http://livekids.jp/ 株式会社 NTT ネオメイトみやこ,“みーんな元気だよ, ” http://www.ntt-neo.com/news/2002/020726.html. [4]. F.Z. Qureshi and D. Terzopoulos, “Surveillance camera scheduling: A virtual vision approach,” Proc. ACM International Workshop on Video Surveillance and Sensor Networks, pp.131–140, 2005.. [5]. ing by dense communication among active vision. は質問 2 の結果よりある程度の効果があることが分. agents,” Proc. International Conference on Intelli-. かった.しかし,「思い通りの操作ができていないと 同じ」「ストレスを感じる」というコメントもあるこ とから,この効果は個人の性格などにより変わると考 えられる.また,ライブカメラサービスの必要性につ. gent Agent Technology, pp.664–671, 2005. [6]. 加藤大一郎,津田貴生,井上誠喜,“知的ロボットカメラ, ” NHK 技研 R & D,no.64, pp.10–17, 2000.. [7]. Y. Rui, A. Gupta, J. Grudin, and L. He, “Automating lecture capture and broadcast: Technology and. いては,サービスがあると子供の様子が気になって仕. videography,” J. Multimedia Systems, vol.10, pp.3–. 事ができない等の意見から,平均 2.8 ポイントという 評価であった.しかし,システムの有効性については. [8]. 平均 3.8 ポイントの高評価となり,自分の子供を中心 にカメラ制御が行われることの重要性がコメントから も分かる.. PTZ カメラを制御してカメラ台数よりも多いユーザ が同時にアクセスしたときでも,各ユーザの要求に応 じた映像を提示する手法を提案した.そして,複数の ユーザが同時に保育室の様子を見ることが可能なプ ロトタイプシステムを実現した.保育施設を模擬した 環境での本システムを用いた被験者実験により,ユー ザの数よりカメラの台数が少ない場合でも,すべての ユーザを平等に満足させるようにシステムが動作する ことを確認した. 290. 15, 2004. 宮崎英明,亀田能成,美濃導彦,“複数のカメラを用いた複 数ユーザに対する講義の実時間映像化法, ” 信学論(D-II) , vol.J82-D-II, no.10, pp.1598–1605, Oct. 1999.. 純丘曜彰,エンターテイメント映画の文法―ヒットを約束 する脚本からカメラワークまで,フィルムアート社,2005. [10] G.R. Bradski, “Conputer vision face tracking for use [9]. 6. む す び 保育施設におけるライブカメラサービスで,複数の. N. Ukita, “Real-time cooperative multi-target track-. in a perceptual user interface,” Proc. Intel Technol[11]. ogy Journal, Q2, 1998. 山澤一誠,八木康史,谷内田正彦,“移動ロボットのナビゲー. ションのための全方位視覚センサ HyperOmniVision の ” 信学論(D-II),vol.J79-D-II, no.5, pp.698–707, 提案, May 1996. (平成 21 年 6 月 5 日受付,10 月 14 日再受付).
(10) 論文/複数の PTZ カメラを用いた保育施設のための複数ユーザの要求に応じた映像配信・提示システム. 大野. 純佳. 2005 和歌山大・システム工・デザイン情 報卒.2007 奈良先端科学技術大学院大学. 情報科学研究科博士前期課程了.2009 奈 良テレビ放送(株)退職.. 石川. 智也 (正員). 2003 岡山理科大・工・情報工卒.2008 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究 科博士後期課程了.現在,産業技術総合研. 究所特別研究員.複合現実感の研究に従事. 博士(工学).. 山澤. 一誠 (正員). 1992 阪大・基礎工・情報卒.1996 同大大. 学院博士後期課程中退.同年奈良先端科学 技術大学院大学情報科学研究科助手.2002 同大助教授,現在に至る.コンピュータビ ジョン,複合現実の研究に従事.1997 本 会論文賞受賞.2002 本会学術奨励賞受賞. 博士(工学).. 横矢. 直和 (正員). 1974 阪大・基礎工・情報工卒.1979 同 大大学院博士後期課程了.同年電子技術総 合研究所入所.以来,画像処理ソフトウェ. ア,画像データベース,コンピュータビジョ ンの研究に従事.1986∼1987 マッギル大・ 知能機械研究センター客員教授.1992 奈 良先端科学技術大学院大学・教授.1990,2007 情報処理学会 論文賞受賞.工博.. 291.
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