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PASドメインをもつ転写因子間相互作用の細胞内リアルタイム観測

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(1)

インをもつ転写因子間相互作用の細胞内リアルタイム観測

15207010

平成15年度一平成17年度科学研究費補助金

(基盤研究(A))研究成果報告書

1隼王壷予告

・∴、・       r

〃 い ⊥ 左

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十十 一Lト′イ

ヽ 1 −・ \■ \い\ ・ l 、

平成19年4月

研究代表者 十川和博

東北大学大学院生命科学研究科教授

. L   三 ㌦ ㌦ \■\ ヒ√.・

(2)

はしがき 細胞内や細胞外マトリクスでおきるタンパク質と他のタンパク質との複雑な相互作用を 見出すことは,ポストゲノム研究の主要な課題の一つである。ゲノム解析の結果,遺伝子 の数が予想よりも下回ったことは,細胞のもつ多彩な生物現象は,想像を超えた空間的, 時間的に限定されたタンパタータンバク相互作用の集積によると考えられる。その意味で, タンパクータンパク相互作用を正確に見極めることは,タンパク質が細胞のなかでどのよ うな役割を,細胞という統一された場のなかで担っているかを解き明かす上で必要であり, 重要な研究目標となる。 タンパクータンパク相互作用を調べるために,種々の生化学的方法が用いられてきた。 代表的なものとして,GSで・pulldownaSBay,COimmunoprecipitationa88ayが挙げられる。 どちらの方法も感度よくタンパク間相互作用を測定できるが,これらの方法は必然的に細 胞を破壊しなければならず,測定時のタンパク質は希釈され,濃度は低下する。これは一 般的に相互作用検出感度を低下させることになる。また,通常の方法に従えば二つのタン パク質問で相互作用の起きている細胞内の局在はわからない。非破壊的にタンパク質問相 互作用を調べる方法として,酵母ツーハイブリッドシステムによる方法や培養細胞を用い たツーハイブリッド法がある。これらの方法はタンパク質の相互作用を鋭敏かつ簡便に測 定できる優れた方法であるが,細胞のもつ遺伝子転写機構を利用しているので,目的とす る2つのタンパク質を核内で発現しなければならず,人工的な環境下での相互作用の観測 といえる。また,厳密な意味において,相互作用が直接の相互作用か,あるいは第三のタ ンパク質を介した間接的なものであるかどうかは不明である。 近年,細胞を非破壊,非固定下で生きたまま観察する,種々のバイオイメージング技術 が発展してきた。タンパク質問相互作用を観測するイメージングするための FRET(FluoreSCeneeR朗OnaneeEner訂恥an脆山もその代表的なものであり,我々が試み たFuM顕微鏡を使ったFRETの計測も,そのFREでイメージング技術の有力な一つの方 法である。この冊子は文部科学省科学研究費補助金.基盤研究(刃(2)2003年度∼2006年度 「nlSドメインをもつ転写因子間相互作用の細胞内リアルタイム観測」で行われた研究の 成果をまとめたものである。本研究は基盤研究佃)(2)「生細胞でのVBC複合体の FuM・FRETによる可視化」に引き継がれて,さらに研究の展開が行われている。 研究代表者 十川和博

(3)

研究組織 研究代表者:十川和博 研究分担者:福村裕史 研究分担者:安元研一 研究分担者:菊池康夫 研究分担者:高崎親久 交付決定額(配分額) (東北大学大学院生命科学研究科教授) (東北大学大学院理学研究科教授) (東北大学大学院生命科学研究科助教授) (東北大学大学院生命科学研究科助教授) (東北大学大学院生命科学研究科助手)

(金額単位:円)

直 接 経 費 間 接 経 費 合 計 平 成 1 5 年 度 2 4 ,6 0 0 ,0 0 0 7 ,3 8 0 ,0 0 0 3 1 ,9 8 0 ,0 0 0 平 成 1 6 年 度 5 ,2 0 0 ,0 0 0 1 ,5 6 0 ,0 0 0 6 ,7 6 0 ,0 0 0 平 成 1 7 年 度 5 ,2 0 0 ,0 0 0 1 ,5 6 0 ,0 0 0 6 ,7 6 0 ,0 0 0 総 計 3 5 ,0 0 0 ,0 0 0 1 0 ,5 0 0 ,0 0 0 4 5 ,5 0 0 ,0 0 0 研究発表

1.学会誌等

S.Hashimoto,R.Uehara,K.Sogawa,M.TakadaandH.Fukumura Applicationoftime・andspace・reSOIvedfluorescencespectroscopytothedistributionof guestspeciesintomicrometer−SizedzeolitecrystalS・(2006)Phys・Chem・Chem・Phys・8: 1451・1458 2.口頭発表 (1) (2) 第27回 分子生物学会年会 2004年12月8日(水)∼11日(土) 神戸ポートアイランド 生細胞におけるGFP由来タンパク質の蛍光寿命測定とFRETの観測 木下耕史,高田麻実子,福村裕史,十川和博 第64回 日本癌学会学術総会 2005年9月14日(水)∼16日(金)

(4)

ロイトン札幌 生細胞におけるGFP由来タンパク質問のFLIMザRET測定とがん関連タンパク質 問相互作用への応用 木下耕史,十川和博 (3) (4) (5) 第28回 分子生物学会年会 2005年12月7日(水)∼12月9日(金)

木下耕史,友固洋介,高田麻実子,福村裕史,十川和博

pVHLElomginB・ElomginC複合体の単一生細胞での可視化 第28回 分子生物学会年会 2005年12月7日(水)∼12月9日(金) 解糖系酵素GAPDH.PGKタンパク質問相互作用のFLIM.FRET技術を用いた 生細胞内での可視化 友園洋介,木下耕史,高田麻実子,福村裕史,十川和博 シンポジウム「内・外環境と生物応答」 2006年7月27日(木)∼28日(金) 福岡リーセントホテル 生細胞におけるArntの核内局在とFLIM−FRETシステムを用いたイメージング解 析

御領憲治,木下耕史,嶋田深志,友固洋介,高田麻実子,福村裕史,十川和博

(5)

FuM・FRETの原理 蛍光共鳴エネルギー移動伊luoreSCeneeResonanCeEner訂取ans触FRET) FRETは蛍光分子間でおきる発光を伴わないエネルギーの移動で,エネルギー供与体で あるドナーが励起状態にあるとき,そのエネルギーがェネルギー受容体である蛍光アクセ プターへ無放射遷移される現象である。エネルギーは約10nmにもおよぶ蛍光分子間取離 を移動することができる。この長距離にわたる分子間エネルギー移動の理論はF6r8brによ って定式化され,エネルギー移動速度は蛍光プローブであるドナー了クセプター間距離の 6乗に反比例することがわかっている。生細胞でのFRETに話を限局すれば,遺伝子工学 的に目的とした相互作用が予想される2つのタンパク質のそれぞれに,FRET観察に適し たドナーとアクセプターの蛍光タンパク質をキメラ体として生細胞で発現し.FRmTシグ ナルを計測することが通常行われている。もしシグナルが計測できれば,2つの蛍光タンパ ク質は10。m以下に接近していることが推定され,それらを接続した2つのタンパク質は 相互作用し,複合体を形成していることが判明する。 ドナーとアクセプターに使われる蛍光タンパク質 生細胞でタンパク質問相互作用を計測するための蛍光プローブとして,最近急速に発展 してきたGFPは,オワンクラゲから単離された単純タンパク質で,数多くのアミノ酸置換 の導入により現在では様々な波長領域に励起スペクトル,蛍光スペクトルをもつ量子収率

」.〟CねrねGFPのX線結晶構造

【OmoMetal.(1996)Scienee,273:1392・1395】

(6)

の高い改変体が開発されている。図に示したように,蛍光発色団は11本のβストランドで 構成されたβ・姐m構造の中に形成されており一直接溶媒の影響は受けない構造となっている0 発色団は65−67番目のアミノ酸,セリン,チロシン,グリシンから酸化的に形成されてい る。最近また六放サンゴ由来の赤色波長領域に蛍光をもつタンパク質も利用されるように なった。これらの蛍光タンパク質を目的とするタンパク質と融合し.ペアのキメラタンパ ク質として,細胞でDNAトランスフェクシヨンにより発現し,利用するのが一般的である。 BFPとCFRCFPとYFP,GFPとmRFPなどのいくつかの組み合わせがFRETのペアと して用いられてきた。FREでペアとして使われるための重要な条件として,蛍光プローブ ペアのドナーの蛍光スペクトルとアクセプターの吸収スペクトルが重なっている必要があ る。我々のグループではCFPまたはCFP由来の改良型青色蛍光タンパク質Cemleanをド ナーに,YFP由来の改良型黄緑色蛍光タンパク質Citrineをアクセプターに用いてFRET 計測を行った。文献によればCeruleanはCFPよりも2・5倍明るく・蛍光寿命は1成分で 解析できることが報告されているが,我々の経験ではそれほど明るくなく一蛍光寿命はCFP と同じように2成分をもっていることがわかったので一最初の報告のように理想的なドナ ーとはいえないようである。CitrineはYFPに比べてpH変化や塩化物イオンに対するYFP の高感受性を改良した変異体である。 レーザーによる励起光 (波長410nm)

J

ProteinA

レーザーによる励起光 (波長410nm) ProteinA

(7)

FLIM−FRET技術 培養細胞に410nmのパルスレーザーを照射すると,前貢の図左のようにProteinAと Protein Bが十分に離れていればCFPの蛍光が観察されるだけであるが,右の図のように ProteinAとProtein Bが相互作用LCFPとYFPの距離が10nm以下であると,FRET がおこりYFPの蛍光が放射される。このようにFRETがおきれば,ドナーであるCFPの 蛍光強度は減少し,アクセプターのYFPの蛍光が生起するのでCFP,YFPの蛍光強度を測 定することによってFRETの程度を計測することができる。しかしながら,強度による FRETシグナル検出では,光学系や検出器の感度変化,蛍光タンパク質の発現濃度,退色 等の影響を直接受けてしまうという欠点がある。また,FRETによらないドナーの蛍光の 消光(溶媒効果など)を区別することができない,などの欠点がある。 我々のグループではFRET計測で蛍光強度を測定する方法ではなく,蛍光寿命を測定し FRETを観察する方法,FluorescenceLifetimeImagingMicroscopy(FLIM),を用いた。

さらに,時間・空間相関単一光子計数法(Time・and Space−Correlated Single Photon Counting,TSCSPC)とよばれる検出法を用いているので,退色を誘発するような強い励起 光の必要もないため,安定した測定が行える。FLIMによるFRET計測は,2つの蛍光プ ローブ間でFRETが起きれば,エネルギー移動によりドナーの蛍光寿命が短縮し,アクセ プターの蛍光寿命曲線にはドナーの蛍光寿命に対応した遅い立ち上がり(ライズ)が発生 するという原理に基づく。蛍光ドナーとアクセプターの蛍光寿命曲線の変化を次図に示す。 一般に有機物の蛍光物質に可視光や紫外光を照射すると蛍光を発するが、パルス幅の短 い光を照射すると、照射後から数一数十ナノ秒間に渡って蛍光が観測される。蛍光寿命は 蛍光分子が基底状態に戻る前に,励起状態にある平均時間と定義されるが,蛍光の強度は 光照射直後から指数関数的に減衰し、最大蛍光強度の1/e(約37%)に減衰するまでの 時間が蛍光寿命と一致する。GFPやその改変体の蛍光寿命は約3ナノ秒であることが知られ ている。 蛍光寿命は蛍光プローブの量に依存しない物理量なので,定量性に優れた指標を基準と できるのがFLIMの最大の特徴である。FRETを蛍光の強度のみの情報で定量化する場合、ド ナーとアクセプターの蛍光強度をそれぞれ定量する必要があるが、先に述べたように蛍光 強度は蛍光色素の濃度の他,インナーフィルター,クエンチング,自家蛍光,光の散乱, フォトブリーチング(祷色)、集光効率、検出器の感度、観測試料中での光の減衰、光学系 の透過率など様々な要因による影響を受け,これらを考慮して補正する必要がある。しか しながら,蛍光寿命の観測は,蛍光の物理特性を基準とすることができるためその補正を 必要としない。我々の構築したFLIM顕微鏡装置は検出器に時間空間相関単一光子計数法 (TSCSPC)を用いているので,パルスレーザー光をNDフィルターで減弱した非常に弱い励起 光を使う。このため、FLIMに基づいた我々のFRET計測は強い励起光によって起こりうる細 胞内での光化学反応を最′」、限にすることが可能である。

(8)

Cerulean

(Donor)

Citrine

(Acceptor)

Time/ns FLIMにおけるFRETシグナル Time/ns

(9)

蛍光減衰曲線におけるFRETシグナル 蛍光減衰曲線におけるFRETシグナルは蛍光ドナー蛍光寿命の短縮と蛍光アクセプター減 衰曲線にライズが見られることである(前貢図参照)。ドナーの蛍光寿命は発光遷移過程と 無放射遷移過程の速度定数krとk。fの和の逆数として表される。さらにFRETがおきる条件 では,ドナーの蛍光寿命は発光遷移過程と無放射遷移過程に,さらにFRETの速度定数k,を 加えたものの逆数となる。すべての速度定数は正の値をもつので,FRETがおきればドナー の蛍光寿命はFRETが起きないコントロールに比べて短縮する。詳しい説明は省略するがェ ネルギー移動を受けたアクセプターの減衰曲線はFRETしたドナーの減衰曲線を差し引いた 格好になり減衰曲線の立ち上がりが遅れて,ゆっくりと減衰するライズが生じる。 蛍光タンパク質の2成分性 蛍光分子を励起した際に無放射遷移しないで,蛍光を発する効率を示す量は量子収率と 呼ばれ,Ceruleanでは0.62,Citrineでは0.76の値をもつ。しかし,これは蛍光寿命をl 成分であるとみなした場合の平均値である。FLIMによるFRET解析を難しくしている原因の 一つは,CFPやCeruleanなどの蛍光タンパク質の寿命は2成分から成り立っことからきて いる。この2成分の由来は,発色団付近のアミノ酸側鎖が2種類のコンフォメーションを もつことによるものと考えられている。CFPを例にとると発色団と疎水的な相互作用をもつ 148番目のヒスチジンと145番目のチロシンが動くことにより,CFPの蛍光寿命が変化する と考えられている。ヒスチジンが溶媒側に向いている構造がCFPのおもなコンフォメーシ ョン(長寿命成分)であり,タンパク側に向いている構造が短寿命成分のコンフォメーシ ョンである。この二つのコンフォメーションは平衡の関係にあるが,コンフォメーション 変化は約1msで起こるので1回の励起から蛍光が減衰するまでに(CFPの蛍光寿命は約3ns 程度)コンフォメーションは変化しないと考えられる。また,短寿命成分と長寿命成分の蛍 光スペクトルは変化しないと報告されている。 ドナーとアクセプター間距離の算出 FRETの速度定数は蛍光ドナーとアクセプター間距離rの6乗に反比例する。FRETの起き る確率とドナーが蛍光を発する確率が等しくなる距離をフェルスターディスタンスRoと呼 び,量子収率,ドナーとアクセプターのスペクトルの重なり,配向因子などに依存する重 要な定数である。蛍光ペアのRoがわかればFRETの計測によりドナーrアクセプター間の距 離が計算可能である。FRETの効率はFRET過程と発光遷移過程と無放射遷移過程の速度定数 を加えた全速度定数に対するFRETの速度定数の比として定義され,蛍光分子間距離rとの 関係は次頁の図のようになる。

(10)

FRET

効率(%)

ぷ ∵ ら \ 0.5   1  1.5   2 r/Ro 先に述べたようにCFPやCeruleanの蛍光減衰曲鰍ま2成分から成り立つので,蛍光プロー ブ間距離も長寿命成分,短寿命成分それぞれの解析結果から別々に計算される。

(11)

FLIM測定装置の構築 構築したFLIM(FluorescenceLifetimeImagingMicroSCOpy)測定装置の概略を図に示す。 レーザー発振装置とレーザーヘッドはドイツPicoQuant社製伊DL800・BとLDH−410, FWHMく54pS)を用いた。Pieose∝〉ndオーダーで発振する半導体パルスレーザー(F410nm, 10MH2i)から発振されたドナーであるCeruleanの励起光は単一光子励起条件を満たすため NDフィルターによって十分に減光された後,ZEISS社製倒立型光学顕微鏡(Axioveれ135) にはいり,ダイクロイックミラーで反射されて培養細胞に照射される。培養細胞の培養液 には通常入っているNeutralRedは測定の障害となるので省いたものを用いた。 10

(12)

細胞からの蛍光は100倍の対物レンズFluarlOOXOilUV(油浸使用,NA1.3,ZEISS)さ らにダイクロイックミラーを通過し,カラーフィルターや45またはバンドパスフィルター BP475,BP575で波長が選択された後,CCDカメラ(オリンパス社製DP・70)または TSCSPC検出器(EuroPboton社製,EP・IMS・010)に入る。 蛍光波長の選択 本研究には蛍光ドナーとしてCFPまたはCFP改変体であるCeruleanを用い,蛍光アク セプターとしてYFP由来のCitrineを用いた。図にCeruleanとCitrineの励起,蛍光スペ クトル,用いたフィルターの特性を示した。Cer山eanの吸収極大波長は433mm,蛍光極大 波長は475nmである。また,Cit血eの吸収極大波長は516nm,蛍光極大波長は529mm

構築したFuM顕微鏡装置

である。本研究で用いたFRETシステムでは410mmのレーザー光はダイクロイックミラ ーにあたる。ダイクロイックミラーは波長375・450nmの光を反射するため,励起光は細胞 11

(13)

サンプルに照射され,サンプルから発したCeruleanおよびCitriJleの蛍光はダイクロイッ クミラーを透過する。透過した蛍光は,カラーフィルターY45,またはバンドパスフィルタ ーBP475,BP575で波長が選択されて検出器に入る。カラーフィルターY45はCemlean, Citrineの両方の蛍光を選択できるため測定する細胞の選択用に.波長450・500mmを透過 するバンドパスフィルターBP475はCerdeanの蛍光選択用に,波長550・600mmを透過 するバンドパスフィルターBP575はおもにCitrineの蛍光選択用に用いた(図にCerulean とCit血eの励起スペクトルと蛍光スペクトルを示す)。BP575の選択波長帯が,Cit血e の蛍光極大波長よりも長波長側にあるのはCerdeanの蛍光の流入を少なく抑えるためで ある。 12

(14)

検出器

YSCSPC検出音別こ入った光子は光電陰極に衝突し,そこから電子が飛び出す。電子は Micro Channel Plate(MCP)にあたってシグナルが増幅され,最終的に四分円陽極 (Quadrant anode)に到達する。このときの到達位置で蛍光光子の分布を示す位置情報とし てIntensityImageが得られる。空間分解能として512Ⅹ512pixel表示を用いた。これは 細胞質と核を分離して蛍光観察するには十分な分解能であるが,本装置は最高4096Ⅹ4096 pixelまでの任意の空間分解能を選択することができる。また,光子の到達時間と一定間隔 で発振されているレーザーからのトリガーパルスとの時間差がTime−tO・Amplltude Converter(TAC)によって電圧に変換され,電圧に応じたチャンネルにカウントが蓄積する ことで,時間情報としてとして蛍光光子の到達時間を横軸に,カウント数を縦軸にとった 蛍光減衰曲線が得られる。このように本装置では,蛍光1光子ずつの時間情報と位置情報 を相関して計測することができる。 測定手順 測定前には対物レンズの視野に励起レーザーが適切に照射されるように光軸の微調整を 行う。まず,細胞サンプルの代わりに銀鏡をおき,装置応答関数のIRFの測定を行う。装 置応答関数とは検出器で測定された励起レーザーパルス波形のことである。装置応答関数 のパルス幅伊WMH)は410nmのレーザー光では180psであった。検出器のQuadrant Anode上のlpixelあたりに検出される光子の頻度CPS/pixelが0.1∼0.2となるようにND フィルターを調整して励起光を減光し,2分間測定する。つぎに装置に接続したWindows PC上で解析ソフトウェアQAanalysisを用いて得られたIRFのIntensityImageの中心部 を長方形で囲みIRFの蛍光減衰曲線を得る。このデータは蛍光寿命の解析で必要である。 Poly・D・lysinecoatedglassbottomculturedish上に5%CO2存在下37℃でCHO・Kl細 胞などの培養細胞を培養し,リボフェクション法でプラスミドをトランスフェクション後 40時間培養したサンプルは測定直前に新鮮な培養液と交換した。顕微鏡ステージの金属リ ングは温水循環により37℃に維持した。カラーフィルターY45による細胞選定後,CCDカ メラによる撮影後ノ1ンドパスフィルターBP475,BP575をセットし,FLIM測定を行った。 測定条件は1分間の前測定でCPS/pixelが0.5以下かつ減衰曲線の立ち上がりカウント数が 100以上となるようにmフィルターを調整し,レーザー強度を決定した。通常測定時間は 20∼30分間を要した。また1回の測定で,2∼3個の細胞測定が可能であるので,1回の測定 で6−9個の細胞を計測した。この蛍光測定からQAanalysisを用いて細胞質,核等必要な領 域を囲み,減衰曲線を得ることができる。このデータをtxtファイル(蛍光減衰曲線解析用) bmpファイル(Intensitylmage用)datファイル(蛍光寿命解析用)に出力し解析に用い る。 13

(15)

蛍光減衰曲線および蛍光寿命の解析 蛍光減衰曲線の解析はIgo Pro(WaveMetrics,Inc)を用いて行った。蛍光寿命解析は GLOBALSUNLIMITEDver,1.20(TheboardofTrusteesoftheUniversityofIllinois)を 用いて行った。実測した減衰曲線は装置応答関数IRFとサンプルからの蛍光の減衰曲線と が合わさっており,畳み込み(コンボリューション)による歪が含まれている。GLOBALS UNLIMITEDはサンプルからのデータとIRFの測定データを用いて,デコンポリューショ ンを行い,蛍光分子からの蛍光減衰曲線のあてはめ関数を算出することができるソフトウ ェアである。解析結果の妥当性はⅩ2の値で評価した。通常0.8−1.2が良いとされているの で,この範囲で解析ができたものをデータとして用いた。 14

(16)

構築したFLIMによるFRETの観察例 分子内FRETの観察 解糖の6番目の酵素であるGlyceraldehyde3・phosphatedehydrogenase(GAPDH)と7 番目の酵素であるPhosphoglyceratekinase(PGK)のは複合体を形成し,基質を溶媒に放出 することなくトンネリングにより受け渡すと考えられている。これを証明するためにいく つかの実験を行った。それらの中から,分子内FRETの例と分子間FRETの例を示す。蛍 光タンパクドナーとしてCeruleaJlを,アクセプターとしてCitrineをN末端またはC末 端に結合した。受容細胞として比較的強くトランスフェクションしたタンパク質を発現す るCHO−Kl細胞を用いた。 まず最初の例はPGKのN末端とC末端にCitrine とCeruleanを融合したキメラタン パク質の分子内FRETの計測結果である。ヒトPGKは分子量44,000のタンパク質で単量 体として機能することがわかっている。Ⅹ線結晶構造解析によってすでに立体構造も判明し ている(図を参照のこと)。

PGKの立体構造

ヒトPGKのN末端とC末端間距離は0.4nmと近接している。 N末娘にCitrincを接合LC末端にCeru]caJlを按合したキメラタンパク質は,CHO−Kl細胞 で一過性に発現したところ,細胞全体にわたって発現しており.PGK抗体染色によって調 15

(17)

べられた内在性のPGKの発現分布と一致していた。この細胞サンプルを構築したFLIM 装置によって観察したところ,次のような蛍光寿命減衰曲線が得られた。 ⇒ 空 身 s u 心 l U 一 6  8 10 12 14 16 18 20    6  8 10 12 14 16 18 20 time/nS time/nS 上のグラフを見てわかるようにキメラタンパク質(YPC)のドナーの蛍光寿命曲線はアクセ プターへのFRETにより,コントロールであるPGKのC末端にCeruleanを結合したキメラ タンパク質(PC)の蛍光寿命に比較して,大きく寿命が短縮していることがわかる。また BP575によるアクセプターの減衰曲線には,CitrineにPGKを融合したキメラタンパク質 (YP)の単独発現のカープに比較して,ライズが観察される。さらに,細胞にGAPDHを強制 発現したときの結果を下図に示す。上の図と比較して,GAPDHの共発現によりFRET我さら に強く起こり,ドナーの蛍光寿命はさらに短縮し,ライズが大きくなっていることがわか る。これはGAPDHとPGKが相互作用した結果,PGKのコンフォメーションが変化し,結果と してドナー,アクセプター間距離が短縮したと考えられる。

工も∴∴・・\、・・、\

16 6   8  10  12  14 16 18  20 time/ns

(18)

この蛍光寿命曲線のデータからグローバルアナリシスソフトウェアによって蛍光寿命を算 出した結果を表に示す。 B P 4 7 5 成 分 蛍 光 寿 命 (n s ト砧 。t i。∩比 (1 )   ヱ 2 P C s h 0 11 1 .2 7 ± 0 .0 7 3 7 _8 ± 1 .7 1 .0 〟1 _1 lo n g l 3 .5 6 ± 0 .0 7 6 2 .2 ± 1 .7 Y P C s h o ・t  L 0 .9 3 ± 0 .2 6 5 4 .0 ± 7 .2 1 _1 「2 ,0 lo n g 3 ,2 1 ± 0 .5 0 4 6 .0 ± 7 .2 P C 十G s h o rt 1 .3 0 ± 0 .1 2 3 8 .9 ± 5 .8 1 .0 〝1 _1 lo n g l 3 .6 0 ± 0 .2 4 6 1 .1 ± 5 _8 Y P C +G s h o rt 0 _9 1 ± 0 .0 4 5 2 .7 ± 1 .5 1 _0 仙1 .2 Io n g 3 .0 9 ± 0 .1 8 4 2 .3 ± 1 _5 それぞれの曲線は2成分フィッティングによって解析され,FRETの結果長寿命成分で0,35 nsの短縮が,短寿命成分は0.34ns蛍光寿命が短縮していることが判明した。蛍光プロー ブ間距離を求めたところ,超寿命成分の寿命短縮から7.6n恥 短寿命成分の寿命短縮値か ら5.2nmと計算された。

成 分    

蛍 光 プ ロ ー ブ 間 距 離 r  F R E T 効 率 E

Y P C

S h o rt        

5 .

2 n m         

2 7 %

lo n g        

了_

6 n m       

lO %

Y P C 1−

G

s ho r t        

5 .

1 n m         

3 0 %

Io n g        

7 .

1 n m       

1 4 %

さらにGAPDHの共発現により,さらに蛍光寿命の短縮が起こり蛍光プローブ間距離が短縮 していることが明らかになった。これはPGKとGAPDHの細胞内での相互作用を示している と考えられる。 17

(19)

分子間FRETの解析例1 次に分子間で起きるFRETの解析例を示す。先に示した分子内FRETではドナーとアクセプ ターのモル比は必然的に1:1であるが(細胞内での分解は考慮していないがウエスタンプ ロットの結果から分解はほとんどないと考えられた。),分子間では当然1:1から大きくそ れていることが予想される。このことが蛍光強度測定による分子間FRET測定を困難にして いる原因と考えられるが,FLIM測定に基づいたFRET計測では蛍光発色団の濃度に依存しな いことから,蛍光強度測定法に較べて,より分子間のFRET測定に適している方法と考えら れる。 分子間FRETの最初の例としてGAPDHの例を示す。GAPDHは図のように分子量34,000のモノ マーが4量体を形成して機能している。GAPDHのN末端に2つの蛍光タンパク質を接続した タンパ

GAPDH四量体の立体構造

ク,Cerulean,GAPDHとCitrinel;APt)Hを共発現して,ドナーとアクセプターの蛍光寿命曲 線を解析した図を次に示す。コントロールとして示した曲線と比較してドナーの減衰曲線 では蛍光寿命がFRETにより短縮し,アクセプターの曲線ではわずかではあるが,ライズが 観廃されている。この結果からモノマー間でFRETがおきていることが観察された。N末端 間拒縦はX線結晶解析の結果から4.O nm,7.2nm,7.8nmの3種類存在するが,最も短い 4.O nmはなれて存在するドナーとアクセプター間でのFRETが,観察されたFRETのほぼす べてを構成しているのではないかと考えている。他の2種類は3mm以上臣巨雛が長く FRET は距離の6乗に反比例するので,あまり貢献がないことが考えられる。 18

(20)

6  8 10 12 14 16 18  20    6  8 10 12 14 16 18  20 time/ns time/ns

一:・\∴、・・\

6   8  10  12  14  16  18  20     6   8  10 12  14 16  18  20 time/ns time/ns

GAPDH四量体のFLIM−FRET解析

さらにPGK(P)を共発現した結果が下の図である。ドナーの蛍光寿命の短縮が小さくなって おり,アクセプター減衰曲線に見られたライズはほとんど消失している。この結果は,PGK がGAPDH四量体と結合した結果,蛍光タンパク質問距離が伸び,FRETが起こりにくくなっ た結果と考えられる。 19

(21)

分子間FRETの解析例2 2番目の例としてGAPDHとPGK間の相互作用を直接FRET−FLIMで観察した結果を示す。PGK とCeruleanを5,7,10残基のアミノ酸リンカーで接続したキメラタンパク質とGAPt)Hと Cit− 6  8 10 12 14 16 18 20 time/ns 6  8 10 12 14 16 18 20 time/ns ⇒ 何 、 倉 の u g u 一 6  8 10 12 14 16 18 20 time/ns 6  8 10 12 14 16 18 20 timelns

十・⊥・二1 ㌦\\

6  8 10 12 14 16 18 20 time/ns 6  8 10 12 14 16 18 20 time/ns GAPDH−CitrineとPGK−CeruleanのFLIM−FRET解析 20

(22)

rineを5,7,10アミノ酸残基で接合したキメラタンパク質問のFRETの例を示す。前頁の 図で示したように,リンカーの長さが5と10残基の場合のときFRETが観察された。この 結果はGAPDHとPGKの間に相互作用があり,複合体を形成していることを示している。7残 基からなるリンカーではFRETは起きなかった。この結果はFRETが起きる,起きないこと はリンカーの長さとは無関係で,この例では蛍光プローブ間の距離はリンカーの長さに依 存していないことを示唆している。リンカーのアミノ酸配列を調べたところ,7残基のリン カーだけにPro−Proという配列が含まれていた。このリジッドな構造をもたらす配列が, 自由なリンカーでの回転を阻害し,蛍光プローブ間でFRETが起きない配向をもたらしてい る可能性が考えられた。 GAPDHとPGKの複合体は古くから多くの研究が行われ,メタボロン仮説の代表的な例であ る。この複合体に関する研究は筋肉などから精製した高濃度のタンパク標晶を用いて行わ れてきた。細胞から直接複合体を単離し,その複合体の存在を実証することは成功してい なかった。これは,複合体が希釈によって容易に分解すること,イオン強度変化などの影 響を受けやすいことなどによる。本研究によって生細胞で明らかに複合体形成が起きてい ることが実証されたといえよう。この例でもわかるようにFLIMiRETによる相互作用研究 は非常に弱い相互作用でも,容易に検出できる長所をもつ。 21

(23)

今後の展望 構築したFLIM顕微鏡装置によって,正確に蛍光タンパク質の蛍光寿命を計測することが できた。いくつかの例で示したように,生細胞で発現したドナーとアクセプター間のエネ ルギー移動をドナーの蛍光寿命が短縮するという結果のみならず,アクセプターの蛍光寿 命曲線におけるライズとして観察することができた。これらの結果から,本研究の目的で あるFLIMによる生細胞で発現した蛍光プローブ間のFRET計測は満足できる成果をえたと いえよう。 今後の展望として,細胞内の速いタンパク質間の相互作用変化を調べるためには,現在 FRET測定に20∼30分の時間を必要としているが,これを短縮することが必要である。数分 以内で測定が終了すれば,シグナルトランスダクションにおけるタンパク質のすばやい離 合集散などを捉えることができると考えられる。また,共焦点化を計り細胞内のより詳し いタンパク質問相互作用領域を特定できるようにすることも必要である。今後の課題であ る。 22

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